(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
メモリカード等のカードには、カードコネクタのコンタクトが接触して電気的な接続を担うパッドが備えられている。パッドとコンタクトとの間の電気的な接続を確実に行なうためには、コンタクトは適度な接触圧を保ってパッドに接触する必要がある。
【0005】
このためコンタクトは、カードコネクタの、カードを受容する受容空間に挿入されてきたカードに押されて弾性変形してカードと適度な圧力で接触するように、その受容空間内にカードコネクタの厚み方向に食い込んだ形状を有する。
【0006】
上掲の特許文献1の場合、イジェクトアームが、その回動範囲内において、受容空間内に食み出しているコンタクトには接触しないように、イジェクトアームをコンタクトの受容空間への食み出し部分とは干渉しない高さ位置に配置する必要がある。
【0007】
ここで、近年、メモリカード等のカードが益々小型化、薄型化されてきている。それに伴って、そのカードが挿抜されるカードコネクタも小型化、低背化が要求されている。ところが、上記のイジェクトアームを、コンタクトの、受容空間に食み出た部分を避ける高さ位置に配置すると、低背化の要請に反することになる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、低背化の要請に合致したイジェクト構造を備えたカードコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明のカードコネクタは、
電気的な接続を担うパッドを有するカードが挿入されてそのカードを受容するハウジングと、
ハウジングに受容された状態のカードよりもそのカードの挿入方向奥側においてカードの一方の側縁から他方の側縁に跨るように延び途中が軸支されたカムバーと、
ハウジングに受容された状態のカードの上記一方の側縁に沿って挿入方向に延び、押込操作により挿入方向奥側にスライドしてカムバーの一方の端部を挿入方向奥側に押すプッシュバーと、
挿入方向についてカムバーの他方の端部とハウジングに挿入されてきたカードとに挟まれた位置に配置されハウジングに挿入されてきたカードに押され挿入方向奥側にスライドしてカムバーの他方の端部を挿入方向奥側に押し、プッシュバーによりカムバーの一方の端部が挿入方向奥側に押されたときにカムバーの他方の端部により挿入方向手前側に押され挿入方向手前側にスライドしてハウジングに受容されているカードを挿入方向手前側に押し出すスライダとを備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明のカードコネクタは、いわば、前掲の特許文献1のイジェクトアームを、そのイジェクトアームと同様に軸支されたカムバーと、そのカムバーに押されてスライドするスライダとの2部品に分けた構成としたものである。本発明のカードコネクタは、この2部品に分けた構成としたことにより、カムバーを、空間に食み出たコンタクトと同じ高さ位置であって、しかもその回動範囲内においてコンタクトとの干渉を避けた位置に配置することを可能としている。これによりカードコネクタの低背化が実現する。
【0011】
ここで、本発明のカードコネクタにおいて、上記カムバーの上記他方の端部が、スライダに向かって屈曲した形状を有することが好ましい。
【0012】
スライダをこの屈折した形状とすることにより、この屈折した形状を設けない場合と比べ、コンタクトに一層近づいた位置にカムバーを配置することができるので、カードコネクタの小型化に寄与する。
【0013】
また、本発明のカードコネクタにおいて、上記カムバーは、上記他方の端縁よりも上記一方の端縁に寄った位置で軸支されているものであってもよい。
【0014】
本発明は、カムバーでスライダを押し、そのスライダでカードを押す構造を有する。これにより、軸支位置を上記の一方の端部側に寄せ、他方の端部を大きく回動させる余裕が生まれている。軸支位置を上記の一方の端部側に寄せることにより、短い操作ストロークでカードを排出方向に十分なスライド距離にわたってスライドさせることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明した通り、本発明によれば、低背化に適したイジェクト機構を備えたカードコネクタが実現する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態としてのカードコネクタの外観斜視図である。
【0019】
また、
図2は、
図1に外観を示すカードコネクタからシェルを外してハウジング組立体の上面側を示した斜視図である。
【0020】
これら
図1,
図2には、カードコネクタのほか、そのカードコネクタ内に受容されているカードを取り出すための操作子であるピン40も示されている。
【0021】
さらに
図3は、
図2に斜視図を示すハウジング組立体の平面図である。
【0022】
このカードコネクタ10は、
図1に示すように、ハウジング組立体20と金属製のシェル30とを有する。それらハウジング組立体20とシェル30との間にはメモリカード50(
図4〜
図8参照)が挿し込まれるカード挿入口11が設けられている。また、シェル30には切欠き31が形成されている。その切欠き31から、ハウジング組立体20に備えられているプッシュバー23が覗いている。このプッシュバー23は、ピン40に押されてカードコネクタ10の奥側にスライドする部材である。
【0023】
ハウジング組立体20は、
図2,
図3に示すように、ハウジング21と、そのハウジング21に対しインサート成形された複数のコンタクト22を有する。
【0024】
コンタクト22は、回路基板(図示せず)に接続される基板接続部22aを有する。これらのコンタクト22は、挿入されたメモリカード50(
図4〜
図8参照)に接触して回路基板からメモリカードへの電源供給やメモリカードへのアクセスの中継を担っている。このためメモリカードには、各コンタクト22にそれぞれ対応する各位置に、電気的な接続を担うパッド(図示せず)が設けられている。
【0025】
これらのコンタクト22は、ハウジング21の、メモリカード50(
図4〜
図8参照)を受容する受容空間に下方から上方に向かって食み出した(突出した)形状を有する。これらのコンタクト22は、その受容空間にメモリカード50が挿入されるとメモリカード50(
図4〜
図7参照)に押されて下方に弾性的に変形し、そのメモリカード50に所定の接触圧で接触する。
【0026】
また、
図2,
図3に示すように、このハウジング組立体20にはさらに、プッシュバー23、カムバー24、およびスライダ25が備えられている。
【0027】
プッシュバー23は、ハウジング21に収容された状態のメモリカード50の一方の側縁に沿って、メモリカード50の挿入方向に延びた部材である。このプッシュバー23は、挿入方向(矢印A方向)および排出方向(矢印B方向)にスライド自在であって、
図2に示すコイルバネ26により排出方向(矢印B方向)に付勢されている。尚、
図3および後述する
図4〜
図8の各図においては、コイルバネ26は図示が省略されている。
【0028】
このプッシュバー23は、ピン40による押込操作を受けると挿入方向(矢印A方向)奥側にスライドしてカムバー24の一方の端部241を挿入方向(矢印A方向)奥側に押す。そして、このプッシュバー23は、カムバー24からピン40が離れると、コイルバネ26の付勢力により、排出方向(矢印B方向)にスライドして
図2,
図3に示す初期位置に戻る。
【0029】
また、カムバー24は、ハウジング21に受容されたメモリカード50よりもそのメモリカード50の挿入方向(矢印A方向)奥側において、メモリカード50の一方の側縁から他方の側縁に跨るように延びる部材である。このカムバー24は、その延びる途中の、一方の端部241寄りの位置でハウジング21の回動軸212に軸支される。プッシュバー23がピン40に押されて挿入方向(矢印A方向)奥側にスライドしてカムバー24の一方の端部241を押すと、このカムバー24は回動軸212に中心に回動してカムバー24の他方の端部242が排出方向(矢印B方向)に移動する。このカムバー24の他方の端部242は、スライダ25に向かって屈曲した形状を有し、その他方の端部242が排出方向(矢印B方向)に移動すると、その他方の端部242によってスライダ25が排出方向(矢印B方向)に押されてスライドする。
【0030】
スライダ25は、カムバー24のスライダ25側の端部242と挿入されてきたメモリカード50とに挟まれた位置に配置されている。このスライダ25は、ハウジング21が設けられた案内溝211に案内されて挿入方向(矢印A方向)および排出方向(矢印B方向)にスライド自在となっている。このスライダ25は、メモリカード50が挿入されるとそのメモリカード50に押されて
図2,
図3に示す位置にスライドする。また、このスライダ25は、カムバー24に押されると排出方向(矢印B方向)にスライドしメモリカード50を押し出す。尚、
図2,
図3には、カムバー24およびスライダ25は、メモリカード50が挿入されていない状態であるにも拘らず、メモリカード50が挿入されたときの姿勢や位置に描かれている。カムバー24、およびスライダ50は、メモリカード50が挿入されていないときは、回動姿勢やスライド位置は不定であってよい。あるいは、バネ付勢やハウジング21との間の摩擦力等により、メモリカード50を取り出したときには特定の姿勢や位置にとどまるように構成してもよい。
【0031】
ハウジング21の回動軸212(すなわち、カムバー24の回転軸)は、プッシュバー23が配置された側の一方の端部241寄りに設けられている。このため、プッシュバー23の短かいスライド長、すなわちピン40による短かい操作ストロークでスライダ25を大きくスライドさせることができる。これにより、メモリカード50を排出方向(矢印B方向)に大きく移動させることができる。
【0032】
これらカムバー24やスライダ25は、このカードコネクタ10の厚み方向に関しては、メモリカード50を受容する受容空間に食み出したコンタクト22と干渉し得る高さ位置に配置されている。
【0033】
また、このハウジング組立体20には、メモリカード50が受容されていることを検出する第1のスイッチ27と、受容されているメモリカード50の排出操作の開始を検出する第2のスイッチ28が備えられている。
【0034】
第1のスイッチ27は、共にハウジング21に固定された片持ち梁状の第1のスイッチコンタクト271および第2のスイッチコンタクト272を有する。メモリカード50が挿入されていない状態では、
図2,
図3に示すように、第1のスイッチコンタクト271と第2のスイッチコンタクト272が接触している。メモリカード50が挿入されてきた最終段階において、
図4に示すように、第2のスイッチコンタクト272がメモリカード50に押されて弾性変形して第1のスイッチコンタクト271(図示せず)から離れる。これにより、メモリカード50の受容が検出される。
【0035】
また、第2のスイッチ28は、折れ曲りながら互いにほぼ平行に延びる2本の片持ち梁形状の第1および第2のスイッチコンタクト281,282を有する。
【0036】
プッシュバー23は、スイッチ操作部231を有する。このプッシュバー23がピン40に押されて挿入方向(矢印A方向)にスライドを開始した初期の段階で、スイッチ操作部231が第1のスイッチコンタクト281を押して第2のスイッチコンタクト282に接触させる。これにより、受容されているメモリカード50の排出操作が開始されたことが検出される。この第2のスイッチ28は、排出操作の開始を検出して、メモリカード50への電源供給やアクセスを停止するためのスイッチである。
【0037】
次に、このカードコネクタ10に受容されているメモリカード50の排出操作の際の動作を順を追って説明する。
【0038】
図4は、メモリカードが正規の位置に受容されている状態のハウジング組立体の平面図である。
【0039】
この状態では、第1のスイッチ27を構成する第1および第2のスイッチコンタクト271,272は互いに離れており、メモリカード50の受容が検出されている。また、この状態では第2のスイッチ28を構成する第1および第2のスイッチコンタクト281,282が互いに離れている。これは、メモリカード50の排出操作が未だ開始されていないことを示している。さらにカムバー24は、スライダ25側の端部242がスライダ25により挿入方向(矢印A方向)に押された状態にある。このため、カムバー24のプッシュバー23側の端部241は、回動可能な範囲の中で排出方向(矢印B方向)に移動した状態にある。さらに、この状態では、プッシュバー23はカムバー24から離れた状態にある。
【0040】
図5は、メモリカードの排出操作が開始された状態のハウジング組立体の平面図である。
【0041】
この
図5では、プッシュバー23は、ピン40(
図2参照)に押されて挿入方向(矢印A方向)に少しだけスライドしている。この状態でプッシュバー23のスイッチ操作部231が第2のスイッチ28の第1のスイッチコンタクト281を押すので、第1のスイッチコンタクト281は第2のスイッチコンタクト282に接触する。これにより、受容されているメモリカード50の排出操作の開始が検出される。ただしこの状態ではプッシュバー23は未だカムバー24から離れており、メモリカード50は未だ受容位置にそのままとどまっている。
【0042】
図6は、
図5に示す状態と比べメモリカードの排出操作が進んだ状態を示したハウジング組立体の平面図である。
【0043】
この
図6には、カムバー24がプッシュバー23により少し押されて回動し、カムバー24がスライダ25を押してスライダ25がメモリカード50を排出方向(矢印B方向)に少し押し出した状態が示されている。
【0044】
第1のスイッチ27を構成する第2のスイッチコンタクト272は、メモリカード50による押圧が解除されたことにより第1のスイッチコンタクト271に接触している。
【0045】
図7は、プッシュバーが最終位置まで押し込まれた状態のハウジング組立体の平面図である。
【0046】
プッシュバー23がこの
図7に示す最終位置まで押し込まれると、カムバー24は、この
図7に示すように大きく回動しスライダ25を排出方向(矢印B方向)に最大限にスライドさせる。これにより、スライダ25は、受容されていたメモリカード50をこの
図7に示す位置まで押し出す。
【0047】
図8は、プッシュバーが最終位置まで押し込まれた後であって、さらにピン(
図1,
図2参照)によるプッシュバーの押込操作を止めた後の状態を示したハウジング組立体の平面図である。
【0048】
プッシュバー23の押込操作が終了すると、プッシュバー23は、コイルバネ26(ここでは図示省略。
図2参照)に押されて、排出方向(矢印B方向)に、この
図8、および
図2,
図3に示す初期位置までスライドする。カムバー24やスライダ25は、このまま何らの力も作用しないときは、この
図8に示す姿勢や位置にとどまることになる。
図8に示す位置まで排出方向(矢印B方向)にスライドしたメモリカード50は、指やピンセット等により、このカードコネクタから取り出される。
【0049】
本実施形態では、上記の通り、スライダ25を備えてカムバー24で押し出すように構成している。これにより、カムバー24を受容空間に食い込んだコンタクト22と同じ高さ位置に配置し、そのコンタクト22と干渉しない位置までの回動にとどめながら、メモリカード50を十分に押し出すことに成功している。本実施形態ではさらに、カムバー24のスライダ25側の端部242をスライダ25側に屈曲させている。このため、その回動領域をさらに狭めることができる。そして、その分、プッシュバー23側の端部に寄った位置に回動軸212を配置し、短かい操作ストロークでメモリカード50を大きく押し出すことに成功している。
【0050】
尚、ここでは、プッシュバー23をピン40で押し込むタイプのカードコネクタについて説明した。ただし、本発明は、プッシュバー23をハウジング21から突出させ、そのプッシュバー23を指で押し込むタイプのカードコネクタにも適用することができる。