特許第6035801号(P6035801)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6035801ゴルフクラブヘッド、ゴルフクラブ及び軌道算出システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6035801
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッド、ゴルフクラブ及び軌道算出システム
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/00 20150101AFI20161121BHJP
   A63B 69/36 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   A63B53/00 B
   A63B69/36 541Z
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-63262(P2012-63262)
(22)【出願日】2012年3月21日
(65)【公開番号】特開2013-192756(P2013-192756A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細川 眞
(72)【発明者】
【氏名】服部 敦夫
【審査官】 大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−196241(JP,A)
【文献】 特開昭64−011573(JP,A)
【文献】 特開2008−073210(JP,A)
【文献】 特表2011−515164(JP,A)
【文献】 特開2005−161036(JP,A)
【文献】 特開2003−199859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/00
A63B 69/36
A63B 60/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド本体と、
前記ヘッド本体の動きを表す物理量を検出するセンサであって、データを送信する送信手段に対して当該検出した物理量を示すデータを出力するセンサと、前記センサの向きを調節する調節手段とを有し、当該ヘッド本体に対して着脱可能に取り付けられる重りと
を備えることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載のゴルフクラブヘッドと、
シャフトと、
前記シャフトに取り付けられているグリップと、
前記センサが出力するデータを送信する送信手段とを備え、
前記送信手段は、前記シャフトのうち前記グリップが取り付けられている部分に設けられている
ことを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項3】
請求項1に記載のゴルフクラブヘッド、シャフト、前記シャフトに取り付けられているグリップ及び前記センサが出力するデータを送信する送信手段を備えるゴルフクラブ、または、請求項に記載のゴルフクラブと、
前記送信手段により送信されるデータであって、前記ゴルフクラブがスイングされて前記ゴルフクラブヘッドがボールに衝突したときに前記センサが検出した物理量を示すデータを受信する受信手段を有し、前記受信手段が受信したデータが示す物理量に基づき、前記ボールの軌道を算出する算出装置と
を備えることを特徴とする軌道算出システム。
【請求項4】
前記ヘッド本体は、前側にフェース面を有し、
前記センサは、前記ヘッド本体の前後方向と所定の角度をなす軸を中心とした角速度を前記物理量として検出し、
前記算出装置は、前記センサにより検出された角速度から、前記ボールの縦方向のスピン量または横方向のスピン量を算出し、当該算出したスピン量を用いて前記軌道を算出する
ことを特徴とする請求項に記載の軌道算出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブヘッドに衝突したボールの軌道を算出するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブヘッドに取り付けたセンサによりそのゴルフクラブヘッドの動きを検出する技術がある。特許文献1には、ゴルフクラブヘッドに内蔵した加速度検出器からの計測データに基づき、ヘッドのスピードやフェース面の傾きを求める技術について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭64−11573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ゴルフクラブヘッドには、様々な重さの重りが着脱できるものがあり、取り付ける重りの重さを変えることで、そのゴルフクラブヘッドの重量のバランスを変化させ、重心位置を調整することがある。これは、重量のバランスを変化させることでスイング中のゴルフクラブヘッドの動きを変化させ、ボールの軌道を使用者が望むものに近づけることを目的としたものであり、例えばフィッティングと呼ばれている。このフィッティングにおいて、例えば特許文献1の技術を利用して、ゴルフクラブヘッドに取り付けられたセンサ(つまり加速度検出器)が検出する物理量(つまり加速度)からそのゴルフクラブヘッドの動きを求め、その結果から予想されるボールの軌道を算出することが考えられる。
【0005】
しかしながら、このようなセンサが取り付けられたゴルフクラブヘッドでは、打球時の衝撃によりセンサが故障することがある。その場合に、特許文献1の技術では、センサがゴルフクラブヘッドに内蔵されているため、故障したセンサを交換するのに手間や時間がかかる。また、ゴルフの試合や競技ゴルフにおいては、加速度検出器のような電気的に動作する装置を取り付けたゴルフクラブヘッドの使用が認められていないから、この技術のようなフィッティングで使用したゴルフクラブヘッドそのものを用いてプレーすることができない。
【0006】
そこで、本発明は、重量のバランスを変化させることが可能なゴルフクラブヘッドを用いて打撃したボールの軌道を算出する場合に、ヘッド本体への着脱が容易なセンサを用いてその算出に用いる物理量を検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、ヘッド本体と、前記ヘッド本体の動きを表す物理量を検出するセンサであって、データを送信する送信手段に対して当該検出した物理量を示すデータを出力するセンサと、前記センサの向きを調節する調節手段とを有し、当該ヘッド本体に対して着脱可能に取り付けられる重りとを備えることを特徴とするゴルフクラブヘッドを提供する
【0008】
また、本発明は、上記のゴルフクラブヘッドと、シャフトと、前記シャフトに取り付けられているグリップと、前記センサが出力するデータを送信する送信手段とを備え、前記送信手段は、前記シャフトのうち前記グリップが取り付けられている部分に設けられていることを特徴とするゴルフクラブを提供する。
【0009】
また、本発明は、上記のゴルフクラブヘッド、シャフト、前記シャフトに取り付けられているグリップ及び前記センサが出力するデータを送信する送信手段を備えるゴルフクラブ、または、前述したゴルフクラブと、前記送信手段により送信されるデータであって、前記ゴルフクラブがスイングされて前記ゴルフクラブヘッドがボールに衝突したときに前記センサが検出した物理量を示すデータを受信する受信手段を有し、前記受信手段が受信したデータが示す物理量に基づき、前記ボールの軌道を算出する算出装置とを備えることを特徴とする軌道算出システムを提供する。
本発明においては、前記ヘッド本体は、前側にフェース面を有し、前記センサは、前記ヘッド本体の前後方向と所定の角度をなす軸を中心とした角速度を前記物理量として検出し、前記算出装置は、前記センサにより検出された角速度から、前記ボールの縦方向のスピン量または横方向のスピン量を算出し、当該算出したスピン量を用いて前記軌道を算出してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、重量のバランスを変化させることが可能なゴルフクラブヘッドを用いて打撃したボールの軌道を算出する場合に、ヘッド本体への着脱が容易なセンサを用いてその算出に用いる物理量を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態における軌道算出システム1の外観を示す図である。
図2】ゴルフクラブヘッドの外観を示す図である。
図3】ゴルフクラブヘッドがボールと衝突する瞬間の様子を示す図である。
図4】ヘッド本体の断面を示す図である。
図5】検出部材の外観を示す図である。
図6】ゴルフクラブのグリップ部分の断面を示す図である。
図7】軌道算出装置が備えるハードウェアの構成を示す図である。
図8】衝撃力の大きさについて説明するための図である。
図9】ゴルフクラブヘッドの回転量について説明するための図である。
図10】ゴルフクラブヘッドの回転量について説明するための図である。
図11】衝突方向及びフェース面の向きを説明するための図である。
図12】衝突方向及びフェース面の向きを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施形態]
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、実施形態における軌道算出システム1の外観を示す図である。軌道算出システム1は、ゴルフクラブ2と、軌道算出装置3とを備える。ゴルフクラブ2は、ゴルフクラブヘッド10、シャフト11及びグリップ12を備える。シャフト11の一方の端部にはゴルフクラブヘッド10が取り付けられ、他方の端部にはグリップ12が取り付けられている。軌道算出装置3は、デスクトップ型のパーソナルコンピュータであり、使用者がゴルフクラブ2をスイングしてボール(ゴルフボール)を打ったときに、ボールと衝突したゴルフクラブヘッド10の動きからそのボールの軌道を算出する装置である。軌道算出装置3により算出される軌道は、例えば、使用者がゴルフクラブを購入するときの参考にされたり、屋内でゴルフ場の景色をスクリーンに映しながらプレーするゲームにおいてボールを打った結果を表示したりするという用途に用いられる。
【0013】
図2は、ゴルフクラブヘッド10の外観を示す図である。ゴルフクラブヘッド10は、ヘッド本体20を形成するフェース部21、クラウン部22、ソール部23及びホーゼル部24と、重り部材30と、検出部材40とを有する。図2(a)では、フェース部21側から見たゴルフクラブヘッド10が示されている。フェース部21は、ゴルフクラブヘッド10のうち、ボールと衝突してボールにゴルフクラブ2の運動エネルギーを伝達する部分である。フェース部21のうち、ボールが衝突する面、すなわち、ゴルフクラブヘッド10の外側に露出している面をフェース面という。フェース部21は、ゴルフクラブ2を使用者が構えたときに空を向く側がクラウン部22と接続されており、地面を向く側がソール部23と接続されている。ゴルフクラブヘッド10においては、クラウン部22が位置する側をクラウン側といい、ソール部23が位置する側をソール側という。また、クラウン側からソール側に向かう方向(図中の矢印A1で示す方向)をクラウン・ソール方向という。ホーゼル部24は、ゴルフクラブヘッド10のうち、シャフトが取り付けられる部分である。クラウン部22は、ホーゼル部24と接続されている。以下では、ゴルフクラブヘッド10において、ホーゼル部24が位置する側をヒール側といい、その反対側をトウ側という。また、トウ側からヒール側に向かう方向(図中の矢印A2で示す方向)をトウ・ヒール方向という。
【0014】
図2(b)では、ヒール側から見たゴルフクラブヘッド10が示されており、図2(c)では、ソール側から見たゴルフクラブヘッド10が示されている。ゴルフクラブヘッド10においては、ヒール側から見たときに、フェース部21が位置する側を前側といい、その反対側を後ろ側という。また、前側から後ろ側に向かう方向(図中の矢印A3で示す方向)を前後方向という。フェース部21の後ろ側では、クラウン部22及びソール部23が互いに接続されている。ソール部23のうち、前後方向の中央よりもフェース部21に近い位置であり、且つ、トウ・ヒール方向の中央よりヒール側に近い位置には、重り部材30が取り付けられている。以下では、この位置を「第1取り付け位置」という。重り部材30は、着脱可能となっており、第1取り付け位置から取り外すことができる。この第1取り付け位置には、重り部材30とは重さが異なる他の重り部材も取り付けられるようになっている。第1取り付け位置に取り付けられる重り部材の重さが変化すると、ゴルフクラブヘッド10における第1取り付け位置とそれ以外の位置との重量のバランスが変化して、スイング中のゴルフクラブヘッド10の動き方が変化する。
【0015】
例えば、第1取り付け位置に重り部材30よりも重い重り部材を取り付けることで、第1取り付け位置のそれ以外の位置に対する重量のバランスが増加して、ゴルフクラブヘッド10の重心の位置が第1取り付け位置の方向に移動する。ゴルフクラブヘッド10の重心は、概ねトウ・ヒール方向の中央且つ前後方向の中央あたりにあるため、このように移動することにより、シャフト11の軸に近づくことになる。これにより、第1取り付け位置に重り部材30を取り付ける場合に比べて、ゴルフクラブヘッド10が、シャフト11の軸を中心とした回転をしやすくなる。このように、重り部材は、上記の重量のバランスを変化させる重りとして機能するものである。
【0016】
図3は、使用者がゴルフクラブ2をスイングしたときに、ゴルフクラブヘッド10がボールと衝突する瞬間の様子を示す図である。図3では、使用者がボールを飛ばしたい方向を表す飛球線方向A4を矢印で示している。また、図3では、この瞬間におけるゴルフクラブヘッド10の向きを分かりやすくするため、飛球線方向A4に直交する二点鎖線を、ゴルフクラブヘッド10とボールとが衝突する位置を通るようにして示している。図3(a)では、フェース部21のうちボールと衝突する部分が飛球線方向A4に対して垂直になっている。一方、図3(b)では、ゴルフクラブヘッド10のトウ側がヒール側よりも遅れた状態、いわゆるフェース面が開いた状態となっており、図3(c)では、反対に、ゴルフクラブヘッド10のトウ側がヒール側に先行した状態、いわゆるフェース面が閉じた状態となっている。フェース面が開いた状態ではスライスが出やすく、フェース面が閉じた状態ではフックが出やすい。
【0017】
使用者がゴルフクラブ2を同じようにスイングした場合、シャフト11の軸を中心とした回転をゴルフクラブヘッド10がしやすいほど、フェース面が閉じやすくなり、この回転をしにくいほど、フェース面が開きやすくなる。例えば、フェース面が開いた状態になりやすい使用者であれば、第1取り付け位置に取り付ける重り部材の重さを重くすることで、フェース面が閉じた状態になりやすくして、スライスを出にくくすることができる。このように、スイングを変えることなく、上述したヘッドの動き方のようなゴルフクラブの特性を変化させることで、ボールの飛び方を使用者にとって望ましいものに近づけることを、フィッティングという。
【0018】
図2に戻って説明する。ソール部23のうち、トウ・ヒール方向の中央且つ後ろ側の端部に近い位置には、検出部材40が取り付けられている。以下では、この位置を「第2取り付け位置」という。検出部材40は、内部に角速度センサ及び加速度センサを有している。これらのセンサが検出した結果は、前述した軌道算出装置3がボールの軌道を算出する際に用いられる。検出部材40は、ソール部23に対して着脱可能となっている。つまり、検出部材40は、第2取り付け位置から取り外すことができる。検出部材40を取り外した第2取り付け位置には、重り部材30を取り付けることができるようになっている。反対に、重り部材30を取り外した第1取り付け位置には、検出部材40を取り付けることができる。要するに、重り部材30及び検出部材40は、両方とも、第1取り付け位置及び第2取り付け位置のどちらにも取り付けられるようになっている。
【0019】
使用者は、例えば、ゴルフ練習場やゴルフ用品店などで上記のフィッティングを行うときには、第2取り付け位置に検出部材40を取り付けておき、ゴルフ場でプレーするときには、第2取り付け位置に重り部材30を取り付けておくといった使い方をする。検出部材40は、重り部材30と同じ重さとなるように形成されている。このため、検出部材40と重り部材30とを取り替えても、第2取り付け位置と他の位置との重量のバランスは変化しないようになっている。このように、検出部材も、重り部材と同様に、前述の重量のバランスを変化させる重りとして機能するものである。
【0020】
続いて、検出部材40の詳細について説明する。
図4は、図2の矢視IV-IVに見たヘッド本体20の断面を示す図である。矢視IV-IVは、ヘッド本体20のトウ・ヒール方向の中央からヒール側に向かう方向を示している。図4では、見やすくするために検出部材40は断面ではなく外観を示している。図4(a)では、重り部材30及び検出部材40が取り付けられているヘッド本体20が示されており、図4(b)では、重り部材30及び検出部材40がヘッド本体20から取り外されたところが示されている。これらの図に示されているように、ヘッド本体20は、中空になっており、ソール部23の第1取り付け位置には孔25が、第2取り付け位置には孔26が設けられている。孔25及び42の内側には、雌ねじ(図示は省略している)が切られている。重り部材30及び検出部材40は、それぞれボルトの形をしているものであり、雄ねじを切られた部分を孔25及び42にねじ込むことで第1及び第2取り付け位置にそれぞれ取り付けられるようになっている。
【0021】
ホーゼル部24の内側には、上述したとおりシャフト11が差し込まれている。シャフト11は、内側に中空部13を有している。中空部13から検出部材40にかけては、配線48が配置されている。配線48は、検出部材40に接続されている。検出部材40及び配線48は、図4(b)に示すように検出部材40がヘッド本体20から取り外されている状態で接続された後に、検出部材40が第2取り付け位置に取り付けられることで、図4(a)に示す状態となっている。
【0022】
図5は、検出部材40の外観を示す図である。図5(a)では、図4における検出部材40を拡大したものが示されている。検出部材40は、ボルト頭部41と、ボルトねじ部42と、角速度センサ43と、加速度センサ44と、方向調節部材45とを備える。図5(b)では、ボルト頭部41側から見た検出部材40が示されている。ボルト頭部41は、中央に孔が開いた円盤の形(ドーナツ状)に形成されており、ボルトねじ部42と接続されている。ボルト頭部41は、ボルトねじ部42に接続されている側とは反対側に2つの孔46が設けられており、これらの孔46に突起を差し込む形をした器具により回転させられるようになっている。なお、ボルト頭部は、この形に限らず、例えば六角柱の形(いわゆる六角ボルトの頭部)や蝶の羽の形(いわゆる蝶ボルトの頭部)などとなっていてもよい。要するに、ボルト頭部は、使用者が回転させることが可能な形となっていればよい。
【0023】
ボルトねじ部42は、中空の円柱の形に形成されており、外周面に雄ねじ(図示は省略している)が切られている。ボルト頭部41が回転させられることで、ボルトねじ部42も軸を中心に回転して、孔25にねじ込まれるようになっている。ボルトねじ部42の中空の空間は、ボルト頭部41の中央の孔と繋がっている。この空間には、角速度センサ43及び加速度センサ44が設けられている。
【0024】
角速度センサ43は、3軸を中心とした角速度をそれぞれ検出するセンサである。この3軸とは、図5(a)に示すX軸、Y軸及びZ軸である。Z軸は、角速度センサ43の中心P1を通り、ボルトねじ部42の軸に沿った軸である。X軸及びY軸は、Z軸に直交し、且つ、中心P1で互いに直交する軸である。加速度センサ44は、自センサの中心P2が3つの方向へ加速する度合い(加速度)をそれぞれ検出するセンサである。この3つの方向とは、前述したX軸、Y軸及びZ軸がそれぞれ延伸する方向(それぞれX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向という。)と同じである。角速度センサ43及び加速度センサ44は、互いに接続されている。角速度センサ43及び加速度センサ44には、配線48が接続されている。配線48は、ボルトねじ部42に設けられた孔47からボルトねじ部42の外側に引き出されている。角速度センサ43が検出した角速度を示すデータと、加速度センサ44が検出した加速度を示すデータとは、配線48を介して出力される。
【0025】
方向調節部材45は、一方の端部が加速度センサ44に接続され、他方の端部がボルト頭部41の中央の孔から外部に露出するように設けられている。この他方の端部は、円盤状に形成され、円周方向に回転するようにしてボルト頭部41により支持されている。方向調節部材45のボルト頭部41から露出している面には、直線状の溝が形成されている。マイナスドライバーなどをこの溝に当てて方向調節部材45を回転させることで、方向調節部材45に接続されている加速度センサ44及び加速度センサ44に接続されている角速度センサ43がともに回転するようになっている。使用者は、方向調節部材45を回転させることで、角速度センサ43により角速度が検出される3軸のうち、X軸及びY軸の向きを調節し、加速度センサ44により加速度が検出される3つの方向のうち、X軸方向及びY軸方向の向きを調節することができる。このように、方向調節部材45は、角速度センサ43及び加速度センサ44の向きを調節する調節手段として機能する。本実施形態においては、Y軸がトウ・ヒール方向に向くように角速度センサ43の向きが調節されているものとする。つまり、Y軸方向がトウ・ヒール方向に向くように加速度センサ44の向きも調節されていることになる。
【0026】
図6は、ゴルフクラブ2のグリップ12が取り付けられている部分の断面を示す図である。グリップ12の内側に位置するシャフト11の内側の中空部13には、通信装置50が設けられている。通信装置50は、電池等により電力を供給する電源部と、この電源部から供給される電力で動作する通信部を有している。この通信部は、例えば、Bluetooth(登録商標)などの規格による無線通信を行う。通信装置50には、図4に示す配線48が接続されており、角速度センサ43及び加速度センサ44からそれぞれデータが出力されてくる。通信装置50は、両センサから出力されてきたこれらのデータを、前述した通信部の動作により無線で送信する。このように、通信装置50は、これらのセンサが検出した結果(角速度及び加速度)を示すデータを送信する送信手段として機能する。また、通信装置50は、シャフト11のうちグリップ12が取り付けられている部分(以下「グリップ部」という。)に設けられている。
【0027】
このグリップ部は、ゴルフクラブ2においてゴルフクラブヘッド10から最も離れている部分であり、且つ、周囲をグリップ12で覆われているため、ゴルフクラブヘッド10が受けた衝撃力が最も伝わりにくい部分である。また、グリップ部では、スイング中のシャフト11のしなりや捩れも少ない。つまり、通信装置50は、ゴルフクラブ2において最も壊れにくい場所に設けられていることになる。また、例えば、通信装置50をヘッド本体20の内部に設けると、ゴルフクラブヘッド10の重量のバランスに影響を与えることになる。ゴルフクラブ2においては、通信装置50がグリップ部に設けられていることで、このような影響が生じないようになっている。通信装置50が送信したこれらのデータは、図1に示された軌道算出装置3が受信する。
【0028】
図7は、軌道算出装置3が備えるハードウェアの構成を示す図である。軌道算出装置3は、制御部31と、記憶部32と、通信部33と、操作部34と、表示部35と、電源部36とを備える。制御部31は、CPU(Central Processing Unit)を含む演算装置やメモリを備える。制御部31の演算装置は、メモリや記憶部32に記憶されたプログラムを実行して、軌道算出装置3の各部を制御したり、データを処理したりする。記憶部32は、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置を備え、前述したプログラムや画像を示す画像データなどを記憶する。操作部34は、キーボードやマウスなどの操作子であり、使用者の操作に応じてその操作内容を表す操作データを制御部31に供給する。表示部35は、液晶表示画面及び液晶駆動回路を備えており、制御部31から供給されてくる画像データが示す画像を表示する。電源部36は、図示せぬコンセントに接続するプラグ及び電力線を有し、これらのプラグ及び電力線を介して取得した電力を、軌道算出装置3が備える各部に供給する。
【0029】
通信部33は、例えばBluetoothの規格を用いて無線通信を行うものであり、前述した通信装置50と無線で通信する。通信部33は、通信装置50により送信されるデータを受信する受信手段として機能する。通信部33が受信するデータは、例えば、ゴルフクラブ2がスイングされてゴルフクラブヘッド10がボールに衝突したときに上述した各センサが検出した角速度及び加速度を示すデータである。通信部33は、通信装置50から送信されてきたデータを制御部31に供給する。なお、以上で述べた無線通信によるデータのやり取りを、マイクロSD(Secure Digital)等のメモリを用いて行うようにしてもよい。この場合、例えば通信装置50の代わりにマイクロSDをシャフト11の内部に設けておき、上述した各センサから出力されてきたデータをそのマイクロSDに記憶させる。このマイクロSDは、ゴルフクラブがスイングられた後で取り出される。そして、軌道算出装置が、通信部33の代わりにマイクロSDを読み取る手段を備えておき、スイング後に取り出されたマイクロSDからこの手段がデータを読み取ることで、データのやり取りが行われる。
【0030】
軌道算出装置3は、以上のハードウェアを備えることで、通信部33が受信したデータが示す角速度及び加速度に基づき、ゴルフクラブヘッド10に衝突したボールの軌道を算出する算出装置として機能する。軌道算出装置3は、ボールの初速、スピン量及び打ち出し角に基づいてボールの軌道を算出する。ボールの初速とは、ゴルフクラブヘッド10に衝突することで瞬間的に加速されたボールがゴルフクラブヘッド10から離れた瞬間のそのボールの速度のことをいう。ボールの初速は、ボールがゴルフクラブヘッド10に衝突したときにゴルフクラブヘッド10から受ける力の大きさ(衝撃力という)に応じた値となる。軌道算出装置3は、この衝撃力を求めることで、ボールの初速の値を算出する。
【0031】
図8は、衝撃力の大きさについて説明するための図である。図8では、ボールがヘッドに接触している期間における、ゴルフクラブヘッド10の前後方向(図2に示す前側から後ろ側へ向かう方向)への加速度の変化を示している。この加速度は、加速度センサ44が検出したX軸方向への加速度及びZ軸方向への加速度のそれぞれの前後方向への成分を合計することで求められる。図8では、横軸が時刻を示し、縦軸が加速度を示している。この加速度は、前後方向に加速する場合にマイナスの数値となるように示されている。ボールが衝突したゴルフクラブヘッド10は、そのボールがフェース面に接触している間、ボールから前後方向への力を受け続けるため、前後方向に加速する。言い換えると、ゴルフクラブヘッド10が前後方向に加速している間が、フェース面にボールが接触している期間である。以下では、この期間を「ボール接触期間」という。図8では、ボール接触期間が範囲B1で示されている。
【0032】
このボール接触期間は、ゴルフクラブヘッド10がボールから力を受けている期間として求められる。ボール接触期間にゴルフクラブヘッド10がボールから受ける力の大きさ、すなわち衝撃力は、ボール接触期間における加速度の大きさを積分した値、つまり、図8のB2部の面積に所定の係数k1を乗じることで求められる。この係数k1は、ゴルフクラブヘッド10及びボールの各々の反発係数などによって決まるものである。係数k1は、例えば、ゴルフクラブ2を用いて異なるヘッドスピードで打撃されたボールの初速を周知の方法で測定したものと、そのときのB2部の面積の大きさとから求めることができる。このようにして係数k1を予め求めておくことで、軌道算出装置3は、加速度センサ44が検出した結果から、前後方向への加速度を算出し、その加速度に係数k1を乗じた値を、ボールの初速の値として算出する。
【0033】
また、軌道算出装置3は、ボールのスピン量を、重心を中心としたゴルフクラブヘッド10の回転量に基づいて算出する。このスピン量とは、ボールが回転する速さの度合いを表すものであり、例えば1分間辺りの回転数(rpm:revolution per minute)で算出される。
図9及び図10は、ゴルフクラブヘッド10の回転量について説明するための図である。図9では、ボールと衝突するゴルフクラブヘッド10をトウ側から水平方向に見た様子の一例が示されている。図9では、説明を分かりやすくするため、ヘッド本体20の断面と、検出部材40及びボールの外観と、ゴルフクラブヘッド10の重心Cとを示している。図9(a)では、ボールがゴルフクラブヘッド10に接触した瞬間の様子が示されており、図9(b)では、ボールがゴルフクラブヘッド10から離れる瞬間の様子が示されている。
【0034】
この例では、図9(a)に示したベクトルD0が表す方向及び大きさの衝撃力が、ボールからゴルフクラブヘッド10に与えられる。実際には、この衝撃力は、ボール接触期間に渡って与えられるものであるが、説明の便宜上、図9(a)に示すこととした。この場合、ゴルフクラブヘッド10は、この衝撃力の重心Cを中心とした円周方向へのベクトルD1で表される分力により、前側がクラウン側に移動し、後ろ側がソール側に移動するように、重心Cを中心として回転する。この例では、ゴルフクラブヘッド10は、図9(b)に示すようにゴルフクラブヘッド10がボールから衝撃力を受け終わるときまでに、重心Cを中心として角度θ1だけ回転している。角速度センサ43の向きは、上記のとおり、Y軸がトウ・ヒール方向に向くように調節されている。このため、角度θ1は、Y軸に平行で重心Cを通る軸を中心としてゴルフクラブヘッド10が回転した角度となっている。このとき、角速度センサ43は、図9(b)に示すように、Y軸を中心として角度θ1回転していることになる。軌道算出装置3は、ボール接触期間におけるY軸を中心とした角速度を積分することで、角度θ1を求める。
【0035】
また、ゴルフクラブヘッド10に衝突したボールも、フェース部21との摩擦により、フェース面との接点からクラウン側に向かう方向にボールを回転させる力D2を受ける。これはギア効果と呼ばれる現象である。この力D2の大きさは、角度θ1が大きいほど大きくなる。軌道算出装置3は、上記のとおり求めた角度θ1に応じた値を、Y軸を中心としたボールのスピン量(以下「縦方向スピン量」という。)として算出する。縦方向スピン量は、いわゆるバックスピンやトップスピンの単位時間当たりの回転数のことである。ここでいう縦方向とは、ボール接触期間におけるクラウン・ソール方向のことであり、概ね、鉛直方向に沿った方向となる。角度θ1と縦方向スピン量との関係は、ボールとフェース面との摩擦係数やボールの弾性率(ボールがどれだけ変形するかによってボールとフェース面との接触する面積が変化する)、ヘッドスピードなどによって決まる。この関係は、例えば、フェース面の様々な位置に様々なスピードでボールを衝突させたときに、縦方向スピン量を周知の方法で測定したものと、そのときに求められた角度θ1とから求めることができる。この関係を予め求めておくことで、軌道算出装置3は、角速度センサ43が検出した結果から、角度θ1を算出し、その角度θ1に応じた値を、縦方向スピン量として算出する。
【0036】
図10では、ボールと衝突するゴルフクラブヘッド10をソール側から見た様子の一例が示されている。図10(a)では、ボールがゴルフクラブヘッド10に衝突した瞬間の様子が示されており、図10(b)では、ボールがゴルフクラブヘッド10から離れる瞬間の様子が示されている。ゴルフクラブヘッド10は、ボールから受ける衝撃力によって、図9の例と同様の現象が生じて重心Cを中心として角度θ2回転する。この角度θ2は、クラウン・ソール方向に平行で重心Cを通る軸を中心としてゴルフクラブヘッド10が回転した角度を表している。この軸は、ボールの打撃時において概ね鉛直方向と平行になるものであり、以下では「鉛直軸」という。このとき、角速度センサ43も、鉛直軸を中心に角度θ2回転していることになる。軌道算出装置3は、ボール接触期間におけるX軸及びZ軸を中心とした角速度を積分し、それらの鉛直軸成分を合計することで、角度θ2を求める。そして、角度θ2とクラウン・ソール方向に沿った軸を中心としたボールのスピン量(以下「横方向スピン量」という。)との関係を縦方向スピン量と同様に求めておくことで、軌道算出装置3は、角速度センサ43が検出した結果を用いて算出した角度θ2に応じた値を、横方向スピン量として算出する。この横方向スピン量は、いわゆるスライススピンやフックスピンの単位時間当たりの回転数のことである。ここでいう横方向とは、ボール接触期間におけるトウ・ヒール方向のことであり、概ね、水平方向に沿った方向となる。
【0037】
また、軌道算出装置3は、打ち出し角を、上述したボール接触期間においてゴルフクラブヘッド10が移動している方向(以下「衝突方向」という。)と、衝突方向に対するフェース面の向きとに基づいて算出する。この打ち出し角は、フェース面から離れる瞬間のボールが進む方向と衝突方向とがなす角度で表される。
図11は、ゴルフクラブヘッド10を水平方向に見たときの衝突方向及びフェース面の向きを説明するための図である。図11(a)では、加速度センサ44が上記のボール接触期間に検出した3つの方向の加速度の積分値を表すベクトルを合成したベクトルD3を、鉛直方向上向きに見たところを示している。これらの合成前のベクトルは、ゴルフクラブヘッド10がボールから受ける衝撃力の3つの方向への分力を表している。つまり、このベクトルD3は、ゴルフクラブヘッド10が衝撃力を受ける方向と、その大きさを表している。
【0038】
フェース面に対して衝撃力が加わる方向は、フェース面及びボールの間で摩擦が働かなければ、フェース面に垂直な方向となるが、実際には摩擦が働くため、衝突方向の影響を受ける。言い換えれば、衝突方向は、ベクトルD3の向きに応じた方向となっている。このベクトルD3と衝突方向との関係を予め求めておくことで、軌道算出装置3は、加速度センサ44が検出した結果を用いて算出したベクトルD3に応じた値を、衝突方向として算出する。図11(a)では、軌道算出装置3が算出した衝突方向の一例である衝突方向A5を矢印で示している。軌道算出装置3は、ベクトルD3及び衝突方向A5を、図5に示すX軸、Y軸及びZ軸の座標系でそれぞれ表す。
【0039】
図11(b)では、衝突方向A5に対するフェース面の向きを示している。このフェース面の向きは、衝突方向A5に垂直な仮想の面E3に対するフェース面の角度θ3で表される。フェース面はバルジと呼ばれる緩やかな曲面を形成しているが、軌道算出装置3は、フェース面の中心における接平面E1と面E3とがなす角度をθ3として算出する。軌道算出装置3は、加速度センサ44が取り付けられる位置及び向きに応じて接平面E1を上記の座標系において表す式を予め記憶しておく。
【0040】
図12は、鉛直方向に見たときの衝突方向及びフェース面の向きを示す図である。図12では、上述したベクトルD3、衝突方向A5、接平面E1及び面E3を示している。この図に示すように、接平面E1及び面E3は、水平方向に見たときに角度θ4をなしている。以上のとおり、軌道算出装置3は、接平面E1と面E3とがなす角度のうち、鉛直方向に見たときのものであるθ3と、水平方向に見たときのものであるθ4とを算出する。そして、軌道算出装置3は、算出したこれらの角度θ3及びθ4から、ボールの打ち出し角を算出する。
軌道算出装置3は、以上のとおり算出したボールの初速、スピン量及び打ち出し角の値に基づき、ボールの軌道を算出する。軌道算出装置3は、ボールの軌道の算出を、周知の技術を用いて行う。
【0041】
本実施形態によれば、使用者は、例えば室内の練習場など打撃したボールの軌道が確認できない場所であっても、ゴルフクラブヘッド10に検出部材40を取り付けたゴルフクラブ2を用いてボールを打撃することで、軌道算出装置3が算出するボールの軌道を確認することができる。そして、確認した結果に応じてゴルフクラブヘッド10に取り付ける重りの重さを変えることで、ゴルフクラブヘッド10の重量のバランスを、図3の説明で述べたように、自分のスイングに合ったものとなるように調整することができる。
【0042】
打撃したボールをカメラで撮影したり、その位置をセンサで検出したりしてボールの軌道を算出するシステムがある。そのようなシステムでは、ボールの周辺にカメラやセンサを設置しなければならないため、手間がかかるし、例えば練習場ではこれらを設置する場所がなくて利用できない場合もある。本実施形態のゴルフクラブヘッド10によれば、ボールの軌道を算出するために用いるセンサ(角速度センサ43及び加速度センサ44)がゴルフクラブヘッド10に取り付けられているため、上記のような手間がかからないし、ゴルフクラブ2でボールを打撃することができる場所であれば、どのような場所でも利用することができる。
【0043】
ゴルフクラブヘッドに内蔵された、すなわち中空の内側に取り付けられたセンサを用いて角速度や加速度を検出するシステムがある。このようなシステムでは、ゴルフクラブヘッド10を備えるゴルフクラブ2と同様に、どのような場所でも利用することができるが、打撃時の衝撃により内蔵されているセンサが壊れた場合に、それを取り替えることがゴルフクラブヘッド10に比べて困難である。ゴルフクラブヘッド10では、検出部材40が備えるセンサが壊れた場合に、その検出部材40を取り外して代わりの検出部材40を取り付ければよい。この作業は、着脱可能な重りを取り外して取り付ける作業と同じであるから、前述の内蔵されているセンサを交換する作業よりも容易に行うことができる。
【0044】
検出部材40が有する各センサのように電気的に動作する装置が取り付けられたゴルフクラブヘッドは、ゴルフの試合や競技ゴルフなどでは使用することが禁止されている場合がある。このような場合に、ゴルフクラブヘッド10を用いれば、検出部材40を取り外して重り部材を取り付けてプレーするということを、センサを内蔵したヘッドを用いる場合よりも容易に行うことができる。さらに、取り付ける重り部材を検出部材40と同じ重さのものにすることで、上記のとおり調整した重量のバランスを変えることなく、使用者はプレーすることができる。
以上のとおり、本実施形態によれば、ゴルフクラブヘッド10のように重量のバランスを変化させることが可能なゴルフクラブヘッドを用いて打撃したボールの軌道を算出する場合に、ヘッド本体20への着脱が容易なセンサ(角速度センサ43及び加速度センサ44)を用いてその算出に用いる物理量(角速度及び加速度)を検出することができる。
【0045】
[変形例]
上述した実施形態は、本発明の実施の一例に過ぎず、以下のように変形させてもよい。また、上述した実施形態及び以下に示す各変形例は、必要に応じて組み合わせて実施してもよい。
【0046】
(変形例1)
軌道算出装置は、上述した実施形態では、デスクトップ型のパーソナルコンピュータであったが、ノートパソコンであってもよいし、iPhone等のスマートフォンや、iPad等のタブレットであってもよい。要するに、軌道算出装置は、検出部材40による検出結果(角速度及び加速度)に基づいてボールの軌道を算出する処理が実行できて、その結果を使用者に伝えることができるものであればよい。
【0047】
(変形例2)
軌道算出装置は、この結果を画像で表示することで使用者に伝えてもよいし、音声で伝えてもよい。例えば、横方向スピン量が或る範囲に収まっていれば「ナイスショット」という音声を出力し、その範囲から外れていれば「スライスです」または「フックです」という音声を出力するといった具合である。また、横方向スピン量や縦方向スピン量の値そのものを音声で出力してもよい。軌道算出装置が上述したようにスマートフォンであれば、使用者は、そのスマートフォンをポケットの中などに入れておき、スイングした後ボールの軌道を見ながらスピン量の値を音声で聞いて、軌道とスピン量との関係を認識することができるようになる。
【0048】
(変形例3)
軌道算出装置は、複数の装置で構成されていてもよく、例えば、軌道の算出と結果の表示とを別々の装置で行ってもよい。例えば、通信装置50がインターネット上のサーバに検出結果を送信して、そのサーバがボールの軌道を算出する。そして、そのサーバが算出したボールの軌道を示すデータを使用者のスマートフォンに送信し、スマートフォンがそのデータが示す軌道を表示する。これにより、スマートフォンでは軌道を算出するまでに要する時間が例えば5分や10分など使用者にとって長すぎるような場合に、より処理が早いサーバで軌道を算出させることで、使用者が軌道を確認するまでに待つ時間を短くすることができる。
【0049】
(変形例4)
軌道算出装置は、実施形態で述べた方法とは異なる方法でボールの軌道を算出してもよい。例えば、軌道算出装置は、ボール接触期間を加速度センサ44が検出した結果を用いて算出したが、角速度センサ43が検出した結果を用いて算出してもよい。ゴルフクラブヘッド10は、ボールと衝突した瞬間からボールが離れるまでの期間、すなわちボール接触期間においてボールから衝撃力を受けるため、この期間に重心を中心とした或る方向への回転が行われる。そして、ボールがゴルフクラブヘッド10から離れた後は、この方向へ回転する動きが収まるため、角速度センサ43が検出した結果も、図8に示す加速度の検出結果のように絶対値が増減を繰り返しながら最大値まで増加した後に、減少して収束することになる。軌道算出装置は、角速度センサ43による検出結果における図8に示す範囲B1と同様の範囲を、ボール接触期間として特定する。
【0050】
また、例えば、軌道算出装置は、上述した実施形態では、ボールの初速、スピン量及び打ち出し角の3つ値を算出したが、これらのうちの1つまたは2つを算出した結果からボールの軌道を算出する。その場合、軌道算出装置は、値を算出するために必要な物理量を検出するセンサを備えていればよい。例えば、スピン量だけを算出する場合であれば、軌道算出装置は、角速度センサ43を備え、加速度センサ44を備えていなくてもよいし、初速だけを算出する場合であれば、軌道算出装置は、加速度センサ44を備え、角速度センサ43を備えていなくてもよい。また、軌道算出装置は、上述した実施形態では、角速度及び加速度をボール接触期間における検出結果を積分して求めたが、この期間における最大値をそれぞれの値として求めてもよい。また、軌道算出装置は、上述した方法とは異なる周知の技術を用いてボールの軌道を算出してもよい。
【0051】
(変形例5)
角速度センサは、上述した実施形態では、角速度を検出する軸の数が3つであったが、これに限らず、1つ、2つまたは4つ以上であってもよい。いずれの場合も、軌道算出装置は、角速度センサが検出する角速度を、クラウン・ソール方向を軸とする成分と、トウ・ヒール方向を軸とする成分とに分解することで、上述した縦方向スピン量及び横方向スピン量を算出することができる。つまり、角速度センサは、ヘッド本体20の前後方向に所定の角度をなす軸を中心とした角速度を検出するものであればよい。この場合、軌道算出装置は、角速度センサにより検出された角速度から、縦方向スピン量及び横方向スピン量を算出し、算出したこれらのスピン量を用いてボールの軌道を算出する。なお、軌道算出装置は、縦方向スピン量または横方向スピン量のいずれか一方だけを算出し、算出したスピン量を用いて軌道を算出してもよい。
【0052】
(変形例6)
検出部材は、上述した実施形態では、角速度センサ43及び加速度センサ44を有していたが、これら以外のセンサを有していてもよい。例えば、検出部材は、振動センサと呼ばれる振動の大きさ(振幅)を検出するセンサや、衝撃センサと呼ばれる衝撃の大きさを検出するセンサなどを有していてもよい。これらのセンサが検出する振幅や衝撃の大きさは、ヘッド本体20に与えられる衝撃力の大きさに応じたものとなり、つまりは、ボールの初速に応じたものとなる。この場合、実施形態で述べたように、これらの振幅や衝撃の大きさとボールの初速との関係を予め求めておく。そして、軌道算出装置が、これらのセンサが検出した結果と求めておいた関係から、ボールの初速を算出し、ボールの軌道を算出する。上述した各センサは、いずれも、ヘッド本体20の加速度、角速度、振幅及び衝撃の大きさといったヘッド本体20の動きを表す物理量を検出するものである。そして、軌道算出装置は、ヘッド本体20の動きから、ボールの初速、スピン量及び打ち出し角を算出し、ボールの軌道を算出する。つまり、検出部材は、ヘッド本体20の動きを表す物理量を検出するセンサを有していればよい。
【0053】
(変形例7)
ヘッド本体は、上述した実施形態では、重り部材及び検出部材が取り付けられる位置が第1及び第2取り付け位置であったが、これらとは異なる位置であってもよい。この位置は、例えば、ソール部のトウ側であってもよいし、ヘッド本体の重心のソール側であってもよい。また、この位置は、クラウン部にあってもよい。要するに、重り部材及び検出部材は、ヘッド本体に対して着脱可能に取り付けられるようになっていればよい。これにより、実施形態と同様に、ゴルフクラブヘッド10のように重量のバランスを変化させることが可能なゴルフクラブヘッドを用いて打撃したボールの軌道を算出する場合に、ヘッド本体への着脱が容易なセンサを用いてその算出に用いる物理量を検出することができる。
【0054】
(変形例8)
通信装置50は、上述した実施形態では、シャフト11の中空部13のうちグリップ12が取り付けられている部分に設けられていたが、これ以外の場所に設けられていてもよい。通信装置50は、例えば、中空部13のうちグリップ12が取り付けられている部分以外の場所に設けられていてもよい。また、通信装置50は、大きさが収まるのであれば、検出部材40の内部に設けられていてもよい。この場合、配線48を接続したり外したりする手間も不要となり、使用者の利便性を向上させることができる。
【0055】
(変形例9)
上述した実施形態では、角速度センサ43及び加速度センサ44の向きは、それぞれY軸及びY軸方向がトウ・ヒール方向に向くように調節されていた。軌道算出装置3は、これらのセンサがトウ・ヒール方向以外の方向に向くように調節されていても、衝撃力及び角度θ1等の値を算出することができる。軌道算出装置3は、例えば、加速度であれば、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向がそれぞれ前後方向に対してなす角度が分かっていれば、検出された各加速度の前後方向の成分を合計して、上述したとおりにボール接触期間及び衝撃力を算出することができる。また、軌道算出装置3は、角速度であれば、X軸、Y軸及びZ軸がそれぞれトウ・ヒール方向及びクラウン・ソール方向に対してなす角度が分かっていれば、検出された各角速度からトウ・ヒール方向を軸とした角度速度の成分及びクラウン・ソール方向を軸(実施形態における鉛直軸)とした角速度の成分を算出することで、角度θ1及びθ2を算出することができる。また、軌道算出装置3は、X軸、Y軸及びZ軸の座標系における上記の接平面E1を表す式を予め記憶しておくことで、上述した実施形態と同様に、角度θ3及びθ4を算出することができる。なお、方向調節部材45を用いて実施形態のように角速度センサ43の向きを調節しておくことで、検出された値から分力を算出することなくそのまま積分した値が角度θ1を表すようになる。つまり、方向調節部材45を用いることで、軌道算出装置3による計算量を少なくして、ボールの軌道が算出されるまでに要する時間を短くすることができる。
【符号の説明】
【0056】
1…軌道算出システム、2…ゴルフクラブ、3…軌道算出装置、10…ゴルフクラブヘッド、11…シャフト、12…グリップ、20…ヘッド本体、21…フェース部、22…クラウン部、23…ソール部、24…ホーゼル部、30…重り部材、40…検出部材、41…ボルト頭部、42…ボルトねじ部、43…角速度センサ、44…加速度センサ、45…方向調節部材、48…配線、50…通信装置、31…制御部、32…記憶部、33…通信部、34…操作部、35…表示部、36…電源部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
図10
図11
図12