(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記追い越し制御手段は、上記追い越し対象車両を検出して走行車線から追い越し車線に車線変更する際に、上記走行環境情報取得手段の異常が検出され、且つ、自車両の操舵系の異常が検出された場合、上記走行車線から追い越し車線に車線変更することを中止し、舵角が略0でない場合には、ブレーキ力で車両のヨーレートを低減するヨーブレーキ制御を実行させることを特徴とする請求項1記載の車両の走行制御装置。
上記追い越し制御手段は、上記追い越し対象車両を検出して走行車線から追い越し車線に車線変更した後、追い越し走行している際に、上記走行環境情報取得手段の異常が検出され、且つ、自車両の操舵系の異常が検出された場合、上記走行環境情報取得手段が異常になる前の最後に検出した走行環境情報を基に元の走行車線に上記追い越し対象車両の存在が検出されず車線変更前の走行車線へ安全に車線変更できると判断できる場合は、ブレーキ力で車両にヨーモーメントを付加するヨーブレーキ制御を作動させて上記車線変更前の走行車線へ戻り、上記最後に検出した走行環境情報の視程に応じて減速制御を実行することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両の走行制御装置。
上記追い越し制御手段は、上記追い越し対象車両を検出して走行車線から追い越し車線に車線変更した後、追い越し走行している際に、上記走行環境情報取得手段の異常が検出され、且つ、自車両の操舵系の異常が検出された場合、上記走行環境情報取得手段が異常になる前の最後に検出した走行環境情報で、元の走行車線に上記追い越し対象車両の存在が検出されていた場合は、該追い越し対象車両の車速に応じて減速制御を実行し、上記追い越し対象車両の後方を想定した所定の相対位置まで後退した後に、ブレーキ力で車両にヨーモーメントを付加するヨーブレーキ制御を作動させて上記車線変更前の走行車線へ戻り、上記最後に検出した走行環境情報の視程に応じて減速制御を実行することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載の車両の走行制御装置。
上記追い越し制御手段は、上記追い越し対象車両を検出して走行車線から追い越し車線に車線変更した後、追い越し走行を終了して元の走行車線に車線変更する際に、上記走行環境情報取得手段の異常が検出され、且つ、自車両の操舵系の異常が検出された場合、ブレーキ力で車両にヨーモーメントを付加するヨーブレーキ制御を作動させて上記元の走行車線に車線変更することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一つに記載の車両の走行制御装置。
上記追い越し制御手段は、上記追い越し制御の際に、上記走行環境情報取得手段の異常が検出され、且つ、自車両の操舵系の異常が検出された場合に、ドライバによるブレーキ操作で発生する制動力の特性を変更することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一つに記載の車両の走行制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0010】
図1において、符号1は、車両の走行制御装置を示し、この走行制御装置1には、走行制御部10に、周辺環境認識装置11、走行パラメータ検出装置12、自車位置情報検出装置13、車車間通信装置14、道路交通情報通信装置15、スイッチ群16の各入力装置と、エンジン制御装置21、ブレーキ制御装置22、ステアリング制御装置23、表示装置24、スピーカ・ブザー25の各出力装置が接続されている。
【0011】
周辺環境認識装置11は、車両の外部環境を撮影して画像情報を取得する車室内に設けた固体撮像素子等を備えたカメラ装置(ステレオカメラ、単眼カメラ、カラーカメラ等)と、車両の周辺に存在する立体物からの反射波を受信するレーダ装置(レーザレーダ、ミリ波レーダ等)、ソナー等(以上、図示せず)で構成されている。
【0012】
周辺環境認識装置11は、カメラ装置で撮像した画像情報を基に、例えば、距離情報に対して周知のグルーピング処理を行い、グルーピング処理した距離情報を予め設定しておいた三次元的な道路形状データや立体物データ等と比較することにより、車線区画線データ、道路に沿って存在するガードレール、縁石等の側壁データ、車両等の立体物データ等を自車両からの相対的な位置(距離、角度)を、速度と共に抽出する。
【0013】
また、周辺環境認識装置11は、レーダ装置で取得した反射波情報を基に、反射した立体物の存在する位置(距離、角度)を、速度と共に検出する。尚、本実施の形態では、周辺環境認識装置11で認識可能な最大距離(立体物までの距離、車線区画線の最遠距離)を視程としている。このように、周辺環境認識装置11は走行環境情報取得手段として設けられている。
【0014】
更に、周辺環境認識装置11では、例えば、カメラ装置、レーダ装置、ソナー等の異常や、悪天候等により周辺環境認識の精度が低下した場合には、周辺環境認識装置11の異常を走行制御部10に出力する。
【0015】
走行パラメータ検出装置12は、自車両の走行情報、具体的には、車速V、操舵トルクTdrv、ハンドル角θH、ヨーレートγ、アクセル開度、スロットル開度、及び走行する路面の路面勾配Ug(登り方向勾配を「+」とする)、路面摩擦係数推定値μe等を検出する。このように、走行パラメータ検出装置12は、走行情報検出手段として設けられている。
【0016】
自車位置情報検出装置13は、例えば、公知のナビゲーションシステムであり、例えば、GPS[Global Positioning System:全地球測位システム]衛星から発信された電波を受信し、その電波情報に基づいて現在位置を検出して、フラッシュメモリや、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、ブルーレイ(Blu−ray;登録商標)ディスク、HDD(Hard disk drive)等に予め記憶しておいた地図データ上に自車位置を特定する。
【0017】
この予め記憶される地図データとしては、道路データおよび施設データを有している。道路データは、リンクの位置情報、種別情報、ノードの位置情報、種別情報、および、ノードとリンクとの接続関係の情報、すなわち、道路の分岐、合流地点情報と分岐路における最大車速情報等を含んでいる。施設データは、施設毎のレコードを複数有しており、各レコードは、対象とする施設の名称情報、所在位置情報、施設種別(デパート、商店、レストラン、駐車場、公園、車両の故障時の修理拠点の別)情報を示すデータを有している。そして、地図位置上の自車位置を表示して、操作者により目的地が入力されると、出発地から目的地までの経路が所定に演算され、ディスプレイ、モニタ等の表示装置24に表示され、また、スピーカ・ブザー25により音声案内して誘導自在になっている。このように、自車位置情報検出装置13は、走行環境情報取得手段として設けられている。
【0018】
車車間通信装置14は、例えば、無線LANなど100[m]程度の通信エリアを有する狭域無線通信装置で構成され、サーバなどを介さずに他の車両と直接通信を行い、情報の送受信を行うことが可能となっている。そして、他の車両との相互通信により、車両情報、走行情報、交通環境情報等を交換する。車両情報としては車種(本形態では、乗用車、トラック、二輪車等の種別)を示す固有情報がある。また、走行情報としては車速、位置情報、ブレーキランプの点灯情報、右左折時に発信される方向指示器の点滅情報、緊急停止時に点滅されるハザードランプの点滅情報がある。更に、交通環境情報としては、道路の渋滞情報、工事情報等の状況によって変化する情報が含まれている。このように、車車間通信装置14は、走行環境情報取得手段として設けられている。
【0019】
道路交通情報通信装置15は、所謂、道路交通情報通信システム(VICS:Vehicle Information and Communication System:登録商標)で、FM多重放送や道路上の発信機から、渋滞や事故、工事、所要時間、駐車場の道路交通情報をリアルタイムに受信し、この受信した交通情報を、上述の予め記憶しておいた地図データ上に表示する装置となっている。このように、道路交通情報通信装置15は、走行環境情報取得手段として設けられている。
【0020】
スイッチ群16は、ドライバの運転支援制御に係るスイッチ群で、例えば、速度を予め設定しておいた一定速で走行制御させるスイッチ、或いは、先行車との車間距離、車間時間を予め設定しておいた一定値に維持して追従制御させるためのスイッチ、走行車線を設定車線に維持して走行制御するレーンキープ制御のスイッチ、走行車線からの逸脱防止制御を行う車線逸脱防止制御のスイッチ、先行車(追い越し対象車両)の追い越し制御を実行させる追い越し制御実行許可スイッチ、これら全ての制御を協調して行わせる自動運転制御を実行させるためのスイッチ、これら各制御に必要な車速、車間距離、車間時間、制限速度等を設定するスイッチ、或いは、これら各制御を解除するスイッチ等から構成されている。
【0021】
エンジン制御装置21は、例えば、吸入空気量、スロットル開度、エンジン水温、吸気温度、酸素濃度、クランク角、アクセル開度、その他の車両情報に基づき、車両のエンジン(図示せず)についての燃料噴射制御、点火時期制御、電子制御スロットル弁の制御等の主要な制御を行う公知の制御ユニットである。
【0022】
ブレーキ制御装置22は、例えば、ハイドロリックユニットと電動ブースタとを備えた制動系(何れも図示せず)の制御を行う。ここで、ハイドロリックユニットは、4輪のブレーキ装置をドライバのブレーキ操作とは独立して作動させることが可能であり、ブレーキ制御装置22は、例えば、ブレーキスイッチ、4輪の車輪速、ハンドル角θH、ヨーレートγ、その他の車両情報に基づき、ハイドロリックユニットにより、公知のABS(Antilock Brake System)機能や、車両挙動を安定させる横すべり防止制御機能等の車両にヨーモーメントを付加するヨーモーメント制御(ヨーブレーキ制御)を行う。このようなハイドロリックユニットに対し、ブレーキ制御装置22は、走行制御部10から各輪のブレーキ力の指示値が入力された場合には、該ブレーキ力に基づいて各輪のブレーキ液圧を算出し、車両の自動減速、及び、ヨーモーメントを付加するヨーブレーキ制御のための制動力を発生させることが可能となっている。また、ブレーキ制御装置22は、走行制御部10から、自動運転追い越し制御の際のシステム異常(走行環境情報取得の異常、且つ、自車両の操舵系の異常)時の車両のヨーレートγを低減するヨーブレーキ制御を実行するように信号が入力された場合は、車両固有のスタビリティファクタAを(予め設定する通常よりも大きな値Afに)変更して、該スタビリティファクタAfを用いて目標ヨーレートγtを算出し、この目標ヨーレートγtに基づき、ヨーレートγを低減するヨーブレーキ制御を実行する。
【0023】
また、電動ブースタは、基本的にはブレーキペダル踏力を電動モータの推力によりアシストするためものである。この電動ブースタは、電動モータによるモータトルクを、ボールねじ等でアシスト推力に変換し、アシスト推力をマスターシリンダピストンに作用させることが可能となっている。このような電動ブースタに対し、ブレーキ制御装置22は、走行制御部10からブレーキ力の指示値が入力された場合には、該ブレーキ力に基づいてアシスト推力を算出し、自動減速制御のための制動力を発生させることが可能となっている。また、走行制御部10から電動ブースタの特性の変更指令があった場合には、ブレーキ制御装置22は、ドライバによるブレーキ操作であるブレーキペダル踏力に応じて発生する制動力の特性を、通常時における特性よりも、ブレーキペダル踏力に対する制動力発生の応答性と制動力値が高まる方向に変更し、この変更した特性に基づいて制動力を発生させる。
【0024】
ステアリング制御装置23は、例えば、車速、操舵トルク、ハンドル角、ヨーレート、その他の車両情報に基づき、車両の操舵系に設けた電動パワーステアリングモータ(図示せず)によるアシストトルクを制御する、公知の制御装置である。また、ステアリング制御装置23は、上述の走行車線を設定車線に維持して走行制御するレーンキープ制御、走行車線からの逸脱防止制御を行う車線逸脱防止制御が可能となっており、これらレーンキープ制御、車線逸脱防止制御に必要な操舵角、或いは、操舵トルクが、走行制御部10により算出されてステアリング制御装置23に入力され、入力された制御量に応じて電動パワーステアリングモータが駆動制御される。また、ステアリング制御装置23では、操舵機構を含む操舵系、操舵トルクセンサ、ハンドル角センサ等の異常を検出するようになっており、走行制御部10により、これらの異常状態の発生が監視されている。
【0025】
表示装置24は、例えば、モニタ、ディスプレイ、アラームランプ等のドライバに対して視覚的な警告、報知を行う装置である。また、スピーカ・ブザー25は、ドライバに対して聴覚的な警告、報知を行う装置である。そして、これら表示装置24、スピーカ・ブザー25は、車両の様々な装置に異常が生じた場合には、ドライバに警報を適宜発生する。
【0026】
そして、走行制御部10は、上述の各装置11〜16からの各入力信号に基づいて、自車両の走行車線前方の追い越し対象とする追い越し対象車両を検出して、該追い越し対象車両を自動運転制御により追い越す追い越し制御を実行する。この追い越し制御の際に、走行環境情報取得の異常が検出され、且つ、自車両の操舵系の異常が検出された場合、走行環境情報取得手段の異常が検出される前の最後に得られた走行環境情報と追い越し対象車両の情報と、走行情報と、追い越し制御の状況に応じて必要な代替制御を作動させ、追い越し制御を変更する。
【0027】
具体的には、追い越し対象車両を検出して走行車線から追い越し車線に車線変更する際に、走行環境情報取得の異常が検出され、且つ、自車両の操舵系の異常が検出された場合、走行車線から追い越し車線に車線変更することを中止し、前輪舵角δfが略0でない場合には、車両のヨーレートγを低減するヨーブレーキ制御を実行させる。
【0028】
また、追い越し対象車両を検出して走行車線から追い越し車線に車線変更した後、追い越し走行している際に、走行環境情報取得の異常が検出され、且つ、自車両の操舵系の異常が検出された場合、走行環境情報取得が異常になる前の最後に検出した走行環境情報を基に車線変更前の走行車線へ安全に車線変更できると判断できる場合は、ブレーキ力で車両にヨーモーメントを付加するヨーブレーキ制御を作動させて車線変更前の走行車線へ戻り、最後に検出した走行環境情報の視程に応じて減速制御を実行する。
【0029】
更に、追い越し対象車両を検出して走行車線から追い越し車線に車線変更した後、追い越し走行している際に、走行環境情報取得の異常が検出され、且つ、自車両の操舵系の異常が検出された場合、走行環境情報取得が異常になる前の最後に検出した走行環境情報で、元の走行車線に追い越し対象車両が存在する場合は、該追い越し対象車両の車速に応じて減速制御を実行し、追い越し対象車両の後方を想定した所定の相対位置まで後退した後に、ブレーキ力で車両にヨーモーメントを付加するヨーブレーキ制御を作動させて車線変更前の走行車線へ戻り、最後に検出した走行環境情報の視程に応じて減速制御を実行する。
【0030】
また、追い越し対象車両を検出して走行車線から追い越し車線に車線変更した後、追い越し走行を終了して元の走行車線に車線変更する際に、走行環境情報取得の異常が検出され、且つ、自車両の操舵系の異常が検出された場合、ブレーキ力で車両にヨーモーメントを付加するヨーブレーキ制御を作動させて元の走行車線に車線変更する。このように、走行制御部10は、追い越し制御手段として設けられている。
【0031】
本実施の形態の走行制御部10では、追い越し走行制御を、
図2のフローチャート、及び、
図9に示すように、追い越し開始車線変更フェイズP1、追い越し加速前半フェイズP2、追い越し加速後半フェイズP3、元車線への車線変更フェイズP4の4つのフェイズで実行するようになっており、以下、各フェイズ毎の走行制御を説明する。
【0032】
図2は、追い越し走行制御全般のプログラムを示すフローチャートで、まず、ステップ(以下、「S」と略称)101で、
図9の追い越し開始車線変更フェイズP1を実行する。尚、走行制御部10が追い越し開始車線変更フェイズP1を実行している間、追い越し開始車線変更フェイズ実行フラグFp1がセット(Fp1=1)される。
【0033】
本実施の形態では、自車両が車線変更する際の車両軌跡を、その一例として、走行距離をx方向とし、横移動量(車線変更幅)をy方向とする2次元座標上において、ジャーク(∫d
3y/dx
3)最小軌跡の正規化多項式で求めるものとする。
【0034】
この場合、y(0)=0、y(1)=1、dy(0)/dx=d
2y(0)/dx
2=0、dy(1)/dx=d
2y (1)/dx
2=0を満足するものとして、以下の(1)式が得られる。
【0035】
y=6・x
5−15・x
4+10・x
3 ・・・(1)
この(1)式を微分処理し、以下の(2)、(3)、(4)式を得る。
【0036】
dy/dx=30・(x
4−2・x
3+x
2)・・・(2)
d
2y/dx
2=60・(2・x
3−3・x
2+x)・・・(3)
d
3y/dx
3=60・(6・x
2−6・x+1)・・・(4)
そして、上述の(4)式により、d
3y/dx
3=0となるときのxを逆算すると、以下の(5)式が得られる。
【0037】
x(d
3y/dx
3=0)=(3±3
1/2)/6・・・(5)
このxの値から、(3)式により、d
2y/dx
2を算出して、この正規化曲率値を横加速度の最大値の絶対値|(d
2y/dx
2)max|とすると、以下の(6)の値を得る。
【0038】
|(d
2y/dx
2)max|=10・3
1/2/3≒5.77・・・(6)
また、上述の横加速度の最大値(d
2y/dx
2)maxを用いて、車線変更時の最大横加速度(d
2Y/dt
2)max_c(予め設定する値)を表現すると、車線変更に要する走行距離をLとし、車線変更幅をWとして以下の(7)式となる。
(d
2y/dx
2)max・W/(L/V)
2=(d
2Y/dt
2)max_c
・・・(7)
この(7)式を走行距離Lについて解くと、以下の(8)式が得られる。
L=(5.77・W・V
2/(d
2Y/dt
2)max_c)
1/2
・・・(8)
この(8)式により、追い越し開始車線変更フェイズP1に必要な距離L1は、そのときの車速VをV1として、以下の(9)式であることが解る。
【0039】
L1=(5.77・W・V1
2/(d
2Y/dt
2)max_c)
1/2
・・・(9)
また、推定される自車両のx方向の正規化した走行距離をxeとすると、
xe=(∫V・dt)/L ・・・(10)
となる。目標ヨーレートγtと車速Vと横加速度(d
2y/dx
2)の関係は、以下の(11)式で表されるため、目標ヨーレートγtは、前述の(3)式を用いて、以下の(12)式となる。
【0040】
γt・V=(d
2y/dx
2)・W/(L/V)
2・・・(11)
γt=60・(2・xe
3−3・xe
2+xe)・W・V/L
2
・・・(12)
この目標ヨーレートγtを以下の目標ハンドル角θHtの関係式((13)式)に代入することにより、制御に必要な(ステアリング制御装置23に出力される)目標ハンドル角θHtが求められる。
【0041】
θHt=γt・n/Gγ ・・・(13)
ここで、nはステアリングギヤ比であり、Gγはヨーレートゲインであり、ヨーレートゲインGγは、例えば、以下の(14)式により算出できる。
【0042】
Gγ=(1/(1+A・V
2))・(V/l)・・・(14)
ここで、Aは車両固有のスタビリティファクタ、lはホイールベースである。
【0043】
このように、S101の追い越し開始車線変更フェイズP1では、上述の(13)式で目標ハンドル角θHtが算出されて自動操舵制御され、上述の(9)式の距離L1の走行が行われる。尚、目標ハンドル角θHtを算出するために必要な車速V、距離Lは、それぞれV1、L1が用いられる。
【0044】
また、本実施の形態では、自車両が車線変更する際の車両軌跡を、ジャーク最小軌跡の正規化多項式で求める例の一例で示したが、これに限るものでは無く、他の、曲線の関数等で近似するようにしても良い。
【0045】
S101で追い越し開始車線変更フェイズP1を終えて、車線変更を終了した後は、S102で、
図9の追い越し加速前半フェイズP2が実行される。尚、走行制御部10が追い越し加速前半フェイズP2を実行している間、追い越し加速前半フェイズ実行フラグFp2がセット(Fp2=1)される。
【0046】
この追い越し加速前半フェイズP2は、追い越し車線で追い越し対象車両まで追いつき略並走するまで加速する走行制御であり、追い越し加速前半フェイズP2での走行距離L2は、例えば、以下の(15)式により算出できる。
L2=(1/(2・(d
2X/dt
2)t))・(V2
2−V1
2)
・・・(15)
ここで、V2は、追い越し加速後の目標車速で、例えば、追い越し対象車両の車速Vfに予め設定しておいた所定速度(すなわち、追い越し時の(目標)相対速度)ΔVを加算した値(Vf+ΔV)と、制限速度Vlim(予め設定しておいた制限速度、或いは、前述の各入力信号で認識した道路の制限速度)の小さい方の値である。
【0047】
また、(d
2X/dt
2)tは、目標追い越し加速度で、例えば、以下の(16)式で設定する。
(d
2X/dt
2)t=min((d
2X/dt
2)0−Kg・Ug,μe・g)
・・・(16)
ここで、minは、((d
2X/dt
2)0−Kg・Ug)と(μe・g)の小さい方を選択するミニマム関数、(d
2X/dt
2)0は、予め設定しておいた追い越し加速度の基準値、Kgは路面勾配係数、gは重力加速度を示す。
【0048】
S102で追い越し加速前半フェイズP2を終えると、S103に進んで、
図9の追い越し加速後半フェイズP3が実行される。尚、走行制御部10が追い越し加速後半フェイズP3を実行している間、追い越し加速後半フェイズ実行フラグFp3がセット(Fp3=1)される。
【0049】
この追い越し加速後半フェイズP3は、追い越し車線で追い越し対象車両と略並走してから元車線に車線変更するために加速する走行制御であり、追い越し加速後半フェイズP3での走行距離L3は、例えば、以下の(17)式により算出できる。
L3=(Lp−(1/(2・(d
2X/dt
2)t))・(V2−V1)
2)
・V2/(V2−V1)・・・(17)
ここで、Lpは、追い越し対象車両との車間距離に追い越し後の目標とする車間距離を加算した値である。
【0050】
S103で追い越し加速後半フェイズP3を終えると、S104に進んで、
図9の元車線への車線変更フェイズP4が実行される。尚、走行制御部10が元車線への車線変更フェイズP4を実行している間、元車線への車線変更フェイズ実行フラグFp4がセット(Fp4=1)される。
【0051】
この元車線への車線変更フェイズP4は、追い越し車線で追い越し対象車両を追い越した後、元車線に車線変更するまで実行される制御となっている。そして、この元車線への車線変更フェイズP4での走行距離L4は、例えば、ジャーク最小軌跡の正規化多項式で求めると、前述の(8)式により、以下の(18)式により算出される。
【0052】
L4=(5.77・W・V2
2/(d
2Y/dt
2)max_c)
1/2
・・・(18)
また、制御に必要な(ステアリング制御装置23に出力される)目標ハンドル角θHtは、前述の(13)式に基づいて、車速V、距離Lは、それぞれV4、L4として算出される。従って、本実施の形態の走行制御部10で実行される追い越し制御による走行距離Lrは、L1+L2+L3+L4となる。
【0053】
次に、上述のように実行される追い越し制御中に、走行環境情報取得の異常が検出され、且つ、自車両の操舵系の異常が検出された場合のフェールセーフ制御について、
図3〜
図6のフローチャートで説明する。
【0054】
まず、S201では、自動運転状態か否か判定され、自動運転状態の場合は、S202に進み、自動運転状態ではない場合はプログラムを抜ける。
【0055】
S202では、追い越し走行制御状態か否か判定され、追い越し走行制御状態と判定された場合は、S203に進み、追い越し走行制御状態ではないと判定された場合はプログラムを抜ける。
【0056】
S203では、走行環境情報取得の異常が検出され、且つ、自車両の操舵系の異常が検出されたか否か判定され、走行環境情報取得の異常が検出され、且つ、自車両の操舵系の異常が検出された場合は、S204に進み、走行環境情報取得と自車両の操舵系のどちらか一方でも正常な場合はプログラムを抜ける。
【0057】
S204に進むと、走行環境情報取得が異常で、且つ、自車両の操舵系が異常であることが、表示装置24、又は、スピーカ・ブザー25により警報される。
【0058】
次いで、S205に進み、追い越し開始車線変更フェイズP1か否か(Fp1=1か否か)判定する。この判定の結果、追い越し開始車線変更フェイズP1の場合(Fp1=1の場合)は、
図4のS301にジャンプし、追い越し開始車線変更フェイズP1ではない場合(Fp1=0の場合)はS206に進む。
【0059】
S206では、追い越し加速前半フェイズP2(Fp2=1)、または、追い越し加速後半フェイズP3(Fp3=1)か否か判定される。この判定の結果、Fp2=1、または、Fp3=1の場合は、
図5のS401にジャンプし、Fp2=1とFp3=1の何れでもない場合は、S207に進む。
【0060】
S207では、元車線への車線変更フェイズP4か否か(Fp4=1か否か)判定する。この判定の結果、元車線への車線変更フェイズP4の場合(Fp4=1の場合)は、
図6のS501にジャンプし、元車線への車線変更フェイズP4ではない場合(Fp4=0の場合)はプログラムを抜ける。
【0061】
前述のS205で、追い越し開始車線変更フェイズP1(Fp1=1)と判定されて、
図4のフローチャートに進んだ場合について説明する。
【0062】
まず、S301で、自動運転による追い越し走行の車線変更を中止することを、表示装置24、又は、スピーカ・ブザー25により報知し、S302に進んで、自動運転による追い越し走行の車線変更を中止する。
【0063】
次いで、S303に進んで、前輪舵角δf(=θH/n)が略0か否か判定される。
【0064】
このS303の判定の結果、前輪舵角δfが略0の場合には、そのままルーチンを抜け、前輪舵角δfが略0ではない場合は、S304に進み、ブレーキ制御装置22に対し、車両固有のスタビリティファクタAを(通常よりも大きな値Af(アンダステア方向)に)変更してヨーレートγを低減するヨーブレーキ制御を実行するように信号を出力する。これにより、ブレーキ制御装置22は、ヨーレートγを低減するヨーブレーキ制御を実行して、車両挙動を安定させる制御を行う。
【0065】
具体的には、ブレーキ制御装置22は、例えば、以下の(19)式により、目標ヨーレートγtを算出し、車体のヨーレートγがこの目標ヨーレートγtになるようにヨーブレーキ制御する。
γt=(1/(1+Af・V
2))・(V/l)・(θH/n) ・・(19)
次に、前述のS206で、追い越し加速前半フェイズP2(Fp2=1)、または、追い越し加速後半フェイズP3(Fp3=1)と判定されて、
図5のフローチャートに進んだ場合について説明する。
【0066】
まず、S401で、自動運転による追い越し走行の加速を中止することを表示装置24、又は、スピーカ・ブザー25により報知し、S402に進んで、自動運転による追い越し走行の加速を中止する。
【0067】
次いで、S403に進み、走行環境情報取得が異常になる前の最後に検出した走行環境情報を基に、追い越し対象車両が元車線に存在するか否か判定し、追い越し対象車両が元車線に存在せず、車線変更前の走行車線へ安全に車線変更できると判断できる場合は、S406にジャンプする。
【0068】
一方、S403の判定の結果、追い越し対象車両が元車線に存在する場合は、S404に進む。
【0069】
S404では、自車両の車速Vが、追い越し対象車両の車速Vfよりも低くなるまで、所定の(予め設定しておいた)減速度で減速し、自車両の車速Vが、追い越し対象車両の車速Vfよりも低くなった場合には、S405に進む。尚、追い越し対象車両の車速Vfは、最後に検出された値とし、自車両の車速Vは、時々刻々検出される値とする。
【0070】
S405では、追い越し対象車両と自車両との車間距離LD(=∫(Vf−V)・dt)と予め実験・計算等により設定しておいた閾値LDtとを比較して、追い越し対象車両と自車両との車間距離LDが閾値LDtよりも近い距離(LD<LDt)の場合は、S404に戻り、追い越し対象車両と自車両との車間距離LDが閾値LDt以上の長い距離(LD≧LDt)となった場合には、S406へと進む。尚、追い越し対象車両と自車両との車間距離LDと閾値LDtとの関係を
図10に示す。
【0071】
S403、或いは、S405からS406に進むと、走行環境情報取得の異常・操舵系の異常のために元の走行車線に車線変更することが報知され、更に、後続車両の存在の注意を促す警報が発生される。
【0072】
次いで、S407に進み、例えば、前述の(13)式等に基づいて、目標ハンドル角θHtが算出される。
【0073】
次に、S408に進み、例えば、以下の(20)式に基づいて、ヨーブレーキ制御の目標ヨーモーメントMztを算出する。
Mzt=(2・l・Kf・Kr)/(Kf+Kr)・(θHt/n) ・・(20)
ここで、Kfは前輪の等価コーナリングパワ、Krは後輪の等価コーナリングパワである。
【0074】
次いで、S409に進み、走行環境情報取得が異常になる前の最後に検出した走行環境情報における視程を基に、例えば、
図7に示すような、目標減速度(d
2X/dt
2)tのマップを参照して目標減速度(d
2X/dt
2)tを設定する。この
図7の目標減速度(d
2X/dt
2)tのマップでは、最後に得られた視程の情報を基に、自車両が走行すればする程、高い目標減速度(d
2X/dt
2)tが設定される。すなわち、走行環境情報取得と操舵系に異常が生じた場合、走行を継続した距離に応じて高い減速が行われ、車両の停止が図られて、車両の安全確保が確実に行われるようになっている。尚、視程からの距離が長い状況下では、目標減速度(d
2X/dt
2)tは0であるため、減速により、車両のヨーブレーキ制御による車線変更が阻害されることはない。
【0075】
次に、S410に進むと、以下の(21)式〜(24)式により、各輪のブレーキ力(旋回内側前輪のブレーキ力Ffi、旋回外側前輪のブレーキ力Ffo、旋回内側後輪のブレーキ力Fri、旋回外側後輪のブレーキ力Fro)が算出され、ブレーキ制御装置22に出力される。
【0076】
Ffi=(drx/2)・Fx+dry・Fy ・・・(21)
Ffo=(drx/2)・Fx−dry・Fy ・・・(22)
Fri=((1−drx)/2)・Fx+(1−dry)・Fy ・・(23)
Fro=((1−drx)/2)・Fx−(1−dry)・Fy ・・(24)
ここで、Fxは、目標減速度(d
2X/dt
2)tに応じたブレーキ力の総和で、車両質量をmとして、以下の(25)式で算出される。
【0077】
Fx=−m・(d
2X/dt
2)t ・・・(25)
また、Fyは、目標ヨーモーメントMztに応じた左右輪ブレーキ力差の総和で、トレッドをdとして、以下の(26)式により算出される。
【0078】
Fy=Mzt/d ・・・(26)
更に、drxは減速度制御の前後制動力配分比(前輪側制動力/総制動力)であり、dryはヨーモーメント制御の前後軸配分比(前軸のヨーモーメント/総ヨーモーメント)である。
【0079】
そして、S411に進み、ブレーキ制御装置22に対し、ドライバによるブレーキ操作であるブレーキペダル踏力に応じて発生する制動力の特性を、通常時における特性よりも、ブレーキペダル踏力に対する制動力発生の応答性と制動力値が高まる方向(
図8参照)に変更指令する。これは、走行環境情報の無い領域での衝突を確実に回避するための処理である。尚、システムに異常が発生し、報知・警報された瞬間は、ドライバが慌てて急ブレーキを行う可能性もあるため、最後に検出された視程範囲内では通常どおりの電動ブースタの特性とするようにしても良い。
【0080】
前述のS207で、元車線への車線変更フェイズP4(Fp4=1)と判定されて、
図6のフローチャートに進んだ場合について説明する。
【0081】
まず、S501では、追い越し走行の元車線への車線変更をヨーブレーキ制御で実行することが、表示装置24、又は、スピーカ・ブザー25により報知される。
【0082】
次いで、S502に進み、例えば、前述の(13)式等に基づいて、目標ハンドル角θHtが算出される。
【0083】
次に、S503に進み、例えば、前述の(20)式に基づいて、ヨーブレーキ制御の目標ヨーモーメントMztを算出する。
【0084】
次いで、S504に進み、例えば、前述の(21)式〜(24)式により、各輪のブレーキ力(旋回内側前輪のブレーキ力Ffi、旋回外側前輪のブレーキ力Ffo、旋回内側後輪のブレーキ力Fri、旋回外側後輪のブレーキ力Fro)が算出され、ブレーキ制御装置22に出力される。ここで、S504で算出される各輪のブレーキ力は、Fx=0である。
【0085】
次に、S505に進み、ブレーキ制御装置22に対し、ドライバによるブレーキ操作であるブレーキペダル踏力に応じて発生する制動力の特性を、通常時における特性よりも、ブレーキペダル踏力に対する制動力発生の応答性と制動力値が高まる方向(
図8参照)に変更指令する。尚、システムに異常が発生し、報知・警報された瞬間は、ドライバが慌てて急ブレーキを行う可能性もあるため、最後に検出された視程範囲内では通常どおりの電動ブースタの特性とするようにしても良い。
【0086】
このように、本実施の形態によれば、走行制御部10は、自車両の走行車線前方の追い越し対象とする追い越し対象車両を検出して、該追い越し対象車両を自動運転制御により追い越す追い越し制御を実行する。この追い越し制御の際に、走行環境情報取得の異常が検出され、且つ、自車両の操舵系の異常が検出された場合、走行環境情報取得手段の異常が検出される前の最後に得られた走行環境情報と追い越し対象車両の情報と、走行情報と、追い越し制御の状況(具体的には、追い越すための車線変更時、車線変更後の加速時、追い越し加速後の元車線への車線変更時のそれぞれの状況毎)に応じて必要な代替制御を作動させ、追い越し制御を変更する。このため、自動運転の技術により追い越し制御を実行中に、たとえ走行環境情報の取得に異常が生じ、且つ、車線変更を実行する操舵系に異常が生じた場合であっても、的確なフェールセーフ制御を行って安全性を十分に確保することが可能となる。