(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
予め設定されたワークの加工形状に対応し、レーザー光出射部のレーザー光の走査範囲を利用して、ワークセットテーブルの移動時において慣性の影響を抑制できるように、かつ総移動長が最短となるように、前記ワークセットテーブルの軌道及び動作情報を生成し、該生成した軌道の所要の区分ごとに、前記動作情報と予め設定した可否の基準となる動作限界値とを比較し、同動作情報が同動作限界値以下であれば可と判定し、同動作限界値を超えれば否と判定する工程と、
前記生成した軌道の前記可と判定された区分においては、該区分に対応する前記加工形状の区間を、前記動作情報をもとに前記ワークセットテーブルを移動させながらレーザー光を走査して加工し、前記否と判定された区分においては、その区分の移動方向において前の区分に対応する前記加工形状の区間の終点まで加工した後、該終点においてレーザー光の出射を停止し、加工を停めた状態で、前記ワークセットテーブルを所要の速度で移動させ、前記否と判定された区分に移動したところで、前記加工を停めた箇所から同否と判定された区分に対応する加工形状の区間の加工を継続する工程とを備える
レーザー加工方法。
前記ワークの加工完了後、同ワークに残る実際の加工形状を計測し、該実際の加工形状と前記予め設定されたワークの加工形状とを比較して、その差分を補正する工程を備える
請求項1または2のレーザー加工方法。
前記駆動部が、第1のリニアエンコーダを有する第1の駆動軸と、該第1の駆動軸に同第1の駆動軸と略平行に移動可能に設けられ、前記第1の駆動軸と略直交する第2の駆動軸とを有し、前記ワークセットテーブルが前記第2の駆動軸に移動可能に設けられている
請求項4のレーザー加工装置。
前記ワークの加工完了後、同ワークに残る実際の加工形状を計測する画像センサを備えており、前記動作情報生成部において、前記実際の加工形状と前記予め設定されたワークの加工形状とを比較して、その差分を補正し、この補正値を使用して、前記レーザー制御部による前記レーザー光出射部の制御と、前記動作制御部による前記ワークセットテーブルの移動制御を行うようにした
請求項4または5のレーザー加工装置。
予め設定されたワークの加工形状に対応し、レーザー光出射部のレーザー光の走査範囲を利用し、ワークセットテーブルの移動時において慣性の影響を抑制できるように、かつ総移動長が最短となるように、前記ワークセットテーブルの軌道及び動作情報を生成し、該生成した軌道の所要の区分ごとに、前記動作情報と予め設定した可否の基準となる動作限界値とを比較し、同動作情報が同動作限界値以下であれば可と判定し、同動作限界値を超えれば否と判定する工程と、
前記生成した軌道の前記可と判定された区分においては、該区分に対応する前記加工形状の区間を、前記動作情報をもとに前記ワークセットテーブルを移動させながらレーザー光を走査して加工し、前記否と判定された区分においては、その区分に含まれる方向転換点を境界とする各区分において、移動方向で前の区分に対応する前記加工形状の区間を始点から終点まで加工した後、該終点においてレーザー光の出射を停止し、加工を停めた状態で、前記ワークセットテーブルを所要の速度で移動させ、次の後の区分に移動したところで、前記区間の加工を停めた箇所から、後の区分に対応する前記加工形状の区間の加工を継続する工程とを備える
レーザー加工方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来のレーザー加工機には、次のような課題があった。
すなわち、レーザー加工機は、レーザー光出射部であるガルバノスキャナとワークの相対的、かつ物理的な移動と、ガルバノスキャナにおけるレーザー光の光学的な走査を組み合わせて行う構成である。前者は、ガルバノスキャナをXY方向、すなわち二次元方向に移動させるものであり、特にレーザー光の走査の移動量が大きい部分は、この相対的、かつ物理的な移動による走査が行われるようになっている。
【0009】
なお、レーザー加工において、ワークに対し、特にレーザー光を二次元的に走査して加工する場合、加工部の溶融物の盛り上がりを平均化できるようにするなど、より高い品質の加工を行うためには、レーザー光の集光部を所要の一定の速度(等速)で走査するのが好ましいことは知られている。
【0010】
しかし、上記従来のレーザー加工機のように、ガルバノスキャナの移動において、物理的な移動量が大きくなると、特に移動方向を変えるときの減速やその後の加速に伴って、大きな慣性力が作用しやすくなり、それと共に移動速度にも大きな変動が生じる。このため、レーザー加工において、加工形状によっては、ガルバノスキャナの安定的で一定の速度を維持することが難しかった。
【0011】
更には、このような、大きく変動するガルバノスキャナの移動速度に合わせて、レーザー光を光学的に走査するためには、極めて複雑な制御が必要となり、この制御を高速で行い、なおかつ走査を一定の速度(等速)に制御することは、実際上、困難であった。そして、このことが、ガルバノスキャナとワークの相対的、かつ物理的な移動による集光部の走査を行うタイプのレーザー加工機において、高速、かつ高い品質で加工を行う上でのネックとなっていた。
【0012】
本発明は、以上の点を鑑みて創案されたものであり、レーザー光出射部とワークの相対的、かつ物理的な移動による集光部の走査を行うレーザー加工において、レーザー光を、ワークに対して所要の速度、かつ等速で走査することにより、高速、かつ高い品質で加工を行うことができるレーザー加工方法及びレーザー加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)上記の目的を達成するために本発明のレーザー加工方法は、予め設定されたワークの加工形状に対応し、レーザー光出射部のレーザー光の走査範囲を利用して、ワークセットテーブルの移動時において慣性の影響を抑制できるように、かつ総移動長が最短となるように、前記ワークセットテーブルの軌道及び動作情報を生成し、該生成した軌道の所要の区分ごとに、前記動作情報と予め設定した可否の基準となる動作限界値とを比較し、同動作情報が同動作限界値以下であれば可と判定し、同動作限界値を超えれば否と判定する工程と、前記生成した軌道の前記可と判定された区分においては、該区分に対応する前記加工形状の区間を、前記動作情報をもとに前記ワークセットテーブルを移動させながらレーザー光を走査して加工し、前記否と判定された区分においては、その区分の移動方向において前の区分に対応する前記加工形状の区間の終点まで加工した後、該終点においてレーザー光の出射を停止し、加工を停めた状態で、前記ワークセットテーブルを所要の速度で移動させ、前記否と判定された区分に移動したところで、前記加工を停めた箇所から同否と判定された区分に対応する加工形状の区間の加工を継続する工程とを備える。
【0014】
本発明のレーザー加工方法では、ワークの加工形状(例えば切断形状)を設定しておく。この予め設定されたワークの加工形状に対応して、レーザー光出射部のレーザー光の走査範囲を利用し、ワークセットテーブルの移動時において慣性の影響を抑制できるように、かつ総移動長が最短となるように、前記ワークセットテーブルの軌道及び動作情報を生成する。
【0015】
軌道の生成は、例えば加工形状の二次元の線分のデータを一定間隔の点データに変換し、これらの点をレーザー光出射部が対応できる領域の範囲で囲ってグループ化し、グループ化された点データの重心位置を各点の座標より算出し、得られたすべての重心位置を通り、総移動長が最短となる線(直線、または曲線であれば、曲率が大きく、直線により近い線)を算出し、この線をワークセットテーブルが動作する軌道情報とするなどして行われる。これにより、ワークセットテーブルが動作する際の慣性の影響を抑制または低減している。なお、軌道の生成方法はこれに限定するものではなく、他の方法を採用してもよい。
【0016】
そして、生成した軌道の所要の区分ごとに、生成した動作情報と予め設定した可否の基準となる動作限界値とを比較し、同動作情報が前記動作限界値以下であれば(動作限界値を超えなければ)可と判定し、動作限界値を超えれば否(不可)と判定する。なお、この判定方法は、可否の基準となる動作限界値を決める際に、生成した動作情報が可否の基準となる動作限界値未満であれば可と判定し、動作限界値以上であれば否と判定するように設定してもよい。
【0017】
動作限界値とは、例えば軌道の区分が円弧である場合、曲率や半径の値毎に、所要の条件下で予め設定されている、許容できる限度の加減速度などである。あるいは、軌道が折れ線状である場合、線分の角度毎に、所要の条件下で予め設定されている、許容できる限度の加減速度などである。
【0018】
生成された軌道において、可と判定された区分においては、生成された動作情報である所要の速度でワークセットテーブルを移動させながら、レーザー光出射部からレーザー光を出射し、ワーク上を走査して、上記区分に対応する加工形状の区間を加工する。また、否と判定された区分においては、その区分の移動方向において前の区分に対応する前記加工形状の区間の終点(次の加工始点となる)まで加工した後、この終点(換言すれば、否と判定された区分に対応する加工形状の区間の始点)においてレーザー光の出射を停止する。上記加工形状の区間の次の加工始点に対応する位置まで移動する間のワークセットテーブルの移動(レーザー光出射部の相対的な移動)においては、レーザー光による加工を行わない、いわゆる空走状態となる。
【0019】
そして、レーザー光出射部は、相対的な空走状態を経て、次の区分に対応する加工形状の区間の加工始点において所定の加工速度に達した後、加工始点にレーザー光を出射し、次の区分に対応する加工形状の区間の加工を継続する。この加工の継続により、レーザー光の集光部のワーク上での走査は、所要の速度、かつ同じ速度(等速)で途切れることなく行われることになり、結果的に、ワークを高速で加工することができると共に、高い品質で加工することができる。
【0020】
(2)本発明は、更に、前記生成した動作情報が、ワークセットテーブルの移動速度の微分値であり、前記予め設定した可否の基準となる動作限界値が、加減速度の動作限界値である構成としてもよい。
【0021】
この場合は、予め設定されたワークの加工形状に対応し、レーザー光出射部によるレーザー光の走査範囲内で、レーザー光を連続的に所要の速度、かつ等速で走査することが可能な、ワークセットテーブルの軌道及び速度を生成し、該生成した軌道の所要の区分ごとに、生成した速度の微分値と予め設定した可否の基準となる加減速度の動作限界値とを比較し、速度の微分値が動作限界値以下であれば可と判定し、動作限界値を超えれば否と判定して、可否の各ケースごとに上記(1)の場合と同様の所定の動作を行うことになる。
【0022】
(3)本発明は、更に、前記ワークの加工完了後、同ワークに残る実際の加工形状を計測し、該実際の加工形状と前記予め設定されたワークの加工形状とを比較して、その差分を補正する工程を備える構成とすることもできる。
【0023】
この場合は、ワークの加工完了後、ワークを所定の位置(計測位置)に移動させ、画像センサによって、ワークに残っている実際の加工形状を計測する。この計測値のデータと、加工条件であり予め設定されたワークの加工形状のデータとを比較し、差分を算出する。この差分を補正値とし、次の加工において、補正値を使用した加工を行う。
【0024】
これにより、信号の遅れや可動部の機械的抵抗などに起因する、予め設定されたワークの加工形状に対する実際の加工形状の誤差をより小さくすることができ、ワークの加工精度が向上する。なお、この補正は、ワーク毎に行ってもよいし、ワークを複数加工する毎に行ってもよい。
【0025】
(4)上記の目的を達成するために本発明のレーザー加工装置は、レーザー光を出射するレーザー光出射部と、ワークの取付部であり、前記レーザー光出射部から出射されるレーザー光により走査できる二次元方向の所要範囲内の全域で駆動部により移動操作が可能なワークセットテーブルと、予め設定されたワークの加工形状に対応し、レーザー光出射部のレーザー光の走査範囲を利用して、ワークセットテーブルの移動時において慣性の影響を抑制できるように、かつ総移動長が最短となるように、前記ワークセットテーブルの軌道及び動作情報を生成し、該生成した軌道の所要の区分ごとに、前記動作情報と予め設定した可否の基準となる動作限界値とを比較し、同動作情報が同動作限界値以下であれば可と判定し、同動作限界値を超えれば否と判定するようにし、前記生成した軌道の前記可と判定された区分においては、該区分に対応する前記加工形状の区間を、前記動作情報をもとに前記ワークセットテーブルを移動させながらレーザー光を走査して加工し、前記否と判定された区分においては、その区分の移動方向において前の区分に対応する前記加工形状の区間の終点まで加工した後、該終点においてレーザー光の出射を停止し、加工を停めた状態で、前記ワークセットテーブルを所要の速度で移動させ、前記否と判定された区分に移動したところで、前記加工を停めた箇所から同否と判定された区分に対応する加工形状の区間の加工を継続するようにする動作情報を生成する動作情報生成部と、前記駆動部より前記ワークセットテーブルの位置情報を受け、前記レーザー光出射部に前記動作情報生成部で生成された出射指令を出すレーザー制御部と、前記駆動部よりワークセットテーブルの位置情報を受け、ワークセットテーブルを移動させる前記駆動部に前記動作情報生成部で生成された動作指令を出す動作制御部とを備える。
【0026】
レーザー加工装置は、次のような作用を有する。
まず、必要となるワークの加工形状のデータを動作情報生成部へ入力する。
次に、入力したデータをもとに、動作情報生成部により、ワークセットテーブルを動かす駆動部の動作情報と、レーザー光出射部の動作情報が生成される。
【0027】
すなわち、予め設定されたワークの加工形状に対応し、レーザー光出射部によるレーザー光の走査範囲内で、レーザー光を連続的に所要の速度、かつ等速で走査することが可能な、ワークセットテーブルの軌道及び速度の情報を生成する。
【0028】
また、生成した軌道の所要の区分ごとに、前記生成した動作情報と予め設定した可否の基準となる動作限界値とを比較し、動作情報が前記動作限界値以下であれば可と判定し、動作限界値を超えれば否と判定する。生成された軌道において、可と判定された区分においては、生成された動作情報である所要の速度でワークセットテーブルを移動させながら、レーザー光出射部からレーザー光を出射し、ワーク上を走査して、上記区分に対応する加工形状の区間を加工するようにし、否と判定された区分においては、その区分の移動方向において前の区分に対応する前記加工形状の区間の終点(次の加工始点となる)まで加工した後、該終点(方向転換点)においてレーザー光の出射を停止し、上記加工形状の区間の次の加工始点に対応する位置まで移動する間のワークセットテーブルの移動(レーザー光出射部の相対的な移動)においては、レーザー光による加工を行わないようにし、次の区分に対応する加工形状の区間の始点から加工を始めるようにする動作情報を生成する。
【0029】
これら生成された動作情報をもとに、動作制御部より駆動部へ動作指令が出力され、ワークセットテーブルが移動する。また、駆動部からワークセットテーブルの現在位置を示す二次元方向の信号が出力され、レーザー制御部と動作制御部へ送られ、この信号をもとに、動作制御部より駆動部への最適な動作信号のフィードバックが順次行われ、これによりワークセットテーブルは精度よく動作する。
【0030】
そして、レーザー制御部へワークセットテーブルの動作による二次元方向の信号が送られ、この信号をもとに、その時点での動作情報に、いわば連続的に更新され、更新された動作情報が順次レーザー制御部からレーザー光出射部へ出力される。
【0031】
このように、レーザー光出射部とワークの相対的、かつ物理的な移動による集光部の走査を行うレーザー加工において、ワークセットテーブルの移動速度の生成値が、生成された軌道の予め設定した可否の基準となる加減速度の動作限界値を超える(負荷が大きくなる)区分(すなわち否と判定された区分)では、その区分の移動方向において前の区分に対応する前記加工形状の区間の終点まで加工した後、終点においてレーザー光の出射を停止するため、次の区分(否と判定された区分)に対応する加工形状の区間の加工始点へ移動するまでの間は、レーザー光出射部がワークに対して相対的な空走状態となる。
【0032】
また、軌道において、所定の速度に加速し、次の区分に移動したところで、該区分に対応する加工形状の区間の加工始点にレーザー光を出射し、空走前に加工を停めた箇所(位置)から、この区間のレーザー光による加工を継続して行う。つまり、レーザー光の集光部を、ワークに対して、所要の速度、かつ一定の速度で、途切れることなく走査することができるので、高速、かつ高い品質で加工を行うことができる。
【0033】
(5)本発明は、前記駆動部が、第1のリニアエンコーダを有する第1の駆動軸と、該第1の駆動軸に同第1の駆動軸と略平行に移動可能に設けられ、前記第1の駆動軸と略直交する第2の駆動軸とを有し、前記ワークセットテーブルが前記第2の駆動軸に移動可能に設けられている構成とすることもできる。
【0034】
この場合は、ワークセットテーブルの二次元方向の所要範囲内の全域での移動を第1の駆動軸と第2の駆動軸によって行うことができる。
また、第1の駆動軸が備えている第1のリニアエンコーダと、第2の駆動軸が備えている第2のリニアエンコーダの双方から送られる情報によって、ワークセットテーブルの二次元的位置を特定することが可能になる。
【0035】
(6)本発明は、前記ワークの加工完了後、同ワークに残る実際の加工形状を計測する画像センサを備えており、前記動作情報生成部において、前記実際の加工形状と前記予め設定されたワークの加工形状とを比較して、その差分を補正し、この補正値を使用して、前記レーザー制御部による前記レーザー光出射部の制御と、前記動作制御部による前記ワークセットテーブルの移動制御を行うようにした構成とすることもできる。
【0036】
この場合は、まず、ワークの加工完了後、ワークを所定の位置(計測位置)に移動させ、画像センサによって、ワークに残っている実際の加工形状を計測する。この計測値のデータと、加工条件であり予め設定されたワークの加工形状のデータとを比較し、差分を算出する。この差分を補正値とし、次の加工において、補正値を使用した加工を行う。これにより、電気信号の遅れや可動部の機械的抵抗などに起因する、予め設定されたワークの加工形状と実際の加工形状の誤差をより小さくすることができ、ワークの加工精度が向上する。
【0037】
(7)上記の目的を達成するために本発明のレーザー加工方法は、予め設定されたワークの加工形状に対応し、レーザー光出射部のレーザー光の走査範囲を利用し、ワークセットテーブルの移動時において慣性の影響を抑制できるように、かつ総移動長が最短となるように、前記ワークセットテーブルの軌道及び動作情報を生成し、該生成した軌道の所要の区分ごとに、前記動作情報と予め設定した可否の基準となる動作限界値とを比較し、同動作情報が同動作限界値以下であれば可と判定し、同動作限界値を超えれば否と判定する工程と、前記生成した軌道の前記可と判定された区分においては、該区分に対応する前記加工形状の区間を、前記動作情報をもとに前記ワークセットテーブルを移動させながらレーザー光を走査して加工し、前記否と判定された区分においては、その区分に含まれる方向転換点を境界とする各区分において、移動方向で前の区分に対応する前記加工形状の区間を始点から終点まで加工した後、該終点においてレーザー光の出射を停止し、加工を停めた状態で、前記ワークセットテーブルを所要の速度で移動させ、次の後の区分に移動したところで、前記区間の加工を停めた箇所から、後の区分に対応する前記加工形状の区間の加工を継続する工程とを備える。
【0038】
このレーザー加工方法では、生成された軌道において、可と判定された区分においては、生成された動作情報である所要の速度でワークセットテーブルを移動させながら、レーザー光出射部からレーザー光を出射し、ワーク上を走査して、上記区分に対応する加工形状の区間を加工する。また、軌道において、否と判定された区分においては、その区分の移動方向において、方向転換点より前の区分に対応する前記加工形状の区間の終点(次の加工始点となる)まで加工した後、終点(方向転換点)においてレーザー光の出射を停止する。上記加工形状の区間の次の加工始点に対応する位置まで移動する間のワークセットテーブルの移動(レーザー光出射部の相対的な移動)においては、レーザー光による加工を行わない、いわゆる空走状態となる。
【0039】
そして、レーザー光出射部は、相対的な空走状態を経て、次の区分(方向転換点より後の区分)に対応する加工形状の区間の加工始点において所定の加工速度に達した後、加工始点にレーザー光を出射し、次の区分に対応する加工形状の区間の加工を継続する。この加工の継続により、レーザー光の集光部のワーク上での走査は、所要の速度、かつ同じ速度(等速)で途切れることなく行われることになり、結果的に、ワークを高速で加工することができると共に、高い品質で加工することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明は、レーザー光出射部とワークの相対的、かつ物理的な移動による集光部の走査を行うレーザー加工において、レーザー光をワークに対して所要の速度、かつ等速で走査することにより、高速、かつ高い品質で加工を行うことができるレーザー加工方法及びレーザー加工装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1及び
図2を参照して、本発明の実施の形態を更に詳細に説明する。
まず、本発明のレーザー加工装置Aの動作系の構造を説明する。
図1に示すレーザー加工装置Aは、ベース盤17を有する。ベース盤17の上面のX方向の中央には、第1の駆動軸であるY方向駆動軸10がY方向へ向けて固定されている。Y方向駆動軸10には、ほぼ全長にわたり、第1のリニアエンコーダであるY方向リニアエンコーダ11が設けられている。
【0043】
Y方向駆動軸10の上には、第2の駆動軸であるX方向駆動軸8がY方向駆動軸10と直角方向(X方向)へ向けられ、かつY方向リニアエンコーダ11によって座標が特定できるようにY方向に移動可能に取り付けられている。X方向駆動軸8には、ほぼ全長にわたり、第2のリニアエンコーダであるX方向リニアエンコーダ9が設けられている。また、X方向駆動軸8の上には、後述するワークセットテーブル7がX方向リニアエンコーダ9によって座標が特定できるようにX方向に移動可能に取り付けられている。Y方向駆動軸10とX方向駆動軸8は、ワークセットテーブル7を移動させる駆動部を構成する。
【0044】
ベース盤17の後部側には、架台18が設けられている。架台18の上には、レーザー発振器1が設置されている。また、架台18の前端には、ヘッド昇降機構部5が設けられている。ヘッド昇降機構部5の昇降制御が可能な昇降体50には、レーザー光出射部を構成するガルバノスキャナ4が固定されている。ガルバノスキャナ4は、下側に出射部であるfθレンズ(エフシータレンズ)3を有し、fθレンズの他、ミラーなどの光学系によってレーザー光を走査するものである。
【0045】
また、ガルバノスキャナ4は、単体で、そのスキャナ特有(独自)のレーザー光の走査範囲を備えている。この特有の走査範囲は、後で説明する、ワークセットテーブル7が可能な限り直線的に動作できる軌道を算出する際にも、条件の一つとしてデータ入力に使用される。昇降体50には、ガルバノスキャナ4の横に画像センサ6が並設されている。更に、レーザー発振器1からは、ガルバノスキャナ4へつながるレーザー光路2が延出されている。
【0046】
また、上記動作系を動作させる制御系として、動作制御部である駆動軸制御器14、レーザー制御部であるガルバノスキャナ及びレーザー光出射制御器15、動作情報生成部である動作情報生成器16、更には、X方向エンコーダ信号分配器12及びY方向エンコーダ信号分配器13を備えている。これら制御系は、制御系内及び制御系と動作系との間で、信号線を介し指令信号(制御信号)のやり取りを行う。
【0047】
以下、更に詳しく説明する。まず、駆動軸制御器14からは、信号線L1を介してY方向駆動軸10へY方向駆動軸制御指令が送られ、信号線L2を介してX方向駆動軸8へX方向駆動軸制御指令が送られる。Y方向リニアエンコーダ11からは、信号線L3を介してY方向エンコーダ信号分配器13へY方向エンコーダ信号が送られ、Y方向エンコーダ信号は、駆動軸制御器14とガルバノスキャナ及びレーザー光出射制御器15に信号線L4、L5を介して分配される。
【0048】
X方向リニアエンコーダ9からは、信号線L6を介してX方向エンコーダ信号分配器12へX方向エンコーダ信号が送られ、X方向エンコーダ信号は駆動軸制御器14とガルバノスキャナ及びレーザー光出射制御器15に信号線L7、L8を介して分配される。ガルバノスキャナ及びレーザー光出射制御器15からは、信号線L9を介してガルバノスキャナ4へガルバノスキャナ制御指令が送られ、信号線L10を介してレーザー発振器1へレーザー光出射指令が送られる。
【0049】
また、画像センサ6からは、信号線L11を介して動作情報生成器16へ画像情報が送られる。この画像情報は、信号線L12を介してガルバノスキャナ及びレーザー光出射制御器15へ送られ、信号線L13を介して駆動軸制御器14へ送られる。
【0050】
次に、
図2を参照して、レーザー加工装置Aにおいて採用しているワークセットテーブル7について説明する。
ワークセットテーブル7は、フィルムやシートなどの加工対象物であるワークを吸着して固定する。一般に、レーザー加工装置のテーブルでは、固定したワークを切断する際に、加工点で切り抜けたレーザー光の反射による影響を抑制するため、ワークの加工する箇所は宙に浮かせた状態で保持する必要がある。
【0051】
通常は、上面に、ワークの加工する部分(加工形状)と対応する形状の溝を設けたテーブルが用いられている。しかしながら、ワークの加工形状は様々であり、これらに対応する溝形状を持つテーブルを予め製作しておいて、これらを管理することは、手間がかかる上に、コスト的にも負担が大きい。
【0052】
レーザー加工装置Aが備えるワークセットテーブル7は、四角形のテーブル本体70を有し、その表面には、ほぼ全面にわたり多数の吸気孔71が設けられている。また、テーブル本体70の表面には、大きさが異なる四角形で同じ厚さを有する吸着ブロック72、72aが適宜配列をもって着脱可能に固定されている。大きい吸着ブロック72と小さい吸着ブロック72aは、例えば
図2に示すように配列されている。
【0053】
これにより、各吸着ブロック72、72aの上面に設けてあり上記吸気孔71に通じる吸着孔73から吸気することにより、ワークをテーブル本体70の表面から加工部を宙に浮かせた状態で吸着することができる。また、各吸着ブロック72、72aを固定することで、一段低くなったテーブル本体70の表面にある各吸気孔71により、レーザー加工によって発生したワークの気化物などを吸い込んで排除することが可能である。
【0054】
なお、この例では、ワークであり
図2に点線で示したフィルム700において、各吸着ブロック72に対応する一点鎖線で示した四角形の加工形状74、吸着ブロック72aの二個一組に対応する四角形の加工形状75、吸着ブロック72aの十二個に対応する十字形の加工形状76及び同じく吸着ブロック72aの十二個に対応する円形の加工形状77が設定されている。
【0055】
ここで、
図1を参照し、レーザー加工装置Aの動作の概略を説明する。
レーザー加工装置Aは、出射部であるガルバノスキャナ4によるレーザー光の走査速度とワークセットテーブルの移動によって得られる移動速度との合成速度を用いることで、加工対象物に対するレーザー光の走査ができる構成である。
【0056】
(1)必要となる加工形状のデータを動作情報生成器16へ入力する。
(2)入力したデータをもとに、動作情報生成器16によりガルバノスキャナ4の相対的な移動による軌道と、それに基づくX方向駆動軸8とY方向駆動軸10の動作情報と、ガルバノスキャナ4の動作情報が生成される。
【0057】
(3)これら動作情報をもとに、駆動軸制御器14よりX方向駆動軸8とY方向駆動軸10へ動作指令が出力され、ガルバノスキャナ及びレーザー光出射制御器15からガルバノスキャナ4へ動作指令が出力される。
(4)動作指令に基づき、ワークセットテーブル7が移動し、その現在位置を示すX方向、Y方向のエンコーダ信号を、X方向リニアエンコーダ9及びY方向リニアエンコーダ11から出力する。
【0058】
(5)X方向、Y方向のエンコーダ信号は、X方向エンコーダ信号分配器12、Y方向エンコーダ信号分配器13により分配され、駆動軸制御器14とガルバノスキャナ及びレーザー光出射制御器15へ出力される。
(6)X方向、Y方向のエンコーダ信号をもとに、駆動軸制御器14よりX方向駆動軸8とY方向駆動軸10への最適な動作信号のフィードバックが順次行われ、ワークセットテーブル7は精度よく動作する。
【0059】
(7)ガルバノスキャナ及びレーザー光出射制御器15へ、ワークセットテーブル7の動作によるX方向、Y方向のエンコーダ信号が送られ、このX方向、Y方向のエンコーダ信号をもとに、その時点での動作情報に、いわば連続的に更新され、更新された動作情報が順次ガルバノスキャナ4及びレーザー発振器1へ出力され、レーザー加工が行われる。
【0060】
(8)一つのワークに対し完了まで加工を行った後、画像センサ6により加工済みワークの加工位置を計測し、動作情報生成器16へ出力する。
(9)動作情報生成器16において、電気信号の遅れなどで生じる、入力した加工形状と実際の加工形状との差を算出し、動作信号の補正を行い、次の加工の精度を高める。
【0061】
次に、
図1乃至
図8を参照し、レーザー加工装置Aを使用して、ワークが合成樹脂製のフィルムである場合を例にとり、フィルムを所要形状に切断する場合の装置の作用及び加工方法を詳細に説明する。
【0062】
まず、ワークセットテーブル7に四角形のフィルム700などのワークを載せ、ワークを固定するための信号を入力(スイッチや外部からの電気信号入力)する。これにより、ワークセットテーブル7に設けられた吸気孔71につながった配管に負圧を生じさせ、ブロック72、72aの吸着孔73から吸気することにより、ワークを吸着し固定する。
【0063】
その後、レーザー光の暴露を防止するため、レーザー加工装置Aが備えるカバー(図示省略)を閉じ、安全を確保する。次に加工開始の信号を入力すると、各制御器が動作指令を各機器に送り、各機器は動作を開始する。以下、加工作業の動作フローについては、
図3、
図4及び
図5を参照する。なお、説明において<>付き番号の説明は、これらの図に示した番号に対応している。
【0064】
<1>加工形状データの作成と入力(手作業)
動作情報生成器16(一般的にはパーソナルコンピュータ)のソフトウエアの画面において、ワークに対して加工(例えば切断)を行いたい加工形状の線(1次元的な点も含む場合がある)を入力する。入力に際しては、点、直線や曲線、円形、矩形などの種々のオブジェクトを選択して二次元的な図形を作成する(
図6(a)参照)。なお、この図形は説明のために例示したもので、上記
図2で例示した加工形状74〜77とは異なる。
【0065】
また、CAD(computer-aided design)システムなどで予め作成した二次元的な図面データを取り込むようにしてもよい。更に、ワークとワークセットテーブル7の相対的な位置ズレを補正するために、ワーク上にマーク(図示省略:印刷や成膜、その他の処理による)が予め設けられている場合は、画像センサ6がその位置を検出する必要があるため、その座標についても設定する。
【0066】
<2>加工条件入力(手作業)
上記<1>で作成した二次元的な加工形状データに対し、加工する際に必要となる加工速度、繰返し周波数(発振周波数)及び加工点出力(レーザー出力)の加工条件を設定し、動作情報生成器16に入力する(
図6(b)参照)。この加工条件の設定については、作成した加工形状の線分の各区間毎に指定し入力することができる。なお、レーザー加工装置Aの能力上の制限値(ガルバノスキャナ4の走査範囲、速度、ワークセットテーブル7の最大速度及び加減速度の動作限界値など)は、予め設定されている。
【0067】
また、上記加工点出力とは、レーザー発振器1から出射されたレーザー光が光学系を経由し、ワークに到達して、実際に加工に寄与するレーザー光の1秒間当たりのエネルギーをいう。このエネルギーは、通常、光学系において一定の減衰が起こるので、設定に当たってはそれを勘案する。
【0068】
<3>加工形状データの分類(予備検証の準備工程)
上記<1>で入力された線分からなる加工形状データを、細分化し、点と直線と円弧の三種類のオブジェクトに分類する(
図6(c)、(d)参照)。なお、
図6(d)に示したものは、
図6(c)に示した直線と円弧のオブジェクトに加えて、点のオブジェクトを三箇所に例示したものである。
【0069】
次に、ガルバノスキャナ4の対応エリアの範囲毎にそれらのオブジェクトをグループ化する。オブジェクト1つでガルバノスキャナ4の対応範囲(対応エリア)を超える場合は、グループ化せず、単独として存在させる(
図7(a)参照)。
【0070】
<4>予備検証
加工形状への対応の可否を事前に予備的に検証する。
上記<3>で作成したオブジェクトのグループ及び単独のオブジェクトがそれぞれ配置されている状態で、駆動機器であるY方向駆動軸10とX方向駆動軸8などの動作負荷が大きい箇所を判断し、簡易的にオブジェクトグループ及び単独オブジェクトをガルバノスキャナ4の対応範囲に収めつつ、ワークセットテーブル7が可能な限り直線的に動作できる軌道を算出する(
図7(b)参照)。
【0071】
このように、ガルバノスキャナ4の走査範囲内で、レーザー光を所要の速度で、かつ連続的に等速で走査可能な、ワークセットテーブル7の軌道及び移動速度を生成する。なお、この自動処理で走査の指令が完結できれば、処理時間、加工品質の面で優れた処理が可能である。
【0072】
そして、直線間での方向転換量を、駆動機器の予め設定されている動作限界値と比較して、等速での走査の可否を判定する。すなわち、生成した軌道の所要の区分ごとに、生成した速度の微分値と予め設定した可否の基準となる加減速度の動作限界値とを比較し、速度の微分値が動作限界値以下であれば可と判定し、動作限界値を超えれば否と判定する。なお、可否の基準となる動作限界値は、駆動機器の持つ加減速度、制定時間、振動などを基に設定されるもので、事前に入力しておく。また、動作限界とは、ワークセットテーブル7の加減速、制定時間が、予め設定されている走査速度に対応できないことをいう。
【0073】
<5>空走距離及び位置情報の算出
上記<4>の予備検証で、生成した軌道の、所要の速度及び等速での走査が否と判定された区分において、ワークセットテーブル7の空走経路・距離(ガルバノスキャナ4の相対的な空走経路・距離)及びレーザー光をON/OFFする位置の情報を算出する。そして、上記否と判定された区分では、移動方向において、その前の区分に対応する加工形状の区間において、終点までを加工した後、その終点から次の区間(否と判定された区分に対応する加工形状の区間)の加工始点へガルバノスキャナ4が相対的に移動する間は、レーザー光を出射しない状態で所要の速度で移動させることで、すなわち相対的に空走させることで対処する。
【0074】
<6−A>駆動軸動作情報の作成(自動処理)
上記<1>で作成した加工形状の二次元の線分のデータを一定間隔の点データに変換する。これらの点をガルバノスキャナの対応できる領域の例えば1/4〜1/2の範囲で囲い、グループ化する。グループ化された点データの重心位置を各点の座標より算出する。
【0075】
得られたすべての重心位置を通り、総移動長が最短となる線(直線、または曲線であれば、曲率が大きく、直線により近い線)を算出する。なお、ここでいう総移動長とは、ワークセットテーブル7が、ワーク単位での一回の加工において、移動する長さの全長をいう。換言すればガルバノスキャナ4が、ワーク単位での一回の加工において、ワークに対し相対的に移動する長さの全長をいう。この線をワークセットテーブルが動作する軌道情報とする(
図7(c)参照)。これにより、ワークセットテーブル7が動作する際の慣性の影響を抑制または低減することができる。
【0076】
そして、グループ内に存在する点の数より、加工長を得て、それを加工速度で除することにより、そのグループ内で許容される所要時間が求められる。また、重心位置間の距離と所要時間より、ワークセットテーブル7を移動させるための速度情報が得られる。
【0077】
<6−B>ガルバノスキャナ動作情報の作成(自動処理)
ガルバノスキャナ4は、加工形状データを最小単位として、点、直線、円弧に近似した形状を認識する。円弧に属しない曲線などは、短い直線のつながりとして処理した後、レーザー加工の始点位置と終点位置を設定する(
図7(d)参照)。この始点位置と終点位置については、レーザー光の出射情報となるとともに駆動軸動作情報にも反映され、動作上の始点位置と終点位置と共通とする。
【0078】
<7−A>駆動軸動作情報を出力
動作情報生成器16より、X方向駆動軸8とY方向駆動軸10の動作情報を駆動軸制御機器14へ出力する。
【0079】
<7−B>ガルバノスキャナ動作情報及びレーザー光出射情報を出力
ガルバノスキャナ及びレーザー光出射制御器15より、ガルバノスキャナ動作指令をガルバノスキャナ4へ、レーザー光出射指令をレーザー発振器1へ出力する。
【0080】
図4を参照する。
<8−A>駆動軸制御指令の生成(自動処理)
初期の動作情報を駆動軸制御器14へ書き込み、ワークセットテーブル7の現在位置となるX方向リニアエンコーダ9及びY方向リニアエンコーダ11から出力される信号を受けながら、この信号をもとに適正な(あるいは最適な)駆動軸制御信号を生成し、駆動部であるX方向駆動軸8とY方向駆動軸10へのフィードバックが順次行われる。これにより、ワークセットテーブル7は精度よく動作する。
【0081】
<8−B>ガルバノスキャナ及びレーザー光出射制御指令の生成(自動処理)
初期の動作情報を駆動軸制御器14へ書き込み、エンコーダ信号より得られるワークセットテーブル7の現在位置を差し引きしながら制御指令を生成する。ガルバノスキャナ及びレーザー光出射制御器15では、ここで生成された指令については、ワークの基準位置からの相対的なものとした初期値として認識される。また、動作途中にワークセットテーブル7の移動に伴い、ワークの基準位置が移動することにより、相対的にレーザー光の照射位置(レーザー側の基準位置)との距離が変動するため、その分を差し引くことを前提として、ガルバノスキャナ4の対応範囲よりも大きい指令値を受け入れる。
【0082】
より詳しくは、X方向リニアエンコーダ9及びY方向リニアエンコーダ11より電気信号として出力されるエンコーダ信号によるワークセットテーブル7の現在位置情報を、駆動軸制御器14及びガルバノスキャナ及びレーザー光出射制御器15に入力する。駆動軸制御器14では、ワークセットテーブル7の設定された軌道及び速度条件通り精度よく動作するよう、現在位置情報と比較しながら、動作時の慣性や全体的な熱膨張などの影響を相殺してX方向駆動軸8とY方向駆動軸10のモータ動作を制御する。一方で、ガルバノスキャナ及びレーザー光出射制御器15は、ワークセットテーブル7の現在位置情報を受けて、ワークの基準位置とレーザー側の基準位置との相対的な差を連続的に初期の動作指令情報より差し引いた指令をガルバノスキャナ4及びレーザー発振器1に出力し加工を行う。
【0083】
<9−A>駆動軸制御指令出力
駆動軸制御器14から、X方向駆動軸8とY方向駆動軸10へ、制御指令が出力される。
<9−B>ガルバノスキャナ制御指令出力
ガルバノスキャナ及びレーザー光出射制御器15から、ガルバノスキャナ4へ、制御指令が出力される。
<9−C>レーザー光出射制御指令出力
ガルバノスキャナ及びレーザー光出射制御器15から、レーザー発振器1へ、制御指令が出力される。
【0084】
<10−A>ワークセットテーブル動作
上記<9−A>により、ワークセットテーブル7が所要の軌道上を動作する。
<10−B>ガルバノスキャナ動作
上記<9−B>により、ガルバノスキャナ4からのレーザー光の出射、及び停止を行う。
<10−C>レーザー光出射
上記<9−C>により、レーザー光が出射され、レーザー光路2を介してガルバノスキャナ4へ送られる。
【0085】
各機器の動作が始まり、エンコーダ信号をもとに、ワークに設定された加工始点がガルバノスキャナ4の対応範囲内に入ると、ガルバノスキャナ4によりワークの加工始点となる位置へ向けてレーザー光が出射され、加工が行われる。なお、生成された軌道において、可と判定された区分(
図8において円弧形状の区分1)においては、生成された所要の速度でガルバノスキャナ4をワークに対し相対的に移動させながら、ガルバノスキャナ4からレーザー光を出射し、ワーク上を走査して、上記区分1に対応する加工形状の区間を加工する。
【0086】
ワークセットテーブル7が移動する軌道において、否(動作限界を超える)と判定された区分(
図8において、直線状の区分5、9)においては、それぞれの始点側に、移動方向順に減速区間(直線状の区間2、6)、連結区間(直線状の区間3、7)及び加速区間(直線状の区間4、8)からなる空走部が軌道に追加される。
【0087】
また、否と判定された区分が区分5である場合は、可と判定されている区分1が移動方向において前の区分となり、否と判定された区分が区分9である場合は、否と判定されている区分5が移動方向において前の区分となる。更に、否と判定された区分5、9の関係でいえば、区分5は、区分5の終点である方向転換点を境界として、前の区分であり、区分9は後の区分である。なお、区分1の終点及び区分5の終点は方向転換点である。
【0088】
図8を参照し説明する。ガルバノスキャナ4によりレーザー光で区分1に対応する加工形状の区間を加工した後、その終点でレーザーを停めて、各区間2、3、4の空走を行い、加速区間4で加速し所要速度に達したところで、区分5に対応する加工形状の始点よりレーザー光を出射して加工を始める。そして、区分5に対応する加工形状の終点まで加工した後、終点でレーザー光を停めて、各区間6、7、8の空走を行い、加速区間8で加速し所要速度に達したところで、区分9に対応する加工形状の始点よりレーザーを出射して加工を始め、区分1に対応する加工形状の始点(加工始点)まで加工する。
【0089】
上記加工の継続により、レーザー光のワーク上での走査は、所要の速度、かつ同じ速度(等速)で途切れることなく行われることになり、結果的に、ワークを高速で加工することができると共に、高い品質で加工することができる。
なお、
図8ではワークセットテーブル7の軌道と、ワーク上の加工形状の全体が重なる場合を示しているが、多少のずれが生じて、双方の全体が重ならない場合があることはいうまでもない。
【0090】
このように、ワークセットテーブル7は、予め設定された軌道を加工速度条件以下となる移動速度で変速的に移動しながら、ガルバノスキャナ4から出射されるレーザー光によりワーク上で走査される。ただし、ワークセットテーブル7の加工始点対応部までの移動及び加工形状が不連続で、次の加工始点がガルバノスキャナ4の対応範囲外にある場合は、所要の速度(例えば予め設定されているワークセットテーブル7の最大速度)にてワークセットテーブル7を移動させる。
【0091】
そして、移動するフィルムに対し、ガルバノスキャナ4は、設定された加工形状通り、相対的にレーザー光の照射位置を追従させて加工を行い、加工始点から加工終点の間を、設定された加工速度、すなわち等速にてレーザー加工が途切れない状態で加工を行う。
【0092】
<11.加工完了>
加工完了後、ガルバノスキャナ4によるレーザー光の照射を停止する。その後、ワークセットテーブル7はワークを固定した初期位置へ移動する。
【0093】
<12>画像センサによる加工対象物の位置補正
ワークセットテーブル7に固定されたワークが、ワークセットテーブル7に対し位置ズレがある場合、画像センサ6により、フィルム上に設けられたマーク(図示省略)の位置を読み取り、ワークの位置を検出してその差分を次回の加工において補正する。
【0094】
具体的には、加工開始前に、画像センサ6がマークを撮影できる位置に、ワークセットテーブル7を移動させ、画像センサ6がマークを検出し、正規の位置に対する平面上のXYθ方向のズレ量を計測し、加工形状データをズレ量の分だけオフセット(相殺、補正)する。なお、マークを設定する位置は2点以上とするのが、回転方向のズレを除外する意味で好ましい。
【0095】
図5を参照する。
<13>画像センサを用いた指令遅れ等の補正
レーザー加工において、実際には指令に対する動作の遅れなどにより、レーザー光が照射される位置と設定された形状との差異が生じる場合がある。そこで加工完了後、実際に加工したワークの加工位置(切断位置)を画像センサ6により計測する。すなわち、画像センサ6が撮影できる位置にワークセットテーブル7を移動させ(
図5−1)、設定された加工位置の計測を行い(
図5−2)、動作情報生成器16へ計測値を入力する(
図5−3)。(
図5−1)〜(
図5−3)は計測値の分だけ繰り返される。
【0096】
なお、計測位置は複数点設けることができ、その点数が多いほど精度は向上する。そして、作成された加工形状データと、得られた実際の切断位置の計測値とを比較し、X方向、Y方向の差分を算出し(
図5−4)、計測位置はもとより計測位置間でも傾斜的にその量を連続的に割り当てて、作成された加工形状のデータより差し引くことで補正値を求める(
図5−5)。この補正値を次回の加工において使用し、誤差を低減する。
【0097】
本明細書及び特許請求の範囲で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書及び特許請求の範囲に記述された特徴及びその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
【解決手段】ガルバノスキャナによるレーザー光の走査範囲を利用し、ワークセットテーブルの移動時において慣性の影響を抑制できるように、かつ総移動長が最短となるように、軌道及び速度を生成し、軌道の所要の区分ごとに、速度の微分値と可否の基準となる加減速度の動作限界値とを比較し、可否を判定する工程と、可の区分においては生成した速度でワークセットテーブルを移動させながらレーザー光を走査し、否の区分の始点側では、レーザー光の出射を停止して加工を止め、その状態で、同ワークセットテーブルを所要の速度で移動させ、可と判定された区分に移動したところで、加工を停めた箇所からレーザー光の走査による加工を継続する工程とを備える。