(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0037】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態による潜熱蓄熱部材及びそれを備えた建材について、
図1〜
図8を用いて説明する。なお、以下の全ての図面においては、理解を容易にするため、各構成要素の寸法や比率などを適宜異ならせて図示している。
図1は、本実施の形態による潜熱蓄熱部材20及びそれを備えた壁材1(建材の一例)の模式的な断面構成を示している。
図1において、左方は室内側を表しており、右方は室外(外界)側を表している。また、
図1に示す壁材1は、住宅等の建物のうち、太陽光が照射され得る方向(例えば、北半球では東、南東、南、南西又は西など)を向いた外壁に用いられる。特に、窓が少ない壁であれば壁からの入熱が大きいため、効果が大きい。
【0038】
図1に示すように、壁材1は、潜熱蓄熱部材20と、潜熱蓄熱部材20の室内側(内側)に配置される断熱部材10とが積層された構成を有している。断熱部材10及び潜熱蓄熱部材20はそれぞれ平板状の形状を有している。潜熱蓄熱部材20の室外側(外側)には、外壁材(サイディング)30が配置されている。ここで、説明を簡略化するために、
図1に示す構成において外壁材30の外側表面の温度は、潜熱蓄熱部材20の外側表面20bの温度とほぼ等しいものとする。すなわち、外壁材30は、熱容量が比較的小さく、熱伝導率が比較的高く、厚さが比較的薄いものとする。また、外壁材30は省略可能である。
【0039】
断熱部材10は、熱伝導率が比較的小さい材料を用いて形成されている。断熱部材10としては、繊維系断熱材(例えばグラスウール)、発泡樹脂系断熱材(例えばポリウレタンフォーム)等が用いられる。
【0040】
潜熱蓄熱部材20は、所定の材料を用いて形成された潜熱蓄熱材が所定のフィルムで密封された構成を有している。潜熱蓄熱部材20の内側表面20aは、断熱部材10の外側表面と接触又は近接している。潜熱蓄熱部材20の外側表面(太陽等の熱源からのふく射熱を受ける面)20bは、外壁材30の内側表面と接触又は近接している。潜熱蓄熱部材20(潜熱蓄熱材)は、固相及び液相間の相変化が可逆的に生じる所定の相変化温度(融点)T1を有している。潜熱蓄熱部材20は、相変化温度T1よりも高い温度では液相となり、相変化温度T1よりも低い温度では固相となる。潜熱蓄熱部材20は、相変化の際に固相と液相の二相が混在する限り一定の相変化温度を保つため、比較的長時間一定の温度を保つことができる。潜熱蓄熱部材20の相変化温度T1は、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定することができる。
【0041】
本実施の形態では、潜熱蓄熱部材20の相変化温度T1は、夏季の日中における外側表面20bの最低温度Tsminと最高温度Tsmaxとの間の温度範囲内にある(Tsmin<T1≦Tsmax)。また、相変化温度T1は、最高温度Tsmaxより最低温度Tsminに近い温度であることが望ましい。すなわち、相変化温度T1は、最低温度Tsmin及び最高温度Tsmaxの平均温度以下であることが望ましい(T1≦(Tsmin+Tsmax)/2)。最低温度Tsminは、夏季の日中の外気温度Tout(例えば、日中における最低の外気温度Tout)にほぼ等しい温度(例えば25℃)である。また、最高温度Tsmaxは、太陽光の輻射熱によって外側表面20bが高温になったときの温度である。最低温度Tsminを25℃とし、最高温度Tsmaxを70℃とすると、潜熱蓄熱部材20の相変化温度T1は25℃より大きく、70℃以下の温度範囲内(Tsmin<T1≦Tsmax)にある。また、潜熱蓄熱部材20の相変化温度T1は、望ましくは温度差を得るために27℃〜48.5℃の温度範囲内(Tsmin<T1≦(Tsmin+Tsmax)/2)にある。相変化温度T1をこの範囲に置くことで、室内と室外(外界)との間の温度差を小さくできる。入熱量は、温度差に比例するため、室内への入熱量を軽減することができ、室内の温度上昇を抑え、冷房負荷を低減することができる。
【0042】
潜熱蓄熱部材20は、例えばパラフィンを含む材料を用いて形成されている。パラフィンは、一般式C
nH
2n+2で表される飽和鎖式炭化水素の総称である。単一のパラフィンを用いる場合、潜熱蓄熱部材20の相変化温度はパラフィンの炭素鎖数nによって異なる。パラフィンの相変化温度は、炭素鎖数nが大きくなるほど高くなる。2種以上のパラフィンの混合物を用いる場合、混合比を変えることによって潜熱蓄熱部材20の相変化温度を調整することが可能である。例えば、27℃〜48.5℃の温度範囲内に相変化温度を有するパラフィンとしては、n−ドコサン(C
22H
46)(融点44.0℃、融解熱157kJ/kg)、n−エイコサン(C
20H
42)(融点36.4℃、融解熱247kJ/kg)、n−オクタデカン(C
18H
38)(融点28.2℃、融解熱243kJ/kg)等がある。
【0043】
また、潜熱蓄熱部材20には、上記温度範囲に相変化温度を有していれば、パラフィン以外の種々の有機系材料や、種々の無機系材料を用いることができる。例えば、27℃〜48.5℃の温度範囲内に相変化温度を有するパラフィン以外の有機系材料としては、ラウリン酸(融点44℃、融解熱178kJ/kg)、カプリン酸(融点31.5℃、融解熱153kJ/kg)等がある。また、27℃〜48.5℃の温度範囲内に相変化温度を有する無機系材料としては、Na
2S
2O
3・5H
2O(融点48.5℃、融解熱197kJ/kg)、CaBr
2・6H
2O(融点38.2℃、融解熱115kJ/kg)、Zn(NO
3)
2・6H
2O(融点36℃、融解熱147kJ/kg)、Na
2HPO
4・12H
2O(融点35.2℃、融解熱281kJ/kg)、Na
2SO
4・10H
2O(融点32.4℃、融解熱251kJ/kg)、LiNO
3・3H
2O(融点30℃、融解熱255kJ/kg)、Ca(NO
3)
2・4H
2O/Mg(NO
3)
2・6H
2O(融点30℃、融解熱136kJ/kg)、CaCl
2・6H
2O(融点29.8℃、融解熱192kJ/kg)等がある。また、固体と液体との相変化ではなく、包接水和物の生成熱を用いてもよい。具体的には、アルキル四級アンモニウム塩である(C
4H
9)
4NF(融点30℃、融解熱165kJ/kg)、(iso−C
5H
11)
4NF(融点31.5℃、融解熱237kJ/kg)、(iso−C
5H
11)
4NCl(融点29.6℃、融解熱263kJ/kg)等がある。このように潜熱蓄熱材は融点(相変化温度)付近で大きな熱量を蓄えることができる。物質の比熱を用いた顕熱蓄熱では、同量でこれだけの蓄熱を行うことができない。例えば、コンクリートの場合、温度差5℃で4.5kJ/kg程度の熱しか蓄えることができない。
【0044】
また、本実施の形態の潜熱蓄熱部材20(潜熱蓄熱材)はゲル状である。すなわち、本実施の形態の潜熱蓄熱部材20は、例えばパラフィンをゲル化(固化)するゲル化剤を含む材料を用いて形成されている。ゲルとは、分子が架橋されることで三次元的な網目構造を形成し、その内部に溶媒を吸収し膨潤したものをいう。ゲル化剤はパラフィンに対して数重量%含有させるだけでゲル化の効果を生じる。ゲル状の潜熱蓄熱部材20は、固相と液相との間で相変化しても全体として固体状態を維持し、液相状態でも流動性を有しない。したがって、固相及び液相のいずれにおいても潜熱蓄熱部材20自体が安定した形状を保つため、潜熱蓄熱部材20の取扱いを容易にすることができる。ゲル化した潜熱蓄熱部材20において、ゲル化剤は、例えば少なくともパラフィンの分子量よりも大きい分子量(例えば、分子量10000以上)を有する重合体(ポリマー)となる。
【0045】
上記の有機系又は無機系材料を用いた潜熱蓄熱部材20には、必要に応じて、難燃剤や過冷却防止剤などを添加してもよい。
【0046】
本実施の形態の潜熱蓄熱部材20は、潜熱蓄熱材がガスバリア性の高いフィルムで密封された構成を有している。これにより、潜熱蓄熱材が揮発性を有していたとしても、経年劣化等を防止できる。このフィルムは、例えば、アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレート等の比較的熱伝導率の高い材料を用いて形成されている。フィルムは、相変化の繰り返しによる潜熱蓄熱部材20の変形を防ぐため、潜熱蓄熱材の体積収縮に追随して収縮可能であることが望ましい。
【0047】
図2は、夏季の日中のある時点における壁材1等の温度勾配の一例を示している。
図2において、左方は室内側を表しており、右方は室外側を表している。縦方向は温度を表している。夏季の日中において天気が晴れのとき、外壁材30や潜熱蓄熱部材20の外側表面20bの表面温度Ts(例えば最高温度Tsmaxに等しい)は、太陽輻射(日射)によって外気温度Tout(例えば最低温度Tsminに等しい)よりも高くなる。外気温度Toutと表面温度Tsとの間の温度範囲に潜熱蓄熱部材20の相変化温度T1があれば、潜熱蓄熱部材20の外側表面20bの温度Tsが上昇したとしても、潜熱蓄熱部材20の内部に伝達した熱は、当該潜熱蓄熱部材20が固相から液相に相変化する際の融解熱として吸熱される。したがって、室外から室内への入熱を防ぐことができ、室内の温度上昇を抑制することができる。
【0048】
また、潜熱蓄熱部材20の温度は、固液と液相とが混在する状態では相変化温度T1に維持される。このため、相変化温度T1が最低温度Tsminと最高温度Tsmaxとの間の温度範囲のうち比較的低い温度であれば、潜熱蓄熱部材20(相変化温度T1)と室内(室内温度Tin)との間の温度勾配(断熱部材10の温度勾配)を小さくすることができる。したがって、室外から室内への入熱をさらに防ぐことができ、室内の温度上昇を抑制することができる。
【0049】
図2に示したような状態の後に天気が晴れから曇りに変化した場合、日射による外壁材30や潜熱蓄熱部材20の外側表面20bへの伝熱が生じ難くなるため、表面温度Tsは、潜熱蓄熱部材20の相変化温度T1よりも低い外気温度Tout付近まで低下する。したがって、潜熱蓄熱部材20に融解熱として蓄積された熱は、当該潜熱蓄熱部材20が液相から固相に相変化する際の凝固熱として室外に放出される。これにより、潜熱蓄熱部材20は、再び吸熱可能な状態に戻る。仮に、日中の天気が日没まで晴れのままであったとしても、日没後の夜間には日射による外壁材30や潜熱蓄熱部材20の外側表面20bへの伝熱が確実に生じなくなるため、潜熱蓄熱部材20は吸熱可能な状態に戻る。ここで、潜熱蓄熱部材20から室外への放熱性を高めるために、外壁材30の外側表面は赤外線の放射率の高い放射冷却面であることが望ましい。
【0050】
図3は、本実施の形態の潜熱蓄熱部材20を用いた場合における夏季の一日(日の出から翌日の日の出まで)の温度変化の一例を示すグラフである。図中の横軸は時間経過を表し、縦軸は温度(℃)を表している。実線の曲線L1は外気温度の時間変化を示し、長破線の曲線L2は潜熱蓄熱部材20の表面温度(外側表面20bの温度)の時間変化を示し、短破線の曲線L3は潜熱蓄熱部材20の内部温度(例えば、潜熱蓄熱部材20の厚さ方向の中心の温度)の時間変化を示している。潜熱蓄熱部材20(潜熱蓄熱材)の相変化温度T1は40℃であるものとする。外気温度は、日の出時刻t1には25℃であり、時刻t1から時刻t4までの期間には25℃から35℃まで単調に上昇し、時刻t4から時刻t6までの期間には35℃に維持され、時刻t6から時刻t10までの期間には35℃から25℃まで単調に低下し、時刻t10から翌日の日の出時刻t1までの期間には25℃に維持されるものとする。つまり、本例の一日における外気温度の最低温度は25℃であり、最高温度は35℃である。日没時刻は、時刻t6と時刻t10との間の時刻t8であるものとする。本例の一日において、日の出時刻t1から日没時刻t8までの期間が日中であり、日没時刻t8から翌日の日の出時刻t1までの期間が夜間である。また、日の出時刻t1から時刻t3までの天気は晴れであり、時刻t3から時刻t5までの天気は曇りであり、時刻t5から日没時刻t8までの天気は晴れであり、時刻t8以降の夜間の天気は晴れであるものとする。
【0051】
まず、天気が晴れである期間(日の出時刻t1から時刻t3まで)の潜熱蓄熱部材20の温度変化について説明する。日の出時刻t1では、潜熱蓄熱部材20の表面温度及び内部温度は外気温度と同じ25℃であり、潜熱蓄熱部材20は固相である。時刻t1以降、潜熱蓄熱部材20の表面温度は、外気温度の上昇に伴って上昇するとともに、日射によっても上昇する。本例では、潜熱蓄熱部材20の表面温度は、時刻t1以降、外気温度よりも速い上昇速度で約55℃まで上昇するものとする。潜熱蓄熱部材20の内部温度は、潜熱蓄熱部材20の外側表面20bからの熱伝導によって上昇する。本例では、潜熱蓄熱部材20の内部温度は、時刻t1以降、外気温度よりも速く表面温度よりも遅い上昇速度で上昇し、時刻t2に相変化温度T1に到達するものとする。時刻t2以降の潜熱蓄熱部材20の内部温度は、固相から液相への相変化が終了するまで相変化温度T1に維持される。
【0052】
次に、天気が曇りの後、再び晴れに変化した後の期間(時刻t5から日没時刻t8まで)の潜熱蓄熱部材20の温度変化について説明する。時刻t5に天気が曇りから晴れに変化すると、日射によって潜熱蓄熱部材20の表面温度が上昇する。本例では、潜熱蓄熱部材20の表面温度は、時刻t5以降、所定の上昇速度で約55℃まで上昇するものとする。潜熱蓄熱部材20の内部温度は、固相から液相への相変化が終了する時刻t7まで相変化温度T1に維持され、時刻t7以降は上昇する。
【0053】
次に、夜間(日没時刻t8以降)の潜熱蓄熱部材20の温度変化について説明する。夜間になると日射による伝熱が生じなくなるため、潜熱蓄熱部材20の表面温度は、外気との熱交換によって外気温度付近まで徐々に低下する。本例では、時刻t8での潜熱蓄熱部材20の表面温度が内部温度よりも高いため、潜熱蓄熱部材20の内部温度は、時刻t8以降の所定時間は外側表面20bからの熱伝導によって上昇する。その後、潜熱蓄熱部材20の内部温度は、潜熱蓄熱部材20の表面温度の低下に伴って低下し、時刻t9に相変化温度T1に到達する。潜熱蓄熱部材20の内部温度は、液相から固相への相変化が終了する時刻t11まで相変化温度T1に維持され、時刻t11以降は再び低下して潜熱蓄熱部材20の表面温度(外気温度)に近づく。
【0054】
一日においてこのような温度変化が生じた場合、日中における潜熱蓄熱部材20の表面温度の最低温度Tsminは25℃であり、最高温度Tsmaxは55℃である。潜熱蓄熱部材20の表面温度が最低温度Tsminとなる時刻t1において、当該表面温度は外気温度に等しい。
【0055】
以上のように、潜熱蓄熱部材20は、まず期間A(時刻t2〜t3)で一部が固相から液相に相変化する。これにより、潜熱蓄熱部材20は、期間Aでは室外からの熱を吸熱して室内の温度上昇を抑制することができる。その後、天気が曇りに変化した期間B(時刻t4〜t5)では、潜熱蓄熱部材20の一部が液相から固相に相変化する。これにより、潜熱蓄熱部材20の一部は、吸熱した熱を室外に放熱することによって吸熱可能な状態に戻ることができる。その後、天気が再び晴れに変化した期間C(時刻t6〜t7)では、潜熱蓄熱部材20の一部が固相から液相に相変化する。これにより、潜熱蓄熱部材20は、期間Cでは室外からの熱を吸熱して室内の温度上昇を抑制することができる。その後、夜間の期間D(時刻t9〜t11)では、潜熱蓄熱部材20のほぼ全体が液相から固相に相変化する。これにより、潜熱蓄熱部材20は、吸熱した熱を室外に放熱することによって吸熱可能な状態に戻ることができる。
【0056】
本実施の形態の潜熱蓄熱部材20によれば、日中に晴れから曇りへの天気の変化があれば、吸熱した熱を当該日中の曇りの期間内にも放熱することができる。このため、日中における潜熱蓄熱部材20の単位質量当たりの実質的な吸熱量を増加させることができる。したがって、潜熱蓄熱部材20を薄型化、軽量化することができるとともに、室内への入熱をより長時間抑制することができる。
【0057】
また、本実施の形態の潜熱蓄熱部材20によれば、日中に晴れから曇りへの天気の変化がなかったとしても、日射がなくなる夜間には吸熱した熱を確実に放熱することができる。このため、日中の室内の冷房負荷を削減するのに必要な吸熱量を確実に確保することができるので、日単位での消費エネルギーのピークシフトに、より確実に寄与できる。
【0058】
また、本実施の形態の潜熱蓄熱部材20では、潜熱蓄熱材の相変化温度が潜熱蓄熱部材20の表面温度の最高温度Tsmaxと最低温度Tsminとの間に設定される。最高温度Tsmaxと最低温度Tsminとの間には、通常数十℃程度の温度差があるため、潜熱蓄熱材の相変化温度の設定(潜熱蓄熱材の材料選択)は容易である。
【0059】
ここで、本実施の形態の潜熱蓄熱部材20に代えて従来の蓄熱ボードを用いた場合について考える。従来の蓄熱ボード内の潜熱蓄熱材の相変化温度は23℃又は26℃付近である。
図3に示す例では夜間においても外気温度が25℃までしか低下しないため、相変化は数度の温度幅の中で生じることを考慮すると、従来の蓄熱ボードでは吸熱した熱を夜間に全て放熱することができない。また、日中に晴天から曇天への天候の変化等により、外気温が低下した時も、相変化温度域を挟んだ温度変化が生じないため、充分な放熱を行うことが出来ない。したがって、従来の蓄熱ボードでは、本実施の形態の潜熱蓄熱部材20とは異なり、潜熱蓄熱材を確実に一日周期で吸熱可能な状態に戻すことが困難であった。
【0060】
仮に、夜間の外気温度が25℃以下に低下し、蓄熱ボードから夜間に放熱することができたとしても、外気温度が相対的に高くなる日中の温度変化により蓄熱ボードから放熱できる可能性は低い。したがって、従来の蓄熱ボードでは、本実施の形態の潜熱蓄熱部材20とは異なり、日中における実質的な吸熱量を増加させることが困難であった。
【0061】
また、従来の蓄熱ボードでは、潜熱蓄熱材の相変化温度が夏季の日中の外気温度と夜間の外気温度との間に設定される必要がある。したがって、夏季の昼夜の温度差が大きい地域(例えばヨーロッパ)で用いられる場合には潜熱蓄熱材の相変化温度の設定(潜熱蓄熱材の材料選択)が比較的容易であるが、夏季の昼夜の温度差が小さい地域(例えば日本)で用いられる場合には潜熱蓄熱材の相変化温度の設定が困難であった。
【0062】
(実施例1)
図4は、日射時におけるRC造の壁材の厚さ方向の温度分布を非定常解析で計算した結果を示すグラフである。グラフの横軸は壁材の外側表面から内側方向への距離(mm)を表し、縦軸は温度(℃)を表している。グラフ中の■印は壁材aの温度分布を示し、▲印は壁材bの温度分布を示し、◆印は壁材cの温度分布を示している。ここで、RC造の壁材a、b、cは、サイディング(厚さ9mm、熱伝導率0.21W/(m・K)、比熱1072J/(kg・K)、密度1080kg/m
3)、断熱材(厚さ30mm、熱伝導率0.051W/(m・K)、比熱870J/(kg・K)、密度16kg/m
3)、コンクリート(厚さ100mm、熱伝導率1.2W/(m・K)、比熱900J/(kg・K)、密度2400kg/m
3)、及び石膏ボード(厚さ12mm、熱伝導率0.22W/(m・K)、比熱1046J/(kg・K)、密度592kg/m
3)が外側からこの順に積層された構造を有するものとする。壁材aには厚さ10mmの潜熱蓄熱材A(相変化温度30℃)がサイディングの外側に配置され、壁材bには厚さ10mmの潜熱蓄熱材B(相変化温度40℃)がサイディングの外側に配置され、壁材cには潜熱蓄熱材が配置されていないものとする。潜熱蓄熱材A、Bの密度は790kg/m
3であり、比熱は1800J/(kg・K)(固体)、114500J/(kg・K)(固体→液体)、2100J/(kg・K)(液体)であり、熱伝導率は0.34W/(m・K)(固体、固体→液体)、0.14W/(m・K)(液体)であるものとする。日射は、壁材a、b、cのそれぞれの外側表面に対して照射強度50W/m
2で4時間照射されたものとする。
【0063】
図4に示すように、上記の日射量は潜熱蓄熱材A、Bの潜熱容量で全て吸収されるため、壁材a、bの外側表面の温度は各潜熱蓄熱材の相変化温度(30℃又は40℃)に維持されている。一方、潜熱蓄熱材の設けられていない壁材cの外側表面の温度は約60℃となっている。これにより、潜熱蓄熱材が壁材a、bの外側表面の温度上昇を抑制していることが分かる。また、潜熱蓄熱材の設けられた壁材a、bでは、壁材cと比較して、内側表面の温度が低い。これにより、潜熱蓄熱材が壁材a、bの内側表面の温度上昇も抑制していることが分かる。
【0064】
(実施例2)
図5は、日射時における木造の壁材の厚さ方向の温度分布を非定常解析で計算した結果を示すグラフである。グラフの横軸は壁材の外側表面から内側方向への距離(mm)を表し、縦軸は温度(℃)を表している。グラフ中の■印は壁材dの温度分布を示し、▲印は壁材eの温度分布を示し、◆印は壁材fの温度分布を示している。ここで、木造の壁材d、e、fは、サイディング(厚さ9mm、熱伝導率、比熱、密度は上記と同様)、空気層(厚さ30mm、熱伝導率0.026W/(m・K)、比熱1007J/(kg・K)、密度1.1763kg/m
3)、合板(厚さ12mm、熱伝導率0.162W/(m・K)、比熱1619J/(kg・K)、密度400kg/m
3)、断熱材(厚さ30mm、熱伝導率、比熱、密度は上記と同様)、合板(厚さ12mm、熱伝導率、比熱、密度は上記と同様)、及び石膏ボード(厚さ12mm、熱伝導率、比熱、密度は上記と同様)が外側からこの順に積層された構造を有するものとする。壁材dには厚さ10mmの潜熱蓄熱材A(相変化温度30℃)がサイディングの外側に配置され、壁材eには厚さ10mmの潜熱蓄熱材B(相変化温度40℃)がサイディングの外側に配置され、壁材fには潜熱蓄熱材が配置されていないものとする。日射は、壁材a、b、cのそれぞれの外側表面に対して照射強度50W/m
2で4時間照射されたものとする。
【0065】
図5に示すように、上記の日射量は潜熱蓄熱材A、Bの潜熱容量で全て吸収されるため、壁材d、eの外側表面の温度は各潜熱蓄熱材の相変化温度(30℃又は40℃)に維持されている。一方、潜熱蓄熱材の設けられていない壁材fの外側表面の温度は約60℃まで上昇している。これにより、潜熱蓄熱材が壁材d、eの外側表面の温度上昇を抑制していることが分かる。また、潜熱蓄熱材の設けられた壁材d、eでは、壁材fと比較して、内側表面の温度が低い。これにより、潜熱蓄熱材が壁材d、eの内側表面の温度上昇も抑制していることが分かる。
【0066】
次に、本実施の形態による潜熱蓄熱部材20の相変化温度の設定手順(潜熱蓄熱材の材料選択手順)について説明する。
図6は、日本のある地域での晴天の一日における外壁及び屋根の表面温度の変化の一例を示すグラフである。グラフの横軸は時刻(6時〜20時)を表し、縦軸は温度(℃)を表している。ここで、6時〜18時を日中とし、18時〜20時を夜間とする。グラフ中の□印を結ぶ曲線は東を向いた外壁(東壁)の表面温度の変化を示し、◆印を結ぶ曲線は南を向いた外壁(南壁)の表面温度の変化を示し、■印を結ぶ曲線は西を向いた外壁(西壁)の表面温度の変化を示し、×印を結ぶ曲線は北を向いた外壁(北壁)の表面温度の変化を示し、○印を結ぶ曲線はほぼ水平な屋根の表面温度の変化を示し、●印を結ぶ曲線は外気温度の変化を示している。
【0067】
図6に示すように、東壁表面の日中の最高温度は約50℃(10時)であり、日中の最低温度は約16℃(18時)である。したがって、この地域において建物の東壁に使用される潜熱蓄熱部材20には、相変化温度18℃〜50℃(望ましくは18℃〜33℃)の潜熱蓄熱材が用いられる。南壁表面の日中の最高温度は約38℃(12時)であり、日中の最低温度は約17℃(6時)である。したがって、この地域において建物の南壁に使用される潜熱蓄熱部材20には、相変化温度19℃〜38℃(望ましくは19℃〜27.5℃)の潜熱蓄熱材が用いられる。
【0068】
西壁表面の日中の最高温度は約45℃(16時)であり、日中の最低温度は約17℃(6時)である。したがって、この地域において建物の西壁に使用される潜熱蓄熱部材20には、相変化温度19℃〜45℃(望ましくは19℃〜31℃)の潜熱蓄熱材が用いられる。屋根表面の日中の最高温度は約63℃(12時)であり、日中の最低温度は約20℃(18時)である。したがって、この地域において建物の屋根に使用される潜熱蓄熱部材20には、相変化温度22℃〜63℃(望ましくは22℃〜41.5℃)の潜熱蓄熱材が用いられる。なお、日射の少ない北壁の表面温度は、外気温度とほぼ同様に推移している。
【0069】
特定の地域で建材として使用される潜熱蓄熱部材20の相変化温度は、上記のように同地域又は近隣地域の夏季の代表的な一日の温度変化に基づいて決定してもよいし、同地域又は近隣地域の夏季の複数の日(例えば、7月〜9月の3ヶ月間)の温度変化を時間帯毎に平均した結果に基づいて決定してもよい。
【0070】
図7は、
図6と同地域での一日における外壁に対する日射量の変化の一例を示すグラフである。
図7(a)は東壁の日射量の変化を示し、
図7(b)は南壁の日射量の変化を示し、
図7(c)は西壁の日射量の変化を示し、
図7(d)は北壁の日射量の変化を示している。
図7(a)〜(d)に示すグラフにおいて、横軸は時刻を表し、縦軸は日射量(MJ/m
2)を表している。
図7(a)〜(c)の3つのグラフで示すように、各外壁(東壁、南壁、西壁)に対する日射量が大きくなる時間帯は、概ね4〜5時間程度である。例えば、東壁に対する日射量が大きくなる時間帯(7時、8時、9時、10時の4時間)の日射量を積算すると約10.5MJ/m
2となる。一方、潜熱蓄熱材の潜熱量を150kJ/kgとし、密度を790kg/m
3とすると、当該潜熱蓄熱材の体積当たりの潜熱量は約120MJ/m
3となる。したがって、上記時間帯の東壁に対する日射量(約10.5MJ/m
2)を全て吸収するとすれば、東壁に設けられる潜熱蓄熱部材20(潜熱蓄熱材)の厚さは約8.7cm以上である必要がある。
【0071】
図8は、本実施の形態による潜熱蓄熱部材20の取付け方法の一例を示す図である。本例では、断熱部材10の外側に、室外側に凸となる複数のリブ40が固定して設けられている。各リブ40は鉛直方向に延伸しており、水平方向に所定間隔で配列している。複数の潜熱蓄熱部材20は、それぞれ一定サイズの平板状(例えば、長方形平板状又は正方形平板状)の形状を有している。各潜熱蓄熱部材20の幅はリブ40の間隔とほぼ等しい。各潜熱蓄熱部材20は、隣り合うリブ40間に嵌め込まれることによって断熱部材10に取り付けられる。なお、潜熱蓄熱部材20の厚さが薄い場合(例えば5mm程度)には、塗装と同様の手法で断熱部材10に取り付けるようにしてもよい。
【0072】
ここで、断熱及び蓄熱の考え方について説明する。断熱とは、熱の流れを阻止する能力のことをいう。建材として断熱材を用いるのに最適な気候は、年間を通じて温度が極端である気候(夏は極端に暑く、冬は極端に寒い気候)である。一方、年間を通じて温和な気候の地域で断熱材を用いると、建物内で発生した熱(照明、電気機器、人体などからの熱)を外に逃がし難くなる。このため、年間を通じて温和な気候の地域では断熱は不利となる。
【0073】
蓄熱とは、熱の流れを時間的に遅らせる能力のことをいう。建材として蓄熱材を用いるのに最適な気候は、一日の温度変化が大きい気候、又は年間を通じて暖房又は冷房の一方のみを必要とする気候である。一日における熱負荷(冷房負荷又は暖房負荷)のピークを時間的に遅らせることにより、冷房設備や暖房設備の能力を低くすることができるため、設備費を減少させることができる。また、連続運転により効率を向上させることができるため、運転費を減少させることができる。一方、使用頻度が低く温度変化が大きい建物で蓄熱材を用いると、制御に対する応答が遅くなるので、必要なときに必要な快適性を得るためには遅れを考慮した予測運転が必要になる。このため、このような建物では蓄熱は不利となる。
【0074】
上記実施形態では、相変化温度T1は、最低温度Tsmin及び最高温度Tsmaxの平均温度以下であることが望ましい(T1≦(Tsmin+Tsmax)/2)ことを説明したが、次に、相変化温度T1の最適条件について説明する。ここでは家屋の西側外壁に本実施形態を適用した場合で説明する。一般に西側外壁は窓が少なく壁からの入熱が大きいため本実施形態を適用する効果が大きいと考えられる。
【0075】
図9(a)は、東京の夏季の8月の晴天時であって東京に建築された家屋の西側外壁における気象データを示すグラフである。横軸は時の経過を表しており、左端に0時をとり右端に24時をとっている。左側の縦軸は気温(℃)を表している。右側の縦軸は日射量(W/m
2)を表している。グラフ中の実線で示すデータは外気温度Toutを示している。グラフ中の点線で示すデータは西側外壁での日射量を示している。
【0076】
図9(a)に例示する外気温度Toutでは、午前5時頃に当日の最低気温となる27.5℃を記録し、午前11時30分頃に当日の最高気温となる34.3℃を記録している。午前8時から午後9時30分まで気温が30℃を超えている。西側外壁面では、午前7時頃から日射量が増加し始め、午後1時頃に日射量が200W/m
2程度になっている。その後、日射量は午後5時頃までに720W/m
2にまで増加して、以降急速に0に低下している。
【0077】
図9(a)に示す気象データを用いて、日射による西側外壁の温度上昇を計算した。また、西側外壁温度と室温との温度差により、室内に流入する熱量を熱負荷として積算した。
図9(b)に計算モデルを示す。西側外壁は室内側から室外に向かってコンクリート(厚さ100mm)、断熱材(厚さ30mm)、蓄熱外壁(蓄熱部材:厚さ5mm)の順に張り合わされているものとする。室内の温度を室温Tin、室外の温度を外気温Tout、蓄熱外壁の温度を外壁温度Tsとし、蓄熱外壁の熱伝導率は、対流・放射による放熱を考慮して25W/(m
2/k)とした。
【0078】
蓄熱外壁に使用している潜熱蓄熱材の相変化温度として、27〜29℃、31〜33℃、35〜37℃、39〜41℃、43〜45℃、47〜49℃の6種類とした。また、潜熱蓄熱材として、有機系蓄熱材A、無機水和物B、蓄熱マイクロカプセルを分散させた無機水和物C、蓄熱石膏ボードDの4種類を想定した。有機系蓄熱材Aの単位体積当りの潜熱値は158MJ/m
3、熱伝導率は0.34W/(m・k)とした。無機水和物Bの単位体積当りの潜熱値は234MJ/m
3、熱伝導率は1.1W/(m・k)とした。蓄熱マイクロカプセルを分散させた無機水和物Cの単位体積当りの潜熱値は176MJ/m
3、熱伝導率は0.54W/(m・k)とした。蓄熱石膏ボードDの単位体積当りの潜熱値は55MJ/m
3、熱伝導率は0.22W/(m・k)とした。最低温度Tsminは、日中における最低の外気温度Toutにほぼ等しい温度(=27℃)である。また、最高温度Tsmaxは、太陽光の輻射熱によって西側外壁外表面が高温になったときの温度(=49℃)である。
【0079】
図10は計算結果を示すグラフである。縦軸は西側外壁から室内への入熱量比を表している。入熱量比は、西側外壁に蓄熱材がない場合の室内入熱量を100として示している。横軸は、左端に西側外壁に蓄熱材がない場合を表し、それより右側に相変化温度域を低温から高温に向かって、27〜29℃、31〜33℃、35〜37℃、39〜41℃、43〜45℃、47〜49℃ごとに示している。
図10において、点線の曲線Aは、有機系蓄熱材Aを潜熱蓄熱材に用いた蓄熱外壁の特性を示している。一点鎖線の曲線Bは、無機水和物Bを潜熱蓄熱材に用いた蓄熱外壁の特性を示している。実線の曲線Cは、蓄熱マイクロカプセルを分散させた無機水和物Cを潜熱蓄熱材に用いた蓄熱外壁の特性を示している。破線の曲線Dは、蓄熱石膏ボードDを潜熱蓄熱材に用いた蓄熱外壁の特性を示している。
【0080】
図10に破線の枠で示すように、4種類のいずれの蓄熱外壁も相変化温度域が35〜37℃において西側外壁から室内への入熱量比が最低となる。また、4種類のいずれの蓄熱外壁も相変化温度域が39〜41℃の場合は入熱量比が100を超えて室内への入熱量が急増する。このため、相変化温度T1は、最低温度Tsmin及び最高温度Tsmaxの平均温度近傍であることが望ましい(T1≒(Tsmin+Tsmax)/2)。
【0081】
図11(a)〜(e)は、
図9(a)に示す気象データを用いて、蓄熱材を備えた外壁の温度と蓄熱材を備えない外壁の温度を相変化温度の異なる6種類の蓄熱材毎に比較して示している。
図11の各図において、横軸は時の経過を表しており、左端に0時をとり右端に24時をとっている。左側の縦軸は温度(℃)を表している。右側の縦軸は日射量(W/m
2)を表している。グラフ中の点線で示すデータは外気温度Toutを示している。グラフ中の一点鎖線で示すデータは西側外壁での日射量を示している。また、実線で示すデータは蓄熱材を備えた外壁の温度を表し、破線は蓄熱材がない外壁の温度を表している。
【0082】
図11(a)は、相変化温度T1≒Tsminの場合(例えば、相変化温度T1が27〜29℃)を例示している。
図11(a)に示すように、午前7時から午前11時近くまでの期間において、外気温(点線)が28℃から34℃程度まで上昇するとともに日射量(一点鎖線)が50W/m
2から150W/m
2超まで増大するのに伴って、蓄熱材のない外壁の温度(破線)は、28℃から36℃程度まで上昇する。これに対し蓄熱材のある外壁の温度(実線)は、同期間において概ね28℃程度に維持されている。これにより、室内への熱流入を抑えることができる。午前11時以降は外気温が29℃を下回ることがなく相変化温度T1≒Tsminの蓄熱材は潜熱を利用した吸放熱をしないので、蓄熱材を備えた外壁と蓄熱材を備えない外壁とは外壁温度がほぼ同じとなる。
【0083】
図11(b)は、相変化温度T1≒(Tsmin+Tsmax)/2の場合(例えば、相変化温度T1が37〜39℃)を例示している。
図11(b)に示すように、午前11時過ぎに外壁温度が37℃になるまでは、蓄熱材を備えた外壁と蓄熱材を備えない外壁とは外壁温度がほぼ同じである。午前11時過ぎから午後6時少し手前までの期間において、外気温(点線)が34℃から31℃程度まで上昇するとともに日射量(一点鎖線)が160W/m
2から700W/m
2程度まで増大するのに伴って、蓄熱材のない外壁の温度(破線)は、37℃から47℃程度まで上昇する。これに対し蓄熱材のある外壁の温度(実線)は、同期間において概ね37℃から39℃程度に維持されている。これにより、室内への熱流入を抑えることができる。午後6時頃に蓄熱材は相変化温度を超えて顕熱吸熱となり温度は46℃程度まで急上昇するが日没とともに急激に日射量が低下するため再び相変化温度まで外壁の温度が低下する。その後、39℃から37℃を維持して午後11時近くまで潜熱放熱をする。このように、相変化温度T1が(Tsmin+Tsmax)/2の近傍となる蓄熱材を備えた外壁によれば、熱流入を最小限に抑えて消費エネルギーの日単位でのピークシフトを実現できる。
【0084】
図11(c)は、相変化温度T1>(Tsmin+Tsmax)/2の場合(例えば、相変化温度T1が45〜47℃)を例示している。
図11(c)に示すように、外壁温度が45℃となる午後4時頃までは、蓄熱材を備えた外壁と蓄熱材を備えない外壁とはほぼ同じように外壁温度が上昇する。午後4時過ぎから午後9時少し手前までの期間においては、蓄熱材を備えた外壁は相変化温度を維持しているので、蓄熱材を備えない外壁より外壁温度が高く維持される。このため、室内への熱流入は増加傾向となる。
【0085】
図11(d)は、相変化温度T1<Tsminの場合(例えば、相変化温度T1が25〜27℃)を例示している。また、
図11(e)は、相変化温度T1>Tsmaxの場合(例えば、相変化温度T1が47〜49℃)を例示している。いずれの場合も潜熱による吸放熱がないので、蓄熱材を備えた外壁は蓄熱材を備えない外壁と同様の温度変化となる。
【0086】
(実施例3)
上述の有機系蓄熱材Aとしてパラフィンを用いた場合の効果について述べる。
図9(a)に示した東京の夏期の気温・日射量データ(8月晴天日)を用い、西面外壁に本実施形態を使用した場合の屋内への入熱量をシミュレーションにより求めた。計算に用いた壁の断面構造は
図9(b)に示すのと同一であり、各部材の熱物性値は、先に示した値を用いた。パラフィンの厚さは5mmとし、相変化温度域に合わせて、炭素数18から22までのものから適宜選択して用いた。単位体積当りの潜熱値及び熱伝導率はそれぞれ、158MJ/m
3、0.34W/(m・K)とした。日射は外壁で50%反射されるとし、残りの日射量が熱に変わるとした。また、外壁は温度上昇時に、外気温との温度差により放射、対流により熱を放熱することを考慮し、その熱伝達率を25[W/m
2・K]とした。相変化温度域をTsmin(27℃)から2℃刻みでTsmax(49℃)まで変化させ、蓄熱材が無い場合の室内への入熱量を100とした場合の比率を求めた。
図10のグラフ中にプロットした点線の曲線Aがその結果である。T1<(Tsmin+Tsmax)/2までは概ね入熱量は減少傾向にあり、T1≒(Tsmin+Tsmax)/2付近では特に大きな省エネ効果(屋内への入熱量を10%削減)を得た。
【0087】
(実施例4)
本実施例の蓄熱材として無機水和物Bを用いた場合の効果について述べる。シミュレーションに用いたデータ、構造は蓄熱材以外は実施例3と同じである。無機水和物の厚さは5mmとし、相変化温度域に合わせて、前述の無機水和物材料を適宜選択して用いた。単位体積当たりの潜熱値及び熱伝導率はそれぞれ、234MJ/m
3、1.1W/(m・K)とした。日射は外壁で50%反射されるとし、残りの日射量が熱に変わるとした。また、外壁は温度上昇時に、外気温との温度差により放射、対流により熱を放熱することを考慮し、その熱伝達率を25[W/m
2・K]とした。相変化温度域をTsmin(27℃)から2℃刻みでTsmax(49℃)まで変化させ、蓄熱材が無い場合の室内への入熱量を100とした場合の比率を求めた。
図10のグラフ中にプロットした一点鎖線の曲線Bがその結果である。T1<(Tsmin+Tsmax)/2までは概ね入熱量は減少傾向にあり、T1≒(Tsmin+Tsmax)/2付近では特に大きな省エネ効果(屋内への入熱量を13%削減)を得た。
【0088】
(実施例5)
本実施例の蓄熱材として蓄熱マイクロカプセルを分散させた無機水和物を用いた場合の効果について述べる。シミュレーションに用いたデータ、構造は蓄熱材以外は実施例3と同じである。蓄熱マイクロカプセルは、例えばパラフィンを内包させる場合、
図24(a)に示すように、作製容器140中の水相141に、パラフィンとイソシアネートとが溶解又は分散している油相142を注入して激しく撹拌する。すると
図24(b)に示すように、水中油滴(O/W型)エマルジョン143が得られる。水中油滴エマルジョン143に、水溶性のアミン又は2価のアルコールと環動分子とが溶解又は分散している水溶液144を注入すると、油滴と水相との界面で、油滴内に溶けているイソシアネートと、水相中のアミン又は2価のアルコール及び環動分子との反応が起こる。当該反応により、蓄熱材料が溶解又は分散している油滴を囲むように壁物質が生成される。これにより、
図24(c)に示すようにマイクロカプセルスラリー145が生成される。マイクロカプセルスラリー145を濾過することにより、平均粒子径6μmの蓄熱マイクロカプセルを得た。この蓄熱マイクロカプセルを45wt%濃度で前述の無機水和物蓄熱材料中に分散させることで、蓄熱マイクロカプセル分散無機水和物を得た。
【0089】
蓄熱マイクロカプセルを分散させた無機水和物の厚さは5mmとし、相変化温度域に合わせて、前述のパラフィン及び無機水和物材料を適宜選択して用いた。単位体積当たりの潜熱値及び熱伝導率はそれぞれ、196MJ/m
3、0.5W/(m・K)とした。日射は外壁で50%反射されるとし、残りの日射量が熱に変わるとした。また、外壁は温度上昇時に、外気温との温度差により放射、対流により熱を放熱することを考慮し、その熱伝達率を25[W/m
2・K]とした。相変化温度域をTsmin(27℃)から2℃刻みでTsmax(49℃)まで変化させ、蓄熱材が無い場合の室内への入熱量を100とした場合の比率を求めた。
図10のグラフ中にプロットした実線の曲線Cがその結果である。T1<(Tsmin+Tsmax)/2までは概ね入熱量は減少傾向にあり、T1≒(Tsmin+Tsmax)/2付近では特に大きな省エネ効果(屋内への入熱量を10%削減)を得た。
【0090】
(実施例6)
本実施例の蓄熱材として蓄熱マイクロカプセルを分散させた無機水和物を用いた場合の効果について述べる。シミュレーションに用いたデータ、構造は蓄熱材以外は実施例3と同じである。蓄熱マイクロカプセルは、実施例5と同様の方法で作製した。この蓄熱マイクロカプセルを石膏ボード中に33wt%濃度で石膏ボード中に分散させることで、蓄熱と石膏ボードの両方の機能を有する部材を得た。
【0091】
蓄熱石膏ボードの厚さは5mmとし、相変化温度域に合わせて、前述のパラフィンを適宜選択して用いた。単位体積当たりの潜熱値及び熱伝導率はそれぞれ、55MJ/m
3、0.22W/(m・K)とした。日射は外壁で50%反射されるとし、残りの日射量が熱に変わるとした。また、外壁は温度上昇時に、外気温との温度差により放射、対流により熱を放熱することを考慮し、その熱伝達率を25[W/m
2・K]とした。相変化温度域をTsmin(27℃)から2℃刻みでTsmax(49℃)まで変化させ、蓄熱材が無い場合の室内への入熱量を100とした場合の比率を求めた。
図10のグラフ中にプロットした破線の曲線Dがその結果である。T1<(Tsmin+Tsmax)/2までは概ね入熱量は減少傾向にあり、T1≒(Tsmin+Tsmax)/2付近では特に大きな省エネ効果(屋内への入熱量を4%削減)を得た。
【0092】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態による潜熱蓄熱部材及びそれを備えた建材について
図12及び
図13を用いて説明する。
図12は、本実施の形態による潜熱蓄熱部材20及びそれを備えた壁材2の模式的な断面構成を示している。
図12において、左方は室内側を表しており、右方は室外側を表している。また、
図12に示す壁材2は、住宅等の建物のうち、太陽光が照射され得る方向を向いた外壁に用いられる。なお、第1の実施の形態の潜熱蓄熱部材及び建材と同一の機能及び作用を有する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0093】
図12に示すように、壁材2は、潜熱蓄熱部材20と、潜熱蓄熱部材20の内側(室内側)に配置される断熱部材10と、断熱部材10のさらに室内側に配置される別の潜熱蓄熱部材50とが積層された構成を有している。すなわち、壁材2は、第1の実施の形態の壁材1の構成に加えて、断熱部材10の室内側に別の潜熱蓄熱部材50を有している。断熱部材10及び潜熱蓄熱部材20、50はそれぞれ平板状の形状を有している。潜熱蓄熱部材20の室外側には、外壁材30が配置されている。第1の実施の形態と同様に、外壁材30の外側表面の温度は、潜熱蓄熱部材20の外側表面20bの温度とほぼ等しいものとする。
【0094】
潜熱蓄熱部材50は、潜熱蓄熱部材20と同様に、潜熱蓄熱材が所定のフィルムで密封された構成を有している。潜熱蓄熱部材50の外側表面は、断熱部材10の内側表面と接触又は近接している。潜熱蓄熱部材50(潜熱蓄熱材)は、潜熱蓄熱部材50の相変化温度T1よりも低い相変化温度(融点)T2を有している(T1>T2)。言い換えれば、壁材2は、断熱部材10と、断熱部材10の一方の表面側に積層され、所定の相変化温度T1を有する潜熱蓄熱部材20と、断熱部材10の他方の表面側に積層され、相変化温度T1とは異なる相変化温度T2を有する別の潜熱蓄熱部材50とを備えている。潜熱蓄熱部材50の相変化温度T2は、示差走査熱量計を用いて測定することができる。本例の潜熱蓄熱部材50は、潜熱蓄熱部材20と同様に、パラフィンとゲル化剤を含む材料で形成された潜熱蓄熱材が所定のフィルムで密封された構成を有している。
【0095】
図13は、夏季の日中のある時点における壁材2等の温度勾配の一例を示している。
図13において、左方は室内側を表しており、右方は室外側を表している。縦方向は温度を表している。第1の実施の形態と同様に、潜熱蓄熱部材20の相変化温度T1が外気温度Toutと表面温度Tsとの間の温度範囲にあるため、日射によって潜熱蓄熱部材20の外側表面20bの温度Tsが上昇したとしても、潜熱蓄熱部材20の内部に伝達した熱は、当該潜熱蓄熱部材20が固相から液相に相変化する際の融解熱として吸熱される。したがって、室外から室内への入熱を防ぐことができ、室内の温度上昇を抑制することができる。また、第1の実施の形態と同様に、天候が晴れから曇りに変化した後、又は日没後には、表面温度Tsは、潜熱蓄熱部材20の相変化温度T1よりも低い外気温度Tout付近まで低下する。したがって、潜熱蓄熱部材20に融解熱として蓄積された熱は、当該潜熱蓄熱部材20が液相から固相に相変化する際の凝固熱として室外に放出される。
【0096】
また、潜熱蓄熱部材50の相変化温度T2は、室内温度Tinの温度変動範囲内(例えば、室内の冷房設備の設定温度範囲内)に設定されている。これにより、潜熱蓄熱部材50は、室内温度Tinが相変化温度T2より低くなると、潜熱蓄熱部材50は、室内空気との熱交換により温度が低下して凝固し、室内に凝固熱を放出する。一方、室内温度Tinが相変化温度T2より高くなると、潜熱蓄熱部材50は、室内空気との熱交換により温度が上昇して融解し、室内から融解熱を吸収する。言い換えれば、潜熱蓄熱部材50は、室内温度Tinが相変化温度T2より低くなると室内から冷熱を吸収し、室内温度Tinが相変化温度T2より高くなると室内に冷熱を放出する。したがって、室内の温度は、断熱部材10よりも内側に設けられた潜熱蓄熱部材50によってほぼ一定に保たれる。
【0097】
また、相変化温度が互いに異なる潜熱蓄熱部材50と潜熱蓄熱部材20との間には断熱部材10が設けられているため、相変化温度T2と相変化温度T1との間の温度差によって潜熱蓄熱部材50及び潜熱蓄熱部材20のそれぞれの蓄熱効率が低下するのを防ぐことができる。
【0098】
本発明は、上記実施の形態に限らず種々の変形が可能である。
例えば上記実施の形態では、潜熱蓄熱部材20を壁材1、2に適用した例を挙げたが、本発明はこれに限らず、日射によって表面温度が上昇し得る他の建材(例えば屋根材)にも適用できる。
【0099】
また上記実施の形態では、液相状態で流動性を有しないゲル状の潜熱蓄熱材を例に挙げたが、本発明はこれに限らず、液相状態で流動性を有する潜熱蓄熱材を用いることもできる。また、潜熱蓄熱材として有機材料のパラフィンを例に挙げたが、無機の水和塩を用いてもよい。無機の水和塩を用いた潜熱蓄熱材には可燃性がないため、建築基準法での可燃材に関する制約を受けなくなる。したがって、潜熱蓄熱部材の配置の自由度を高めることができる。
【0100】
また上記実施の形態では、潜熱蓄熱部材20を断熱部材10や別の潜熱蓄熱部材50等と積層した構成を有する壁材1、2を例に挙げたが、本発明はこれに限らず、単層の潜熱蓄熱部材20からなる壁材(建材)や、潜熱蓄熱部材20と外壁材30とを積層した構成を有する壁材(建材)にも適用できる。
【0101】
[第3の実施の形態]
本発明の第3の実施の形態によるマイクロカプセル100及びそれを用いた蓄熱材105について、
図14乃至
図27を用いて説明する。なお、以下の全ての図面においては、理解を容易にするため、各構成要素の寸法や比率などを適宜異ならせて図示している。
図14は、本実施の形態によるマイクロカプセル100の概略断面図である。
【0102】
マイクロカプセル100は、球形状を有している。マイクロカプセル100は、芯物質として、蓄熱材料110を有している。本実施の形態では、蓄熱材料110に有機材料又は無機材料を用いることができる。有機材料を用いた蓄熱材料110として例えばパラフィンが挙げられる。パラフィンは、一般式C
nH
2n+2で表される飽和鎖式炭化水素の総称である。また、有機材料を用いた蓄熱材料110として脂肪酸、高級アルコール、アルデヒド、エステル系の材料も挙げられる。また、無機材料を用いた蓄熱材料110として例えば水又は水に無機塩を添加した無機塩水溶液が挙げられる。無機塩には、例えば、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カルシウム(CaCl
2)、塩化マグネシウム(MgCl
2)、塩化アンモニウム(NH
4Cl)又は塩化カリウム(KCl)等が用いられる。
【0103】
蓄熱材料110は、所定の相変化温度で固相及び液相間で可逆的に相変化する。蓄熱材料110に単一のパラフィンを用いる場合、相変化温度はパラフィンの炭素数nによって異なる。また、蓄熱材料110に2種以上のパラフィンの混合物を用いる場合、混合比を変えることによって相変化温度を調整することが可能である。例えば、蓄熱材料に炭素数14のテトラデカンを用いる場合、相変化温度を6℃にすることができる。また、蓄熱材料にテトラデカンと炭素数が14より多いパラフィンとの混合物を用いる場合、相変化温度を6℃より高くすることができる。また、蓄熱材料110に水を用いる場合、相変化温度を0℃にすることができる。また、蓄熱材料110に無機塩水溶液を用いる場合、相変化温度を0℃より低くすることができる。
【0104】
また蓄熱材料110は、相変化時に体積が変化する。例えば、パラフィンを用いた蓄熱材料110は、固相から液相に相変化すると体積膨張し、液相から固相に相変化すると体積収縮する。また、例えば、水や無機塩水溶液を用いた蓄熱材料110は、固相から液相に相変化すると体積収縮し、液相から固相に相変化すると体積膨張する。
【0105】
マイクロカプセル100は、蓄熱材料110を内包する壁物質120を有している。壁物質120は、マイクロカプセル100のカプセル壁となる。本実施の形態において、壁物質120は、ポリウレア又はポリウレタンにより構成されている。
図15及び
図16を用いて、壁物質120に用いられるポリウレア又はポリウレタンについて説明する。
【0106】
図15は、ポリウレアが生成されるポリウレア反応を示している。ポリウレアは、2個のイソシアネート基とR
1基とを含むイソシアネートと、2個のアミン基とR
2基とを含むアミンとが付加重合することにより生成される。具体的には、イソシアネート基とアミン基とが付加反応し、R
1基とR
2基とがウレア結合により連結されて、ポリウレアが生成される。
【0107】
本実施の形態では、イソシアネートとして、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、トルエンー2,4,6−トリイソシアネート、ジフェニルメタンー4,4’−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのイソシアネートモノマーが用いられる。また、イソシアネートとして、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等のイソシアネートオリゴマー又はイソシアネートポリマーも用いられる。さらに、イソシアネートとして、ヘキサメチレンイソシアネートと、トリメチロールプロパンとの付加物、トリレンジイソシアネートと、ヘキサントリオールとの付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット付加物、イソシアネートモノマー、イソシアネートオリゴマー又はイソシアネートポリマーのポリオール変性体やカルボジイミド変性体等が用いられる。
【0108】
また、本実施の形態では、アミンとして、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ジアミノブタン、ヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、4−アミノメチルオクタメチレンジアミン、3,3’−イミノビス(プロピルアミン)、3,3’−メチルイミノビス(プロピルアミン)、ビス(3−アミノプロピル)エテール、1,2−ビス(3−アミノプロピルオキシ)エタン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビスアミノメチルノルボルナン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等を用いることができる。また、アミンとして、m−キシリレンジアミン、テトラクロロ−p−キシリレンジアミン等の芳香族置換基を有する脂肪族ポリアミンを用いることができる。
【0109】
図16は、ポリウレタンが生成されるポリウレタン反応を示している。ポリウタンは、2個のイソシアネート基とR
1基とを含むイソシアネートと、2個のヒドロキシル基とR
3基とを含む2価のアルコールとが付加重合することにより生成される。具体的には、イソシアネート基とヒドロキシル基とが付加反応し、R
1基とR
3基とがウレタン結合により連結されて、ポリウレタンが生成される。
【0110】
本実施の形態では、R
3基を含む2価のアルコールとして、例えば、エチレンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジオール、ジエチレントリオール、4−アミノメチルオクタメチレンジオール等を用いることができる。
【0111】
次に
図17を用いて、本実施の形態によるマイクロカプセル100の壁物質120内に導入される環動分子130について説明する。
図17は、環動分子130の構造を示す模式図である。環動分子130は、直鎖状分子132(例えば、ポリエチレングリコール、ポリカプロラクトン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン又はポリプロピレンのうちから選択される少なくとも一種の化合物)と、直鎖上分子132を包接する複数の環状分子134(例えば、α−シクロデキストリン類、β−シクロデキストリン類又はγ−シクロデキストリン類のうちから選択される少なくとも一種のシクロデキストリン類)と、直鎖状分子132の両末端に配置される2個の封鎖基136(例えば、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオロセイン基類又はピレン類のうちから選択される少なくとも一種の化合物)とを有している。
図17に示す例では、直鎖状分子132は、5つの環状分子134に包接されている。これらの環状分子134は、直鎖状分子132の延伸方向に自由に動くことができる。環状分子134は、直鎖状分子132の両末端に配置される2個の封鎖基136により、直鎖状分子132から抜けないようになっている。
【0112】
環動分子130は、直鎖状分子132に多数の環状分子134が通った分子集合体構造を有している。このような分子集合体構造を備えた高分子は、ポリロタキサンと呼ばれる。本実施の形態で用いられる環動分子130は、直鎖状分子132、環状分子134及び封鎖基136で構成されるポリロタキサンである。
【0113】
環動分子130は、環状分子134にヒドロキシル基又はアミン基の官能基を有している。壁物質120を構成するポリウレア又はポリウレタンと環動分子130とは、ポリウレア又はポリウレタンのポリマー鎖と環状分子134により連結される。ポリウレア又はポリウレタンのポリマー鎖と環状分子134との連結部分は架橋点となる。環状分子134は、直鎖状分子132の延伸方向に自由に動くことができるため、架橋点は自由に動くことができる。このため、壁物質120の張力が均等になる位置に架橋点を移動させて、壁物質120内の応力を均一にすることができる。これにより、壁物質120に大きな応力が局所的に作用することを防ぎ、壁物質120の耐久性を向上させることができる。
【0114】
直鎖状分子132には、例えば、ポリエチレングリコール又はポリカプロラクトンが用いられる。ヒドロキシル基を備えた環状分子134には、例えば、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン又はγ−シクロデキストリンのうちから選択される少なくとも1種のシクロデキストリンが用いられる。アミン基を備えた環状分子134には、例えば、アミノ化したシクロデキストリン又は環状アミドが用いられる。封鎖基136には、例えば、アダマンタン基が用いられる。
【0115】
次に、
図18及び
図19を用いて、本実施の形態によるマイクロカプセル100の壁物質120についてより詳細に説明する。
図18及び
図19は、壁物質120を拡大して見た模式図である。
図18では、蓄熱材料110(
図18では不図示)が体積収縮している場合の壁物質120の状態を示している。
図18に示すように、壁物質120は、ポリウレア又はポリウレタンのポリマー鎖122と環動分子130とを有している。環動分子130は、ポリマー鎖122の間隙に配置されている。
【0116】
ポリマー鎖122と1個の環状分子134とは、化学結合(ウレア結合又はウレタン結合)により連結されている。ポリマー鎖122と環動分子130の1個の環状分子134との連結部分が架橋点124になっている。
図18に示す例では、紙面に向かって、上から2番目の環状分子134が左側のポリマー鎖と架橋されており、下から2番目の環状分子134が右側のポリマー鎖122と架橋されている。
【0117】
図18に示す状態から、蓄熱材料110が相変化に伴い体積膨張したとする。この場合の壁物質120の状態について
図19を用いて説明する。
図19に示すように、壁物質120に内包されている蓄熱材料110(
図19では不図示)が体積膨張すると、ポリマー鎖122がカプセル壁の壁面の面内方向に移動し、ポリマー鎖122の間隙が広がる。
図19に示す例では、紙面に向かって右側のポリマー鎖122が面内方向右側に移動し、左側のポリマー鎖122が面内方向左側に移動する。また、ポリマー鎖122の移動に伴い、架橋点124が移動する。架橋点124の移動により、環状分子134が移動する。環状分子134は、封鎖基136により直鎖状分子134に封鎖されているので、環状分子134の移動に伴い直鎖状分子132が面内方向に引っ張られる。
【0118】
ポリマー鎖122の間隙が広がると架橋点124は、ポリマー鎖122の張力が均等になるような位置に移動する。架橋点124が移動することにより、壁物質120内の応力の不均一性を分散させることができる。また、自由に移動する架橋点124により、壁物質120内の高分子の分子鎖や架橋点の切断を防ぐことができる。
【0119】
次に、
図18及び
図19を参照しつつ、
図20乃至
図23を用いて、本実施の形態による壁物質120の生成時の反応例について説明する。まず、
図20を用いて、ポリウレアを用いた壁物質120にヒドロキシル基を備えた環動分子130が導入される場合の反応例について説明する。
図20は、2個のイソシアネート基とR
1基とを含むイソシアネートと、2個のアミン基とR
2基とを含むアミンと、2個のヒドロキシル基とR
4基とを備えた環動分子130とが付加重合する反応式を示している。R
4基は、
図18及び
図19に示す、直鎖状分子132と環状分子134と封鎖基136とを有している。R
4基と結合している2個のヒドロキシル基は、
図18及び
図19に示す環状分子134に備えられている。
【0120】
図20に示すように、イソシアネート基とアミン基とが付加反応して、R
1基とR
2基とがウレア結合により連結される。また、イソシアネート基とヒドロキシル基とが付加反応して、R
1基とR
4基とがウレタン結合により連結される。
【0121】
このように、イソシアネート基と環状分子134のヒドロキシル基とが付加反応して、ウレタン結合によりポリウレアと環動分子130とが連結される。ウレタン結合部分は、ポリウレアと環動分子130とが架橋される架橋点124となる。
【0122】
次に
図21を用いて、ポリウレアを用いた壁物質120にアミン基を備えた環動分子130が導入される場合の反応例について説明する。
図21は、2個のイソシアネート基とR
1基とを含むイソシアネートと、2個のアミン基とR
2基とを含むアミンと、2個のアミン基とR
4基とを備えた環動分子130とが付加重合する反応式を示している。R
4基と結合している2個のアミン基は、
図18及び
図19に示す環状分子134に備えられている。
【0123】
図21に示すように、イソシアネート基とアミン基とが付加反応して、R
1基とR
2基とがウレア結合により連結される。また、イソシアネート基とアミン基とが付加反応して、R
1基とR
4基とがウレア結合により連結される。
【0124】
このように、イソシアネート基と環状分子134のヒドロキシル基とが付加反応して、ウレア結合によりポリウレアと環動分子130とが連結される。ウレア結合部分は、ポリウレアと環動分子130とが架橋される架橋点124となる。
【0125】
次に、
図22を用いて、ポリウレタンを用いた壁物質120にヒドロキシル基を備えた環動分子130が導入される場合の反応例について説明する。
図22は、2個のイソシアネート基とR
1基とを含むイソシアネートと、2個のヒドロキシル基とR
3基とを含むアルコールと、2個のヒドロキシル基とR
4基とを備えた環動分子130とが付加重合する反応式を示している。R
4基と結合している2個のヒドロキシル基は、
図18及び
図19に示す環状分子134に備えられている。
【0126】
図22に示すように、イソシアネート基とヒドロキシル基とが付加反応して、R
1基とR
3基とがウレタン結合により連結される。また、イソシアネート基のヒドロキシル基とが付加反応して、R
1基とR
4基とがウレタン結合により連結される。
【0127】
このように、イソシアネート基と環状分子134のヒドロキシル基とが付加反応して、ウレタン結合によりポリウレアと環動分子130とが連結される。ウレタン結合部分は、ポリウレアと環動分子130とが架橋される架橋点124となる。
【0128】
次に
図23を用いて、ポリウレタンを用いた壁物質120にアミン基を備えた環動分子130が導入される場合の反応例について説明する。
図23は、2個のイソシアネート基とR
1基とを含むイソシアネートと、2個のヒドロキシル基とR
3基とを含むアルコールと、2個のアミン基とR
4基とを備えた環動分子130とが付加重合する反応式を示している。R
4基と結合している2個のアミン基は、
図18及び
図19に示す環状分子134に備えられている。
【0129】
図23に示すように、イソシアネート基とヒドロキシル基とが付加反応して、R
1基とR
3基とがウレタン結合により連結される。また、イソシアネート基とアミン基とが付加反応して、R
1基とR
4基とがウレア結合により連結される。
【0130】
このように、イソシアネート基と環状分子134のアミン基とが付加反応して、ウレア結合によりポリウレアと環動分子130とが連結される。ウレア結合部分は、ポリウレアと環動分子130とが架橋される架橋点124となる。
【0131】
環状分子134は、壁物質120を構成するポリマー鎖122とウレア結合又はウレタン結合により連結している。具体的には、
図20乃至
図23に示すように、環状分子134は、ポリマー鎖122に含まれるR
1基とウレア結合又はウレタン結合により連結している。
【0132】
次に、本実施の形態によるマイクロカプセル100の作製方法について
図24乃至
図26を用いて説明する。本実施の形態によるマイクロカプセル100は、化学的技法や物理化学的手法により作製される。化学的技法には、界面重合法、界面反応法、界面乳化法などが挙げられる。物理化学的手法には、コアセルベーション法、界面ゲル化反応法、電気乳化法などが挙げられる。まず、
図24及び
図25を用いて、化学的技法によるマイクロカプセル100の作製方法について、界面重合法を一例に挙げて説明する。
図24及び
図25は、界面重合法を用いたマイクロカプセル100の作製方法を示す模式図である。
【0133】
まず、
図24を用いて、油溶性の有機材料を蓄熱材料に用いたマイクロカプセル100の作製方法について説明する。まず、
図24(a)に示すように、作製容器140中の水相141に、蓄熱材料とイソシアネートとが溶解又は分散している油相142を注入して激しく撹拌する。すると、
図24(b)に示すように、水中油滴(O/W型)エマルション143が得られる。水中油滴エマルション143に、水溶性のアミン又は2価のアルコールと環動分子とが溶解又は分散している水溶液144を注入すると、油滴と水相との界面で、油滴内に溶けているイソシアネートと、水相中のアミン又は2価のアルコール及び環動分子との反応が起こる。当該反応により、蓄熱材料が溶解又は分散している油滴を囲むように壁物質が生成される。これにより、
図24(c)に示すように、マイクロカプセルスラリー145が生成される。マイクロカプセルスラリー145を濾過することにより、マイクロカプセル100が作製される。
【0134】
次に、
図25を用いて、水溶性の無機材料を蓄熱材料に用いたマイクロカプセル100の作製方法について説明する。
図25は、コアセルベーション法を用いたマイクロカプセル100の作製方法を示す模式図である。まず、
図25(a)に示すように、作製容器140中の油相146に、水溶性の蓄熱材料と、アミン又は2価のアルコールと、環動分子とが溶解又は分散している水溶液147を注入して激しく撹拌する。すると、
図25(b)に示すように、油中水滴(W/O型)のエマルション148が得られる。油中水滴エマルション148に、イソシアネートが溶解又は分散している油相149を注入すると、水滴と油相との界面で、水滴内に溶けているアミン又は2価のアルコール及び環動分子と、油相中のイソシアネートとの反応が起こる。当該反応により、蓄熱材料が溶解又は分散している水滴を囲むように壁物質が生成される。これにより、
図25(c)に示すように、マイクロカプセルスラリー150が生成される。マイクロカプセルスラリー150を濾過することにより、マイクロカプセル100が作製される。
【0135】
次に、
図26を用いて、物理化学的手法によるマイクロカプセル100の作製方法について、コアセルベーション法を一例に挙げて説明する。
図26は、コアセルベーション法によるマイクロカプセル100の作製方法を示す模式図である。まず
図26(a)に示す作製容器140中の油相151に壁物質を形成する物質を溶解しておく。本実施の形態では、壁物質を形成する物質は、環動分子が導入されたポリウレア又はポリウレタンである。この油相151に、芯物質となる水溶性の蓄熱材料が溶解した水相152を注入して激しく撹拌する。すると、
図26(b)に示すように、油中水滴(W/O型)エマルション153が得られる。油中水滴エマルション153に壁物質を形成する物質をよく溶かすことのできない貧溶媒154を注入する。これにより、壁物質を形成する物質の溶解度が低下するため、当該物質が微小水滴を取り囲むように析出して、
図26(c)に示すように、マイクロカプセルスラリー155が生成される。マイクロカプセルスラリー155を濾過することにより、水溶性の蓄熱材料を内包したマイクロカプセル100が作製される。
【0136】
コアセルベーション法では、貧溶媒154をエマルション153に注入しなくてもマイクロカプセル100を生成できる。この場合には、エマルション153の温度を下げて壁物質を形成する物質の溶解度を低下させると、微小水滴を取り囲むように当該物質が析出する。これにより、マイクロカプセル100が作製される。
【0137】
ここで、特許文献1には、蓄熱材料となる芯物質の周囲に、ラジカル重合によって得られ、分子中に親水性の側鎖を含む熱可塑性樹脂を主成分とするカプセル壁が形成された蓄熱用マイクロカプセルが記載されている。この蓄熱用マイクロカプセルは、縦横の引っ張り応力に弱い。このため、蓄熱材料が相変化に伴い体積膨張又は体積収縮すると、カプセル壁が破裂していまい、蓄熱材料が漏洩してしまう。
【0138】
また、特許文献2には、蓄熱材料を内包し、多価イソシアネート化合物と高分子アミン化合物とを反応させて得られた樹脂をマイクロカプセル皮膜に用いた蓄熱材マイクロカプセルが記載されている。この蓄熱材カプセルにおいても、蓄熱材料が体積膨張又は体積収縮することに対するマイクロカプセル皮膜への対策はなされていない。また、マイクロカプセル被膜にポリアミンを用いるので、光による黄変が生じてしまう。
【0139】
このように、従来のマイクロカプセルには、蓄熱材料が相変化に伴い体積変化すると、壁物質を構成する高分子の絡みが弱くなり、壁物質が壊れてしまうという問題が生じている。
【0140】
一方、本実施の形態によるマイクロカプセル100は、壁物質120内に導入された環動分子130を有している。壁物質120は、ポリウレア又はポリウレタンの組成をそのままにして、一部に環動分子130を導入することにより伸縮性を有している。このため、マイクロカプセル100は、蓄熱材料110の体積変化に伴う壁物質120の形状変化に対応でき、壁物質120のネットワーク構造を保つことができる。これにより、マイクロカプセル100は、壁物質120の破壊となる隙間が生じ難く、蓄熱材料が漏洩を防ぐことができる。
【0141】
また、マイクロカプセル100は、壁物質120に高分子アミンを用いずに生成することができる。このため、本実施の形態によるマイクロカプセル100は、光による黄変を防ぐことができる。
【0142】
また、特許文献の国際公開WO01/083566号には、環状分子同士を架橋させた架橋ポリロタキサンが記載されている。しかしながら、当該文献にはポリロタキサン(環動分子)を用いたマイクロカプセルに関する記載はない。本実施の形態によるマイクロカプセル100は、環動分子130を壁物質120内に導入することにより、壁物質120の耐久性を向上させている。
【0143】
環動分子が導入された高分子材料で生成された製品の圧縮永久歪は0.7%であることが知られている。一方で、環動分子が導入されない高分子材料で生成された製品の圧縮永久歪は30%であることが知られている。このように、環動分子が導入された高分子材料を用いることで、圧縮永久歪を大幅に低減することができる。このため、本実施の形態によるマイクロカプセル100は、蓄熱材料110の体積変化が繰り返し生じても、壁物質120の形状変化に対応することができる。
【0144】
(実施例)
次に、本実施の形態によるマイクロカプセル100を用いた蓄熱材105について説明する。
図27は、本実施の形態による蓄熱材105の断面図である。
図27に示すように、本実施の形態による蓄熱材105は、容器115と、容器115内に充填された無機塩水溶液118と、無機塩水溶液118中に分散されたマイクロカプセル100とを有している。
【0145】
容器115は、直方体状の外形状を有する中空の箱体である。容器115は、例えば、ABSやポリカーボネート等の樹脂材料により形成されている。容器115内には、無機塩水溶液118が充填されている。無機塩水溶液118には、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、塩化カルシウム水溶液、塩化マグネシウム水溶液、塩化アンモニウム水溶液又は塩化カリウム水溶液等が用いられる。無機塩水溶液中には、多数のマイクロカプセル100が分散されている。本実施例において、マイクロカプセル100は、水に不溶な有機材料を用いた蓄熱材料を有している。
【0146】
本実施例による蓄熱材105は、多数のマイクロカプセル100を有している。これにより、蓄熱材105は、表面積を大きくして、熱伝導率を向上させることができる。また、マイクロカセル100の壁物質には、環動分子が導入されている。これにより、マイクロカプセル100は、内包する蓄熱材料の漏洩を防ぐことができる。
【0147】
本発明は、上記実施の形態に限らず種々の変形が可能である。
上記実施の形態の蓄熱材105では、無機塩水溶液118中にマイクロカプセル100を分散させているが、本発明はこれに限られない。
例えば、エチレングリコール又はポリエチレングリコールを添加した水溶液中にマイクロカプセルを分散させてもよい。
【0148】
また、上記実施の形態の蓄熱材105では、有機材料を用いた蓄熱材料をマイクロカプセル100に内包させているが、本発明はこれに限られない。
例えば、無機材料を用いた蓄熱材料をマイクロカプセル100に内包させてもよい。
【0149】
また上記の各実施の形態や変形例は、互いに組み合わせて実施することが可能である。