特許第6035520号(P6035520)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6035520
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3205 20060101AFI20161121BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20161121BHJP
   H01L 23/522 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   H01L21/88 J
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-535173(P2013-535173)
(86)(22)【出願日】2012年12月7日
(86)【国際出願番号】JP2012007841
(87)【国際公開番号】WO2013160976
(87)【国際公開日】20131031
【審査請求日】2015年1月29日
(31)【優先権主張番号】特願2012-101097(P2012-101097)
(32)【優先日】2012年4月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100170494
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 浩夫
(72)【発明者】
【氏名】宮島 弘樹
【審査官】 河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−028696(JP,A)
【文献】 特開2010−010324(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0243047(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3205
H01L 21/768
H01L 23/522
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板内に形成された貫通電極と、
前記半導体基板と前記貫通電極との間に介在するように形成された絶縁膜と、
前記半導体基板上に、前記貫通電極と所定距離だけ離間して形成されたトランジスタとを備え、
前記半導体基板と前記貫通電極との間における前記半導体基板の表面近傍領域には、前記絶縁膜が存在せず、前記半導体基板、前記貫通電極および前記表面近傍領域下に存在する前記絶縁膜とによって直接囲まれた空隙が形成されている半導体装置。
【請求項2】
前記貫通電極は、前記半導体基板上に形成された第1層間絶縁膜中を貫通するように形成されており、
前記空隙は前記第1層間絶縁膜中にも形成されている請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記所定距離と前記空隙の前記半導体基板表面からの深さとは実質的に同等である請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記貫通電極上にさらに第1配線層を有し、
前記空隙内の一部には、前記第1配線層が埋め込まれている請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記絶縁膜はシリコン窒化膜からなる請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記貫通電極上およびその周辺部を除く前記半導体基板上に、前記トランジスタに応力を印加するストレスライナー膜が形成されている請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記貫通電極は外側のバリア膜と内側の導電膜とからなる請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
半導体基板上にトランジスタを含む第1層間絶縁膜を形成する工程(a)と、
前記トランジスタから所定距離だけ離れた前記第1層間絶縁膜内および前記半導体基板内に貫通孔を形成する工程(b)と、
前記貫通孔の内壁面上に絶縁膜を形成する工程(c)と、
前記工程(c)の後に、前記貫通孔内に導電膜を埋め込んで貫通電極を形成する工程(d)と、
前記工程(d)の後に、前記半導体基板をアニール処理する工程(e)と、
前記第1層間絶縁膜および前記半導体基板と、前記貫通電極との間に介在する前記絶縁膜の上部を除去し、前記半導体基板の表面近傍領域において、前記半導体基板と前記貫通電極との間に、前記半導体基板、前記貫通電極および前記表面近傍領域下に存在する前記絶縁膜とによって直接囲まれた空隙を形成する工程(f)とを備えた半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記工程(f)では、前記所定距離と前記空隙の前記半導体基板表面からの深さとが実質的に同等になるように、前記絶縁膜の上部を除去する請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記工程(f)の後に、前記貫通電極上を含む前記第1層間絶縁膜上に第1配線層を形成する工程(g)をさらに備え、
前記工程(g)では前記空隙内の一部に、前記第1配線層が埋め込まれる請求項8または9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記工程(a)と前記工程(b)との間に、
前記半導体基板上に、前記トランジスタに応力を印加するストレスライナー膜を形成する工程(i)と、
前記ストレスライナー膜における前記貫通電極上およびその周辺部を除去する工程(j)と、をさらに備えた請求項8〜10のうちのいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記絶縁膜はシリコン窒化膜からなる請求項8〜11のうちのいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記貫通電極は外側のバリア膜と内側の導電膜とからなる請求項8〜12のうちのいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法、特に、貫通電極を有する3次元積層半導体装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の高機能化、高性能化に伴い、用いられる半導体デバイスの高性能化、高集積化を図る様々な開発が進められている。特に、貫通電極を有する3次元半導体チップ積層技術が提案されており、活発に開発が行われている。この3次元積層技術は、積層する一方の半導体チップに、半導体基板を貫通する貫通電極および貫通電極に接続されたバンプを設け、積層するもう一方の半導体チップにもバンプを設け、両者のバンプ間の接合によりチップを積層する技術である。
【0003】
図8Aは、従来の3次元積層向けのシリコン貫通電極を含む積層チップを示す断面図である。図8B図9A図9Bは、従来の3次元積層向けのシリコン貫通電極を含む積層チップの形成方法を示す断面図である。
【0004】
まず、図8Aに、メモリと貫通電極を有するロジックチップを積層した場合の積層後の断面図を示す。ここで、メモリチップ23、ロジックチップ24、貫通電極25、マイクロバンプ26、チップ間充填材27で構成されている。
【0005】
次に、貫通電極とその周辺部に関するチップの工程断面図を示す。
【0006】
まず、図8Bに示すように、半導体基板11上にトランジスタ、抵抗等の素子(図示せず)を形成し、素子と配線層とを含むシリコン酸化膜からなる第1層間絶縁膜12を形成し、第1層間絶縁膜12中にコンタクトプラグ13を形成する。
【0007】
次に、図9Aに示すように、リソグラフィ技術およびドライエッチング技術を用いて、第1層間絶縁膜12および半導体基板11を貫通する貫通電極孔14を形成する。但し、図面では、貫通電極孔14は半導体基板の裏面側まで到達させていない。その後、貫通電極孔14の内壁面に沿うように第1層間絶縁膜12上にシリコン酸化膜等の絶縁膜15を形成し、続いて埋め込み材料である銅(Cu)の拡散バリアとなるバリア膜16として、例えばタンタル(Ta)膜を成膜する。次に、めっき技術を用いて、貫通電極埋め込み用の導電膜17として銅を貫通電極孔14内に充填し、続いてアニール処理を行う。
【0008】
次に、図9Bに示すように、CMP(Chemical Mechanical Polishing)技術を用いて、半導体基板11上の第1層間絶縁膜12上に残存する貫通電極埋め込み用の導電膜17、バリア膜16、絶縁膜15を除去し、貫通電極18を形成する。ここで、貫通電極18の大きさは、一般的に、直径が数μm〜数十μm、深さが数十μm〜数百μmである。最後に、図示しないが、半導体基板11の底面側をエッチングまたは研磨することによって貫通電極18の裏面を露出し、貫通電極18に接続されたバンプを形成する。
【0009】
さて、貫通電極18を形成してアニール処理した時、貫通電極18内の厚膜の銅にはアニール処理による膨張と収縮が発生する。このとき、銅と半導体基板11を構成するシリコンとの熱膨張係数の差から半導体基板11に応力が発生し、貫通電極18に近接するトランジスタの特性を変動させるという問題が発生する(例えば、非特許文献1参照)。
【0010】
このような貫通電極に起因する応力を緩和するために、従来、いくつかの提案がなされている。例えば、貫通電極内の金属による半導体基板への応力を緩和するために、貫通電極内の金属と半導体基板との間に応力を緩和する新たな層を設ける方法(例えば、特許文献1参照)がある。さらに、貫通電極内の金属を2層以上に分けて成膜し、少なくとも半導体基板に近い第1層目の成膜後に応力緩和のための熱処理を行う方法(例えば、特許文献2参照)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−163228号公報
【特許文献2】特開2008−085126号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】A. Mercha et al., Comprehensive Analysis of the Impact of Single and Arrays of Through Silicon Vias Induced stress on High−k/Metal Gate CMOS performance, IEDM , 2010
【発明の概要】
【0013】
しかしながら、上記に示す応力緩和方法では、緩和層や金属層を設ける等の追加の工程が必要となり、追加する材料の特性上の制約やプロセスが複雑化する等の課題がある。そのため、より簡便な応力緩和方法が求められている。
【0014】
本発明は、上記の従来技術における課題に鑑みて、貫通電極に起因する半導体基板への応力を緩和し、近接するトランジスタの特性変動等を抑制した信頼性の高い半導体装置およびその製造方法を提供する。
【0015】
上記の課題を解決するために、本発明の半導体装置は、半導体基板と、半導体基板内に形成された貫通電極と、半導体基板と貫通電極との間に介在するように形成された絶縁膜と、半導体基板上に、貫通電極と所定距離だけ離間して形成されたトランジスタとを有する。半導体基板と貫通電極との間における半導体基板の表面近傍領域には、絶縁膜が存在しない。半導体基板、貫通電極および表面近傍領域下に存在する絶縁膜とによって囲まれた空隙が形成されている。
【0016】
また、本発明の半導体装置において、貫通電極は、半導体基板上に形成された第1層間絶縁膜中を貫通するように形成されており、空隙は第1層間絶縁膜中にも形成されていることが好ましい。
【0017】
また、本発明の半導体装置において、所定距離と空隙の半導体基板表面からの深さとは実質的に同等であることが好ましい。
【0018】
また、本発明の半導体装置において、貫通電極上にさらに第2層間絶縁膜を有し、空隙内の一部には、第2層間絶縁膜が埋め込まれていることが好ましい。
【0019】
また、本発明の半導体装置において、絶縁膜はシリコン窒化膜からなることが好ましい。
【0020】
また、本発明の半導体装置において、貫通電極上およびその周辺部を除く半導体基板上に、トランジスタに応力を印加するストレスライナー膜が形成されていることが好ましい。
【0021】
また、本発明の半導体装置において、貫通電極は外側のバリア膜と内側の導電膜とからなることが好ましい。
【0022】
また、本発明の半導体装置の製造方法は、半導体基板上にトランジスタを含む第1層間絶縁膜を形成する工程(a)と、トランジスタから所定距離だけ離れた第1層間絶縁膜内および半導体基板内に貫通孔を形成する工程(b)と、貫通孔の内壁面上に絶縁膜を形成する工程(c)とを有する。さらに、工程(c)の後に、貫通孔内に導電膜を埋め込んで貫通電極を形成する工程(d)と、工程(d)の後に、半導体基板をアニール処理する工程(e)とを有する。さらに、第1層間絶縁膜および半導体基板と、貫通電極との間に介在する絶縁膜の上部を除去し、半導体基板の表面近傍領域において、半導体基板と貫通電極との間に空隙を形成する工程(f)とを有する。
【0023】
また、本発明の半導体装置の製造方法において、工程(f)では、所定距離と空隙の半導体基板表面からの深さとが実質的に同等になるように、絶縁膜の上部を除去することが好ましい。
【0024】
また、本発明の半導体装置の製造方法において、工程(f)の後に、貫通電極上を含む第1層間絶縁膜上に第2層間絶縁膜を形成する工程(g)をさらに有し、工程(g)では空隙内の一部に、第2層間絶縁膜が埋め込まれることが好ましい。
【0025】
また、本発明の半導体装置の製造方法において、工程(a)と工程(b)との間に、半導体基板上に、トランジスタに応力を印加するストレスライナー膜を形成する工程(i)と、ストレスライナー膜における貫通電極上およびその周辺部を除去する工程(j)と、をさらに有することが好ましい。
【0026】
また、本発明の半導体装置の製造方法において、絶縁膜はシリコン窒化膜からなることが好ましい。
【0027】
また、本発明の半導体装置の製造方法において、貫通電極は外側のバリア膜と内側の導電膜とからなることが好ましい。
【0028】
本発明の半導体装置およびその製造方法によれば、半導体基板上部において、貫通電極と基板との間に形成された空隙によって応力が開放されることにより、貫通電極に起因する半導体基板への応力を緩和し、近接するトランジスタの特性変動等を抑制することができる。このため、信頼性の高い半導体装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1A図1Aは、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
図1B図1Bは、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
図2A図2Aは、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
図2B図2Bは、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
図3図3は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
図4図4は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置における、空隙形成深さと貫通電極からのストレス低減効果の関係を示すグラフである。
図5A図5Aは、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
図5B図5Bは、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
図6A図6Aは、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
図6B図6Bは、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
図7図7は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
図8A】従来の半導体装置を示す断面図である。
図8B】従来の貫通電極の製造方法を示す工程断面図である。
図9A】従来の貫通電極の製造方法を示す工程断面図である。
図9B】従来の貫通電極の製造方法を示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明の実施の形態では、ビアミドルプロセスの貫通電極形成を想定しているが、これに限定されるものではない。
【0031】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0032】
図1A〜3は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【0033】
まず、図1Aに示すように、半導体基板11上にトランジスタ、抵抗等の素子(図示せず)を形成し、素子と配線層とを含むシリコン酸化膜からなる第1層間絶縁膜12を形成し、第1層間絶縁膜12中にコンタクトプラグ13を形成する。この時、第1層間絶縁膜12の厚さは例えば500nmである。
【0034】
次に、図1Bに示すように、リソグラフィ技術およびドライエッチング技術を用いて、例えば、直径5μm、深さ50μmの貫通電極孔14を形成した後、例えば、膜厚200nmのシリコン窒化膜からなる絶縁膜15を形成する。続いて、例えば、膜厚20nmのタンタル(Ta)膜からなるバリア膜16を形成する。次に、めっき技術を用いて、貫通電極埋め込み用の導電膜17として銅を貫通電極孔14内に充填し、続いてアニール処理を行う。
【0035】
次に、図2Aに示すように、CMP技術を用いて、半導体基板上の第1層間絶縁膜12上に残存する貫通電極埋め込み用の導電膜17、バリア膜16、絶縁膜15を除去し、貫通電極18を形成する。ここで、半導体基板11の材料として例えばシリコンを用いた場合、シリコンの熱膨張係数は3ppm/℃程度であり、貫通電極の銅(Cu)の熱膨張係数は17ppm/℃程度である。このため、両者の熱膨張係数のミスマッチによって、半導体基板11にアニール処理や冷却処理による応力が発生する。
【0036】
次に、図2Bに示すように、貫通電極18の導電膜17とその周囲の第1層間絶縁膜12および半導体基板11との間に形成されたシリコン窒化膜からなる絶縁膜15を、例えば半導体基板11の表面から500nmの深さまでウエットエッチングで除去する。これにより、貫通電極18側面とその周囲の半導体基板11との間に空隙19を形成する。ここで、ウエットエッチングは例えば熱燐酸で行い、シリコン酸化膜からなる第1層間絶縁膜12に対して選択的にシリコン窒化膜のみをエッチングする。このとき、シリコン窒化膜からなる絶縁膜15によって生じていた応力は、この空隙19の形成により開放される。
【0037】
図4は、半導体基板11からの空隙形成深さと貫通電極からのストレス低減効果(1−空隙形成時のストレス/空隙がない場合のストレス×100)の関係を示すグラフである。貫通電極からの距離が1、2、5μmの位置に形成されたトランジスタにおけるストレス低減効果がそれぞれ示されている。
【0038】
例えば、貫通電極から2μm離間した位置にあるトランジスタの場合、空隙形成深さを2μmの深さに設定すれば、約60%のストレス低減効果がある。
【0039】
次に、図3に示すように、第1層間絶縁膜12における貫通電極18上に第1配線層20とその周囲を埋め込む第2層間絶縁膜21を形成する。このとき、空隙19は第1配線層20により、その一部が埋め戻された構造になっても構わない。最後に、図示しないが、半導体基板11の底面側をエッチングまたは研磨することによって貫通電極18の裏面を露出し、貫通電極18に接続されたバンプを形成する。
【0040】
本実施形態の構成によれば、半導体基板上部において、貫通電極と基板との間に形成された空隙によって応力が開放されることにより、貫通電極に起因する半導体基板への応力を緩和し、近接するトランジスタの特性変動等を抑制することができる。
【0041】
なお、本実施形態では、第1層間絶縁膜12にコンタクトプラグ13を形成した後に貫通電極18を形成し、その後、空隙19を形成してストレス緩和を行っている。しかし、この工程に限るものではなく、複数の配線層を形成した後に貫通電極18を形成し、その後、空隙19を形成してストレス緩和を行っても構わない。
【0042】
また、本実施形態では、貫通電極18を形成した後は空隙19をそのまま残している。しかし、アニール処理後に、貫通電極側面とその周囲の半導体基板11との間に空隙19を形成して一旦応力を開放すれば、応力による素子の特性変動を防止することができる。したがって、一旦応力を開放した後に、あらためてこの空隙19内の一部に他の絶縁物を埋め込んでも構わない。
【0043】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0044】
図5A〜7は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【0045】
まず、図5Aに示すように、半導体基板11上にトランジスタ、抵抗等の素子(図示せず)を形成し、素子と配線層とを含むシリコン酸化膜からなる第1層間絶縁膜12を形成し、第1層間絶縁膜12中にコンタクトプラグ13を形成する。この時、第1層間絶縁膜12の厚さは例えば500nmである。ここで、本実施形態では、トランジスタのチャネルにストレスを与え、駆動力を向上させるための、主にシリコン窒化膜からなるストレスライナー膜22を第1層間絶縁膜における半導体基板11に近い位置に形成している。
【0046】
ストレスライナー膜22は、リソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、予め、後の工程で形成する貫通電極18の配置領域およびその周囲領域を除去している。特に、Nchトランジスタ形成領域とPchトランジスタ形成領域とで、ストレスライナー膜を作り分けるデュアルストレスライナー膜プロセスに本実施形態を適用する場合は、Nchトランジスタ形成領域とPchトランジスタ形成領域とを作り分ける際に、貫通電極18の配置領域およびその周囲領域に形成されたライナー膜も同時に除去することができる。そのため、工程数の増加を防止することができる。
【0047】
次に、図5Bに示すように、リソグラフィ技術およびドライエッチング技術を用いて、例えば、直径5μm、深さ50μmの貫通電極孔14を形成した後、例えば、膜厚200nmのシリコン窒化膜からなる絶縁膜15を形成する。続いて、例えば、膜厚20nmのタンタル(Ta)膜からなるバリア膜16を形成する。次に、めっき技術を用いて、貫通電極埋め込み用の導電膜17として銅を貫通電極孔14内に充填し、続いてアニール処理を行う。
【0048】
次に、図6Aに示すように、CMP技術を用いて、半導体基板上の第1層間絶縁膜12上に残存する貫通電極埋め込み用の導電膜17、バリア膜16、絶縁膜15を除去し、貫通電極18を形成する。ここで、半導体基板11の材料として例えばシリコンを用いた場合、シリコンの熱膨張係数は3ppm/℃程度であり、貫通電極の銅(Cu)の熱膨張係数は17ppm/℃程度である。そのため、両者の熱膨張係数のミスマッチによって、半導体基板11にアニール処理や冷却処理による応力が発生する。
【0049】
次に、図6Bに示すように、貫通電極18の導電膜17とその周囲の第1層間絶縁膜12および半導体基板11との間に形成されたシリコン窒化膜からなる絶縁膜15を、例えば半導体基板11から500nmの深さまでウエットエッチングで除去する。これにより、貫通電極側面とその周囲の半導体基板11との間に空隙19を形成する。ここで、ウエットエッチングは例えば熱燐酸で行い、シリコン酸化膜からなる第1層間絶縁膜12に対して選択的にシリコン窒化膜のみをエッチングする。このとき、シリコン窒化膜からなる絶縁膜15によって生じていた応力は、この空隙19の形成により開放される。
【0050】
また、本実施形態では、ストレスライナー膜22は、リソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、予め、後の工程で形成する貫通電極18の配置領域およびその周囲領域を除去している。そのため、トランジスタにストレスを与えるために必要な領域のストレスライナー膜22はエッチングされることがない。したがって、貫通電極18側面とその周囲の半導体基板11との間のシリコン窒化膜からなる絶縁膜15のみを選択的にウエットエッチングで除去することができる。
【0051】
次に、図7に示すように、第1層間絶縁膜12における貫通電極18上に第1配線層20とその周囲を埋め込む第2層間絶縁膜21を形成する。このとき、空隙19は第1配線層20により、その一部が埋め戻された構造になっても構わない。最後に、図示しないが、半導体基板11の底面側をエッチングまたは研磨することによって貫通電極18の裏面を露出し、貫通電極18に接続されたバンプを形成する。
【0052】
本実施形態の構成によれば、半導体基板上部において、貫通電極と基板との間に形成された空隙によって応力が開放されることにより、貫通電極に起因する半導体基板への応力を緩和し、近接するトランジスタの特性変動等を抑制することができる。
【0053】
また、本実施形態の構成によれば、主にシリコン窒化膜からなるストレスライナー膜22が形成された半導体装置であっても、貫通電極18のストレスライナー膜を選択的に除去している。そのため、トランジスタにストレスを与えるために必要な領域のストレスライナー膜22を損なうことなく、貫通電極18側面とその周囲の半導体基板11との間のシリコン窒化膜からなる絶縁膜15のみを選択的にウエットエッチングで除去することができる。
【0054】
なお、本実施形態では、第1層間絶縁膜12にコンタクトプラグ13を形成した後に貫通電極18を形成し、その後、空隙19を形成してストレス緩和を行っている。しかし、この工程に限るものではなく、複数の配線層を形成した後に貫通電極18を形成し、その後、空隙19を形成してストレス緩和を行っても構わない。
【0055】
また、本実施形態では、貫通電極18を形成した後は空隙19をそのまま残している。しかし、アニール処理後に、貫通電極側面とその周囲の半導体基板11との間に空隙19を形成して一旦応力を開放すれば、応力による素子の特性変動を防止することができる。したがって、一旦応力を開放した後に、あらためてこの空隙19内の一部に他の絶縁物を埋め込んでも構わない。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の半導体装置およびその製造方法は、貫通電極に起因する半導体基板への応力を緩和し、近接するトランジスタの特性変動等を抑制することができるものである。特に、微細化、高集積化、高性能化、歩留まり向上等が求められる貫通電極を有する3次元積層半導体装置およびその製造方法において有用である。
【符号の説明】
【0057】
11 半導体基板
12 第1層間絶縁膜
13 コンタクトプラグ
14 貫通電極孔
15 絶縁膜
16 バリア膜
17 導電膜
18 貫通電極
19 (貫通電極側面の)空隙
20 第1配線層
21 第2層間絶縁膜
22 ストレスライナー膜
23 メモリチップ
24 ロジックチップ
25 貫通電極
26 マイクロバンプ
27 チップ間充填材
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9A
図9B