【実施例】
【0073】
以下、本発明に係る二次電池の集電体用の導電性樹脂フィルム及びその製造方法の実施例を比較例と共に説明する。
〔実施例1〕
先ず、導電性樹脂組成物を調製するため、ポリメチルペンテンとして、TPX MX002〔三井化学社製:商品名〕を選択し、このポリメチルペンテンを冷凍粉砕法により粉砕した。粉砕したポリメチルペンテンの粒度分布をエアジェットシーブ標準ふるいにより測定したところ、20メッシュパスが98%であった。
【0074】
ポリメチルペンテンを粉砕したら、この粉砕したポリメチルペンテンと炭素系導電性材料である多層カーボンナノチューブとを表1に示す組成重量比率で樹脂容器に投入し、この樹脂容器にφ10mmのジルコニアボールを併せて投入し、樹脂容器に蓋を取り付けてタンブラーミキサーに装着するとともに、このタンブラーミキサーを23℃、1時間の条件で回転させてポリメチルペンテン、多層カーボンナノチューブ、及びジルコニアボールを分散混合させ、その後、ジルコニアボールを取り出して攪拌混合物を調製した。多層カーボンナノチューブには、NANOCYL NC7000〔NanocyS.A.社製:商品名〕を用いた。
【0075】
次いで、調製した攪拌混合物を真空ポンプ付きの高速二軸押出成形機に供給して減圧下で溶融混練し、この溶融混練した攪拌混合物を高速二軸押出成形機先端部のダイスから棒形に押し出して水冷後カットし、カットした攪拌混合物を80℃に加熱した排気付き熱風オーブン中に5時間静置し、静置後に室温まで冷却することにより、長さが4〜7mm、直径が2〜4mmのペレット形の導電性樹脂組成物を調製した。攪拌混合物は、シリンダー温度270〜280℃、アダプター温度280℃、ダイス温度280℃の条件下で溶融混練した。
【0076】
導電性樹脂組成物を調製したら、この導電性樹脂組成物のメルトマスフローレートを温度260℃、荷重10kgの条件でJIS K7210の規格に準拠して測定した。測定値は、44.9g/10分であった。
【0077】
次いで、導電性樹脂組成物を幅400mmのTダイ付きの単軸押出成形機に投入して溶融混練し、この溶融混練した導電性樹脂組成物をTダイから連続的に押し出して導電性樹脂フィルムを帯形に成形した。単軸押出成形機は、L/D=25、圧縮比:2.5、スクリュー:フルフライトスクリューのタイプとした。また、単軸押出成形機の温度は260〜270℃、Tダイの温度は260℃、単軸押出成形機とTダイとを連結する連結管の温度は260℃に調整した。この単軸押出成形機に導電性樹脂組成物を投入する際には、窒素ガス520L/分を供給した。
【0078】
導電性樹脂フィルムを成形したら、この導電性樹脂フィルムを,
図1に示すようなシリコーンゴム製の一対の圧着ロール、80℃の金属ロール、及びこれらの下流に位置する3インチの巻取管に順次巻架するとともに、圧着ロールと金属ロールとに挟持させ、連続した導電性樹脂フィルムの両側部をスリット刃で裁断して巻取管に順次巻き取ることにより、長さ300m、幅250mmの導電性樹脂フィルムを製造した。圧着ロールと巻取管との間には、導電性樹脂フィルムの両側部を切断するスリット刃を昇降可能に配置し、巻取管とスリット刃との間には、導電性樹脂フィルムにテンションを作用させるテンションロールを回転可能に軸支させた。
【0079】
導電性樹脂フィルムを製造したら、導電性樹脂フィルムの厚さ、比重、導電性、耐薬品性をそれぞれ評価して表1にまとめた。導電性樹脂フィルムの厚さについては、ダイヤルシックスゲージ〔ミツトヨ社製:商品名〕を使用し、導電性樹脂フィルムの幅方向2.5cm間隔で9点測定し、平均値を求めて平均厚みにより評価した。また、導電性樹脂フィルムの比重については、圧縮成形法により約3.0mmのプレートに成形後、JIS K7112の規格に準拠して測定した。
【0080】
・導電性樹脂フィルムの導電性
導電性樹脂フィルムの導電性については、厚さ方向の抵抗値により評価することとした。この厚さ方向の抵抗値〔Rc〕については、
図2や
図3に示すように、導電性樹脂フィルムを5.5×5.5cmの大きさにカットして試験片とし、この導電性樹脂フィルムを5.0×5.0cmの大きさを有する上下一対のカーボンペーパーに挟むとともに、この一対のカーボンペーパーを上下一対の金メッキ電極に挟持させ、直流電流を通電し、上方から1MPaで加圧し、抵抗計で1分間後の抵抗値〔R
0〕を測定した後、以下の式から算出した。
【0081】
Rc=(R
1×S)
R
1:R
0−(一対のカーボンペーパー2枚分の抵抗値)
S:カーボンペーパーの面積
カーボンペーパーは、SIGRACET Gas Diffusion Media type.GDL24BC〔SGL GROUP社製:商品名〕を使用した。また、抵抗計は、ミリオームハイテスタ3540〔日置電機社製:商品名〕を用いた。
【0082】
なお、厚み方向の抵抗値〔Rc〕については、導電性樹脂フィルムとリチウム一次・二次・ポリマー電池&リチウムイオンキャパシタ用電解液〔キシダ化学社製、商品名:電解質 LiPF
6、モル濃度 1mol/L、 溶媒 EC:DEC(3:7)V/V%〕を用いた耐薬品性試験の前後で測定した。
【0083】
・導電性樹脂フィルムの耐薬品性
導電性樹脂フィルムの耐薬品性を評価する場合には、抵抗値の測定に使用した試験片の導電性樹脂フィルムを秤量〔W
0〕し、この導電性樹脂フィルムとリチウム一次・二次・ポリマー電池&リチウムイオンキャパシタ用電解液〔キシダ化学社製:商品名 電解質LiPF
6、モル濃度1mol/L 溶媒EC:DEC(3:7)V/V%〕5.0gとをPET/AL/PE構成平袋〔日本生産社製:商品名ラミジップ〕に入れ、ヒートシールにより封をした。
【0084】
ヒートシールにより封をしたら、PET/AL/PE構成平袋を50℃に加熱した熱風オーブン中に15日間静置し、静置後にPET/AL/PE構成平袋から導電性樹脂フィルムを取り出してエタノールで洗浄し、この導電性樹脂フィルムを50℃に加熱した熱風オーブン中に24時間静置するとともに、静置後に乾燥剤〔オゾン化学社製:商品名OZO‐C〕を入れたガラス製のデシケータ内で24℃環境下、24時間静置し、その後、導電性樹脂フィルムを秤量〔W
1〕し、以下の式から重量変化率を求めて評価した。
【0085】
重量変化率(%)={(W
1−W
0)×100}/W
0
W
0:導電性樹脂フィルムの初期重量〔g〕
W
1:導電性樹脂フィルムとリチウム一次・二次・ポリマー電池&リチウムイオンキャ
パシタ用電解液浸漬後の重量〔g〕
【0086】
〔実施例2〕
先ず、粉砕した実施例1のポリメチルペンテンと多層カーボンナノチューブとの組成重量比率を表1に示すように変更し、実施例1と同様にペレット形の導電性樹脂組成物を調製した。導電性樹脂組成物を調製したら、この導電性樹脂組成物のメルトマスフローレートを温度260℃、荷重10kgの条件でJIS K7210の規格に準拠して測定し、13.7g/10分の測定値を得た。
【0087】
次いで、調製した導電性樹脂組成物を用い、実施例1と同様の方法で導電性樹脂フィルムを帯形に成形した。この際、単軸押出成形機の温度は280℃、Tダイの温度は270℃、単軸押出成形機とTダイとを連結する連結管の温度は270℃に調整した。こうして導電性樹脂フィルムを成形したら、実施例1と同様の方法で導電性樹脂フィルムを製造し、この導電性樹脂フィルムの厚さ、比重、導電性、耐薬品性をそれぞれ評価して表1にまとめた。
【0088】
〔実施例3〕
先ず、粉砕した実施例1のポリメチルペンテンと多層カーボンナノチューブとの組成重量比率を表1に示すように変更し、実施例1と同様にペレット形の導電性樹脂組成物を調製した。この導電性樹脂組成物の調製の際、攪拌混合物は、シリンダー温度270〜300℃、アダプター温度300℃、ダイス温度300℃の条件下で溶融混練した。導電性樹脂組成物を調製したら、この導電性樹脂組成物のメルトマスフローレートを温度260℃、荷重10kgの条件でJIS K7210の規格に準拠して測定し、0.6g/10分の測定値を得た。
【0089】
次いで、調製した導電性樹脂組成物を用い、実施例1と同様の方法で導電性樹脂フィルムを帯形に成形した。この際、単軸押出成形機の温度は280〜290℃、Tダイの温度は270℃、単軸押出成形機とTダイとを連結する連結管の温度は280℃に調整した。こうして導電性樹脂フィルムを成形したら、実施例1と同様の方法で導電性樹脂フィルムを製造し、この導電性樹脂フィルムの厚さ、比重、導電性、耐薬品性をそれぞれ評価して表1にまとめた。
【0090】
〔実施例4〕
先ず、導電性樹脂組成物を調製するため、ポリメチルペンテンとして、TPX MX004〔三井化学社製:商品名〕を選択し、このポリメチルペンテンを冷凍粉砕法により粉砕した。粉砕したポリメチルペンテンの粒度分布をエアジェットシーブ標準ふるいにより測定したところ、20メッシュパスが97%であった。
【0091】
ポリメチルペンテンを粉砕したら、この粉砕したポリメチルペンテンと炭素系導電性材料である多層カーボンナノチューブとを表1に示す組成重量比率で樹脂容器に投入し、その後、実施例1と同様の方法で攪拌混合物を調製した。多層カーボンナノチューブは、VGCF‐X〔昭和電工社製:商品名〕を用いた。
【0092】
攪拌混合物を調製したら、実施例1と同様にして導電性樹脂組成物を調製した。この導電性樹脂組成物の調製の際、攪拌混合物は、シリンダー温度270〜280℃、アダプター温度280℃、ダイス温度280℃の条件下で溶融混練した。導電性樹脂組成物を調製したら、この導電性樹脂組成物のメルトマスフローレートを温度260℃、荷重10kgの条件でJIS K7210の規格に準拠して測定し、31.4g/10分の測定値を得た。
【0093】
次いで、調製した導電性樹脂組成物を用い、実施例1と同様の方法で導電性樹脂フィルムを製造し、この導電性樹脂フィルムの厚さ、比重、導電性、耐薬品性をそれぞれ評価して表1に記載した。この際、単軸押出成形機の温度は260〜265℃、Tダイの温度は260℃、単軸押出成形機とTダイとを連結する連結管の温度は260℃に変更した。
【0094】
〔実施例5〕
粉砕した実施例4のポリメチルペンテンと多層カーボンナノチューブとを表1に示す組成重量比率で樹脂容器に投入し、その後、実施例1と同様の方法で攪拌混合物を調製した。多層カーボンナノチューブは、Flo Tube9000〔CNano Technology社製:商品名〕を用いた。
【0095】
攪拌混合物を調製したら、実施例1と同様にして導電性樹脂組成物を調製した。この導電性樹脂組成物の調製の際、攪拌混合物は、シリンダー温度270〜300℃、アダプター温度300℃、ダイス温度300℃の条件下で溶融混練した。導電性樹脂組成物を調製したら、この導電性樹脂組成物のメルトマスフローレートを温度260℃、荷重10kgの条件でJIS K7210の規格に準拠して測定し、5.7g/10分の測定値を得た。
【0096】
次いで、調製した導電性樹脂組成物を用い、実施例1と同様の方法で導電性樹脂フィルムを製造し、この導電性樹脂フィルムの厚さ、比重、導電性、耐薬品性をそれぞれ評価して表1にまとめた。この際、単軸押出成形機の温度は280〜290℃、Tダイの温度は280℃、単軸押出成形機とTダイとを連結する連結管の温度は290℃に変更した。
【0097】
【表1】
【0098】
〔実施例6〕
導電性樹脂組成物を調製するため、ポリメチルペンテンとして、TPX DX845〔三井化学社製:商品名〕を選択し、このポリメチルペンテンを冷凍粉砕法により粉砕した。粉砕したポリメチルペンテンの粒度分布をエアジェットシーブ標準ふるいにより測定したところ、20メッシュパスが95%であった。
【0099】
ポリメチルペンテンを粉砕したら、この粉砕したポリメチルペンテンと実施例4の多層カーボンナノチューブとを表2に示す組成重量比率で樹脂容器に投入し、その後、実施例1と同様の方法で攪拌混合物を調製し、実施例1と同様に導電性樹脂組成物を調製した。この導電性樹脂組成物の調製の際、攪拌混合物は、シリンダー温度270〜290℃、アダプター温度290℃、ダイス温度290℃の条件下で溶融混練した。導電性樹脂組成物を調製したら、この導電性樹脂組成物のメルトマスフローレートを温度260℃、荷重10kgの条件でJIS K7210の規格に準拠して測定し、20.7g/10分の測定値を得た。
【0100】
次いで、調製した導電性樹脂組成物を用い、実施例1と同様の方法で導電性樹脂フィルムを製造し、この導電性樹脂フィルムの厚さ、比重、導電性、耐薬品性をそれぞれ評価して表2に記載した。この際、単軸押出成形機の温度は270〜280℃、Tダイの温度は270℃、単軸押出成形機とTダイとを連結する連結管の温度は270℃に変更した。
【0101】
〔実施例7〕
導電性樹脂組成物を調製するため、ポリメチルペンテンとして、実施例6の粉砕したポリメチルペンテンと、予め冷凍粉砕したTPX DX231〔三井化学社製:商品名〕とを選択し、これらと実施例1の多層カーボンナノチューブとを表2に示す組成重量比率で樹脂容器に投入し、その後、実施例1と同様の方法で攪拌混合物を調製した。粉砕したTPX DX231の粒度分布をエアジェットシーブ標準ふるいにより測定したところ、20メッシュパスが95%であった。
【0102】
攪拌混合物を調製したら、実施例1と同様にして導電性樹脂組成物を調製した。この導電性樹脂組成物の調製の際、攪拌混合物は、シリンダー温度280〜300℃、アダプター温度300℃、ダイス温度300℃の条件下で溶融混練した。導電性樹脂組成物を調製したら、この導電性樹脂組成物のメルトマスフローレートを温度260℃、荷重10kgの条件でJIS K7210の規格に準拠して測定し、9.0g/10分の測定値を得た。
【0103】
次いで、調製した導電性樹脂組成物を用い、実施例1と同様の方法で導電性樹脂フィルムを製造し、この導電性樹脂フィルムの厚さ、比重、導電性、耐薬品性をそれぞれ評価して表2に記載した。この際、単軸押出成形機の温度は280〜290℃、Tダイの温度は280℃、単軸押出成形機とTダイとを連結する連結管の温度は280℃に変更した。
【0104】
〔実施例8〕
先ず、導電性樹脂組成物を調製するため、実施例4の粉砕したポリメチルペンテンと、炭素系導電性材料としてオイルファーネスブラック〔ライオン社製:商品名:ケッチェンブラックEC600JD〕とを用意し、これらを表2に示す組成重量比率で樹脂容器に投入し、その後、実施例1と同様の方法で攪拌混合物を調製した。
【0105】
攪拌混合物を調製したら、実施例1と同様に導電性樹脂組成物を調製した。この導電性樹脂組成物の調製の際、攪拌混合物は、シリンダー温度290〜310℃、アダプター温度310℃、ダイス温度310℃の条件下で溶融混練した。導電性樹脂組成物を調製したら、この導電性樹脂組成物のメルトマスフローレートを温度260℃、荷重10kgの条件でJIS K7210の規格に準拠して測定し、0.4g/10分の測定値を得た。
【0106】
次いで、調製した導電性樹脂組成物を用い、実施例1と同様の方法で導電性樹脂フィルムを製造し、この導電性樹脂フィルムの厚さ、比重、導電性、耐薬品性をそれぞれ評価して表2に記載した。この際、単軸押出成形機の温度は295〜305℃、Tダイの温度は295℃、単軸押出成形機とTダイとを連結する連結管の温度は295℃に変更した。
【0107】
〔実施例9〕
実施例2の導電性樹脂組成物を用い、実施例2と同様の方法で平均厚さが150μmの導電性樹脂フィルムを作製した。導電性樹脂フィルムを作製したら、導電性樹脂フィルムを13×13cmに裁断して260℃に加熱した一対の金属板に挟み、この一対の金属板を60t圧縮成形機の上下一対の熱板間にセットして5秒間加熱加圧し、導電性樹脂フィルムを加熱圧縮成形した。
【0108】
各金属板は、16×16cm、厚さが2cmの平型タイプを使用し、離型剤〔ダイキン工業社製:商品名:ダイフリーGA‐6010〕を均一に塗布して使用した。また、導電性樹脂フィルムの加熱加圧に際しては、金属板の温度を270℃とし、この金属板の面積、換言すれば、導電性樹脂フィルムの投影面積に対して50kgf/cm
2の成形圧力を作用させた。
【0109】
導電性樹脂フィルムを加熱圧縮成形したら、そのままの状態で5秒間加熱加圧し、その後、一対の金属板を、一対の熱板の温度が20℃の別の冷却用60t圧縮成形機に直ちに移載し、金属板の側面温度が30℃以下になるまで加圧冷却して導電性樹脂フィルムを製造した。導電性樹脂フィルムを製造したら、この導電性樹脂フィルムの厚さ、比重、導電性、耐薬品性をそれぞれ評価して表2にまとめた。導電性樹脂フィルムの厚さについては、導電性樹脂フィルムの任意の5箇所の厚さを測定し、平均値を求めて平均厚みにより評価した。
【0110】
【表2】
【0111】
〔比較例1〕
先ず、実施例1で使用した粉砕品のポリメチルペンテンと多層カーボンナノチューブとを表3に示す本発明の範囲外の組成重量比率で樹脂容器に投入し、以下、実施例1と同様に導電性樹脂組成物を調製した。導電性樹脂組成物を調製したら、この導電性樹脂組成物のメルトマスフローレートを温度260℃、荷重10kgの条件でJIS K7210の規格に準拠して測定したところ、145g/10分であった。
【0112】
次いで、調製した導電性樹脂組成物を用い、実施例1と同様の方法で導電性樹脂フィルムを帯形に成形した。この際、単軸押出成形機の温度は260〜270℃、Tダイの温度は260℃、単軸押出成形機とTダイとを連結する連結管の温度は260℃に調整した。導電性樹脂フィルムを成形したら、実施例1と同様の方法で導電性樹脂フィルムを製造し、この導電性樹脂フィルムの厚さ、比重、導電性、耐薬品性をそれぞれ評価して表3にまとめた。
【0113】
なお、導電性樹脂フィルムの耐薬品性及び耐薬品性試験後の導電性については、耐薬品性試験前の厚さ方向の抵抗値が、3.1×10
6mΩ・cm
2と規格値範囲外であったため、測定しなかった。
【0114】
〔比較例2〕
導電性樹脂組成物を調製するため、粉砕された実施例1のポリメチルペンテンを用意し、このポリメチルペンテンと炭素系導電性材料である多層カーボンナノチューブとを表3に示す組成重量比率で樹脂容器に投入し、その後、実施例1と同様の方法で攪拌混合物を調製した。多層カーボンナノチューブは、NANOCYL NC7000〔Nanocy.S.A社製:商品名〕を用いた。
【0115】
攪拌混合物を調製したら、実施例1と同様にペレット形の導電性樹脂組成物を調製した。この導電性樹脂組成物の調製の際、攪拌混合物は、シリンダー温度300〜320℃、アダプター温度320℃、ダイス温度320℃の条件下で溶融混練した。導電性樹脂組成物を調製したら、この導電性樹脂組成物のメルトマスフローレートを温度260℃、荷重10kgの条件でJIS K7210の規格に準拠して測定したところ、本発明の範囲外の0.1g/10分の測定値だった。
【0116】
次いで、調製した導電性樹脂組成物を用い、実施例1と同様の方法で導電性樹脂フィルムを製造しようとしたが、導電性樹脂フィルムの溶融伸びが小さいので、単軸押出成形機のTダイと金属ロールとの間で導電性樹脂フィルムが破断し、導電性樹脂フィルムを製造することができなかった。この際、単軸押出成形機の温度は300〜320℃、Tダイの温度は300℃、単軸押出成形機とTダイとを連結する連結管の温度は300℃であった。
【0117】
〔比較例3〕
先ず、導電性樹脂組成物を調製するため、ポリフェニレンサルファイドとしてトレリナ PY15〔東レ社製:商品名〕を選択し、このポリフェニレンサルファイドを冷凍粉砕法により粉砕した。粉砕したポリフェニレンサルファイドの粒度分布をエアジェットシーブ標準ふるいにより測定したところ、150メッシュパスが99%であった。
【0118】
ポリフェニレンサルファイドを粉砕したら、このポリフェニレンサルファイドと、炭素系導電性材料として多層カーボンナノチューブ〔NanocyS.A.社製、商品名:NANOCYL NC7000〕とを表1に示す組成重量比率で樹脂容器に投入し、かつ樹脂容器にφ10mmのジルコニアボールを併せて投入し、樹脂容器に蓋を取り付けてタンブラーミキサーに装着するとともに、このタンブラーミキサーを23℃、1時間の条件で回転させてポリフェニレンサルファイド、多層カーボンナノチューブ、ジルコニアボールを分散混合させ、その後、ジルコニアボールを取り出して攪拌混合物を調製した。
【0119】
ポリフェニレンサルファイドと多層カーボンナノチューブとを攪拌混合して攪拌混合物を調製したら、この攪拌混合物を真空ポンプ付きの高速二軸押出成形機に供給して減圧下で溶融混練し、高速二軸押出成形機先端部のダイスから棒形に押し出して水冷後カットし、120℃に加熱した排気付き熱風オーブン中に5時間静置するとともに、静置後に室温まで冷却し、長さ3〜5mm、直径2〜3mmのペレット形の導電性樹脂組成物を調製した。
【0120】
攪拌混合物は、シリンダー温度320〜340℃、アダプター温度340℃、ダイス温度340℃の条件下で溶融混練した。導電性樹脂組成物を調製後、導電性樹脂組成物のメルトマスフローレートを温度316℃、荷重10kgの条件でJIS K7210の規格に準拠して測定し、6.7g/10分の測定値を得た。
【0121】
次いで、導電性樹脂組成物を120℃に加熱した熱風オーブン中で24時間予備加熱し、この導電性樹脂組成物を幅400mmのTダイ付きのφ40mmの単軸押出成形機に投入して溶融混練し、溶融混練した組成物を単軸押出成形機のTダイから連続的に押し出して導電性樹脂フィルムを帯形に成形した。単軸押出成形機に導電性樹脂組成物を投入する際、窒素ガス520L/分を供給した。
【0122】
単軸押出成形機は、L/D=25、圧縮比:2.5、スクリュー:フルフライトスクリュータイプとした。また、単軸押出成形機の温度は310〜330℃、Tダイの温度は340℃、単軸押出成形機とTダイとを連結する連結管の温度は330℃に調整した。
【0123】
導電性樹脂フィルムを成形したら、連続した導電性樹脂フィルムの両側部をスリット刃で裁断して巻取管に順次巻き取ることにより、長さ300m、幅250mmの導電性樹脂フィルムを製造した。導電性樹脂フィルムは、シリコーンゴム製の一対の圧着ロール、90℃の金属ロール、及びこれらの下流に位置する3インチの巻取管に順次巻架し、圧着ロールと金属ロールとに挟持させた。圧着ロールと巻取管との間には、導電性樹脂フィルムを切断するスリット刃を昇降可能に配置し、巻取管とスリット刃との間には、導電性樹脂フィルムに圧接してテンションを作用させるテンションロールを回転可能に配置した。
【0124】
導電性樹脂フィルムを製造したら、導電性樹脂フィルムのフィルム厚、比重、導電性と耐薬品性とをそれぞれ評価して表3にまとめた。この際、耐薬品性試験後の厚み方向の抵抗値については、耐薬品性が規格範囲外なので、測定しなかった。
【0125】
〔比較例4〕
先ず、導電性樹脂組成物を調製するため、ポリエーテルエーテルケトンとしてKetaSpirePEEK KT−820P〔ソルベイスペシャルティポリマーズ社製:商品名〕)を選択し、このポリエーテルエーテルケトンを冷凍粉砕法により粉砕した。粉砕したポリエーテルエーテルケトンの粒度分布をエアジェットシーブ標準ふるいにより測定したところ、150メッシュパスが98%であった。
【0126】
ポリエーテルエーテルケトンを粉砕したら、このポリエーテルエーテルケトンと、炭素系導電性材料として多層カーボンナノチューブ〔NanocyS.A.社製、商品名:NANOCYL NC7000〕とを表1に示す組成重量比率で樹脂容器に投入し、かつ樹脂容器にφ10mmのジルコニアボールを併せて投入し、樹脂容器に蓋を取り付けてタンブラーミキサーに装着するとともに、このタンブラーミキサーを23℃、1時間の条件で回転させてポリエーテルエーテルケトン、多層カーボンナノチューブ、ジルコニアボールを分散混合させ、その後、ジルコニアボールを取り出して攪拌混合物を調製した。
【0127】
攪拌混合物を調製したら、この攪拌混合物を真空ポンプ付きの高速二軸押出成形機に供給して減圧下で溶融混練し、高速二軸押出成形機先端部のダイスから棒形に押し出して水冷後カットし、120℃に加熱した排気付き熱風オーブン中に5時間静置するとともに、静置後に室温まで冷却し、長さ3〜4mm、直径1〜3mmのペレット形の導電性樹脂組成物を調製した。
【0128】
攪拌混合物は、シリンダー温度375〜395℃、アダプター温度395℃、ダイス温度395℃の条件下で溶融混練した。導電性樹脂組成物を調製したら、この導電性樹脂組成物のメルトマスフローレートを温度316℃、荷重10kgの条件でJIS K7210の規格に準拠して測定し、5.9g/10分の測定値を得た。
【0129】
次いで、導電性樹脂組成物を150℃に加熱した熱風オーブン中で24時間予備加熱し、この導電性樹脂組成物を幅400mmのTダイ付きのφ40mmの単軸押出成形機に投入して溶融混練し、溶融混練した組成物を単軸押出成形機のTダイから連続的に押し出して導電性樹脂フィルムを帯形に成形した。単軸押出成形機に導電性樹脂組成物を投入する際には、窒素ガス520L/分を供給した。
【0130】
単軸押出成形機は、L/D=25、圧縮比:2.5、スクリュー:フルフライトスクリュータイプとした。また、単軸押出成形機の温度は370〜390℃、Tダイの温度は390℃、単軸押出成形機とTダイとを連結する連結管の温度は390℃に調整した。
【0131】
導電性樹脂フィルムを成形したら、連続した導電性樹脂フィルムの両側部をスリット刃で裁断して巻取管に順次巻き取ることにより、長さ300m、幅250mmの導電性樹脂フィルムを製造した。導電性樹脂フィルムは、シリコーンゴム製の一対の圧着ロール、150℃の金属ロール、及びこれらの下流に位置する3インチの巻取管に順次巻架し、圧着ロールと金属ロールとに挟持させた。圧着ロールと巻取管との間には、導電性樹脂フィルムを切断するスリット刃を昇降可能に配置し、巻取管とスリット刃との間には、導電性樹脂フィルムに圧接してテンションを作用させるテンションロールを回転可能に配置した。
【0132】
導電性樹脂フィルムを製造したら、導電性樹脂フィルムのフィルム厚、比重、導電性と耐薬品性とをそれぞれ評価し、表3にまとめた。耐薬品性試験後の厚み方向の抵抗値については、耐薬品性が規格範囲外であったので、測定しなかった。
【0133】
【表3】
【0134】
実施例の場合には、ポリメチルペンテン80〜97重量%と導電性材料3〜20重量%とを溶融混練して導電性樹脂組成物を調製し、この導電性樹脂組成物のメルトマスフローレートを0.4〜45.0g/10分以下とし、係る導電性樹脂組成物を用いた溶融押出成形法により、導電性樹脂フィルムを100μm以下の厚さに形成してその比重を0.93以下としたので、比較例と異なり、良好な導電性や耐薬品性を示す導電性樹脂フィルムを得ることができた。