特許第6035237号(P6035237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6035237
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】可撓性インプラントの埋め込み機器
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20161121BHJP
   A61F 2/14 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   A61F9/007 130E
   A61F2/14
【請求項の数】27
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2013-517545(P2013-517545)
(86)(22)【出願日】2011年7月5日
(65)【公表番号】特表2013-534443(P2013-534443A)
(43)【公表日】2013年9月5日
(86)【国際出願番号】GB2011051262
(87)【国際公開番号】WO2012004592
(87)【国際公開日】20120112
【審査請求日】2014年6月19日
(31)【優先権主張番号】1011313.2
(32)【優先日】2010年7月5日
(33)【優先権主張国】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506417186
【氏名又は名称】ユーシーエル ビジネス パブリック リミテッド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100123098
【弁理士】
【氏名又は名称】今堀 克彦
(72)【発明者】
【氏名】コフィー,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ダ クルス,リンドン
(72)【発明者】
【氏名】チータム,カレン
【審査官】 寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】 特表平09−501065(JP,A)
【文献】 特開平02−156943(JP,A)
【文献】 特表2002−514466(JP,A)
【文献】 特表2009−524486(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/121649(WO,A1)
【文献】 特表2001−509041(JP,A)
【文献】 特表平09−508563(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0281341(US,A1)
【文献】 特表2007−500070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/14
A61F 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性のインプラントを埋め込むための機器であって、
末端側の端と、
基部側の端と、
を備え、
前記末端側の端は、移送位置にあるときの前記インプラントを湾曲した形状に曲げるように構成及び配置され、
前記機器は、前記曲げられたインプラントを前記移送位置から埋め込み位置へ推進するように構成され、
前記機器は、前記基部側の端の長手方向軸が前記インプラントの埋め込みの方向と異なる方向を有するように構成され、
前記末端側の端は、前記インプラントが前記機器の前記末端側の端に挿入されるのに伴って前記末端側の端が前記インプラントを前記湾曲した形状に曲げるように構成及び配置され、
前記基部側の端は、作動されたときに前記機器が前記曲げられたインプラントを前記移送位置から埋め込み位置へ推進させる、ユーザが操作可能なアクチュエータを含み、
前記アクチュエータは、回転体であり、該回転体の前記ユーザに向かう回転運動は前記インプラントを前記移送位置から前記埋め込み位置に移動させ
前記末端側の端は、湾曲した壁と複数の保持リップを含むヘッド部分を形成するように構成及び配置される、
機器。
【請求項2】
請求項に記載の機器であって、
前記末端側の端は、前記インプラントが前記移送位置から前記埋め込み位置へ推進されるのに伴って前記インプラントが平坦化するように構成及び配置される、機器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の機器であって、
前記末端側の端は、前記機器への前記インプラントの挿入および前記機器からの前記インプラントの埋め込みを行うための開口を含む、機器。
【請求項4】
請求項に記載の機器であって、
前記開口は、前記インプラントの挿入及び/又は埋め込みの方向に垂直な面から傾斜している、機器。
【請求項5】
請求項1または2に記載の機器であって、
前記機器は、前記移送位置において前記湾曲した形状をとっているときの前記インプラントが湾曲される方向を概ね横切る方向に前記インプラントを推進するように構成される、機器。
【請求項6】
請求項1ないしのいずれか一項に記載の機器であって、
前記インプラントは、推進部材によって前記移送位置から埋め込み位置へ推進される、機器。
【請求項7】
請求項に記載の機器であって、
前記推進部材は、前記湾曲した形状をとっているときの前記インプラントの縁の一部に接触するように構成される、機器。
【請求項8】
請求項又はのいずれか一項に記載の機器であって、
アクチュエータが、当該アクチュエータの作動によって前記推進部材が前記インプラントを前記移送位置から前記埋め込み位置へ推進するように前記推進部材に接続される、機器。
【請求項9】
請求項ないしのいずれか一項に記載の機器であって、
前記推進部材は、長手方向に沿って細長い、機器。
【請求項10】
請求項ないしのいずれか一項に記載の機器であって、
前記推進部材は、ワイヤである、機器。
【請求項11】
請求項ないし10のいずれか一項に記載の機器であって、
前記推進部材は、コイル状ワイヤである、機器。
【請求項12】
請求項ないしのいずれか一項に記載の機器であって、
前記推進部材は、縫合糸である、機器。
【請求項13】
請求項ないし12のいずれか一項に記載の機器であって、
前記末端側の端は、前記インプラントが前記移送位置から前記埋め込み位置に移動するように前記推進部材を誘導するように構成及び配置される、機器。
【請求項14】
請求項13に記載の機器であって、更に、
前記推進部材を誘導するように構成された誘導手段を備える機器。
【請求項15】
請求項14に記載の機器であって、
前記誘導手段は、前記インプラントが前記移送位置から前記埋め込み位置に移動される方向に前記推進部材を誘導するように及び前記方向に垂直な方向における前記推進部材の移動を抑制するように構成される、機器。
【請求項16】
請求項15に記載の機器であって、
前記誘導手段は、前記推進部材が接触する前記可撓性のインプラントの縁に接触するように前記推進部材を誘導するように構成される、機器。
【請求項17】
請求項14ないし16のいずれか一項に記載の機器であって、
前記誘導手段は、溝を含む、機器。
【請求項18】
請求項1ないし17のいずれか一項に記載の機器であって、
前記末端側の端は、前記インプラントが前記移送位置にあるときに前記機器が前記インプラントを前記機器内で移送するために前記インプラントの実質的に一表面に接触するように構成及び配置される、機器。
【請求項19】
請求項1ないし18のいずれか一項に記載の機器であって、
前記末端側の端は、前記インプラントの少なくとも1つの表面が前記機器のいかなる部分にも接触しないように構成される、機器。
【請求項20】
請求項1ないし19のいずれか一項に記載の機器であって、
前記末端側の端は、湾曲した壁を含む、機器。
【請求項21】
請求項20に記載の機器であって、
前記湾曲した壁は、前記末端側の端の長手方向軸に垂直な面内において湾曲している、機器。
【請求項22】
請求項20又は21に記載の機器であって、
前記インプラントが前記移送位置にあるときに又は前記インプラントが前記移送位置から前記若しくは或る埋め込み位置へ推進されるときに、前記壁は、前記インプラントが埋め込まれる方向を概ね横切る方向における前記インプラントの移動を制限する、機器。
【請求項23】
請求項20ないし22のいずれか一項に記載の機器であって、
前記壁は、前記インプラントが前記移送位置から埋め込み位置へ移動する際又はその反対に移動する際に、前記インプラントを誘導するように構成される、機器。
【請求項24】
請求項1ないし23のいずれか一項に記載の機器であって、
前記末端側の端は、前記基部側の端に着脱可能に取り付け可能な末端側の先端を含む、機器。
【請求項25】
請求項1ないし24のいずれか一項に記載の機器であって、
前記基部側の端は、把持部を含む、機器。
【請求項26】
請求項1ないし25のいずれか一項に記載の機器と、前記機器に挿入されるインプラントであって、可撓性で、実質的に平面状で、実質的に平坦で、尚且つ幹細胞、薬、又は放射性物質を備えるインプラントとの組み合わせ。
【請求項27】
請求項1ないし25のいずれか一項に記載の機器であって、更に、
細胞の膜又は層を含むインプラントを備える機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプラントを埋め込むための機器及び方法に関する。本発明に係る機器及び方法により、簡単に、信頼性良く、かつ効率的にインプラントを埋め込み可能となる。好ましくは、本機器は、眼の中の任意の場所にインプラントを埋め込むためのものであり、特に、網膜下腔又は硝子体腔の中にインプラントを埋め込むことを用途とする。本発明は、また、インプラント自体にも関する。
【背景技術】
【0002】
眼の裏側における網膜の損傷、より具体的には網膜下における網膜下腔の損傷は、視覚障害や失明を引き起こす可能性がある。失明の一般的要因は、黄斑変性である。黄斑は、眼の裏側の網膜中央部分に位置し、中心視を担っている。黄斑変性や、眼内のその他のあらゆる疾患及び異常を阻止するためには、眼の異常個所の再生や治療に役立つ幹細胞を提供することが有用だと考えられる。しかしながら、眼内、とりわけ目の裏側における疾患や異常の外科的矯正は、極めて困難かつ厄介である。更に、眼の周囲の組織は非常に脆く、したがって、いかなる誤った動きや接触でも眼を損傷させる可能性がある。現時点では、眼の中にインプラントを送り込むことができる市販の機器は、ごく僅かである。
【0003】
WO98/22029は、眼の網膜下腔の中に網膜組織を埋め込むための器具を開示している。該機器は、ノズルの内側で心棒を動かして、そのノズルの出口から網膜組織片を押し出すことによって機能する。この機器では、網膜組織は、実質的に平坦な形状で移送され、心棒は、網膜組織及び内部ノズルと同じ断面形状を有する。したがって、器具を受け入れるために眼に形成される切開は、埋め込まれる網膜組織と同じ幅でなければならない。更に、網膜組織は、平坦な形状で移送され埋め込まれるので、心棒から加えられる力を受けて潰れたり捻じれたりする可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、インプラントを特に眼の中に簡単かつ容易に埋め込むための、新しい機器及び方法を提供する。
【0005】
本発明の第1の態様によると、可撓性のインプラントを埋め込むための機器であって、末端側の端と、基部側の端とを含み、末端側の端は、移送位置にあるときのインプラントを湾曲した形状に曲げられるように構成及び配置され、該機器は、曲げられたインプラントを移送位置から埋め込み位置へ推進するように構成される、機器が提供される。
【0006】
本発明の本態様は、インプラントを眼に挿入するために必要とされる切開のサイズを最小限に抑えつつ、眼の中にインプラントを埋め込むことを可能にする。インプラントは移送位置にあるときに湾曲されているので、切開の幅を狭めることが可能である。インプラントは埋め込み位置にあるときには、好ましくは広がって平坦化することができる。したがって、眼の中に小さく切開しても、幅の大きいインプラントを埋め込むことが可能である。更に、インプラントは、移送位置にあるときに端側の端によって湾曲した形状に曲げられるので、機器に対して力を及ぼすことができる。これにより、インプラントが移送されているときには、更にしっかりと末端側の端に固定されることを可能にする。このことによりまた、インプラントがその一表面のみが機器に接触しうる形で機器に固定されることも可能にする。すると、インプラントが移送位置にあるときや埋め込み中に、活性剤や活性薬剤を含む表面(幹細胞など)が妨害されないので、更に、インプラントの信頼性を向上させる。湾曲した形状による更なる効果は、埋め込み中にインプラントが捻じれたり折れ曲がったりすることに対して耐性を持つことである。これにより、インプラントがた
とえ可撓性材料で作成されていても機器から押し出されることを可能にする。
【0007】
第1の態様にしたがった機器の末端側の端は、更に、インプラントが機器に挿入されるのに伴って末端側の端がインプラントを湾曲した形状に曲げるように構成することができる。こうすることで、機器への添え付けに先立って事前に丸められる必要がなくなり、インプラントを容易に装填できる。
【0008】
末端側の端は、挿入中にインプラントの一表面(好ましくは薬剤を含まない表面)のみに接触するように構成されることが好ましい。したがって、薬剤を含む表面との接触は、最小限である。すると、薬剤を含む表面が衝突したり汚染されたりする可能性が減り、これは、より信頼性の高いインプラントが可能となる。
【0009】
好ましくは、上記の機器の末端側の端は、インプラントが移送位置から埋め込み位置へ推進されるのに伴ってインプラントが平坦化するように構成することができる。こうすることで、一度の移動でインプラントの埋め込み及び平坦化が可能となり、したがって、簡単且つ効率的な埋め込みを提供する。平坦化は、平坦な形状に回復しようとする力を提供するインプラントに固有な性質によって達成されることが好ましい。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、可撓性のインプラントを埋め込むための機器であって、末端側の端と、基部側の端とを含み、末端側の端は、移送位置にあるときのインプラントを湾曲した形状に曲げられるように構成及び配置され、末端側の端は、インプラントが該機器の末端側の端に挿入されるのに伴ってインプラントを湾曲した形状に曲げるように構成及び配置される、機器が提供される。
【0011】
末端側の端は、インプラントが機器に挿入される際にインプラントを湾曲させることが好ましい。したがって、インプラントを湾曲させるために、インプラントに追加の力を加える必要がない。これにより、インプラントを該機器へ簡単に挿入可能となり、また、インプラントの薬剤表面に力を加える必要がないので、より信頼性の高いインプラントを提供する。
【0012】
インプラントの挿入及び埋め込みが簡単なので機器をコンパクト化でき、それにより、眼に作成される必要がある切開のサイズを小さくすることができる。
【0013】
好ましくは、上述された機器の末端側の端は、機器に挿入したり機器から埋め込んだりしたりするためにインプラントを通すための開口を含むことができる。より好ましくは、開口は、インプラントの挿入や埋め込みの方向に垂直な面から傾斜していてよい。角度は、上記面と比べて10°から80°までの間であることが好ましく、20°から70°までの間であることがより好ましく、なかでも特に30°から60°までの間であることが好ましい。傾斜した開口により、挿入中のインプラントを効率的に且つ効果的な方法で湾曲させることができる。このことは、また、埋め込み中のインプラントを平坦化するのにも役立つ。機器のこのような成形は、機器と、薬剤を含むインプラントの表面との間における衝突を最小限に抑えるのにも役立つ。傾斜した開口により、強膜や網膜を通して機器をより容易に導入されることも可能にし、眼に開ける必要があるスリット開口は、挿入の面に垂直な面に平行な先端開口よりも小さくてすむ。
【0014】
好ましくは、上述されたいずれの機器の基部側の端も、アクチュエータを含むことができる。このアクチュエータは、作動されたときに、曲げられたインプラントを機器が移送位置から埋め込み位置へ推進するようにさせる。アクチュエータは、特にインプラントの直線移動などの移動を引き起こすために、例えば押圧されたり、スライドしたり、回転したりするように構成することができる。アクチュエータは、回転するようにされることが
より好ましく、この場合、アクチュエータの回転運動は、インプラントの直線移動を引き起こす。これは、機器の基部側の端で成される簡単な動作によって、インプラントが迅速、容易、かつ直感的に埋め込まれることを可能にする。回転移動は、インプラントに向かうかインプラントから離れるいずれかの向きに回転体を回すことによって実現される。
【0015】
本発明の第3の態様によれば、可撓性のインプラントを埋め込むための機器であって、末端側の端と、基部側の端とを含み、基部側の端は、回転するように構成されたアクチュエータを含み、アクチュエータの回転運動は、インプラントの直線移動を行き起こす、機器が提供される。
【0016】
回転するアクチュエータは、ユーザが簡単かつ容易な動作で機器を作動させることを可能にする。動作がより容易になるので、ユーザはアクチュエータを滑らかに回転させることができ、このような滑らかな回転は、インプラントを埋め込むための力を滑らかに作用させる。このことは、加えられた力が急増するなどの非一貫性ゆえにインプラントが変形する事態を阻止するのに役立つ。
【0017】
上述された機器において、アクチュエータは回転体であることも好ましい。回転体は、ユーザによって容易に回転させることができる。これは、インプラントを埋め込むときの制御を強化する。
【0018】
上述された機器は、インプラントの推進方向を、移送位置において湾曲した形状のインプラントが湾曲される方向を概ね横切る方向とするように構成および配置することができる。
【0019】
インプラントを推進するときは、湾曲したインプラントの縁に、インプラントが湾曲される方向を横切る方向に力を加えることができる。湾曲したインプラントに対して、この方向により大きな力を加えることができる。なぜならば、湾曲は、加えられる力の方向と横切る方向におけるインプラントの変形に抵抗することを助けるのに役立つからである。
【0020】
上述された機器は、インプラントが推進部材によって移送位置から埋め込み位置へ推進されるように構成することができる。推進部材は、機器の基部側の端から、インプラントの移送及び埋め込みが行われる機器の末端側の端へ力を伝達するのを助ける。これは、機器の一端が眼に容易に挿入可能であるように、機器を長く且つ薄くすることを可能にする。推進部材は、細長いことが好ましく、可撓性であってよい。推進部材は、ワイヤ、縫合糸、又はその他の適切な手段によって具現化することができる。推進部材は、大半の実施形態では固体であるが、その他の実施形態では、インプラントを機器から押し出すためにインプラントに接触する固体の推進部分を流体柱などの水圧式ピストンを使用して駆動することも考えられる。
【0021】
好ましくは、推進部材は、インプラントの縁の一部に接触するように構成される。接触は、インプラントが湾曲した形状をとっているときに成されることが好ましい。具体的に言うと、インプラントと推進部材とが接触する際にインプラントの縁が実質的に推進部材の端の中心線を横切る位置に配置されるように、推進部材を構成することが好ましい。これにより、推進部材がインプラントの上又は下を通過する可能性を抑えつつ、推進部材がインプラントを推進して機器から出させることを可能にする。推進部材及びインプラントの正確な位置決めは、インプラントと推進部材とを互いに関連付けて位置付けるのに適した形に先端領域を成形することによって達成することができる。
【0022】
インプラントは、湾曲した形状をとっているときは剛性がより強い。したがって、推進部材がインプラントの縁の一部に力を加えているときに、その湾曲が力の作用方向に沿っ
た構造的安定性を強化するのに役立つゆえに、インプラントは潰れることはない。したがって、本機器によれば、インプラントをより効果的かつ高信頼にすることができる。
【0023】
アクチュエータの作動によって推進部材がインプラントを移送位置から埋め込み位置へ推進するように、アクチュエータを推進部材に接続することが好ましい。推進部材は、長手方向に沿って細長いことがより好ましい。推進部材は、ワイヤ、コイル状ワイヤ、又は縫合糸であってよい。これにより、機器の基部側の端で加えられた作動力を、眼に挿入可能な機器末端側の端に伝達することができる。これにより、末端側の端をコンパクトかつ小型にでき、それゆえに眼に容易に挿入可能となる。
【0024】
推進部材の移動を制限し、それが機器内で遠くまで後退しすぎたり機器から飛び出したりする事態を阻止するために、機器には、1つ以上の制限部材が備わっていてもよい。上記制限部材は、作動部材の一部として又は作動部材とは別に推進部材上に提供されてよい。ただし、推進部材及び作動部材のうちの1つ又は両方と相互に作用するように構成される。例えば、機器には、推進部材の過度な後退を阻止するための逆転防止部材が備わっていてよい。
【0025】
本発明の機器において、末端側の端は、推進部材を誘導するように構成し、これによりインプラントが移送位置から埋め込み位置に移動するようにすることができる。機器は、推進部材を誘導するように構成された誘導手段を含むことが好ましい。誘導手段は、推進部材を完全には取り囲まないように有用に構成され、溝として具現化することができる。これは、推進部材が、それまでインプラントによって占有されていた位置においてもインプラントの上面とのいかなる接触も必要とせずに誘導部材をたどることを可能にする。
【0026】
好ましくは、誘導手段は、インプラントが移送位置にあるときにインプラントの下に位置する。
【0027】
誘導手段は、推進部材の両方の側を誘導するリップによって構成することができる。
【0028】
本発明の第4の態様によれば、可撓性のインプラントを埋め込むための機器であって、末端側の端と、基部側の端と、インプラントを移送位置から埋め込み位置へ推進するための推進部材と、インプラントが移送位置から埋め込み位置に移動される方向に推進部材を誘導するように及びこの方向に垂直な方向における推進部材の移動を抑制するように構成された誘導手段とを含む機器が提供される。
【0029】
これは、埋め込みの方向を含む一定の方向に推進部材が移動することを可能にする。推進部材は、インプラントを埋め込むために必要とされる経路から容易に逸れることができないので、これは、より信頼性の高いインプラントの埋め込みが可能となる。
【0030】
更に、誘導手段は、推進部材が接触するインプラントの縁に垂直な方向に推進部材が移動することを可能にすることができる。したがって、推進部材は、推進部材が接触するインプラントの縁の面積が増加するように配置することができる。これは、推進部材が滑ってインプラントの縁の上方へ逃げる事態を阻止するのに役立ち、したがって、より信頼性の高いインプラントの埋め込みを提供するのに有用である。これは、また、薬剤を含むインプラントの表面に推進部材が接触する事態を阻止するのにも役立つ。
【0031】
本発明の機器において、誘導手段は、溝を含むことができる。溝は、少なくとも溝の末端側の端に、溝の両方の側に突き出したリップを有することができる。
【0032】
本発明の機器において、末端側の端は、インプラントが移送位置にあるときに機器がイ
ンプラントを機器に固定するためにインプラントの実質的に一表面に接触するように構成することができる。末端側の端は、更に、インプラントの或る表面が機器に接触しないように構成することができる。こうすることで、薬剤を含む表面が他に接触しないので、より効果的なインプラントを提供する。したがって、表面は、清浄で、無菌で、且つ邪魔されない状態に維持される。これは、インプラントの信頼性の向上に役立つ。
【0033】
説明された機器において、末端側の端は、湾曲した内壁を含むことができる。内部断面は、平面状のインプラントの移送を可能にするために非円形であることが好ましい。湾曲した壁は、末端側の端の長手方向軸に垂直な面内において湾曲することができる。更に、壁の湾曲は、インプラントが移送位置にあるときに又はインプラントが移送位置から埋め込み位置へ推進されるときに、インプラントの埋め込みの方向を概ね横切る方向におけるインプラントの移動が壁によって制限されるように、壁の湾曲が増していくようにしてもよい。これは、インプラントの表面を機器に接触させないように維持しつつ、インプラントが機器の内側に効果的に固定されることを可能にする。湾曲した壁は、また、特に機器による眼の切開中などに外部物体からインプラントを保護し、そうして、インプラントの信頼性を向上させることができる。
【0034】
本発明の機器において、壁は、推進部材を誘導するように構成することができる。これは、インプラントの埋め込みの信頼性の向上に役立つ。
【0035】
機器は、基部側の端の長手方向軸が、インプラントの埋め込みの方向と異なる方向を有するように構成することができる。インプラントが埋め込まれる必要がある角度は、眼の幾何学的形状ゆえに、眼に機器が挿入される角度とは異なるだろう。これは、眼の中におけるインプラントの埋め込みをより容易にするのに役立つ。
【0036】
機器の末端側の端は、基部側の端に着脱可能に取り付け可能な先端を含むことができる。基部側の端は、把持部を含むことができる。衛生目的としては、着脱可能に取り付け可能で且つ使い捨ての先端が望ましいだろう。機器は、把持部が再利用可能であるゆえに、コスト効率も良い。代替として、機器全体が使い捨てであってもよい。
【0037】
上述された機器で使用されるインプラントは、可撓性で、実質的に平面状で、実質的に平坦で、尚且つ好ましくは幹細胞を含むことができる。或いは又は加えて、表面は、薬溶出性や放射性の物質を含むことが可能である。インプラントの可撓性は、それが湾曲した形状で移送されることを可能にし、その利点は、上述されている。また、インプラントは、可撓性であるので、埋め込み位置にあるときに、それが埋め込まれたところ(眼など)の表面の形状に適合することができる。更に、実質的に平坦なインプラントの提供は、インプラントの1つ以上の表面の上若しくは中への、又はインプラントの中への、薬剤の容易な被着又は組み入れを可能にする。
【0038】
インプラントは、その先端が上述された傾斜した開口に接触するように本明細書で説明される任意の機器に挿入し、この接触によりインプラントを湾曲した形状に曲げることができる。平面状のインプラントの縁は、機器に挿入されたときに、傾斜した開口に接触する。傾斜した開口は、最初、互いに離れた2つの地点でインプラントの縁に接触する。これにより、平面状のインプラントを、挿入に伴って中央で曲がらせることができる。これは、インプラントを機器に押し込むだけでインプラントを湾曲させられる効果的な方法を提供する。事前に丸める必要性も、又は薬剤を担うインプラントの表面にそれ以外の形で接触する必要性もない。
【0039】
幹細胞は、インプラントの一表面上に形成され、該表面は、好ましいことに、インプラントが機器内で移送されているときやインプラントが移送位置から埋め込み位置へ推進さ
れる間に、機器のどの部分にも接触することはない。これは、インプラントの信頼性及び有効性を向上させるのに役立つ。
【0040】
本明細書で説明される任意のインプラントが、本明細書で説明される任意の機器で使用することができる。
【0041】
本発明の別の態様にしたがうと、眼の中に可撓性のインプラントを埋め込む方法が提供され、該方法は、インプラントを移送するステップであって、埋め込み物は、移送されている間、湾曲した形状をとる、ステップと、移送されたインプラントを埋め込むステップとを含む。
【0042】
インプラントは、好ましいことに、埋め込み後に平坦化することができる。
【0043】
本発明の別の態様にしたがうと、可撓性のインプラントを埋め込む方法が提供され、該方法は、インプラントを機器に挿入するステップであって、インプラントは、機器に挿入されるのに伴って、湾曲した構成をとらされる、ステップと、インプラントを機器から出させて埋め込むステップとを含む。
【0044】
インプラントは、埋め込みの後に平坦化することができる。
【0045】
本発明の別の態様にしたがうと、可撓性のインプラントを埋め込む方法が提供され、該方法は、作動手段を回転させるステップであって、作動手段の回転運動は、移送位置から埋め込み位置へのインプラントの直線移動を引き起こす、ステップを含む。
【0046】
本発明の別の態様にしたがうと、可撓性のインプラントを埋め込む方法が提供され、該方法は、推進部材を使用することによって、インプラントを移送位置から埋め込み位置へ推進するステップと、推進する間、インプラントが移送位置から埋め込み位置に移動される方向及び該方向に垂直な方向に推進部材を誘導するステップとを含む方法が提供される。
【0047】
本発明の別の態様にしたがうと、これまでに説明された機器であって、細胞の膜及び層を含むインプラントを更に含む機器が提供される。膜は、生物分解不可能で且つ多孔性であることが好ましい。細胞は、特に網膜色素上皮細胞などの、網膜由来細胞であることが好ましい。
【0048】
本発明の各種の態様は、その任意の数の特徴を任意の実施形態で組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
本発明は、添付の図面を参照にし、単なる非限定的な一例として以下で更に説明される。
図1】本発明にしたがった機器の第1の実施形態を示した図である。
図2】機器の第1の実施形態の先端部分を示した図である。
図3】機器の第1の実施形態のヘッド部分の拡大図である。
図4】第1の実施形態のヘッド部分の断面図である。
図5】機器の第2の実施形態のヘッド部分の拡大図である。
図6】機器の第3の実施形態のヘッド部分の断面図である。
図7】機器の第4の実施形態のヘッド部分の断面図である。
図8】推進部材に対するアクチュエータ回転体の接続を示した図である。
図9図8のメカニズムがどのように把持部構成要素の内側に嵌り込むかを示した図である。
図10A】第2の実施形態のヘッド部分へのインプラントの挿入を描いた図である。
図10B】第2の実施形態のヘッド部分へのインプラントの挿入を描いた図である。
図10C】第2の実施形態のヘッド部分へのインプラントの挿入を描いた図である。
図11A】第2の実施形態のヘッド部分からのインプラントの埋め込みを描いた図である。
図11B】第2の実施形態のヘッド部分からのインプラントの埋め込みを描いた図である。
図11C】第2の実施形態のヘッド部分からのインプラントの埋め込みを描いた図である。
図12】機器の挿入のために切開を成された状態の眼の図である。
図13】眼の裏側にインプラントを挿入された状態の眼の内部の図である。
図14A】機器の第5の実施形態を示した図である。
図14B】機器の第5の実施形態を示した図である。
図15A】機器の第6の実施形態を示した図である。
図15B】機器の第6の実施形態を示した図である。
図16A】機器の第7の実施形態を示した図である。
図16B】機器の第7の実施形態を示した図である。
図17A】機器の一実施形態の側面図である。
図17B】機器の一実施形態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1は、インプラント又はその他の物体を、好ましくは眼の中に直接埋め込むために使用することができる本発明にしたがった機器10の第1の実施形態を描いている。機器10は、インプラントを、例えば眼の硝子体腔又は網膜下腔などの眼の中の任意の場所に埋め込むために使用することができる。
【0051】
機器は、例えば把持部11などの、ユーザが機器を握るための手段を有することが好ましい。把持部は、一般に、機器の(ユーザの視点から見て)基部側の端に位置している。把持部は、ステンレス鋼(例えばステンレス鋼316)又は医療用プラスチックで作成することができる。把持部は、把持部11の長手方向軸に沿って分割された2つの対称パーツ11aと11bとで便利に提供することができる。把持部を組み立てるために使用される締め具は、A4ステンレス鋼で有用に作成することができる。
【0052】
好ましくは、把持部11は、機器10のユーザがしっかり把持できるように、また機器が容易に把持されるように成形される。これにより、制御性が良くなり、また、機器10が滑って手術中に眼を損傷する事態が阻止される。図1に示されるように、把持部11は、しっかりと把持できるように、面や縁が多面体の断面を有するように成形することができる。図1では、把持部は、概ね八角形の断面形状を有するが、六角形、四角形、又は円形などの、任意の適切な形状が使用可能である。
【0053】
機器10は、また、ユーザが操作可能であり機器10を作動させるためのアクチュエータも含むことができる。アクチュエータは、把持部11上あるいは部分的に把持部11内に配することができる。第1の実施形態では、アクチュエータは、回転体12であってよい。回転体12は、機器10を作動させるために、ユーザによって回転される。アクチュエータは、回転体が時計回りに回転されたときに作動が生じうるように構成してもよいし、回転体が反時計回りに回転されたときに作動が生じうるように構成してもよい。図1
実施形態(図8及び図9も参照)では、概ねユーザに向かって回転体を運動させることで、インプラントを移送位置から埋め込み位置に移動させる。回転体12は、回転時における把持の強化に有用であるように、ぎざぎざを含むことができる。
【0054】
アクチュエータは、回転体に限られない。例えば、アクチュエータは、(例えば図16A及び図16Bの実施形態に示されるような)紐、プランジャ、(例えばモータを作動させる)スイッチ、レバー、ローラ、スライダ、(例えば図15A及び図15Bの実施形態に示されるような)コンベヤベルトなどであってよい。
【0055】
機器10は、その末端側の端に、先端部分13を含むことができる。先端部分13は、把持部11に着脱可能に取り付け可能であってよい。機器は、或いは、把持部と先端部分とが一体になった切れ目のない一体成形物であってよい。先端部分13は、プラスチック、又はステンレス鋼若しくは金などの金属で作成することができる。先端部分としては、ステンレス鋼316Lが好ましい。
【0056】
先端部分13は、機器が組み立てられたときに、把持部11の内側で幾らかの距離にわたって伸びていることが好ましい(図9を参照)。先端部分13の基部側の端の外側周囲に可撓性シリコン40の環帯(図8及び図9を参照)を設け、このシリコンを把持部内側の部屋42内に固定することによって、把持部内への先端部分13の適切な嵌め込みを達成することができる。可撓性シリコン40は、把持部の半パーツ11aと11bとが締め合わされたときに、きつい嵌り具合を提供することができるように、部屋42の内寸よりも僅かに大きいことが好ましい。先端部分13は、使用中に先端13が把持部11から脱落する事態を阻止するために、把持部11内側の対応するフランジ部分46と相互に作用する、適切なフランジ部分44も備えていることができる。
【0057】
先端部分13の末端側の端は、ヘッド部分14を含むことができる。機器の基部側の端は、把持部11のみを含んでもよいし、把持部11と先端部分の細長くて且つ狭い部分(すなわち、先端部分のうちヘッド部分を除いた部分)とを含んでもよい。
【0058】
図2は、把持部11から取り外されたときの先端部分13の図である。先端部分13は、それ自体を、別々に成形されるか機械加工された2つの構成要素13aと13bとで作成することができる。これらの構成要素13a及び13bは、プレス嵌めなどによって合体させることができる。先端部分13を細長くして、先端部分の末端側のパーツ13a(ヘッド部分14を構成している)が眼に容易に挿入できるようにしてもよい。また、先端部分13を中空として、例えばワイヤ、縫合糸、紐、又はコンベヤベルトなどの推進部材が先端部分13の基部側の端に挿入され、先端部分13の内側でその長手方向に沿って移動し、末端側の端から現れ出て、そこにある移送されるインプラントに係合できるようにしてもよい。先端部分13は、ロック解除された形態をとっているときに長手方向軸の周りで回転可能であるように、把持部11に取り付けられることが好ましい。これは、機器10のユーザが、先端部分13のヘッド部分14の場所を把持部11に相対的に調整することを可能にする。先端部分13は、眼の中のインプラントを埋め込む必要のある場所に応じて、長手方向軸の周りで回転させることができる。好ましくは、先端部分は、90°、より好ましくは180°、更に好ましくは270°、よりいっそう好ましくは360°以上にわたって回転させることができる。先端部分13は、インプラントを送るために使用されているときは、所望の形態にロックすることができる。先端部分13は、把持部11に挿入された先端部分13の端に接触することができる把持部11内のネジをそれぞれ締めたり緩めたりすることによって、ロックしたりロック解除したりすることができる。
【0059】
図3は、図1及び図2のヘッド部分14を拡大して示している。この第1の実施形態では、ヘッド部分14の上端は、実質的に平坦に形成されている。ヘッドの上端は、インプ
ラントをヘッド部分14の内側の適所に保持するのに役立つ内向きの2つの出っ張りを提供する。ヘッド部分14は、湾曲して概ね上向きに伸びてからヘッド部分14の上端で互いのほうを向くように折り込まれた側壁15を含む。
【0060】
図4は、第1の実施形態のヘッド部分14の断面を、ヘッド部分の中の適所にインプラント19が配置された状態で示している。符号18は、誘導手段を示しており、この実施形態では、ヘッド部分の底面に沿って長手方向に走る細長い溝である。したがって、誘導手段18は、インプラント19の埋め込み方向に平行な方向に伸びている。
【0061】
図5は、図3に類似しているが本発明の第2の実施形態にしたがった代替の形態を有する先端部分13のヘッド部分を示している。第2の実施形態のヘッド部分14aも、湾曲した壁15を含む。第1の実施形態と同様に、ヘッド部分の端は、湾曲した壁15の側面によって形成される開口16を有することができる。先端部分13、及び開口16と反対側のヘッド部分14aの端は、それぞれ、例えばワイヤ又は縫合糸17などの推進部材がヘッド部分14aに入るための開口を含むことができる。先端部分の中央を通る推進部材を提供することによって、先端部分は、把持部に相対的に推進部材の周りを回転することが可能になる。ヘッド部分14aは、また、推進部材17をヘッド部分14aの中央を通るように誘導するための誘導手段18aも含むことができる。誘導手段18aは、インプラントが移送されるときにインプラントの下にくる先端の一部分に沿って伸びていることが好ましく、それによって、埋め込み中にインプラントに接触している推進部材17が常に効果的に誘導されることを可能にする。図3及び図5の実施形態は、それぞれ、誘導手段としての溝18、18aを有する。誘導手段は、また、壁や誘導ポストなどを含む任意の適切な手段によって形成することもできる。
【0062】
第1及び第2の実施形態の壁15は、インプラントの埋め込み方向に平行に、概ね長手方向に伸びている。壁15は、上部に向かうにつれて自身に被さるように湾曲し、上端において互いに近づくが、互いに触れ合うことはない。壁は、埋め込み方向を概ね横切る面内において湾曲する。好ましくは、壁は、埋め込み方向に平行には湾曲しない。このようにして、壁15は、インプラントを移送するためのトンネル状空間を提供し、それによって、インプラントは、壁15の末端側の部分によって形成される開口16から挿入及び埋め込むことができる。壁の形状は、移送されるインプラントを、埋め込み方向を概ね横切る方向に湾曲させるような形状である。また、壁は、埋め込み方向に平行な方向にはインプラントのいかなる湾曲も生じさせないように形状決定されることが好ましい。
【0063】
したがって、先端部分13のヘッド部分14、14aは、平面状の可撓性インプラントを受け入れて移送するように、及び好ましくは埋め込み方向を横切る方向に可撓性インプラントを湾曲させるように、及びインプラントを移送位置から埋め込み位置に移動させるために推進部材を可撓性インプラントに接触させることを可能にするように、構成及び配置される。
【0064】
第1の実施形態では、壁は、好ましくは、1つ以上の保持リップ22a(図3を参照)を含むことができる。これらの保持リップ22aもやはり、図5の湾曲した壁15と同様なやり方でインプラントの移動を制限するのに有用である。もしインプラントが動くと、インプラントの縁が保持リップ22aに接触し、更なる横移動は阻止される。リップ22aは、インプラントの表面には接触せずインプラントの縁のみに接触するような角度に形成することができる。リップ22aは、第2の実施形態にあるように、壁15の縁によって提供することもできる。
【0065】
図1図2、及び図3のヘッド部分14は、図5のヘッド部分14aとほぼ同じ内部構造を有する。しかしながら、図の比較からわかるように、外部構造は、僅かに異なってい
る。具体的には、第1の実施形態の構造は、よりしっかりと包み込まれており、外側に対する開きが少なく、この理由ゆえに好ましいとされる。第1の実施形態は、また、円形の広がりを持つ、より幅広の誘導手段18も有する。第2の実施形態の誘導手段18aは、縁が直角である。これは、本発明の限定的特徴ではなく、任意の形状の誘導手段18、18aが、任意の実施形態で使用可能である。
【0066】
図6は、ヘッド部分の第3の実施形態の断面を示している。該設計は、第1の実施形態(具体的には図4を参照)に類似しているが、誘導手段が僅かに変更されている。この実施形態では、誘導手段は、サポートリップ21bを含む。具体的には、誘導手段18bの縁を隆起させて水平保持リップ21bを形成することが好ましい。リップ21bは、使用に際して推進部材を取り巻くように、及び溝18bの長手方向を横切る推進部材の移動を更に制限するように機能する。これは、推進部材の誘導をより正確にする。ひいては、インプラントの埋め込みの信頼性が高まる。
【0067】
本発明の推進部材は、細長いことが好ましい。推進部材は、作動部材12に有用に接続され、作動部材の作動によりインプラントを例えば先端部分13の中央で前進させることによってインプラントを推進する。推進部材は、ワイヤ17であってよい。ワイヤは、縫合糸であってよいし、ワイヤは、ナイロン若しくはニッケルチタン合金で作成することができる。推進部材は、また、コイル状ワイヤであってもよい。或いは、推進部材は、液圧ピストンであってよい。
【0068】
図から明らかなように、推進部材は、機器の内側で前進するのに伴って、曲がっていくことが好ましい。コイル状ワイヤとして形成された推進部材は、この曲がりを容易にし、コイル状ワイヤは、単純なワイヤよりも、容易に角を曲がれることがわかっている。更に、コイル状ワイヤが、再び後退されたときに元の形状に戻るのに対し、単純なワイヤは、角を曲がるときに塑性的に変形される恐れがある。
【0069】
推進部材は、1mm以下の外径を有することが好ましく、より好ましくは、0.5mm〜0.9mmの範囲である。コイル状ワイヤが使用される場合は、巻きの外径を0.5mm〜1.0mmの範囲として、ワイヤ自体は、0.1mm〜0.2mmの範囲の直径を有することが好ましい。
【0070】
インプラントに接触する推進部材の端は、研磨やその他の方法で平坦化されることが好ましい。これは、インプラントが成功裏に埋め込まれる可能性を高める。
【0071】
ヘッド部分14の全ての縁は、眼に対する挿入又は後退の際に縁が眼を損傷させることがないように、尖っていないことが好ましい。これは、グリットブラストや類似の方法によって達成することができる。
【0072】
本発明の全ての実施形態の誘導手段は、推進部材の一部の形状に適合する溝であってよい。図4及び図6に示されるように、溝18、18bは、湾曲していてよい。溝18、18bの湾曲は、推進部材(縫合糸、ワイヤ、又はコイル状ワイヤなど)の湾曲と同じであってよい。このことにより、推進部材が溝18、18bに嵌って正確に誘導されることが保証される。図から明らかなように、誘導手段18、18a、18bは、推進部材が実質的に長手方向に沿って移動して、ヘッド部分14、14a内に位置している任意のインプラントを機器から外向きに押し出すことを可能にし、しかしながら、また、横断方向(すなわち、インプラントの埋め込み方向に垂直な方向)における移動を抑制するのにも役立つ。
【0073】
推進部材17は、溝18、18a、18bなどの誘導手段によって、ヘッド部分14、
14aに沿って誘導されることができる。誘導手段18、18a、18bは、推進部材17の移動をヘッド部分の長手方向軸に沿った方向に制限するのに役立つ。誘導手段18は、また、推進部材17の剛性を維持するのにも役立つだろう。更に、誘導手段は、ヘッド部分14の中へ僅かに凹んでいるので、インプラント19は、誘導手段18、18a、18bの上に載せることができる(例えば図4を参照)。誘導手段は、したがって、機器10に出入りするインプラント19の滑らかな動きを妨げない。
【0074】
使用に際して誘導手段18、18a、18bに沿って動く推進部材は、推進部材17の底縁よりも幾らか上方において、インプラント19の縁と接触するように構成することができる。なかでも特に、インプラントの縁が、推進部材の端の中心線の近くに位置するようにすることが好ましい。これは、図4に示されるように、誘導手段がインプラントの下に、推進部材が動くための空間を提供することにより可能となる。したがって、誘導手段18、18a、18bは、インプラントの端に垂直な(且つ/又はインプラントの面に垂直な)方向に推進部材の端が方向付けられるように、推進部材17を誘導することができる。これは、推進部材17の端がインプラント19の端に接触することを保証するのに役立ち、また、推進部材がインプラント19の端を完全に捉え損ねる事態、すなわち縁の上方に押し上げられてインプラント19の上面に沿って望ましくない形で上滑りする事態を回避するのに有用である。また、インプラント19の縁が推進部材の断面中央の幅広の部分に面して推進部材の端に接触するように誘導手段を提供することによって、インプラントの縁と推進部材の端との間の接触面積を増加させることができる。これは、推進部材が滑ってインプラントの縁の上方へ逃げる事態を阻止するのに役立つ。したがって、インプラントの埋め込みの信頼性が高まる。
【0075】
第4の実施形態では、図7に示されるように、長手方向の誘導リブ26を提供することができる。これらの誘導リブ26は、誘導手段18dが推進部材17dに接触する表面と概ね反対側の、推進部材17dの表面に接触することができる。これは、推進部材17dの移動に伴って機器の内側で推進部材17dの更なる誘導及び固定を提供するのに役立つ。サポートリブ26は、壁15の延長として壁15に沿って提供されてもよいし、壁15に沿って連続的あるいはヘッド部分14の壁15のいくつかの点において形成されてもよい。誘導リブ26は、ヘッド14bが先端部分の長手方向パーツに取り付けられる側のヘッド14bの端(すなわち開口16の反対側)に形成することができる。これは、推進部材17dを、誘導手段18d上に適切に着座するように初期誘導するのに役立つ。
【0076】
推進部材17は、その全長にわたってヘッド部分14、14a、14bにより緊密に取り囲まれている必要はない。推進部材17の断面は、インプラントの断面と明らかに異なっていてよい。図に示されるように、推進部材17が実質的に円形の断面を有する一方で、インプラント19は、非常に細長い矩形の断面を有する。ただし、その他の形状も可能である。
【0077】
図8及び図9は、先端部分がどのようにアクチュエータ12又は把持部11に接続可能であるかを示すために、図1と同様な機器を、把持部の全体又は一部を取り除いて示した図である。図8では、推進部材17の一端は、中空の先端部分材13の中に送り込まれ、推進部材17のもう一端は、例えば位置決めネジ52(図9を参照)によって回転体12の裏側に固定される。回転体12は、推進部材17が回転体12に対して軸方向すなわち横断方向に動かないように推進部材17を更に固定する円周溝54を有することができる。回転体12の回転に伴って、推進部材17は、回転体12に巻かれたり回転体12からほどかれたりする。図8及び図9の例では、回転体12の時計回りの回転により、推進部材17の巻きがほどかれ、それによって、推進部材17が先端部分内へ進む。したがって、回転体の回転運動により、推進部材が先端部分及びヘッド部分の奥に進むのに伴って、インプラントの直線移動が引き起こされることを可能とする。回転体12の反時計回りの
回転により、推進部材が回転体に巻き付き、したがって、先端部分13から部分的に後退する。先端部分13及び回転体12は、推進部材17が先端部分13に相対的に動くように、使用に際して互いから一定の距離だけ離されている。推進部材を、反対方向に回転体に巻き付けることも可能である。これは、反時計回りの回転の際に推進部材を先端部分内へ進ませる。アクチュエータの構造がどうであれ、推進部材を進ませるためのアクチュエータの運動の方向は、機器を眼への導入のために動かす方向と反対であることがとりわけ有利である。例えば、アクチュエータが回転体である場合は、推進部材を前進させるためには、この回転体を先端領域から離れる方向に回転することが好ましい。これは、推進部材が誤って前進する事態を阻止するのに役立つ。
【0078】
回転体12は、更に、回転を制限するための手段48、50を有し、これにより、推進部材17がヘッド部分14aを超えてあるいはヘッド部分14a内で遠くに行きすぎないようにし、推進部材によって引き起こされる恐れがある眼への損傷を回避することが好ましい。回転体の運動は、回転体12上に設けられたピン48によって制限することができる。該ピンは、把持部の内側に設けられた誘導スロット50の内側に通され、該スロットは、或る量の回転がひとたび達成されるとピン48に突き当たる。
【0079】
回転体12の回転運動は、推進部材17を移動させ、これは、ひいては、インプラント19を直線状に移動させる。回転体の回転は、インプラント19の推進をより滑らかにするのに役立つだろう。これは、不規則な作動に起因し推進部材によって急速に力が及ぼされてインプラント19が潰れる事態を阻止するのに役立つだろう。これは、インプラントを埋め込むときの制御を強化するのに役立つ。
【0080】
上記のように、インプラント19の上面は、機器のいかなる部分又はその他のいかなるインプラントとも接触しないことが好ましい。なぜならば、そのような接触は、上面の薬剤を除去してしまったり損傷させてしったりする恐れがあるからである。したがって、インプラント19の上面ではなく縁に接触する推進部材17を提供することによって、薬剤の損傷を回避することができる。更に、インプラントの機器に対する固定は、インプラントを湾曲した形状に曲げて、インプラントの底面とヘッド部分14との間に弾性力を提供することによって行われるので、インプラントを機器に固定するときに、インプラントの上面が触れられる必要はない。更に、壁15はインプラント19の縁を回り込んで湾曲しているが、インプラントの上面には接触はしないので、インプラントは、インプラントの上面に機器が接触するのを回避しつつ、ヘッド部分14、14a、14bに更に固定される。壁15の端は、ヘッド部分14、14a、14bの中心線の方を向くことができる。中心線は、ヘッド部分を対称的に半パーツに分ける面である。
【0081】
機器は、ホッケーのスティック状に形成することができる。このように、把持部及び/又は先端の長手方向軸は、ヘッド部分の長手方向軸と異なっていてよい。好ましくは、ヘッド部分の長手方向軸と、先端及び/又は把持部の長手方向軸との間の角度は、10°から80°までの間であり、20°から70°までの間であることが好ましく、30°から50°までの間であることがより好ましく、40°から50°までの間であることがさらに好ましく、約45°であることが尚もいっそう好ましい。この角度は、図中、角度Aとして示されている。この角度は、ヘッド部分を、眼の中にあるときに、なかでも特に、曲線状の眼壁の中にインプラントを埋め込むときに、より容易に操作することを可能にする。2つの部分の間のかかと部分、すなわち角は、鋭っているのではなく、むしろ、湾曲していることが好ましい。角を曲がるときの推進部材の動きを容易にするため、および機器がより少ない外傷で眼の中に入ることを可能にするために、角は内部及び外部ともに湾曲していることが好ましい。
【0082】
(ヘッド部分を伴う)先端部分13は、着脱可能に把持部11に取り付け可能であって
よい。これは、衛生目的のために、把持部の再利用及び先端部分の破棄を可能にする。
【0083】
図10A〜10Cは、例えばパッチなどのインプラント19を機器10の図3の実施形態のヘッド部分14に装填するプロセスを示している。該プロセスは、その他の実施形態と実質的に同じであり、更なる説明の必要なく適用可能である。
【0084】
図10Aは、実質的に平坦で且つ実質的に平面状のインプラント19の一実施形態を示している。インプラント19は、好ましくは可撓性であり、これは、PET(Dacron(登録商標)として入手可能である)などの可撓性プラスチックでインプラント19を形成することによって達成することができる。一般に、薄くて、可撓性で、尚且つ機器のヘッドの内側の形状に変形可能であるインプラントを提供可能でありさえすれば、あらゆる材料が使用可能である。
【0085】
インプラントは、概ね矩形であり、約3mm×6mmの寸法を有することができる。インプラントの短い方の辺は、ここではそれぞれ異なる形状を有し、一方の端19aが、もう一方の端19bよりも四角くなっている。より四角い形状の端19aは、機器10内へのインプラントの挿入及び湾曲をより容易にすることができる。より湾曲した端19bは、眼の中又はその他の標的場所へのインプラントの埋め込みをより容易にすることができる。インプラント19は、その1つ以上の表面上に配された又は形成された幹細胞又はその他の活性剤若しくは活性薬剤を有することができる。インプラント19は、その中に薬剤を形成されてよい、又は薬剤自体によって形成されてよい。インプラントは、薬溶出性のインプラント、又は放射線源であってよい。
【0086】
表面(例えば上面)上に薬剤が形成される幾つかのケースでは、インプラントの上面は、機器のいかなる部分又はその他のいかなるインプラントとも接触しないことが好ましい。なぜならば、そのような接触は、インプラント19上の薬剤(幹細胞など)を汚染したり、損傷したり、除去したりする恐れがあるからである。それ以外のケース(薬剤次第)では、薬剤を伴った表面が機器に接触してもよい。
【0087】
図10Aにおいて矢印によって示されるように、インプラント19は、ヘッド部分14の長手方向軸に実質的に平行な方向にヘッド部分14に挿入することができる。ヘッド部分14、14a、14bの開口16は、図10Aに示されるように、インプラント19の挿入の方向に垂直な面から傾斜していてよい。挿入の面に垂直な面は、図中、面X−Xとして示されている。好ましくは、開口の面は、インプラント19がヘッド部分14、14a、14bに挿入される方向の面から10〜80°、好ましくは20〜70°、より好ましくは30〜60°、尚いっそう好ましくは45〜55°の程度の角度を形成する。発明者らは、約50°の角度がとりわけ良く機能することを見いだした。これは、図中、角度Bとして示されている。
【0088】
インプラントがヘッド部分14、14a、14bに挿入されるのに伴って、インプラント19aの先端は、開口16の壁(好ましくは、開口16の壁は、湾曲した壁15の側面である)に接触する。インプラント19の面と開口16の面との間の角度ゆえに、インプラントは、挿入されるのに伴って、自動的に、湾曲した形状に撓んでいく。
【0089】
図10Bは、インプラントが開口16に挿入されてヘッド部分14、14a、14bの中に途中まで入った状態を示している。図からわかるように、インプラントは、ひとたび少量でも挿入されると、ヘッド部分14、14a、14bの内壁の内部湾曲に概ね対応する湾曲した形態をとる。この湾曲は、インプラントの埋め込みの方向に垂直な面内における湾曲である。図10Cは、インプラント19がヘッド部分14aに完全に挿入されて移送形態をとった状態を示している。ヘッドに完全に挿入されたときに、インプラントは、
湾曲位置にあり、インプラント19の湾曲は、好ましくは、ヘッド部分14、14a、14bの内部湾曲に適合している。インプラントは、湾曲されると撓んでいく。インプラント19は、その底面のみをヘッド部分14、14a、14bの内表面に接触させた状態でヘッド部分14、14a、14bに固定される。インプラント19は、したがって、インプラント19によって(インプラント19の弾力性ゆえに)ヘッド部分14、14a、14bに及ぼされる弾性力によって、適所に固定される。ヘッド部分14、14a、14bの壁は、図に示されるように、湾曲していてよい。湾曲した壁15は、インプラント19をヘッド部分14、14a、14b内に固定するのに役立つことができる。湾曲した壁15は、横断方向におけるインプラントの移動を制限するために、インプラント19の横断方向の縁に被さるように湾曲することが好ましい。壁は、インプラントが動いたときに、湾曲した壁15にインプラント19の縁のみが接触し、インプラント19の上面は接触しないように、インプラント19の縁に被さるように湾曲することが好ましい。図10Cに見られるように、壁15の湾曲は、インプラントを適所にしっかり保持するために、インプラントの縁に近づくほど増していく。図3に示されるように、湾曲した壁自体の代わりに、リップ22aが提供されてもよい。
【0090】
インプラント19は、インプラント19を開口16に押し入れることによって、ヘッド部分14、14a、14bに挿入することができる。或いは、インプラントは、例えばマイクロ鉗子によって、ヘッド部分14、14a、14bに引き入れることができる。マイクロ鉗子は、インプラント19をヘッド部分14、14a、14bに引き入れるときに、壁15と壁15との間の隙間を通ることができる。
【0091】
図11A〜11Cは、機器10のヘッド部分14、14a、14bからインプラント19を埋め込むプロセスを示している。インプラントは、埋め込まれるときに、ヘッド部分を直線状に進むように設計される。推進部材は、必要な直線移動を引き起こすことが好ましい。
【0092】
先ず、図11Aに示されるように、推進部材17をインプラント19の縁に接触させるために、アクチュエータ12が作動される。推進部材17の動きは、回転体12などのアクチュエータによって制御される。推進部材は、移動とともに誘導手段18aの経路を概ねたどることによって、正確な埋め込み方向への適切な移動を保証される。図11Bに示されるように、推進部材は、ヘッド部分14、14a、14bに沿って進むのに伴って、インプラント19を開口16から押し出し、それによってインプラント19を埋め込む。推進部材17は、インプラント19との接触を維持している期間の間、誘導手段18、18a、18bによって継続的に誘導されることが好ましい。これは、好ましくは、推進部材をインプラントの下に通すことによって達成される。インプラント19は、湾曲した形状をとっているので、その長手方向軸に沿ってより剛性が強く、したがって、押す力がインプラント19の縁に加えられたときに、インプラント19は、その構造的完全性を維持し、その長手方向軸に沿って潰れることはない。インプラント19は、機器10のヘッド部分14、14a、14bから出るとともに平坦化し始めることができる。図11Cに示されるように、インプラント19は、ヘッド部分から完全に出たときに(すなわち埋め込み位置にあるときに)、(インプラント自体が持つ弾性力のもとで)平坦な形状に戻ることができる。インプラントの形状は、それが埋め込まれた表面の形状に適合することができる。例えば、インプラントが眼の裏側に埋め込まれる場合は、そのインプラントは、最終的に、眼の裏側の湾曲に適合するように湾曲することができる。
【0093】
傾斜した開口16もまた、インプラント19の埋め込みに役立つことができる。インプラント19の一部が傾斜開口16を後にすると、その部分は、インプラント自体が持つ弾性的復元力のもとで平坦化し始めることができる。これ自体が傾斜開口に力を作用させ、そうして、インプラントがヘッド部分から更に出るのを助けることができる。したがって
、推進部材17は、インプラントをヘッド部分14、14a、14bから最後まで押し出す必要はなく、その移動は、ヘッド部分に沿った一部分に限定される。
【0094】
図14A及び図14Bは、ホルダ顎24がインプラント19を把持する代替設計のヘッド部分23を有する第5の実施形態を示している。ホルダ顎24を押し合わせ、インプラントを把持させるために、外鞘25を使用することができる。或いは、インプラントを把持するように、その他のメカニズムによってホルダ24を強いることが可能である。一実施形態では、外鞘25が(末端側の端から基部側の端に向かう方向に)引き戻されるのに伴って、ホルダは、(図14Bに示されるように)分かれ、インプラントを解放する。外管は、例えば回転体メカニズムの使用によって作動させることができる。回転体の回転運動は、鞘25の端を、インプラントに相対的に直線状に移動させることができる。或いは、別の実施形態では、ホルダ顎24及びインプラント19が、(例えば回転体によって)作動されたときに外鞘25の内側を通って直線状に移動することが可能である。
【0095】
図15A及び図15Bは、アクチュエータ及び推進部材としてコンベヤメカニズムを用いる第6の実施形態の機器を示している。アクチュエータとして、親指作動式のコンベヤベルト60が提供される。アクチュエータ60は、コンベヤベルトを含む変形ヘッド部分14bに接続される。図15Bに示されるように、インプラント19は、機器内においてヘッドコンベヤベルト62によって移送される。図15Bでは、インプラント19は、部分的に埋め込まれた位置で示されている。アクチュエータ60の動きは、コンベヤベルト52を(図15Bに示されるように反時計回りに)移動させ、これは、ひいては、インプラント19を機器から埋め込ませる。
【0096】
インプラントを機器に挿入するには、インプラント19の縁をヘッド部分14bの開口に添え付け、インプラント19を埋め込み位置から機器内の移送位置に送り入れるためにアクチュエータ60を反対方向に動かすだけでよい。
【0097】
図16A及び図16Bは、本発明の第7の実施形態を示している。この実施形態では、アクチュエータは、先端部分13の長さ方向に延び変形ヘッド部分14cに至る紐70である。ヘッド部分14cは、図16Bに更に詳しく示されており、図中、インプラント19は、部分的に埋め込まれた位置で示されている。
【0098】
図16Bからわかるように、紐70は、ヘッド部分14cの末端側の端に達し、そこで、小型のプーリ(不図示)に掛けられて、フック72によって終結される。フック72は、インプラント19に係合し、インプラントは、紐70が引っ張られることによって、(機器の内側に位置する)移送位置から(機器の外側に位置する)埋め込み位置に移動される。
【0099】
フック72は、プーリに到達すると、インプラント19から自動的に外れる。
【0100】
様々に異なる本発明の実施形態が説明されてきたことがわかる。1つの実施形態の各種の特徴は、その他の実施形態の特徴と組み合わせて使用することが可能である。例えば、本発明の全ての実施形態は、インプラントを、移送位置にある間は好ましくは横断方向に湾曲されているものと定めている。更に、本発明の全ての実施形態は、インプラントを埋め込むために、推進部材と誘導手段とを使用することができる。当業者にならば、考えられるその他の様々な変更形態が明らかである。
【0101】
本発明は、また、上述のように、インプラントを装填及び埋め込む方法も含む。
【0102】
図12は、本発明の機器を使用して本発明のインプラントを挿入するための代表的な位
置にスリット31を形成された眼30の図である。機器のヘッド部分と把持部との間の角度は、眼に形成されるスリット31を狭くすることができる。スリットのサイズは、ヘッド部分14のサイズに対応することも可能である。インプラント19は、ヘッド部分14内へ移送されるときに、湾曲した形状をとるように強いられるので、小サイズのスリット31を提供しながらも、より幅広のインプラントが眼に導入可能である。
【0103】
図13は、眼の内部の切り取り断面図である。インプラントを埋め込むための手順にしたがって、眼30の網膜の中又は近くにブリスタ32を形成することができる。次いで、スリット31を通じて眼に導入された機器10を使用して網膜下にインプラント19を送り込めるように、ブリスタ32の中に外科的に切開を形成することができる。
【0104】
より詳細には、手順は、以下のステップを踏む。
1. 埋め込みの手順を経ることになる眼の瞳孔を、シクロペントレート1%及びフェニレフリン2.5%によって開く。
2. 眼窩周囲の皮膚を洗浄し、眼窩周囲及び隣接する皮膚は覆うが手術野へのアクセスは可能にする形で滅菌ドレープをあてがう。
3. 眼の表面が乾かないように、手術の間中、一定期間ごとに、HPMC2%を含む平衡塩類溶液を眼の表面に塗布する。
4. 外眼角を挟んだ後、外眼角切開を実施する。
5. 眼瞼を退縮させる。
6. 角膜輪部から2mmのところで、局部的角膜周囲切開及び3強膜切開を実施する。7. 間接広角視システムを使用して、3ポート硝子体部切開(Alcon、部品番号:8065741008)を実施する。
8. 主要網膜血管まで後部硝子体剥離を誘発させる。
9. 更なる硝子体切開を続ける。
10. 360°レーザおよび凍結手術を実施する。機器の使用は、レーザ/凍結形式で記録される。
11. 平衡塩類溶液(Moorfields)乳酸ナトリウムの網膜下注入によって、上網膜鼻側静脈から視神経乳頭までの無血管領域において、局部的網膜ブレブ剥離(4×6mm)を達成する。
12. マイクロ硝子体網膜切開(MVR)ブレード及び垂直剪刃を使用して、網膜切開を拡大する。
13. パッチを用意する間に、MVR及びフェザーブレードを使用して、パッチ供給のための強膜切開を拡大する。
14. 強膜切開を通じてパッチを挿入する間、注入線を開いたままにする。
15. 網膜切開に移植片を係合させ、網膜下腔内へ進ませる。
16. バックフラッシュを使用して、空気中で網膜を復位させる。
17. 網膜切開にレーザを照射して記録する。周縁における検索及び涙に対するレーザ/凍結を行って記録する。
18. 空気からシリコーンオイルへの交換を行う。
19. ポリグラチン縫合糸を使用して、強膜切開を閉じる。供給強膜切開には6/0Vicrylを、そのほかでは7/0ビクリルを使用する。
20. 注入によって、硝子体内トリアムシノロンアセトニド1ml(40mg/ml)を眼の周囲(テノン嚢下内)に供給する。
21. クロラムフェニコール0.5%及び硫酸アトロピン1%を眼に局所的に塗布する。
22. ベタメタゾン0.1%を結膜嚢に塗布する。
23. 手術の最後に、注入によって、1mlトリアムシノロンアセトニド40mg/mlを眼の周囲(テノン嚢下内)に供給する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図12
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
図17A
図17B