(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6035206
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】レーザ加工ヘッド装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20161121BHJP
【FI】
B23K26/00 Q
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-120354(P2013-120354)
(22)【出願日】2013年6月7日
(65)【公開番号】特開2014-237149(P2014-237149A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2016年4月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 宏
(72)【発明者】
【氏名】石徹白 藤也
(72)【発明者】
【氏名】西山 治巳
(72)【発明者】
【氏名】足立 正樹
【審査官】
本庄 亮太郎
(56)【参考文献】
【文献】
実開平5−65490(JP,U)
【文献】
特開平7−178546(JP,A)
【文献】
特表2013−504428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対してX、Y、Z軸方向へ相対的に移動可能なキャリッジにレーザ加工ヘッドを着脱可能に備えたレーザ加工ヘッド装置であって、前記キャリッジに備えたベース部材の下面に、レーザ加工ヘッドにおける加工ヘッド本体の上面を当接して備え、前記ベース部材の複数箇所に備えた上下方向の貫通穴を上下動自在に貫通した複数の支持部材を前記加工ヘッド本体の上面に備え、当該支持部材よりも小径のシャー部材を前記支持部材の上部に備え、このシャー部材の上部と前記ベース部材との間に、弾性部材を備えていることを特徴とするレーザ加工ヘッド装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工ヘッド装置において、前記支持部材は貫通孔を備えた構成であり、前記シャー部材は、上記貫通孔に上部から着脱可能に螺合してあることを特徴とするレーザ加工ヘッド装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のレーザ加工ヘッド装置において、前記シャー部材の上部に備えたフランジ部材と前記支持部材との間に、前記シャー部材を囲繞したパイプ部材を備えていることを特徴とするレーザ加工ヘッド装置。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載のレーザ加工ヘッド装置において、前記ベース部材の下面中央に備えた係合凹部又は凸部に係合可能な凸部又は凹部を前記加工ヘッド本体の上面中央に備えていることを特徴とするレーザ加工ヘッド装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のレーザ加工ヘッド装置において、前記シャー部材はねじ部材であることを特徴とするレーザ加工ヘッド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置におけるレーザ加工ヘッド装置に係り、さらに詳細には、レーザ加工ヘッドが障害物に衝突したときにシャー部材が破損して衝撃を吸収する形式のレーザ加工ヘッド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ加工装置においては、加工パレット上に板状のワークを水平に支持した状態において、当該ワークの切断加工が行われている。上記加工パレットは、ワークを支持する複数の剣山、スキッドを備えた構成が一般的である。前記加工パレット上のワークの切断加工を行うと、ワークから切断分離された切断片が前記剣山の間に落下し傾斜することがある。この場合、前記切断片の傾斜上端がワークの上面から突出した状態にあると、レーザ加工ヘッド装置におけるレーザ加工ヘッドの下部が上記切断片に衝突し損傷することがある。
【0003】
したがって、レーザ加工ヘッドが切断片に当接したときに、レーザ加工ヘッドの保護を図ることが講じられている(例えば特許文献1、2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−351273号公報
【特許文献2】実開平5−65490号公報
【特許文献3】特開平7−178546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1〜3に記載の各構成は、レーザ加工ヘッドが障害物に衝突したときに、レーザ加工ヘッドを支持したスプリングの付勢力や磁石の吸着力に抗してレーザ加工ヘッドが傾斜されることにより、衝突時の衝撃を緩和するものである。そして、センサによってレーザ加工ヘッドの傾斜が検知されると、レーザ加工ヘッドの移動を停止するものである。その後のレーザ加工ヘッドの元の状態への復帰は、前記スプリングの付勢力や磁石の吸着力によって行われるものである。
【0006】
したがって、レーザ加工ヘッドが衝突した障害物を除去することにより、レーザ加工ヘッドは自然に元の状態に復帰されることとなる。この構成においては、障害物を除去するために、レーザ加工ヘッドを障害物から相対的に離反すると、レーザ加工ヘッドは元の状態に復帰されることになる。よって、上述のごとき構成においては、レーザ加工ヘッドの加減速時にも加工ヘッドが揺動を生じないように保持し、かつレーザ加工ヘッドが障害物に衝突したときには容易に揺動(傾斜)するように、前記スプリングの付勢力等を適正値に調節することが難しい、という問題がある。
【0007】
ところで、前記特許文献2における
図2及び対応本文には、レーザ加工ヘッドが障害物に当接したときに、シャーピンが破損してレーザ加工ヘッドを保護する構成が記載されている。この構成によれば、シャーピンにおける括れ部の径を所望径に設定することにより、所定以上の衝撃力がレーザ加工ヘッドに作用したときに、前記シャーピンが破損する構成とすることができる。すなわち、シャーピンを使用した構成においては、レーザ加工ヘッドに所定以上の衝撃力が作用したときにシャーピンが破損する構成とすることが容易である。
【0008】
上記構成において、所定の衝撃力が作用したときに破損するシャーピンを予め複数用意しておく必要がある。場合によっては前記シャーピンを予め作成しなければならず、構成部品が高価になるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前述のごとき問題に鑑みてなされたもので、ワークに対してX、Y、Z軸方向へ相対的に移動可能なキャリッジにレーザ加工ヘッドを着脱可能に備えたレーザ加工ヘッド装置であって、前記キャリッジに備えたベース部材の下面に、レーザ加工ヘッドにおける加工ヘッド本体の上面を当接して備え、前記ベース部材の複数箇所に備えた上下方向の貫通穴を上下動自在に貫通した複数の支持部材を前記加工ヘッド本体の上面に備え、当該支持部材よりも小径のシャー部材を前記支持部材の上部に備え、このシャー部材の上部と前記ベース部材との間に、弾性部材を備えていることを特徴とするものである。
【0010】
また、前記レーザ加工ヘッド装置において、前記支持部材は貫通孔を備えた構成であり、前記シャー部材は、上記貫通孔に上部から着脱可能に螺合してあることを特徴とするものである。
【0011】
また、前記レーザ加工ヘッド装置において、前記シャー部材の上部に備えたフランジ部材と前記支持部材との間に、前記シャー部材を囲繞したパイプ部材を備えていることを特徴とするものである。
【0012】
また、前記レーザ加工ヘッド装置において、前記ベース部材の下面中央に備えた係合凹部又は凸部に係合可能な凸部又は凹部を前記加工ヘッド本体の上面中央に備えていることを特徴とするものである。
【0013】
また、前記レーザ加工ヘッド装置において、前記シャー部材はねじ部材であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、レーザ加工ヘッドにおける加工ヘッド本体の上面に備えた支持部材の上部に、当該支持部材よりも小径のシャー部材を備え、このシャー部材の上部と、前記支持部材が貫通したベース部材との間に弾性部材を備えた構成であるから、レーザ加工ヘッドの下部が障害物に衝突したときには前記弾性部材が変形されると共に、前記支持部材とシャー部材との接続部に応力が集中して、前記シャー部材が折損し易いものである。
【0015】
したがって、所定値以上の衝撃力がレーザ加工ヘッドに作用したときに、シャー部材が破損するものであり、レーザ加工ヘッドの保護を確実に行い得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係るレーザ加工ヘッド装置を概念的、概略的に示す斜視説明図である。
【
図2】キャリッジに対する加工ヘッド本体の取付け構成を示す説明図である。
【
図3】加工ヘッド本体がワークに衝突し、シャー部材が破損する状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1を参照するに、本発明の実施形態に係るレーザ加工ヘッド装置1は、レーザ加工装置(図示省略)に装着して使用されるものであって、レーザ加工装置にX、Y、Z軸方向へ移動可能に備えられるキャリッジ3を備えている。前記キャリッジ3をワークに対してX、Y、Z軸方向へ相対的に移動する構成は、種々の構成があり、レーザ加工装置においてはよく知られた構成であるから、前記キャリッジ3を移動する構成についての詳細な説明は省略する。
【0018】
前記キャリッジ3にはベース部材5が一体的に備えられており、このベース部材5の下面には、レーザ加工ヘッド7における加工ヘッド本体9の上面が当接してある。より詳細には、前記ベース部材5の中央部には上下方向の貫通穴11が形成してあり、この貫通穴11には、前記加工ヘッド本体9に接続した保護チューブ部材13(
図2には図示省略)が貫通してある。上記保護チューブ部材13は、レーザ発振器(図示省略)から加工ヘッド本体9内に備えられた集光レンズ(図示省略)へ至るレーザ光の光路の一部を保護する作用をなすものである。
【0019】
前記ベース部材5の下面であって、前記貫通穴11の周囲には、円形状の係合凹部15が形成してある。そして、前記加工ヘッド本体9の上面には、前記係合凹部15に係合離脱自在な係合凸部17が形成してある。上記係合凹部15と係合凸部17との関係は相対的なものであるから、前記加工ヘッド本体9の上面に係合凹部15を形成し、前記ベース部材5の下面に係合凸部17を形成した構成であってもよいものである。
【0020】
前記ベース部材5の下面に前記加工ヘッド本体9の上面を当接し、前記係合凹部15と係合凸部17とを常に係合した状態に保持するために、前記貫通穴11の周囲には上下方向の複数の貫通穴19が周方向に等間隔に備えられている。そして、上記各貫通穴19を上下動自在に貫通した支持部材21の下端部が前記加工ヘッド本体9の上面に着脱可能に螺着してある。前記支持部材21は、前記加工ヘッド本体9の上面に対する着脱を容易に行い得るように、多角形状又は一部に工具係合用の平面部を備えた支柱に形成してある。そして、前記支持部材21の軸心部には上下方向の貫通孔23が形成してある。
【0021】
前記支持部材21における前記貫通孔23には、前記支持部材21よりも小径のシャー部材25の下端部が螺入してある。上記シャー部材25は、例えば市販の小ネジであり、容易に入手し得るものである。前記シャー部材25の上部に備えたスプリング座などのフランジ部材27と前記支持部材21の上面との間には、前記シャー部材25を囲繞したパイプ部材29が介在してある。そして、前記フランジ部材27と前記ベース部材5との間にはコイルスプリング等のごとき弾性部材31が弾装してある。
【0022】
前記構成により、レーザ加工ヘッド装置1において、加工ヘッド本体9は、上方向へ付勢された複数の弾性部材31によって支持され、加工ヘッド本体9における上面はベース部材5の下面に当接した状態にある。そして、前記ベース部材5の下面に形成した係合凹部15に、加工ヘッド本体9の上面に形成した係合凸部17が係合して、キャリッジ3に対してレーザ加工ヘッド7の位置決めが行われた状態にある。
【0023】
前記キャリッジ3によるレーザ加工ヘッド7の移動時に、加工ヘッド本体9の下部に備えたノズル等がワークW等の障害物に当接すると、
図3(B)に示すように、前記加工ヘッド本体9が垂直に対して傾斜されると共にシャー部材25が破断されることになる。上述のように、加工ヘッド本体9が傾斜されシャー部材25が破断されると、適宜のセンサからなる傾斜検出手段(図示省略)によって加工ヘッド本体9の傾斜、シャー部材25の破断が検出される。この検出によってキャリッジ3の移動が停止される。
【0024】
ところで、前記シャー部材25は支持部材21よりも小径であって、支持部材21に螺着してあるものであるから、前記支持部材21とシャー部材25の接合部は段差を有する構成であり、応力が集中し破損し易いものである。そして、前記シャー部材25は市販の小径ねじであるから、ねじの形成開始部分に応力が集中し破断し易いものである。したがって、所定の衝撃力が作用したときに破断し易いシャー部材25の入手が容易なものである。
【0025】
前述のごとくシャー部材25が破断したときには、新しいシャー部材25と交換し、かつ加工ヘッド本体9が衝突した障害物を除去した後に、レーザ加工ヘッド装置1によるワークWのレーザ切断加工が再開されるものである。ところで、破断したシャー部材25のねじ部分が支持部材21における貫通孔23内に螺合した状態にあるときには、加工ヘッド本体9から支持部材21を取り外し、貫通孔23の下端側から適宜の工具を挿入する。そして、当該工具の先端部を破断したシャー部材25におけるねじ部分の先端部に当接押圧して、緩める方向に回転することにより、摩擦力によって前記ねじ部分を回転することができ、前記ねじ部分を支持部材21から取り外すことができるものである。
【0026】
以上のごとき説明から理解されるように、シャー部材25は市販の小径ねじであるから、一定強度のシャー部材25の入手が容易である。また、前記構成より明らかなように、支持部材21とフランジ部材27との間にパイプ部材29が介在してあるので、キャリッジ3におけるベース部材5と前記フランジ部材27との間隔寸法を常にほぼ一定に保持できる。したがって、複数の弾性部材31の付勢力をほぼ一定に保持することができる。よって、ワークWに対する加工ヘッド本体9の衝突方向に拘わりなく常にほぼ一定の衝撃力に対応して、加工ヘッド本体9を傾斜可能なものである。
【符号の説明】
【0027】
1 レーザ加工ヘッド装置
3 キャリッジ
5 ベース部材
7 レーザ加工ヘッド
9 加工ヘッド本体
15 係合凹部
17 係合凸部
19 貫通穴
21 支持部材
23 貫通孔
25 シャー部材
27 フランジ部材(スプリング座)
29 パイプ部材
31 弾性部材