特許第6035266号(P6035266)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6035266
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】X線撮影装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20161121BHJP
   A61B 6/14 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   A61B6/03 321L
   A61B6/14 311
   A61B6/03 340A
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-32480(P2014-32480)
(22)【出願日】2014年2月24日
(65)【公開番号】特開2015-156923(P2015-156923A)
(43)【公開日】2015年9月3日
【審査請求日】2016年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141598
【氏名又は名称】株式会社吉田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(72)【発明者】
【氏名】竹本 照美
【審査官】 遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−295680(JP,A)
【文献】 特開2013−135842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/03
A61B 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線束を被写体に照射するX線源と、
前記被写体を透過した前記X線束を検出するX線撮像手段と、
前記X線源および前記X線撮像手段を支持する支持部材と、
該支持部材を回転させて前記X線源および前記X線撮像手段を前記被写体の周りで旋回させる旋回駆動手段と、
前記X線撮像手段により検出される前記X線束の前記被写体における透過部位をシフトさせるシフト手段と、
前記旋回駆動手段および前記シフト手段の動作を制御する制御部と、を備え、
前記X線撮像手段により検出される前記X線束からの投影データの取得時における前記X線束を、該X線束の中心軸に垂直でかつ撮影領域の中心軸を通る平面で切断した場合に得られる断面を撮影特定面とし、前記撮影領域を該撮影領域の中心軸に沿う方向から見た平面における単位面積当たりに存在する前記撮影特定面の枚数を投影データの重なり密度としたとき、前記制御部は、前記撮影領域の外側部分と中心側部分とで前記投影データの重なり密度を均一化する均一化制御を行うこと、
を特徴とするX線撮影装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記旋回駆動手段を動作させることで前記支持部材を回転させて前記X線源および前記X線撮像手段を前記被写体の周りで旋回させることと、前記シフト手段を動作させることで前記X線撮像手段により検出される前記X線束の前記被写体における透過部位をシフトさせることとを同時に実行させながら、前記X線撮像手段による前記被写体を透過した前記X線束の検出を実行させること、
を特徴とする請求項1に記載のX線撮影装置。
【請求項3】
前記均一化制御は、前記X線撮像手段により検出される前記X線束が前記撮影領域の外側部分を通るときの前記X線束の前記被写体における透過部位を前記シフト手段によりシフトさせる速度を、前記X線撮像手段により検出される前記X線束が前記撮影領域の中心側部分を通るときの前記X線束の前記被写体における透過部位を前記シフト手段によりシフトさせる速度よりも遅くする制御であること、
を特徴とする請求項1または請求項2に記載のX線撮影装置。
【請求項4】
前記均一化制御は、前記X線撮像手段により検出される前記X線束が前記撮影領域の外側部分を通るときの単位時間当たりの前記投影データの取得回数を、前記X線撮像手段により検出される前記X線束が前記撮影領域の中心側部分を通るときの単位時間当たりの前記投影データの取得回数よりも多くする制御であること、
を特徴とする請求項1または請求項2に記載のX線撮影装置。
【請求項5】
前記均一化制御は、前記X線撮像手段により検出される前記X線束が前記撮影領域の外側部分を通るときの前記X線源および前記X線撮像手段を前記被写体の周りで前記旋回駆動手段により旋回させる速度を、前記X線撮像手段により検出される前記X線束が前記撮影領域の中心側部分を通るときの前記X線源および前記X線撮像手段を前記被写体の周りで前記旋回駆動手段により旋回させる速度よりも遅くする制御であること、
を特徴とする請求項1または請求項2に記載のX線撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線撮影装置に関し、特に、CT(コンピュータ断層撮影法)画像を取得するX線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線束を被写体に照射するX線源と、被写体を透過したX線束を検出するX線撮像手段と、X線源およびX線撮像手段を被写体の周りで旋回させる旋回駆動手段とを備え、CT撮影およびパノラマ撮影が可能な歯科診療用のX線撮影装置が知られている(特許文献1参照)。この特許文献1に記載のX線撮影装置は、CT撮影に必要とされる広範囲な検出エリアを有する二次元センサをX線撮像手段として使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−225455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のX線撮影装置は、広範囲な検出エリアを有する二次元センサを被写体の周りで旋回させながら、X線束を被写体の全体に照射して所定のサンプリング時間間隔で撮影、すなわち二次元センサにより検出されるX線束からの投影データの取得を行う。この場合、円柱形状を呈する撮影領域の外側部分と中心側部分とでは、撮影領域の円周方向における投影データの重なり密度が異なる。つまり、撮影領域の外側部分では投影データの重なり密度が中心側部分よりも粗くなるため、撮影領域の外側部分の画質が中心側部分よりも低下してしまう。
【0005】
本発明は、前記した事情に鑑みてなされたものであり、撮影領域全体において画質の向上を図ることができるX線撮影装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、請求項1に記載の発明に係るX線撮影装置は、X線束を被写体に照射するX線源と、前記被写体を透過した前記X線束を検出するX線撮像手段と、
前記X線源および前記X線撮像手段を支持する支持部材と、該支持部材を回転させて前記X線源および前記X線撮像手段を前記被写体の周りで旋回させる旋回駆動手段と、前記X線撮像手段により検出される前記X線束の前記被写体における透過部位をシフトさせるシフト手段と、前記旋回駆動手段および前記シフト手段の動作を制御する制御部と、を備え、前記X線撮像手段により検出される前記X線束からの投影データの取得時における前記X線束を、該X線束の中心軸に垂直でかつ撮影領域の中心軸を通る平面で切断した場合に得られる断面を撮影特定面とし、前記撮影領域を該撮影領域の中心軸に沿う方向から見た平面における単位面積当たりに存在する前記撮影特定面の枚数を投影データの重なり密度としたとき、前記制御部は、前記撮影領域の外側部分と中心側部分とで前記投影データの重なり密度を均一化する均一化制御を行うこと、を特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、X線撮像手段により検出されるX線束の被写体における透過部位をシフト手段によりシフトさせることにより、比較的狭い範囲の検出エリアを有するX線撮像手段を、透過部位のシフトに対応する範囲における仮想的な広範囲の二次元X線撮像手段として機能させることができるとともに、X線撮像手段により検出されるX線束が撮影領域の外側部分を通るときの投影データの重なり密度と、X線撮像手段により検出されるX線束が撮影領域の中心側部分を通るときの投影データの重なり密度とが均一化される。
したがって、撮影領域全体において画質の向上を図ることができるX線撮影装置を提供することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のX線撮影装置であって、前記制御部は、前記旋回駆動手段を動作させることで前記支持部材を回転させて前記X線源および前記X線撮像手段を前記被写体の周りで旋回させることと、前記シフト手段を動作させることで前記X線撮像手段により検出される前記X線束の前記被写体における透過部位をシフトさせることとを同時に実行させながら、前記X線撮像手段による前記被写体を透過した前記X線束の検出を実行させること、を特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、X線源およびX線撮像手段の被写体の周りでの旋回と、X線撮像手段により検出されるX線束の被写体における透過部位のシフトとを同時に実行しながら、被写体を透過したX線束の検出を実行することで、X線撮像手段等の被動部材の一時的な停止および再始動を削減することができる。この結果、X線撮影の開始から終了までの間の被動部材の一時停止や再始動の動作のための速度低下を抑制できるため、全体的な撮影時間が短くて済み、撮影作業効率が向上する。さらに、被動部材に作用する加速度・減速度を減少させることができるので、該加速度・減速度に基づく慣性力を低減できることから、該慣性力に起因する被動部材の振動を低減できて、被動部材の耐久性の向上が可能になる。すなわち、比較的狭い範囲の検出エリアを有するX線撮像手段を使用してコストを低減できるとともに、撮影作業効率の向上、およびX線撮像手段等の被動部材の振動の低減を図ることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のX線撮影装置であって、前記均一化制御は、前記X線撮像手段により検出される前記X線束が前記撮影領域の外側部分を通るときの前記X線束の前記被写体における透過部位を前記シフト手段によりシフトさせる速度を、前記X線撮像手段により検出される前記X線束が前記撮影領域の中心側部分を通るときの前記X線束の前記被写体における透過部位を前記シフト手段によりシフトさせる速度よりも遅くする制御であること、を特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、X線束の被写体における透過部位をシフト手段によりシフトさせる速度を撮影領域の外側部分と中心側部分とで異ならせることにより、撮影領域の外側部分と中心側部分とで投影データの重なり密度を均一化することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のX線撮影装置であって、前記均一化制御は、前記X線撮像手段により検出される前記X線束が前記撮影領域の外側部分を通るときの単位時間当たりの前記投影データの取得回数を、前記X線撮像手段により検出される前記X線束が前記撮影領域の中心側部分を通るときの単位時間当たりの前記投影データの取得回数よりも多くする制御であること、を特徴とする。
【0013】
このような構成によれば、単位時間当たりの投影データの取得回数を撮影領域の外側部分と中心側部分とで異ならせることにより、撮影領域の外側部分と中心側部分とで投影データの重なり密度を均一化することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のX線撮影装置であって、前記均一化制御は、前記X線撮像手段により検出される前記X線束が前記撮影領域の外側部分を通るときの前記X線源および前記X線撮像手段を前記被写体の周りで前記旋回駆動手段により旋回させる速度を、前記X線撮像手段により検出される前記X線束が前記撮影領域の中心側部分を通るときの前記X線源および前記X線撮像手段を前記被写体の周りで前記旋回駆動手段により旋回させる速度よりも遅くする制御であること、を特徴とする。
【0015】
このような構成によれば、X線源およびX線撮像手段を被写体の周りで旋回駆動手段により旋回させる速度を撮影領域の外側部分と中心側部分とで異ならせることにより、撮影領域の外側部分と中心側部分とで投影データの重なり密度を均一化することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、撮影領域全体において画質の向上を図ることができるX線撮影装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態に係るX線撮影装置の概略構成を模式的に示す側面図である。
図2】シフト手段の動作を説明するための要部底面図である。
図3】X線撮影装置の主要な制御構成を示すブロック図である。
図4】CT撮影動作の概略の手順を示すフローチャートである。
図5】X線源およびX線センサを被写体の周りで旋回させる場合の1周目の様子を模式的に示す平面図である。
図6】X線源およびX線センサを被写体の周りで旋回させる場合の2周目の様子を模式的に示す平面図である。
図7】X線源およびX線センサを被写体の周りで旋回させる場合の3周目の様子を模式的に示す平面図である。
図8】X線源およびX線センサを被写体の周りで旋回させる場合の4周目の様子を模式的に示す平面図である。
図9】X線源およびX線センサを被写体の周りで旋回させる場合の5周目の様子を模式的に示す平面図である。
図10図5図9を重ね合わせて表示した平面図である。
図11】再構成画像取得可能領域を説明するための平面図である。
図12】X線センサにより検出されるX線束が撮影領域の外側部分を通るときの様子を模式的に示す斜視図である。
図13】X線センサにより検出されるX線束が撮影領域の中心側部分を通るときの様子を模式的に示す斜視図である。
図14】撮影領域をその中心軸に沿う方向から見た様子を模式的に示す部分平面図である。
図15】比較例に係る撮影領域をその中心軸に沿う方向から見た様子を模式的に示す部分平面図である。
図16】本発明の第2の実施形態に係るX線撮影装置の概略構成を模式的に示す側面図である。
図17】第2の実施形態に係るシフト手段の周辺を模式的に示す平面図である。
図18】第2の実施形態に係るシフト手段の周辺を模式的に示す斜視図である。
図19】本発明の第3の実施形態に係るX線撮影装置の概略構成を模式的に示す側面図である。
図20】第5の実施形態に係る撮影領域をその中心軸に沿う方向から見た様子を模式的に示す部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、以下に示す図面において、同一の部材または相当する部材間には同一の参照符号を付するものとする。また、部材のサイズおよび形状は、説明の便宜のため、変形または誇張して模式的に表す場合がある。
【0019】
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の第1の実施形態に係るX線撮影装置1の概略構成を模式的に示す側面図である。図2は、シフト手段5の動作を説明するための要部底面図である。
【0020】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る歯科用のX線撮影装置1は、X線束Lを被写体Kに照射するX線源11aを有するヘッド11と、X線撮像手段としてのX線センサ12と、X線源11aおよびX線センサ12を支持する支持部材としての円弧移動アーム2と、この円弧移動アーム2をアーム旋回中心軸C1の周りに回転させるサーボモータ等からなる旋回駆動手段3と、X線センサ12により検出されるX線束Lの被写体Kにおける透過部位をシフトさせるシフト手段5と、を備えている。
なお、本実施形態においては歯科用に適用する場合について説明するが、これに限定されるものではなく、医療の分野等で広く適用することができる。
【0021】
旋回駆動手段3は、XYテーブル15に設置されているとともに、図示しない減速機構を介して旋回軸31を回転駆動可能に構成されている。XYテーブル15により、旋回駆動手段3および旋回軸31は、二次元平面内で移動自在とされている。
【0022】
旋回駆動手段3およびXYテーブル15は、水平方向に延伸するフレーム10内に配置されており、フレーム10は、鉛直方向に延伸する支柱9に対して上下方向に移動可能に支持されている。なお、図1中の符号81は、操作者により操作される操作部を示す。
【0023】
旋回軸31は、旋回中心位置水平移動機構4の上部に固定されており、この旋回中心位置水平移動機構4は、旋回アーム32の上面に固定される連結軸41を有している。
【0024】
旋回中心位置水平移動機構4は、連結軸41を、X線源11aとX線センサ12とを結ぶ線に沿う方向、具体的には旋回アーム32の長手方向に水平移動させる機能を有している。ここでは、旋回中心位置水平移動機構4は、連結軸41が固定されるナット部42と、ナット部42に螺合される雄ねじ部材43と、雄ねじ部材43を回転駆動するサーボモータ等の雄ねじ部材回転駆動手段44とを備えている。すなわち、旋回中心位置水平移動機構4は、雄ねじ部材回転駆動手段44の作動によりナット部42が回転させられ、ねじ送り作用によって、アーム旋回中心軸C1に対して連結軸41を、旋回アーム32の長手方向にずらすことが可能となっている。このような構成によれば、X線源11aと被写体Kとの間の距離を変化させることができ、これにより、撮影領域(FOV:field of view、視野)PA(図12参照)の大きさを調整することが可能となる。
【0025】
旋回駆動手段3は、旋回中心位置水平移動機構4、および旋回アーム32を介して、円弧移動アーム2を回転させてX線源11aおよびX線センサ12を被写体Kの周りで旋回させる機能を有する。
【0026】
シフト手段5は、X線センサ12により検出されるX線束Lの被写体Kにおける透過部位を、X線源11aとX線センサ12とを結ぶ線に略垂直な方向にシフトさせる機能を有する。本実施形態では、シフト手段5は、被写体KとX線センサ12とを結ぶ線上に配設された円弧移動中心軸C2の周りにX線センサ12を回転させて被写体Kの周りで円弧移動させる円弧移動手段である。
【0027】
X線撮影装置1は、かかる構成により、旋回駆動手段3により旋回アーム32を旋回させることで、円弧移動アーム2を回転させてX線源11aおよびX線センサ12を被写体Kの周りに回転させるとともに、シフト手段5により円弧移動アーム2を回転させることで、X線センサ12を被写体Kを挟んで円弧移動させることができる。
【0028】
X線源11aは、円弧移動アーム2から下方に固定された支持部11bに配設されている。このため、X線源11aから照射されたX線束Lの照射方向は、円弧移動アーム2の回転に伴って変化し、X線束Lの照射方向に追従するように同期しながらX線センサ12も円弧移動する(図2参照)。
【0029】
また、X線源11aから照射されたX線束Lの範囲を規制するスリット13が、被写体Kを挟んでX線センサ12と対向するように、ヘッド11の被写体K側に配設されている。このスリット13により、被写体Kには絞られたX線束Lが被写体Kを通過してX線センサ12で検出される。スリット13を配設したことで、散乱線の量を低減させることによって画質を向上させることができる。なお、スリット13は、円弧移動アーム2から垂下するように配設されていてもよい。
【0030】
X線センサ12は、被写体Kを通過したX線束Lを検出し、CMOSセンサ、CCDセンサ、CdTeセンサ、その他比較的狭い範囲の縦長の検出エリアを有するイメージセンサを使用して構成することができる。
例えば、CMOSセンサは、安価で電力消費が少ないという特徴を有し、CCDセンサは解像度が高いという特徴を有するため、X線撮影装置に要求される仕様に基づいて最適なイメージセンサを選択することができる。
【0031】
円弧移動アーム2は、旋回駆動手段3により旋回させられる旋回アーム32に配設された円弧移動中心軸C2を有する軸部材21の周りで回転自在に軸支されている。円弧移動中心軸C2は、ここでは、円弧移動アーム2に配設されたヘッド11のX線源11aと同軸上に設けられている。このように構成すれば、X線源11aを中心としてX線センサ12を円弧移動させて、X線源11aを円弧移動させないので、安定したX線束Lを照射して、画像のぶれを抑制することができる。また、例えば、X線センサ12の円弧移動に併せてX線源11aをX線センサ12の移動方向に回転させれば、X線束の一定の領域をX線撮像手段に照射することができるため、常にばらつきのない均一なX線束Lを被写体Kに照射することができる。
【0032】
円弧移動アーム2には、X線源11a、スリット13、およびX線センサ12が直線状に配設されている。このため、X線源11aから照射されたX線束Lの一定の領域をスリット13で絞ってX線センサ12に照射することができるため、常にばらつきのない均一なX線束Lを効率よく被写体Kに照射することができる。
【0033】
図1および図2に示すように、シフト手段5は、旋回アーム32に設置されたサーボモータ等の回動アーム回転駆動手段51と、回動アーム回転駆動手段51に連結された回転軸52と、一端部に回転軸52の先端が固定された回動アーム53と、回動アーム53の他端部に配設された駆動ピン54と、駆動ピン54が係合されるように円弧移動アーム2に形成された案内溝55と、を備えて構成されている。
【0034】
シフト手段5は、かかる構成により、回動アーム53を回転軸52の周りで図2中の時計回り方向A1に回転させると、円弧移動アーム2が円弧移動中心軸C2の周りで中央位置P0から図2中の傾斜位置P1まで円弧移動し、同様に回動アーム53を回転軸52の周りで図2中の反時計回り方向A2に回転させると、円弧移動アーム2が円弧移動中心軸C2の周りで中央位置P0から図2中の傾斜位置P2まで円弧移動する。
【0035】
このようにして、円弧移動アーム2を円弧移動中心軸C2の周りに円弧移動させることで、円弧移動アーム2に配設されたスリット13およびX線センサ12を円弧移動させることができる。
【0036】
XYテーブル15は、図示は省略するが、水平方向において直交するように配設されたX軸方向に移動自在に配設された直線移動ガイドと、Y軸方向に移動自在に配設された直線移動ガイドと、を組み合わせて構成されている。
XYテーブル15を備えたことで、X線撮影装置1は、円弧移動アーム2を水平方向の二次元平面内で平行移動することができるため、CT画像およびパノラマ画像の両方を撮影可能な撮影装置として機能する。
【0037】
つまり、X線撮影装置1は、CT撮影装置として使用する場合には、XYテーブル15を固定してアーム旋回中心軸C1の水平面内での位置を固定することで、CT撮影が可能となる。一方、通常のパノラマ撮影装置として使用する場合には、円弧移動アーム2を円弧移動させずに固定した状態で、XYテーブル15により円弧移動アーム2と旋回アーム32とを一体として水平方向の二次元平面内で平行移動させることで、パノラマ撮影が可能となる。
【0038】
図3は、X線撮影装置1の主要な制御構成を示すブロック図である。
図3に示すように、X線撮影装置1は、X線撮影装置1全体の統括制御をおこなう制御部8を備えている。例えば、制御部8は、被写体KのX線撮影動作の制御をおこなう。すなわち、制御部8は、X線源11aの照射動作を制御するとともに、X線センサ12による被写体Kを透過したX線束L(図1参照)の検出を実行する。また、制御部8は、旋回駆動手段3、シフト手段5(図1参照)の回動アーム回転駆動手段51、および雄ねじ部材回転駆動手段44の動作を制御する。
【0039】
本実施形態では、制御部8は、X線源11aおよびX線センサ12の被写体K(図1参照)の周りでの旋回と、X線センサ12により検出されるX線束L(図1参照)の被写体Kにおける透過部位のシフトとを同時に実行しながら、被写体KのX線撮影動作を制御するように構成されている。
【0040】
また、X線撮影装置1は、画像処理部82、外部記憶装置83、および表示部84をさらに備えており、これらは制御部8に接続されている。画像処理部82は、X線センサ12により検出されて得られた画像データ(投影データ)に対して画像処理を施して、CT画像、パノラマ画像等の各種画像を生成する。外部記憶装置83は、例えばハードディスク装置、光ディスク装置であり、各種画像を保存することができる。表示部84は、例えばLCD(液晶ディスプレイ)であり、各種画像を表示することができる。
【0041】
また、操作部81を通して、CT撮影、パノラマ撮影等の各種撮影モードの切換や、X線センサ12により検出されるX線束Lの被写体Kにおける透過部位をシフトさせるシフト量の設定等が可能となっている。
【0042】
以上のように構成されたX線撮影装置1の動作について、図4図11を参照しながら説明する。図4は、CT撮影動作の概略の手順を示すフローチャートである。図5図9は、X線源およびX線センサを被写体の周りで旋回させる場合の1〜5周目の様子をそれぞれ模式的に示す平面図である。
【0043】
図4に示すように、操作者が操作部81(図1図3参照)を操作することにより、X線撮影装置1によるX線撮影処理が実行される(ステップS1)。ここでは、CT撮影がおこなわれる場合について説明する。
【0044】
本実施形態では、制御部8(図3参照)は、旋回駆動手段3(図1参照)を動作させることで円弧移動アーム2を回転させてX線源11aおよびX線センサ12を被写体Kの周りで旋回させることと、シフト手段5(図1参照)を動作させることでX線センサ12により検出されるX線束Lの被写体Kにおける透過部位をシフトさせることとを同時に実行しながら、X線センサ12による被写体Kを透過したX線束Lの検出を実行する。
なお、X線センサ12により検出されるX線束Lからの投影データの取得方法の詳細については後記する。
【0045】
図5に示すように、まず、1周目の図5中の位置P10(0度位置)にあるX線源11aから照射されたX線束Lは、被写体Kの最外側(図5では最下位側)に相当する図5中の第1領域B1を透過してX線センサ12により検出される。1周目では、この状態から、X線源11aが位置P11〜P15を経て位置P16(図6参照)に360度回転移動するように、X線源11aおよびX線センサ12が被写体Kの周りで旋回させられると同時に、X線センサ12により検出されるX線束Lの被写体Kにおける透過部位が、図5中の第1領域B1から図6中の第2領域B2まで徐々に上側にシフトさせられる。
【0046】
同様にして、2周目では、図6に示すように、図6中の位置P20(0度位置)にあるX線源11aが位置P21〜P25を経て位置P26(図7参照)に360度回転移動すると同時に、X線センサ12により検出されるX線束Lの被写体Kにおける透過部位が、図6中の第2領域B2から図7中の第3領域B3まで徐々に上側にシフトさせられる。3周目では、図7に示すように、図7中の位置P30(0度位置)にあるX線源11aが位置P31〜P35を経て位置P36(図8参照)に360度回転移動すると同時に、X線センサ12により検出されるX線束Lの被写体Kにおける透過部位が、図7中の第3領域B3から図8中の第4領域B4まで徐々に上側にシフトさせられる。4周目では、図8に示すように、図8中の位置P40(0度位置)にあるX線源11aが位置P41〜P45を経て位置P46(図9参照)に360度回転移動すると同時に、X線センサ12により検出されるX線束Lの被写体Kにおける透過部位が、図8中の第4領域B4から図9中の第5領域B5まで徐々に上側にシフトさせられる。そして、5周目では、図9に示すように、図9中の位置P50(0度位置)にあるX線源11aが位置P51〜P55を経て位置P56に360度回転移動すると同時に、X線センサ12により検出されるX線束Lの被写体Kにおける透過部位が、図9中の第5領域B5よりも上側に徐々にシフトさせられる。なお、図9では、位置P56における透過部位の図示を省略している。
【0047】
図10は、図5図9を重ね合わせて表示した平面図である。図11は、再構成画像取得可能領域を説明するための平面図である。
図10に示すように、各周の同じ角度位置(V0〜V5位置)において、X線源11aは同じ位置にあり、X線センサ12の位置は、周回を重ねるにつれて、X線源11aの位置を中心として円弧移動、すなわちシフトしていることがわかる。つまり、図10は、X線センサ12がシフトすることによって仮想的に形成される広範囲の仮想X線センサ12vを被写体Kの周りで1周旋回させる場合の様子を模式的に示す平面図に相当する。そして、図10において、被写体Kの領域は撮影領域PAを示している。
【0048】
また、本実施形態では、制御部8は、旋回アーム32を介して円弧移動アーム2が1回転する前後の両時点におけるX線束Lの隣り合う透過部位同士が相互に接触するように、旋回駆動手段3およびシフト手段5の動作を制御する。このとき、円弧移動アーム2が1回転するときにX線センサ12がシフトするシフト量Sは、X線センサ12の幅(有効幅)Wに概ね等しい。図10の例では、X線センサ12をシフトさせながら、(仮想X線センサ12vの幅Wv)÷(X線センサ12の幅W)=5回、円弧移動アーム2を回転させればよい。このような構成によれば、CT画像の生成に必要な画像データ(投影データ)を効率的に取得できるため、画質を確保しつつ、撮影作業効率の向上をより図ることができる。
【0049】
なお、本実施形態では、X線源11aおよびX線センサ12の被写体Kの周りでの旋回中に、X線センサ12により検出されるX線束Lの被写体Kにおける透過部位がシフトする。このため、図11に示す例では、撮影領域PAの外周部分におけるX線センサ12の幅1個分に対応する領域は、全方向からの画像データ(投影データ)を得ることができず、CT画像等の再構成画像の生成が困難な領域となる。したがって、再構成画像取得可能領域RA(図11参照)は、撮影領域PAからX線センサ12の幅1個分に対応する外周部分を除いた領域となる。
【0050】
図4のステップS2に戻って、CT撮影により得られた画像データ(投影データ)が画像処理部82に転送されると、制御部8は、画像処理部82が画像データ(投影データ)に対して所定の画像処理を施してCT画像を生成するように制御する。
【0051】
続いて、制御部8は、生成されたCT画像を表示部84に表示させる(ステップS3)。また、生成されたCT画像は、必要に応じて外部記憶装置83に保存され得る。
【0052】
次に、図12図14を参照して、X線センサ12により検出されるX線束Lからの投影データの取得方法について説明する。
【0053】
図12は、X線センサ12により検出されるX線束Lが撮影領域PAの外側部分OPを通るときの様子を模式的に示す斜視図である。図13は、X線センサ12により検出されるX線束Lが撮影領域PAの中心側部分IPを通るときの様子を模式的に示す斜視図である。図14は、撮影領域PAをその中心軸Oに沿う方向から見た様子を模式的に示す部分平面図である。ここで、円柱形状を呈する撮影領域PAにおいて、中心軸Oからの距離が遠い部分を外側部分OPとし、外側部分OPよりも中心軸Oに近い部分を中心側部分IPとする。すなわち、外側部分OPと中心側部分IPとは、中心軸Oからの距離に応じて相対的に規定されるものである。
【0054】
図12および図13に示すように、X線センサ12により検出されるX線束Lからの投影データの取得時における前記X線束Lを、該X線束Lの中心軸CLに垂直でかつ撮影領域PAの中心軸Oを通る平面PSで切断した場合に得られる断面を撮影特定面SFとする。また、撮影領域PAを該撮影領域PAの中心軸Oに沿う方向から見た平面(図14参照)における単位面積当たりに存在する撮影特定面SFの枚数を、投影データの重なり密度とする。すなわち、投影データの重なり密度は、図14に示す平面(紙面)内における単位面積当たりの撮影特定面SFの枚数(重なり枚数)に相当する。
【0055】
なお、図12図14中の符号SPは、X線束Lの中心軸CLと撮影特定面SFとの交点である撮影特定点を示す。図14における撮影特定面SFおよび撮影特定点SPの数は、説明の便宜上、実際よりも少なく描かれている(後記する図15図20でも同様)。
【0056】
そして、制御部8は、撮影領域PAの外側部分OPと中心側部分IPとで投影データの重なり密度を均一化する均一化制御を行う。本実施形態に係る均一化制御は、X線センサ12により検出されるX線束Lが撮影領域PAの外側部分OPを通るときの単位時間当たりの投影データの取得回数を、X線センサ12により検出されるX線束Lが撮影領域PAの中心側部分IPを通るときの単位時間当たりの投影データの取得回数よりも多くする制御である。なお、単位時間当たりの投影データの取得回数は、投影データのサンプリング時間間隔の逆数に相当する。
【0057】
本実施形態では、X線源11aおよびX線センサ12を被写体Kの周りで旋回駆動手段3によりD方向に旋回させる速度は一定であり、その場合の角速度をωとする。図14に示すように、X線センサ12により検出されるX線束Lが撮影領域PAの中心側部分IPを通るときの撮影特定面SFの中心軸Oまわりの周方向移動速度E1は、E1=R1*ωとなる。そして、中心側部分IPにおける投影データのサンプリング時間間隔をT1とすれば、周方向に隣り合う撮影特定面SF同士の周方向間隔L1は、L1=E1*T1=R1*ω*T1となる。一方、X線センサ12により検出されるX線束Lが撮影領域PAの外側部分OPを通るときの撮影特定面SFの中心軸Oまわりの周方向移動速度E2は、E2=R2*ωとなる。そして、外側部分OPにおける投影データのサンプリング時間間隔をT2とすれば、周方向に隣り合う撮影特定面SF同士の周方向間隔L2は、L2=E2*T2=R2*ω*T2となる。
したがって、外側部分における投影データのサンプリング時間間隔T2を、T2=(R1/R2)*T1となるように、中心側部分IPにおける投影データのサンプリング時間間隔T1よりも短くすることにより、L2=L1とすることができる。
【0058】
このように、単位時間当たりの投影データの取得回数を撮影領域PAの外側部分OPと中心側部分IPとで異ならせることにより、撮影領域PAの外側部分OPと中心側部分IPとで投影データの重なり密度を均一化することができる。
【0059】
図15は、比較例に係る撮影領域PAをその中心軸Oに沿う方向から見た様子を模式的に示す部分平面図である。この比較例では、単位時間当たりの投影データの取得回数が、X線センサ12により検出されるX線束Lが撮影領域PAの外側部分OPを通るときと中心側部分IPを通るときとで同一である。この比較例の場合、投影データのサンプリング時間間隔Tが撮影領域PAの外側部分OPと中心側部分IPとで一定であり、L2=R2*ω*T>R1*ω*T=L1となる。したがって、撮影領域PAの外側部分OPでは投影データの重なり密度が中心側部分IPよりも粗くなるため、撮影領域PAの外側部分OPの画質が中心側部分IPよりも低くなる。
【0060】
前記したように、本実施形態によれば、X線センサ12により検出されるX線束Lの被写体Kにおける透過部位をシフト手段5によりシフトさせることにより、比較的狭い範囲の検出エリアを有するX線センサ12を、透過部位のシフトに対応する範囲における仮想的な広範囲の二次元X線撮像手段として機能させることができるとともに、X線センサ12により検出されるX線束Lが撮影領域PAの外側部分OPを通るときの投影データの重なり密度と、X線センサ12により検出されるX線束Lが撮影領域PAの中心側部分IPを通るときの投影データの重なり密度とが均一化される。
したがって、撮影領域PA全体において画質の向上を図ることができるX線撮影装置1を提供することができる。
【0061】
なお、本発明において、均一化制御の用語は、撮影領域PAの外側部分OPと中心側部分IPとで投影データの重なり密度を完全に均一化することのみを指すものではなく、投影データの重なり密度を例えば図15に示す比較例の場合よりも均一化すること等を含む概念として使用されている。また、単位時間当たりの投影データの取得回数は、撮影領域PAの外側部分OPと中心側部分IPとで直線状に変化させられてもよいし、曲線状に変化させられてもよいし、段階的に変化させられてもよい。
【0062】
また、本実施形態では、制御部8は、X線源11aおよびX線センサ12の被写体Kの周りでの旋回と、X線センサ12により検出されるX線束Lの被写体Kにおける透過部位のシフトとを同時に実行させながら、X線センサ12による被写体Kを透過したX線束Lの検出を実行させる。このような構成によれば、X線センサ12等の被動部材の一時的な停止および再始動を削減することができる。この結果、X線撮影の開始から終了までの間の被動部材の一時停止や再始動の動作のため速度低下を抑制できるため、全体的な撮影時間が短くて済み、撮影作業効率が向上する。さらに、被動部材に作用する加速度・減速度を減少させることができるので、該加速度・減速度に基づく慣性力を低減できることから、該慣性力に起因する被動部材の振動を低減できて、被動部材の耐久性の向上が可能になる。すなわち、比較的狭い範囲の検出エリアを有するX線センサ12を使用してコストを低減できるとともに、撮影作業効率の向上、およびX線センサ12等の被動部材の振動の低減を図ることができる。
【0063】
また、本実施形態では、支持部材である円弧移動アーム2にX線源11aとX線センサ12とを配設し、円弧移動アーム2を旋回アーム32に配設された円弧移動中心軸C2に軸支することで、円弧移動アーム2に配設されたX線源11aおよびX線センサ12を、旋回アーム32を介して旋回駆動手段3により被写体Kの周りに旋回させることができる。また、シフト手段5としての円弧移動手段により円弧移動アーム2を回転させることで、X線センサ12を円弧移動中心軸C2の周りで円弧移動させることができ、これにより、被写体KにおけるX線束Lの透過部位をシフトさせることができる。
【0064】
〔第2の実施形態〕
図16は、本発明の第2の実施形態に係るX線撮影装置1aの概略構成を模式的に示す側面図である。図17は、第2の実施形態に係るシフト手段の周辺を模式的に示す平面図である。図18は、第2の実施形態に係るシフト手段の周辺を模式的に示す斜視図である。第2の実施形態に係るX線撮影装置1aについて、前記した第1の実施形態に係るX線撮影装置1と相違する点を説明する。
【0065】
図16に示すように、本発明の第2の実施形態に係るX線撮影装置1aにおいて、シフト手段6は、支持部材としての旋回アーム32の旋回中心位置を、X線源11aとX線センサ12とを結ぶ線上の点、ここではX線源11aを通る鉛直軸である円弧移動中心軸C2上の点を中心とする円の周方向に移動させる旋回中心位置周方向移動機構である点で、第1の実施形態のシフト手段5と相違している。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態のような旋回中心位置水平移動機構4が省略されているが、設置されるように構成されてもよい。旋回軸31は、シフト手段6の上部に固定されており、このシフト手段6は、旋回アーム32の上面に固定される連結軸61を有している。シフト手段6は、連結軸61を円弧移動中心軸C2の周りで円弧移動させることにより、結果として旋回アーム32の旋回中心位置を円弧移動中心軸C2の周りで円弧移動させる機能を有している。ここで、旋回アーム32の旋回中心位置は、旋回アーム32上のアーム旋回中心軸C1との交点に相当する。
【0066】
図16図18に示すように、シフト手段6は、連結軸61が固定される円弧形状を呈するスライドギア62と、スライドギア62に噛合されるピニオンギア63と、ピニオンギア63を回転駆動するサーボモータ等のピニオンギア回転駆動手段64と、スライドギア62の周方向移動(円弧移動)を案内する案内部材65とを備えている。スライドギア62の内側には、円弧移動中心軸C2を中心とした内歯が形成されている。すなわち、シフト手段6は、ピニオンギア回転駆動手段64の作動によりピニオンギア63が回転させられ、ギア力によりスライドギア62を移動させることによって、連結軸61を円弧移動中心軸C2を中心とした半径r(図17参照)の円周方向にずらすことが可能となっている。なお、図17および図18中の符号66は、連結軸61の移動を案内する案内溝を示す。
【0067】
第2の実施形態によれば、X線源11aおよびX線センサ12が配設された支持部材としての旋回アーム32が、旋回駆動手段3により旋回アーム32の旋回中心位置の周りに旋回させられるとともに、旋回アーム32の旋回中心位置が、旋回中心位置周方向移動機構であるシフト手段6により円弧移動中心軸C2を中心とした周方向に移動させられる。これにより、X線センサ12が円弧移動中心軸C2の周りで円弧移動させられ、被写体KにおけるX線束Lの透過部位をシフトさせることができる。したがって、第2の実施形態によっても、前記した第1の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0068】
〔第3の実施形態〕
図19は、本発明の第3の実施形態に係るX線撮影装置1bの概略構成を模式的に示す側面図である。以下、第3の実施形態に係るX線撮影装置1bについて、前記した第1の実施形態に係るX線撮影装置1と相違する点を説明する。
【0069】
図19に示すように、本発明の第3の実施形態に係るX線撮影装置1bにおいて、シフト手段7は、支持部材としての旋回アーム32に配設されX線センサ12を直線移動させる点で、第1の実施形態のシフト手段5と相違している。なお、第3の実施形態では、第1の実施形態のような旋回中心位置水平移動機構4が省略されているが、設置されるように構成されてもよい。前記した第1の実施形態および第2の実施形態では、X線センサ12が円弧移動中心軸C2の周りで円弧移動させられるが、第3の実施形態は、円弧移動中心軸C2(図1図16参照)が被写体Kから極めて遠い距離に設定された場合に相当する。
【0070】
シフト手段7は、X線センサ12を直線移動させる直線移動手段70と、X線源11aから照射されたX線束Lの範囲を規制するスリット13を直線移動させる直線移動手段75と、を備えている。直線移動手段70は、旋回アーム32に配設されている。直線移動手段75は、支持部11bを介して、旋回アーム32に配設されているが、旋回アーム32に直接配設されていてもよい。直線移動手段70は、直線移動させる方向に沿って配設されたガイドレール71と、ガイドレール71に沿って往復移動自在に装着されたホルダ72と、ホルダ72に固定されたナット部73と、ナット部73に螺合される雄ねじ部材74と、雄ねじ部材74を回転駆動するサーボモータ等の図示しない雄ねじ部材回転駆動手段とを備えている。また、スリット13を直線移動させる直線移動手段75も同様に、ガイドレール76と、ホルダ77と、ナット部78と、雄ねじ部材79と、雄ねじ部材79を回転駆動するサーボモータ等の図示しない雄ねじ部材回転駆動手段とを備えている。そして、直線移動手段70と直線移動手段75とは、互いに同期して移動するように制御される。
【0071】
第3の実施形態によれば、シフト手段7によりX線センサ12を直線移動させることができ、これにより、被写体KにおけるX線束Lの透過部位をシフトさせることができる。したがって、第3の実施形態によっても、前記した第1の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0072】
〔第4の実施形態〕
第4の実施形態は、制御部8による投影データの重なり密度を均一化する均一化制御が前記した第1〜第3の実施形態と相違するものである。他の構成は前記した第1〜第3の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
第4の実施形態に係る均一化制御は、X線センサ12により検出されるX線束Lが撮影領域PAの外側部分OPを通るときのX線源11aおよびX線センサ12を被写体Kの周りで旋回駆動手段3により旋回させる速度(角速度)を、X線センサ12により検出されるX線束Lが撮影領域PAの中心側部分IPを通るときのX線源11aおよびX線センサ12を被写体Kの周りで旋回駆動手段3により旋回させる速度(角速度)よりも遅くする制御である。なお、X線源11aおよびX線センサ12を被写体Kの周りで旋回させる速度は、撮影領域PAの外側部分OPと中心側部分IPとで直線状に変化させられてもよいし、曲線状に変化させられてもよいし、段階的に変化させられてもよい。
【0073】
第4の実施形態によれば、X線源11aおよびX線センサ12を被写体Kの周りで旋回駆動手段3により旋回させる速度(角速度)を撮影領域PAの外側部分OPと中心側部分IPとで異ならせることにより、撮影領域PAの外側部分OPと中心側部分IPとで投影データの重なり密度を均一化することができる。したがって、第4の実施形態によっても、前記した第1〜第3の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0074】
〔第5の実施形態〕
第5の実施形態は、制御部8による投影データの重なり密度を均一化する均一化制御が前記した第1〜第3の実施形態と相違するものである。他の構成は前記した第1〜第3の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
第5の実施形態に係る均一化制御は、X線センサ12により検出されるX線束Lが撮影領域PAの外側部分OPを通るときの前記X線束Lの被写体Kにおける透過部位をシフト手段5によりシフトさせる速度を、X線センサ12により検出されるX線束Lが撮影領域PAの中心側部分IPを通るときの前記X線束Lの被写体Kにおける透過部位をシフト手段5によりシフトさせる速度よりも遅くする制御である。ここで、X線源11aおよびX線センサ12を被写体Kの周りで旋回駆動手段3により旋回させる速度は一定である。また、投影データのサンプリング時間間隔は、撮影領域PAの外側部分OPと中心側部分IPとで一定である。なお、X線束Lの被写体Kにおける透過部位をシフトさせる速度は、撮影領域PAの外側部分OPと中心側部分IPとで直線状に変化させられてもよいし、曲線状に変化させられてもよいし、段階的に変化させられてもよい。
【0075】
図20は、第5の実施形態に係る撮影領域PAをその中心軸Oに沿う方向から見た様子を模式的に示す部分平面図である。なお、図20では、撮影特定面SFの図示を省略している。X線束Lの被写体Kにおける透過部位のシフト速度が外側部分OPで遅く中心側部分IPで速くなるため、図20に示すように、半径方向に隣り合う撮影特定点SPの移動軌跡TR間の間隔が外側部分OPで密となり中心側部分IPで疎となる。したがって、図20に示す平面内における単位面積当たりの撮影特定点SP、すなわち撮影特定面SFの数が均一化されることになる。
【0076】
第5の実施形態によれば、X線束Lの被写体Kにおける透過部位をシフト手段5によりシフトさせる速度を撮影領域PAの外側部分OPと中心側部分IPとで異ならせることにより、撮影領域PAの外側部分OPと中心側部分IPとで投影データの重なり密度を均一化することができる。したがって、第5の実施形態によっても、前記した第1〜第3の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。また、シフト手段5による移動対象は、例えばX線センサ12等であるために質量が小さく、シフト速度の制御が容易となる。
【0077】
以上、本発明について、実施形態に基づいて説明したが、本発明は、前記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、前記実施形態に記載した構成を適宜組み合わせ乃至選択することを含め、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【0078】
例えば、本発明は、X線源11aおよびX線センサ12を被写体Kの周りで旋回させながらX線センサ12により被写体Kを透過したX線束Lを検出するステップと、X線センサ12により検出されるX線束Lの被写体Kにおける透過部位をシフトさせるステップとが交互に繰り返し実行されるように制御される場合にも適用可能である。また、本発明は、X線束Lの被写体Kにおける透過部位をシフトさせながらX線センサ12により被写体Kを透過したX線束Lを検出するステップと、X線源11aおよびX線センサ12を被写体Kの周りで旋回させるステップとが交互に繰り返し実行されるように制御される場合にも適用可能である。
【0079】
また、シフト量Sの大きさは、必要とされるCT画像の解像度等により適宜設定することが可能である。例えば、シフト量Sは、円弧移動アーム2が1回転する前後の両時点におけるX線束Lの隣り合う透過部位同士の間に間隙が生じるように設定されてもよいし、前記隣り合う透過部位同士が相互に一部重なるように設定されてもよい。また、円弧移動アーム2が例えば半回転するときにX線センサ12がシフトするシフト量SがX線センサ12の幅(有効幅)Wに概ね等しくなるように設定することも可能である。
【0080】
また、前記実施形態では、X線撮影において円弧移動アーム2を旋回させる回数を例えば5回としたが、操作部81を通して必要に応じた回数を設定可能としてもよい。
【0081】
また、シフト手段5〜7は例示であり、前記した第1〜第3の実施形態に記載した構成に限定されるものではない。例えば、第2の実施形態において、X線源11aがX線センサ12の周りで円弧移動させられる構成とされてもよい。また、第3の実施形態に係るシフト手段7において、真直なラックを採用することにより、直線移動手段を構成することも可能である。
【0082】
また、第1の実施形態および第2の実施形態においては、円弧移動中心軸C2をX線源11aに配設したが、これに限定されるものではなく、被写体KとX線センサ12とを結ぶ線上に配設することができる。また、本実施形態においては、X線束Lの範囲を規制するスリット13を配設して構成したが、これに限定されるものではなく、スリット13を設けなくても本発明を実施することができる。
【0083】
また、前記実施形態では、X線撮影処理(ステップS1)が終了してからCT画像生成処理(ステップS2)が実行されるようになっているが、本発明はこれに限定されるものではなく、X線撮影処理の途中で、画像の再構成が可能となった領域から順次CT画像の生成を実行するようにしてもよい。このようにすれば、CT撮影動作時間の全体的な短縮がより図られる。
【0084】
さらに、X線撮影装置は歯科診療以外の医療に使用されてもよい。また、撮影対象は人間以外の物であってもよく、したがって、X線撮影装置が物の検査に使用されてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1,1a,1b X線撮影装置
2 円弧移動アーム(支持部材)
3 旋回駆動手段
5〜7 シフト手段
8 制御部
11a X線源
12 X線センサ(X線撮像手段)
32 旋回アーム(支持部材)
K 被写体
L X線束
PA 撮影領域
OP 外側部分
IP 中心側部分
CL X線束の中心軸
O 撮影領域の中心軸
PS 平面
SF 撮影特定面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20