【文献】
Bradley J. Roth 他,Using a magnetometer to image a two‐dimensional current distribution,Journal of Applied Physics,1989年 1月 1日,Volume 65, Issue 1,361-372頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記取得部は、予め定められた位置から前記センサ感受領域までの距離に依存する前記ウィンドウ関数を前記値に掛けて、前記ウィンドウ関数が掛けられた前記値で構成される前記測定データを取得する
請求項7に記載の分布解析装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、磁場分布の測定における空間分解能は、SQUID素子に用いられるコイルのサイズまたは磁気抵抗効果素子のサイズに依存する。これらの磁場センサを微細化することで、より高い空間分解能で磁場分布を画像化することが可能である。しかし、実際には、磁場センサの微細化には限界が存在する。例えば、100nm以下のサイズの磁場センサを作製することは容易ではない。また、微細化された磁場センサでは、センサ感受領域から出力される電気信号も小さく、SN比(信号雑音比)は低い。
【0009】
そこで、本発明は、センサ感受領域が大きい場合でも、磁場または電場等の分布を高い分解能で解析することができる分布解析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係る分布解析装置は、ラプラス方程式を満たす特性を有する場の分布を解析する分布解析装置であって、前記場の分布が測定される測定領域において移動する領域であり当該領域において前記場が合算されて感受される領域であるセンサ感受領域を介して測定された前記分布を示す測定データを取得する取得部と、前記センサ感受領域の大きさに対応する有限の区間での前記ラプラス方程式の解の積分が前記測定データに適合することを境界条件として用いて前記ラプラス方程式の解を導出することによって得られる演算式を用いて、前記測定データよりも高い分解能で前記場の分布を示す解析データを算出する算出部とを備える。
【0011】
これにより、分布解析装置は、測定データを境界条件に用いてラプラス方程式の解を導出することで得られる演算式を用いて、解析データを算出することができる。
【0012】
すなわち、分布解析装置は、演算式に測定データを直接代入し、理論的に厳密に解析データを算出することができる。よって、分布解析装置は、大きいセンサ感受領域が用いられる場合であっても、センサ感受領域のサイズよりも小さい領域の磁場および電場等を解析することができる。
【0013】
また、前記取得部は、磁場、電場または温度場である前記場の分布を示す前記測定データを取得し、前記算出部は、前記場の分布を示す前記解析データを算出してもよい。
【0014】
これにより、分布解析装置は、磁場等の空間分布を高い分解能で解析することができる。そして、解析された磁場等の空間分布は、電子部品の故障解析、医療診断、または、コンクリート内部の鉄筋の腐食検査等の様々な分野で、利用可能である。
【0015】
また、前記取得部は、予め定められた方向であるZ方向に垂直な平面である測定面に交わる前記センサ感受領域を介して測定された前記場の分布を示す前記測定データを取得し、前記算出部は、前記センサ感受領域の前記Z方向の大きさに対応する前記有限の区間での前記ラプラス方程式の解の積分が前記測定データに適合することを前記境界条件として用いて前記ラプラス方程式の解を導出することで得られる前記演算式を用いて、前記解析データを算出してもよい。
【0016】
これにより、分布解析装置は、Z方向に大きいセンサ感受領域が用いられる場合であっても、測定面における磁場および電場等の空間分布をより正確に示す解析データを算出することができる。
【0017】
また、互いに垂直なX方向、Y方向およびZ方向を含む3次元空間において、zが前記Z方向の座標値を示し、k
xが前記X方向の波数を示し、k
yが前記Y方向の波数を示し、Δxが前記センサ感受領域の前記X方向の大きさを示し、Δzが前記センサ感受領域の前記Z方向の大きさを示し、φ
m(x,y,z)が前記Z方向の座標値がzである場合における前記測定データを示し、f(x,y)がφ
m(x,y,z)のzが0である場合における前記測定データを示し、g(x,y)がφ
m(x,y,z)をzで微分することで得られる関数のzに0を代入することで得られる関数を示し、
【数1】
がf(x,y)の前記X方向および前記Y方向についてのフーリエ変換後の関数を示し、
【数2】
がg(x,y)の前記X方向および前記Y方向についてのフーリエ変換後の関数を示す場合、前記算出部は、
【数3】
を前記演算式として用いて、前記解析データを算出してもよい。
【0018】
これにより、分布解析装置は、演算式を用いて解析データを算出できる。すなわち、分布解析装置は、この演算式によって、有限のサイズのセンサ感受領域を用いて、センサ感受領域のサイズが無限小である場合のデータを取得することができる。
【0019】
また、前記取得部は、予め定められたZ方向に平行な直線を軸として回転する前記センサ感受領域を介して測定された前記分布を示す前記測定データを取得してもよい。
【0020】
これにより、分布解析装置は、様々な角度から測定データを得ることができる。
【0021】
また、3次元空間が、前記Z方向の座標値を示すzと、偏角を示すθと、動径を示すpとを用いて円柱座標で表現され、kが前記動径の方向であるP方向の波数を示し、Δzが前記センサ感受領域の前記Z方向の大きさを示し、g
me(p,θ,z)が前記Z方向の座標値がzである場合における前記測定データを示し、f
m(k,θ)がg
me(p,θ,z)のzが0である場合におけるg
me(p,θ,z)の前記P方向についてのフーリエ変換後の関数を示し、g
m(k,θ)がg
me(p,θ,z)をzで微分することで得られる関数のzに0を代入することで得られる関数の前記P方向についてのフーリエ変換後の関数を示す場合、前記算出部は、
【数4】
を前記演算式として用いて、前記解析データを算出してもよい。
【0022】
これにより、分布解析装置は、有限のサイズのセンサ感受領域を介して測定された分布を示す測定データから、センサ感受領域のサイズよりも遥かに小さい磁場等の空間分布を解析することができる。
【0023】
また、前記取得部は、前記センサ感受領域で感受された前記場の値にウィンドウ関数を掛けて、前記ウィンドウ関数が掛けられた前記値で構成される前記測定データを取得してもよい。
【0024】
これにより、分布解析装置は、大きいセンサ感受領域を介して、局所的に適切な分布を示す測定データを取得することができる。
【0025】
また、前記取得部は、予め定められた位置から前記センサ感受領域までの距離に依存する前記ウィンドウ関数を前記値に掛けて、前記ウィンドウ関数が掛けられた前記値で構成される前記測定データを取得してもよい。
【0026】
これにより、分布解析装置は、所望の領域において適切な分布を示す測定データを取得することができる。
【0027】
また、前記分布解析装置は、さらに、前記センサ感受領域を介して前記場の分布を測定する測定部を備え、前記取得部は、前記測定部で測定された前記分布を示す前記測定データを取得してもよい。
【0028】
これにより、分布解析装置は、直接、場の分布を測定することができる。そして、分布解析装置は、測定によって得られた測定データを高い分解能で解析することができる。
【0029】
また、前記分布解析装置は、さらに、前記算出部で算出された前記解析データで示される前記分布を示す画像を生成する画像処理部を備えてもよい。
【0030】
これにより、高い分解能で、電子部品の故障解析、医療診断、および、インフラ検査等が可能になる。
【発明の効果】
【0031】
本発明により、センサ感受領域が大きい場合でも、磁場または電場等の分布が高い分解能で解析される。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を用いて、本発明に係る実施の形態について説明する。なお、図面において、同一の符号が付された構成要素は、同一または同種の構成要素を示す。
【0034】
また、以下で説明する実施の形態は、本発明の好ましい一具体例を示す。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、より望ましい形態を構成する任意の構成要素として説明される。
【0035】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る分布解析装置の概要を示す図である。
図1に示されたセンサ21は、場(解析対象の場)の分布を測定する。そして、分布解析装置10は、センサ21で得られた測定データから、場の分布を解析する。この時、分布解析装置10は、測定データで示される空間分布よりも高い空間分解能で空間分布を示す解析データを測定データから算出する。算出された解析データは、画像に加工されてもよいし、そのまま出力されてもよい。なお、分布解析装置10は、センサ21を備えていてもよい。
【0036】
ここで、解析対象の場は、ラプラス方程式を満たす特性を有する。ラプラス方程式は、式1で表現される。式1のF(x,y,z)は、ラプラスの方程式を満たす関数であって、調和関数とも呼ばれる。式1のΔは、ラプラシアンと呼ばれる。
【0038】
ラプラス方程式を満たす特性を有する場は、電流および自発磁化のない場所における磁場、電荷のない場所の電場、または、定常状態の温度場等である。分布解析装置10は、このような場の分布を解析して、解析データを算出する。以下では、場が磁場であることを前提として、本実施の形態を含む複数の実施の形態が示されている。しかし、上述の通り、場は、ラプラス方程式を満たす特性を有していれば、磁場でなくてもよい。
【0039】
図2は、
図1に示されたセンサ21の利用時の態様を示す図である。センサ21は、台23の上に載せられた検査対象物22の周辺の磁場を測定する。この時、センサ21は、測定面31に沿って、磁場を測定する。
【0040】
より具体的には、センサ21は、測定面31の一部を含むセンサ感受領域で磁場を順に測定する。センサ感受領域は、磁場を感受する領域であり、有限のサイズを有する。センサ21は、移動しながら、測定面31に沿って、磁場を測定する。なお、台23が移動することにより、センサ21およびセンサ感受領域が相対的に移動してもよい。
【0041】
分布解析装置10は、センサ21から磁場の測定データを取得する。そして、分布解析装置10は、測定データから解析データを算出する。
【0042】
分布解析装置10で算出された解析データは、典型的には、2次元画像の生成に用いられる。したがって、
図2のように、センサ21は、測定面31に沿って、磁場を測定することが望ましい。これにより、分布解析装置10は、平面である測定面31に沿った測定データから、測定面31に沿った2次元画像の生成に適した解析データを算出することができる。なお、このような2次元画像の生成は、一例であって、解析データは3次元画像の生成に用いられてもよい。
【0043】
また、検査対象物22は、例えば、LSI(Large Scale Integration)である。この場合、分布解析装置10は、検査対象物22の周辺の磁場の情報から、電子回路の配線不良を示す解析データを算出できる。しかし、LSIの配線は、非常に小さいため、高い空間分解能での画像情報が必要である。
【0044】
図3は、
図2に示された態様を横から示す図である。
図3のように、台23の上に、検査対象物22がある。そして、検査対象物22の上に、測定面31がある。センサ21は、測定面31に沿って、磁場を測定する。センサ21は、測定面31で磁場を測定するためのセンサ感受領域を有する。これにより、センサ21は、検査対象物22の周辺の磁場を測定する。
【0045】
図4は、
図1に示されたセンサ21のセンサ感受領域を示す図である。センサ21の先端には、センサ感受領域41が設けられている。そして、センサ21は、センサ感受領域41における磁場を測定する。
【0046】
センサ感受領域41は、有限のサイズを有する。センサ21は、センサ感受領域41の全体における磁場から、信号を生成する。すなわち、センサ21は、センサ感受領域41のサイズで積算(合算)された磁場の情報を取得する。したがって、センサ感受領域41のサイズよりも細かい空間分解能で、センサ21が磁場の空間分布を測定することは困難である。
【0047】
例えば、センサ21は、測定面31に沿って、磁場を測定する。しかし、実際には、センサ21は、センサ感受領域41のサイズに基づいて、測定面31よりも上方または下方の領域を含む領域で磁場を測定する。したがって、センサ21による測定データから直接的に高い空間分解能で磁場の分布に関する画像情報を得ることは、困難である。そこで、分布解析装置10は、所定の演算式を用いて、高い空間分解能で空間分布(磁場分布等)を示す解析データを算出する。
【0048】
図5は、
図2に示された態様を上から示す図である。
図5に示すように、センサ21は、センサ感受領域41が測定面31を走査(スキャン)するように、移動する。そして、センサ21は、移動しながら、測定面31における各位置で、センサ感受領域41の磁場を測定する。これにより、測定面31における全体の情報が得られる。
【0049】
図6は、
図1に示されたセンサ21が異なる測定面を測定する時の態様を示す図である。
図6では、センサ21が、
図3に示された測定面31よりも上方の測定面32に沿って、磁場を測定している。このように、センサ21は、複数の測定面の磁場を測定してもよい。これにより、センサ21は、3次元空間における磁場の分布を測定できる。また、分布解析装置10は、複数の測定面における磁場の分布に基づいて、検査対象物22の内部の磁場の分布を算出してもよい。
【0050】
また、センサ21は、測定面31の測定時と、測定面32の測定時とで、センサ感受領域41が部分的に重なるようにして、磁場を測定してもよい。分布解析装置10は、このようにして得られた情報に対して、平均化処理等の演算を実行してもよい。
【0051】
図7は、
図1に示されたセンサ21の構造の例を概念的に示す図である。
図7では、特に、センサ21のセンサ感受領域41に対応する部分が示されている。また、
図7では、TMR(Tunneling Magneto Resistive)素子の例が示されている。
【0052】
TMR素子では、10nmから100nm程度の磁性体薄膜で絶縁膜層が挟まれている。より具体的には、TMR素子は、ソフト層51、トンネル層52、および、PIN層(磁化固定層)53の3つの薄膜で構成される。ソフト層51は、外界の磁化の方向に応じて、磁化の方向が変動する磁性体で構成される。PIN層53は、磁化の方向が変動しない磁性体で構成される。そして、トンネル層52は、絶縁膜である。
【0053】
ソフト層51における磁化の方向、および、PIN層53における磁化の方向が同じである場合と、それらの方向が異なっている場合とで電気抵抗が異なる。この電気抵抗の変化を利用して、磁場が測定される。
【0054】
すなわち、センサ21は、上述の特性を利用して、センサ感受領域41における磁場を測定する。なお、センサ21は、TMR素子ではなく、GMR(Giant Magneto Resistive)素子等の他の素子で構成されていてもよい。SQUID素子等の他の素子が用いられる場合でも、センサ21は、センサ感受領域41における磁場を測定することができる。
【0055】
図8は、
図1に示された分布解析装置10の構成を示す図である。
図8に示された分布解析装置10は、3次元空間における場の分布を解析する。また、分布解析装置10は、取得部11および算出部12を備える。
【0056】
取得部11は、センサ感受領域41を介して測定された分布を示す測定データを取得する。ここで、例えば、センサ感受領域41は、分布の測定の際、予め定められた方向であるZ方向に垂直な測定面31の一部を含むように配置される。取得部11は、センサ感受領域41を介して分布を測定するセンサ21から測定データを取得してもよい。あるいは、取得部11は、他のシミュレーション装置から、同等の測定データを取得してもよい。
【0057】
算出部12は、測定データによって示される空間分布よりも高い空間分解能で磁場または電場等の分布を示す解析データを測定データに基づいて算出する。すなわち、算出部12は、センサ感受領域41で得られた測定データによって示される空間分布から、センサ感受領域41のサイズよりも小さい空間に含まれる構造を算出することができる。算出された構造は、画像化されてもよい。
【0058】
また、算出部12は、センサ感受領域41の大きさに対応する有限の区間でのラプラス方程式の解の積分が測定データに適合することを境界条件として利用して、ラプラス方程式の解を厳密に算出する。そのため、得られた解析データは、正確で、一意性を有する。また、算出部12は、センサ感受領域41の位置、および、磁場発生源の位置によらず、解析データを算出できる。
【0059】
例えば、2つの磁場発生源がセンサ感受領域41を挟むように配置されている場合でも、算出部12は数学的に厳密に解析データを算出する。センサ感受領域41の周辺には、解析されるべき磁場発生源以外に、電子回路またはセンサ駆動部等のような磁場発生源が存在する場合がある。算出部12は、どのような位置に磁場発生源が存在していても、数学的に厳密に解析データを算出する。
【0060】
図9は、
図8に示された分布解析装置10の動作を示すフローチャートである。まず、取得部11は、場を感受するセンサ感受領域41を介して測定された測定データを取得する(S11)。次に、算出部12は、測定データを境界条件に用いてラプラス方程式の解を算出することで得られる演算式を用いて、空間分解能が測定データよりも高い解析データを算出する(S12)。
【0061】
これにより、大きいセンサ感受領域41が用いられる場合であっても、分布解析装置10は、測定データよりも高い空間分解能を有する解析データを得ることができる。
【0062】
図10は、
図8に示された分布解析装置10の変形例の構成を示す図である。
図10に示された分布解析装置10は、取得部11、算出部12、測定部13および画像処理部14を備える。すなわち、
図10に示された分布解析装置10には、測定部13および画像処理部14が追加されている。
【0063】
測定部13は、センサ感受領域41を介して場の分布を測定する。例えば、測定部13は、センサまたはプローブ等で構成される。測定部13は、
図1に示されたセンサ21でもよい。センサ感受領域41は、測定面31の一部を含む。センサ感受領域41は、測定部13の内部の領域であってもよいし、測定部13の外部の領域であってもよい。取得部11は、測定部13から測定データを取得する。
【0064】
画像処理部14は、算出部12で算出された解析データを用いて、場の分布に相当する画像を生成する。生成された画像は、外部の表示装置等に表示される。なお、分布解析装置10が、生成された画像を表示する表示部を備えてもよい。
【0065】
図11は、
図10に示された分布解析装置10の動作を示すフローチャートである。まず、測定部13は、センサ感受領域41を介して場の分布を測定する(S21)。次に、取得部11は、測定部13で測定された分布を示す測定データを取得する(S22)。
【0066】
次に、算出部12は、測定データに基づいて、測定データよりも高い分解能で場の分布を示す解析データを算出する(S23)。この時、算出部12は、測定データを境界条件に用いてラプラス方程式の解を導出することで得られる演算式を用いる。そして、画像処理部14は、解析データを用いて、画像を生成する(S24)。
【0067】
図12は、実施の形態1に係る演算式を説明するための図である。
図12に示された3次元空間のセンサ感受領域41を介して、磁場の分布が測定される。センサ感受領域41は、ΔxをX方向の有限の大きさとして有し、ΔzをZ方向の有限の大きさとして有する。
図12では、測定面31は、センサ感受領域41の中央を通っている。
【0068】
そして、センサ感受領域41がスキャン方向に従って移動する。これにより、測定面31に沿って、磁場の空間分布が測定される。しかし、測定面31についての測定データは、実際には、X方向およびZ方向に幅を有するセンサ感受領域41の全体で感受された場の測定データである。そのため、測定データと、実際の磁場の分布との間には、誤差がある。
【0069】
そこで、算出部12は、測定データを境界条件に用いてラプラス方程式の解を導出することで得られる演算式を用いて、センサ感受領域41のサイズに依存しない解析データを高い空間分解能で算出する。
【0070】
以下に、算出部12で用いられる演算式、および、演算式の導出の一例を示す。それらの前提として、磁場は、所定の環境下ではラプラス方程式を満たす。まず、この点を以下に示す。
【0071】
磁場は、マクスウェルの方程式を満たす。式2は、強磁性体のような自発磁化がある場合のマクスウェルの方程式を示す。
【0073】
ここで、Eは、電場を示す。Bは、磁束密度を示す。tは、時間を示す。Hは、磁場を示す。j
eは、電流を示す。σは、導電率を示す。Mは、磁化を示す。μ
0は、真空の透磁率を示す。μは、透磁率を示す。次に、式2から、Eを消去することで、式3の関係式が得られる。
【0075】
また、式2より、式4の関係式が得られる。
【0077】
そして、式3の左辺は、式4の結果に基づいて、式5のように計算される。
【0079】
したがって、磁場と電流との関係は、式3および式5から、式6によって表現される。
【0081】
式6に基づいて、時間変化のない定常状態では、磁場と電流との関係は、式7のように表現される。
【0083】
式7が、電流と自発磁化による定常磁場の方程式である。電流および自発磁化のない場所では、式7の右辺は0である。したがって、このような場所では、磁場は、式8を満たす。
【0085】
すなわち、電流および自発磁化のない定常磁場は、ラプラス方程式を満たす。そして、磁場のZ方向の成分がH
z=φ(x,y,z)である場合、式9が得られる。
【0087】
もし、式9で示された方程式の厳密解が導出されれば、磁場の3次元空間分布が特定される。以下は、厳密解を導出するための手順を示す。まず、φ(x,y,z)に対してX方向およびY方向の2次元フーリエ変換が行われる。式10は、2次元フーリエ変換を示す。
【0089】
ここで、k
xは、X方向の空間的な波数を示す。k
yは、Y方向の空間的な波数を示す。式9および式10から、式11が導出される。
【0091】
式11の方程式は、zに関する2回の微分方程式である。したがって、式11の方程式の一般解は、式12で表現される。
【0093】
a(k
x,k
y)、b(k
x,k
y)は、k
x、k
yを変数に有する関数である。a(k
x,k
y)、b(k
x,k
y)が決定されれば、式12に対して2次元逆フーリエ変換を行うことで、式9の方程式の厳密解が得られる。式13は、2次元逆フーリエ変換を示す。
【0095】
ところで、センサ感受領域41は、有限のサイズを有する。したがって、
図1のセンサ21は、
図12のセンサ感受領域41で合算された情報しか取得できない。そのため、φ(x,y,z)を直接測定することは、困難である。すなわち、測定データから、未知の関数であるa(k
x,k
y)、b(k
x,k
y)を直接決定することは、困難である。
【0096】
そこで、式13をセンサ感受領域41の有限のサイズに対応する有限の区間で積分することで式14が得られる。
【0098】
φ
m(x,y,z)は、測定データに対応する。すなわち、センサ21は、φ
m(x,y,z)を測定することができる。ここで、Δxは、センサ感受領域41のX方向の大きさを示す。Δzは、センサ感受領域41のZ方向の大きさを示す。ここでは、センサ感受領域41のY方向の大きさは、微小であるため、考慮されない。なお、Y方向の大きさが考慮される場合の演算式も、本開示に係る手順と同様の手順で、導出可能である。
【0099】
次に、式14に対して、xおよびyの2次元フーリエ変換が行われる。式15は、2次元フーリエ変換を示す。式15は、測定データの2次元フーリエ変換後の関数に対応する。
【0101】
次に、境界条件として、測定面31が用いられる。ここで、測定面31は、z=0におけるXY平面である。簡略化のため、f(x,y)が、f(x,y)=φ
m(x,y,0)として定義され、g(x,y)がg(x,y)=(d/dz)φ
m(x,y,0)として定義される。f(x,y)、g(x,y)のフーリエ変換後の関数は、式16のように定義される。
【0103】
式15および式16から、式17が導出される。
【0105】
式17は、a(k
x,k
y)、b(k
x,k
y)についての連立方程式である。したがって、式17から、a(k
x,k
y)、b(k
x,k
y)の解として、式18が得られる。
【0107】
上述のようにして、実際の測定データから、a(k
x,k
y)、b(k
x,k
y)の解が得られる。a(k
x,k
y)、b(k
x,k
y)の解を式12へ代入することで、測定データで示される空間分布よりもより高い空間分解能で分布を示す解析データを算出するための演算式が得られる。式19は、代入により得られる演算式を示す。
【0109】
最終的に、φ(x,y,z)は、式20によって、算出される。式20は、逆フーリエ変換を示す式であって、式13と同一である。
【0111】
算出部12は、上述のように導出された式19および式20を用いて、測定データから高い空間分解能の解析データを算出することができる。
【0112】
なお、上述の演算式、および、その導出手順は、一例であって、それらに変形が施されてもよい。また、センサ感受領域41のY方向の大きさが、演算式、および、導出手順に含まれてもよい。
【0113】
また、式19に、Δx→0、Δz→0を適用することで、特許文献2のような無限小のセンサ感受領域41に対応する解が得られる。
【0114】
また、式19において、sinh関数は単調増加であるが、sin関数は0点を有する。そのため、与えられたΔxに比べてk
xがあまり大きくないことが望ましい。また、与えられたΔzに比べてk
x、k
yが大きくなると、分母のsinh関数は急速に大きくなり、式19の右辺は急速に小さくなる。したがって、センサ感受領域41の有限のサイズが考慮されない理論に基づく特許文献2では、空間的な高周波成分がカットされなければ、磁場分布を示す画像の再構成が困難である。
【0115】
以上のように、実施の形態1に係る分布解析装置10は、演算式を用いて、解析データを算出できる。したがって、磁場発生源の構造よりも大きいセンサ感受領域41等が用いられる場合であっても、分布解析装置10は、演算式に測定データを代入し、場の分布を示す解析データを高い空間分解能で算出することができる。
【0116】
(実施の形態2)
実施の形態2では、
図8および
図10等に示された実施の形態1に係る分布解析装置10と同様の構成が用いられる。そして、実施の形態2に係る分布解析装置10の動作は、
図9および
図11等に示された実施の形態1に係る分布解析装置10の動作と同様である。実施の形態2では、センサ感受領域41が回転する。これにより、さらに、空間分解能が向上する。
【0117】
図13は、実施の形態2に係る演算式を説明するための図である。
図13に示された3次元空間のセンサ感受領域41で、磁場が測定される。そして、センサ感受領域41がスキャン方向に従って移動する。これにより、測定面31のY方向に沿って、磁場が測定される。
【0118】
また、センサ感受領域41はZ方向に平行な直線を軸として回転する。例えば、
図2に示されたセンサ21が回転することによって、センサ21は、センサ感受領域41を回転させてもよい。また、センサ21は、TMR素子等のセンサ感受領域41のみを回転させてもよい。
【0119】
また、センサ21は、スキャン方向を回転させてもよい。すなわち、センサ21は、センサ感受領域41の回転の角度に応じて、移動方向を変更することで、スキャン方向の角度を変更してもよい。センサ21のスキャン方向は、センサ感受領域41の感受面に対して法線方向であることが望ましい。
【0120】
そして、算出部12は、所定の演算式を用いて、高い空間分解能で解析データを算出する。所定の演算式は、測定データを境界条件に用いてラプラス方程式を解くことにより得られる演算式である。また、この演算式では、センサ感受領域41の大きさが考慮される。この演算式は、以下のように導出される。
【0121】
まず、実施の形態1と同様に、磁場のz軸方向の成分は、H
z=φ(x,y,z)として表現される。そして、磁場のz軸方向の成分について、式21が成立する。
【0123】
式21の一般解を求めるため、x、yについて、φ(x,y,z)の2次元フーリエ変換を行う。式22は、2次元フーリエ変換を示す。
【0125】
そして、実施の形態1と同様に、フーリエ変換後の関数は、式23によって示される。
【0127】
図14は、
図13に示された測定面31を概念的に示す図である。センサ21は、センサ感受領域41の回転によって、測定面31における測定可能な場を測定する。ここで、
図14に示された直線lが、特定の時点におけるセンサ感受領域41を示す。センサ感受領域41は、薄膜で構成可能であるため、線で表現される。
【0128】
なお、ここでは、薄膜の厚みは考慮されない。薄膜の厚みが考慮される場合の演算式も、本開示に係る手順と同様の手順で、導出可能である。ただし、薄膜の厚みよりも小さい空間における場を高精度で算出することは困難である。
【0129】
センサ21は、センサ感受領域41(直線l)の回転に伴って、測定面31の全域の場の分布を測定する。
【0130】
ここで、
図14のように、θは、センサ感受領域41の回転の偏角に対応する。pは、予め定められた原点からセンサ感受領域41までの最短距離に対応し、動径に対応する。この時、直線lは、xcosθ+ysinθ−p=0で表現される。
【0131】
(p,θ)は、極座標に基づく表現である。極座標とZ方向の座標値との組み合わせによって得られる(p,θ,z)は、円柱座標である。そして、この座標系において、センサ感受領域41での測定データは、式24で表現される。
【0133】
ここで、Dは、測定面31を示す。そして、デルタ関数(δ)の積分によって、Dにおける直線l上の値が積分される。Δzは、センサ感受領域41のZ方向の大きさである。したがって、式24は、実際の測定データに比例する。次に、式25は、pに関する式24のフーリエ変換を示す。
【0135】
ここで、kは、極座標における動径の方向の波数を示す。
図15は、実施の形態2に係る動径の方向を示す図である。
図15には、動径の方向61(動径方向PまたはP方向とも呼ぶ)が示されている。なお、
図15には、動径の方向61に対応する回転(偏角)の方向62が示されている。
【0136】
X方向の波数であるk
xは、kおよびθを用いて、k
x=kcosθと表現される。同様に、Y方向の波数であるk
yは、kおよびθを用いて、k
y=ksinθと表現される。式23に、これらを代入することで、式26が得られる。
【0138】
式26を式25に代入することで、式27が得られる。式27は、実際の測定データに対応する。
【0140】
便宜上、測定面31は、z=0の平面である。境界条件は、測定面31の位置、すなわち、z=0の位置で与えられる。式28は、z=0の位置で与えられる測定データを示す関数であるf
m(k,θ)およびg
m(k,θ)の定義を示す。
【0142】
式27および式28から、式29が得られる。
【0144】
式29は、a(kcosθ,ksinθ)、b(kcosθ,ksinθ)についての連立方程式である。式29から、a(kcosθ,ksinθ)、b(kcosθ,ksinθ)の解である式30が導かれる。
【0146】
f
m(k,θ)およびg
m(k,θ)は、実際の測定データから取得される。式30を式26に代入することにより、式31が得られる。
【0148】
式31は、φ(x,y,z)をX方向およびY方向の2次元フーリエ変換を実行することにより得られる関数に対応する。式31から、任意のzにおけるX方向およびY方向の2次元フーリエ変換像が得られる。式31について2次元逆フーリエ変換を実行することにより、φ(x,y,z)が得られる。式32は、2次元逆フーリエ変換を示す。式32の計算には、波数空間において、極座標から直交座標への変換が必要である。
【0150】
実施の形態1に示された式19と同様に、式31は、センサ感受領域41の有限のサイズを考慮して、測定データを境界条件に用いてラプラス方程式を解くことにより得られる演算式である。この演算式に実際の測定データを直接代入することが可能である。算出部12は、上述のように導出された式31を用いて、測定データから、高い空間分解能で場の分布を示す解析データを算出することができる。
【0151】
以上のように、実施の形態2に係る分布解析装置10は、演算式を用いて、高い空間分解能で場の分布を示す解析データを算出できる。
【0152】
実施の形態1で示された式19は、分母にsin関数を含む。そのため、分母は0点を有する。したがって、与えられたΔxに比べてk
xが大きい場合に、適切な解析データが得られない可能性がある。すなわち、実施の形態1では、空間的な高周波成分をカットすることなく、分布の像を再構成することが難しい。一方、実施の形態2で示された式31では、分母にsin関数がない。そのため、実施の形態2では、空間的な高周波成分をカットすることなく、高い分解能で、分布の像を再構成することが可能である。
【0153】
(実施の形態3)
実施の形態3では、
図8および
図10等に示された実施の形態1に係る分布解析装置10と同様の構成が用いられる。そして、実施の形態3に係る分布解析装置10の動作は、
図9および
図11等に示された実施の形態1に係る分布解析装置10の動作と同様である。また、実施の形態3に係るセンサ感受領域41は、実施の形態2のように回転してもよい。実施の形態3は、実施の形態1および実施の形態2に追加される方法として、局所的なラドン変換を実現するための方法を示す。
【0154】
実施の形態1および実施の形態2のように、測定部13は、センサ感受領域41によって走査された領域において、場の分布を測定する。センサ感受領域41によって走査されない領域では、場の分布が測定されない。測定部13は、検査対象物22の解析のため、検査対象物22を覆う周辺の領域において、場の分布を測定することが望ましい。そのため、センサ感受領域41の大きさは、検査対象物22の大きさに対応していることが望ましい。
【0155】
センサ感受領域41の大きさと、検査対象物22の大きさとが釣り合っていない場合、測定データの取得に長い時間がかかる可能性があり、また、測定データが適切に取得できない可能性がある。特に、実施の形態2では、典型的には、比較的大きいセンサ感受領域41が検査対象物22を覆うように走査することで、検査対象物22の周辺の領域の磁場が測定される。
【0156】
一方、様々なサイズの物が、検査対象物22として、検査されることが想定される。検査対象物22のサイズに応じて、センサ感受領域41の大きさを物理的に変更することは困難である。したがって、センサ感受領域41は、予め大きいサイズで構成される。センサ感受領域41に比べて小さい検査対象物22が用いられる場合でも、大きいサイズのセンサ感受領域41によって検査対象物22の周辺の磁場の測定は可能である。
【0157】
しかしながら、大きいサイズのセンサ感受領域41で測定部13が磁場の分布を測定する場合、磁場の分布を測定しなくてもよい領域における磁場の分布も測定される。これにより、磁場の分布の解析に長い時間がかかる場合がある。また、不必要な磁場の情報によって、適切な分布が得られない場合がある。
【0158】
そこで、実施の形態3では、ウィンドウ関数を用いて、測定データのうち必要な部分を増幅させ、不要な部分を減衰させる。これにより、磁場の分布の解析にかかる時間が低減する。また、適切な分布が局所的に得られる。そして、この局所的に得られた分布に基づいて、3次元画像を局所的に生成するラドン変換が可能である。
【0159】
より具体的には、取得部11は、センサ感受領域41で感受された場の値にウィンドウ関数を掛ける。そして、取得部11は、ウィンドウ関数が掛けられた値で構成される測定データを取得する。また、ウィンドウ関数は、予め定められた位置からセンサ感受領域41までの距離に依存する関数でもよい。
【0160】
図16は、実施の形態3に係る解析領域の例を概念的に示す図である。
図16は、測定面31の上面図に対応する。センサ感受領域41は、スキャン領域85を走査する。
図16において示されていないが、検査対象物22は、測定面31の下側に配置される。
【0161】
例えば、検査対象物22は回転台の上に配置され、検査対象物22の周辺の領域が複数の方向で走査される。例えば、検査対象物22が−θの回転を行っている状態は、センサ感受領域41がθの回転を行っている状態に相当する。これにより、実施の形態2と同様に、磁場の分布の測定データが得られる。
【0162】
また、例えば、検査対象物22は、測定面31における解析領域82の下側に配置される。解析領域82は、測定領域83に含まれる。実施の形態3に係る測定部13は、測定領域83における磁場の分布を測定する。取得部11は、測定された分布を示す測定データを取得する。算出部12は、測定データに基づいて、解析領域82における磁場の分布を解析する。それらの一連の手順において、ウィンドウ関数w(p)によって、測定データから不要なデータが取り除かれる。
【0163】
図16において、ウィンドウ関数w(p)が、概念的に示されている。pは、動径を示す。pの絶対値が小さい程、ウィンドウ関数w(p)は大きな値を示し、pの絶対値が大きい程、ウィンドウ関数w(p)は小さな値を示す。解析領域82の範囲外のpにおいて、ウィンドウ関数w(p)は、0に収束する。測定データにウィンドウ関数w(p)を掛けることにより、解析領域82の外部のデータが測定データから除外される。このウィンドウ関数w(p)によって、解析領域82の大きさは変動する。
【0164】
半値幅領域84は、測定データにウィンドウ関数w(p)が掛けられた場合でも、磁場の分布の解析に影響が及ぶ領域である。この半値幅領域84は、ウィンドウ関数w(p)の半値幅に対応する領域である。ただし、例えば、センサ感受領域41の長さが1000μmであり、解析領域82の直径が100μmである場合、ウィンドウ関数w(p)は、
図16の例よりもシャープである。そのため、影響は小さい。
【0165】
以下、測定データにウィンドウ関数w(p)を掛ける具体的な手順の例を示す。まず、センサ感受領域41で感受される磁場の値は、式33によって表現される。
【0167】
式33のg(p,θ)は、センサ感受領域41で感受される磁場に対応する関数を示す。pは動径を示す。θは偏角を示す。Dは平面を示す。H
z(x,y)は、磁場を示す。xはX方向の座標値を示す。yはY方向の座標値を示す。次に、式34は、g(p,θ)にウィンドウ関数を掛けてP方向でフーリエ変換することにより得られる関係式を示す。
【0169】
G(k,θ)は、P方向のフーリエ変換により得られる関数を示す。kは、P方向の波数を示す。式34におけるw(xcosθ+ysinθ)について、式35で示される近似式が成立する。
【0171】
演算式を簡略化するため、式34に式35を適用する。これにより、式36の関係式が得られる。
【0173】
式36を逆フーリエ変換することで、w’(x,y)H
z(x,y)が得られる。つまり、センサ感受領域41で感受された値にウィンドウ関数w(p)を掛けることは、磁場の分布にウィンドウ関数w(p)を掛けることに相当する。これにより、測定領域83のうち、解析領域82における磁場の測定データが増幅し、その他の領域における磁場の測定データが減衰する。
【0174】
ウィンドウ関数w(p)が掛けられた測定データは、実施の形態2等で得られた演算式を用いて、解析される。これにより、局所的に高精度な分布を示す解析データが、小さい演算量で得られる。
【0175】
なお、ウィンドウ関数w(p)が掛けられた測定データをウィンドウ関数w(p)で割ることにより、ウィンドウ関数w(p)が0である部分を除いて、元の測定データが得られる。この時、ウィンドウ関数w’(x,y)が、除数に用いられてもよい。そして、ウィンドウ関数w(p)またはウィンドウ関数w’(x,y)で割られた測定データが、実施の形態2等で得られた演算式を用いて、解析されてもよい。
【0176】
また、上述のウィンドウ関数w(p)および計算は、一例である。例えば、測定領域83の中心以外の位置で磁場の情報が増幅するような、ウィンドウ関数w(p)が用いられてもよい。また、ウィンドウ関数w(p)は、矩形窓と呼ばれるウィンドウ関数であってもよい。
【0177】
また、実施の形態3で示された方法は、主に、実施の形態2に対応する方法であるが、同様の概念が実施の形態1に適用されてもよい。また、実施の形態3で示された方法は、実施の形態1および実施の形態2によらず、局所的に適切な測定データを取得する方法として、独立して用いられてもよい。
【0178】
(実施の形態4)
実施の形態4は、実施の形態1〜3に示された分布解析装置10に係る第1の適用例を示す。
【0179】
図17は、実施の形態4に係る分布解析装置10を示す図である。
図17に示された分布解析装置10は、パーソナルコンピュータ(PC)に代表されるコンピュータである。分布解析装置10は、CPU(Central Processing Unit)、メモリおよび入出力インタフェース等を備える。
【0180】
そして、分布解析装置10は、センサ21から測定データを取得する。そして、分布解析装置10は、所定の演算式を用いて、測定データからより高い空間分解能を有する解析データを算出する。そして、分布解析装置10は、解析データを表示装置71に表示する。このように、分布解析装置10は、パーソナルコンピュータ等のコンピュータに適用可能である。
【0181】
(実施の形態5)
実施の形態5は、実施の形態1〜3に示された分布解析装置10に係る第2の適用例を示す。
【0182】
図18は、実施の形態5に係る分布解析装置10を示す図である。
図18に示された分布解析装置10は、検査対象物91の内部における磁場の分布を解析する。検査対象物91は、例えば、鉄筋コンクリートによる建築物である。
【0183】
作業者92は、センサ21を用いて、検査対象物91の内部および周辺における磁場を測定する。分布解析装置10は、センサ21から、測定データを取得する。そして、分布解析装置10は、所定の演算式を用いて、測定データから高精度な解析データを算出する。そして、分布解析装置10は、解析データを表示装置71に表示する。
【0184】
すなわち、作業者92は、分布解析装置10をコンクリート内部の鉄筋腐食の検査に用いることができる。
【0185】
以上、本発明に係る分布解析装置について、複数の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は実施の形態に限定されるものではない。実施の形態に対して当業者が思いつく変形を施して得られる形態、および、複数の実施の形態における構成要素を任意に組み合わせて実現される別の形態も本発明に含まれる。
【0186】
例えば、特定の処理部が実行する処理を別の処理部が実行してもよい。また、処理を実行する順番が変更されてもよいし、複数の処理が並行して実行されてもよい。
【0187】
また、本発明は、分布解析装置として実現できるだけでなく、分布解析装置を構成する処理手段をステップとする方法として実現できる。例えば、それらのステップは、コンピュータによって実行される。そして、本発明は、それらの方法に含まれるステップを、コンピュータに実行させるためのプログラムとして実現できる。さらに、本発明は、そのプログラムを記録したCD−ROM等の非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体として実現できる。
【0188】
また、分布解析装置に含まれる複数の構成要素は、集積回路であるLSIとして実現されてもよい。これらの構成要素は、個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC(Integrated Circuit)、システムLSI、スーパーLSIまたはウルトラLSIと呼称されることもある。
【0189】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、または、LSI内部の回路セルの接続および設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0190】
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて、分布解析装置に含まれる構成要素の集積回路化を行ってもよい。