(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
貯蔵室内に設置され、表面に発生した除霜水を前記表面から落下させることを容易にする皮膜を有する蒸発器と、前記蒸発器で冷却された冷気を前記貯蔵室内に送風する送風ファンと、を備えた冷蔵庫において、前記蒸発器は表面にフィンを備え、前記蒸発器のフィン表面の重力方向に溝を設けるとともに、前記送風ファンは前記蒸発器の下方で冷却室仕切壁の冷気吐出口近傍に配置され、前記冷気は前記蒸発器表面を重力方向に通過した後、前記冷気吐出口から貯蔵室へと吹き出されることを特徴とする冷蔵庫。
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1の発明は、貯蔵室内に設置され、表面に発生した除霜水を前記表面から落下させることを容易にする皮膜を有する蒸発器と、前記蒸発器で冷却された冷気を前記貯蔵室内に送風する送風ファンと、を備えた冷蔵庫において、前記蒸発器は表面にフィンを備え、前記蒸発器のフィン表面の重力方向に溝を設けるとともに、前記送風ファンは前記蒸発器の下方で冷却室仕切壁の冷気吐出口近傍に配置され、前記冷気は前記蒸発器表面を重力方向に通過
した後、前記冷気吐出口から貯蔵室へと吹き出されるものであり、これにより前記蒸発器表面に発生した除霜水の水切り性能を向上させると共に、皮膜が劣化した場合にも除霜水が溝を伝うため安定的に水切りを行うことができ、除霜時間の短縮につながり、省電力化した冷蔵庫を提供することができる。
【0016】
第
2の発明は、第
1の発明において、前記溝は複数列設けたものであり、前記蒸発器表面全体から除霜水をより確実に水切りすることができる。
【0017】
第
3の発明は、第
1または第2の発明において、前記溝はプレス加工により設けたものであり、非常に安価かつ簡単に構成することができる。
【0018】
第
4の発明は、第1から第
3のいずれかの発明において、前記蒸発器の表面に水接触角が160度以上の超撥水膜を備えたものであり、より確実に蒸発器表面からの除霜水を水切りすることができる。
【0020】
以下、本実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、従来例または先に説明した実施の形態と同一構成については同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の縦断面図である。
図2は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の要部貯蔵室の基本構造の縦断面図である。
図3は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の蒸発器の拡大図である。
【0022】
図1において、冷蔵庫100の断熱箱体101は、主に鋼板を用いた外箱102と、ABSなどの樹脂で成型された内箱103と、を備え、その内部には例えば硬質発泡ウレタンなどの発泡断熱材が充填されて、周囲と断熱され、断熱仕切壁120、121で複数の貯蔵室104、105、106に区画されている。
【0023】
各貯蔵室は、冷蔵庫本体に回転自在に枢示した断熱扉117、118、119によってその前面開口部を閉塞されている。
【0024】
例えば、貯蔵室104、105、106をそれぞれ冷蔵室、野菜室、冷凍室と仮定した場合、冷蔵室は冷蔵保存のために凍らない温度を下限に通常1℃〜5℃とし、野菜室は冷蔵室と同等もしくは若干高い温度設定の2℃〜7℃としている。冷凍室は冷凍温度帯に設定されており、冷凍保存のために通常−22℃〜−15℃で設定されているが、冷凍保存状態の向上のために、例えば−30℃や−25℃の低温で設定されることもある。
【0025】
断熱箱体101の最下部の貯蔵室106の背面領域に機械室107を形成し、圧縮機108、水分除去を行うドライヤ(図示せず)等の冷凍サイクルの高圧側構成部品が収納されている。
【0026】
図2において、貯蔵室106の背面には冷気を生成する冷却室109が設けられ、その間には、断熱性を有する各室への冷気の搬送風路と、貯蔵室106と断熱区画するために構成された冷却室仕切壁110とが構成されている。冷却室109内には、表面に発生した除霜水を落下させることを容易にする皮膜(例えば、水接触角が160度以上になる超撥水膜)を有する蒸発器111が鉛直配設されており、蒸発器111の上部空間には強制対流方式により蒸発器111で冷却した冷気を貯蔵室104、105、106に送風する送風ファン112が配置され、蒸発器111の下部空間には蒸発器111表面に付着した霜を除霜するための除霜ヒーター113が設けられ、さらにその下部には除霜水を受け止め庫外に排水させるためのドレンパン114が貫通路115に構成され、その下流側の庫外に蒸発皿116が構成されている。
【0027】
冷却室仕切壁110には蒸発器111で生成された冷気を送風ファン112によって貯蔵室106へと供給するための冷気吐出口124と、貯蔵室106内を循環した冷気を蒸発器111へ戻すための冷気吸込口125と、を設けている。
【0028】
また、貯蔵室106内には引き出し機構に保持されて引き出されるとともに、食品類を貯蔵する収納ケースを配置している。本実施の形態では、貯蔵室106内には収納ケースは3つ配置している。具体的には、上段の収納ケース126、中段の収納ケース127、下段の収納ケース128を配置している。
【0029】
図3は、冷蔵庫で一般的に広く利用されているフィンチューブ式の蒸発器111であり
、複数のフィン151と複数の伝熱管152とで構成されている(A)。このフィン151は所定の間隔で複数枚積層されており、各フィンに設けた貫通穴を貫通するように伝熱管152が設けられている(B)。フィン151の表面には、上端から下端まで全面に渡って重力方向に直線的に複数の溝153を設けている。具体的には、本実施の形態では、溝ピッチ0.6mm、溝深さ0.2mm、断面形状は略三角形のものである(C)。
【0030】
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作、作用を説明する。
【0031】
まず、貯蔵室106内の冷気の流れについて説明する。蒸発器111により冷却された冷気は、モータの回転に伴い回転する送風ファン112により強制的に冷気吐出口124から貯蔵室106内へと吹き出される。この時、冷気は蒸発器111表面を重力と反する方向に通過するように送風ファン112によって送風され、冷却される。吹き出された冷気は、収納ケース126、127、128に収納されている食品類を冷却する。食品類を冷却した冷気は、矢印に示すように、収納ケース128と断熱扉内壁との空隙を通って冷気吸込口125より吸い込まれて、蒸発器111に戻ってくる循環風路構成になっている。
【0032】
冷蔵庫100の断熱扉119を開けて食品などを収納する際には、冷蔵庫100周辺の高温多湿な空気が貯蔵室106内に流入する。そして、断熱扉119を閉じた後、この流入空気が貯蔵室106内を循環する訳だが、蒸発器111のフィン151表面を通過する際に流入空気中の水蒸気がフィン151表面で凝縮し、付着する。その後、隣接する凝縮水同士が合体などして成長し、過冷却状態を経てその凝縮水が氷結し、その氷結部を核として針状に霜が成長し、霜層を形成して行く。いわゆる着霜現象である。蒸発器表面に着霜するにつれて空気の通風抵抗が増え、風量が低下し、冷却能力が低下して規定の冷却性能が維持できなくなる。
【0033】
そのため、フィン151表面に生成した霜層を除去するために、圧縮機108と送風ファン112を停止させると同時に蒸発器111の下部に設けた除霜ヒーター113に通電し、除霜ヒーター113の表面から発生する高温の自然対流や輻射熱によって霜層を融解させる。融解した除霜水は接触角が160度以上の超撥水状態となり、フィン151表面との接触面積が著しく減少するため、フィン151表面上を転落しやすくなり、重力方向に直線的に複数列設けた溝153を伝って(誘導されて)自重によりフィン151表面から容易に落下させ、水切りすることができる。
【0034】
このようにして、フィン151表面上の除霜水の水切り性能を高めることで、冷却運転再開時に除霜水自体が通風抵抗になることや、残った除霜水が起点となって早期に霜が発生することを防止することができることで除霜時間の短縮につながり、冷蔵庫の省電力化を図ることができる。
【0035】
また、フィン151の溝153を設ける方向は重力方向と完全に一致せずとも、重力方向成分を有すれば除霜水の水切り性能を高めることができる。
【0036】
また、経年などにより蒸発器111表面の皮膜が多少劣化したとしても、重力方向成分を有する溝153を設けていることにより、安定的に除霜水の水切り効果を得ることができる。
【0037】
また、フィン151表面の溝153はプレス加工によって設けることで、非常に安価でかつ簡単に形成することができる。
【0038】
さらに、溝153を設けることで、同一フィン外形寸法において空気と接する面積(伝
熱面積)を増加させることができ、冷却運転時の冷却能力(熱交換量)を向上することができる。
【0039】
以上のように、本実施の形態においては、貯蔵室106内に設置され、表面に発生した除霜水を表面から落下させることを容易にする皮膜を有する蒸発器111と、蒸発器111で冷却された冷気を貯蔵室106内に送風する送風ファン112と、を備えた冷蔵庫100において、蒸発器111のフィン151表面に重力方向成分を有する方向に直線的に複数列の溝153を設けたものであり、これにより蒸発器111のフィン151表面に発生した除霜水の水切り性能を向上させると共に、経年などにより皮膜が劣化した場合にも除霜水が溝153を伝うため安定的に水切りを行うことができ、冷却運転再開時に除霜水自体が通風抵抗になることや、残った除霜水が起点となって早期に霜が発生することを防止することができることで除霜時間の短縮につながり、省電力化した冷蔵庫を提供することができる。
【0040】
なお、本実施の形態で示した溝153の寸法および断面形状は一例であり、本発明はこの寸法および断面形状に限られるものではない。
【0041】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2における冷蔵庫の縦断面図である。
図5は、本発明の実施の形態2における冷蔵庫の要部貯蔵室の基本構造の縦断面図である。
図6は、本発明の実施の形態2における冷蔵庫の蒸発器の拡大図である。なお、実施の形態1と同一部分については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0042】
図5において、貯蔵室106の背面には冷気を生成する冷却室129が設けられ、その間には、断熱性を有する各室への冷気の搬送風路と、貯蔵室106と断熱区画するために構成された冷却室仕切壁130とが構成されている。冷却室129内には、表面に発生した除霜水を落下させることを容易にする皮膜(例えば、水接触角が160度以上になる超撥水膜)を有する蒸発器131が鉛直配設されており、蒸発器131の下部空間には強制対流方式により蒸発器131で冷却した冷気を貯蔵室104、105、106に送風するための送風ファン132が配置され、蒸発器131の下部空間には蒸発器131表面に付着した霜を除霜するための除霜ヒーター113が設けられ、さらにその下部には除霜水を受け止め庫外に排水させるためのドレンパン114が貫通路115に構成され、その下流側の庫外に蒸発皿116が構成されている。
【0043】
冷却室仕切壁130には蒸発器131で生成された冷気を送風ファン132によって貯蔵室106へと供給するための冷気吐出口124と、貯蔵室106内を循環した冷気を蒸発器131へ戻すための冷気吸込口125と、を設けている。
【0044】
また、貯蔵室106内には引き出し機構に保持されて引き出されるとともに、食品類を貯蔵する収納ケースを配置している。本実施の形態では、貯蔵室106内には収納ケースは3つ配置している。具体的には、上段の収納ケース126、中段の収納ケース127、下段の収納ケース128を配置している。
【0045】
図6は、冷蔵庫で一般的に広く利用されているフィンチューブ式の蒸発器131であり、複数のフィン161と複数の伝熱管162とで構成されている(A)。このフィン161は所定の間隔で複数枚積層されており、各フィンに設けた貫通穴を貫通するように伝熱管162が設けられている。フィン161の表面には、上端から下端まで全面に渡って重力方向に直線的に複数の溝163を設けている(B)。具体的には、本実施の形態では、溝ピッチ0.6mm、溝深さ0.2mm、断面形状は略三角形のものである(C)。
【0046】
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作、作用を説明する。
【0047】
貯蔵室106内の冷気の流れについて説明する。蒸発器131により冷却された冷気は、モータの回転に伴い回転する送風ファン132により強制的に冷気吐出口124から貯蔵室106内へと吹き出される。この時、冷気は蒸発器131表面を重力方向に通過するように送風ファン132によって送風され、冷却される。吹き出された冷気は、収納ケース126、127、128に収納されている食品類を冷却する。食品類を冷却した冷気は、矢印に示すように、収納ケース126と断熱扉内壁との空隙を通って冷気吸込口125より吸い込まれて、蒸発器131に戻ってくる循環風路構成になっている。
【0048】
冷蔵庫100の断熱扉119を開けて食品などを収納する際には、冷蔵庫100周辺の高温多湿な空気が貯蔵室106内に流入する。そして、断熱扉119を閉じた後、この流入空気が貯蔵室106内を循環する訳だが、蒸発器131のフィン161表面を通過する際に流入空気中の水蒸気がフィン161表面で凝縮し、付着する。その後、隣接する凝縮水同士が合体などして成長し、過冷却状態を経てその凝縮水が氷結し、その氷結部を核として針状に霜が成長し、霜層を形成して行く。いわゆる着霜現象である。蒸発器131表面に着霜するにつれて空気の通風抵抗が増え、風量が低下し、冷却能力が低下して規定の冷却性能が維持できなくなる。
【0049】
そのため、フィン161表面に生成した霜層を除去するために、圧縮機108と送風ファン132を停止させると同時に蒸発器131の下部に設けた除霜ヒーター113に通電し、除霜ヒーター113の表面から発生する高温の自然対流や輻射熱によって霜層を融解させる。融解した除霜水は接触角が160度以上の超撥水状態となり、フィン161表面との接触面積が著しく減少するため、フィン161表面上を転落しやすくなり、重力方向に直線的に複数列設けた溝163を伝って(誘導されて)自重によりフィン161表面から容易に落下させ、水切りすることができる。
【0050】
このようにして、フィン161表面上の除霜水の水切り性能を高めることで、冷却運転再開時に除霜水自体が通風抵抗になることや、残った除霜水が起点となって早期に霜が発生することを防止することができることで除霜時間の短縮につながり、冷蔵庫の省電力化を図ることができる。
【0051】
また、フィン161の溝163を設ける方向は重力方向と完全に一致せずとも、重力方向成分を有すれば除霜水の水切り性能を高めることができる。
【0052】
また、経年などにより蒸発器131表面の皮膜が多少劣化したとしても、重力方向成分を有する溝163を設けていることにより、安定的に除霜水の水切り効果を得ることができる。
【0053】
さらに、何らかの要因で万が一除霜水がフィン161表面に留まった場合でも、冷却運転再開時に除霜水の自重方向と同じ方向(重力方向成分を有する方向)に送風することにより、留まった除霜水を送風の力で水切りすることができる。
【0054】
また、フィン161表面の溝163はプレス加工によって設けることで、非常に安価でかつ簡単に形成することができる。
【0055】
さらに、溝163を設けることで、同一フィン外形寸法において空気と接する面積(伝熱面積)を増加させることができ、冷却運転時の冷却能力(熱交換量)を向上することができる。
【0056】
以上のように、本実施の形態においては、貯蔵室106内に設置され、表面に発生した除霜水を表面から落下させることを容易にする皮膜を有する蒸発器131と、蒸発器131で冷却された冷気を貯蔵室106内に送風する送風ファン132と、を備えた冷蔵庫100において、蒸発器131のフィン161表面に重力方向成分を有する方向に直線的に複数列の溝163を設けたものであり、これにより蒸発器131のフィン161表面に発生した除霜水の水切り性能を向上させると共に、経年などにより皮膜が劣化した場合にも除霜水が溝163を伝うため安定的に水切りを行うことができ、さらに送風ファンは重力方向成分を有する方向に送風することで、何らかの要因により万が一除霜水がフィン161表面に留まった場合でも、冷却運転再開時に除霜水の自重方向と同じ方向(重力方向成分を有する方向)に送風することにより、留まった除霜水を送風の力で水切りすることができるため、冷却運転時に除霜水自体が通風抵抗になることや、残った除霜水が起点となって早期に霜が発生することを防止することができることで除霜時間の短縮につながり、省電力化した冷蔵庫を提供することができる。
【0057】
なお、本実施の形態で示した溝163の寸法および断面形状は一例であり、本発明はこの寸法および断面形状に限られるものではない。
【0058】
(実施の形態3)
図7は、本発明の実施の形態3における冷蔵庫の縦断面図である。
図8は、本発明の実施の形態3における冷蔵庫の要部貯蔵室の基本構造の縦断面図である。
図9は、本発明の実施の形態3における冷蔵庫の蒸発器の拡大図である。なお、実施の形態1または2と同一部分については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0059】
図8において、貯蔵室106の上面には冷気を生成する冷却室139が設けられ、その間には、断熱性を有する各室への冷気の搬送風路と、貯蔵室106と断熱区画するために構成された冷却室仕切壁140とが構成されている。冷却室139内には、表面に発生した除霜水を落下させることを容易にする皮膜(例えば、水接触角が160度以上になる超撥水膜)を有する蒸発器141が水平より少し傾斜するように(例えば、貯蔵室106奥側に5度傾斜するように)配設されており、蒸発器141の背面空間には強制対流方式により蒸発器111で冷却した冷気を貯蔵室104、105、106に送風する送風ファン142が配置されている。蒸発器111の下部には蒸発器111表面に付着した霜を除霜するための除霜ヒーター113が設けられている。
【0060】
冷却室仕切壁140には蒸発器141で生成された冷気を送風ファン142によって貯蔵室106へと供給するための冷気吐出口124と、貯蔵室106内を循環した冷気を蒸発器111へ戻すための冷気吸込口125と、を設けている。
【0061】
また、貯蔵室106内には引き出し機構に保持されて引き出されるとともに、食品類を貯蔵する収納ケースを配置している。本実施の形態では、貯蔵室106内には収納ケースは3つ配置している。具体的には、上段の収納ケース126、中段の収納ケース127、下段の収納ケース128を配置している。
【0062】
図9は、冷蔵庫で一般的に広く利用されているフィンチューブ式の蒸発器141であり、複数のフィン171と複数の伝熱管172とで構成されている(A)。このフィン171は所定の間隔で複数枚積層されており、各フィンに設けた貫通穴を貫通するように伝熱管172が設けられている。フィン171の表面には、上端から下端まで全面に渡って重力方向に直線的に複数の溝173を設けている(B)。具体的には、本実施の形態では、溝ピッチ0.6mm、溝深さ0.2mm、断面形状は略三角形のものである(C)。
【0063】
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作、作用を説明する。
【0064】
まず、貯蔵室106内の冷気の流れについて説明する。蒸発器141により冷却された冷気は、モータの回転に伴い回転する送風ファン142により強制的に冷気吐出口124から貯蔵室106内へと吹き出される。この時、冷気は蒸発器141表面を重力方向成分を有する方向に通過するように送風ファン142によって送風され、冷却される。吹き出された冷気は、収納ケース126、127、128に収納されている食品類を冷却する。食品類を冷却した冷気は、矢印に示すように、収納ケース126と断熱扉内壁との空隙を通って冷気吸込口125より吸い込まれて、蒸発器141に戻ってくる循環風路構成になっている。
【0065】
冷蔵庫100の断熱扉119を開けて食品などを収納する際には、冷蔵庫100周辺の高温多湿な空気が貯蔵室106内に流入する。そして、断熱扉119を閉じた後、この流入空気が貯蔵室106内を循環する訳だが、蒸発器141のフィン171表面を通過する際に流入空気中の水蒸気がフィン171表面で凝縮し、付着する。その後、隣接する凝縮水同士が合体などして成長し、過冷却状態を経てその凝縮水が氷結し、その氷結部を核として針状に霜が成長し、霜層を形成して行く。いわゆる着霜現象である。蒸発器表面に着霜するにつれて空気の通風抵抗が増え、風量が低下し、冷却能力が低下して規定の冷却性能が維持できなくなる。
【0066】
そのため、フィン171表面に生成した霜層を除去するために、圧縮機108と送風ファン112を停止させると同時に蒸発器141の下部に設けた除霜ヒーター113に通電し、除霜ヒーター113の表面から発生する高温の自然対流や輻射熱によって霜層を融解させる。融解した除霜水は接触角が160度以上の超撥水状態となり、フィン171表面との接触面積が著しく減少するため、フィン171表面上を転落しやすくなり、重力方向に直線的に複数列設けた溝173を伝って(誘導されて)自重によりフィン171表面から容易に落下させ、水切りすることができる。
【0067】
このようにして、フィン171表面上の除霜水の水切り性能を高めることで、冷却運転再開時に除霜水自体が通風抵抗になることや、残った除霜水が起点となって早期に霜が発生することを防止することができることで除霜時間の短縮につながり、冷蔵庫の省電力化を図ることができる。
【0068】
また、フィン171の溝173を設ける方向は重力方向と完全に一致せずとも、重力方向成分を有すれば除霜水の水切り性能を高めることができる。
【0069】
また、経年などにより蒸発器111表面の皮膜が多少劣化したとしても、重力方向成分を有する溝173を設けていることにより、安定的に除霜水の水切り効果を得ることができる。
【0070】
さらに、何らかの要因で万が一除霜水がフィン171表面に留まった場合でも、冷却運転再開時に除霜水の自重方向と同じ方向(重力方向成分を有する方向)に送風することにより、留まった除霜水を送風の力で水切りすることができる。
【0071】
また、フィン171表面の溝173はプレス加工によって設けることで、非常に安価でかつ簡単に形成することができる。
【0072】
さらに、溝173を設けることで、同一フィン外形寸法において空気と接する面積(伝熱面積)を増加させることができ、冷却運転時の冷却能力(熱交換量)を向上することができる。
【0073】
以上のように、本実施の形態においては、貯蔵室106内に設置され、表面に発生した除霜水を表面から落下させることを容易にする皮膜を有する蒸発器141と、蒸発器141で冷却された冷気を貯蔵室106内に送風する送風ファン142と、を備えた冷蔵庫100において、蒸発器141のフィン171表面に重力方向成分を有する方向に直線的に複数列の溝173を設けたものであり、これにより蒸発器141のフィン171表面に発生した除霜水の水切り性能を向上させると共に、経年などにより皮膜が劣化した場合にも除霜水が溝173を伝うため安定的に水切りを行うことができ、さらに送風ファンを重力方向成分を有する方向に送風することで、何らかの要因により万が一除霜水がフィン171表面に留まった場合でも、冷却運転再開時に除霜水の自重方向と同じ方向(重力方向成分を有する方向)に送風することにより、留まった除霜水を送風の力で水切りすることができるため、冷却運転時に除霜水自体が通風抵抗になることや、残った除霜水が起点となって早期に霜が発生することを防止することができることで除霜時間の短縮につながり、省電力化した冷蔵庫を提供することができる。
【0074】
なお、本実施の形態で示した溝173の寸法および断面形状は一例であり、本発明はこの寸法および断面形状に限られるものではない。