特許第6035543号(P6035543)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6035543
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】風車動力装置
(51)【国際特許分類】
   F03D 7/06 20060101AFI20161121BHJP
   F03D 9/20 20160101ALI20161121BHJP
【FI】
   F03D7/06 C
   F03D9/20
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-180086(P2011-180086)
(22)【出願日】2011年8月22日
(65)【公開番号】特開2013-44228(P2013-44228A)
(43)【公開日】2013年3月4日
【審査請求日】2014年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000189589
【氏名又は名称】上野 康男
(72)【発明者】
【氏名】上野 康男
【審査官】 鈴木 貴雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−032468(JP,A)
【文献】 特開昭57−083672(JP,A)
【文献】 実開昭55−12038(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0020123(US,A1)
【文献】 米国特許第4494007(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 7/06
F03D 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材上の軸受部には風車の回転軸が鉛直軸線上で回転自在に支持され、該回転軸の下端はベース部材に固着された軸受プレートによって重力荷重が支持され滑らかに回転するごとく構成されている。複数の回転翼は航空機の翼型断面に類似する断面形状を有し、回転軸の周りにハブ部材を介して固定されている。また、回転軸にはアルミニュームなどの非磁性体の導電体材料で形成された円形部材が固着されており、軸受部の外周に回転自在に支持されたプレートには、風
の方向によってプレートを回転するための風見板と、風力抵抗によって移動する抵抗板を有するスライド板がローラーを介して円形部材の半径方向に移動可能に支持され、該スライド板にはマグネットとヨークが円形部材を挟む高さで設けられている。該マグネットとヨークはヨークユニットを構成し、該ヨークユニットによるスリット状の磁路がスライド板の動きによって円形部材を厚さ方向に通過する位置から該磁路が円形部材の外周より外側を通過する位置に移動可能な如く構成されており、スプリングによって該磁路が円形部材の外周より外側を通過する位置にスライド板を移動する方向に付勢されている如く構成されたことを特徴とする風車動力装置。
【請求項2】
回転軸に固定された出力ギヤーに係合して水平軸周りに回転する従動ギヤーには、偏芯軸とバランサーが取り付けられ、偏芯軸には主振り回し運動部が回転自在に嵌め合わせられており、該主振り回し運動部には複数の副振り回し運動部が夫々水平な軸の周りに回転自在に取り付けられたごとく構成したことを特徴とする請求項1記載の風車動力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風車を利用した動力装置に関するものであり、主に電気装置を使用しない簡便な機械的な動力を供給する為に有効な風車動力装置に関するものである。 但し、もちろん発電用の動力として利用することを否定するものではない。
【背景技術】
【0002】
化石燃料の燃焼によるCO2の増加が問題とされる現在、自然エネルギーの利用が叫ばれているが、風力発電に関しては実用的に有効なものは1メガワットクラスの大型風車であり、小型風車の利用はなかなか拡大しない。その理由の一つとして風速の変化が大きく、風車の回転動力が風速の3乗に比例して極めて大きく変化するために発電装置として利用する為には、それを安定化するために複雑な付帯装置が必要となり、本来安価に得られる筈の自然エネルギーのコストが嵩み実用性を損なっている。
【0003】
一方で安価であればそれほど正確さを必要としない動力としての風車の利用価値は大きい。水の浄化装置のポンプを駆動する動力、公園のモニュメント用の動力としてまた、現在動かない農業用のカカシを風車の動力で動かすことができれば鳥や猿などを追い払う能力も向上する。このように多少の変動が許容される動力源としての安価な動力装置が求められている。
【0004】
自然エネルギーの利用においては、コスト的な問題と環境に関する配慮が充分でない方式のものに対する評価は厳しいものであり、これらの欠点が改良されることが普及の為の必須条件である。
【0005】
風力発電装置としては先ず騒音対策が必要であることと強風時に安全に停止できることが重要である。騒音対策としては回転翼に細かい筋目を入れたプロペラ型のものがある。
また、制動機構としては回転軸にモータ様の発電機をとりつけ、このコイルに流す電流を変化させる方式のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−183598号公報
【特許文献2】特開2011−112013号公報 前者は高速回転するプロペラ型の風車において効果のあるものであり、比較的大きなトルクを要求される上記の動力用風車についてはあまり有効ではない。また、後者はモータ様の発電機の組み込みが必要であり、その電流の制御にも特定の装置を必要とするために比較的高価となり、上記用途に適するものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、安価な動力としての風車の普及を妨げている騒音の問題と高価な制動機構を、比較的低速で回転する垂直軸風車に設けた安全で安価な制動機構により解決して利用範囲を大幅に拡大しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の風車動力装置が上記課題を解決する第1の手段は、風車の回転軸に設けた非磁性体で導電性の円形部材と、永久磁石によるスリット状の磁路を形成するヨークユニットを設け、上記円形部材とヨークユニットの相対位置を移動することによってスリット状の磁路内を円形部材が通過するごとくし、このことによって生ずる渦電流の負荷によって制動力を得るごとくなした風車動力装置を提供するものである。
【0009】
本発明の風車動力装置が上記課題を解決する第2の手段は、上記円形部材に対して相対的に移動するヨークユニットを、風見効果を有し強風でスライドするスライド板上に設け、強風時に該スライド板がスライドすることによってスリット状の磁路内を円形部材が通過するごと構成した風車動力装置を提供するものである。
【0010】
本発明の風車動力装置の上記課題を解決する第3の手段は、風車の回転速度の変動を逆に利点として効果を得るものであり、風車の回転によって駆動される水平軸に偏芯軸を取り付け、該偏芯軸によって振り回し運動が伝えられる人形を踊らせるごとく構成されたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果は主に垂直軸風車を用いる為に騒音は低く保たれる。因みに空気の流れによる騒音レベルは相対風速の5乗から9乗に比例するといわれている。回転速度が2倍になれば騒音は32倍から512倍にもなる。従って比較的低速で回転する垂直軸方風車を利用することで騒音の問題は基本的に解決する。また、非磁性体で導電性の円形部材と永久磁石の間に接触は無く又、吸引力も働かないので機械的なブレーキと異なり摩擦による損傷は無く、相対位置を変化させるための力は小さく動作は容易である。従って第2の手段に述べたごとき構造において風の強さに応じたヨークユニットの作動は容易であり又確実である。本発明の風車動力装置は回転速度を制限することで強風時に過大な回転速度となって、その遠心力などによって破損することを防止する事が出来、いわゆるソリディティーの小さなタイプであれば、風によって働く抵抗が回転時より大幅に減少し支持ポールの倒壊等の故障を未然に防ぐことができる。
尚、高速で回転する風車に機械的なブレーキ又は電磁効果によるコイル電流の短絡などによる制動は前者における機械的な磨耗、及び後者におけるコイルの過熱、コストアップなどの課題を有するものであるが、回転速度が遅くなった風車の回転を停止するための機械的ブレーキは大きな磨耗を伴うものではなく、これを併用してもよいことは言うまでもない。また、第3に手段による人形は風車の回転速度の変動を利用して人形の動きを変化させることを可能にしたものであり、決まったプログラムで動く人形とは異なる変化の大きい運動を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は風車動力装置の1実施例を示す側断面図である。(実施例1)
図2図2は風車動力装置の作動状態を示す部分側断面図である。(実施例1)
図3図3は風車動力装置の他の実施例を示す部分側断面図である。(実施例2)
図4図4は風車動力装置の他の実施例を示す部分側断面図である。(実施例3)
図5図5は風車動力装置の他の実施例を示す部分正面図である。(実施例3)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の風車動力装置を、性能を損なわない範囲で可能な限り簡略化した実施例の構造と作動について説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の風車動力装置の1実施例(実施例1)を示した側断面図であり、図2はその作動状態を示す部分側断面図である。
図1及び図2においてベース部材1はポール状の支柱2に支持され軸受部3には風車の回転軸4が回転自在に支持され該回転軸4の下端は軸受プレート16によって重力荷重を支持され滑らかに回転するごとく構成されている。回転軸4には複数の回転翼5が固着され該回転翼5に風が当たって生じる回転力によって回転軸4は回転する。回転翼5は航空機の翼型断面に類似する断面形状を有し、コの字形に形成されたものであり、回転軸4にはハブ部材を介して固定されている。翼厚比を大きく設定することで良好な回転性能を得ることができるものであるが、本発明の主旨はこれに限定するものではない。また、回転軸4にはアルミニュームなどの非磁性体の導電体材料で形成された円形部材6が固着されており、軸受部3の外周に回転自在に支持されたプレート7には風見板8と抵抗板9を有するスライド板10がローラー11を介して、図における左右方向に移動可能に支持され、スプリング12によって図における左方向に付勢されている。スライド板10にはマグネット13とヨーク14が円形部材6を挟む高さで設けられている。マグネット13とヨーク14はヨークユニットを構成し、スライド板10の動きによって該ヨークユニットによるスリット状の磁路が円形部材6をその厚さ方向に通過する位置まで図における右方向に移動することが出来、また通過しない位置まで左方向に復帰することができる。15は回転軸4回転力を外部に動力として取り出す為の出力ギヤーである。
(作用)
【0015】
図1においてヨーク14はスライド板10がスプリング12の付勢力により図における左側にあり円形部材6の外周より外側にあるが、図2においてはスライド板10が、図における左側からの風を受けた抵抗板9に働く風力抵抗により右側に移動し、ヨーク14が円形部材6を挟む状態となっていることを示している。図2に示す状態で回転軸4の回転によって回転する円形部材6をヨーク14によって円形部材6をその厚さ方向に貫通するごとく流れる磁力線は円形部材6にいわゆる渦電流を発生させる。この渦電流の発生によって円形部材6には回転方向と逆方向の反力が生じる。そこで回転翼によって生じている回転力を抑制して減速させることができる。この減速において機械的な部材の接触は無いので、機器の磨耗や騒音が発生することはない。また、渦電流によって生じる熱は回転する円形部材6の表面から効率良く放熱することが出来るので、部分的に過度の温度上昇を生じることはない。
【0016】
ヨーク14の構成する磁路には外部から磁気部材が引き寄せられ、付着する恐れがあるので円形部材6とともに外部から封止するカバーを設けることが望ましいが適当な対策をとればこれに限定するものではない。また、スライド板10の左右の動きは風力以外に人為的に外力で動かして任意に制動及びその解除を行うことができる。
【0017】
また、風見板9は風の方向によってプレート7を回転するためのものであり、抵抗板9に生じる風の抵抗によってスプリング12を引き伸ばしてスライド板10を移動する為のものであり、スプリング12の特性の選択によって風速に応じて徐々にヨーク14と円形部材6との重なり量を変化させることができる一方、一定の風速値において急激にスライド板10を移動させて急激に円形部材6に回転に制動を掛けることもできる。なお、スライド板10は実質的に円形部材6とヨーク14の相対位置を変化させることができれば良いものであり、円形部材6、風見板8および抵抗板9の形状も図示した形状に限定するものではない。
【実施例2】
【0018】
図3は本発明の風車動力装置の他の実施例(実施例2)を示した部分側断面図である。
図3において、回転軸4には2個の円形部材6が設けられていり、これと対向するマグネット13も2個設けられ、ヨーク14もこれに応じた形状として円形部材6を挟むごとく構成されている。
【0019】
上記のごとく構成することによって渦電流によって生じる制動力は2倍となる為、円形部材6の形状を小型化することが可能となる。円形部材6の数はより多くしても差し支えないことは云うまでもない。さらに円形部材6は回転軸4に直接取り付けるものに限定するものではなく中間にギヤーなどの伝導部材を介したものであっても良いことも自明のことである。
【実施例3】
【0020】
図4は本発明の風車動力装置の他の実施例(実施例3)を示した部分側断面図であり、図5はその部分正面図である。
図4図5において、出力ギヤー21は傘歯車を形成し、従動ギヤー22と係合し、水平回転軸23を回転させる。従動ギヤー22には偏芯軸24とバランサー25が取り付けられ、偏芯軸24には主振り回し運動部としての人形胴体26が回転自在に嵌め合わせられており、該人形胴体26には副振り回し運動部としての腕27及び脚28が夫々水平な軸の周りに回転自在に取り付けられている。
【0021】
風車の回転力によって回転軸4が回転すると出力ギヤー21に係合する従動ギヤー22によって偏芯軸24が人形胴体26を振り回すように駆動する。人形胴体26に回転自在に取り付けられた腕27及び脚28は、この振り回し運動によって任意の振幅で振動又は回転する。その動きは各部の固有振動数によって予測困難な動きとなり、見ている人を楽しませることができる。バランサー25は全体の重量バランスをとり、従動ギヤー22が容易に起動する為のものである。
【0022】
上記構造の実施例3は公園などにおけるモニュメント、学校などでの科学意識の啓発用、および農地におけるカカシとしての用として期待できるものである。カカシとした場合も、その動きは予め決められた単純な動きでは無いので鳥や猿などを追い払う能力も向上する。形状は人形だけでなく動物、魚あるいは抽象的な形状のものでも差し支えない。鈴等を振って音響を出すことも可能である。また、腕27及び脚28に相当する可動部分の数の増減も図示する状態に限定するものではない。実施例3は風の強弱による回転軸4の回転速度の変動によって人形の動きが変化することを利用したものであり、変動する風力を動力とすることの有効な利用例である。また、実施例1、2に示す制動機構は実施例3に示すごとき構成において安価で安全な制動方法として必須のものである。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は上記の説明で明らかなごとく変動のある風力を動力として安価に利用する上で極めて有効なものであり、その特性は上記のほか山小屋などでの浄水機、庭の散水機、農地の用水ポンプ、カカシなどに利用に適したものであり、産業上の利用の可能性は今後益々増加するものと確信する。
【符号の説明】
【0024】
1 ベース部材
2 支柱
3 軸受部
4 回転軸
5 回転翼
6 円形部材
7 プレート
8 風見板
9 抵抗板
10 スライド板
11 ローラー
12 スプリング
13 マグネット
14 ヨーク
15 出力ギヤー
16 軸受プレート
21 出力ギヤー
22 従動ギヤー
23 水平回転軸
24 偏芯軸
25 バランサー
26 人形胴体
27 腕
28 脚
図1
図2
図3
図4
図5