(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6035341
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】電気自動車を充電する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20161121BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20161121BHJP
B60L 11/18 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
H02J7/00 P
H02J7/02 F
B60L11/18 C
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-532350(P2014-532350)
(86)(22)【出願日】2012年9月25日
(65)【公表番号】特表2014-532390(P2014-532390A)
(43)【公表日】2014年12月4日
(86)【国際出願番号】EP2012068880
(87)【国際公開番号】WO2013045449
(87)【国際公開日】20130404
【審査請求日】2014年3月27日
(31)【優先権主張番号】11007936.5
(32)【優先日】2011年9月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508342183
【氏名又は名称】エヌイーシー ヨーロッパ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NEC EUROPE LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100097157
【弁理士】
【氏名又は名称】桂木 雄二
(72)【発明者】
【氏名】シュルケ、アネット
(72)【発明者】
【氏名】ボデット、セドリック
(72)【発明者】
【氏名】エリクソン、ケリー
(72)【発明者】
【氏名】ヤブロノフスキー、ラファール
【審査官】
吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/102515(WO,A1)
【文献】
特開2003−262525(JP,A)
【文献】
特開2011−024335(JP,A)
【文献】
特開2011−103741(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/121790(WO,A1)
【文献】
特表2012−503468(JP,A)
【文献】
特開2011−083166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00− 3/12、 7/00−13/00、
15/00−15/42、
G01C 21/00−21/24、23/00−25/00、
G06F 19/00、
G06Q 10/00、30/00、50/00−90/00、
H01M 10/42−10/48、
H02J 7/00− 7/12、 7/34− 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電ステーションに電気自動車を割り当てる方法において、各充電ステーションは電気自動車充電情報に従って電気自動車を充電する1つまたは複数の電気自動車電源機器を備え、該方法は、
a)電気自動車情報および充電ステーションパラメータに基づいて、電気自動車の電気自動車充電情報と、相異なる充電ステーションの充電電力情報とのマッチングを予測するステップであって、該予測のために1つの充電ステーションに対する電気自動車の充電フリートが定義され、該充電フリートの電気自動車が前記1つの充電ステーションに対する相異なる充電グループに一時的にグループ化され、前記充電グループへの前記グループ化が技術的パラメータに基づき、該技術的パラメータが、前記充電フリート内の電気自動車の充電情報と前記1つの充電ステーションおよび少なくとも1つの他の充電ステーションの充電電力情報とに基づく、予測するステップと、
b)前記充電ステーションに対する充電グループから電気自動車を選択するステップと、
c)前記充電ステーションの相異なる電気自動車電源機器に前記選択された電気自動車を割り当てるステップ
を備えたことを特徴とする、充電ステーションに電気自動車を割り当てる方法。
【請求項2】
前記充電グループの少なくとも1つが、該充電グループ中の電気自動車を充電するために前記1つの充電ステーションに割り当てられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記充電グループの他の少なくとも1つが、前記少なくとも1つの他の充電ステーションの充電フリートに含まれることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
充電ステーションに対する充電フリートが、電気自動車と前記充電ステーションとの間の所与の距離、前記充電ステーションにおける電気自動車の待ち時間、および/または、電気自動車のユーザのユーザプレファレンスに従って定義されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記1つの充電ステーションに対して前の隣接する充電ステーションおよび次の隣接する充電ステーションの充電電力情報が前記グループ化のために使用されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
電気自動車充電情報および/または充電電力情報が、短距離通信により、好ましくは電気自動車と充電ステーションとの間の特定の距離内で、充電ステーションと電気自動車との間で交換されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
充電ステーションパラメータの予測および/または判定が、充電ステーションにおいてローカルに、または、前記充電ステーションの少なくとも1つに接続されたグローバルなエンティティによって、実行されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記充電ステーションが接続されているパワーグリッド部分のパワーグリッド情報が判定され、充電ステーションパラメータの予測および/または判定のために使用されることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
充電ステーションパラメータが、充電ステーションおよび/または電気自動車電源機器の最大容量利用率、および/または前記充電ステーションに接続されているパワーグリッドの状態を表すことを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ステップa)による割当ての後に、電気自動車充電情報および前記充電ステーションの前記電気自動車電源機器による供給充電電力に従って前記電気自動車が充電されることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
充電ステーションに電気自動車を割り当てるシステムにおいて、
各充電ステーションは、電気自動車充電情報に従って電気自動車を充電する少なくとも1つの電気自動車電源機器を有し、
該システムは、
充電ステーションの相異なる電気自動車電源機器に電気自動車を割り当てるように動作可能であるように構成された割当て手段と、
電気自動車情報および充電ステーションパラメータに基づいて、電気自動車の電気自動車充電情報と、相異なる充電ステーションの充電電力情報とのマッチングの予測を実行するように動作可能であるように構成された予測手段であって、該予測のために1つの充電ステーションに対する電気自動車の充電フリートが定義され、該充電フリートの電気自動車が前記1つの充電ステーションに対する相異なる充電グループに一時的にグループ化され、前記充電グループへの前記グループ化が技術的パラメータに基づき、該技術的パラメータが、前記充電フリート内の電気自動車の充電情報と前記1つの充電ステーションおよび少なくとも1つの他の充電ステーションの充電電力情報とに基づく、予測手段と、
前記充電ステーションに対する充電グループから電気自動車を選択するように構成された選択手段と、
を備え、
前記割当て手段が、前記充電ステーションの相異なる電気自動車電源機器に前記選択された電気自動車を割り当てるために前記予測を使用するように動作可能であるように構成されたことを特徴とする、充電ステーションに電気自動車を割り当てるシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電ステーションにより電気自動車を充電する方法に関する。該方法は、
a)相異なる電気自動車電源機器に電気自動車を割り当てるステップと、
b)電気自動車充電情報および前記充電ステーションの前記電気自動車電源機器による供給充電電力に従って前記電気自動車を充電するステップと
を備える。
【0002】
また、本発明は、好ましくは請求項1ないし13のいずれか1項に記載の方法を実行することによって、電気自動車を充電するシステムに関する。該システムは、電気自動車充電情報および充電ステーションの電気自動車電源機器による供給充電電力に従って電気自動車を充電する少なくとも1つの電気自動車電源機器をそれぞれ有する複数の充電ステーションと、前記充電ステーションの相異なる電気自動車電源機器に電気自動車を割り当てるように動作可能であるように構成された割当て手段とを備える。
【0003】
本発明は、一般に任意の種類の充電に適用可能であるが、電気自動車の高速充電に関して説明する。
【背景技術】
【0004】
燃料による輸送機関に代わる手段が必要とされている。このため、電気自動車の数が非常に増大すると考えられる。電気自動車は、太陽光や風力エネルギーのような持続可能なエネルギー源により電源供給されることで、持続可能な環境保全型の輸送手段を提供する。通常、電気自動車は、内燃エンジンを備えた従来の自動車のような燃料タンクの代わりに、電気エネルギーを蓄積・供給するための電池を搭載している。電池に蓄積された電気エネルギーは、電気自動車を動かすための電気モーターによって使用されることが可能である。このような電池は、燃焼エンジンを備えた自動車の燃料タンクを充填するのと同様に、充電される必要がある。
【0005】
いわゆる通常充電および高速充電という2つの充電方法が存在し、これらは電池が充電される電力により区別される。通常充電は、低電力で、家庭、職場、商店街等の固定位置において通常少なくとも数時間持続するため、フレキシブルに扱うことができる。通常充電プロセスは、従来の需要応答方法で制御可能である。例えば、パワーグリッドや充電ステーションへ向かう行動を動機づけるために、金銭的インセンティブがユーザに提供される。
【0006】
これに対して、高速充電プロセスは全く異なる。高速充電プロセスは、即時的な電力需要による短時間のプロセスであり、例えば40〜60kWの高い電力レベルを有する。その結果、一般に互いに独立に移動する電気自動車の非常に動的なプロセスにより、基盤となるパワーグリッドへの影響は極めて確率的であると考えられる。基盤パワーグリッドは、即座に、すなわちオンデマンドで、高速充電に対応する大電力を供給しなければならない。電気自動車に対するこのような高速充電プロセスは、基盤パワーグリッドへの間欠的な負荷となると考えられる。
【0007】
したがって、パワーグリッドや充電ステーションへ向かう行動は、通常充電の場合のように例えば負荷の分散や抑制によってはあまり影響され得ないので、このような高速充電プロセスは、電気自動車が充電ステーションに接続されるときに最小限の影響しか受け得ないという欠点がある。
【0008】
さらに、より持続可能なエネルギーを提供するために、太陽光や風力関連のエネルギーがパワーグリッドに供給される。このような場合の欠点の1つは、パワーグリッドがエネルギー供給に関してより不安定になることである。その結果、電気自動車の運転者は、自己の電気自動車を充電するためにフレキシブルなタイミングの選択肢を得ることがさらに困難になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、特に高速充電プロセスの場合に、ユーザが自己の電気自動車を充電する際のフレキシビリティを向上させることである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、充電ステーションの所有者に対して、その充電ステーションにおける高い容量利用を提供することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、充電ステーションに接続されるパワーグリッドの事業者に対しても、充電ステーションで充電される電気自動車の数のばらつきにより充電ステーションにおける負荷が変動することに関して、高いフレキシビリティを提供することである。
【0012】
本発明のさらなる目的は、電気自動車の運転者に対して、充電ステーションにおける充電の際に高い快適性を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的は、請求項1の方法および請求項14のシステムによって達成される。
【0014】
請求項1に記載の通り、充電ステーションにより電気自動車を充電する方法は、
a)前記充電ステーションの相異なる電気自動車電源機器に電気自動車を割り当てるステップと、
b)電気自動車充電情報および前記充電ステーションの前記電気自動車電源機器による供給充電電力に従って前記電気自動車を充電するステップと
を備える。
【0015】
請求項1に記載の通り、本方法は、電気自動車情報および充電ステーションパラメータに基づいて、電気自動車の電気自動車充電情報、好ましくは負荷プロファイル、と、相異なる充電ステーションの充電電力情報、好ましくは供給充電電力、とのマッチングが予測され、該予測されたマッチングに基づいて、ステップa)およびb)が実行されることを特徴とする。
【0016】
請求項14に記載の通り、電気自動車を充電するシステム、好ましくは請求項1ないし11のいずれか1項に記載の方法を実行するシステムは、電気自動車充電情報および充電ステーションの電気自動車電源機器による供給充電電力に従って電気自動車を充電する少なくとも1つの電気自動車電源機器をそれぞれ有する複数の充電ステーションと、前記充電ステーションの相異なる電気自動車電源機器に電気自動車を割り当てるように動作可能であるように構成された割当て手段と、を備える。
【0017】
請求項14に記載の通り、本システムは、電気自動車情報および充電ステーションパラメータに基づいて、電気自動車の電気自動車充電情報、好ましくは負荷プロファイル、と、相異なる充電ステーションの充電電力情報、好ましくは供給充電電力、とのマッチングの予測を実行するように動作可能であるように構成された予測手段を備え、前記割当て手段が、前記充電ステーションの相異なる電気自動車電源機器に電気自動車を割り当てるために前記予測を使用するように動作可能であるように構成されたことを特徴とする。
【0018】
本発明によって認識されたこととして、特にマッチングにより、パワーグリッドの利用可能発電プロファイルに、充電ステーションにおける負荷、すなわち供給充電電力プロファイル、を適応させることが可能となる。
【0019】
本発明によってさらに認識されたこととして、充電ステーションのピーク需要を低下させることができる。ピーク充電需要を補償するために、特にガスタービン等の高環境負荷のエネルギー源による追加的な高価なエネルギー生成は不要となる。
【0020】
本発明によってさらに認識されたこととして、相異なる充電ステーションの相異なる電気自動車電源機器に関して、および、最大利用可能電力消費に関して、容量利用の向上が可能となる。
【0021】
本発明によってさらに認識されたこととして、負荷のグループとみなされる動的に可変な移動負荷に対して、ローカルに独立な固定配備された電気自動車充電容量が、動的に使用される。
【0022】
本発明によってさらに認識されたこととして、電気自動車、充電ステーションおよび基盤パワーグリッドの間の協調が可能となる。
【0023】
さらなる特徴、利点および好ましい実施形態は、後続の従属請求項に記載される。
【0024】
好ましい実施形態によれば、前記予測のために、1つの充電ステーションに対する電気自動車の充電フリート(fleet)が定義され、該充電フリートの電気自動車が、前記1つの充電ステーションに対する相異なる充電グループに一時的にグループ化され、前記充電グループへの前記グループ化が技術的パラメータ、好ましくは少なくとも前記充電フリート中の電気自動車の充電情報と、前記1つの充電ステーションおよび少なくとも1つの他の充電ステーション、好ましくは隣接する充電ステーション、の充電電力情報と、に基づく。隣接する充電ステーションは、充電フリート中の電気自動車の運行方向にあってもよい。1つの利点として、これにより、マッチングを予測する際の計算量が低減される。さらなる利点として、電気自動車の運転者のそれぞれの挙動がまとめられてグループの目標とすることができるので、相異なる充電ステーションへの電気自動車の割当てをより簡単にすることができる。
【0025】
さらに好ましい実施形態によれば、前記充電グループの少なくとも1つが、該充電グループ中の電気自動車を充電するために前記1つの充電ステーションに割り当てられる。例えば、危機的な充電状態(state-of-charge, SOC)条件にある充電されるべき自動車が前記1つの充電ステーションに割り当てられる。充電ステーションがさらなる充電が可能な場合、例えば充電ステーションが他の電気自動車に対する十分な充電電力を有する場合には、危機的でない充電状態条件にある他のグループをオプションとして定義して、他のグループ中の自動車を充電してもよい。前記少なくとも1つのグループを充電ステーションに割り当てることにより、少ない計算量で、したがってより容易に、当該充電ステーションにおける電気自動車の系列を最適化することが可能となる。
【0026】
さらに好ましい実施形態によれば、前記充電グループの他の少なくとも1つが、前記少なくとも1つの他の充電ステーション、好ましくは前記隣接する充電ステーション、の充電フリートに含まれる。これにより、最近接の充電ステーションが前記少なくとも1つの他のグループのさらなる電気自動車を充電するために十分な充電電力および/または十分な電気自動車電源機器を提供できない場合に、当該充電ステーションで充電できないか、または、充電可能性がオプションであり得る電気自動車の他のグループを、当該グループ中の電気自動車と共通の運行経路上の次の充電ステーションに割り当てることをさらに最適化することが可能となる。
【0027】
さらに好ましい実施形態によれば、充電ステーションに対する充電フリートが、電気自動車と充電ステーションとの間の所与の距離、前記充電ステーションにおける電気自動車の待ち時間、および/または、電気自動車のユーザのユーザプレファレンスに従って定義される。所与の距離または近接性に従って充電ステーションに対する充電フリートを定義する際には、該充電ステーションの該所与の距離内のすべての電気自動車について、該電気自動車が前記充電ステーションによって充電可能かどうかがチェックされることにより、充電フリートの簡易な定義が可能となる。例えば、充電ステーションに対する充電フリートを定義するために待ち時間が使用される際には、該待ち時間に対するしきい値を下回るすべての電気自動車、すなわち、待たなければならない時間が例えば5分未満のすべての電気自動車が、前記充電ステーションによって充電されるものとする。また、充電フリートを定義する際にユーザプレファレンスを考慮してもよい。例えば、充電が動的な価格付けに依存する場合、ユーザプレファレンスは、ある充電価格を超えてはならないこととしてもよい。これにより、このユーザの電気自動車は、該電気自動車の充電状態が他の充電ステーションへの割当てを許容する場合には、他の充電ステーションに割り当てられ、例えばより低い充電価格が可能となる。
【0028】
さらに好ましい実施形態によれば、前記充電グループにおける電気自動車の再グループ化が、非技術的パラメータ、好ましくは優先度情報、に従って実行される。これによりフレキシビリティがさらに向上する。というのは、充電フリートあるいは充電グループを定義するために、技術的パラメータだけでなく非技術的パラメータも使用可能となるからである。また、まず非技術的パラメータを用いてグループ化をしてから、技術的パラメータを用いて再グループ化をすることも可能である。
【0029】
さらに好ましい実施形態によれば、前記少なくとも1つの他の充電ステーション、好ましくは隣接する充電ステーション、の充電電力情報が、好ましくは距離推定値によって、前記充電フリートの電気自動車の移動プロファイルによって、および/または、予測された電気自動車充電情報によって、予想される。予想により、現在の充電ステーションに対するグループ定義とともに、他の充電ステーションに割り当てられるグループ定義も改善することが可能となる。例えば、電気自動車が、現在の充電ステーションで充電されるグループに割り当てられるか、または、前記他の充電ステーションに割り当てられるグループに割り当てられるべきである場合、前記少なくとも1つの他の充電ステーションの充電電力情報が、電気自動車の到着後に予想される。例えば、予想の結果が、前記電気自動車の前に到着する他の自動車のため前記電気自動車は充電されないだろうということであると仮定し、さらに、ローカルな充電ステーションが十分な充電電力を供給することができると仮定すると、前記電気自動車は、充電のために該ローカルな充電ステーションにグループ化され割り当てられる。これにより、次の充電ステーションにおける不要な待ち時間や、次の充電ステーションの過負荷の発生が回避される。
【0030】
さらに好ましい実施形態によれば、前記1つの充電ステーションに対して前の隣接する充電ステーションおよび次の隣接する充電ステーションの充電電力情報、好ましくは負荷情報、がグループ化のために使用される。これにより、フレキシビリティがさらに向上するとともに、相異なる充電ステーションの利用に関してさらなる最適化が可能となる。というのは、前および次の隣接する充電情報が考慮されるからである。例えば、充電ステーションに到着する電気自動車が、前の充電ステーションによってこの充電ステーションに割り当てられている場合、このような自動車は再グループ化されてもよい。例えば、前の隣接する充電ステーションからこの充電ステーションに電気自動車が移動する間に充電状態(SOC)が変化している場合には、危機的な充電状態(SOC)を回避するために再グループ化が必要である。危機的でない充電状態条件の他の自動車は、該電気自動車の充電情報がこの充電ステーションから次の隣接する充電ステーションへの移動を許容する場合には、次の隣接する充電ステーションにさらに割り当てられてもよい。
【0031】
さらに好ましい実施形態によれば、電気自動車充電情報および/または充電電力情報が、短距離通信により、好ましくは電気自動車と充電ステーションとの間の特定の距離内で、充電ステーションと電気自動車との間で交換される。短距離通信により、充電ステーションと、到着する電気自動車との間で、充電情報を簡易かつ安価に交換することが可能となる。例えば、電気自動車が充電ステーションまでの特定の距離内に来ると、充電情報が電気自動車から充電ステーションへ送信されてもよい。その場合、充電ステーションは、受信した充電情報と自己の充電電力情報とのマッチングの予測を進めてもよい。
【0032】
さらに好ましい実施形態によれば、充電ステーション情報、好ましくは負荷、フリートおよび/または充電電力の情報が、モバイル通信により、好ましくは3Gまたは4Gネットワークおよび/またはインターネットにより、2つの充電ステーションの間で交換される。このようにして、充電ステーションは、特定の充電ステーションから遠く離れた電気自動車と相互に通信してもよい。これにより、電気自動車と相異なる充電ステーションとの間でのさらなる最適化とともに、相異なる充電ステーション間での全体的な最適化が可能となる。
【0033】
さらに好ましい実施形態によれば、充電ステーションパラメータの予測および/または判定が、充電ステーションにおいてローカルに、または、前記充電ステーションの少なくとも1つに接続され好ましくはインターネットに配置されたグローバルなエンティティによって、実行される。予測をローカルに実行する利点の1つは、フレキシビリティの向上である。相異なる充電ステーションが、充電ステーションパラメータのマッチングの予測や判定のために、相異なるアルゴリズムを使用してもよい。グローバルなエンティティによる予測および/または判定の利点は、その場合、グローバルなエンティティが、接続されているすべての充電ステーションの情報を受信することである。これにより、例えば、一方でこの情報を用いて、電気自動車の充電を、その運行経路に従って相異なる充電ステーションにグローバルに分散することにより最適化することが可能となる。さらなる利点として、グローバルなエンティティは、充電ステーションが接続されている対応する基盤パワーグリッドまたはパワーグリッド部分に関する結論を引き出してもよい。すべての充電ステーションの充電電力情報が特に定期的に送信される場合、グローバルなエンティティは、パワーグリッドまたはパワーグリッド部分の状態に関する情報を相異なる時点で取得する。この情報を用いて、充電ステーションが接続されているパワーグリッドまたはパワーグリッド部分をさらに最適化してもよい。
【0034】
さらに好ましい実施形態によれば、前記充電ステーションが接続されているパワーグリッド部分のパワーグリッド情報が判定され、充電ステーションパラメータの予測および/または判定のために使用される。利点の1つとして、充電ステーションが接続されているパワーグリッドの実際の状態を判定することができる。その場合、対応する結果を、電気自動車の充電情報とともに用いて、例えば、そのときに充電ステーションで充電可能な電気自動車の最大数を判定することができる。パワーグリッド状態がばらつく場合、例えば相異なる充電フリートに関して、すなわち、現在の充電ステーションで充電されるグループ中の電気自動車の数と、他の充電ステーションで充電されるグループ中の電気自動車の数とに関して、そのばらつきを考慮することができる。
【0035】
さらに好ましい実施形態によれば、充電ステーションパラメータが、充電ステーションおよび/または電気自動車電源機器の最大容量利用率、および/または前記充電ステーションに接続されているパワーグリッドの状態を表す。充電ステーションパラメータが最大容量利用率を表す場合、充電ステーション事業者は、充電ステーションを効率的に運用することが可能となる。充電ステーションパラメータが、充電ステーションに接続されているパワーグリッドの状態を表す場合、パワーグリッド状態を電気自動車の充電情報とマッチングさせることができるため、充電ステーションで電気自動車を充電するときにパワーグリッドを最適に使用することができる。
【0036】
本発明を好ましい態様で実施するにはいくつもの可能性がある。このためには、一方で請求項1に従属する諸請求項を参照しつつ、他方で図面により例示された本発明の好ましい実施形態についての以下の説明を参照されたい。図面を用いて本発明の好ましい実施形態を説明する際には、本発明の教示による好ましい実施形態一般およびその変形例について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の実施形態によるシステムおよび方法の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1の上側には、2つの異なるパワーグリッドセグメントPGSaおよびPGSbが示されている。各パワーグリッドセグメントPGSa、PGSbには、対応する充電ステーションCS1,...,CSk,CSk+1,...,CSpが接続されている。充電ステーションCS1,...,CSkおよびCSk+1,...,CSpはそれぞれ、電気自動車電源機器EVSE1.1,EVSE1.2,...,EVSEk.1,...,EVSEk.n、および、EVSEk+1.1,EVSEk+1.n′,...,EVSEp.1,EVSEp.n″を備える。各パワーグリッドセグメントPGSa、PGSbにおいて、充電ステーションCS1,...,CSkおよびCSk+1,...,CSpは、それぞれのパワーグリッドセグメントPGSa、PGSbの他の充電ステーションCS1,...,CSk,CSk+1,...,CSpと並列に接続されている。充電ステーションCS1,...,CSpは、パワーグリッドセグメントPGSa、PGSbへの単一の接続をそれぞれ有するただ1つの電気自動車電源機器を有してもよい。
【0039】
充電ステーションCS1,...,CSpは、上記のように、パワーグリッドセグメントPGSa、PGSbのさまざまな部分にわたって分散される。すなわち、すべての隣接する充電ステーションCS1,...,CSpが同一のパワーグリッドセグメント状態を有するわけではない。パワーグリッドセグメント状態は、電源、パワーグリッドセグメントPGSa、PGSbにおけるすべての負荷の集約値、パワーグリッドセグメントPGSa、PGSbのトランスの電力、およびパワーグリッドセグメントPGSa、PGSbにおける電源と負荷との間のバランスによって定義される。
【0040】
図1の下側には、相異なる充電ステーションCSk−1、CSkおよびCSk+1が、電気自動車の所与の運行経路に隣接して示されている。充電ステーションCSkに接近しつつある電気自動車の割当てを考える際に、この充電ステーションCSkに接近しつつある無相関の電気自動車の集合が、接近フリートNπ
kとして定義される。これは、電気自動車が、指定された所定の距離あるいは近接範囲π
k内にある時に一時的に定義される。
【0041】
充電ステーションCSkのこの接近フリートNπ
k内で、電気自動車はさらに3つのサブフリートにグループ化される。これらのサブフリートは、長時間にわたる充電ステーションCSkへの割当てを定義する。一時的に定義されたフリートNπ
kは臨時フリートとも呼ばれる。サブフリートは、充電ステーションCSkの指定された近接範囲π
k内で危機的な充電状態SOC条件を有する電気自動車からなる第1の臨時フリートNχ
kを含む。指定された近接範囲π
k内の第2の臨時フリート(参照符号Nσ
kで表す)は、オプションの充電状態SOCおよび/またはユーザプレファレンス条件を有する電気自動車からなる。第3のサブフリートは、危機的でない充電状態SOCまたはユーザプレファレンス条件を有するすべての電気自動車からなる臨時フリートNν
kを定義する。第2の臨時フリートNσ
k、すなわちオプションの充電状態および/またはユーザプレファレンス条件を有する電気自動車へのグループ化は、充電ステーションCSkにおける電気自動車の待ち時間、充電ステーションCSkにおける利用可能電力Pk、および/またはさらなるパラメータ、特にユーザプレファレンス、の関数として定義されてもよい。
【0042】
そして、充電ステーションCSkによる電気自動車の充電を考慮する際には、指定された近接範囲π
k内にあり第1の臨時フリートNχ
kに属する電気自動車、すなわち、危機的な充電状態SOC条件の電気自動車からなるサブフリート、が、この充電ステーションCSkに強制的に割り当てられることになる。さもないと、危機的なSOC条件により、これらの電気自動車は、自己の運行経路上の次の充電ステーションに到達するまでの残りの電池電力が不十分となるであろう。他の2つのグループ、すなわち、第2および第3の臨時サブフリートNσ
k、Nν
kは、次の隣接する充電ステーションCSk+1に関して分析される。パワーグリッドセグメント状態に基づいて、充電ステーション容量、および、サブフリートNσ
k、Nν
kに属する電気自動車の充電状態が、近接範囲π
k+1内のさらなる臨時フリートNρ
k+1に分類あるいはグループ化される。これは、次の隣接する充電ステーションCSk+1において行われる可能性のある充電のために割り当てられた電気自動車を定義する。パワーグリッドセグメント状態および/または充電ステーションCSkの容量使用率と、前の充電ステーションCSk−1から取得される事前に割り当てられた電気自動車Nρ
k−1とに応じて、オプションの充電状態SOCおよび/またはユーザプレファレンス条件を有する電気自動車からなる臨時サブフリートNσ
k中の電気自動車の一部が、必要であれば、オプションとして、危機的な充電状態SOC条件の電気自動車からなる臨時サブフリートNχ
kに移行されることも可能である。
【0043】
2つの隣接する充電ステーションCSk−1,CSk;CSk,CSk+1間の電気自動車のトラフィック密度、充電ステーションCSk−1,CSk;CSk,CSk+1間の距離、パワーグリッドセグメント状態および容量使用率に応じて、相異なる充電ステーション制約の負荷の地域的分散化のために、相異なる臨時フリートおよびサブフリートへのローカルなグループ化あるいは割当てが、相異なる地域における充電ステーションCSk−1,CSk;CSk,CSk+1に適用されてもよい。結果として、充電ステーションCSk−1、CSkおよびCSk+1に対する充電負荷のローカルな期待あるいは予想が得られる。
【0044】
詳細には、臨時フリートNρ
kの電気自動車が、充電ステーションCSkにおける充電のために、充電ステーションCSk−1によって予想される。次に、この臨時フリートNρ
kに対してグループ化プロセスを行う。すなわち、充電ステーションCSkに到着しつつあるさらなる電気自動車をあわせて、充電ステーションCSkにおける3つのサブフリートが形成される。充電ステーションCSkへの割当ては上記のように実行される。また、充電ステーションCSkにおいて、次の充電ステーションCSk+1で充電される電気自動車に対する予想が実行される。次の充電ステーションCSk+1に対するこの臨時フリートを参照符号Nρ
k+1で表す。これは、オプションの充電状態SOCおよび/またはユーザプレファレンス条件を有しているが充電ステーションCSkにおける充電のためにすでに割り当てられている選択された電気自動車以外の、臨時サブフリートNσ
kに含まれる電気自動車からなる。
【0045】
要約すれば、本発明は、電気自動車の運行経路に沿った充電ステーションおよび/または電気自動車電源機器の充電容量への電気自動車の最適な割当てを提供する。本発明は、接近しつつあるフリートの充電需要と充電条件との間のローカルな(すなわち、パワーグリッドセグメントごとに、地理的に隣接して、電気自動車電源機器または充電ステーションの所与の近傍内で)オプションのマッチングを提供する。
【0046】
また、本発明は、自己の運行経路上で充電される電気自動車の広域の最適化を提供する。また、本発明によれば、発電および/または蓄電容量、時間、物理的容量、動的価格付けおよび/またはスポット価格付けを考慮したパワーグリッド条件に留意すると同時に、長時間にわたる最適化により、それぞれの電気自動車電源機器の容量利用を最大にすることが可能となる。また、本発明は、特定の充電ステーションの所与の近接範囲内で、一時的な臨時フリートの動的な持続時間を提供する。
【0047】
本発明によれば、充電状態SOC、待ち時間t
wおよびユーザプレファレンスのパラメータ空間を通じて定義された相異なるフリートグループの推定を可能にすることで、相異なるフリートおよび/またはグループを相異なる充電ステーションに割り当てるための充電ステーション間の協調が可能となる。また、本発明によれば、次の隣接する充電ステーション、パワーグリッドセグメント全体および経路全体(すなわち、自動車運行範囲、運行経路等)の考慮を含めて、未来の充電需要の予想が可能である。
【0048】
また、本発明は以下のことを提供する。
1)可変な移動負荷(電気自動車および負荷のグループ(フリート、グループ)に対して、ローカルに独立に固定配備された電気自動車充電容量を動的に利用すること。
2)I)ローカルに最適化された利用(相異なるパラメータ空間を考慮した一時的な臨時フリート)
II)近傍協調(隣接するステーション、パワーグリッドセグメント、ハイウェイセグメント)によるローカルに最適化された利用
III)システム(運行経路)全体にわたる平均範囲推定に関するグローバルな事前割当て
に基づく割当て方法に適応した通信システムおよび制御ロジック。
3)無相関フリートに対する電気自動車特性(SOC,SOH)およびユーザプレファレンス(SOCの懸念レベル、待ち時間、運行速度等)に関する臨時フリート最適化に基づく割当て方法に適応した通信システムおよび制御ロジック。
4)相関フリート(例:特別の料金契約を有する物流会社)に対する電気自動車特性(SOC,SOH)およびユーザプレファレンス(SOCの懸念レベル、待ち時間、運行速度等)に関する臨時フリート最適化に基づく割当て方法に適応した通信システムおよび制御ロジック。
【0049】
本発明の利点の1つは、パワーグリッドの動態が、充電ステーションに対する負荷管理と結びつけられることである。この負荷管理は、パワーグリッド電源チェインの動態に基づくことが可能であり、電気自動車に対するより高度なトラフィック制御を可能にする。
【0050】
上記の説明および添付図面の記載に基づいて、当業者は本発明の多くの変形例および他の実施形態に想到し得るであろう。したがって、本発明は、開示した具体的実施形態に限定されるものではなく、変形例および他の実施形態も、添付の特許請求の範囲内に含まれるものと解すべきである。本明細書では特定の用語を用いているが、それらは総称的・説明的意味でのみ用いられており、限定を目的としたものではない。