(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6035617
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】金属分離回収方法
(51)【国際特許分類】
C22B 7/00 20060101AFI20161121BHJP
【FI】
C22B7/00 B
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-507756(P2015-507756)
(86)(22)【出願日】2013年3月27日
(86)【国際出願番号】JP2013058902
(87)【国際公開番号】WO2014155547
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2015年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100310
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 学
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩貴
【審査官】
坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−095118(JP,A)
【文献】
特開2011−032578(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/032228(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00−61/00
B01J 38/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タングステン、モリブデン又はバナジウムの少なくとも一種の金属成分を含む部材から前記金属成分を分離回収する方法において、
前記部材と、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物を含む第1の溶融物と、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の少なくとも一種を含み前記第1の溶融物と異なる第2の溶融物とを混合して化合物を生成する工程と、
前記化合物と水とを混合して前記金属成分の抽出液を生成する工程と、
前記抽出液と固形分とを分離する工程とを含むことを特徴とする金属分離回収方法。
【請求項2】
請求項1において、前記化合物を生成する工程は、
前記部材と、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物を含む第1の水溶液と、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の少なくとも一種を含み前記第1の水溶液と異なる第2の水溶液とを混合して混合物を生成する工程と、
前記混合物を溶融させる工程とを含むことを特徴とする金属分離回収方法。
【請求項3】
請求項1において、前記部材はタングステン又はモリブデンの少なくとも一種とバナジウムの金属成分を含み、
前記抽出液と塩化アンモニウム水溶液とを混合してバナジウムアンモニウム塩を生成する工程と、
前記バナジウムアンモニウム塩と溶液とを分離する工程とを含むことを特徴とする金属分離回収方法。
【請求項4】
請求項1において、前記アルカリ金属水酸化物はリチウム水酸化物、ナトリウム水酸化物又はカリウム水酸化物から選ばれることを特徴とする金属分離回収方法。
【請求項5】
請求項1において、前記アルカリ金属塩又は前記アルカリ土類金属塩の塩は、硝酸塩、炭酸塩又は硫酸塩から選ばれることを特徴とする金属分離回収方法。
【請求項6】
請求項1において、前記部材が基材に成型された触媒であり、前記化合物を生成する工程の前に、前記部材を前記基材と分離する工程を含むことを特徴とする金属分離回収方法。
【請求項7】
請求項2において、前記混合物を溶融させる工程の温度が150〜300℃であることを特徴とする金属分離回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属分離回収方法に関し、特に触媒中に含有するタングステン、モリブデン、バナジウムの分離回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光化学スモッグや酸性雨等の原因物質であるNO
xの除去方法として、アンモニア(NH
3)を還元剤とした選択的接触還元による排煙脱硝法が火力発電所を中心に幅広く用いられている。この触媒には、バナジウム、モリブデン、タングステンを活性成分にした酸化チタン(TiO
2)系触媒が使用されており、現在の脱硝触媒の主流になっている。現在、接触アンモニア還元脱硝法は主に発電用ボイラを始めとする大容量ボイラ、ガスタービン等の排ガス浄化に使用されており、プラント当たり数百〜数千m
3という膨大な量の触媒が、2〜10数年間、触媒の交換をせずに使用されている。これらの触媒は、使用年数を過ぎて廃触媒となった場合には新たな二次公害物質となるため、廃触媒の再使用は環境保護や資源の有効活用において非常に重要な課題となっている。
【0003】
廃触媒に含まれるバナジウム、モリブデン、タングステンは、超合金や金属材料などの原料としても大いに利用されており、これらの廃製品からこれらの金属を回収して再利用することは資源の有効利用の観点で大変重要である。
【0004】
また触媒が石油焚きボイラに利用される場合には、石油中に含まれるバナジウムがこの触媒にトラップされるため、バナジウムの更なる回収が見込める。
【0005】
上記のような金属を選択的に分離回収するための手法として、例えば、特許文献1では、バナジウム、モリブデン、タングステンの群から選ばれる少なくとも一種類の金属成分と酸化チタンを含有する脱硝触媒の使用済触媒から金属成分を回収する方法において、該使用済み触媒にアルカリ金属水酸化物水溶液を含浸し、得られたアルカリ金属を含有する使用済み触媒を焼成した後、水と接触させて金属成分を抽出し、次いで得られた抽出液から金属成分を回収する方法が開示されている。また特許文献2では、タングステン等を含む超合金に水酸化ナトリウムと硫酸ナトリウムの混合物とからなる塩溶融液中で分解して抽出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−114747号公報
【特許文献2】特表2009−541596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記先行技術文献に記載の方法では、触媒や超合金などから効果的に所望の金属成分が回収される一方、溶解温度が600℃〜1200℃と高く、抽出のためのプロセスコストが高くなる課題がある。
【0008】
本発明の目的は、低温でも高収率でタングステン、モリブデン、バナジウムを触媒から分離回収することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明は、タングステン、モリブデン又はバナジウムの少なくとも一種の金属成分を含む部材から前記金属成分を分離回収する方法において、前記部材と、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物を含む第1の溶融物と、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の少なくとも一種を含み前記第1の溶融物と異なる第2の溶融物とを混合して化合物を生成する工程と、前記化合物と水とを混合して前記金属成分の抽出液を生成する工程と、前記抽出液と固形分とを分離する工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低温でも高収率でタングステン、モリブデン、バナジウムを触媒から分離回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】タングステン、モリブデン、バナジウムを廃触媒から分離回収する工程図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながらより詳細に説明する。なお、本発明はここで取り上げた実施形態に限定されることはなく、要旨を変更しない範囲で適宜組み合わせや改良が可能である。
【0013】
本発明は、タングステン、モリブデン又はバナジウムの少なくとも一種の金属成分を含有する部材から、その金属成分を分離回収するものである。(a)アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物の少なくとも一種の溶融物(即ち、水酸化物が必ず含まれる)と、(b)アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の少なくとも一種の溶融物と、(c)金属成分を含有する部材とを混合して反応させる。これにより生成された反応物を水中で撹拌することにより、部材に含まれていたタングステン、モリブデン又はバナジウムの少なくとも一種を水に抽出し、部材と分離するものである。
【0014】
(c)金属成分を含有する部材は、溶融状態の(a)及び(b)とであれば反応物が生成されるので、(a)及び(b)の水溶液と混合してから加熱し、溶融させてもよい。
【0015】
本発明の実施の形態として、触媒からタングステン、モリブデン、バナジウムを分離回収する手法について説明する。一例として、酸化チタン(TiO
2)を主成分とし、タングステン酸化物(WO
3)、モリブデン酸化物(MoO
3)、バナジウム(酸化物V
2O
5)を触媒成分として含有する脱硝触媒を取り上げる。なお、脱硝触媒だけでなく脱硫触媒にも本発明は適用可能である。触媒に限らず、タングステン、モリブデン、バナジウムが他の材料と化合物を形成していたり、他の材料の表面に担持されている場合等にも適用可能である。
【0016】
図1に、実施形態の廃触媒の構成図を示す。
【0017】
図1において、1は基材、2は触媒、3は酸化チタン、4は酸化タングステン、5は酸化モリブデン、6は酸化バナジウムの粉末である。これらは触媒2を構成する主要成分であり、基材1にスラリとして塗布、焼成されて構成されている。これらの粉末の焼結を促進したり、構造を強固にするため、石英ゾル7や無機繊維8が適宜混合される。また使用済触媒では、煤塵9等が吸着している。
【0018】
図2に、
図1に示すタングステン酸化物、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物を廃触媒から分離回収する工程図を示す。
【0019】
本実施形態の工程は、(1)機械選別工程、(2)抽出工程、(3)分離回収工程から構成される。(1)の機械選別工程は、基材に成型された触媒を基材から分離する工程であり、一例としてショットブラスト等の方法が挙げられる。この機械選別後、触媒は粉末状或いはフレーク状で回収され、次の抽出工程に移る。工程(1)は触媒が基材上に成型されている場合には必要であるが、触媒が単独で存在していたり、基材上に成型されていても細かい粉末状等になっている場合は、工程(1)を省略することができる。
【0020】
(2)の抽出工程は、本実施形態の根幹となる主要なプロセスである。この抽出工程では、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物を含む第1の溶融物と、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を含み前記第1の溶融物と異なる第2の溶融物の混合物を、前記触媒粉末に混合して焼成し、さらに水と混合することによりタングステン、モリブデン、バナジウム等の金属成分を抽出する工程である。ここでは、一例としてナトリウムとカリウムの水酸化物を等モル添加した場合について示す。ナトリウムとカリウムの水酸化物を等モル含有する10%水溶液を工程(1)で得られた触媒粉末に加え、室温で30分〜3時間撹拌する。撹拌後、80〜100℃の乾燥機にて水分を揮発させ、乾燥後に得られた粉末を乳鉢等で均一に混合する。これを150〜250℃の電気炉に導入し、30分〜3時間、加熱処理する。このとき、例えばタングステン酸化物とアルカリ金属成分(Rと示す)が式1の反応により反応物であるタングステン酸アルカリを生成する。
〔式1〕WO
3+ROH→R
2WO
4+H
2O
【0021】
得られた処理物を水に溶解すると、タングステンアルカリが水中に抽出される。同様の機構でモリブデン、バナジウムもアルカリと化合物を形成するので水中に抽出可能である。この抽出液と固形分(残渣)とを濾過等により分離することで、触媒から金属成分を分離回収することができる。
【0022】
工程(2)において、電気炉での加熱の温度は用いるアルカリ水酸化物等の融点によってその処理温度が異なる。より融点が低くなる混合アルカリ水酸化物を用いることにより、処理温度を低温化することが可能である。本実施形態ではナトリウムとカリウムの2種類の陽イオンからなる水酸化物の混合物元素に関して記述したが、反応温度の低温化が可能でかつ金属の抽出率が高くなればアルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物、或いは塩であればどのような組み合わせでもよい。これは2種類の陽イオンからなる水酸化物の場合、混合により凝固点が降下し、生成する液相の温度が低温化するため、反応がより低温で生じるものと考えられる。
【0023】
例えば、NaOH−KOH系の場合では、NaOH、KOH単独では融点がそれぞれ320℃、404℃であるため、これを溶解するのに350℃、420℃程度の処理温度が必要となる。これをモル比で1:1に混合した混合水酸化物の場合、その融点は170℃まで低下する。そのため、処理温度を200℃程度まで下げることが可能である。しかし処理温度はこの混合アルカリ塩の融点以上である必要はなく、融点の近傍であればそれを下回ってもよい。また触媒に対して投入するアルカリ水酸化物や塩の重量は、抽出する金属の重量の5〜10倍であるとより抽出効果が高い。この反応温度は低いほど経済的で良いが、300℃以下であるとその効果が高い。また150℃を下回ると反応が不十分となる場合がある。
【0024】
タングステン、モリブデン、バナジウムの抽出率を向上するためには、水酸化物を用いることが最も好適である。この他の塩として炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、塩化物及びこれらの混合物が考えられる。炭酸塩のみでも抽出は可能であるが、その処理温度は一般に500℃以上と高い場合が多い。またアルカリ硝酸塩の混合物は150℃程度の低温で溶融するが、硝酸塩のみではこれらの金属成分を、高回収率で抽出するのは難しい。融点を下げる目的で水酸化物に硝酸塩を混合したり、超合金からこれらの成分を抽出するための酸化剤として硝酸塩や硫酸塩を混合することが可能である。この他、場合によっては低融点化のため塩化物等を用いることができる。
【0025】
工程(2)では、上記アルカリ塩によりタングステン、モリブデン、バナジウムが全て水中に抽出される。触媒に金属成分が一種しか含まれていない場合は工程(2)で分離が終了する。また、金属成分が複数種含まれている場合でも金属成分の混合物として回収することも可能である。混合物中の金属成分同士を更に分離する場合は、次の(3)分離回収工程を行えばよい。
【0026】
次に、(3)分離回収工程に入る。ここでは、溶液からバナジウムを分離回収する例を示す。溶液から残渣を除去して得られた濾液をpH調整し、これにNH
4Clを加えて撹拌すると沈殿が生成する。これを濾過して乾燥し、バナジウムアンモニウム塩の沈殿が得られる。続いて、濾液にCaCl
2を加えて撹拌し、沈殿を生成する。生じた沈殿物を濾過し、熱濃硝酸で煮沸して洗浄、乾燥させると、モリブデン酸とタングステン酸の混合物の沈殿が得られる。沈殿と溶液との分離は遠心分離器を用いてもよい。
【0027】
モリブデンとタングステンを更に分離したい場合は、バナジウムを分離した後の濾液にCaCl
2を加えず、pH調整してからNH
4Clを加えて撹拌する。これを濾過して乾燥させるとタングステンアンモニウム塩の沈殿が得られる。液中にはモリブデンが残るので、液を濾過することでモリブデンとタングステンを分離することができる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
本実施例では、触媒として、TiO
2:80重量%、WO
3:8重量%、MoO
3:0.5重量%、V
2O
5:1.5重量%、Al
2O
3:4重量%、SiO
2:6重量%からなる触媒粉末をステンレスの基材上に塗布し焼結させた板状触媒を用いた。
【0030】
まず、この板状触媒から触媒成分をショットブラストにより機械的に外し、粉末状となった触媒成分粉末を得た。
【0031】
次に、タングステン、モリブデン、バナジウムを抽出するために、アルカリ混合塩を準備した。本実施例で検討したアルカリ混合塩の組成と触媒に対するアルカリ混合塩の比、プロセス温度と、これらの実施例及び比較例に対する抽出率の結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
実施例1はナトリウム水酸化物とリチウム水酸化物を重量で4:1に混合した混合水酸化物である。これはNaOHとLiOHのモル比で約7:3に相当する。また実施例2は、ナトリウム水酸化物とカリウム水酸化物を重量で42:58に混合した混合水酸化物である。これは、NaOHとKOHのモル比で約5:5に相当する。
【0034】
実施例1の場合について分離方法を説明する。触媒成分粉末1kgを秤量した。次いで20重量%水酸化ナトリウム水溶液4kgと5重量%水酸化リチウム水溶液4kgを調整後に秤量して混合し、混合水酸化アルカリ水溶液8kgを調整した。ここに上記触媒成分粉末1kgを投入し、2時間撹拌した。これをアルミナ製蒸発皿に移して80℃〜100℃で15時間乾燥させた。十分乾燥させた後、らいかい機等を用いて混合水酸化アルカリと触媒成分を均一に混合し、粉末を250℃−5時間、大気中で加熱処理を行った。
【0035】
ここに水20Lを投入して3時間、撹拌した。そうすると、水に溶解する成分は水に残存し、不溶成分は残渣として溶液中に残存した。撹拌後、濾過法によって残渣と溶液に固液分離し、それぞれを回収した。
【0036】
抽出後の濾液から次に示す方法でバナジウムとタングステン、モリブデンの回収を行った。触媒中のモリブデン含有量が少ないことから、タングステンとモリブデンは混合物として回収した。
【0037】
得られた濾液をまずpH7まで調整すると、目的成分ではないがケイ素複合酸化物の沈殿が生成した。これを濾別してタングステン、バナジウム、モリブデンを含有する濾液を得た。これにNH
4Clを250g加えて30分撹拌し、沈殿を生成した。この沈殿物を2wt%NH
4Cl水50mlと水50mlで洗浄した。これを濾過して乾燥し、バナジウムアンモニウム塩を得た。
【0038】
続いて、濾液にCaCl
2を80g加えて10分撹拌した。生じた沈殿物を濾過し、熱濃硝酸1L中で30分煮沸した後、塩化アンモニウム洗浄、水洗を行い、100℃で乾燥を実施し、モリブデン酸とタングステン酸の混合物を得た。
【0039】
固体の残渣はX線蛍光分析装置(XRF)にて組成を評価した。また濾液も誘導プラズマ結合発光分析装置(ICP−AES)により液相組成の分析を実施した。これらの結果から抽出率を求めた。他の例に関しても同様の処理を施した。
【0040】
実施例1は、LiOHとNaOHを0.2:0.8の重量比で混合した混合水酸化アルカリを、触媒に対して重量比1:1で添加してものである。このとき、プロセス温度は250℃であり、抽出率はタングステン94.9%、モリブデン95.0%、バナジウム90.1%であった。反応に必要な温度が従来に比べて低温であるにもかかわらず、何れの金属成分についても90%以上の高抽出率が達成できた。
【0041】
実施例2〜12についての分離条件と抽出率も表1に示す通りであり、何れの実施例についても150℃〜300℃と低い抽出温度で高い抽出率が得られた。
【0042】
比較例1は、NaOHを触媒に対して重量比1:1で添加したものである。このとき、プロセス温度は350℃であり、タングステン、モリブデン、バナジウムの抽出率は94%〜98%であったが、プロセス温度が350℃と高く、低温化の効果を見込めなかった。
【0043】
比較例2は、Na
2CO
3とLi
2CO
3を重量比で0.65:0.35で混合したアルカリ混合塩を、触媒に対して重量比1:1で添加したものである。このとき、プロセス温度は550℃であり、タングステン、モリブデン、バナジウムの抽出率は54%〜63%と十分ではなかった。さらにプロセス温度が550℃と高かった。
【0044】
比較例3は、LiNO
3とKNO
3を重量比で0.2:0.8で混合したアルカリ混合塩を、触媒に対して重量比1:1で添加したものである。このとき、プロセス温度は150℃と低いが、タングステン、モリブデン、バナジウムの抽出率は0.1〜6.5%と十分ではなかった。
【符号の説明】
【0045】
1:基材
2:触媒
3:酸化チタン
4:酸化タングステン
5:酸化モリブデン
6:酸化バナジウム
7:石英ゾル
8:無機繊維
9:煤塵