(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6035295
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】映像重合領域の補正方法、記録媒体、及び起動装置
(51)【国際特許分類】
H04N 5/74 20060101AFI20161121BHJP
H04N 9/31 20060101ALI20161121BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20161121BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20161121BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20161121BHJP
G09G 5/377 20060101ALI20161121BHJP
G09G 5/10 20060101ALI20161121BHJP
G09G 5/02 20060101ALI20161121BHJP
G09G 5/36 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
H04N5/74 D
H04N9/31 A
G03B21/00 D
G03B21/14 Z
G09G5/00 510V
G09G5/00 510B
G09G5/36 520M
G09G5/10 B
G09G5/02 B
G09G5/00 X
G09G5/36 520C
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-171314(P2014-171314)
(22)【出願日】2014年8月26日
(65)【公開番号】特開2015-43573(P2015-43573A)
(43)【公開日】2015年3月5日
【審査請求日】2014年8月26日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0101354
(32)【優先日】2013年8月26日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513312971
【氏名又は名称】シゼイ シジブイ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,ファン チョル
(72)【発明者】
【氏名】ガン,スゥ リョン
(72)【発明者】
【氏名】カン,ジ ヒョン
【審査官】
佐野 潤一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−188404(JP,A)
【文献】
特開2011−217305(JP,A)
【文献】
特開2003−274319(JP,A)
【文献】
特開2002−116500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/74
G03B 21/00
G03B 21/14
G09G 5/00
G09G 5/02
G09G 5/10
G09G 5/36
G09G 5/377
H04N 9/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプロジェクタから投射される映像間の重合領域を識別する識別ステップと、
映像の重合領域と非重合領域の明るさ又は色相のうちの少なくともいずれか一つ以上の差分を判断する判断ステップと、
明るさ又は色相のうち差分が発生する要素を調節する調節ステップと、
を含み、
前記判断ステップにおいては、重合領域と非重合領域との間の明るさ差分を判断し、
前記調節ステップにおいては、最も明るい重合領域を基準として重合領域又は非重合領域の明るさを調節し、
前記判断ステップにおいては、色相のR、G、B値が既定の数値以下である映像を基準として明るさ差分を判断することを特徴とする映像重合領域の補正方法。
【請求項2】
前記識別ステップにおいては、前記複数のプロジェクタを制御するマスター装置に格納され又は演算されたプロジェクタ別の映像投射領域情報を用いて、投射面上において映像が重なり合う領域を演算することを特徴とする請求項1に記載の映像重合領域の補正方法。
【請求項3】
前記識別ステップにおいては、映像が重なり合う領域の座標又は重なり合う度合いのうちのいずれか一つ以上を演算することを特徴とする請求項1に記載の映像重合領域の補正方法。
【請求項4】
前記判断ステップにおいては、映像のフレーム別に判断することを特徴とする請求項1に記載の映像重合領域の補正方法。
【請求項5】
前記判断ステップにおいては、映像のピクセル別に判断することを特徴とする請求項1に記載の映像重合領域の補正方法。
【請求項6】
前記判断ステップにおいては、重合領域と非重合領域の明るさ又は色相のうちの少なくともいずれか一つ以上の差分をフレーム別に演算し、
前記調節ステップにおいては、フレーム別に演算された結果を用いて相対的に暗い領域に投射される映像に明るさ差分又は映像差分を補償することを特徴とする請求項1に記載の映像重合領域の補正方法。
【請求項7】
複数のプロジェクタから投射される映像間の重合領域を識別する識別ステップと、
映像の重合領域と非重合領域の明るさ又は色相のうちの少なくともいずれか一つ以上の差分を判断する判断ステップと、
ユーザーに判断ステップの結果値を提供するステップと、
ユーザーから入力される調節指令に従い映像の明るさ又は色相のうち少なくともいずれか一つを調節するステップと、
を含むことを特徴とする映像重合領域の補正方法。
【請求項8】
複数のプロジェクタから投射される映像間の重合領域を識別する識別ステップと、
映像の重合領域と非重合領域の明るさ又は色相のうちの少なくともいずれか一つ以上の差分を判断する判断ステップと、
明るさ又は色相のうち差分が発生する要素を調節する調節ステップと、
を含み、
前記調節ステップにおいては、重合領域と非重合領域との境界においてブラーフィルターリングを適用することを特徴とする映像重合領域の補正方法。
【請求項9】
複数のプロジェクタから投射される映像間の重合領域を識別する識別ステップと、
映像の重合領域と非重合領域の明るさ又は色相のうちの少なくともいずれか一つ以上の差分を判断する判断ステップと、
明るさ又は色相のうち差分が発生する要素を調節する調節ステップと、
を含み、
前記調節ステップにおいては、各プロジェクタから重合領域に投射される映像に透明度変数を反映し、前記透明度変数に色収差変数を更に反映することを特徴とする映像重合領域の補正方法。
【請求項10】
複数のプロジェクタから投射される映像間の重合領域を識別する識別ステップと、
映像の重合領域と非重合領域の明るさ又は色相のうちの少なくともいずれか一つ以上の差分を判断する判断ステップと、
明るさ又は色相のうち差分が発生する要素を調節する調節ステップと、
を含み、
前記判断ステップにおいては、重合領域と非重合領域との間の明るさ差分を判断し、
前記調節ステップにおいては、最も明るい重合領域を基準として重合領域又は非重合領域の明るさを調節し、
前記調節ステップ後に、明るさ調節による色相歪みを判断するステップと、
前記歪みに応じて重合領域又は非重合領域の明るさを再調節するステップと、
を更に含むことを特徴とする映像重合領域の補正方法。
【請求項11】
請求項1から請求項10のうちのいずれか1項に記載の映像重合領域の補正方法を行うためのプログラムが収録され、コンピュータにて読み取り可能なことを特徴とする記録媒体。
【請求項12】
請求項1から請求項10のうちのいずれか1項に記載の映像重合領域の補正方法を行うためのプログラムを起動することを特徴とする起動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像重合領域の補正方法、記録媒体、及び起動装置に係り、より詳しくは、複数のプロジェクタにより投射される映像のうち、重なり合う領域を補正して全体的に統一感のある映像を提供するための映像重合領域の補正方法、記録媒体、及び起動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来は、劇場において、映画や広告などの映像を再生するためには、上映劇場の正面に配置された単一のスクリーンに2次元映像を投射していた。しかしながら、このようなシステム下においては、観客は平面的な(2 Dimension、2D)映像のみを鑑賞せざるを得なかった。
【0003】
近年、観客に立体感のある映像を提供可能な3D映像を再現する技術が開発された。
3D映像技術は、人間の左眼と右眼に異なる映像が入力され、脳において重ね合わせられた場合に平面映像からでも立体感が感じられるという原理を利用するものであって、映像の撮影に際して、異なる偏光フィルターが取り付けられた二台のカメラを用い、映像の視聴に際して、偏光フィルター付き眼鏡などをかけて左眼と右眼に異なる映像が入力されるようにする。
【0004】
しかしながら、このような従来の3D技術は、ユーザーに立体感のある映像を提供することはできるが、依然として単一のスクリーンにおいて再生される映像を鑑賞することに留まり、映像そのものへの没入度が低いという限界があった。また、観客が感じる立体感の方向が単一のスクリーンが存在する方向に限定されるという限界もあった。また、従来の3D技術は、映像の視聴に際して偏光フィルター付き眼鏡などを着用することを余儀なくされるため、映像を視聴する観客に不便さを与える虞があり、左眼と右眼に人為的に異なる映像を強制的に入力するため敏感な観客は目眩や吐き気を感じることもあった。
【0005】
これらの理由から、従来の単一のスクリーンに基づく上映システムの問題点を解決し得る、いわゆる「多面上映システム」が提案(本出願人の先行出願)された。
図1は、多面上映システムの構造の一例を示す図である。
図1に示すように、「多面上映システム」とは、観客席の周囲に複数の投射面(スクリーン、壁面など)を配置し、複数の投射面上に一つの一体感のある映像を再生して、観客に立体感及び没入感を提供するシステムのことをいう。
なお、「多面上映劇場」とは、このような「多面上映システム」が構築された上映劇場のことをいう。
【0006】
「多面上映システム」を効果的に運営するためには、複数の投射面に投射される映像を効果的に補正する技術が必要である。すなわち、「多面上映システム」においては、単一の投射面ではなく、複数の投射面に投射される多数枚の映像が統合的に補正されなければならず、且つ、上映劇場の構造も変化するため、これに対応して、多数枚の映像が補正される方式も変更されなければならない。このため、映像補正プロセスが非常に複雑になり、しかも、誤りが発生する可能性も非常に高くなる。この理由から、このような「多面上映システム」の映像補正プロセスに役立つ技術を提供することが望まれている。
【0007】
一方、多面上映システムだけではなく、単一の投射面にも複数のプロジェクタを用いて映像を投射する場合がある。その例として、投射面が広い場合や投射面の横及び縦の割合が1台のプロジェクタではカバーされない場合などが挙げられる。
複数のプロジェクタを用いて映像を投射する場合には、一体感のある映像を提供することが非常に重要である。特に、各プロジェクタから投射される映像の境界が視認されないように、又は、重合領域と非重合領域との区別がつかないように映像を補正する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−16964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の映像重合領域の補正方法は、上記した問題を解決するためのものであって、複数のプロジェクタを用いて映像を投射する場合に、各プロジェクタから投射される映像を全体的に一体感のあるように再生する映像重合領域の補正方法を提供することを目的としている。
【0010】
本発明は、特に、映像重合領域に投射される映像の様々な要素を制御して重合領域及び非重合領域における異質感を低減することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した課題を解決するための本発明の映像重合領域の補正方法は、複数のプロジェクタから投射される映像間の重合領域を識別するステップと、映像の重合領域と非重合領域の明るさ又は色相のうちの少なくともいずれか一つ以上の差分を判断するステップと、明るさ又は色相のうち差分が発生する要素を調節するステップと、を含み、
判断ステップにおいては、重合領域と非重合領域との間の明るさ差分を判断し、調節ステップにおいては、最も明るい重合領域を基準として重合領域又は非重合領域の明るさを調節し、判断ステップにおいては、色相のR、G、B値が既定の数値以下である映像を基準として明るさ差分を判断することを特徴とする。
【0012】
ここで、前記識別ステップにおいては、前記複数のプロジェクタを制御するマスター装置に格納又は演算されたプロジェクタ別の映像投射領域情報を用いて、投射面の上において映像が重なり合う領域を演算し、映像が重なり合う領域の座標又は重なり合う度合いのうちのいずれか一つ以上を演算することを特徴とする。
【0013】
本発明の一実施形態において、前記判断ステップにおいては、重合領域と非重合領域との間の明るさ差分を判断し、前記調節ステップにおいては、最も明るい重合領域を基準として重合領域又は非重合領域の明るさを調節し、このとき、判断ステップにおいては、色相のR、G、B値が既定の数値以下である映像を基準として明るさ差分を判断する。
【0014】
本発明の一実施形態において、前記判断ステップにおいては、映像のフレーム別又は映像のピクセル別に判断することを特徴とする。
【0015】
本発明の一実施形態において、
複数のプロジェクタから投射される映像間の重合領域を識別する識別ステップと、映像の重合領域と非重合領域の明るさ又は色相のうちの少なくともいずれか一つ以上の差分を判断する判断ステップと、明るさ又は色相のうち差分が発生する要素を調節する調節ステップと、ユーザーに判断ステップの結果値を提供するステップ
と、ユーザーから入力される調節指令に従い映像の明るさ又は色相のうち少なくともいずれか一つを調節するステップ
と、を含み、他の実施形態においては
、判断ステップにおいては、重合領域と非重合領域の明るさ又は色相のうちの少なくともいずれか一つ以上の差分をフレーム別に演算し
、調節ステップにおいては、フレーム別に演算された結果を用いて相対的に暗い領域に投射される映像に明るさ差分又は映像差分を補償することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の他の実施形態においては、
複数のプロジェクタから投射される映像間の重合領域を識別する識別ステップと、映像の重合領域と非重合領域の明るさ又は色相のうちの少なくともいずれか一つ以上の差分を判断する判断ステップと、明るさ又は色相のうち差分が発生する要素を調節する調節ステップと、を含み、
調節ステップにおいては、重合領域と非重合領域との境界においてブラーフィルターリングを適用することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の一実施形態において、
複数のプロジェクタから投射される映像間の重合領域を識別する識別ステップと、映像の重合領域と非重合領域の明るさ又は色相のうちの少なくともいずれか一つ以上の差分を判断する判断ステップと、明るさ又は色相のうち差分が発生する要素を調節する調節ステップと、を含み、調節ステップにおいては、各プロジェクタから重合領域に投射される映像に透明度変数を反映し
、透明度変数に色収差変数を更に反映することを特徴とする。
【0018】
更にまた、本発明の一実施形態による映像重合領域の補正方法は、
複数のプロジェクタから投射される映像間の重合領域を識別する識別ステップと、映像の重合領域と非重合領域の明るさ又は色相のうちの少なくともいずれか一つ以上の差分を判断する判断ステップと、明るさ又は色相のうち差分が発生する要素を調節する調節ステップと、を含み、判断ステップにおいては、重合領域と非重合領域との間の明るさ差分を判断し、調節ステップにおいては、最も明るい重合領域を基準として重合領域又は非重合領域の明るさを調節し、調節ステップ後に、明るさ調節による色相歪みを判断するステップと、歪みに応じて重合領域又は非重合領域の明るさを再調節するステップと、を更に含むことを特徴とする。
【0019】
本発明は、上述した映像重合領域の補正方法を行うためのプログラムが収録されたコンピュータにて読み取り可能な記録媒体を備え、これを行うためのプログラムを起動するための装置を備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明の映像重合領域の補正方法によれば、複数のプロジェクタを用いて映像を投射した場合には、全体的に一体感、統一感のある映像を再生することができる。特に、映像重合領域に投射される映像の様々な要素を制御して重合領域及び非重合領域における異質感を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】多面上映システムの構造の一例を示す図である。
【
図3】重合領域及び非重合領域における明るさ差分を示す図である。
【
図5】本発明の更に他の実施形態を示す手順図である。
【
図6】複数のプロジェクタにより映像が投射される一例を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態の適用前後に投射面に表示される映像を比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の映像重合領域の補正方法について、添付図面に基づき、詳細に説明する。
【0023】
図2は、本発明の一実施形態を示す手順図である。
図2に示すように、本発明の映像重合領域の補正方法は、複数のプロジェクタから投射される映像間の重合領域を識別するステップと、映像の重合領域と非重合領域の明るさ又は色相のうち少なくともいずれか一つ以上の差分を判断するステップと、明るさ又は色相のうち差分が発生する要素を調節するステップと、を含む。
【0024】
映像間の重合領域を識別するためのステップは、先ず、各プロジェクタから投射される映像が投射面のどの個所に投射されるかを把握しなければならない。このために、本発明の一実施形態においては、所定のパターン(例えば、格子模様)が形成された基準となるイメージを各プロジェクタ別に投射し、基準となるイメージが投射面上のどの個所に投射されるかを判断し、次いで、各プロジェクタから投射される基準となるイメージ間に重なり合う個所の座標を取得する。これによって、投射面上のどの位置が重合領域、或いは非重合領域であるかを把握することができ、重合領域は映像内のどの部分に相当するかも把握することができる。重合領域を容易に把握するために、連続して配置されたプロジェクタから投射される基準となるイメージを同じにし、色相を異ならせてもよい。
【0025】
本発明の他の実施形態においては、複数のプロジェクタを制御するマスター装置に格納された又は演算されたプロジェクタ別の映像投射領域情報を用いて、投射面上において映像が重なり合う領域を演算してもよい。本発明の映像重合領域の補正方法が行われる装置であるマスター装置は、各プロジェクタが投射面のどの領域に映像を投射するかに関する情報である映像投射領域情報が既に演算されていてもよく、また格納されていてもよい。このような情報に基づいて、複数のプロジェクタから投射される映像間の重合領域の位置、座標などを取得することができ、特定の重合領域が何台のプロジェクタにより重なり合うか(重なり合う度合い)を演算することもできる。
【0026】
図3は、重合領域及び非重合領域における明るさ差分を示す図である。
図3の(a)は、2台のプロジェクタ1、2が映像を投射する例であり、aが非重合領域に相当し、bが重合領域に相当する。上述した又は後述する方式により重合領域及び非重合領域の投射面を基準とする座標を求めることができ、当該位置に投射される映像を基準とする座標を求めることもできる。
【0027】
図3の(b)は、4台のプロジェクタ1〜4が映像を投射する例を示すものであり、aが非重合領域を示し、bが2台のプロジェクタにより映像が重なり合う領域を示し、cが4台のプロジェクタにより重なり合う領域を示す。
本発明の処理用法では、非重合領域と重合領域との区別も重要であるが、また重合領域が何台のプロジェクタにより重なり合うかを把握することも本発明を実施する上で非常に重要である。映像が重なり合う度合いに応じて補正される度合いも異なるためである。
図3に示すように、重合領域は、非重合領域に比べて相対的に明るく表示されているが、これは、映像が重なり合うほど色相が重なり合うように表現されたり光量が増したりするため明るくなることを示す。このような要素を考慮した本発明の実施形態については後述する。
【0028】
本発明の処理用方法は、重合領域及び非重合領域を識別し、各領域の投射面上の座標、プロジェクタ上の座標などを取得した後に、映像の重合領域と非重合領域との間に発生する明るさ又は色相などの差分を判断するステップを有する。
【0029】
本発明の一実施形態による明るさ差分の判断に際しては、映像の再生中の特定の時点(特定のフレーム)で投射される映像の光量をピクセル別に抽出する。このとき、映像を分析して抽出してもよく、投射面に投射されている全体の映像の領域(重合領域、非重合領域)別の光量をチェックして抽出してもよい。
【0030】
映像のフレーム別に各ピクセルにおける光量差を判断した後には、最も明るい重合領域を基準として重合領域又は非重合領域の明るさを調節するステップを有する。
【0031】
本発明は、特に暗い映像又は黒色の映像が投射される時点で適用される。
【0032】
映像内に黒色を表現するためには、プロジェクタからいかなる色相も投射しないことが必要であるだけではなく(R、G、B値が0)、いかなる光も投射しない必要がある。しかしながら、プロジェクタは、ピクセル別に刻一刻と変化する色相、光を投射しなければならないため、黒色を表現するときにも光及び色相を完全に遮断することができず、微量の光を出射する。たとえ黒色を表現する時点で投射面に出射される光の量が微量であるとしても、プロジェクタが映像を投射する環境はほとんど周りが暗いところであるため(例えば、上映劇場)、人間の瞳孔は、開いている状態、すなわち、微細な明るさ差分も感知可能な状態となる。重合領域において光の明るさが増す場合、重合領域と非重合領域との間の明るさ差分は、人間が認知可能な程度になる。
【0033】
上述したように、暗い(黒色)映像を投射するときに、プロジェクタから光が発せられることは避けられず、しかも、光量を低減することもできないため、本発明の一実施形態においては、最も明るい重合領域を基準として重合領域又は非重合領域の明るさを調節する。すなわち、最も明るい領域に合わせてその他の領域の明るさを調整する。
【0034】
本発明においては、現在投射される映像が暗い映像であるか否かを判断するために、特定のフレームの特定のピクセルのR、G、B情報を取得し、取得されたR、G、B情報のそれぞれの個別値、又は取得されたR、G、B情報の合計値が、既定の数値以下であるか否かを判断する。R、G、B値が0に近いほど黒色が表現されるため、映像内のフレーム別、ピクセル別のR、G、B値を分析して映像の暗い領域を識別することができる。
【0035】
本発明においては、明るさ又は色相のうち差分が発生した要素を補正するステップが、下記の方式により行われる。
【0036】
図4は、本発明の他の実施形態を示す手順図である。
図4に基づいて、本発明の他の実施形態について説明すると、判断ステップにおいて把握された重合領域及び非重合領域の明るさ差分に関する情報をユーザーに提供する。本発明の補正方法を用いる究極的な目的は、重合領域及び非重合領域が視認されないようにするところにある。このため、明るさに関する情報をユーザーが確認可能な形式のインタフェースを介してユーザーに提供し、これに基づいてユーザーから入力される調節指令に従い映像の明るさ又は色相のうちの少なくともいずれか一つを調節する。
【0037】
例えば、ユーザーインターフェースには、複数のプロジェクタにより投射される投射面の座標、重合領域及び非重合領域の各領域内のピクセル別の明るさなどが表示されており、中央には、ユーザーが視認可能なように、投射面の特定の領域における明るさ、色相情報などが表示されている。ユーザーは、画面(ユーザーインタフェース)を確認しながら一側に配置された調節指令入力手段を調節して明るさなどを制御する。これにより、映像重合領域の映像を補正することができる。
【0038】
上述した調節指令が入力される場合、本発明の調節ステップにおいては、下記の数式1により映像のピクセル別の明るさを調節する。
【0039】
(数式1)
R(x,y)=R
0(x,y)+Offset(x,y)
G(x,y)=G
0(x,y)+Offset(x,y)
B(x,y)=B
0(x,y)+Offset(x,y)
【0040】
上記の数式1において、(x,y)は、プロジェクタから投射される映像の特定の位置、座標を示し、R
0(x,y)などは、補正前の(x,y)におけるR、G、B値を示し、Offset(x,y)は、(x,y)における色相、明るさ補正値を示し、R(x,y)などは、(x,y)における色相、明るさが補正されたR、G、B値を示す。
【0041】
図5は、本発明の更に他の実施形態を示す手順図である。
本発明において、明るさ又は色相のうち差分が発生した要素を調節するステップの更に他の実施形態について
図5に基づいて説明する。
【0042】
本実施形態は、重合領域及び非重合領域における明るさ又は色相の差分を、各フレーム別に、且つフレーム内のピクセル別に演算する。明るさ差分情報又は色相差分情報は、特定の時点(特定のフレーム)で投射される映像の光量又は色相に関する情報(R、G、B)値をピクセル別に抽出して得たものである(関連する内容は、上述した通りである)。フレーム別に、且つピクセル別に抽出された色相情報及び光量情報を、重合領域及び非重合領域の座標と共に演算すれば、すなわち、重合領域に属するピクセルの色相/光量情報及び非重合領域に属するピクセルの色相/光量情報を演算し、この差分を求めれば、重合領域及び非重合領域間の映像差分を導き出すことができる。
【0043】
導き出された差分を非重合領域又は相対的に暗い重合領域に加算することによって、映像重合領域を補正することが可能になる。
【0044】
一方、本発明の一実施形態においては、明るさ/色相を調節するに際してブラーフィルターリングを適用することにより、重合領域と非重合領域との境界において明るさ/色相が連続して変化し、その結果、境界における異質感を低減し、全体的に一体化された映像を再生することができる。
【0045】
また本発明の一実施形態においては、調節ステップは、各プロジェクタから重合領域に投射される映像に透明度変数αを反映する。これは、重合により映像の明るさ及び色相が歪むことを補正するためである。例えば、重合映像内のあるピクセルが3台のプロジェクタから投射された映像により3回重なり合うように投射されたとき、各プロジェクタの色相は加算されるため、本来に比べて3倍ほど明るい明るさで映像が再生される。これを防ぐために、各プロジェクタから投射される映像を本来に比べて1/3だけ投射することにより、本来の明るさ通りに映像を表示することができる。このとき、1/3を透明度変数αと呼ぶ。但し、上記の例において透明度変数を1/3に設定したことは一例に過ぎず、透明度変数を設定、適用することは、下記の数式2の通りである。
【0046】
(数式2)
C=Σα
i*C、Σα
i=1
【0047】
(Cは、各ピクセルにおいて最終的に表現される色相であり、αは、各ピクセルにおける透明度変数である。)
【0048】
他の例を挙げて上記の数式2について説明すると、i番目のプロジェクタとj番目のプロジェクタが半分ずつ左/右に重なり合っているとしたとき、左側に配設されたプロジェクタiは重合領域においてα
i値が1から0まで減少し、右側に配設されたプロジェクタjは重合領域においてα
i値が0から1まで増大する。すなわち、各プロジェクタのピクセル別のα値は、重合領域の境界に近いほど0に近い値を有し、重合領域においてα
i+α
j=1を満たせば、映像重合による色相歪みを補正することができる。
【0049】
一方、本発明は、上記の実施形態に加えて、透明度変数に色収差変数を更に反映する。色収差変数とは、上記の透明度変数による色収差の発生を補正するためのものである。上述した実施形態により重合領域において映像の歪みを補正する実験を行ったところ、ほとんどの領域においては正確に映像が補正されたが、透明度変数αが0に近いほど色収差が発生する現象が見出された。
【0050】
このような問題を解決するために、本実施形態においては、透明度変数αに色収差変数を更に反映して映像を補正する。色収差変数としては、透明度変数と負の相関関係を有するように(1−α)を設定することができる。但し、これは単なる一例に過ぎず、透明度変数が小さな場合に発生する色収差歪みを再補正するための様々な変数が色収差変数として設定可能である。
【0051】
本発明の他の実施形態による映像重合領域の補正方法は、調節ステップ後に、明るさ調節による色相歪みを判断するステップ、及び前記歪みに応じて重合領域又は非重合領域の明るさを再調節するステップを更に含む。上述したように、明るさ調節が求められる映像、すなわち、映像の暗い部分又は黒色部分において明るさが調節された後に、当該明るさで明るい色の映像もそのまま表現される場合には本実施形態が適用されることが好ましい。
【0052】
暗い映像を基準として調節された明るさは、明るい映像においてはむしろ色相を歪ませることがある。このため、本実施形態においては、明るさ調節による色相歪みを判断し、歪んだ度合いに応じて重合領域又は非重合領域の明るさを再調節するステップを更に含む。色相歪みを判断し、且つ、明るさなどを再調節する具体的な方式は、上述した実施形態と同様である。
【0053】
本実施形態は、下記の数式3などで表わされる。
【0054】
(数式3)
R(x,y)=R
0(x,y)+Offset(x,y)*[(255−R
0(x,y))/255]
n
G(x,y)=G
0(x,y)+Offset(x,y)*[(255−R
0(x,y))/255]
n
B(x,y)=B
0(x,y)+Offset(x,y)*[(255−R
0(x,y))/255]
n
【0055】
RGB色相の表示は0から255までの間において決定され、255に近いほど赤色/緑色/青色に近い明るい色となる。このため、上記の数式によれば、色が明るくなるほど、且つ、RGB値が大きくなるほど[(255−R
0(x,y)/255]
nの値が小さくなる。その結果、Offset(x,y)の値も小さくなり、(x,y)地点における補正の度合いも小さくなる。上述したように、明るさ調節による映像歪みを低減する方向に明るさが再調節されるのである。
【0056】
nは整数であり、必要に応じて選択され、実験の結果、nが20である場合に適切な度合いに映像が再補正されることを確認することができた。但し、これは実験例に過ぎず、本発明が上記の数式3及びnの値に限定されることはない。
【0057】
図6は、複数のプロジェクタにより映像が投射される一例を示す図である。
【0058】
図6は、1枚の投射面に2台のプロジェクタにより映像が投射される例を示すものである。プロジェクタ1により左側の映像が、プロジェクタ2により右側の映像が投射面に表示され、中間に点線が重なり合う領域が重合領域であり、その他の領域が非重合領域である。
図6に示す例は、上述した本発明の映像重合領域の補正方法が適用された状態で、重合領域及び非重合領域において映像が一体感のあるように再生される。
【0059】
図7は、本発明の実施形態の適用前後に投射面に表示される映像を比較した図である。
【0060】
図7の(a)は、補正前に投射面に表現される映像であり、中央の重合領域が左右の非重合領域に比べて明るいということを確認することができる。複数のプロジェクタを用いて映像を投射する場合、ユーザーは、
図7の(a)に示すように、映像から異質感を感じるため、上述した本発明の実施形態を適用すれば、
図7の(b)に示すように、一体化された映像を再生することが可能になる。
【0061】
本発明は上述した複数の実施形態による映像重合領域の補正方法を行うためのプログラムの形式で実現可能であり、このようなプログラムが収録されたコンピュータにて読み取り可能な記録媒体を備える。ここで、記録媒体とは、単にハードディスクドライブ(HDD)、コンパクトディスク(CD)、磁気ディスクなどの狭い意味の記録媒体のみを意味するだけではなく、格納手段を備えるサーバー、コンピュータなどを含む広い意味で捉えられるべきである。
【0062】
加えて、本発明は、このようなプログラムを起動するための装置を備え、その例として、プロジェクタ制御装置、コンピュータ、サーバーなどの上記の起動装置(マスター装置)が挙げられる。この場合、上述した実施形態により言及した本発明の補正方法は、これを行う構成要素において行われる。例えば、判断/演算は中央処理装置(CPU)などにおいて行われ、情報の格納は装置内の格納構成要素(例えば、データベースなど)において行われ、ユーザーインタフェースは表示装置などを介してユーザーに提供し、入力装置などを介してユーザー指令を受け取る。