特許第6035235号(P6035235)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6035235
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】ポリマー三葉心臓弁プロテーゼ
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20161121BHJP
   A61M 29/02 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   A61F2/24
   A61M29/02
【請求項の数】39
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-505153(P2013-505153)
(86)(22)【出願日】2011年4月14日
(65)【公表番号】特表2013-524891(P2013-524891A)
(43)【公表日】2013年6月20日
(86)【国際出願番号】US2011032560
(87)【国際公開番号】WO2011130559
(87)【国際公開日】20111020
【審査請求日】2014年3月27日
(31)【優先権主張番号】12/761,931
(32)【優先日】2010年4月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510121444
【氏名又は名称】アビオメド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100114889
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】コーベット スコット シー.
【審査官】 胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05258023(US,A)
【文献】 特開平02−168961(JP,A)
【文献】 特表2002−537946(JP,A)
【文献】 特表2010−527745(JP,A)
【文献】 特表2005−515836(JP,A)
【文献】 特表2001−508681(JP,A)
【文献】 米国特許第05037434(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
A61M 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を有し、かつ該中心軸に沿って流入端から流出端まで延在する体液路を有する、弁本体と、
該本体の外側周囲に配置され、かつ軸方向に先端まで各々延在する少なくとも3つの屈曲性ステントポストを含む、屈曲性ステントであって、各ステントポストの先端が、ステントポストの残りの部分よりも大きな屈曲性を有し、ステントポストの残りの部分に接着された材料の細片を含む、屈曲性ステントと、
少なくとも3枚の、各ステントポストを覆いかつ該ステントから延在する材料の屈曲性弁葉であって、該弁葉の各々が、該ステントに沿ってステントポストのそれぞれの対の間に延在する連結湾曲部を規定する連結縁部を有し、かつ該弁葉の対が、少なくとも3つのステントポストの各々においてそれぞれの交連部を規定する、該弁葉と
を含む、ポリマー心臓弁であって、
該少なくとも3枚の弁葉が、
静止時の部分開口位置、
流入端から流出端への方向に沿う順行血流時の、中心軸から離れる方に偏った完全開口位置、および
流出端から流入端への方向に沿う逆行血流時の、中心軸に向かう方に偏った閉口位置
を規定し、かつ
閉口位置において、該屈曲性ステントポストの各々が、中心軸に向かって内側に屈曲する、
前記ポリマー心臓弁。
【請求項2】
閉口位置において、各屈曲性ステントが、弁葉の移行に対する該ステントへの歪み逃しとして機能する、請求項1記載のポリマー心臓弁。
【請求項3】
各弁葉が、自由縁部および腹部を含む、請求項2記載のポリマー心臓弁。
【請求項4】
それぞれの弁葉の各々において、自由縁部が、ステントポストのそれぞれの対の間の自由縁部湾曲部に沿って延在し;かつ
静止時の部分開口位置において、それぞれのステントポストの近位にある自由縁部湾曲部の一部分が、弁葉がステントポストの近位で角状部分を含むよう、軸方向に、弁本体の流出端に向かって延在する、
請求項3記載のポリマー心臓弁。
【請求項5】
各屈曲性ステントポストの先端が、該先端の近位にある弁葉の自由縁部を越えて延在する、請求項4記載のポリマー心臓弁。
【請求項6】
少なくとも3枚の弁葉が、順行血流に応じて対称に開口する、請求項3記載のポリマー心臓弁。
【請求項7】
開口位置において、各交連部を通過する血流速度が、弁の他の交連部を通過する血流速度と実質的に同じである、請求項3記載のポリマー心臓弁。
【請求項8】
弁葉を静止時の部分開口位置から順行血流時の開口位置へと移動させるのに必要とされるエネルギーが、静止時に閉口位置となるよう形成された同等の弁の弁葉を開口させるのに必要とされるエネルギーよりも小さい、請求項3記載のポリマー心臓弁。
【請求項9】
各屈曲性ステントポストの先端が、該先端の近位にある弁葉の自由縁部を越えて延在する、請求項3記載のポリマー心臓弁。
【請求項10】
各屈曲性ステントポストの先端が、弁葉の自由縁部を約1.5 mm越えて延在する、請求項9記載のポリマー心臓弁。
【請求項11】
各屈曲性弁葉が、生体適合性ポリマーから製造される、請求項1記載のポリマー心臓弁。
【請求項12】
生体適合性ポリマーが、シリコーンおよびポリウレタンからなる群より選択される、請求項11記載のポリマー心臓弁。
【請求項13】
弁葉の腹部が、弁葉の自由縁部の厚みプロファイルよりも小さい厚みプロファイルを有する、請求項3記載のポリマー心臓弁。
【請求項14】
静止時の部分開口位置において、交連部の開口が、それぞれの屈曲性ステントポストに最も近い位置で0.1 mmから0.6 mmの範囲である、請求項1記載のポリマー心臓弁。
【請求項15】
開口が、約0.25 mmである、請求項14記載のポリマー心臓弁。
【請求項16】
ステントが、生体適合性ポリマーから製造される、請求項1記載のポリマー心臓弁。
【請求項17】
生体適合性ポリマーが、シリコーンおよびポリウレタンからなる群より選択される、請求項16記載のポリマー心臓弁。
【請求項18】
各屈曲性ステントポストの先端が、生体適合性ポリマーから製造される、請求項1記載のポリマー心臓弁。
【請求項19】
生体適合性ポリマーが、ポリウレタンである、請求項18記載のポリマー心臓弁。
【請求項20】
流出端からみて屈曲性ステントポストより軸方向に遠位の位置で弁本体に結合された縫い付け用リングをさらに含むポリマー心臓弁であって、該縫い付け用リングが、弁を移植する際に縫合を行う場所を提供する、請求項1記載のポリマー心臓弁。
【請求項21】
縫い付け用リングが、弁本体の溝にスナップフィット式で取り付けられている、請求項1記載のポリマー心臓弁。
【請求項22】
閉口位置において、逆行血液が、それぞれの交連部の近位にある領域における、隣接する弁葉のそれぞれの対の各々の間の開口を通って流れて、該交連部の洗い流しを提供する、請求項1記載のポリマー心臓弁。
【請求項23】
中心軸を有し、かつ該中心軸に沿って流入端から流出端まで延在する体液路を有する、弁本体
を提供する工程;
軸方向に各々延在する少なくとも3つの屈曲性ステントポストを含む、屈曲性ステント
を本体の外側周囲に配置する工程;
それぞれのステントポスト上に屈曲性先端を形成するために少なくとも3つのステントポストの各ステントに屈曲性材料の細片を連結する工程であって、該屈曲性材料が、ステントポストの残りの部分よりも大きな屈曲性を有する材料を含む、工程;および
少なくとも3枚の、各ステントポストを覆いかつステントから延在する材料の屈曲性弁葉であって、該弁葉の各々が、ステントに沿ってステントポストのそれぞれの対の間に延在する連結湾曲部を規定する連結縁部を有し、かつ該弁葉の対が、少なくとも3つのステントポストの各々においてそれぞれの交連部を規定する、該弁葉
を形成する工程
を含む、ポリマー心臓弁の製造方法であって、
該少なくとも3枚の弁葉が、
静止時の部分開口位置、
流入端から流出端への方向に沿う順行血流時の、中心軸から離れる方に偏った完全開口位置、および
流出端から流入端への方向に沿う逆行血流時の、中心軸に向かう方に偏った閉口位置
を規定し、かつ
閉口位置において、該屈曲性ステントポストの各々が、中心軸に向かって内側に屈曲する、
前記方法。
【請求項24】
屈曲性材料を連結する工程が、1つまたは複数のポリマー材料細片をステントポストの各々に接着させることを含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
1つまたは複数のポリマー材料細片が、ポリウレタンを含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
少なくとも3枚の屈曲性弁葉を形成する工程が、
マンドレルアセンブリを形成するために弁本体およびステントをマンドレルに装着することと;
屈曲性材料を連結する工程の後に、弁葉を形成するためにマンドレルアセンブリをポリマー溶液中で浸漬被覆することと
を含む、請求項24記載の方法。
【請求項27】
所望の厚みプロファイルを有する弁葉を形成するためにマンドレルアセンブリに複数回のポリマー溶液の浸漬被覆を適用することを含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
各弁葉が、自由縁部および腹部を含む、請求項25記載の方法。
【請求項29】
弁葉の腹部が、弁葉の自由縁部の厚みプロファイルよりも小さい厚みプロファイルを有する、請求項28記載の方法。
【請求項30】
それぞれの弁葉の各々において、自由縁部が、ステントポストのそれぞれの対の間の自由縁部湾曲部に沿って延在し;かつ
静止時の部分開口位置において、それぞれのステントポストの近位にある自由縁部湾曲部の一部分が、弁葉がステントポストの近位で角状部分を含むよう、軸方向に、弁本体の流出端に向かって延在する、請求項28記載の方法。
【請求項31】
浸漬被覆が、互いに連結した弁葉を形成し、かつこれは、交連部を形成して弁葉を静止時に部分開口位置とするために弁葉を分離することをさらに含む、請求項26記載の方法。
【請求項32】
弁葉を分離することが、各弁葉における自由縁部を形成するために弁葉をレーザー切断することを含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
静止時の部分開口位置において、交連部の開口が、それぞれの屈曲性ステントポストに最も近い位置で0.1 mmから0.6 mmの範囲である、請求項31記載の方法。
【請求項34】
開口が、約0.25 mmである、請求項33記載の方法。
【請求項35】
閉口位置において、各屈曲性ステントが、弁葉の移行に対する該ステントへの歪み逃しとして機能する、請求項23記載の方法。
【請求項36】
弁葉を静止時の部分開口位置から順行血流時の開口位置へと移動させるのに必要とされるエネルギーが、静止時に閉口位置となるよう形成された同等の弁の弁葉を開口させるのに必要とされるエネルギーよりも小さい、請求項23記載の方法。
【請求項37】
ステント、少なくとも3枚の弁葉、および弁本体のうちの少なくとも1つが、生体適合性ポリマーから製造される、請求項23記載の方法。
【請求項38】
生体適合性ポリマーが、シリコーンおよびポリウレタンからなる群より選択される、請求項37記載の方法。
【請求項39】
中心軸を有し、かつ該中心軸に沿って流入端から流出端まで延在する体液路を有する、弁本体
を提供する工程;
軸方向に各々延在する少なくとも3つの屈曲性ステントポストを含む、屈曲性ステント
を本体の外側周囲に配置する工程;
それぞれのステントポスト上に屈曲性先端を形成するために少なくとも3つのステントポストの各ステントに屈曲性材料の細片を連結する工程であって、屈曲性材料が、ステントポストの残りの部分よりも大きな屈曲性を有する材料を含む、工程;および
少なくとも3枚の、各ステントポストを覆いかつステントから延在する材料の屈曲性弁葉であって、該弁葉の各々が、ステントに沿ってステントポストのそれぞれの対の間に延在する連結湾曲部を規定する連結縁部を有し、かつ該弁葉の対が、少なくとも3つのステントポストの各々においてそれぞれの交連部を規定する、該弁葉
を形成する工程;
を含む方法によって製造された、ポリマー心臓弁であって、
該少なくとも3枚の弁葉が、
静止時の部分開口位置、
流入端から流出端への方向に沿う順行血流時の、中心軸から離れる方に偏った完全開口位置、および
流出端から流入端への方向に沿う逆行血流時の、中心軸に向かう方に偏った閉口位置
を規定し、かつ
閉口位置において、該屈曲性ステントポストの各々が、中心軸に向かって内側に屈曲する、
前記ポリマー心臓弁。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願
この出願は、2010年4月16日出願の米国出願第12/761,931号の恩典を主張し、その内容全体は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
背景
プロテーゼ心臓弁は、損壊または病変した心臓弁を置き換えるのに使用されるものである。ヒト患者用のプロテーゼ心臓弁は、1950年代から実用化されている。現在、プロテーゼ心臓弁には、機械弁、生体弁(tissue valve)およびポリマー弁の3つの大分類が存在する。心臓弁プロテーゼは、病変または損壊した本来の弁が外科的に除去された後に、患者の心臓の環状開口部に移植される。弁は、被移植者の組織および弁の外側縁部を貫く縫合糸またはピンの使用を通じて開口部のアニュラスに固定され得る。あるいは、弁は、被移植者の組織を縫い付け用リングに縫合することによってアニュラスに固定され得る。心臓弁は、本質的に、拍動する心臓を通る血流のための一方向逆止弁として機能する。
【0003】
「機械弁」という用語は、少なくとも部分的に硬質の生体適合性材料、例えば熱分解炭素から製造された、本質的に生物学的成分を含まない弁オリフィスを有する単葉または二葉の心臓弁をさす。「バイオプロテーゼ弁」という用語は、少なくともいくつかの生物学的成分、例えば組織または組織成分、を有する二葉または三葉の心臓弁をさす。生体弁の生物学的成分はドナー動物(典型的にはウシまたはブタ)から得られ、弁は、生物学的材料のみを含むものまたは生物学的材料と共に人工的な支持体またはステントを含むもののいずれかであり得る。「ポリマー弁」という用語は、少なくとも弾性ポリマーの弁葉を含む、少なくともいくつかの弾性ポリマー成分を有する三葉または二葉の心臓弁をさす。
【0004】
三葉心臓弁プロテーゼは、典型的には、環状の弁本体およびそれに連結された屈曲性のある3枚の弁葉を含む。弁本体は、環状の基部およびアニュラスの周縁に配置される「ステント」と呼ばれる3枚の弁葉用の支持ポストを含む。弁本体の外周を囲むように結合された縫い付け用リングは、弁を移植する際に縫合を行う場所を提供する。弁葉は、連結湾曲部に沿って3つの成形されたポストに連結され、かつ、それらはまた各々、連結湾曲部から離れた側に、自由な連結されていない縁部も有する。2枚の隣接する弁葉はステントの支持ポストの1つで出会い、この場所は交連部と呼ばれ、弁葉の自由縁部と連結湾曲部の間の概ね湾曲している領域は、弁葉の腹部として知られている。3枚の弁葉の自由縁部は、概ね弁の軸上にある「三重点(triple point)」に集まるようになっている。
【0005】
血液が順方向に流れる場合、血流のエネルギーは3枚の弁葉をアニュラスの中心から離れる方に偏らせ、血液が通り抜けできるようにする。血液が逆方向に流れる場合、3枚の弁葉は接合領域で互いに咬み合い、弁本体のアニュラスを閉鎖し、血液の流れを妨げる。
【発明の概要】
【0006】
概要
上記の点から、既存のプロテーゼ心臓弁は、ヒト患者にとって理想的なものと言うことはできない。例えば、バイオプロテーゼ弁は、交換が必要になるという耐久性の問題を抱えており、機械弁は、一生涯にわたって抗凝固処理する必要がある。ポリマー弁は、バイオプロテーゼ弁および機械弁の両方の欠点を克服する可能性を有しているが、耐久性、順行流圧力損失、および能率の要件を満足するには至っていない。
【0007】
本発明者らは、複葉ポリマー心臓弁(例えば、三葉弁)が、順行流圧力損失を減少させる部分開口弁葉位置と共に提供され得ることを見出した。この弁は、軟質の屈曲性材料から製造された先端を持つポストを有する屈曲性ステントを特徴とするものである。ステントの屈曲性は、過剰な応力および歪みを経験せずに弁葉が適切に閉口し逆行血流を遮断することを可能にする。これらの特徴は、優れた耐久性、順行流圧力損失、および能率の特徴を有する弁を提供する上で相乗的に作用する。
【0008】
1つの局面では、中心軸を有し、かつ該中心軸に沿って流入端から流出端まで延在する体液路を有する、弁本体と、該本体の外側周囲に配置され、かつ軸方向に先端まで各々延在する少なくとも3つの屈曲性ステントポストを含む、屈曲性ステントと、該ステントから延在する少なくとも3枚の屈曲性弁葉であって、該弁葉の各々が、該ステントに沿ってステントポストのそれぞれの対の間に延在する連結湾曲部を規定する連結縁部を有し、かつ該弁葉の対が、少なくとも3つのステントポストの各々においてそれぞれの交連部を規定する、該弁葉とを含む、例示的なポリマー心臓弁が開示され、該少なくとも3枚の弁葉は、静止時の部分開口位置、流入端から流出端への方向に沿う順行血流時の、中心軸から離れる方に偏った完全開口位置、および流出端から流入端への方向に沿う逆行血流時の、中心軸に向かう方に偏った閉口位置を規定し、かつ閉口位置において、該屈曲性ステントポストの各々は、中心軸に向かって内側に屈曲する。
【0009】
いくつかの態様において、各ステントポストの先端は、ステントポストの残りの部分よりも大きな屈曲性を有する材料から形成される。
【0010】
いくつかの態様において、閉口位置において、各屈曲性ステントは、弁葉の移行に対する該ステントへの歪み逃しとして機能する。
【0011】
いくつかの態様において、各弁葉は、自由縁部および腹部を含む。
【0012】
いくつかの態様において、それぞれの弁葉の各々において、自由縁部は、ステントポストのそれぞれの対の間の自由縁部湾曲部に沿って延在し;かつ静止時の部分開口位置において、それぞれのステントポストの近位にある自由縁部湾曲部の一部分は、弁葉がステントポストの近位で角状部分を含むよう、軸方向に、弁本体の流出端に向かって延在する。
【0013】
いくつかの態様において、各屈曲性ステントポストの先端は、該先端の近位にある弁葉の自由縁部を越えて延在する。
【0014】
いくつかの態様において、少なくとも3枚の弁葉は、順行血流に応じて対称に開口する。
【0015】
いくつかの態様において、開口位置において、各交連部を通過する血流速度は、弁の他の交連部を通過する血流速度と実質的に同じである。
【0016】
いくつかの態様において、弁葉を静止時の部分開口位置から順行血流時の開口位置へと移動させるのに必要とされるエネルギーは、静止時に閉口位置となるよう形成された同等の弁の弁葉を開口させるのに必要とされるエネルギーよりも小さい。
【0017】
いくつかの態様において、各屈曲性ステントポストの先端は、該先端の近位にある弁葉の自由縁部を越えて延在する。
【0018】
いくつかの態様において、各屈曲性ステントポストの先端は、弁葉の自由縁部を約1.5 mm越えて延在する。
【0019】
いくつかの態様において、各屈曲性弁葉は、生体適合性ポリマーから製造される。
【0020】
いくつかの態様において、生体適合性ポリマーは、シリコーンおよびポリウレタンからなる群より選択される。
【0021】
いくつかの態様において、弁葉の腹部は、弁葉の自由縁部の厚みプロファイルよりも小さい厚みプロファイルを有する。
【0022】
いくつかの態様において、静止時の部分開口位置において、交連部の開口は、それぞれの屈曲性ステントポストに最も近い位置で0.1 mmから0.6 mmの範囲である。
【0023】
いくつかの態様において、開口は、約0.25 mmである。
【0024】
いくつかの態様において、ステントは、生体適合性ポリマーから製造される。
【0025】
いくつかの態様において、生体適合性ポリマーは、シリコーンおよびポリウレタンからなる群より選択される。
【0026】
いくつかの態様において、各屈曲性ステントポストの先端は、生体適合性ポリマーから製造される。
【0027】
いくつかの態様において、生体適合性ポリマーは、ポリウレタンである。
【0028】
いくつかの態様は、流出端からみて屈曲性ステントポストより軸方向に遠位の位置で弁本体に結合された縫い付け用リングを含み、この縫い付け用リングは、弁を移植する際に縫合を行う場所を提供する。
【0029】
いくつかの態様において、縫い付け用リングは、弁本体の溝にスナップフィット式で取り付けられている。
【0030】
いくつかの態様において、閉口位置において、逆行血液が、それぞれの交連部の近位にある領域における、隣接する弁葉のそれぞれの対の各々の間の開口を通って流れて、該交連部の洗い流しを提供する。
【0031】
別の局面では、ポリマー心臓弁の製造方法が開示され、該方法は、
中心軸を有し、かつ該中心軸に沿って流入端から流出端まで延在する体液路を有する、弁本体
を提供する工程;
軸方向に各々延在する少なくとも3つの屈曲性ステントポストを含む、屈曲性ステント
を本体の外側周囲に配置する工程;
それぞれのステントポスト上に屈曲性先端を形成するために少なくとも3つのステントポストの各ステントに屈曲性材料を連結する工程;および、
ステントから延在する少なくとも3枚の屈曲性弁葉であって、該弁葉の各々が、ステントに沿ってステントポストのそれぞれの対の間に延在する連結湾曲部を規定する連結縁部を有し、かつ該弁葉の対が、少なくとも3つのステントポストの各々においてそれぞれの交連部を規定する、該弁葉
を形成する工程
を含む。
【0032】
いくつかの態様において、少なくとも3枚の弁葉は、静止時の部分開口位置、流入端から流出端への方向に沿う順行血流時の、中心軸から離れる方に偏った完全開口位置、および流出端から流入端への方向に沿う逆行血流時の、中心軸に向かう方に偏った閉口位置を規定し、かつ閉口位置において、屈曲性ステントポストの各々は、中心軸に向かって内側に屈曲する。
【0033】
いくつかの態様において、屈曲性材料を連結する工程は、1つまたは複数のポリマー材料細片をステントポストの各々に接着させることを含む。
【0034】
いくつかの態様において、1つまたは複数のポリマー材料細片は、ポリウレタンを含む。
【0035】
いくつかの態様において、少なくとも3枚の屈曲性弁葉を形成する工程は、マンドレルアセンブリを形成するために弁本体およびステントをマンドレルに装着することと;屈曲性材料を連結する工程の後に、弁葉を形成するためにマンドレルアセンブリをポリマー溶液中で浸漬被覆することとを含む。
【0036】
いくつかの態様は、所望の厚みプロファイルを有する弁葉を形成するためにマンドレルアセンブリに複数回のポリマー溶液の浸漬被覆を適用することを含む。
【0037】
いくつかの態様において、各弁葉は、自由縁部および腹部を含む。
【0038】
いくつかの態様において、弁葉の腹部は、弁葉の自由縁部の厚みプロファイルよりも小さい厚みプロファイルを有する。
【0039】
いくつかの態様において、それぞれの弁葉の各々において、自由縁部は、ステントポストのそれぞれの対の間の自由縁部湾曲部に沿って延在し;かつ静止時の部分開口位置において、それぞれのステントポストの近位にある自由縁部湾曲部の一部分は、弁葉がステントポストの近位で角状部分を含むよう、軸方向に、弁本体の流出端に向かって延在する。
【0040】
いくつかの態様において、浸漬被覆は、互いに連結した弁葉を形成し、かつこれは、交連部を形成して弁葉を静止時に部分開口位置とするために弁葉を分離することをさらに含む。
【0041】
いくつかの態様において、弁葉を分離することは、各弁葉における自由縁部を形成するために弁葉をレーザー切断することを含む。
【0042】
いくつかの態様において、静止時の部分開口位置において、交連部の開口は、それぞれの屈曲性ステントポストに最も近い位置で0.1 mmから0.6 mmの範囲である。
【0043】
いくつかの態様において、開口は、約0.25 mmである。
【0044】
いくつかの態様において、各ステントポストの先端は、ステントポストの残りの部分よりも大きな屈曲性を有する材料から形成される。
【0045】
いくつかの態様において、閉口位置において、各屈曲性ステントは、弁葉の移行に対する該ステントへの歪み逃しとして機能する。
【0046】
いくつかの態様において、弁葉を静止時の部分開口位置から順行血流時の開口位置へと移動させるのに必要とされるエネルギーは、静止時に閉口位置となるよう形成された同等の弁の弁葉を開口させるのに必要とされるエネルギーよりも小さい。
【0047】
いくつかの態様において、ステント、少なくとも3枚の弁葉、および弁本体のうちの少なくとも1つは、生体適合性ポリマーから製造される。
【0048】
いくつかの態様において、生体適合性ポリマーは、シリコーンおよびポリウレタンからなる群より選択される。
【0049】
別の局面では、以下の工程を含む方法によって製造された、例示的なポリマー心臓弁が開示される:
中心軸を有し、かつ該中心軸に沿って流入端から流出端まで延在する体液路を有する、弁本体
を提供する工程;
軸方向に各々延在する少なくとも3つの屈曲性ステントポストを含む、屈曲性ステント
を本体の外側周囲に配置する工程;
それぞれのステントポスト上に屈曲性先端を形成するために少なくとも3つのステントポストの各ステントに屈曲性材料を連結する工程;および
ステントから延在する少なくとも3枚の屈曲性弁葉であって、該弁葉の各々が、ステントに沿ってステントポストのそれぞれの対の間に延在する連結湾曲部を規定する連結縁部を有し、かつ該弁葉の対が、少なくとも3つのステントポストの各々においてそれぞれの交連部を規定する、該弁葉
を形成する工程。
【0050】
いくつかの態様において、少なくとも3枚の弁葉は、静止時の部分開口位置、流入端から流出端への方向に沿う順行血流時の、中心軸から離れる方に偏った完全開口位置、および流出端から流入端への方向に沿う逆行血流時の、中心軸に向かう方に偏った閉口位置を規定し、かつ閉口位置において、屈曲性ステントポストの各々は、中心軸に向かって内側に屈曲する。
【0051】
様々な態様は、上記の任意の特徴を単独でまたは任意の適切な組み合わせで含み得る。
【0052】
本発明の態様は、少なくとも以下の、先行技術のプロテーゼ心臓弁を凌ぐ利点を提供する。第1に、屈曲性ステントは、初期状態で部分的に開口している弁葉が適切に閉口することを可能にし、かつ弁葉における応力集中を軽減し、それによって弁葉の裂傷による順行流圧力損失を減少させ、信頼性を向上させる。第2に、屈曲性ステントポストは、高い応力集中を伴わずに効率的に力を弁葉からステントへと移し、より高い信頼性を提供する。第3に、初期状態で部分的に開口している弁葉は、例えば「怠けものの弁葉(lazy leaflet)」(すなわち、弁の開口または閉口時に適切に移動しない弁葉)の出現を減らすかまたは無くし、それにより、血栓を生じる弁の傾向を軽減することによって、弁の運動性(kinematics)を改善する。
【0053】
これらの利点は、信頼性を向上させつつ、順行流圧力損失に関してより良い性能を発揮するより薄い弁葉の利用を可能にする。
[本発明1001]
中心軸を有し、かつ該中心軸に沿って流入端から流出端まで延在する体液路を有する、弁本体と、
該本体の外側周囲に配置され、かつ軸方向に先端まで各々延在する少なくとも3つの屈曲性ステントポストを含む、屈曲性ステントと、
該ステントから延在する少なくとも3枚の屈曲性弁葉であって、該弁葉の各々が、該ステントに沿ってステントポストのそれぞれの対の間に延在する連結湾曲部を規定する連結縁部を有し、かつ該弁葉の対が、少なくとも3つのステントポストの各々においてそれぞれの交連部を規定する、該弁葉と
を含む、ポリマー心臓弁であって、
該少なくとも3枚の弁葉が、
静止時の部分開口位置、
流入端から流出端への方向に沿う順行血流時の、中心軸から離れる方に偏った完全開口位置、および
流出端から流入端への方向に沿う逆行血流時の、中心軸に向かう方に偏った閉口位置
を規定し、かつ
閉口位置において、該屈曲性ステントポストの各々が、中心軸に向かって内側に屈曲する、
前記ポリマー心臓弁。
[本発明1002]
各ステントポストの先端が、ステントポストの残りの部分よりも大きな屈曲性を有する材料から形成される、本発明1001のポリマー心臓弁。
[本発明1003]
閉口位置において、各屈曲性ステントが、弁葉の移行に対する該ステントへの歪み逃しとして機能する、本発明1002のポリマー心臓弁。
[本発明1004]
各弁葉が、自由縁部および腹部を含む、本発明1003のポリマー心臓弁。
[本発明1005]
それぞれの弁葉の各々において、自由縁部が、ステントポストのそれぞれの対の間の自由縁部湾曲部に沿って延在し;かつ
静止時の部分開口位置において、それぞれのステントポストの近位にある自由縁部湾曲部の一部分が、弁葉がステントポストの近位で角状部分を含むよう、軸方向に、弁本体の流出端に向かって延在する、
本発明1004のポリマー心臓弁。
[本発明1006]
各屈曲性ステントポストの先端が、該先端の近位にある弁葉の自由縁部を越えて延在する、本発明1005のポリマー心臓弁。
[本発明1007]
少なくとも3枚の弁葉が、順行血流に応じて対称に開口する、本発明1004のポリマー心臓弁。
[本発明1008]
開口位置において、各交連部を通過する血流速度が、弁の他の交連部を通過する血流速度と実質的に同じである、本発明1004のポリマー心臓弁。
[本発明1009]
弁葉を静止時の部分開口位置から順行血流時の開口位置へと移動させるのに必要とされるエネルギーが、静止時に閉口位置となるよう形成された同等の弁の弁葉を開口させるのに必要とされるエネルギーよりも小さい、本発明1004のポリマー心臓弁。
[本発明1010]
各屈曲性ステントポストの先端が、該先端の近位にある弁葉の自由縁部を越えて延在する、本発明1004のポリマー心臓弁。
[本発明1011]
各屈曲性ステントポストの先端が、弁葉の自由縁部を約1.5 mm越えて延在する、本発明1010のポリマー心臓弁。
[本発明1012]
各屈曲性弁葉が、生体適合性ポリマーから製造される、本発明1001のポリマー心臓弁。
[本発明1013]
生体適合性ポリマーが、シリコーンおよびポリウレタンからなる群より選択される、本発明1012のポリマー心臓弁。
[本発明1014]
弁葉の腹部が、弁葉の自由縁部の厚みプロファイルよりも小さい厚みプロファイルを有する、本発明1004のポリマー心臓弁。
[本発明1015]
静止時の部分開口位置において、交連部の開口が、それぞれの屈曲性ステントポストに最も近い位置で0.1 mmから0.6 mmの範囲である、本発明1001のポリマー心臓弁。
[本発明1016]
開口が、約0.25 mmである、本発明1015のポリマー心臓弁。
[本発明1017]
ステントが、生体適合性ポリマーから製造される、本発明1001のポリマー心臓弁。
[本発明1018]
生体適合性ポリマーが、シリコーンおよびポリウレタンからなる群より選択される、本発明1017のポリマー心臓弁。
[本発明1019]
各屈曲性ステントポストの先端が、生体適合性ポリマーから製造される、本発明1002のポリマー心臓弁。
[本発明1020]
生体適合性ポリマーが、ポリウレタンである、本発明1019のポリマー心臓弁。
[本発明1021]
流出端からみて屈曲性ステントポストより軸方向に遠位の位置で弁本体に結合された縫い付け用リングをさらに含むポリマー心臓弁であって、該縫い付け用リングが、弁を移植する際に縫合を行う場所を提供する、本発明1001のポリマー心臓弁。
[本発明1022]
縫い付け用リングが、弁本体の溝にスナップフィット式で取り付けられている、本発明1001のポリマー心臓弁。
[本発明1023]
閉口位置において、逆行血液が、それぞれの交連部の近位にある領域における、隣接する弁葉のそれぞれの対の各々の間の開口を通って流れて、該交連部の洗い流しを提供する、本発明1001のポリマー心臓弁。
[本発明1024]
中心軸を有し、かつ該中心軸に沿って流入端から流出端まで延在する体液路を有する、弁本体
を提供する工程;
軸方向に各々延在する少なくとも3つの屈曲性ステントポストを含む、屈曲性ステント
を本体の外側周囲に配置する工程;
それぞれのステントポスト上に屈曲性先端を形成するために少なくとも3つのステントポストの各ステントに屈曲性材料を連結する工程;および
ステントから延在する少なくとも3枚の屈曲性弁葉であって、該弁葉の各々が、ステントに沿ってステントポストのそれぞれの対の間に延在する連結湾曲部を規定する連結縁部を有し、かつ該弁葉の対が、少なくとも3つのステントポストの各々においてそれぞれの交連部を規定する、該弁葉
を形成する工程
を含む、ポリマー心臓弁の製造方法であって、
該少なくとも3枚の弁葉が、
静止時の部分開口位置、
流入端から流出端への方向に沿う順行血流時の、中心軸から離れる方に偏った完全開口位置、および
流出端から流入端への方向に沿う逆行血流時の、中心軸に向かう方に偏った閉口位置
を規定し、かつ
閉口位置において、該屈曲性ステントポストの各々が、中心軸に向かって内側に屈曲する、
前記方法。
[本発明1025]
屈曲性材料を連結する工程が、1つまたは複数のポリマー材料細片をステントポストの各々に接着させることを含む、本発明1024の方法。
[本発明1026]
1つまたは複数のポリマー材料細片が、ポリウレタンを含む、本発明1025の方法。
[本発明1027]
少なくとも3枚の屈曲性弁葉を形成する工程が、
マンドレルアセンブリを形成するために弁本体およびステントをマンドレルに装着することと;
屈曲性材料を連結する工程の後に、弁葉を形成するためにマンドレルアセンブリをポリマー溶液中で浸漬被覆することと
を含む、本発明1025の方法。
[本発明1028]
所望の厚みプロファイルを有する弁葉を形成するためにマンドレルアセンブリに複数回のポリマー溶液の浸漬被覆を適用することを含む、本発明1027の方法。
[本発明1029]
各弁葉が、自由縁部および腹部を含む、本発明1026の方法。
[本発明1030]
弁葉の腹部が、弁葉の自由縁部の厚みプロファイルよりも小さい厚みプロファイルを有する、本発明1029の方法。
[本発明1031]
それぞれの弁葉の各々において、自由縁部が、ステントポストのそれぞれの対の間の自由縁部湾曲部に沿って延在し;かつ
静止時の部分開口位置において、それぞれのステントポストの近位にある自由縁部湾曲部の一部分が、弁葉がステントポストの近位で角状部分を含むよう、軸方向に、弁本体の流出端に向かって延在する、本発明1020の方法。
[本発明1032]
浸漬被覆が、互いに連結した弁葉を形成し、かつこれは、交連部を形成して弁葉を静止時に部分開口位置とするために弁葉を分離することをさらに含む、本発明1027の方法。
[本発明1033]
弁葉を分離することが、各弁葉における自由縁部を形成するために弁葉をレーザー切断することを含む、本発明1032の方法。
[本発明1034]
静止時の部分開口位置において、交連部の開口が、それぞれの屈曲性ステントポストに最も近い位置で0.1 mmから0.6 mmの範囲である、本発明1032の方法。
[本発明1035]
開口が、約0.25 mmである、本発明1034の方法。
[本発明1036]
各ステントポストの先端が、ステントポストの残りの部分よりも大きな屈曲性を有する材料から形成される、本発明1024の方法。
[本発明1037]
閉口位置において、各屈曲性ステントが、弁葉の移行に対する該ステントへの歪み逃しとして機能する、本発明1024の方法。
[本発明1038]
弁葉を静止時の部分開口位置から順行血流時の開口位置へと移動させるのに必要とされるエネルギーが、静止時に閉口位置となるよう形成された同等の弁の弁葉を開口させるのに必要とされるエネルギーよりも小さい、本発明1024の方法。
[本発明1039]
ステント、少なくとも3枚の弁葉、および弁本体のうちの少なくとも1つが、生体適合性ポリマーから製造される、本発明1024の方法。
[本発明1040]
生体適合性ポリマーが、シリコーンおよびポリウレタンからなる群より選択される、本発明1039の方法。
[本発明1041]
中心軸を有し、かつ該中心軸に沿って流入端から流出端まで延在する体液路を有する、弁本体
を提供する工程;
軸方向に各々延在する少なくとも3つの屈曲性ステントポストを含む、屈曲性ステント
を本体の外側周囲に配置する工程;
それぞれのステントポスト上に屈曲性先端を形成するために少なくとも3つのステントポストの各ステントに屈曲性材料を連結する工程;および
ステントから延在する少なくとも3枚の屈曲性弁葉であって、該弁葉の各々が、ステントに沿ってステントポストのそれぞれの対の間に延在する連結湾曲部を規定する連結縁部を有し、かつ該弁葉の対が、少なくとも3つのステントポストの各々においてそれぞれの交連部を規定する、該弁葉
を形成する工程;
を含む方法によって製造された、ポリマー心臓弁であって、
該少なくとも3枚の弁葉が、
静止時の部分開口位置、
流入端から流出端への方向に沿う順行血流時の、中心軸から離れる方に偏った完全開口位置、および
流出端から流入端への方向に沿う逆行血流時の、中心軸に向かう方に偏った閉口位置
を規定し、かつ
閉口位置において、該屈曲性ステントポストの各々が、中心軸に向かって内側に屈曲する、
前記ポリマー心臓弁。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】ポリマー心臓弁の1つの態様の画像である。
図1A図1のポリマー心臓弁の斜視図を示している。
図1B図1Aのポリマー心臓弁の断面図である。
図2】ステントを含むポリマー心臓弁の本体を示している。
図2A】ポリマー心臓弁の本体上の、縫い付け用カフ(sewing cuff)を受け入れるための溝の態様を示している。
図2B図2Aの溝に縫い付け用カフを固定するためのステンレス鋼リングの断面図である。
図3図3は、ポリマー心臓弁を製造するプロセスのフローチャートである。
図4図4は、ポリマー心臓弁が浸漬被覆用マンドレルに装着されている図である。
図5A】ポリマー心臓弁のステントポスト上での、屈曲性ステント先端の形成を説明するものである。ステントポストの側面図を示している。
図5B】ポリマー心臓弁のステントポスト上での、屈曲性ステント先端の形成を説明するものである。弁の中心軸の方を向いているステントポストの表面の正面図を示している。
図5C】ポリマー心臓弁のステントポスト上での、屈曲性ステント先端の形成を説明するものである。ステントポストの側面図を示している。
図5D】ポリマー心臓弁のステントポスト上での、屈曲性ステント先端の形成を説明するものである。弁の中心軸の方を向いているステントポストの表面の正面図を示している。
図5E】ポリマー心臓弁のステントポスト上での、屈曲性ステント先端の形成を説明するものである。ステントポストの側面図を示している。
図5F】ポリマー心臓弁のステントポスト上での、屈曲性ステント先端の形成を説明するものである。弁の中心軸の方を向いているステントポストの表面の正面図を示している。
図5G】ポリマー心臓弁のステントポスト上での、屈曲性ステント先端の形成を説明するものである。ステントポストの側面図を示している。
図5H】ポリマー心臓弁のステントポスト上での、屈曲性ステント先端の形成を説明するものである。弁の中心軸の方を向いているステントポストの表面の正面図を示している。
図6図6Aおよび6Bは、それぞれ、開口位置および閉口位置にあるポリマー弁の図を示している。
図7図7Aおよび7Bは、有限要素解析による応力プロットを示しており、それぞれ、図6Aおよび6Bに示される弁の位置に対応している。
図8図8は、ポリマー心臓弁における流量の関数としての順行圧力損失のプロットを、機械弁およびバイオプロテーゼ弁における同様のプロットと比較して示している。
図9図9は、ポリマー心臓弁の漏出率および閉鎖容積(closing volume)のプロットを、機械弁およびバイオプロテーゼ弁における同様のプロットと比較して示している。
【発明を実施するための形態】
【0055】
詳細な説明
全体として、本発明の技術は、弁の信頼性を向上させ順行流の圧力損失を減少させるポリマー心臓弁に関する。このポリマー心臓弁は、本体と、少なくとも3つの屈曲性ステントポストを含む屈曲性ステントと、少なくとも3枚の屈曲性弁葉とを含む。弁葉は、静止時に部分開口位置となるよう鋳造されており、そのため弁葉を完全に閉口させるために、ステントポストが弁本体の中心に向かう方に屈曲するまたは偏る必要がある。
【0056】
図1、1A、および1Bは、ポリマー心臓弁100の1つの態様を示している。この心臓弁100は、中心軸116を囲む位置にあり、かつ、流入端(図では底側)から流出端(図では上側)まで軸方向に延在する封鎖可能な液体の通り路を有する、環状、ほぼ円筒形の弾性の弁本体101を含む。弁100は、軸方向にステントポスト先端120まで各々延在する少なくとも3つの屈曲性ステントポスト112を有する屈曲性ステント110を含む。以下でより詳細に議論されているように、ステントポスト先端120は、ステントポスト112よりも大きな屈曲性を有する材料から製造され得る。弁100はまた、縫い付け用リング131(図1Aおよび1Bには示されていない)を含み得る。
【0057】
弁は、各々が自由縁部132および連結縁部133および腹部134を有する少なくとも3枚の屈曲性弁葉130を含む。連結縁部133は、ステントの内径に沿ってステントポスト112の対の間に延在する連結湾曲部を形成するよう、ステント110に連結されている。自由縁部132は、第1のステントポスト先端120から中心軸116に向かって延在しそして第2のステントポスト先端120に戻る自由縁部湾曲部を規定する。隣接する弁葉130の自由縁部132は、ステントポスト先端120の各々において交連部135を規定する。いくつかの態様において、自由縁部132は、示されているように、交連部135の領域で上向きに湾曲しており、そのため弁葉130は、各ステントポスト先端120を囲む領域において角状の形状を有している。
【0058】
使用時に、血液が順方向、すなわち図1Aに示される矢印Fの方向に流れる場合、血流の圧力により弁葉130は弁本体101の中心軸116から離れる方に偏る。この「開口」位置において、弁葉130は、血液が順方向に自由に流れることができるようにする大きな流動オリフィス(図示されず)を規定する。弁葉130が開口位置にあるため、弁100は液流に対して小さな抵抗しか与えない。血液が逆方向、すなわち図1Aに示される矢印Rの方向に流れる場合、血流の圧力によりステント120および弁葉130は中心軸116に向かう方に偏る。この「閉口」位置において、弁葉130は、それらの自由縁部132に沿って互いに咬み合い、弁100が逆流に対して封鎖されるのを助ける。
【0059】
示されているように、弁葉130は、静止時(すなわち、弁に対する順行または逆行の液圧が存在しないとき)に部分開口位置にあるよう鋳造されている。例えば、いくつかの態様において、屈曲性ステントポスト先端120のそれぞれに最も近い領域における交連部の静止時開口は、0.60 mmまたはそれ未満の範囲、例えば約0.25 mmである。
【0060】
例えば、静止時位置にある弁の開口面積(例えば、弁を通る液体の流れに供される開口断面積)は、弁葉130の非存在下での弁の開口面積の適切な割合のものであり得る。いくつかの態様において、部分開口静止時位置における開口面積は、その開口面積の5%を超える、10%、25%またはそれ以上、例えば、5〜10%、10〜20%、10〜30%の範囲または任意のその他の適切な範囲であり得る。
【0061】
この構成は、順行血流時の弁葉の開口に必要なエネルギーを、静止時に閉口位置となるよう形成された同等の弁の開口に必要なエネルギーよりも小さくする。部分開口静止位置となるよう形成された場合の弁100の相対的開口容易性は、順行流圧力損失を減少させる。
【0062】
さらに、部分開口静止位置という弁葉の幾何学形状は、順行流に応じた弁葉130の対称開口の実現を、その流れが(例えば、その心臓の解剖学的構造またはその他の要因により)均一に分布していない場合でさえも助けるのである。例えば、部分開口静止構成の弁葉130を提供することにより、弁は、隣接する弁葉130の1つまたは複数の対の自由縁部の互いに対する望ましくない接着を回避することができる。これにより、弁葉130の間の交連部135における遅い流速が防止される。
【0063】
さらに、この弁の構造は、「怠けものの弁葉」、すなわち、その意図されている開口位置と閉口位置の間を適切かつ完全には移動しない弁葉の出現を減らすかまたは防ぐことができる。
【0064】
遅い液流および/または非対称な流動パターンを回避することにより、順方向および逆方向の両方の血流による弁の適切な洗い流しが行われ、弁における望ましくない物質の蓄積が減少または排除される。これにより、悪影響、例えば血栓形成を、減少または排除すらすることができる。
【0065】
部分開口静止位置から閉口位置へと移行する際、ステントポスト112は、中心軸に向かって内側に屈曲し、弁葉130を適切に閉口させ、弁を逆流に対して封鎖する。この屈曲は、弁葉130における歪みを軽減し、裂傷の発生を減少または排除し、弁100の信頼性および耐久性を改善する点で有益である。さらに、いくつかの態様において、ステントポストの先端120は、ステントポスト120の残りの部分よりも屈曲性のある材料から形成されている。これにより、ポスト120の全体的な構造完全性を犠牲にせずに、交連部135付近の領域における屈曲性を増大させることができる。したがって、弁葉130における望ましくない応力集中を軽減または排除しつつ、力を弁葉130からステントポスト112へと先端120を通じて移すことができる。換言すると、屈曲性ステントポスト先端120は、弁葉130における応力集中を軽減しつつ、弁葉130の移行に対するステントポスト112への歪み逃しとして機能し、それによってポリマー弁100の信頼性を向上させている。ステントポスト120内では硬質材料から軟質材料へと移行するため、比較的短く低いプロファイルのポスト120が使用され得ることに注目されたい。
【0066】
図1Aおよび1Bに示されているように、各屈曲性ステントポスト先端120は、弁葉130の自由縁部132を越えて延在しており、そこで(すなわち、交連部135付近で)、弁葉はポスト112に連結している。いくつかの態様において、各屈曲性ステント先端120は、弁葉の自由縁部を1 mmから2 mm、例えば1.5 mm越えて延在している。いくつかの態様において、この屈曲性ステント先端の構成は、軟質の弁葉130の材料と硬質のステントポスト112の間の応力集中を軽減する働きをし、弁の信頼性を向上させている。
【0067】
図1Aおよび1Bに示されているように、弁葉130の自由縁部132の一部分は、半径方向に中心軸116に向かって延在し、実質的に直線である。上記の通り、1つの態様において、弁葉130の自由縁部132の一部分は、ステントポスト先端120の先端でわずかに上向きに湾曲している。1つの態様において、弁葉130の腹部134は、弁葉130の自由縁部132の厚みプロファイルよりも小さい厚みプロファイルを有する。自由縁部132の厚みプロファイルは、腹部134の厚みプロファイルよりも1から2.5倍大きい範囲であり得る。弁葉は、生体適合性ポリマー、例えばシリコーンおよび/またはポリウレタンから製造され得る。
【0068】
図2および2Aに示されているように、ステント110は、弁本体101の外径周囲に配置される。ステント110は、ポスト112を形成する少なくとも3つの突出部分を含み、この突出部分は半径方向(すなわち、中心軸116に対して垂直な方向)に延在する厚みを有している。本体101は、中心軸116に対して横軸の方向に、本体101の周囲を円周方向に延在する溝114を含む。溝114は、弁を移植する際に縫合を行う場所を提供する縫い付け用リングを受け入れるためのものである。1つの態様において、弁本体101は、生体適合性ポリマー、例えばシリコーン、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等から製造される。いくつかの態様において、弁本体101は、約10 mmから約30 mmの範囲、例えば21.4 mmの中心開口部および約0.5 mmから約2 mmの範囲、例えば1.25 mmの厚みを規定する。いくつかの態様において、弁本体から延在する突出部分は、弁本体101の基部から測って約5 mmから約20 mmの範囲、例えば11.0 mmの長さおよび約0.5から約2 mmの範囲、例えば1.25 mmの厚みを有する。いくつかの態様において、溝114は、約1 mmから約5 mmの範囲、例えば2.8 mmの高さおよび約0.1 mmから約1 mmの範囲、例えば0.5 mmの深さを有する。弁本体101およびステント110は、多様な構成の寸法にすることができることを理解されたい。
【0069】
図2Bは、縫い付けカフを図2Aの溝114に固定するためのステンレス鋼リング200の断面図である。1つの態様において、ステンレス鋼リング200は、1.0 mmの高さおよび0.64 mmの幅;ならびに24.4 mmの内径(I.D.)および25.8 mmの外径(O.D.)を有する。1つの態様において、縫い付け用リングは、およそ38.1 mmのMeadox(登録商標)管状二重ベロアから製造される。この管状二重ベロアは、Meadox Medicals, Inc., 112 Bauer Drive, Oakland, NJから購入することができる。
【0070】
図3を参照すると、いくつかの態様において、プロセス400の工程が、ポリマー心臓弁100(例えば、図1〜1Bに示されるようなもの)を製造するために実施され得るが、これらの工程の異なるバリエーションおよび組み合わせも使用され得ることを理解されたい。
【0071】
工程401では、ポリマー導管310およびステント110が、マンドレル300に装着される。図3を参照すると、第1に、弁用マンドレル300の、弁本体110を受け入れるための準備が行われる。例えば、弁用マンドレル300およびステント110は、アルコールで洗浄されるべきである。次に、ポリマー導管310が弁用マンドレル300に設置され、ステント110が弁用マンドレル300上のポリマー導管310に設置される。ポリマー導管310は、ステント110の底部から、例えば約1 mm延在している状態にすべきである。さらに、ステント110のステントポスト112は、弁用マンドレル300の尖頭部(cusp)302と整列させるべきである。この時点で、尖頭部302の縁部にある導管310の余分な部分が除去されるべきである。さらに、導管は、単独利用可能な弁100を提供する長さに切断されるかまたはそれ以外の方法で除去され得る。
【0072】
工程401では、ステントポスト112に屈曲性材料細片が接着され、ステント先端120の基礎が形成される。1つの態様において、各々が約1〜1.3 mm x 3 mm x 5 mmの寸法を有する第1セットの3つのポリマー細片がポリマーシートから切り取られる。1つの態様において、ポリマーシートはAbiomed of Danvers, MA製のAngioflexであり得る。次に、各々が約0.15〜0.25 mm x 3 mm x 10 mmの寸法を有する第2セットの3つのポリマー細片が導管の残りから切り取られる。
【0073】
図5Aおよび5Bは、細片適用前のステントポスト112の端部を示している。第1セットの細片501は、UV硬化エポキシを用いてポスト112に接着される。1つの態様において、推奨される曝露時間は、およそ3.5秒間である。図5Cおよび5Dに示されている。次に、第2セットの細片(図示されず)が、UV硬化エポキシを用いて、接して並んでいる突出部分112および第1セットの細片に接着される。1つの態様において、推奨される曝露時間は、およそ4.5秒間である。他の態様において、細片は、他の適切な技術を用いて、例えば、溶媒ベースの方法を用いて、接着され得る。図5Eおよび5Fを参照すると、細片501は、突出部分112の先端と等しくなるようトリミングされる。
【0074】
再び図3および4を参照すると、工程403では、導管310およびステント110(この時点で、そのステントポスト120に細片501が連結されている)を含む準備済の弁用マンドレル300のアセンブリが浸漬被覆され、弁葉130が形成される。マンドレルアセンブリは、適切な粘度、例えば730±50 cpの範囲の粘度を有するポリマー溶液に浸漬される。いくつかの態様において、ポリマー溶液は、Abiomed of Danvers, MA製のAngioflex溶液であり得る。この工程において、弁用マンドレル300は、例えばアルコールで洗浄される。次に、弁用マンドレル300は、ジオキサンの容器中に、例えば30秒間、ステント110全体が覆われるように、上下逆さまにして入れられる。次に、弁用マンドレル300は、ポリマー溶液中に、例えばステント110のすべてがポリマー溶液中に浸漬されるように、浸漬される。弁用マンドレル300は、溶液から取り出された後、過剰な溶液を除去するために、回転装置上で20〜30分間回転される。この浸漬プロセスは、所望の弁葉130のプロファイルを得るために反復され得る。1つの態様において、浸漬プロセスは、各ステントポスト112を溶液に2度入れる浸漬を計6回反復するものである。最後の浸漬の後、マンドレルは、回転装置上で、例えばおよそ12時間回転される。次に、弁用マンドレル300は、オーブン内に、例えばおよそ1時間入れられる。1つの態様において、オーブンは、約100℃に設定される。弁用マンドレル300は、オーブンから取り出され、室温で、例えばおよそ2時間冷却される。次に、硬化したポリマー溶液がトリミング、例えば所望の場合にマンドレルを平坦にするようトリミングされ得る(例えば、はさみもしくは熱線または当技術分野で公知のその他のトリミング技術を用いて)。
【0075】
図5Gおよび5Hを参照すると、浸漬プロセスの後、ステントポスト先端120が、ステントポスト112の端部の細片501を囲むように形成されている。弁葉130も形成されているが、この時点では連結された構成にあり、自由縁部を有さない。
【0076】
工程404では、弁葉が分離される。図1Aを参照すると、1つの態様において、弁葉130の各自由縁部132は、高度に均一な縁部、例えば上記の実質的部分を有する縁部、を提供するようレーザー切断される。1つの態様においては、弁葉の自由縁部132の一部分が、ステント120の先端でわずかに上向きに湾曲するようレーザー切断される。
【0077】
工程405では、弁100がマンドレル300から取り外される。いくつかの態様において、弁用マンドレルは、例えば約1時間、水浴中に入れられる。1つの態様において、水温は、約37℃に設定される。水浴の後、弁100は、マンドレル300から取り外される。弁葉130は、この時点で、先に詳細に記載したような、静止時の部分開口位置にある。
【0078】
工程406では、縫い付け用リング131が弁100に連結される。弁100(図1)のための縫い付け用リングを作製するために、管状ベロアが弁本体110のO.D.を囲むように配置され、そして、溝114の軸を囲むように、軸方向に中心揃えされる。次に、図2Bに示されているように、ステンレス鋼リング200が溝100にスナップフィット式で取り付けられ、管状ベロアの移動が制限される。最後に、ベロアが、両端が出会うまでステンレス鋼リング200上に巻きつけられ、そしてその端部がひとまとめにステッチされて縫い付け用リングが作製される。必要に応じて、ベロアは、縫い付け用リングの厚みを増やすために、複数回巻きつけおよびステッチされ得る。1つの態様においては、縫い付け用リングを弁100にさらに固定するために、縫い付け用リングと弁本体101の間にポリマー材料が配置され得る。ポリマー材料は、生体適合性ポリマー、例えばシリコーンまたはポリウレタンであり得る。
【0079】
1つの弁製造プロセスが上述されているが、当技術分野で公知の任意の適切な製造技術が利用され得ることを理解されたい。例えば、弁100は、Labma NMK, Woodhouse KA, Cooper SL. Polyurethanes in Biomedical Applications. 1998 CRC Press LLC, Boca Raton, Florida, p.33.; Lyman DJ, Searl WJ, Albo D, Bergman S, Lamb J, Metacalf LC, and Richards K. Polyurethane elastomers in surgery. Int J Polym Mater, 5:211, 1977; Boretos JW. Procedures for the fabrication of segmented polyurethane polymers into useful biomedical prostheses. National Institutes of Health, 1968.; snf Kardos JL, Mehta BS, Apostolou SF, Thies C, and Clark RE. Design, fabrication and testing of prosthetic blood vessels. Biomater Med Dev Artif Organs, 2:387, 1974に記載される技術の1つまたは複数を用いて製造され得る。
【0080】
全体として、本明細書中に記載されている弁は、多くの利点を提供する。上述のように、屈曲性ステント先端は、薄い弁葉130に損害を与え得る、例えば、脆弱な領域、例えば交連部135近辺において裂傷を引き起こし得る望ましくない応力または歪みの集中を軽減または排除することによって、弁の運動性および信頼性を改善する働きをする。図6Aおよび6Bは、それぞれ、完全開口位置および完全閉口位置にある弁100の態様を示している。図7Aおよび7Bは、有限要素解析による応力プロットを示しており、これらはそれぞれ図6Aおよび6Bに示される弁の位置に対応している。
【0081】
図6Aおよび7Aを参照して、適切な洗い流しおよび血栓発生の減少または排除を実現する弁100の完全開口位置における弁葉130の完全かつ対称な(「怠けものの弁葉がない」)開口に注目されたい。弁葉130上での応力の均一な分布および交連部135近辺における比較的穏やかな応力集中にも注目されたい。
【0082】
図6Bおよび7Bを参照して、交連部135近辺における弁葉130間の小さな開口に注目されたい。この構成は、逆流時に、過度の逆流漏出または閉鎖容積を伴わずに、交連部の適切な洗い流しを実現する(以下で詳述される)。弁葉130上での応力の均一な分布ならびに交連部135近辺におけるおよび弁葉130の自由縁部132に沿う比較的穏やかな応力集中にも注目されたい。この応力プロファイルは、裂傷および損耗を減少または排除する点で優れている。
【0083】
部分開口位置となるよう形成された弁100は、優れた血流力学性能を発揮し得る。図8は、ポリウレタンから構築された弁100の態様における、流速の関数としての順行圧力損失のプロットを示している。圧力損失は、5 L/分の流速時の約6 mmHgの損失から25 L/分の流速時の約14 mmHgの損失まで、大まかに言って流速の関数として直接的に増加している。他の態様は、さらに低い圧力低下さえ示し得る。
【0084】
示されているように、この性能は、比較対象のバイオプロテーゼ弁のそれよりも勝っており、比較対象の機械弁のそれよりもわずかに低い。多くの場合、機械弁と比較してわずかに大きい圧力低下は、細胞への損傷および血栓形成をもたらす血流の乱れ、例えばキャビテーションおよびスタグネーションを回避する末梢に配置された屈曲性弁葉を利用することによって十二分に相殺されるものである。さらなる性能面での利点には、バイオプロテーゼに典型的な信頼性の事項(すなわち、弁の機能不全をもたらす構造変化、例えば石灰化および弁葉の損耗のために寿命が限定される問題--生物学的組織の固定(fixation)および組織を支持ステントに装着するのに使用される方法は、この欠点の要因となり得る)の回避が含まれる。
【0085】
図9は、ポリウレタンから構築された弁100の態様における、弁の漏出および閉鎖容積のプロットを示している。85 mmHgの逆流圧下での弁の漏出率は、約4 mL/秒未満である。弁の閉鎖容積の損失は、約1 mL未満である。示されているように、この性能は、比較対象の機械弁のそれよりも勝っており、かつ比較対象のバイオプロテーゼ弁のそれよりもわずかに低いだけである。
【0086】
本明細書中に開示されている態様は、あらゆる面で、例示にすぎず、本発明を限定するものではないとみなされるべきである。本明細書中に記載されている技術は、いかなるかたちであれ、上記の態様に限定されるものではない。その態様に対して、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な修正および変更が為され得る。本発明の範囲は、それらの態様ではなく、添付の特許請求の範囲によって示されている。特許請求の範囲の意義およびそれと等価な範囲内で実現する様々な修正および変更は、本発明の範囲に包含されることが意図されている。
図1
図1A
図1B
図2
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図6
図7
図8
図9