(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の波長可変干渉フィルターは、光学膜が形成された後の製造工程において、光学膜が様々な薬品やガスに曝されることで劣化しやすい。特に銀を光学膜として使用する場合は劣化しやすい。
【0009】
その課題に対して特許文献2では、干渉フィルター等における光学膜が炭素を含有する合金膜により構成されるとしている。銀は合金化することで硫化等への耐性を向上させることが可能である。しかし、長期的な信頼性においては、特性劣化が懸念される。そのため、合金化だけでは光学膜の特性劣化という課題を解決することは難しく、光学膜の特性劣化を防止する手段が必要となる。
【0010】
また、特許文献3では、NDフィルターの最外層に炭素が設けられたことで多少の帯電防止は可能であるが、炭素膜は電気的に浮遊しているため、完全に帯電防止することはできない。またNDフィルターの上面は炭素膜で覆われているが、端面(側面)は露出しているため、製造工程において、様々な薬品やガスに曝されることになり、フィルターが劣化するおそれがある。
【0011】
本発明の少なくとも一つの態様によれば、光学膜としての金属膜が、酸化や硫化等によって劣化するのを防止することができ、また光学膜表面が帯電することを防ぐことができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
本発明の一態様の干渉フィルターは、ギャップを介して向かい合う第1光学膜と第2光学膜とを備え、少なくとも前記第1光学膜および前記第2光学膜の一方は、金属膜を有し、前記金属膜の表面およびエッジ部は、導電性を有するバリア膜によって覆われ、前記金属膜のエッジ部に傾斜面が設けられており、前記傾斜面の上に前記バリア膜が配置され、前記バリア膜の抵抗率は8×107Ω・cm以下であることを特徴とする。
また、上記の本発明に係る干渉フィルターは、ギャップを介して向かい合う第1光学膜と第2光学膜とを備え、少なくとも前記第1光学膜および前記第2光学膜の一方は、金属膜を有し、前記金属膜の表面およびエッジ部は、導電性を有するバリア膜によって覆われ、前記バリア膜の抵抗率は8×10
7Ω・cm以下であることを
特徴とする。
【0013】
[適用例1]本適用例に係る干渉フィルターは、ギャップを介して向かい合う第1光学膜と第2光学膜とを備え、少なくとも前記第1光学膜および前記第2光学膜の一方は、金属膜を有し、前記金属膜の表面およびエッジ部は、導電性を有するバリア膜によって覆われていることを特徴とする。
【0014】
本適用例によれば、バリア膜によって、金属膜の表面ならびに端部を被膜することで、酸素、水、硫黄などの、金属膜の反射率の低下要因となるガス等を遮断することが可能となる。よって、光学膜の特性劣化を抑制することができる。
【0015】
またバリア膜が導電性を持っていることによって、光学膜に溜まる電荷をバリア膜から逃がすことができるようになる。これにより、帯電により制御が困難とされていた第1光学膜と第2光学膜の間のギャップを精度良く制御することが可能となる。
【0016】
[適用例2]上記適用例に係る干渉フィルターにおいて、前記バリア膜の抵抗率は8×10
7Ω・cm以下であることが好ましい。
【0017】
本適用例によれば、バリア膜の抵抗率は8×10
7Ω・cm以下となっている。抵抗率が8×10
7Ω・cm以下であることにより、電荷を外部に効率よく逃がすことが可能になり、帯電防止性に優れる。これにより、第1光学膜と第2光学膜の間のギャップを精度良く制御することが可能となる。
【0018】
[適用例3]上記適用例に係る干渉フィルターにおいて、前記金属膜の材料は、Ag単体、Agを主成分とする合金のいずれかであり、前記バリア膜は、インジウム系酸化物、スズ系酸化物、および亜鉛系酸化物からなる群より選択される一または複数の物質を主成分とする膜、あるいは、前記群から選択される物質を主成分とする膜を積層した積層膜であることが好ましい。
【0019】
本適用例によれば、光の反射および透過特性を発揮する金属膜の候補としては、Ag単体、Agを主成分とする合金のいずれかであることが好ましい。
【0020】
また、バリア膜にインジウム系酸化物、スズ系酸化物、および亜鉛系酸化物からなる群より選択される一または複数の物質からなる膜、あるいは、前記群から選択される物質を含む膜からなる積層膜を使用することで、Ag単体、Agを主成分とする合金による光学膜の酸化や硫化等の原因となるガスの進入を阻止する効果がある。また、これらのバリア膜は耐熱性も備えるため、金属膜の劣化を防止することができ、また、光の透過性も有するため光学特性の低下要因となりにくい。更に、これらのバリア膜は導電性を有することから、光学膜に溜まる電荷を逃がすことができる。
【0021】
[適用例4]上記適用例に係る干渉フィルターにおいて、前記バリア膜は、酸化インジウムスズ、Alドープ酸化亜鉛、Gaドープ酸化亜鉛、Ceドープ酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、のいずれか一つを主成分とする膜であることが好ましい。
【0022】
本適用例によれば、バリア膜は透明導電膜と呼ばれる酸化インジウムスズ(Snドープ酸化インジウム)、Alドープ酸化亜鉛、Gaドープ酸化亜鉛、Ceドープ酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、のいずれか一つを主成分とする膜をバリア膜に使用することで、光学特性の低下要因となりにくく、金属膜の劣化を防止でき、更に光学膜に溜まる電荷を逃がすことができる。
【0023】
[適用例5]上記適用例に係る干渉フィルターにおいて、前記バリア膜は電気的にグランドに接続されていることが好ましい。
【0024】
本適用例によれば、バリア膜が電気的にグランドに接続されていることで、光学膜に溜まる電荷を逃し、光学膜表面の帯電を防止することができる。
【0025】
[適用例6]上記適用例に係る干渉フィルターにおいて、前記金属膜のエッジ部に傾斜面が設けられており、前記傾斜面上に前記バリア膜が形成されていることが好ましい。
【0026】
本適用例によれば、金属膜のエッジ部(端部)に傾斜面が設けられる。バリア膜の厚みは、金属膜のエッジ部付近において薄くなる傾向がある。金属膜のエッジ部(端部)にテーパーをつけることによって、バリア膜の被膜性が改善される。よって、金属膜のエッジ部付近において金属膜が露出したり、あるいはバリア膜の厚みが極端に薄くなったりするといった不都合が生じない。上述のとおり、金属膜は、表面はもちろんのこと、エッジ部までバリア膜によって覆われている。よって、金属膜の劣化(酸化、硫化など)による反射率低下を防ぐことができる。よって、干渉フィルターにおける透過特性を有する光学膜としての機能を、金属膜が露出している場合と比較して、長期にわたり維持することが可能となる。
【0027】
[適用例7]上記適用例に係る干渉フィルターにおいて、少なくとも前記第1光学膜、前記第2光学膜のどちらか一方は、前記金属膜と、前記金属膜を載置する他の光学膜とを含み、前記第1光学膜または前記第2光学膜の厚み方向から見た平面視における前記金属膜の面積は、前記他の光学膜の面積よりも小さく、前記金属膜と前記他の光学膜との間に段差が形成され、前記段差を覆って前記バリア膜が形成されていることが好ましい。
【0028】
金属膜の下に、反射率の改善などを目的として、他の光学膜として誘電体膜などが設けられる場合がある。この場合、光学膜全体の総膜厚が厚くなり、バリア膜としての誘電体膜の被覆性が、特にエッジ部で低下する可能性がある。そこで、本適用例によれば、金属膜の面積を、誘電体膜の面積よりも小さく設定し、かつ前記平面視において、金属膜を誘電体膜より内側に設ける。これによって、階段状の段差を形成している。したがって、バリア膜の段差部におけるカバレージが改善され、金属膜のエッジ部が露出するといった不都合が生じにくくなる。
【0029】
[適用例8]上記適用例に係る干渉フィルターにおいて、前記第1光学膜は第1基板に設けられ、前記第2光学膜は第2基板に設けられ、前記第1基板は、第1電極を有し、前記第2基板は、第2電極を有し、前記第1電極と前記第2電極との間に生じる静電力によって前記第1光学膜と前記第2光学膜との間のギャップが可変に制御されていることが好ましい。
【0030】
上述のとおり、金属膜は、表面はもちろんのこと、エッジ部までバリア膜によって覆われている。よって、金属膜の劣化(酸化、硫化など)による反射率低下を防ぐことができる。よって、第1光学膜と第2光学膜との間のギャップを可変とする波長可変干渉フィルターにおける光学膜としての機能を、金属膜が露出している場合と比較して、長期にわたり維持することが可能となる。
【0031】
[適用例9]本適用例の光学モジュールは、上記いずれかの干渉フィルターと、前記干渉フィルターを透過した光の光量を検出する検出部と、を含むことを特徴とする。
【0032】
本適用例によれば、光学モジュールは、光学膜の特性劣化が抑制された信頼性の高い光学モジュールを実現することができる。例えば、分光測定器の検出部(受光光学系と受光素子とを含む)として使用することができる。
【0033】
[適用例10]本適用例の電子機器は、上記いずれかの干渉フィルターと、前記干渉フィルターを透過した光の光量を検出する検出部と、前記検出部にて検出された光の光量に基づいて分析処理を実施する処理部と、を含むことを特徴とする。
【0034】
本適用例によれば、光学膜の特性劣化が抑制された、信頼性の高い電子機器を実現することができる。処理部は、検出部から得られる信号(受光信号)に基づいて所定の信号処理を実行し、例えば、サンプルの分光光度分布を測定する。分光光度分布の測定によって、例えば、サンプルの測色、サンプルの成分分析等を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0037】
(第1実施形態)
図1(A)〜
図1(D)は、干渉フィルターにおける光学膜の構造の一例を示す図である。
図1(A)に示すように、干渉フィルター1は、互いに平行に保持された第1基板20および第2基板30と、第1基板20上に設けられた第1光学膜40と、第2基板30上に設けられた第2光学膜50と、を有する。第1基板20または第2基板30は、例えば、所望の波長帯域の光に対する透過性を有するガラス基板である。
【0038】
また、第1光学膜40と第2光学膜50は、互いに対向し、かつ、所定のギャップG1を有するように形成されている。なお、ギャップG1を可変とすることもでき、このような波長可変干渉フィルター(以下、エタロンということもある)については後述する。第1光学膜40および第2光学膜50は、所望波長帯域の光に対する反射特性と透過特性とを兼ね備えており、各々は、干渉フィルター1における光学膜を構成する。
【0039】
本実施形態では、第1光学膜40および第2光学膜50の少なくとも一方は、金属膜を有している。金属膜は、金属単体の膜であってよく、金属の合金からなる膜であってもよい。例えば、銀ならびにその合金の薄膜は、第1光学膜40および第2光学膜50の候補として有力であるが、耐熱性や耐環境性が劣るため、その特性劣化に対する対策が必要となる。特に、エタロンの製造工程において、熱負荷や薬液等に暴露されることは金属膜の特性劣化を引き起こす要因となるため、それら要因による特性劣化を防止することが重要である。
【0040】
そこで、本実施形態では、
図1(B)〜
図1(D)に示すように、金属膜40Mの表面およびエッジ部(端部)を、バリア膜(あるいは保護膜)45によって覆う構造を採用する。すなわち、本実施形態では、バリア膜45を有する光学膜構造が採用される。この光学膜構造は、第1光学膜40および第2光学膜50の少なくとも一方に適用することができる。以下の説明では、第1基板20上に形成される第1光学膜40を例にとって説明する。
【0041】
図1(B)に示される例では、第1光学膜の構成要素である金属膜40Mは、石英ガラス基板などの第1基板20上に形成されている。そして、金属膜40Mの表面およびエッジ部は、バリア膜45によって覆われている。金属膜40Mをパターニングした後、バリア膜45にて、金属膜40Mの表面だけでなく、さらにエッジ部(端部)を含めて被覆することによって、
図1(B)に示される光学膜構造を形成することができる。このようにして、金属膜40Mをバリア膜45に覆われた第1光学膜が構成されている。
【0042】
この光学膜構造によれば、金属膜40Mは、表面のみならず、エッジ部の全てがバリア膜45によって覆われて保護されている。よって、酸素、水、硫黄など、金属膜40Mの特性(反射率等)を低下させる原因物質は遮断されて、金属膜40Mには到達しない。したがって、金属膜40Mの特性の劣化が防止される。
【0043】
更にバリア膜45は導電性を有し、バリア膜45は配線を介してグランドに接続(図示せず)されている構造を採用する。また、バリア膜45の抵抗率は8×10
7Ω・cm以下となっている。抵抗率が上記以下であることにより、電荷を外部に逃がしやすく、帯電防止性に優れる。これにより光学膜の表面に帯電する電荷を容易に逃がすことができる。
【0044】
ここで、金属膜40Mの材料としては、Ag(銀)単体、Ag(銀)を主成分とする合金が光学膜の候補として有力である。
【0045】
なお、Agを主成分とする合金としては、例えば、AgSmCu(銀サマリウム銅合金),AgC(銀炭素合金),AgBiNd(銀ビスマスネオジム合金),AgPdCu(銀パラジウム銅合金),AgAu(銀金合金),AgCu(銀銅合金),AgCuAu(銀銅金合金)などを使用することができる。
【0046】
また、バリア膜45は、インジウム系酸化物、スズ系酸化物、および亜鉛系酸化物からなる群より選択される一または複数の物質からなる膜、あるいは、前記群から選択される物質を含む膜からなる積層膜を使用することができる。
具体的には、インジウム系酸化物である酸化インジウムスズ(Snドープ酸化インジウム:ITO)、Ceドープ酸化インジウム(ICO)、スズ系酸化物である酸化スズ(SnO
2)、亜鉛系酸化物であるAlドープ酸化亜鉛(AZO)、Gaドープ酸化亜鉛(GZO)、酸化亜鉛(ZnO)などが用いられる。また、インジウム系酸化物と亜鉛系酸化物からなるインジウム亜鉛酸化物(IZO:登録商標)などが用いられる。
これらを材料とした膜は透明導電膜と呼ばれ、透光性を有し電気を通す性質をもっている。
そして、これらの材料は、酸化や硫化等の原因となるガスの進入を阻止する効果があり、耐熱性も備え、また、光の透過性も有することから、金属膜40Mに対するバリア膜45として機能し得る。さらに、上記の材料は、AgおよびAg合金との密着性がよく、光学膜としての信頼性を有する。
以上説明した金属膜40Mおよびバリア膜45の材料は、以下に説明する実施形態についても同様に適用され得る。
【0047】
また、金属膜40M上にバリア膜45を形成する場合には、製造工程で使用する温度をあまり高くしないのが好ましい。これによって、金属膜40Mの再結晶化を防ぎ、反射率の低下を防ぐことができる。また、バリア膜45の膜厚を、あまり厚くしない(薄く形成する)ことが好ましい。バリア膜45の膜厚が厚いと、例えば、エタロンを分光器として使用したとき、分光強度分布に不要なピークが出現して、分光可能な波長帯域の帯域幅が狭まくなる場合がある。よって、バリア膜45の膜厚は、できるだけ薄く形成するのが好ましい。例えば、金属膜40Mの膜厚が50nmの場合、バリア膜45の膜厚は20nm以下とするのが好ましい。
【0048】
また、
図1(C)に示される例では、金属膜40Mのエッジ部付近における、バリア膜45の被覆性が改善されている。すなわち、
図1(C)に示される例では、単体の金属膜40Mのエッジ部に傾斜面(テーパー面)が設けられており、その傾斜面上に、バリア膜45が形成されている。
【0049】
エッチング加工しただけでは、金属膜40Mのエッジ部は、一般に直角に近い角度をもつため、その上にバリア膜45を形成した場合、バリア膜45の厚みは、金属膜40Mのエッジ部付近において薄くなる傾向がある。金属膜40Mのエッジ部(端部)にテーパーをつけることによって、バリア膜45の被覆性が改善される。すなわち、金属膜40Mのエッジ部(端部)付近におけるバリア膜45の膜厚は、金属膜40Mの表面上における膜厚と同様に、変化が少なく安定している。したがって、バリア膜45が垂直にエッチング加工された場合と比較して、バリア膜45の信頼性が向上する。このため、金属膜40Mのエッジ部付近において金属膜が露出したり、あるいはバリア膜45の厚みが極端に薄くなって、バリア性が低下したりするといった不都合が生じない。このように、
図1(C)の例によれば、バリア膜45の膜厚を薄くしつつ、良好なエッジ部のカバレージを得ることができる。
【0050】
また、金属膜40Mのエッジ部において傾斜面(テーパー面)を形成する方法としては、例えば、以下のような方法が考えられる。例えば、メタルマスクを第1基板20上に載置した状態で、Ag材料をスパッタリングする。このとき、Ag材料の、マスク開口部における回り込み現象によって、結果的に傾斜面が形成される。
【0051】
図1(D)に示される例では、金属膜40Mの下に、光の反射率の改善などを目的として、他の光学膜として誘電体膜(誘電体多層膜でもよい)40Eが設けられている。すなわち、第1光学膜の構成要素である金属膜40Mと第1基板20との間には、第1光学膜の構成要素である誘電体膜40Eが形成されている。この構造を採用する場合、第1基板20の厚み方向から見た平面視における金属膜40Mの面積を、誘電体膜40Eの面積に一致させると、第1光学膜全体の総膜厚が厚いことから、バリア膜45の被覆性が、特にエッジ部で低下する可能性がある。これを防止するためには、バリア膜45の膜厚を厚くする必要があるが、この場合には、第1光学膜40の特性に、かなりの影響が及ぶ場合がある。
【0052】
そこで、
図1(D)の例では、金属膜40Mの、第1基板20の厚み方向から見た平面視における面積を、第1光学膜40としての誘電体膜40Eの面積よりも小さく設定し、これによって、階段状の段差を形成している。したがって、バリア膜45の段差部におけるカバレージが改善され、金属膜40Mのエッジ部(端部)が露出するといった不都合が生じにくくなる。また、バリア膜45の膜厚を薄くすることができ、よって、第1光学膜40の設計が容易である。
【0053】
また、
図1(D)の例において、金属膜40Mの下に形成される、第1光学膜40の構成要素としての誘電体膜40Eは、例えば、少なくともワンペアのTiO
2/SiO
2を含む誘電体多層膜とすることができる。
【0054】
次に、エタロン(波長可変干渉フィルター)の具体的な構造例について説明する。
図2(A)〜
図2(C)は、エタロンの具体的な構造の一例と、その動作を説明するための図である。
図2(A)は、駆動電圧を印加しない状態(初期ギャップG1)におけるエタロンの断面構造を示す図である。また、
図2(B)は、第1基板20上に形成される第1光学膜40および第1電極60のレイアウト例を示す図である。
図2(C)は、駆動電圧を印加した状態(ギャップG3)におけるエタロンの断面構造を示す図である。
図2に示されるエタロン5には、
図1(B)〜
図1(D)のいずれかに示した光学膜構造が適用される。
【0055】
図2(A)において、第1基板20と一体で、第2基板30を可動に支持する支持部22が形成されている。支持部22は、第2基板30に設けてもよく、あるいは第1基板20および第2基板30とは別体で形成してもよい。
【0056】
第1基板20および第2基板30は、例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラスなどの各種ガラスや、水晶などにより形成することができる。これらの中でも、各基板20,30の構成材料として、例えばナトリウム(Na)やカリウム(K)などのアルカリ金属を含有したガラスが好ましく、このようなガラスにより各基板20,30を形成することで、第1光学膜40、第2光学膜50や、第1電極60ならびに第2電極70の密着性や、基板同士の接合強度を向上させることが可能となる。そして、これらの2つの基板20,30は、例えばプラズマ重合膜を用いた表面活性化接合などにより接合されることで、一体化されている。第1基板20および第2基板30は、一辺が例えば10mmの正方形に形成されている。
【0057】
第1基板20は、例えば、厚みが500μmに形成されるガラス基材をエッチングにより加工することで形成される。
【0058】
なお、可動基板としての第2基板30は、薄肉部34と、厚肉部32を有する。薄肉部34が設けられることによって、より小さい駆動電圧によって、第2基板30に所望の撓み(変形)を生じさせることができる。よって、省電力化が実現される。
【0059】
第1基板20における、第2基板30と対向する対向面のうちの中央に、例えば円形の前述した金属膜とその金属膜を覆うバリア膜とで構成された第1光学膜40が形成されている。同様に、第2基板30は、厚みが例えば200μmに形成されるガラス基材をエッチングにより加工することで形成される。第2基板30は、第1基板20と対向する対向面の中央位置に、第1光学膜40と対向する例えば円形の第2光学膜50が形成されている。
【0060】
なお、第1光学膜40および第2光学膜50は、例えば直径が約3mmの円形状に形成されている。この第1光学膜40および第2光学膜50は、例えば、透過率の半値幅も狭く分解能が良好な、AgC等の金属膜と、その金属膜を被覆するバリア膜とによって構成することができる。第1光学膜40および第2光学膜50は、例えば、スパッタリングなどの手法により形成することができる。各光学膜の膜厚寸法は、例えば0.03μmに形成されている。本実施形態では、第1光学膜40および第2光学膜50として、例えば、可視光全域を分光できる特性をもつ光学膜を用いることができる。
【0061】
第1光学膜40および第2光学膜50は、
図2(A)に示す電圧非印加状態においては、第1ギャップG1を介して対向配置されている。なお、ここでは第1光学膜40を固定鏡とし、第2光学膜50を可動鏡とするが、逆でもよく、また、双方を可動鏡とすることもできる。
【0062】
第1基板20の厚み方向から見た平面視において、第1光学膜40の周囲には、第1電極60が形成されている。なお、以下の説明において、平面視とは各基板の基板厚み方向から基板平面を見た場合をいう。同様に、第2基板30上には、第1電極60と対向して第2電極70が設けられている。第1電極60と第2電極70は、第2ギャップG2を介して、対向配置されている。なお、第1電極60および第2電極70の表面は、絶縁膜にて被覆することができる。
【0063】
図2(B)に示されるように、第1電極60は、平面視で、第1光学膜40にオーバーラップしない。よって、第1光学膜40の光学特性の設計が容易である。このことは、第2電極70ならびに第2光学膜50についても同様である。
【0064】
また、例えば、第2電極70を共通電位とし、第1電極60に電圧を印加することによって、
図2(C)に示すように、各電極間に矢印で示す静電力(ここでは静電引力)F1を生じさせることができる。すなわち、第1電極60および第2電極70は、静電アクチュエーター75を構成する。静電引力F1によって、第1光学膜40と第2光学膜50との間のギャップを、初期ギャップ(G1)よりも小さいギャップ(G3)となるように可変に制御することができる。各光学膜間のギャップの大きさによって透過光の波長が決まる。よって、ギャップを変化させることで透過波長を選択することが可能となる。
【0065】
なお、
図2(A)において太線で示されるように、第1電極60には第1配線61が接続されており、また、第2電極70には第2配線71が接続されている。そして、第1配線61および第2配線71はグランドに接続されている。
【0066】
上述のとおり、本実施形態では、第1光学膜40を構成する金属膜は、その表面はもちろんのこと、エッジ部までバリア膜45によって覆われている。よって、金属膜の反射率劣化(酸化、硫化など)を防ぐことができる。
また、バリア膜45は、第1光学膜40および第2光学膜50の少なくとも一方に形成されても良く、両者に形成されていても良い。
【0067】
また、バリア膜45が導電性を有していることから、第1配線61および第2配線71を介して光学膜表面の電荷を逃がすことが可能になり、それにより光学膜表面の帯電を防ぐことができる。よって、エタロン5における光透過性を有する光学膜としての機能を、金属膜が露出している場合と比較して、長期にわたり維持することが可能となる。よって、エタロン5の信頼性が向上する。
【0068】
(第2実施形態)
次に、上記第1実施形態で説明したエタロンを使用した、光学モジュールおよび電子機器について説明する。第2実施形態では、測定物の色度を測定する測色装置を例にとって説明する。
図3は測色装置の構成を示すブロック図である。
測色装置80は、検査対象Aに光を照射する光源装置82と、測色センサー84(光学モジュール)と、測色装置80の全体動作を制御する制御装置86とを備える。
この測色装置80は、検査対象Aに光源装置82から光を照射し、検査対象Aから反射された検査対象光を測色センサー84にて受光し、測色センサー84から出力される検出信号に基づいて、検査対象光の色度を分析して測定する装置である。
【0069】
光源装置82は、光源91、複数のレンズ92(
図3には1つのみ図示)を備え、検査対象Aに対して白色光を射出する。また、複数のレンズ92には、コリメーターレンズが含まれてもよく、この場合、光源装置82は、光源91から射出された光をコリメーターレンズにより平行光とし、図示しない投射レンズから検査対象Aに向かって射出する。
なお、本実施形態では、光源装置82を備える測色装置80を例示するが、例えば検査対象Aが発光部材である場合、光源装置82を設けずに測色装置を構成してもよい。
【0070】
光学モジュールとしての測色センサー84は、エタロン(波長可変干渉フィルター)5と、静電アクチュエーターに印加する電圧を制御し、エタロン5で透過させる光の波長を変える電圧制御部94と、エタロン5を透過した光を受光する受光部93(検出部)と、を備える。
また、測色センサー84は、検査対象Aで反射された反射光(検査対象光)を、エタロン5に導光する光学レンズ(図示せず)を備えている。そして、この測色センサー84は、光学レンズに入射した検査対象光をエタロン5で所定波長帯域の光に分光し、分光した光が受光部93にて受光される。
受光部93は、検出部としてフォトダイオードなどの光電変換素子により構成されており、受光量に応じた電気信号を生成する。そして、受光部93は制御装置86に接続され、生成した電気信号を受光信号として制御装置86に出力する。
【0071】
電圧制御部94は、制御装置86からの入力される制御信号に基づいて、静電アクチュエーターに印加する電圧を制御する。
【0072】
制御装置86は、測色装置80の全体動作を制御する。この制御装置86としては、例えば汎用パーソナルコンピューター、携帯情報端末、その他、測色専用コンピューターなどを用いることができる。
そして、制御装置86は、光源制御部95、測色センサー制御部97、および測色処理部96(分析処理部)などを備えて構成されている。
【0073】
光源制御部95は、光源装置82に接続されている。そして、光源制御部95は、例えば利用者の設定入力に基づいて、光源装置82に所定の制御信号を出力し、光源装置82から所定の明るさの白色光を射出させる。
測色センサー制御部97は、測色センサー84に接続されている。そして、測色センサー制御部97は、例えば利用者の設定入力に基づいて、測色センサー84にて受光させる光の波長を設定し、この波長の受光量を検出する旨の制御信号を測色センサー84に出力する。これにより、測色センサー84の電圧制御部94は、制御信号に基づいて、利用者が所望する光の波長を透過させるよう、静電アクチュエーターへの印加電圧を設定する。
【0074】
測色処理部96は、測色センサー制御部97を制御して、エタロン5の光学膜間のギャップ寸法を変動させて、エタロン5を透過する光の波長を変化させる。また、測色処理部96は、受光部93から入力される受光信号に基づいて、エタロン5を透過した光量を取得する。そして、測色処理部96は、上記により得られた各波長の受光量に基づいて、検査対象Aから反射された光の色度を算出する。
【0075】
このように、本実施形態の電子機器としての測色装置80および光学モジュールとしての測色センサー84は、光学膜間のギャップ寸法を精度よく設定することができ、分光精度に優れたエタロン5を有していることから、精度のよい測色センサーを得ることができる。
以上、第2実施形態では、電子機器として測色装置80を例示したが、その他、様々な分野に波長可変干渉フィルター、光学モジュール、電子機器を用いることができる。
例えば、特定物質の存在を検出するための光ベースのシステムとして用いることができる。このようなシステムとしては、例えば、エタロンを用いた分光計測方式を採用して特定ガスを高感度検出する車載用ガス漏れ検出器や、呼気検査用の光音響希ガス検出器などのガス検出装置を例示できる。
【0076】
(第3実施形態)
以下、ガス検出装置の一例を以下に図面に基づいて説明する。
【0077】
図4は、エタロンを備えたガス検出装置の一例を示す断面図である。
図5は、ガス検出装置の制御系の構成を示すブロック図である。
このガス検出装置100は、
図4に示すように、センサーチップ110と、吸引口120A、吸引流路120B、排出流路120C、および排出口120Dを備えた流路120と、本体部130と、を備えて構成されている。
本体部130は、流路120を着脱可能な開口を有するセンサー部カバー131、排出手段133、筐体134、光学部135、フィルター136、エタロン(波長可変干渉フィルター)5、および受光素子137(受光部)等を含む検出部(光学ジュール)と、検出された信号を処理し、検出部を制御する制御部138、電力を供給する電力供給部139等から構成されている。また、光学部135は、光を射出する光源135Aと、光源135Aから入射された光をセンサーチップ110側に反射し、センサーチップ側から入射された光を受光素子137側に透過するビームスプリッター135Bと、レンズ135C,135D,135Eと、により構成されている。
【0078】
また、
図5に示すように、ガス検出装置100には、操作パネル140、表示部141、外部とのインターフェイスのための接続部142、電力供給部139が設けられている。電力供給部139が二次電池の場合には、充電のための接続部143を備えてもよい。
さらに、ガス検出装置100の制御部138は、CPU等により構成された信号処理部144、光源135Aを制御するための光源ドライバー回路145、エタロン5を制御するための電圧制御部146、受光素子137からの信号を受信する受光回路147、センサーチップ110のコードを読み取り、センサーチップ110の有無を検出するセンサーチップ検出器148からの信号を受信するセンサーチップ検出回路149、および排出手段133を制御する排出ドライバー回路150などを備えている。
【0079】
次に、ガス検出装置100の動作について、以下に説明する。
本体部130の上部のセンサー部カバー131の内部には、センサーチップ検出器148が設けられており、このセンサーチップ検出器148でセンサーチップ110の有無が検出される。信号処理部144は、センサーチップ検出器148からの検出信号を検出すると、センサーチップ110が装着された状態であると判断し、表示部141へ検出動作を実施可能な旨を表示させる表示信号を出す。
【0080】
そして、例えば利用者により操作パネル140が操作され、操作パネル140から検出処理を開始する旨の指示信号が信号処理部144へ出力されると、まず、信号処理部144は、光源ドライバー回路145に光源作動の信号を出力して光源135Aを作動させる。光源135Aが駆動されると、光源135Aから単一波長で直線偏光の安定したレーザー光が射出される。また、光源135Aには、温度センサー、光量センサーが内蔵されており、その情報が信号処理部144へ出力される。そして、信号処理部144は、光源135Aから入力された温度および光量に基づいて、光源135Aが安定動作していると判断すると、排出ドライバー回路150を制御して排出手段133を作動させる。これにより、検出すべき標的物質(ガス分子)を含んだ気体試料が、吸引口120Aから、吸引流路120B、センサーチップ110内、排出流路120C、排出口120Dへと誘導される。
【0081】
また、センサーチップ110は、金属ナノ構造体が複数組み込まれ、局在表面プラズモン共鳴を利用したセンサーである。このようなセンサーチップ110では、レーザー光により金属ナノ構造体間で増強電場が形成され、この増強電場内にガス分子が入り込むと、分子振動の情報を含んだラマン散乱光、およびレイリー散乱光が発生する。
これらのレイリー散乱光やラマン散乱光は、光学部135を通ってフィルター136に入射し、フィルター136によりレイリー散乱光が分離され、ラマン散乱光がエタロン5に入射する。そして、信号処理部144は、電圧制御部146を制御し、エタロン5に印加する電圧を調整し、検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光をエタロン5で分光させる。この後、分光した光が受光素子137で受光されると、受光量に応じた受光信号が受光回路147を介して信号処理部144に出力される。
信号処理部144は、上記のようにして得られた検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光のスペクトルデータと、ROMに格納されているデータとを比較し、目的のガス分子か否かを判定し、物質の特定をする。また、信号処理部144は、表示部141にその結果情報を表示させたり、接続部142から外部へ出力したりする。
【0082】
なお、
図4、
図5において、ラマン散乱光をエタロン5により分光して分光されたラマン散乱光からガス検出を行うガス検出装置100を例示したが、ガス検出装置として、ガス固有の吸光度を検出することでガス種別を特定するガス検出装置として用いてもよい。この場合、センサー内部にガスを流入させ、入射光のうちガスにて吸収された光を検出するガスセンサーを本発明の光学モジュールとして用いる。そして、このようなガスセンサーによりセンサー内に流入されたガスを分析、判別するガス検出装置100を本発明の電子機器とする。このような構成でも、本発明のエタロンを用いてガスの成分を検出することができる。
【0083】
また、特定物質の存在を検出するためのシステムとして、上記のようなガスの検出に限られず、近赤外線分光による糖類の非侵襲的測定装置や、食物、生体、鉱物等の情報の非侵襲的測定装置等の、物質成分分析装置を例示できる。
【0084】
(第4実施形態)
次に、上記物質成分分析装置の一例として、食物分析装置を説明する。
【0085】
図6は、エタロン5を利用した電子機器の一例である食物分析装置の構成を示すブロック図である。
この食物分析装置200は、検出器(光学モジュール)210と、制御部220と、表示部230と、を備えている。検出器210は、光を射出する光源211と、測定対象物からの光が導入される撮像レンズ212と、撮像レンズ212から導入された光を分光するエタロン5と、分光された光を検出する撮像部(受光部)213と、を備えている。
また、制御部220は、光源211の点灯・消灯制御、点灯時の明るさの制御を実施する光源制御部221と、エタロン5を制御する電圧制御部222と、撮像部213を制御し、撮像部213で撮像された分光画像を取得する検出制御部223と、信号処理部224と、記憶部225と、を備えている。
【0086】
この食物分析装置200は、装置を駆動させると、光源制御部221により光源211が制御されて、光源211から測定対象物に光が照射される。そして、測定対象物で反射された光は、撮像レンズ212を通ってエタロン5に入射する。エタロン5は電圧制御部222の制御により所望の波長を分光可能な電圧が印加されており、分光された光が、例えばCCDカメラ等により構成される撮像部213で撮像される。また、撮像された光は分光画像として、記憶部225に蓄積される。また、信号処理部224は、電圧制御部222を制御してエタロン5に印加する電圧値を変化させ、各波長に対する分光画像を取得する。
【0087】
そして、信号処理部224は、記憶部225に蓄積された各画像における各画素のデータを演算処理し、各画素におけるスペクトルを求める。また、記憶部225には、例えばスペクトルに対する食物の成分に関する情報が記憶されており、信号処理部224は、求めたスペクトルのデータを、記憶部225に記憶された食物に関する情報を基に分析し、検出対象に含まれる食物成分、およびその含有量を求める。また、得られた食物成分および含有量から、食物カロリー、鮮度等も算出することができる。さらに、画像内のスペクトル分布を分析することで、検査対象の食物の中で鮮度が低下している部分の抽出等をも実施することができ、さらには、食物内に含まれる異物等の検出をも実施することができる。
そして、信号処理部224は、得られた検査対象の食物の成分や含有量、カロリーや鮮度等の情報を表示部230に表示させる処理をする。
【0088】
また、
図6において、食物分析装置200の例を示すが、略同様の構成により、上述したようなその他の情報の非侵襲的測定装置としても利用することができる。例えば、血液等の体液成分の測定、分析等、生体成分を分析する生体分析装置として用いることができる。このような生体分析装置としては、例えば血液等の体液成分を測定する装置として、エチルアルコールを検知する装置とすれば、自動車運転者の飲酒状態を検出する酒気帯び運転防止装置として用いることができる。また、このような生体分析装置を備えた電子内視鏡システムとしても用いることができる。
さらには、鉱物の成分分析を実施する鉱物分析装置としても用いることができる。
【0089】
さらには、本発明の波長可変干渉フィルター、光学モジュール、電子機器としては、以下のような装置に適用することができる。
例えば、各波長の光の強度を経時的に変化させることで、各波長の光でデータを伝送させることも可能であり、この場合、光学モジュールに設けられたエタロンにより特定波長の光を分光し、受光部で受光させることで、特定波長の光により伝送されるデータを抽出することができ、このようなデータ抽出用光学モジュールを備えた電子機器により、各波長の光のデータを処理することで、光通信を実施することもできる。
【0090】
(第5実施形態)
また、他の電子機器として、本発明のエタロン(波長可変干渉フィルター)により光を分光して、分光画像を撮像する分光カメラ、分光分析機などにも適用できる。このような分光カメラの一例として、エタロンを内蔵した赤外線カメラが挙げられる。
図7は、分光カメラの構成を示す斜視図である。分光カメラ300は、
図7に示すように、カメラ本体310と、撮像レンズユニット320と、撮像部330とを備えている。
カメラ本体310は、利用者により把持、操作される部分である。
撮像レンズユニット320は、カメラ本体310に設けられ、入射した画像光を撮像部330に導光する。また、この撮像レンズユニット320は、対物レンズ321、結像レンズ322、およびこれらのレンズ間に設けられたエタロン5を備えて構成されている。
撮像部330は、受光素子により構成され、撮像レンズユニット320により導光された画像光を撮像する。
このような分光カメラ300では、エタロン5により撮像対象となる波長の光を透過させることで、所望波長の光の分光画像を撮像することができる。
【0091】
さらには、本発明のエタロンをバンドパスフィルターとして用いてもよく、例えば、発光素子が射出する所定波長域の光のうち、所定の波長を中心とした狭帯域の光のみを分光して透過させる光学式レーザー装置としても用いることができる。
また、本発明のエタロンを生体認証装置として用いてもよく、例えば、近赤外領域や可視領域の光を用いた、血管、指紋、網膜、虹彩などの認証装置にも適用できる。
【0092】
さらには、光学モジュールおよび電子機器を、濃度検出装置として用いることができる。この場合、エタロンにより、物質から射出された赤外エネルギー(赤外光)を分光して分析し、サンプル中の被検体濃度を測定する。
【0093】
上記に示すように、本発明の波長可変干渉フィルター、光学モジュール、および電子機器は、入射光から所定の光を分光するいかなる装置にも適用することができる。そして、上述のように、1つのデバイスで複数の波長を分光させることができるため、複数の波長のスペクトルの測定、複数の成分に対する検出を精度よく実施することができる。したがって、複数デバイスにより所望の波長を取り出す従来の装置に比べて、光学モジュールや電子機器の小型化を促進でき、例えば、携帯用途、車載用途として好適に用いることができる。
【0094】
本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更することができる。そして、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有するものにより可能である。