(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ガスセンター装置は、前記ガス機器の動作状態を前記所定の変動推移で変動させることで消費されるガスの流量値の推移を予測した推移予測情報が予め記憶されたガスセンター記憶部をさらに備え、
前記ガスメータ異常診断部は、前記動作指令情報と、前記流量推移情報との相関に代え、または、加え、該流量推移情報と、前記推移予測情報との相関に基づいて前記ガスメータが異常であるか否か診断することを特徴とする請求項1に記載のガスメータシステム。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
(第1の実施形態:ガスメータシステム100)
本実施形態では、ガスメータに対して不正行為が行われたことを、ガスメータシステムの管理者側から能動的にガスの流量を変化させることで判断する。本実施形態では、ガスメータとして、所謂スマートメータを適用しているが、かかる場合に限らず、ガスの流量値および圧力値の検知機能を有する様々なガスメータを適用してもよい。
【0019】
図1は、ガスメータシステム100の概略的な構成を示した説明図である。
図1に示すように、ガスメータシステム100は、ガス機器110と、HEMS(Home Energy Management System)装置112と、ガスメータ120と、ゲートウェイ機器122と、ガスセンター装置124とを含んで構成される。
【0020】
ガス機器110は、需要箇所130に設けられる、例えば、給湯器や床暖房といった、ガスを燃焼させて被加熱物を加熱する機器である。ガス機器110とHEMS装置112との間では無線通信が実行され、ガス機器110は、ガス機器110の動作状態を示す状態確認情報を、HEMS装置112を介してガスセンター装置124へ送信する。ここで、状態確認情報とは、例えば、その時点における、ガス機器110の運転または停止の情報や、設定温度、設定燃焼力の情報である。
【0021】
HEMS装置112は、複数のガス機器110とガスセンター装置124とに接続され、需要箇所130に設けられた複数のガス機器110を管理、制御する。具体的には、HEMS装置112は、複数のガス機器110から状態確認情報を取得し、状態確認情報をガスセンター装置124に送信する。また、HEMS装置112は、ガスセンター装置124からの指令に応じ、需要箇所130内の複数のガス機器110の動作状態を制御する。さらに、HEMS装置112は、需要箇所130におけるガス消費量を表示部114に表示させ、ガス消費量の可視化を行う。
【0022】
ガスメータ120は、例えば、スマートメータで構成され、ガス事業者から配管132を通じて需要箇所130それぞれに供給されるガスの流量値を検知し、ガスセンター装置124からの指令に応じて、検知した流量値の積算値を示す流量積算情報や、流量値の推移を示す流量推移情報をガスセンター装置124に送信する。ここで、流量値の推移は、所定の時間毎に検知した流量値それぞれを、その検知時刻に関連付けた一連のデータである。ゲートウェイ機器122は、1または複数のガスメータ120のデータを収集し、また、1または複数のガスメータ120に対してデータを配信する。
【0023】
ガスセンター装置124は、コンピュータ等で構成され、ガス事業者やガス機器メーカ等、ガスメータシステム100の管理者側に属するか、ガスメータシステム100の管理者側が信頼できる者が運営している。ガスセンター装置124は、1または複数のHEMS装置112のデータを収集し、また、1または複数のHEMS装置112に対してデータを配信する。さらに、ガスセンター装置124は、1または複数のゲートウェイ機器122のデータを収集し、また、1または複数のゲートウェイ機器122に対してデータを配信する。したがって、あらゆる需要箇所130に配置されるHEMS装置112およびガスメータ120が有する情報を、ガスセンター装置124で集約し、一括して管理することができる。
【0024】
ここで、HEMS装置112とガスセンター装置124とは、例えばインターネット等のIPネットワーク126を経由して通信する。ゲートウェイ機器122とガスセンター装置124との間は、例えば、基地局128を含む携帯電話網やPHS(Personal Handyphone System)網等の既存の通信網を通じた無線通信が実行される。また、ガスメータ120同士およびガスメータ120とゲートウェイ機器122との間は、例えば、920MHz帯を利用するスマートメータ用無線システム(U−Bus Air等)を通じた無線通信が実行される。以下、ガス機器110とガスメータ120とガスセンター装置124の構成を詳述する。
【0025】
(ガス機器110)
図2は、ガス機器110の概略的な構成を示した機能ブロック図である。ガス機器110は、燃焼機能部140と、通信回路142と、ガス機器記憶部144と、ガス機器制御部146とを含んで構成される。燃焼機能部140は、ガスメータ120を経由して導入されたガスを燃焼させて被加熱物を加熱する。通信回路142は、HEMS装置112と無線通信を確立する。ガス機器記憶部144は、ROM、RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成され、ガス機器110に用いられるプログラムや各種データを記憶する。ガス機器制御部146は、CPUやDSPで構成され、ガス機器記憶部144に格納されたプログラムを用い、ガス機器110全体を制御する。また、ガス機器制御部146は、ガス機器通信部150、ガス機器動作状態変動部152として機能する。ガス機器通信部150は、通信回路142を通じてHEMS装置112と情報交換し、状態確認情報を、その検知時刻と共にHEMS装置112に送信する。そして、ガスセンター装置124で生成され、HEMS装置112に送信された動作指令情報を、HEMS装置112から受信する。ここで、動作指令情報は、ガス機器110の動作状態を所定の変動推移で変動させるための情報である。ガス機器動作状態変動部152は、受信された動作指令情報に基づいてガス機器110の動作状態を変動させる。
【0026】
(ガスメータ120)
図3は、ガスメータ120の概略的な構成を示した機能ブロック図である。ガスメータ120は、流量計160と、遮断弁162と、通信回路164と、ガスメータ記憶部166と、ガスメータ制御部168とを含んで構成される。流量計160は、ガスメータ120を経由するガスの流量値を計測する。遮断弁162は、例えばソレノイドやステッピングモータを用いた電磁弁等で構成され、ガスの流路を遮断または開放する。通信回路164は、ゲートウェイ機器122や他のガスメータ120と無線通信を確立する。ガスメータ記憶部166は、ROM、RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成され、ガスメータ120に用いられるプログラムや、流量積算情報、流量推移情報等の各種データを記憶する。
【0027】
ガスメータ制御部168は、CPUやDSPで構成され、ガスメータ記憶部166に格納されたプログラムを用い、ガスメータ120全体を制御する。また、ガスメータ制御部168は、流量値検知部170、流量推移情報生成部172、遮断部174、ガスメータ通信部176として機能する。流量値検知部170は、流量計160で計測された結果に基づいてガスの流量値を検知し、その検知時刻と共にガスメータ記憶部166に一時的に記憶させる。流量推移情報生成部172は、ガスメータ記憶部166に記憶されたガスの流量値とその検知時刻の情報から、ガスの流量値の推移を示す流量推移情報を生成し、ガスメータ記憶部166に一時的に記憶させる。遮断部174は、遮断弁162を制御してガスの需給を遮断する。ガスメータ通信部176は、通信回路164を通じてガスセンター装置124と情報交換し、例えば、流量推移情報生成部172で生成された流量推移情報を、ガスセンター装置124に送信する。
【0028】
(ガスセンター装置124)
図4は、ガスセンター装置124の概略的な構成を示した機能ブロック図である。ガスセンター装置124は、通信回路180と、ガスセンター記憶部182と、ガスセンター制御部184とを含んで構成される。通信回路180は、HEMS装置112と通信を確立し、また、基地局128を介してゲートウェイ機器122と無線通信を確立する。ガスセンター記憶部182は、ROM、RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成され、各HEMS装置112や各ガスメータ120から受信した、状態確認情報、その検知時刻、および、流量推移情報を、そのガスメータ120に関連付けて一時的に記憶する。
【0029】
ガスセンター制御部184は、CPUやDSPで構成され、ガスセンター記憶部182に記憶された情報に基づいてガスセンター装置124全体を制御する。また、ガスセンター制御部184は、ガスセンター通信部190、ガスセンター情報生成部192、ガスメータ異常診断部194として機能する。ガスセンター通信部190は、通信回路180を通じて各HEMS装置112および各ガスメータ120と情報交換する。そして、例えば、HEMS装置112から状態確認情報、およびその検知時刻を受信すると、ガスセンター記憶部182に一時的に記憶させる。また、ガスメータ120から流量推移情報を受信すると、ガスセンター記憶部182に一時的に記憶させる。ガスセンター情報生成部192は、状態確認情報、およびその検知時刻に基づいて動作指令情報を生成する。例えば、ガス機器110が利用開始(燃焼開始)直後であるか否かを判断し、利用開始直後であれば、所定の時間後に動作状態を変動させる動作指令情報を生成し、利用開始直後でなければ所定の時間より短い時間後に動作状態を変動させる動作指令情報を生成する。動作指令情報には、ガス機器110における動作状態の所定の変動推移を示す情報と、ガス機器110における動作状態の変動を開始する時刻および終了する時刻に関する情報とが含まれている。ガスメータ異常診断部194は、流量推移情報と、動作指令情報とに基づいてガスメータ120が異常であるか否か、すなわち、ガスメータ120に対して不正行為が行われているか否かを診断する。
【0030】
図5は、ガスメータシステム100の異常診断における情報の流れを示す説明図である。まず、ガスセンター装置124は、HEMS装置112へ、ガス機器110の状態確認情報を確認する指令を送信する。そして、ガス機器110は、ガス機器110自体の動作状態を確認し、
図5に示すように、ガス機器110からHEMS装置112を介してガスセンター装置124に状態確認情報が送信される。ここでは、状態確認情報として、例えば、ガス機器110が給湯器である場合、給湯器の給湯の設定温度が50℃、上水から給湯器へ給水されている水の温度が20℃、給湯量が10L/分であり、風呂の湯落としの設定温度(出湯の設定温度)が42℃で運転中であるという情報が送信される。次に、ガスセンター装置124は、状態確認情報に基づいて生成した動作指令情報を、HEMS装置112を介してガス機器110に送信する。ここでは、動作指令情報として、例えば、時刻T1から時刻T2までの5分間、給湯器の給湯の設定温度を50℃から45℃に変動させるという情報が送信される。ガス機器110は、受信した動作指令情報によりガス機器110の設定温度を50℃から45℃に変動させる。そして、時刻T2以後、ガスセンター装置124は、ガスメータ120へ、時刻T1から時刻T2での推移を含む流量推移情報を確認する指令を送信し、ガスメータ120は、ガスメータ記憶部166から流量推移情報を読み出し、ガスセンター装置124に送信する。そして、ガスセンター装置124はガスメータ120から流量推移情報を受信し、流量推移情報と、動作指令情報との相関に基づいて、ガスメータ120が異常であるか否かを診断する。以下、ガスメータ異常診断部194による異常診断を具体的に説明する。
【0031】
図6は、通常時のガスの需要に伴う流量値の変化を示す説明図であり、
図7は、異常診断時のガス機器110の動作状態の変動を示す説明図であり、
図8は、異常診断時のガスの流量値の変化を示す説明図である。
図6および
図8中、縦軸はガスメータ120におけるガスの流量値を、横軸は時刻を示す。
図7中、縦軸はガス機器110における設定温度を、横軸は時刻を示す。
図6を参照して理解できるように、通常時は、需要者がガスの利用を開始すると、ガスメータ120におけるガスの流量値が増加し、ガスの利用を終了すると流量値は低下する。
【0032】
本実施形態では、異常診断時において、
図7に示すように、ガスセンター装置124はガス機器110の動作状態を変動させる。具体的には、ガス機器110(ここでは給湯器)が設定温度50℃で運転中である場合に、動作指令情報を受信すると、動作指令情報に指定された時刻にガス機器110の動作状態を変動させる。ここでは、ガス機器110の設定温度を、時刻T1から時刻T2までの5分間だけ、45℃に低下させ、5分後に50℃に戻す。なお、給湯器で給湯された温水は、水が加えられて42℃に調整されてから風呂へ出湯される。したがって、時刻T1から時刻T2までの5分間は、給湯の設定温度が45℃であるため、45℃の温水に水が加えられて42℃に調整される。また、時刻T1より前と時刻T2より後では、給湯の設定温度が50℃であるため、50℃の温水により多くの水が加えられて42℃に調整される。つまり、給湯の設定温度を50℃から45℃に低下させても、出湯する温水の温度は42℃で変わらない。しかし、給湯器の動作状態の変動に伴ってガスの利用量が変動するので、ガスメータ120が正常である場合、当然流量値が変化する。ここでは、時刻T1から時刻T2までの5分間、給湯の設定温度が50℃から45℃に低下しているため、ガス機器110におけるガス利用量は時刻T1より前および時刻T2より後と比較して低下することとなる。したがって、異常診断時、正常なガスメータ120では、
図8(a)に示すように、時刻T1から時刻T2の間、ガスの流量値は低下する。そして、
図7に示すように、時刻T2を過ぎると、ガス機器110の設定温度は45℃から元の温度(50℃)に再設定されるため、ガス機器110におけるガスの流量値は、時刻T1より前の値まで上昇する。
【0033】
したがって、
図8(b)に示すように、利用開始から利用終了まで動作状態の変動に伴った流量値の変化が見られない場合や、
図8(c)に示すように、流量値の変化は見られるが、時刻T1から時刻T2の間ではない(ここでは、時刻Taから時刻Tbの間である)場合、つまり、時刻T1から時刻T2において流量値の変化が見られない場合には、ガスメータ120が異常である可能性があると判断することができる。
【0034】
そこで、ガスメータ異常診断部194は、ガス機器110の動作状態の変動開始時(ここでは、時刻T1)と変動終了時(ここでは、時刻T2)を含む、変動開始時から変動終了時までの間における、変動の指令に相当する動作指令情報と、その指令に対する実際の変動結果に相当する流量推移情報との相関を調べる。
【0035】
そして、ガスメータ異常診断部194において、ガス機器110の変動開始時から変動終了時までの間における流量推移情報と動作指令情報との間に相関があると判定された場合、ガス機器110が設けられた需要箇所130のガスメータ120は正常であると診断される。また、ガス機器110の変動開始時から変動終了時までの間における流量推移情報と動作指令情報との間に相関がないと判定された場合、ガス機器110が設けられた需要箇所130のガスメータ120は異常である可能性があると診断される。
【0036】
従来は、ガスメータ120により測定された値に変化が起こらない限り、ガスメータ120の不正による異常を判断することができなかった。本実施形態では、ガスセンター装置124から、つまり、ガス事業者やガス機器メーカ側からの指令によりガス機器110の動作状態を変動させる。したがって、ガスメータ120により検知された流量値に変化が期待できない場合でも、変化を受動的に待つことなく、能動的にガスメータ120の不正による異常を診断することが可能となる。
【0037】
また、例えば、温調機能付きの混合水栓や湯落としでは、温水と水とが混合されて温度調整がなされてから蛇口より出水される。このため、運転中に5分間程度動作状態を変動させたとしても、蛇口から出る温水の温度にはほとんど影響がない。また床暖房では、循環する熱媒の加熱を5分間程度止めたとしても、熱媒の温度が高いため、床の暖かさにはほとんど影響がない。このように、ガスメータシステム100では、動作状態を変動させても利用者への影響の低いガス機器110を、動作状態を変動させる対象であるガス機器110とすることで、ガス機器110の利用者に煩わしさを与えることなくガスメータ120の不正による異常の診断を実行することができる。
【0038】
(第1の実施形態の変形例1)
第1の実施形態において、ガスメータ異常診断部194は、流量推移情報と、動作指令情報との相関に基づいてガスメータ120の不正による異常を診断した。しかしながら、ガス機器110におけるガスの流量値は、例えば燃焼効率を上げるための制御等により、ガス機器110の種類によって固有の変動態様で推移する。このため、ガス機器110によっては、実測値である流量推移情報と動作指令情報との相関が低くなる場合がある。一方で、ガス機器110固有のガスの流量値の変動態様はある程度まで予測することができる。そこで、第1の実施形態の変形例1にかかるガスメータシステムでは、ガス機器110固有の変動態様で推移したガスの流量の実測値である流量推移情報と、ガス機器110固有の変動態様で推移するガス流量値の情報が含まれた、ガスの流量の予測値である推移予測情報との相関に基づいてガスメータ120の不正による異常を診断する。以下では、例えば、動作指令情報において、利用停止中であるガス機器110の利用を開始させ、所定の時間後に利用を終了させる場合について説明する。
【0039】
図9は、ガス機器110の利用開始時におけるガスの流量値の推移を示す説明図であり、
図9(a)はガスコンロを用いた場合、
図9(b)はストーブを用いた場合を示す説明図である。
図9中、縦軸はガスの流量値を示し、横軸は時間を示す。
図9では、ガス機器110の利用開始時を0分とし、ガス機器110の利用開始後の短い(例えば、5分間)期間でのガスの流量値の推移を示す。
図9(a)に示すように、ガスコンロでは、利用開始時に最大燃焼Qgまでガスの流量が上昇し、数秒で急減して一定の流量値で安定するパターンを示す。これは、例えばヤカンをガスコンロにかけて湯を沸かす場合、ガスコンロの点火時にはガスコンロ側が点火性能を発揮させるため自動的に最大火力に調整し、その後、ヤカンの底から火が溢れないように調理者が火力を調整するために生じるものである。この急激な減少後の流量値は、利用開始時の流量Qgの50パーセント未満の値となる。急激な減少後の流量値は調理者や調理器具の大きさ、調理の内容などにより異なるが、ここでは、約15パーセントとなることが分かっている場合を例とする。また、
図9(b)に示すように、ストーブでは、利用開始時に最大燃焼Qsまでガスの流量が上昇し、数十秒から数分で急減して一定の流量値で安定する。この急激な減少後の流量値は、利用開始時の流量Qsの約50パーセントの流量値となる。急激な減少後の流量値は、設定温度や室温により変化するが、ここでは、約50パーセントとなることが分かっている場合を例とする。
【0040】
このように、ガス機器110では、その種類によってそれぞれ異なるガスの流量値の推移を示す。そこで、第1の実施形態の変形例1にかかるガスメータシステムでは、複数種類のガス機器110について、ガス機器110を所定の変動推移で変動させることで消費されるガスの流量値の推移を予測した推移予測情報を、ガスセンター記憶部182に記憶する。
【0041】
第1の実施形態の変形例1にかかるガスメータシステムでは、ガスセンター装置124は、ガスセンター記憶部182に推移予測情報が記憶されているガス機器110の動作状態を変動させる動作指令情報を、HEMS装置112を介してガス機器110に送信し、ガス機器110の動作状態を変動させる。
【0042】
そして、ガスメータ120から流量推移情報を受信した後、ガスメータ異常診断部194は、ガス機器110の動作状態の変動開始時と変動終了時を含む、変動開始時から変動終了時までの間における流量推移情報と、ガスセンター記憶部182に記憶された推移予測情報との相関を調べる。その結果、ガス機器110の変動開始時から変動終了時までの間における流量推移情報と、推移予測情報とに相関があると判定された場合、ガスメータ120は正常であると診断される。また、ガス機器110の変動開始時と変動終了時を含む、変動開始時から変動終了時までの間における流量推移情報と、推移予測情報とに相関がないと判定された場合、ガスメータ120は異常である可能性があると診断される。
【0043】
このように、第1の実施形態の変形例1にかかるガスメータシステムでは、ガス機器110固有の変動態様で推移したガスの流量の実測値である流量推移情報と、ガス機器110固有の変動態様で推移するガス流量値の情報が含まれた、ガスの流量の予測値である推移予測情報との相関に基づいてガスメータ120の不正による異常を診断する。ガス機器110固有のガスの流量の変動態様について比較することができることから、第1の実施形態の変形例1にかかるガスメータシステムでは、異常の診断精度を高めることが可能となる。
【0044】
(第1の実施形態の変形例2)
第1の実施形態では、ガスメータ120がガスの流量値を検知し、ガスメータ異常診断部194は、流量推移情報と動作指令情報との相関に基づいてガスメータ120の不正による異常を診断した。第1の実施形態の変形例2にかかるガスメータシステムでは、ガスメータ220がガスの流量値とともに圧力値を検知し、ガスメータ異常診断部194は、検知された圧力値の圧力推移情報と、動作指令情報との相関に基づいてガスメータ220の不正による異常を診断する。
【0045】
図10は、第1の実施形態の変形例2にかかるガスメータ220の概略的な構成を示した機能ブロック図である。ガスメータ220は、上述した流量計160、遮断弁162、通信回路164、ガスメータ記憶部166、ガスメータ制御部268に加え、圧力計222を含んで構成される。また、ガスメータ制御部268は、上述した流量値検知部170、流量推移情報生成部172、遮断部174、ガスメータ通信部176に加え、圧力値検知部270、圧力推移情報生成部272として機能する。
【0046】
圧力計222は、ガスメータ220を経由するガスの圧力値を計測する。圧力値検知部270は、圧力計222で計測された結果に基づいてガスの圧力値を検知し、その検知時刻と共にガスメータ記憶部166に一時的に記憶させる。圧力推移情報生成部272は、ガスメータ記憶部166に記憶されたガスの圧力値とその検知時刻の情報から、ガスの圧力値の推移を示す圧力推移情報を生成する。圧力推移情報は、ガスメータ通信部176により、通信回路164を通じてガスセンター装置124に送信される。
【0047】
第1の実施形態の変形例2にかかるガスメータシステムでは、ガスセンター装置124が動作指令情報を、HEMS装置112を介してガス機器110に送信し、ガス機器110の動作状態を変動させる。そして、ガスセンター装置124は、ガスメータ220から、圧力推移情報を受信し、ガスメータ異常診断部194において、動作指令情報と、圧力推移情報との相関を調べる。
【0048】
図11は、ガスの需要に伴う圧力値と流量値の関係を示す説明図であり、
図12は、異常診断時の正常なガスメータ220における圧力値と流量値の変化を示す説明図であり、
図13は、異常診断時の異常なガスメータ220における圧力値と流量値の変化を示す説明図である。
図11〜
図13中、縦軸はガスメータ220におけるガスの圧力値または流量値を、横軸は時刻を示す。
図11は、ガスの需要に伴う圧力値と流量値の関係を示す説明図である。
図11を参照して理解できるように、需要者がガスを利用し、ガスメータ220の流量値が増すと、流量値の二乗で圧力損失が生じ、それに伴って圧力値が低下する。すなわち、本来なら、流量値の変化に連動して、流量値に相当する圧力値が変化するはずである。
【0049】
したがって、ガスセンター装置124により時刻T1から時刻T2までの5分間、ガス機器110(ここでは給湯器)の設定温度を50℃から45℃に低下させる(
図7参照)と、正常なガスメータ220では、
図12に示すように、時刻T1から時刻T2において、ガスの流量値は低下するとともに、圧力値は上昇する。そして、時刻T2を過ぎると、ガス機器110の設定温度は45℃から元の温度(50℃)に再設定されるため、ガス機器110におけるガスの流量値は時刻T1より前の値まで上昇するとともに、圧力値は時刻T1より前の値まで低下する。
【0050】
このため、
図13(a)に示すように、利用開始から利用終了まで動作状態の変動に伴った圧力値の変化が見られない場合や、
図13(b)に示すように、圧力値の変化は見られるが、時刻T1から時刻T2の間ではない(ここでは、時刻Taから時刻Tbの間)場合、つまり、時刻T1から時刻T2において圧力値の変化が見られない場合には、ガスメータ220が異常である可能性があると判断することができる。
【0051】
そこで、ガスメータ異常診断部194は、ガス機器110の動作状態の変動開始時(ここでは、時刻T1)と変動終了時(ここでは、時刻T2)を含む、変動開始時から変動終了時までの間における、変動の指令に相当する動作指令情報と、その指令に対する実際の変動結果に相当する圧力推移情報との相関を調べる。
【0052】
そして、ガスメータ異常診断部194において、ガス機器110の動作状態の変動開始時から変動終了時までの間における、圧力推移情報と、動作指令情報との間に相関があると判定された場合、ガス機器110が設けられた需要箇所130のガスメータ220は正常であると診断される。また、ガス機器110の動作状態の変動開始時から変動終了時までの間における、圧力推移情報と、動作指令情報との間に相関がないと判定された場合、ガス機器110が設けられた需要箇所130のガスメータ220は異常である可能性があると診断される。
【0053】
このように、ガス機器110の動作状態を変動させることで、ガスメータ220が検知する圧力値も変動する。このため、第1の実施形態の変形例2にかかるガスメータシステムにおいても、ガスメータ220により検知された圧力値の受動的な変化が期待できない場合でも、能動的にガスメータ220の不正による異常を診断することができる。また、異常診断の状況によって、ガスの流量値より圧力値の変動の方が、より相関をとりやすい場合、当該圧力値を参照することで、異常の診断精度を高めることが可能となる。
【0054】
(第1の実施形態の変形例3)
第1の実施形態では、ガスメータ120がガスの流量値を検知し、ガスメータ異常診断部194は、流量推移情報と、動作指令情報との相関に基づいてガスメータ120の不正による異常を診断した。第1の実施形態の変形例3にかかるガスメータシステムでは、ガスメータ異常診断部194は、流量推移情報と、圧力推移情報との相関に基づいてガスメータ220の不正による異常を診断する。
【0055】
図12に示すように、正常なガスメータ220では、流量値の変化に連動して、流量値に相当する圧力値が変化するはずである。したがって、本実施形態では、
図13(a)および(b)に示すように、動作状態の変動開始時(ここでは、時刻T1)と変動終了時(ここでは、時刻T2)を含む、変動開始時から変動終了時までの間における、流量推移情報と圧力推移情報とが相関していないことをもって、ガスメータ異常診断部194は、そのガスメータ220が異常である可能性があると診断できる。
【0056】
このように、第1の実施形態の変形例3にかかるガスメータシステムにおいても、ガスメータ220により検知された圧力値の受動的な変化が期待できない場合でも、能動的にガスメータ220の不正による異常を診断することができる。
【0057】
(第1の実施形態の変形例4)
図14は、第1の実施形態の変形例4にかかるガスメータシステム400の概略的な構成を示した説明図である。
図14に示すように、第1の実施形態の変形例4のガスメータシステム400では、ガス機器110と、HEMS装置412と、ガスメータ420と、ガスセンター装置124とを含んで構成される。
【0058】
第1の実施形態にかかるガスメータシステム100では、ガスメータ120からガスセンター装置124へ流量推移情報や圧力推移情報が送信される。一方、第1の実施形態の変形例4にかかるガスメータシステム400では、ガスメータ420とHEMS装置412とが接続され、ガスメータ420により生成された流量推移情報や、圧力推移情報が、HEMS装置412に送信される。したがって、ガスメータシステム400では、HEMS装置412から送信される流量推移情報、圧力推移情報に基づいて、ガスメータ異常診断部194がガスメータ420の不正による異常を診断することとなる。
【0059】
ガスメータ420が生成する流量推移情報や圧力推移情報がHEMS装置412に送信されることで、ガスメータシステム400における情報の送受信は、ガスセンター装置124とHEMS装置412との間で集約して行うことが可能となる。
【0060】
以上説明したように、第1の実施形態の変形例4にかかるガスメータシステム400においても、ガスメータ420により検知された値の受動的な変化が期待できない場合でも、能動的にガスメータ420の不正による異常を診断することが可能となる。
【0061】
(第1の実施形態の変形例5)
第1の実施形態では、ガスメータ120において流量推移情報が生成されるとした。第1の実施形態の変形例5にかかるガスメータシステムでは、ガスセンター装置524において流量推移情報が生成される。
【0062】
図15は、第1の実施形態の変形例5にかかるガスセンター装置524の概略的な構成を示した機能ブロック図である。ガスセンター装置524は、上述した通信回路180、ガスセンター記憶部182、ガスセンター制御部584を含んで構成される。また、ガスセンター制御部584は、上述したガスセンター通信部190、ガスセンター情報生成部192、ガスメータ異常診断部194に加え、流量推移情報生成部596として機能する。
【0063】
第1の実施形態の変形例5にかかるガスメータシステムでは、ガスメータ120は、流量値検知部170が検知したガスの流量値とその検知時刻を、検出した都度、ガスメータ通信部176からガスセンター装置524へ送信する。ガスセンター装置524は、ガスセンター通信部190において、ガスメータ120が検知したガスの流量値とその検知時刻を受信し、ガスセンター記憶部182に一時的に記憶させる。そして、流量推移情報生成部596は、ガスセンター記憶部182に記憶されたガスの流量値とその検知時刻の情報から、流量推移情報を生成し、ガスセンター記憶部182に一時的に記憶させる。
【0064】
このように、ガスメータ120とガスセンター装置524との通信頻度が高い場合は、ガスメータ120からガスの流量値をガスセンター装置524に送信し、ガスセンター装置524において流量推移情報を生成するとしてもよい。以上説明したように、第1の実施形態の変形例5にかかるガスメータシステムにおいても、ガスメータ120により検知された値の受動的な変化が期待できない場合でも、能動的にガスメータ120の不正による異常を診断することが可能となる。
【0065】
(第2の実施形態:電気メータシステム600)
本実施形態では、電気メータに対して不正行為が行われたことを、電気メータシステムの管理者側から能動的に電力量を変化させることで判断する。本実施形態では、電気メータとして、所謂スマートメータを適用しているが、かかる場合に限らず、電力量の検知機能を有す様々な電気メータを適用してもよい。
【0066】
図16は、電気メータシステム600の概略的な構成を示した説明図である。
図16に示すように、電気メータシステム600は、電気機器610と、HEMS装置612と電気メータ620と、ゲートウェイ機器622と、電気センター装置624とを含んで構成される。
【0067】
電気機器610は、需要箇所630に設けられる、例えば、エアコンや電灯といった、電気を熱源、光源、動力源などとする機器である。電気機器610とHEMS装置612との間では無線通信が実行され、電気機器610は、電気機器610の動作状態を示す状態確認情報を、HEMS装置612を介して電気センター装置624へ送信する。ここで、状態確認情報とは、例えば、その時点における、電気機器610の運転または停止の情報や、設定温度の情報である。
【0068】
HEMS装置612は、複数の電気機器610と電気センター装置624とに接続され、需要箇所630に設けられた複数の電気機器610を管理、制御する。具体的には、HEMS装置612は、複数の電気機器610から状態確認情報を取得し、状態確認情報を電気センター装置624に送信する。また、HEMS装置612は、電気センター装置624からの指令に応じ、需要箇所630内の複数の電気機器610の動作状態を制御する。さらに、HEMS装置612は、需要箇所630における電気消費量を表示部614に表示させ、電気消費量の可視化を行う。
【0069】
電気メータ620は、例えば、スマートメータで構成され、電気事業者から送電線632を通じて需要箇所630それぞれに供給される電気の電力量を検知し、電気センター装置624からの指令に応じて、検知した電力量の積算値を示す電力量積算情報や、電力量の推移情報である電力量推移情報を電気センター装置624に送信する。ここで、電力量の推移は、所定の時間毎に検知した電力量それぞれを、その検知時刻に関連付けた一連のデータである。ゲートウェイ機器622は、1または複数の電気メータ620のデータを収集し、また、1または複数の電気メータ620に対してデータを配信する。なお、電力量積算情報は、上記の第1の実施形態における流量積算情報に置き換えることができる。また、電力量推移情報は、上記の第1の実施形態における流量推移情報を置き換えることができる。
【0070】
電気センター装置624は、コンピュータ等で構成され、電気事業者や電気機器メーカ等、電気メータシステム600の管理者側に属する。電気センター装置624は、1または複数のHEMS装置612のデータを収集し、また、1または複数のHEMS装置612に対してデータを配信する。さらに、電気センター装置624は、1または複数のゲートウェイ機器622のデータを収集し、また、1または複数のゲートウェイ機器622に対してデータを配信する。したがって、あらゆる需要箇所630に配置されるHEMS装置612および電気メータ620が有する情報を、電気センター装置624で集約し、一括して管理することができる。
【0071】
ここで、HEMS装置612と電気センター装置624とは、例えばインターネット等のIPネットワーク126を経由して通信する。ゲートウェイ機器622と電気センター装置624との間は、例えば、基地局628を含む携帯電話網やPHS網等の既存の通信網を通じた無線通信が実行される。また、電気メータ620同士および電気メータ620とゲートウェイ機器622との間は、例えば、920MHz帯を利用するスマートメータ用無線システムを通じた無線通信が実行される。以下、電気機器610と電気メータ620と電気センター装置624の構成を詳述する。
【0072】
(電気機器610)
図17は、電気機器610の概略的な構成を示した機能ブロック図である。電気機器610は、機器機能部640と、通信回路642と、電気機器記憶部644と、電気機器制御部646とを含んで構成される。機器機能部640は、電気メータ620を経由して送られた電気を熱源、光源、動力源として作動する。電気機器制御部646は、CPUやDSPで構成され、電気機器記憶部644に格納されたプログラムを用い、電気機器610全体を制御する。また、電気機器制御部646は、電気機器通信部650、電気機器動作状態変動部652として機能する。電気機器通信部650は、通信回路642を通じてHEMS装置612と情報交換し、状態確認情報を、その検知時刻と共に所定時間毎にHEMS装置612に送信する。そして、電気センター装置624で生成され、HEMS装置612に送信された動作指令情報を、HEMS装置612から受信する。ここで、動作指令情報は、電気機器610の動作状態を所定の変動推移で変動させるための情報である。電気機器動作状態変動部652は、受信された動作指令情報に基づいて電気機器610の動作状態を変動させる。
【0073】
(電気メータ620)
図18は、電気メータ620の概略的な構成を示した機能ブロック図である。電気メータ620は、電力量計660と、遮断器662と、通信回路664と、電気メータ記憶部666と、電気メータ制御部668とを含んで構成される。電力量計660は、電気メータ620を経由する電力量を計測する。遮断器662は、リレー回路等で構成され、電気の流路を遮断または開放する。通信回路664は、ゲートウェイ機器622や他の電気メータ620と無線通信を確立する。電気メータ記憶部666は、ROM、RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成され、電気メータ620に用いられるプログラムや、電力量積算情報、電力量推移情報等の各種データを記憶する。
【0074】
電気メータ制御部668は、CPUやDSPで構成され、電気メータ記憶部666に格納されたプログラムを用い、電気メータ620全体を制御する。また、電気メータ制御部668は、電力量検知部670、電力量推移情報生成部672、遮断部674、電気メータ通信部676として機能する。電力量検知部670は、電力量計660で計測された結果に基づいて電力量を検知し、その検知時刻と共に電気メータ記憶部666に一時的に記憶させる。電力量推移情報生成部672は、電気メータ記憶部666に記憶された電力量とその検知時刻の情報から、電力量の推移を示す電力量推移情報を生成し、電気メータ記憶部666に一時的に記憶させる。なお、電力量推移情報生成部672は、上記の第1の実施形態における流量推移情報生成部172に置き換えることができる。遮断部674は、遮断器662を制御して電気の需給を遮断する。電気メータ通信部676は、通信回路664を通じて電気センター装置624と情報交換し、例えば、電力量推移情報生成部672で生成された電力量推移情報を、電気センター装置624に送信する。
【0075】
(電気センター装置624)
図19は、電気センター装置624の概略的な構成を示した機能ブロック図である。電気センター装置624は、通信回路680と、電気センター記憶部682と、電気センター制御部684とを含んで構成される。通信回路680は、HEMS装置612と通信を確立し、また、基地局628を介してゲートウェイ機器622と無線通信を確立する。電気センター記憶部682は、ROM、RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成され、各HEMS装置612や各電気メータ620から受信した状態確認情報、その検知時刻、および、電力量推移情報を、その電気メータ620に関連付けて一時的に記憶する。
【0076】
電気センター制御部684は、CPUやDSPで構成され、電気センター記憶部682に記憶された情報に基づいて電気センター装置624全体を制御する。また、電気センター制御部684は、電気センター通信部690、電気センター情報生成部692、電気メータ異常診断部694として機能する。電気センター通信部690は、通信回路680を通じて各HEMS装置612および各電気メータ620と情報交換する。そして、例えば、HEMS装置612から状態確認情報、およびその検知時刻を受信すると、電気センター記憶部682に一時的に記憶させる。また、電気メータ620から電力量推移情報を受信すると、電気センター記憶部682に一時的に記憶させる。電気センター情報生成部692は、状態確認情報、およびその検知時刻に基づいて動作指令情報を生成する。例えば、電気機器610が利用開始直後であるか否かを判断し、利用開始直後であれば、所定の時間後に動作状態を変動させる動作指令情報を生成し、利用開始直後でなければ所定の時間より短い時間後に動作状態を変動させる動作指令情報を生成する。動作指令情報には、電気機器610における動作状態の所定の変動推移を示す情報と、電気機器610における動作状態の変動を開始する時刻および終了する時刻に関する情報とが含まれている。電気メータ異常診断部694は、電力量推移情報と、動作指令情報とに基づいて電気メータ620が異常であるか否か、すなわち、電気メータ620に対して不正行為が行われているか否かを診断する。
【0077】
図20は、電気メータシステム600における異常診断の流れを示す説明図である。まず、電気センター装置624は、HEMS装置612へ、電気機器610の状態確認情報を確認する指令を送信する。そして、電気機器610は、電気機器610自体の動作状態を確認し、
図20に示すように、電気機器610からHEMS装置612を介して電気センター装置624に状態確認情報が送信される。ここでは、状態確認情報として、例えば、電気機器610がエアコンである場合、エアコンの設定温度が22℃で運転中であるという情報が送信される。次に、電気センター装置624は、状態確認情報に基づいて生成した動作指令情報を、HEMS装置612を介して電気機器610に送信する。ここでは、動作指令情報として、例えば、時刻T3から時刻T4までの5分間、暖房中のエアコンの設定温度を22℃から20℃に変動させるという情報が送信される。電気機器610は、受信した動作指令情報により電気機器610の設定温度を22℃から20℃に変動させる。そして、時刻T4以後、電気センター装置624は、電気メータ620へ、時刻T3から時刻T4での推移を含む電力量推移情報を確認する指令を送信し、電気メータ620は、電気メータ記憶部666から電力量推移情報を読み出し、電気センター装置624に送信する。そして、電気センター装置624は電気メータ620から電力量推移情報を受信し、変動の指令に相当する動作指令情報と、その指令に対する実際の変動結果に相当する電力量推移情報との相関に基づいて、電気メータ620が異常であるか否かを診断する。
【0078】
具体的には、電気メータ異常診断部694において、電気機器610の動作状態の変動開始時(ここでは、時刻T3)と変動終了時(ここでは、時刻T4)を含む、変動開始時から変動終了時までの間における動作指令情報と電力量推移情報とに相関があると判定された場合(例えば、時刻T3から時刻T4までの間、電力量が相当量低下している場合)、電気機器610が設けられた需要箇所630の電気メータ620は正常であると診断される。また、電気機器610の動作状態の変動開始時から変動終了時までの間における動作指令情報と電力量推移情報とに相関がないと判定された場合、電気機器610が設けられた需要箇所630の電気メータ620は異常である可能性があると診断される。したがって、電気メータシステム600においても、電気メータ620により測定された値に変化が期待できない場合でも、変化を受動的に待つことなく、能動的に電気メータ620の不正による異常を診断することが可能となる。
【0079】
(第2の実施形態の変形例1)
第2の実施形態において、電気メータ異常診断部694は、電力量推移情報と、動作指令情報との相関に基づいて電気メータ620の不正による異常を診断した。しかしながら、電気機器610における電力量は、例えば電力消費の効率を上げるための制御等により、電気機器610の種類によって固有の変動態様で推移する。このため、電気機器610によっては、実測値である電力量推移情報と動作指令情報との相関が低くなる場合があった。一方で、電気機器610固有の電力量の変動態様はある程度まで予測することができる。そこで、第2の実施形態の変形例1にかかる電気メータシステムでは、電気機器610固有の変動態様で推移した電力量の実測値である電力量推移情報と、電気機器610固有の変動態様で推移する電力量の情報が含まれた、電力量の予測値である推移予測情報との相関に基づいて電気メータ620の不正による異常を診断する。以下では、例えば、動作指令情報において、利用停止中である電気機器610の利用を開始させ、所定の時間後に利用を終了させる場合について、電気機器610としてエアコンを例に説明する。
【0080】
図21は、エアコンの利用開始時における消費電力の推移を示す説明図である。
図21中、縦軸は消費電力を示し、横軸は時間を示す。
図21では、エアコンの利用開始時を0分とし、エアコンの利用開始後の長い(例えば、60分)期間での消費電力パターンを示す。
図21に示すように、エアコンでは、利用開始から約10分後に最大の消費電力(ここでは、約1400W)まで上昇し、約10分で減少して一定の消費電力(ここでは、約300W)で安定するパターンを示す。
【0081】
このように、電気機器610は、その種類によってそれぞれ異なる消費電力の推移(電力量の推移)を示す。そこで、第2の実施形態の変形例1にかかる電気メータシステムでは、複数種類の電気機器610について、電気機器610を所定の変動推移で変動させることで消費される電力量の推移を予測した推移予測情報を電気センター記憶部682に記憶する。
【0082】
第2の実施形態の変形例1にかかる電気メータシステムでは、電気センター装置624は、電気センター記憶部682に推移予測情報が記憶されている電気機器610の動作状態を変動させる動作指令情報を、HEMS装置612を介して電気機器610に送信し、電気機器610の動作状態を変動させる。
【0083】
そして、電気メータ620から電力量推移情報を受信した後、電気メータ異常診断部694は、電気機器610の動作状態の変動開始時と変動終了時を含む、変動開始時から変動終了時までの間における電力量推移情報と、電気センター記憶部682に記憶された推移予測情報との相関を調べる。その結果、電気機器610の変動開始時から変動終了時までの間における電力量推移情報と、推移予測情報とに相関があると判定された場合、電気メータ620は正常であると診断される。電気機器610の変動開始時から変動終了時までの間における電力量推移情報と、推移予測情報とに相関がないと判定された場合、電気メータ620は異常である可能性があると診断される。
【0084】
このように、第2の実施形態の変形例1にかかる電気メータシステムでは、電気機器610固有の変動態様で推移した電力量の実測値である電力量推移情報と、電気機器610の固有の変動態様で推移する電力量の情報が含まれた、電力量の予測値である推移予測情報との相関に基づいて電気メータ620の不正による異常を診断する。電気機器610固有の電力量の変動態様について比較することができることから、第2の実施形態の変形例1にかかる電気メータシステムでは、異常の診断精度を高めることが可能となる。
【0085】
(第2の実施形態の変形例2)
第2の実施形態では、電気メータ620において電力量推移情報が生成されるとした。第2の実施形態の変形例2にかかる電気メータシステムでは、電気センター装置724において電力量推移情報が生成される。
【0086】
図22は、第2の実施形態の変形例2にかかる電気センター装置724の概略的な構成を示した機能ブロック図である。電気センター装置724は、上述した通信回路680、電気センター記憶部682、電気センター制御部784を含んで構成される。また、電気センター制御部784は、上述した電気センター通信部690、電気センター情報生成部692、電気メータ異常診断部694に加え、電力量推移情報生成部796として機能する。
【0087】
第2の実施形態の変形例2にかかる電気メータシステムでは、電気メータ620は、電力量検知部670が検知した電力量とその検知時刻を、検出した都度、電気メータ通信部676から電気センター装置724へ送信する。電気センター装置724は、電気センター通信部690において、電気メータ620が検知した電力量とその検知時刻を受信し、電気センター記憶部682に一時的に記憶させる。そして、電力量推移情報生成部796は、電気センター記憶部682に記憶された電力量とその検知時刻の情報から、電力量推移情報を生成し、電気センター記憶部682に一時的に記憶させる。
【0088】
このように、電気メータ620と電気センター装置624との通信頻度が高い場合は、電気メータ620から電力量を電気センター装置724に送信し、電気センター装置724において電力量推移情報を生成するとしてもよい。以上説明したように、第2の実施形態の変形例2にかかる電気メータシステムにおいても、電気メータ620により検知された値の受動的な変化が期待できない場合でも、能動的に電気メータ620の不正による異常を診断することが可能となる。
【0089】
また、上述した実施形態ではガスメータ120、220、420、電気メータ620の異常を検出するとしているが、ガスメータ120、220、420、電気メータ620が正常であることが分かっている場合、ガス機器110、電気機器610の異常を検出することが可能となる。ガス機器110、電気機器610の異常とは、例えば、ガス機器110、電気機器610がガスセンター装置124、524、電気センター装置624、724からの指令に従わずに動作する場合である。電気機器610を例に説明すると、需要箇所630において電気機器610の利用者が自動デマンドレスポンス(Automated Demand Response)に加入している場合、電力需要がピークになる時間帯に、電気センター装置624、724からの指令によって、需要箇所630における電力の使用量が抑制される。一方、電気機器610の利用者は、電気センター装置624、724からの指令に従う代わりに、電力使用料の割引を受けることができる。したがって、電気機器610の利用者が自動デマンドレスポンスに加入しているにも拘わらず、電気機器610が電気センター装置624、724からの指令に従わずに動作し続けて電力を使用し続ける場合、電気機器610は異常であるとされる。そして、上述した電気メータシステム600、変形例1、および変形例2にかかる電気メータシステムでは、電気メータ620が正常である場合には、このような電気機器610の異常を検出することができる。
【0090】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0091】
例えば、上述した実施形態におけるガスメータシステム100、400に関する動作や処理は、電気メータシステム600に対しても適用できる。すなわち、ガスメータシステム100、400の構成に含まれる、ガス機器110を電気機器610に、ガス機器通信部150を電気機器通信部650に、ガス機器動作状態変動部152を電気機器動作状態変動部652に、ガスメータ120、220、420を電気メータ620に、流量値検知部170を電力量検知部670に、流量推移情報生成部172、596を電力量推移情報生成部672、796に、ガスメータ通信部176を電気メータ通信部676に、ガスセンター装置124、524を電気センター装置624、724に、ガスセンター記憶部182を電気センター記憶部682に、ガスセンター通信部190を電気センター通信部690に、ガスセンター情報生成部192を電気センター情報生成部692に、ガスメータ異常診断部194を電気メータ異常診断部694に置き換えることで、電気メータシステム600に適応することができる。
【0092】
また、上述した実施形態では、ガスメータ120、220、420、電気メータ620に対して不正行為を行った場合を例に挙げているが、当該事象は、ガスメータ120、220、420における流量計160、ガスメータ220における圧力計222、電気メータ620における電力量計660の故障時にも生じ得る。したがって、本実施形態の診断対象である異常は、不正に加え、故障の場合も含む。
【0093】
また、上述した第1の実施形態の変形例1では、ガスメータ異常診断部194は、流量推移情報と推移予測情報との相関に基づく診断を行うとしたが、流量推移情報と推移予測情報との相関に基づく診断と、流量推移情報と動作指令情報との相関に基づく診断との双方の診断を行うとしてもよい。同様に、第2の実施形態の変形例1では、電気メータ異常診断部694は、電力量推移情報と推移予測情報との相関に基づく診断を行うとしたが、電力量推移情報と推移予測情報との相関に基づく診断と、電力量推移情報と動作指令情報との相関に基づく診断との双方の診断を行うとしてもよい。
【0094】
また、上述した実施形態では、ガス機器110におけるガス機器通信部150は、HEMS装置112を介してガスセンター装置124、524と通信を行うとしたが、ガス機器通信部150が直接ガスセンター装置124、524と通信を行ってもよい。同様に、電気機器610における電気機器通信部650は、HEMS装置612を介して電気センター装置624、724と通信を行うとしたが、電気機器通信部650が直接電気センター装置624、724と通信を行ってもよい。
【0095】
また、上述した実施形態では、一軒の需要箇所130、630内(住宅内)で利用されるHEMSを例に説明したが、マンションのエネルギー管理システムであるMEMS(Mansion Energy Management System)や、オフィス・商工業ビルのエネルギー管理システムであるBEMS(Building Energy Management System)でも同様に本発明を適用することができる。