特許第6035194号(P6035194)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6035194
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 13/00 20060101AFI20161121BHJP
   B60C 17/00 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   B60C13/00 E
   B60C17/00 B
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-91657(P2013-91657)
(22)【出願日】2013年4月24日
(65)【公開番号】特開2014-213688(P2014-213688A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100173794
【弁理士】
【氏名又は名称】色部 暁義
(72)【発明者】
【氏名】徳武 聡
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−254658(JP,A)
【文献】 特開平4−121205(JP,A)
【文献】 特開2008−56785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 13/00
B60C 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビード部のそれぞれに埋設配置したビードコアと、トレッド部からサイドウォール部を経てビード部までトロイド状に延びる本体部分および、該本体部分に連続して、ビードコアの周りに折り返してなる折り返し部分を有する一枚以上のカーカスプライと、該カーカスプライのクラウン部外周側に位置し、コードをゴム被覆してなる少なくとも一層のベルト層とを具え、
該サイドウォール部の少なくとも一部に、老化防止剤を含まない汚染防止ゴム層を設けるとともに、該汚染防止ゴム層に隣接し該サイドウォール部の外表面上に露出する装飾部を設けてなるタイヤであって、
少なくとも該汚染防止ゴム層よりもタイヤ幅方向内側に補強ゴム層を配設し、
該補強ゴム層のタイヤ径方向最外端を、該汚染防止ゴム層のタイヤ径方向最外端よりもタイヤ径方向外側、または該ベルト層のタイヤ幅方向最外端よりもタイヤ幅方向内側、に位置させるとともに、
該補強ゴム層のタイヤ径方向最内端を、該汚染防止ゴム層のタイヤ径方向最内端よりもタイヤ径方向内側に位置させたことを特徴とする、タイヤ。
【請求項2】
前記補強ゴム層を、前記カーカスプライよりもタイヤ幅方向内側に配置してなる、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
タイヤ幅方向断面で、前記補強ゴム層の最大厚みを、前記カーカスプライの外表面からサイドウォール部の外表面までの最大厚みの2倍以上としてなる、請求項2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記装飾部のタイヤ径方向最外端を、タイヤ最大幅位置よりもタイヤ径方向外側に配置してなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記カーカスプライの折り返し端が、前記装飾部のタイヤ径方向最内端よりもタイヤ径方向内側、または、前記装飾部のタイヤ径方向最外端よりもタイヤ径方向外側に位置してなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載のタイヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、サイドウォール部の少なくとも一部に、老化防止剤を含まない汚染防止ゴム層を設けるとともに、該汚染防止ゴム層に隣接し該サイドウォール部の外表面上に露出する装飾部を設けてなるタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤのサイド部に装飾部を形成したタイヤが広く用いられている。このようなタイヤにおいて、特許文献1に記載のように、周囲のゴムに含まれる老化防止剤がにじみ出すことによって、装飾部が汚染されて変色することを防止するため、汚染性老化防止剤を含まない、非汚染性の汚染防止ゴム層を配設して、装飾部を、老化防止剤を含むサイドウォールゴムから隔離する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−121205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで装飾部の視認性を向上させるためには、図4に示されるタイヤ最大幅位置Pwよりもタイヤ径方向外側に、装飾部及び汚染防止ゴム層を配置することが好ましい。
一方、タイヤの負荷転動に当ってのタイヤのサイドウォール部の歪み(変形)の様子を図4に仮想線で誇張して示すように、負荷転動時のタイヤの歪み量は、タイヤ最大幅位置Pw近傍でピークとなり、タイヤ最大幅位置Pwよりもタイヤ径方向内側にむかって減少する。そのため、汚染防止ゴム層を歪みの大きいタイヤ最大幅位置近傍にまで配置しようとすると、該汚染防止ゴム層と他のゴム層との接着境界面付近に大きな応力が加わって、該接着境界面でクラックが発生しやすくなるという懸念があった。発生したクラックは装飾部にも延びる可能性があり、その場合装飾性が損なわれる可能性がある。
【0005】
さらに近年、コーナリング性能向上のためにタイヤの偏平化が行われており、また大径のタイヤに装飾部を設けることの要望も高まっている。これらのタイヤでは、サイドウォール部に発生する歪みがより大きくなり、上述した懸念点が一層顕著になる。
【0006】
この発明は、上述した問題点を解決することを課題とするものであり、サイドウォール部に装飾部を設けたタイヤにおける、耐クラック性を向上させる技術を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のタイヤは、一対のビード部のそれぞれに埋設配置したビードコアと、トレッド部からサイドウォール部を経てビード部までトロイド状に延びる本体部分および、該本体部分に連続して、ビードコアの周りに折り返してなる折り返し部分を有する一枚以上のカーカスプライと、該カーカスプライのクラウン部外周側に位置し、コードをゴム被覆してなる少なくとも一層のベルト層とを具え、該サイドウォール部の少なくとも一部に、老化防止剤を含まない汚染防止ゴム層を設けるとともに、該汚染防止ゴム層に隣接し該サイドウォール部の外表面上に露出する装飾部を設けてなるタイヤであって、少なくとも該汚染防止ゴム層よりもタイヤ幅方向内側に補強ゴム層を配設し、該補強ゴム層のタイヤ径方向最外端を、該汚染防止ゴム層のタイヤ径方向最外端よりもタイヤ径方向外側、または該ベルト層のタイヤ幅方向最外端よりもタイヤ幅方向内側、に位置させるとともに、該補強ゴム層のタイヤ径方向最内端を、該汚染防止ゴム層のタイヤ径方向最内端よりもタイヤ径方向内側に位置させたことを特徴とする。
このタイヤによれば、汚染防止ゴム層よりもタイヤ幅方向内側に補強ゴム層を配設することで、負荷転動時のサイドウォール部の歪みを低減することができ、汚染防止ゴム層の耐クラック性を有効に向上させることができる。
【0008】
なお、この明細書及び特許請求の範囲において、補強ゴム層のタイヤ径方向最外端位置等は特に断りのない限り、タイヤを適用リムに装着して所定内圧を充填した無負荷状態で計測するものとする。
ここで、「適用リム」とは、タイヤが生産されまたは、使用される地域に有効な産業規格がタイヤ毎に定めているリムであり、JATMA(日本自動車タイヤ協会)であれば標準リム、TRA(THE TIRE and RIM ASSOCIATION INC.)であれば“Design Rim”、ETRTO(European Tyre and Rim Technical Organisation)であれば“Measuring RIM”となる。
また、「所定内圧」とは、JATMA等の上記の規格で、タイヤサイズに応じて規定される、タイヤの最大負荷能力に対応する充填空気圧(最高空気圧)をいい、「最大負荷能力」とは、上記の規格でタイヤに負荷することが許される最大の質量をいう。
ところで、ここでいう空気は、窒素ガスその他の不活性ガスに置換することもできる。
【0009】
ここで、この発明のタイヤでは、前記補強ゴム層を、前記カーカスプライよりもタイヤ幅方向内側に配置することが好ましい。
この場合には、補強ゴム層を、タイヤの負荷転動時の曲がりの中立軸より圧縮(すなわちタイヤ幅方向内側)に位置させて、耐張部材として機能させることで、サイドウォール部の歪みを有効に抑制し、汚染防止ゴム層の耐クラック性を一層向上させることができる。
【0010】
また、この発明のタイヤでは、タイヤ幅方向断面で、前記補強ゴム層の最大厚みを、前記カーカスプライの外表面からサイドウォール部の外表面までの最大厚みの2倍以上25倍以下とすることが好ましい。
この場合には、乗り心地性を確保し、転がり抵抗の増加を抑制し、諸性能を確保しながら、サイドウォール部の剛性をも十分確保することができ、汚染防止ゴム層の耐クラック性をより向上させることができる。
【0011】
そして、この発明のタイヤでは、前記装飾部のタイヤ径方向最外端を、タイヤ最大幅位置よりもタイヤ径方向外側に配置することが好ましい。
この場合には、装飾部を外観上目立つ位置に配置することで、装飾部の視認性を有効に向上させることができる。
【0012】
ここにおいて、この発明のタイヤでは、前記カーカスプライの折り返し端が、前記装飾部のタイヤ径方向最内端よりもタイヤ径方向内側、または、前記装飾部のタイヤ径方向最外端よりもタイヤ径方向外側に位置することが好ましい。
この場合には、汚染防止ゴムの耐クラック性を一層向上することができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明のタイヤによれば、サイドウォール部に装飾部を設けたタイヤの視認性を損なうことなく耐クラック性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明の一の実施形態のタイヤを、適用リムに組み付けて所定内圧を充填した無負荷姿勢で示す、タイヤ半部のタイヤ幅方向断面図である。
図2】この発明の一の実施形態のタイヤの第1の変形例を示す、タイヤ半部のタイヤ幅方向断面図である。
図3】この発明の一の実施形態のタイヤの第2の変形例を示す、タイヤ半部のタイヤ幅方向断面図である。
図4】タイヤの負荷転動時におけるサイドウォール部の外表面の変形態様を誇張して示す、タイヤ半部のタイヤ幅方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照しつつ、この発明の実施の形態を説明する。
なお、下記の説明はあくまで例示であり、各部材の構成や作用効果等は、これに限定されるものではない。
図1に例示するタイヤ10は、一対のビード部3のそれぞれに埋設配置したビードコア4と、トレッド部1からサイドウォール部2を経てビード部3までトロイド状に延びる本体部分6aおよび、該本体部分6aに連続して、ビードコア4の周りに折り返してなる折り返し部分6bを有する一枚以上のカーカスプライ6と、該カーカスプライ6のクラウン部外周側に位置し、コードをゴム被覆してなる少なくとも一層(ここでは三層)のベルト層7とを具えてなる。
【0016】
カーカスプライ6のタイヤ外面側には、老化防止剤を含まない汚染防止ゴム層11a、11bが配設される。ビード部3の外表面からトレッド部1のベルト層7のタイヤ径方向内側まで延びる汚染防止ゴム層11aは生タイヤの一部として成型され、トレッド部1のタイヤ幅方向外側に位置する汚染防止ゴム層11bはトレッドゴムの一部として成型されて該生タイヤに貼り付けられる。このように、サイドウォール部の外側に位置するサイドゴム全体を汚染防止ゴム層11aとする構成をとることで、汚染防止ゴム層11bをタイヤの外表面に露出させることが容易となり、トレッド部付近までを汚染防止ゴム層としたタイヤを容易に製造することができる。
装飾部12は、汚染防止ゴム層11aに隣接し、サイドウォール部2の外表面に露出する。汚染防止ゴム層11aのタイヤ径方向内外に隣接するゴム層21a、21bには、老化防止剤が含まれている。装飾部12は、汚染防止ゴム層11a、11bによって、ゴム層21a、21bから離隔されている。
なお図示は省略するが、汚染防止ゴム層11bが存在せず、トレッドゴム全体が老化防止剤を含むようにすることもできる。
【0017】
装飾部12は、例えば加硫成型後のタイヤの、汚染防止ゴム層11aの表面上に、インクジェットプリンタのヘッドから、インキを含む塗料を噴射して、該表面上に印刷することで形成することができる。複数種類の塗料を重ねて装飾部12を形成することもできる。また、装飾部12を色ゴムで構成することもできる。なお、装飾部12は任意の色とすることができる。
図示は省略するが、装飾部12によって、例えばタイヤ周方向に、文字、図形、バーコードを含む記号等からなる標章やその他の模様等を形成することができる。
【0018】
次に、汚染防止ゴム層を形成するゴム組成物には、一般的なタイヤ用ゴム組成物に配合される成分が適宜配合され得るが、老化防止剤は含まれない。即ち、汚染防止ゴム層とは、老化防止剤を含まず、少なくとも、含有する老化防止剤によって、これに隣接する装飾部を汚染することのないゴム層を意味する。
汚染防止ゴム層を、このようなゴム組成物から形成することで、装飾部12とゴム層21a、21bとの間を、老化防止材を含まない汚染防止ゴム層で隔離して、装飾部12を汚染から有効に防止することができる。
汚染防止ゴム層のゴム成分としては、天然ゴム(NR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンジエン三元共重合体(EPDM)等を単独または2種以上の組合せで配合することができる。なお、汚染防止ゴム層にエチレンプロピレンジエン三元共重合体を配合した場合は、汚染防止ゴム層中に、エチレンプロピレンジエン三元共重合体が占める割合を、ゴム成分100重量部中80重量部以上とすることが好適である。
【0019】
また、汚染防止ゴム層の少なくとも一部に、ブチル系ゴムを含ませることで、汚染防止ゴム層での老化防止剤の透過を低減させて、ゴム層21a、21bに含まれる老化防止剤による装飾部12の汚染をより有効に防止することができる。
【0020】
次に、図2に示す変形例では、サイドゴムのうち、装飾部12と隣接する領域及びその周りの領域である11aを、ブチル系ゴムを含む汚染防止ゴム層とし、サイドゴムのその他の領域11cを、老化防止材が含まれる通常のゴムとしている。ブチル系ゴムを含む汚染防止ゴム層は、老化防止剤の透過をより有効に低減することができるため、サイドゴムの全体ではなく上記領域11aのみを汚染防止ゴム層としても、装飾部12の汚染を十分に抑制することができる。
前記領域で前記汚染防止ゴム層がさらに無機粘土鉱物を含む場合には、汚染防止ゴム層での老化防止剤の透過を一層低減させて、ゴム層11c、21bによる装飾部12の汚染防止効果をより一層高めることができる。
【0021】
図1及び図2に示すように、本発明のタイヤ10では、タイヤ幅方向内側で汚染防止ゴム層11a、11bを覆う、タイヤ幅方向断面で三日月状の補強ゴム層13を配設する。そして、補強ゴム層13のタイヤ径方向最外端13aを、ベルト層7のタイヤ幅方向最外端7aよりも、タイヤ幅方向内側に位置させるとともに、補強ゴム層13のタイヤ径方向最内端13bを、該汚染防止ゴム層11aのタイヤ径方向最内端11eよりもタイヤ径方向内側に位置させる。
このように、サイドウォール部に十分なタイヤ径方向長さを持つ補強ゴム層を配設することで、負荷転動時のサイドウォール部の歪みを低減することができ、図1に示す実施形態では、汚染防止ゴム層11aとゴム層21a、21bとの接着境界面付近、及び汚染防止ゴム層11bとゴム層21bとの接着境界面付近で大きな応力が加わることを抑制することができる。そして、図2に示す実施形態では、汚染防止ゴム層11aとゴム層11cとの接着境界面付近、及び汚染防止ゴム層11bとゴム層11c及び21bとの接着境界面付近で大きな応力が加わることを抑制することができる。従って、図1及び図2に示す実施形態では、これらの接着境界面でのクラックを防止して、汚染防止ゴム層11a、11bの耐クラック性を有効に向上させることができる。
【0022】
なお、例えば大径のタイヤや偏平タイヤ等では負荷転動時の歪みが大きくなるために、ゴム層11cをベルト層7付近まで配置することが難しい。
ここで、図3に示すように、補強ゴム層13のタイヤ径方向最外端13aを、汚染防止ゴム層11aのタイヤ径方向最外端11dよりもタイヤ径方向外側に位置させ、ベルト層7のタイヤ幅方向最外端7aよりもタイヤ幅方向内側に位置させるとともに、補強ゴム層13のタイヤ径方向最内端13bを、汚染防止ゴム層11aのタイヤ径方向最内端11eよりもタイヤ径方向内側に位置させることで、負荷転動時のサイドウォール部の歪みをより十分低減することができ、汚染防止ゴム層11aの耐クラック性をより有効に向上させることができる。
なお、この実施形態では、サイドゴムの汚染防止ゴム層11a以外の領域11cを、通常の老化防止材が含まれるゴム層としている。
【0023】
なお、図1〜3に示す実施形態では、補強ゴム層13を、カーカスプライ6よりもタイヤ幅方向内側に配置している。
このように、補強ゴム層13を、タイヤの負荷転動時の曲がりの中立軸より圧縮側(すなわちタイヤ幅方向内側)に位置させて、耐張部材として機能させることで、サイドウォール部2の歪みを有効に抑制し、汚染防止ゴム層の耐クラック性を一層向上させることができる。
【0024】
ここで、タイヤ幅方向断面で、補強ゴム層13の最大厚みTを、カーカスプライ6の外表面からサイドウォール部2の外表面までの最大厚みtの2倍以上とすることが好ましい。これにより、歪みが最大となる領域でサイドウォール部の剛性を十分に確保し、汚染防止ゴム層の耐クラック性をさらに有効に向上することができる。また、サイドウォール部2の外表面の最大歪みを、例えば13%以下とするように、補強ゴム層13の最大厚みT等を適宜設計することが好ましい。耐クラック性の観点から、サイドウォール部の外表面の歪みが大きい箇所には、汚染防止ゴム層を設けることが難しいためである。
なお、ここでいう補強ゴム層13の厚みは、タイヤ幅方向断面で、補強ゴム層13のタイヤ内表面に立てた法線の方向で測定するものとする。またカーカスプライ6の外表面からサイドウォール部2の外表面までの厚みは、タイヤ幅方向断面で、カーカスプライ6の外表面に立てた法線の方向で測定するものとする。
【0025】
また、装飾部を外観上目立つ位置に配置し、装飾部の視認性を有効に向上させる観点から、装飾部12のタイヤ径方向最外端12aを、タイヤ最大幅位置Pwよりもタイヤ径方向外側に配置することが好ましい。従来の補強ゴムが配置されていない構造だと、タイヤ最大幅位置よりタイヤ径方向外側は歪みが大きくなるので、その領域に装飾部を配置することは装飾部の耐久面に問題があったが、補強ゴム13の配置により歪みが低減されるため、タイヤ最大幅位置Pwよりもタイヤ径方向外側まで装飾部12を配置しても耐久性を確保することができる。
【0026】
また、トレッドゴム21bの端部と、汚染防止ゴム層11aの端部と、(図1及び図2のようにサイドゴム11bを設けたときには)サイドゴム11bの端部との間の、互いの最短直線距離を少なくとも10mm以上とすることが好ましい。これらの端部が集中(近接)するとゴム層の界面に歪が集中し、亀裂が発生しやすくなるため、端部同士の間隔をそれぞれ10mm以上空けることで耐久性を高いレベルで維持できる。
【0027】
また、カーカスプライの折り返し端が、タイヤ径方向で、装飾部のタイヤ径方向最外端とタイヤ径方向最内端との間に位置すると、プライ端には歪が集中しやすいため、装飾部のはがれや割れ等につながりやすい。またゴムの接着界面の耐クラック性も低下してしまう。そのため、プライ端6eを、装飾部12のタイヤ径方向最内端12bよりもタイヤ径方向内側、または、装飾部のタイヤ径方向最外端12aよりもタイヤ径方向外側に位置させることで装飾部の耐久性を向上することができる。
【0028】
なお、上述した実施形態では、タイヤ片側半部、特には車両装着外側となる半部について本発明の構成を適用しているが、タイヤ両側に本発明の構成を適用することもできる。
【実施例】
【0029】
タイヤサイズが255/35ZR19の実施例タイヤ及び比較例タイヤを試作し、それらの性能を評価したので、以下に説明する。
【0030】
実施例タイヤ及び比較例タイヤはともに、図1に示すように、サイドウォール部2に、老化防止剤を含まない汚染防止ゴム層11a、11bと、汚染防止ゴム層11a、11bに隣接しサイドウォール部2の外表面上に露出する装飾部12と、老化防止剤が含まれ、汚染防止ゴム層11a、11bのタイヤ径方向内外に隣接するゴム層21a、21bとが配設されている。
【0031】
ここで、それぞれの実施例タイヤ及び比較例タイヤにおける、補強ゴム層の最大厚みTと、カーカスプライの外表面からサイドウォール部の外表面までの最大厚みtとの比T/t、及び、カーカスプライの折り返し端がタイヤ径方向で装飾部のタイヤ径方向最外端とタイヤ径方向最内端との間に位置するか否か(以下、「カーカスプライ折り返し端と装飾部との重なりの有無」という)を表1に示す。
【0032】
また、実施例タイヤはいずれも、前記補強ゴム層13を、カーカスプライ6よりもタイヤ幅方向内側に配置している。
【0033】
<耐クラック性評価試験>
実施例タイヤおよび比較例タイヤに、JATMA規格の所定内圧を充填し、JATMA規格の最大負荷能力を負荷して、10000kmにわたってドラム試験を実施し、汚染防止ゴム層と他のゴム層との接着境界面で発生したクラックの合計長さにより、耐クラック性を評価した。その結果を表1に示す。なお、比較例タイヤ1のクラックの合計長さの逆数を100とする。数値が高いほど耐クラック性に優れている。
【0034】
【表1】
【0035】
表1から、実施例タイヤはいずれも、比較例タイヤよりも耐クラック性に優れていることが明らかになった。また、タイヤ幅方向断面で、前記補強ゴム層の最大厚みを、カーカスプライの外表面からサイドウォール部の外表面までの最大厚みの2倍以上とした実施例タイヤ1、2、4は、耐クラック性がより大きく向上していることが明らかになった。
【符号の説明】
【0036】
1:トレッド部、 2:サイドウォール部、 3:ビード部、 4:ビードコア、
6:カーカスプライ、 6a:本体部分、 6b:折り返し部分、6e:折り返し端、
7:ベルト層、 7a:タイヤ幅方向最外端、 10:タイヤ、
11a:汚染防止ゴム層、 11b:汚染防止ゴム層、
11c:老化防止材が含まれるゴム層、 11d:タイヤ径方向最外端、
11e:タイヤ径方向最内端、 12:装飾部、 12a:タイヤ径方向最外端、
12b:タイヤ径方向最内端、 13:補強ゴム層、 13a: タイヤ径方向最外端、
13b:タイヤ径方向最内端、 21a、21b:ゴム層、 Pw:タイヤ最大幅位置
図1
図2
図3
図4