(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6035477
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】にんにくの低温熟成製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 19/00 20160101AFI20161121BHJP
A23L 7/109 20160101ALI20161121BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20161121BHJP
A23L 35/00 20160101ALI20161121BHJP
A23G 1/00 20060101ALI20161121BHJP
A23G 1/30 20060101ALI20161121BHJP
A23L 27/50 20160101ALI20161121BHJP
A23L 15/00 20160101ALI20161121BHJP
A23B 7/00 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
A23L19/00 C
A23L7/109 D
A23L7/109 B
A23L2/00 F
A23L35/00
A23G1/00
A23L27/50 A
A23L15/00 A
A23B7/00
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-290592(P2011-290592)
(22)【出願日】2011年12月17日
(65)【公開番号】特開2012-139218(P2012-139218A)
(43)【公開日】2012年7月26日
【審査請求日】2014年12月15日
(31)【優先権主張番号】特願2010-294754(P2010-294754)
(32)【優先日】2010年12月18日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511010646
【氏名又は名称】宮坂 寿広
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 寿広
【審査官】
植原 克典
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−022289(JP,A)
【文献】
特開昭62−257372(JP,A)
【文献】
特表2008−528007(JP,A)
【文献】
特開2007−151436(JP,A)
【文献】
特開2006−304785(JP,A)
【文献】
特開2010−239884(JP,A)
【文献】
実開平04−006686(JP,U)
【文献】
特開2009−124964(JP,A)
【文献】
特開平08−256719(JP,A)
【文献】
特開2002−153232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 19/00
A23B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
にんにく内部の細胞を零下10℃以下の温度条件で約1月凍結させ、次に約10℃〜11℃の冷蔵温度で約2ケ月熟成させるにんにくの低温熟成製造方法
【請求項2】
請求項1の低温熟成製造方法によるにんにくを粉砕し、青汁を生産する製造方法
【請求項3】
請求項1の低温熟成製造方法によるにんにくを粉砕し、ラーメン又は餃子の皮を生産する製造方法
【請求項4】
請求項1の低温熟成製造方法によるにんにくを粉砕し、混入したチョコレートを生産する製造方法
【請求項5】
請求項1の低温熟成製造方法によるにんにくを粉砕し、寒天を加え、醤油に混入した納豆用の醤油を生産する製造方法
【請求項6】
請求項1の低温熟成製造方法によるにんにくを使用したにんにく卵黄を生産する製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はにんにくの低温熟成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
にんにくは健康に有用な食材として種々の加工方法により、活用されている。近年、にんにくを加熱熟成させて、より有効な成分を生じさせる方法が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2010−294754 特許公開2005−278635
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の熟成方法は約80℃で加熱熟成させる方法であるが、加熱により、にんにくの有効成分である揮発性のアリシンは減少し、にんにく臭が無くなる。生にんにくを切るとアリナーゼ酵素が働いて発生するアリシンはナチュララルキラー細胞を活性化させる働きが認められている。従来の約80°熟成方式によると、この成分は減少する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は前記の課題を解決する手段として、冷凍及び冷蔵により、にんにくの発酵、熟成を行うものである。本発明のきっかけは偶然の産物である。レストラン料理長である発明者がにんにくを家庭用冷蔵庫で数ケ月間、冷凍保存しておいたものを一旦冷蔵室に移し、数ヵ月後に取り出したところ、にんにくが目を見張るような実に美しいオレンジ色に変化し、しかも柔らかくなっていることを偶然発見し、これを料理に使用したところ非常に美味である事を確かめた事が発端である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の製造方法は冷凍工程と冷蔵工程による加工方法であり、にんにくを加熱する工程は無く、にんにくの臭い成分であるアリシンとアリシンが分解したアリルスルフィド類が残存出来る。従来の80°加熱方式による所謂黒にんにくと本発明工程による熟成にんにくを香りを比べると、黒にんにくは無臭であるのに対し、本発明工程によるにんにんにくはアリシンの香りが残っている。アリシンが分解したアリルスルフィド類は、ジアリルジスルフィドを初め、数種類のアリルスルフィド類が確認され、これらの成分はガン予防、抗血栓の効能があるとされている有用な成分である。非常に重要な事は、従来の80℃熟成方式では生にんにくがアリシンによりナチュラルキラー細胞を活性化させる働きに影響があるが、本発明の方式によると加熱工程が無いため、生にんにくの有効成分に影響を与えず、ナチュラルキラー細胞を活性化させる事が出来る点である。なお本発明製造方法による熟成にんにくをオイル類に漬けるとアリルスルフィド類が揮発せず、残存出来る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は本発明の製造工程を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に使用するにんにくは6月に採れる新にんにくでは水分が多すぎて熟成が出来ない。十分に乾燥したにんにくを使用しなければならない。
本発明に関する代表的な実験結果を表に示す。
代表的な実験結果から冷凍温度と冷凍日数、冷蔵温度と冷蔵月数の関係は次のように推定出来る。すなわち、NO1、NO2の実験例は冷凍日数が不足のため、未熟性で本発明品の特有のオレンジ色に発色出来ない。また十分な根止が出来ず、発芽、根が出る現象を引き起こしていると推定出来る。更に冷凍の効果はにんにくを包丁で切った際に、アリナーゼという酵素がアリシンに変化するのであるが、本発明の工程における冷凍でも同じ酵素変化が起きている事が分かった。この酵素変化はNO1、NO2の7日、14日の期間では十分にその効果を発揮出来ず、前述の酵素による熟成が不十分でにんにくの内部が安定した成分にならず、抗菌効果が減少してカビが発生したと推定出来る。NO3、NO4の実験例は冷凍期間は十分であるが、冷蔵温度が低く、十分な熟成が進んでいない事が原因であると推定出来る。NO5,NO6,NO7は何れも冷凍期間、冷蔵温度共に適合し、綺麗なオレンジ色に発色し、弾力に富む熟成にんにくとなり、十分な熟成が出来たと推定出来る。以上のような代表的実験例などから次のように推定出来る。
冷凍温度は−10°以下、冷凍日数は約1ケ月であり、冷蔵温度は約10°から11°であり、冷蔵月数は約2ケ月である。低い温度の冷凍によってにんにくの内部の細胞が凍結し、いわゆる根止効果により、細胞は死滅する。冷凍温度はマイナス60°等の超低温またはマイナス30°〜マイナス20°の場合等、温度条件によって根止効果に差が生じるので冷凍期間は変化する。冷凍温度が低い程、冷凍期間は短縮される。
図1に示すように十分低い温度で十分な冷凍期間により、冷凍を行った後、次に長期間の冷蔵によって熟成させる。この結果、にんにくは柔らかくなり、オレンジ色に変化する。このオレンジ色に変化したにんにくを天日などで乾燥すると黒にんにくが製造出来る。本発明の製法によって熟成したにんにくは次に述べるような加工食品を作る。
即ち、本発明の熟成にんにくを粉砕し、ペースト状に加工し、これを青汁に混入する事により、免疫力を向上する青汁を造る事が出来る。前記のペースト状の材料に寒天などの食材を混練りしてゼリー状に加工し、納豆添付の醤油、味噌、ラーメンの麺、餃子の皮等に使用する。更にはこの材料をチョコレートに入れて免疫力を向上出来る菓子が出来る。チョコレートのポリフエノールと共に健康に有用な成分となる。このチョコレートへ本発明の熟成にんにくを加えたものは意外に美味である。
本発明の熟成にんにくを微塵切りにしてオリーブ油に入れると、油膜により、熟成にんにくの変質を防ぐ事が出来る。このオリーブ油付けの熟成にんにくをご飯に炊き込むと美味であり、免疫力を向上するご飯が出来る。にんにく卵黄に使用する事も出来る。黒酢に本発明工程による熟成にんにくを入れて黒酢にんにくも出来る。
本発明の工程による熟成にんにくについて成分分析を行った結果を次に示す。
▲1▼ ジアルリトスルフイド
効能・ガン細胞の増殖を抑え、寿命のある正常な細胞に戻し、ガン細胞を消滅させる。
⇒本発明の熟成にんにくは生にんにくの3倍強に増加していた。
▲2▼ メチル・アリルリスルフイド
効能・血小板の凝集を最も強く抑える成分あり
発がんの抑制、ガン細胞の増殖を防ぐ
⇒本発明のにんにくは生にんにくの4倍強に増加していた。
▲3▼ ジアリルジスフイド
効能・ガン予防、抗血栓作用、血小板の凝集抑制、悪玉コレステロールの減少、血糖値を下げる、体力増強、疲労回復、免疫力を高めてウイルスを殺す
⇒本発明の熟成にんにくは生にんにくの3倍強に増加していた。
【0009】
本発明は以上のような製造工程のため、加熱によるにんにく成分の変成を防ぎ、免疫力を高める成分を壊さないで、熟成させる事が出来、幅広い応用分野が開ける。