(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
キャビネット内部の機器に対して直流給電が可能な直流給電キャビネットとしては、特許文献1に示されるように、樹脂部品により覆われた電源バーをキャビネットの内部に配置した構造のものがある。この特許文献1の直流給電キャビネットは、電源バーやアダプタ等を完全に樹脂部品で覆い、着脱自在とした構造である。
【0003】
しかしこの直流給電キャビネットは、負荷に電源を供給するための接続部材を接続すると突出部分が大きくなり、各接続部材に流れる電流検出機能を付加する場合には、更に新たな接続部材を介して電流検出手段を接続する必要があり、キャビネットの内部スペースの有効利用を図る上での障害となるという問題があった。
【0004】
また、電流検出手段として、例えば、コア状の電流センサを分電盤内に設ける技術が開示されているが(特許文献2)、電流センサの取り付けを行うためには、配線を端子部から外した後に、電流センサを取り付ける必要があり、取り付け作業が困難であるという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、直流給電キャビネット内で電子機器に直流電源を供給するコネクタを保持する接続部材に電流検出機能を付加する場合にも、更に新たな接続部材を介して電流検出手段を接続する必要がなく、キャビネットの内部スペースの有効利用を図ることができ、かつ、その電流検出機能を付加する際に取り付けられる電流検出手段の取り付け作業を容易に行うことができる接続部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するためになされた本発明の接続部材は、直流給電用の電源バーを所定の間隔で配置した直流給電キャビネットで使用され、キャビネット内の負荷機器に直流電源を供給するコネクタを保持する接続部材であって
、基板の一端から一対の腕部を突出させてその内側を端部が開放された配線挿通部とするとともに、一対の腕部の各々に磁気検出素子を配置した構造の電流センサを
着脱自在に備えるものとし、さらにこの電流センサの一対の腕部を、接続部材における電路として形成された接続部を跨ぐようにして保持する電流センサ保持部を設けたことを特徴とするものである。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の接続部材において、前記の接続部は、バー状の接続端
子からなり、該接続部に、電流センサを保持させる電流センサ保持部を形成したことを特徴とするものである。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の接続部材において、前記の接続部材は、キャビネット内の負荷機器に直流電源を供給するコネクタを保持するケース部を有し、該ケース部に、電流センサを保持させる電流センサ保持部を形成したことを特徴とするものである。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の接続部材において、接続部材にヒューズ素子及びヒューズ素子を保持する保持部材からなるヒューズユニットを設置し、該ヒューズユニットに、電流センサを保持する電流センサ保持部を形成したことを特徴とするものである。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の接続部材において、前記の接続部の厚み方向における中心線と、電流センサの腕部間の中心線とが略同一となる位置で、電流センサを保持したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の直流給電キャビネット用の接続部材は、正極端子と負極端子とによりコネクタを負極の電源バーと正極の電源バーの露出部に接続し、キャビネット内部のサーバ等の負荷機器に直流電源を供給することができるものである。本発明の直流給電キャビネット用の接続部材は
、基板の一端から一対の腕部を突出させてその内側を端部が開放された配線挿通部とするとともに、一対の腕部の各々に磁気検出素子を配置した構造の電流センサ
を着脱自在に備え、さらにこの一対の腕部を、キャビネット内の負荷機器に直流電源を供給するコネクタを保持する接続部材の電路となる接続部を跨ぐようにして保持する電流センサ保持部を設けたため、各接続部材に電流検出機能を付加する場合にも、更に新たな接続部材を介して電流検出手段を接続する必要がなく、キャビネットの内部スペースの有効利用を図ることができると共に、電流センサの取り付け作業も容易に行うことができる。
【0013】
また、請求項2記載の発明のように、バー状の接続端
子、請求項3記載の発明のように、接続部材のケース部、請求項4記載の発明のように、接続部材にヒューズ素子及びヒューズ素子を保持する保持部材からなるヒューズユニットに電流センサを保持させる電流センサ保持部を形成することにより、電流センサの取り付けを所定の場所で差し込みするだけで接続部の電流を測定できるように形成し、また、電流センサのガタツキに起因する電流測定の誤差の発生を防止することができる。
【0014】
請求項5記載の発明のように接続部の板厚の中心線と、電流センサの腕部間の中心線とが略同一となる位置で、電流センサを保持するようにするため電流測定の誤差の発生を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の接続部材が組み込まれた直流給電キャビネットの構造を説明する斜視図であり、1は縦フレーム、2は横フレーム、3は奥行フレームである。これらの12本のフレームによりキャビネットの骨格構造を形成している。また4は各縦フレーム1の内側近傍に平行配置されたマウントレールであり、多数の機器取付孔を備えて様々な高さに各種機器を取り付けることができるようになっている。縦フレーム1とマウントレール4との間にはカバー10が取付けられている。
【0017】
この実施形態のキャビネットはサーバ等を収納するためのものであり、サーバ等の負荷機器に直流電源を供給するために、
図1の手前左右のマウントレール4と側板との間に、上下方向に延びる電源バー(後述の負極の電源バー6、正極の電源バー9)を配置してある。なお
図1の手前側はキャビネットの奥側である。このようにキャビネットの奥側部分に電源バーを配置したのは、サーバ等の負荷機器の背面に接続されている電源プラグに直流電源を供給し易いためである。しかし電源バーの位置は必ずしもこの実施形態に限定されるものではなく、前面側とすることも可能である。5はキャビネットの底部に配置された直流電源ユニットである。なお、直流電源ユニット5はマウントレール4に取り付けられていてもよく、その取り付け位置も底部近傍が好ましいが特に限定されない。
【0018】
図2は要部の斜視図、
図3は
図2のA方向からの斜視図、
図4と
図5は
図3に示した部分の水平断面図である。これらの図面に示されるように、縦フレーム1の内側には負極の電源バー6が支持部材7によって垂直に支持されている。また負極の電源バー6と平行に、クリートと呼ばれる円柱状の絶縁部材8を介して正極の電源バー9が所定の間隔で積層状に支持されている。これらの負極の電源バー6と正極の電源バー9とによって構成される電源バー6の下端部は、直流電源ユニット5に接続されている。電源バー6の積層方向は、キャビネットの奥行方向とすることが好ましい。ここで、本発明の直流給電キャビネット用の接続部材13とは、
図3に示すように、接続部材13に備えた接続端子(後述の正極端子16と負極端子15)を介して、これらの負極の電源バー6と正極の電源バー9の露出部にコネクタ12を接続し、キャビネット内部のサーバ等の負荷機器に直流電源を供給することができるものである。
【0019】
この実施形態では負極の電源バー6を外側とし、正極の電源バー9を内側としてある。このような配置とすれば、正極の電源バー9とキャビネットの側板までの絶縁距離を確保することができる。なお負極の電源バー6はマウントレール4に固定することもでき、必ずしも縦フレーム1に支持させなくても差支えない。また正極の電源バー9は保護カバー26によってその一部が覆われている。
【0020】
このように負極の電源バー6を正極の電源バー9に対して幅方向にずらせて外側に配置したので、負極の電源バー6の側方に空間部11が形成される。本実施形態では、負極の電源バー6の内側とカバー10との間に、
図4に示すように空間部11が形成される。この空間部11に
図3、
図5に示すように接続部材13が配置される。この接続部材13はサーバ等の負荷と接続して直流給電を行うためのもので、上下方向に所定のピッチで多数設けられている。接続部材13はその一部が空間部11に位置していていることが好ましい。なおカバー10は縦フレーム1とマウントレール4との間に配置された板であり、コネクタ12の前面の差込部17を露出させる開口部を備えている。
【0021】
図5に示すように、本発明では、接続部材13は負荷機器から引き出された電源プラグと接続するコネクタ12をケース部14で保持しており、このケース部14を電源バーに固定することによって所定位置に支持されている。しかしケース部14の固定方法はこの実施形態に限定されるものではなく、キャビネット内のフレーム部材として設けられた縦フレーム1、マウントレール4、カバー10などに固定してもよい。また固定の手段もネジに限定されず、係止爪等を用いることもできる。また、接続部材13はコネクタ12と後述する接続端子(後述の正極端子16、負極端子15)のみから構成されていてもよい。
【0022】
図6は本発明の実施形態の接続部材13の拡大斜視図、
図7は背面斜視図である。これらの図に示すように、接続部材13のケース部14は略クランク状に屈曲しており、その一面側にコネクタ12が配置され、反対面側に負極端子15と正極端子16とが配置されている。一面側に配置されたコネクタ12は接続ピン21を反対面側に突出させて形成した接続部となるバー状の接続端子(正極端子16、負極端子15)に接合している。コネクタ12は略直方体状であり、接続部材13のケース部14に保持されている。コネクタ12の先端の差込部17は接続部材13の端部に面し、負荷機器の電源プラグが接続される。なおコネクタ12の後端はケース部14の凹部18に保持されている。
【0023】
図6に示されるように、コネクタ12の先端部にはコの字状の保護部材19が設けられている。この保護部材19は上下の端部がケース部14から突設された上下のリブ20に保持されている。この保護部材19はコネクタ12の先端部を保護するとともに、負荷機器の電源プラグを抜き差しする際にコネクタ12に作用する左右方向の外力に抗してコネクタ12をケース部14に安定に保持する機能を持つ。また、リブ20は上下方向の外力に抗してコネクタ12を安定に保持するものである。なおケース部14のコネクタ12を設置する面には突起(図示せず)を形成し、抜き差しする方向に働く外力による影響を少なくすることが好ましい。これらの構造によって、電源プラグを抜き差しする際にコネクタ12と負極端子15、正極端子16との接合部(接続ピン21)に外力が働くことを回避することができる。
【0024】
接続部材13の反対面側には2枚のバー状の接続端子(負極端子15、正極端子16)が固定されている。この実施形態では負極端子15はクランク状であり、正極端子16は略コの字状である。
図8に示すようにこれらの負極端子15と正極端子16は前記した負極の電源バー6と正極の電源バー9の露出部分に、それぞれネジ22によって接続固定される。なお、本実施形態においては電路となる接続部としてバー状の接続端子(負極端子15、正極端子16)として説明したが、接続部として電線を使用することも可能である。
【0025】
図8〜
図9に示すように、接続部材13の正極端子16と負極端子15との間に、コンデンサ25を配置し、必要に応じて接続部材ごと取り替え可能とすることが好ましい。コンデンサ25はサーバ等の負荷変動により電源バーの電圧が一時的に変動し、他の負荷に供給する電圧が変動することを防止するために有効である。
【0026】
この実施形態では、接続部材13の負極端子15と正極端子16との間にコンデンサ25を、隔壁23を跨ぐように接続し、負極端子15、正極端子16と平行に配置していて、必要に応じて接続部材13ごと取り替え可能としている。
【0027】
本発明の接続部材13は、必要に応じて、電流センサ27を着脱自在に保持することができる電流センサ保持部28を備えている。なお、電流センサ保持部28においては、接続端子や電線などからなる接続部に着脱自在に保持する方法、ケース部14に一体に形成する方法や、
図13に示すように電流センサ保持部28にケース部14の係止部50に係止可能な係止手段60を形成しておき、ワンタッチに着脱自在に取付けるものであっても良い。また、ケース部14自体に電流センサ27を係止する電流センサ保持部28用の孔部を形成するものでも良い。何れの実施形態においても、電流センサ27は接続部材13に形成される接続部にまたがるように取付されるものである。
【0028】
図10に示すように、電流センサ27は、基板29の一端を開放させて一対の腕部30を形成した略U字構造を有し、一対の腕部30に磁気検出素子31を搭載している。また、基板29の一端を開放させて形成された箇所を配線が挿通される配線挿通部30aとするものである。磁気検出素子31は、配線挿通部30aに形成された接続端子(本実施形態においては正極端子16)に流れる電流によって生じる磁場を検知するものであり、基板29には、これらの磁気検出素子31の検知出力を処理して接続端子に流れる電流値を算出する集積回路32も搭載されている。本実施形態では、磁気検出素子31を各腕部30に各1個ずつ搭載しているが、複数搭載したものであっても良い。複数搭載することにより、更に正確に接続端子(正極端子16)に流れる電流を調査することが可能である。また、本実施形態においては基板状の電流センサ1は露出させて形成しているが、
図15に示すように、電流センサ1を絶縁物からなるカバー70などで覆った状態で電流センサ保持部28に保持させるものであっても良い。
【0029】
本発明によれば、上記のように、接続部材13に電流センサ保持部28を備え、この電流センサ保持部28に、コンパクトな基板状の電流センサ27を保持することができるため、各接続部材13に流れる電流検出機能を付加する場合にも、更に新たな接続部材13を介して電流検出手段を接続する必要がなく、キャビネットの内部スペースの有効利用を図ることができる。なお、本実施形態では、キャビネットの側板を外した状態で、電流センサ保持部28に電流センサ27を挿入可能とする構造を採用しており、前面扉、背面扉の開口方向からは電流センサ27は視認できないように配置されている。
【0030】
電流センサ保持部28は、
図6〜
図9に示すように、接続部となる正極端子16を挟みこむ位置に配置されている。
【0031】
本実施形態の電流センサ保持部28は、中空状の腕部係止手段を備え、この中空部分に、電流の流れる方向に対して垂直方向から、電流センサ27の一対の腕部を挿入して係止するものである。このように、
図16に示すように、中空状の腕部係止手段に、電流センサの一対の腕部を挿入して係止する構造とすることにより、電流センサ27の取り付け作業が容易となり、キャビネット内での各種配線および接続作業が完了している場合であっても、必要に応じて、簡単な作業によって、接続部材16に電流検出機能を付加することができる。また、本実施形態における電流センサ保持部28は電流センサ27の腕部30のみを係止するような構造としているが、
図14に示すように電流センサ保持部28によって電流センサ27を覆うような構造とするものでも良く、少なくとも腕部30が正極端子16を跨ぐように保持させる構造であれば良い。
【0032】
電流センサ27が電流センサ保持部28に保持された状態において、電流センサ27の腕部30に搭載された磁気検出素子31は、正極端子16を挟んだ位置に固定される。この状態において、正極端子16に電流が流れると、
図11に示すように、電流による磁場が生じ、磁気検出素子31(ホール素子)によって磁場が検出され、その磁束密度に応じた値の電圧がホール素子から出力される。この電圧を集積回路内の演算回路によって増幅され、増幅された各々のホール素子出力を合成し、出力電圧より電流を得られる構造となっている。
【0033】
正極端子16と磁気検出素子31との位置関係にずれが生じると電流の検出誤差に影響を与えてしまうため、電流センサ保持部28によって電流センサ1はガタツキを生じないように配置する。
【0034】
本実施形態では、
図12に示すように、電流センサ保持部28は、正極端子16の板厚の中心線と、電流センサ27の腕部30間の中心線とが略同一となる位置で、電流センサ27をガタツキなく係止するように形成されている。このように配置させることにより、ガタツキに起因する電流測定の誤差の発生を防止することができる。
【0035】
なお、上記実施形態では、接続端子(正極端子16と負極端子15)のうち、正極端子16を挟みこむ位置に電流センサ保持部28を配置しているが、負極端子15を挟みこむ位置に電流センサ保持部28を配置することもできる。
【0036】
その他の実施形態として、
図17及び
図18に示すようにキャビネット内に短絡電流が発生した場合に負荷機器に電源供給を防止するヒューズユニット80を接続部財13に設置したものでも良い。ヒューズユニット80はヒューズ素子82およびヒューズ素子82を保持させる保持部材からなる。本実施形態においては、接続部材13に正極の電源バー9と、接続端子の正極端子16間にヒューズユニット80を着脱自在に設置させたものである。詳しくは、ヒューズ素子82には接続部となるバー接続線81が2本形成しており、一方が正極端子16に、他方に正極の電源バー9にネジ22により接続されるように形成しているものである。
【0037】
本実施形態においては、接続部材13の正極端子16ではなく接続部となるバー接続線81に跨って電流センサ27を設置させてある。電流センサ27はヒューズユニット80のヒューズ素子82の保持部材となるケース部83、または接続部材13のケース部14に保持させているものであり、バー接続線81に流れる電流値を測定することが可能となるものである。なお、本実施形態におけるキャビネット内に形成されたヒューズユニット80を形成した接続部材13を上下に渡って複数形成させておくことによって、各サーバを保護することができる。また、ヒューズユニット80のヒューズ素子82はコネクタ12のプラグ差し込み方向と同方向に形成しているため、確認などの点検、交換を容易に行うことが可能である。
【0038】
また、本実施形態では、電流センサ保持部28は、中空状のとしたが、電流センサ27を保持する手段はこれに限定されるものではなく、係止突起などを形成するなどして電流センサ27を保持するなどしてもよく、少なくとも正極端子16の板厚の中心線と、電流センサ27の腕部30間の中心線とが略同一となる位置で、電流センサ27をガタツキなく係止することができるものであればよい。
【0039】
なお、電流センサ27には電源を供給する必要があるが、本実施形態では、
図12に示すように、電流センサ保持部28に、電流センサ27への電源供給部33を備えているため、別途電流センサ27に電源を供給する手段を設けて配線作業等を行う必要がなく、電流センサ27を挿入するのみで、接続部材13に電流検出機能を付加することができる。
図7、
図12に示す電源供給部33のうち、一方は、この電流センサ保持部28を備える正極端子16から直接電源を供給し、他方は、電源線などを形成し、負極端子15から電源を供給するようにし、電流センサ27の電源を供給する機能を有するものである。また、電流センサ27は電源供給部33からの電源を供給し、電流センサ27の電源に適応する容量に、整流・変換する整流部を備えた電源部などを形成しておくものであることが望ましい。
【0040】
電流センサ27には電流を供給する手段は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、電源バーから直接電源を供給したり、電源バーとは異なる専用の電源供給バーを形成して電源供給を行うこともできる。