特許第6035802号(P6035802)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6035802
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】車両用デフレクタ装置
(51)【国際特許分類】
   B60J 7/22 20060101AFI20161121BHJP
【FI】
   B60J7/22
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-63949(P2012-63949)
(22)【出願日】2012年3月21日
(65)【公開番号】特開2013-193601(P2013-193601A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】沢田 和希
(72)【発明者】
【氏名】新美 康伸
【審査官】 岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0327624(US,A1)
【文献】 独国特許発明第102007053079(DE,B3)
【文献】 特開昭60−135322(JP,A)
【文献】 仏国特許出願公開第02845038(FR,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0168892(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の屋根部に形成された開口部の前縁部に設置され、前記屋根部の面上に突出するように展開可能なデフレクタを備えた車両用デフレクタ装置において、
前記デフレクタは、
前記開口部の前縁部に沿って延在する樹脂製の上側フレーム及び下側フレームと、
前記上側フレーム及び前記下側フレームに短手方向両端末部がそれぞれ埋設され、前記開口部の前縁部に沿って延在するメッシュ部材と、
前記上側フレームに埋設され、前記開口部の前縁部に沿って延在する補強部材とを備え、
前記上側フレームは、前記開口部の前縁部に沿って延在するとともに前記補強部材が埋設されるフレーム部と、前記フレーム部の延在方向の両先端部から車両後方に延出するアーム部とを備え、
前記補強部材は、前記アーム部の前端部まで延在され、
前記アーム部の前端部には、前記補強部材の端部を収容する部分であって、前記アーム部の延在方向と異なる方向に突出する収容部が形成され、
前記補強部材には、その延在方向に連通して両端で、前記収容部において前記上側フレームから開口する中空部が形成されていることを特徴とする車両用デフレクタ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用デフレクタ装置において、
前記補強部材は、前記中空部及び延在方向両端部を除いた残り全体の部位で、前記上側フレーム、又は前記メッシュ部材に接することを特徴とする車両用デフレクタ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用デフレクタ装置において、
前記アーム部は、前記上側フレームに一体的に備えられるとともに、その後端部で前記開口部の縁部に回動自在に連結される樹脂製のアーム部であり、
前記補強部材の延在方向先端よりも車両後方となる前記アーム部の車両幅方向外側面は、前記メッシュ部材の延在方向先端よりも車両幅方向内側の位置又は前記メッシュ部材の延在方向先端と略同一の位置に配置されていることを特徴とする車両用デフレクタ装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用デフレクタ装置において、
前記上側フレーム及び前記下側フレームの少なくとも一方の車両前方の端面には、当該端面以外の外側面よりも粗くなるようにシボが形成されていることを特徴とする車両用デフレクタ装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両用デフレクタ装置において、
前記補強部材の延在方向両端は、前記上側フレームに対して外側に非突出であることを特徴とする車両用デフレクタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の屋根部に形成された開口部の前縁部に設置される車両用デフレクタ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、こうした車両用デフレクタ装置として種々のものが提案されている。例えば特許文献1に記載された車両用デフレクタ装置は、図7に示すように、開口部の前縁部に沿って延在して該開口部の取付フレームに固定される固定フレーム91と、該固定フレーム91に枢着装置92を介して回動自在に連結され固定フレーム91に対し格納位置と展開位置との間で移動可能な可動フレーム93とを備える。そして、これら両フレーム91,93間には、可撓性及び通気性を有するメッシュ部材94が介在されている。このメッシュ部材94は、可動フレーム93の展開位置への移動に伴い引っ張られることで該可動フレーム93とともに屋根部の面上に突出するもので、その表面の少なくとも一部の範囲で空気を通過させる。
【0003】
また、例えば特許文献2に記載された車両用デフレクタ装置は、図8(a)(b)に示すように、円筒状の補強材96又は略H字状の補強材97に、柔らかい材料(例えばゴム、ポリウレタン・フォーム又は多孔性・通気性材料)からなるパッド98を覆設して、該パッド98により外形を成形することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009−515748号公報
【特許文献2】欧州特許出願公開第1 977 923号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の車両用デフレクタ装置では、メッシュ部材94の端末部及びフレーム(接続要素)91,93の結合にあたって、例えばクランプ、溶接、縫製、接着接合、挿入などの方法が採用されており、個別に製造したこれらメッシュ部材94及びフレーム91,93の結合工程が必要になる分、製造工数の増大を余儀なくされる。また、メッシュ部材94及びフレーム91,93の結合作業に際し、これらの間に相対的な位置ずれが生じやすいため、例えばメッシュ部材94にしわが発生することがある。この場合、可動フレーム93とともにメッシュ部材94が屋根部の面上に突出した際の外観が悪化する可能性がある。
【0006】
一方、特許文献2の車両用デフレクタ装置では、柔らかい材料が膨張収縮し易い傾向にあることから、補強材96,97との間の密着性が不十分となる可能性がある。
本発明の目的は、車両の屋根部の面上に突出する展開状態での外観を向上し、且つ、製造工数を低減することができる車両用デフレクタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両の屋根部に形成された開口部の前縁部に設置され、前記屋根部の面上に突出するように展開可能なデフレクタを備えた車両用デフレクタ装置において、前記デフレクタは、前記開口部の前縁部に沿って延在する樹脂製の上側フレーム及び下側フレームと、前記上側フレーム及び前記下側フレームに短手方向両端末部がそれぞれ埋設され、前記開口部の前縁部に沿って延在するメッシュ部材と、前記上側フレームに埋設され、前記開口部の前縁部に沿って延在する補強部材とを備え、前記上側フレームは、前記開口部の前縁部に沿って延在するとともに前記補強部材が埋設されるフレーム部と、前記フレーム部の延在方向の両先端部から車両後方に延出するアーム部とを備え、前記補強部材は、前記アーム部の前端部まで延在され、前記アーム部の前端部には、前記補強部材の端部を収容する部分であって、前記アーム部の延在方向と異なる方向に突出する収容部が形成され、前記補強部材には、その延在方向に連通して両端で、前記収容部において前記上側フレームから開口する中空部が形成されていることを要旨とする。
【0008】
同構成によれば、前記メッシュ部材の短手方向両端末部は、前記上側フレーム及び前記下側フレームにそれぞれ埋設され、前記補強部材は、前記上側フレームに埋設されることで、例えば前記上側フレーム及び前記下側フレームの樹脂成形に併せてそれらを一体化・固定することができる。従って、例えば前記上側フレーム及び前記下側フレームと前記メッシュ部材とを適宜の結合手段を介して結合する場合に比べ、製造工数を削減することができる。
【0009】
また、前記上側フレーム及び前記下側フレームと前記メッシュ部材とを別途、結合する場合に生じる前記メッシュ部材のしわを解消できる。従って、前記屋根部の面上に突出する前記メッシュ部材の外観を向上できる。
【0010】
さらに、前記上側フレームに前記補強部材が埋設されていることで、その剛性を増加することができる。加えて、前記補強部材には、その延在方向に連通して両端で前記上側フレームから開口する中空部が形成されていることで、該中空部内に樹脂が充填されない分、デフレクタ全体としてより軽量化することができる。
また、同構成によれば、前記補強部材が前記アーム部の前端部まで延在されていることで、例えば樹脂成形時や経時変化などで前記両アーム部間の車両幅方向の距離(以下、「ピッチ」ともいう)が変化することを抑制できる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用デフレクタ装置において、前記補強部材は、前記中空部及び延在方向両端部を除いた残り全体の部位で、前記上側フレーム、又は前記メッシュ部材に接することを要旨とする。
【0012】
同構成によれば、前記補強部材は、前記中空部及び延在方向両端部を除いて外部に露出することはなく、デフレクタ全体としての外観を向上できる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の車両用デフレクタ装置において、前記アーム部は、前記上側フレームに一体的に備えられるとともに、その後端部で前記開口部の縁部に回動自在に連結される樹脂製のアーム部であり、前記補強部材の延在方向先端よりも車両後方となる前記アーム部の車両幅方向外側面は、前記メッシュ部材の延在方向先端よりも車両幅方向内側の位置又は前記メッシュ部材の延在方向先端と略同一の位置に配置されていることを要旨とする。
【0013】
同構成によれば、前記アーム部の周辺構造(回転軸、展開側に回動付勢するばねなど)に高速の風が当たることを抑制でき、風切音を低減することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用デフレクタ装置において、前記上側フレーム及び前記下側フレームの少なくとも一方の車両前方の端面には、当該端面以外の外側面よりも粗くなるようにシボが形成されていることを要旨とする。
【0014】
例えば樹脂製の前記上側フレーム及び前記下側フレームの成形に係る金型内での前記メッシュ部材の短手方向両端末部のインサート成形時、当該金型内で前記両端末部が非固定であると、射出される樹脂に押されて前記上側フレーム及び前記下側フレームの車両前方の端面に近付いてくることがある。同構成によれば、前記上側フレーム及び前記下側フレームの少なくとも一方の車両前方の端面は、シボの形成されたいわゆるシボ面であることで、当該端面に近付く前記メッシュ部材の前記端末部を目立たなくでき、外観を向上できる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両用デフレクタ装置において、前記補強部材の延在方向両端は、前記上側フレームに対して外側に非突出であることを要旨とする。
【0016】
同構成によれば、前記補強部材の延在方向両端が前記上側フレームから露出することを抑制でき、外観を向上できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、車両の屋根部の面上に突出する展開状態での外観を向上し、且つ、製造工数を低減することができる車両用デフレクタ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ルーフを斜め上方から見た斜視図。
図2】本発明の一実施形態を模式的に示す平面図。
図3】同実施形態を示す斜視図。
図4】(a)は、同実施形態を示す平面図であり、(b)は、(a)のA−A線に沿った断面図。
図5】同実施形態を示す横断面図。
図6】(a)(b)は、同実施形態の製造方法を模式的に示す断面図。
図7】従来形態を示す斜視図。
図8】(a)(b)は、別の従来形態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1図6を参照して本発明の一実施形態について説明する。なお、以下では、車両前後方向を「前後方向」といい、車両高さ方向上方及び下方をそれぞれ「上方」及び「下方」という。また、車室内方に向かう車両幅方向内側を「車内側」といい、車室外方に向かう車両幅方向外側を「車外側」という。
【0021】
図1に示すように、自動車などの車両の屋根部としてのルーフ10には、開口部としての略四角形のルーフ開口部10aが形成されるとともに、サンルーフ装置11が搭載される。そして、サンルーフ装置11は、車両幅方向に延在してルーフ開口部10aの前縁部に配置・支持されたデフレクタ12を備えるとともに、前後方向に移動してルーフ開口部10aを開閉する、例えばガラス板からなる略四角形の可動パネル13を備える。
【0022】
デフレクタ12は、その後部を中心に回動することで前部が上動する、いわゆるチルトアップ動作可能に取り付けられている。デフレクタ12は、可動パネル13の開作動に伴い該可動パネル13側から解放されてチルトアップ動作し、ルーフ10上面よりも上側に突出する(展開状態)。あるいは、デフレクタ12は、可動パネル13の閉作動に伴い該可動パネル13側から押さえ込まれてルーフ10上面の下側に収まる(格納状態)。デフレクタ12は、ルーフ開口部10aを開放した際に展開状態になることで、車室内への風の巻き込みによる空気振動を防止する。
【0023】
可動パネル13は、その前部を中心に回動することで後部が上動するチルトアップ動作及び前後方向へのスライド動作可能に取り付けられている。可動パネル13の開閉作動においては、チルトアップ状態のままスライド動作する、いわゆるアウタースライディング式が採用されている。
【0024】
図2に示すように、サンルーフ装置11は、ルーフ開口部10aの車両幅方向両側縁部に配置・固定される一対のガイドレール14を備える。各ガイドレール14は、例えばアルミニウム合金の押出材からなり、長手方向に一定断面を有して前後方向に延在する。なお、ガイドレール14には、可動パネル13を開閉駆動するための適宜の駆動機構(図示略)が摺動する。また、両ガイドレール14の前端部には、デフレクタ12の車両幅方向両端部がそれぞれ回動自在に連結されている。
【0025】
次に、デフレクタ12及びその支持構造について更に説明する。
図3に示すように、デフレクタ12は、ルーフ開口部10aの前縁部に沿って延在する例えば樹脂材からなる略帯状のメッシュ部材21と、該メッシュ部材21の長手方向全長に亘ってその短手方向両端末部21a,21bをそれぞれ埋設する樹脂材(例えばガラス繊維の入った樹脂材)からなる略棒状の下側フレーム22及び上側フレーム23とを備える。下側フレーム22は、その延在方向でメッシュ部材21(端末部21a)の長手方向の長さよりも若干長くなるように成形されており、端末部21aを全長に亘って埋設するようにこれに一体に樹脂成形されている。上側フレーム23は、ルーフ開口部10aの前縁部に沿う延在方向(車両幅方向)でメッシュ部材21(端末部21b)の長手方向の長さよりも若干長くなるように成形されたフレーム部24を有するとともに、該フレーム部24の延在方向両端部から車両後方に延出した後端部で一対のアーム部25を有する。フレーム部24(上側フレーム23)は、端末部21bを全長に亘って埋設するようにこれに一体に樹脂成形されている。
【0026】
下側フレーム22は、ルーフ開口部10aの前縁部に固定・支持される。一方、上側フレーム23は、両アーム部25の後端部から互いに対向する車内側に突出する略円柱状の回転軸26を一体的に有しており、これら回転軸26において両ガイドレール14の前端部に回動自在に連結される。従って、上側フレーム23が両回転軸26を中心に図示時計回りに回動すると、下側フレーム22に対して上側フレーム23が上昇する。これに伴い、デフレクタ12は、下側フレーム22及び上側フレーム23に端末部21a,21bの固定されたメッシュ部材21をその短手方向に伸長させて、ルーフ10の面上に突出するように展開される。一方、上側フレーム23が両回転軸26を中心に図示反時計回りに回動すると、下側フレーム22に対して上側フレーム23が下降する。これに伴い、デフレクタ12は、下側フレーム22及び上側フレーム23に端末部21a,21bの固定されたメッシュ部材21をその短手方向に短縮させて、ルーフ10上面の下側に収まるように格納される。なお、両アーム部25の後端部には、上側フレーム23が両回転軸26を中心に図示時計回りに回動する側に付勢する、例えば板ばねからなるスプリング27が配設されている。
【0027】
図4(a)(b)及び図5に併せ示すように、上側フレーム23には、メッシュ部材21の端末部21bよりも車両後方で、ルーフ開口部10aの前縁部に沿ってフレーム部24の全長を含む両アーム部25の前端部間に亘って延在する補強部材31が埋設されている。この補強部材31は、例えば鉄材又はアルミニウム合金の押出材からなり、延在方向の全長に亘って連通する中空部32が形成されて、断面略一定の円筒形状を呈する。また、補強部材31の各端部33は、フレーム部24及び各アーム部25の接続部にならって車両後方に延出するものの、該アーム部25の全体的な延在方向に対して下方に傾斜している。従って、各アーム部25の前端部には、補強部材31の各端部33を埋設するためにアーム部25の全体的な延在方向に対して下方に突出する略三角形の収容部28が形成されている。そして、図4(b)に拡大して示したように、各端部33の先端33aは、アーム部25の収容部28で上側フレーム23から開口している。つまり、アーム部25の延在方向(長手方向)と補強部材31(先端33a)の開口方向とは異なっている。また、各端部33の先端33aは、上側フレーム23の先端33aを包囲する収容部28の外側面28aよりも引っ込んでおり、該上側フレーム23に対して外側に非突出である。
【0028】
なお、図4(a)に示すように、各アーム部25は、補強部材31の先端33aよりも車両後方において、その外側面を車内側にずらす曲成部25aを有する。各アーム部25の外側面は、曲成部25aを経ることで、メッシュ部材21の延在方向先端21cよりも車内側に配置される。つまり、補強部材31の先端33aよりも車両後方となるアーム部25の外側面25bは、メッシュ部材21の延在方向先端21cよりも車内側の位置に配置されている。これは、アーム部25の後端部に配設された回転軸26やスプリング27に高速の風が当たることを抑制するためである。
【0029】
また、図5に示すように、上側フレーム23(フレーム部24)の車両前方の端面23aには、当該端面23a以外の外側面よりも粗くなるようにシボ23bが形成されている。このシボ23bのパターンは、例えばメッシュ部材21の外観に近似するように成形されている。これは、例えば樹脂成形時に上側フレーム23の端面23a近傍にメッシュ部材21の端末部21bが配置されたとしても、これを目立たなくするためである。さらに、フレーム部24(上側フレーム23)の上面には、その延在方向に繰り返し凹凸する凹凸形状(図示略)が形成されている。これは、デフレクタ12の展開状態(可動パネル13の開状態)において生じる圧力変動等に起因する流体騒音、いわゆるウインドスロッブを抑制するためである。
【0030】
次に、本実施形態の動作について説明する。
まず、可動パネル13が全閉状態にあり、該可動パネル13側から押さえ込まれるデフレクタ12が格納状態にあるものとする。このとき、図3に2点鎖線にて示したように、両スプリング27はそれぞれアーム部25の後端部下方に収まるように弾性変形している。この状態で、可動パネル13が開作動すると、これに伴い該可動パネル13側から解放される上側フレーム23が、両スプリング27に付勢されて回転軸26を中心に図示時計回りに回動する。これにより、デフレクタ12は、フレーム部24が上昇するように回動して展開状態となる。デフレクタ12が展開状態になることで、車室内への風の巻き込みによる空気振動が防止されることは既述のとおりである。
【0031】
その後、可動パネル13が閉作動すると、これに伴い該可動パネル13側から押さえ込まれる上側フレーム23が、両スプリング27の付勢力に抗して回転軸26を中心に図示反時計回りに回動する。これにより、デフレクタ12は、フレーム部24が下降するように回動して格納状態となる。
【0032】
次に、本実施形態の上側フレーム23の製造方法について説明する。
図6(a)(b)に模式的に示すように、上側フレーム23の成形に係る金型40は、補強部材31の延在方向に対する直交方向において、主としてその片側部位を成形するための第1金型41と、主としてその残り側部位を成形するための第2金型42とを備えて構成される。従って、これら第1及び第2金型41,42の形成するキャビティCは、上側フレーム23の外側面に合わせて成形されている。そして、第1及び第2金型41,42には、キャビティC内(金型内)での補強部材31のインサート成形時、該補強部材31を保持するためのインサート保持ピン43を出没させるためのピン抜き孔41a,42aがそれぞれ形成されている。なお、図6では図示していないが、キャビティC内には、メッシュ部材21の端末部21bも併せて配置・収容されている。ただし、メッシュ部材21の端末部21bは、キャビティC内で固定されておらず、上側フレーム23の樹脂成形に伴ってこれに固定されるようになっている。
【0033】
そして、図6(a)に示すように、キャビティC内への樹脂の射出前の段階では、ピン抜き孔41a,42aからキャビティC内に突出させたインサート保持ピン43により補強部材31を保持する。この状態で、キャビティC内に樹脂を射出して、図6(b)に示すように、上側フレーム23を樹脂成形する。この際、インサート保持ピン43をキャビティC内から引っ込めることで(いわゆるピン抜き成形を行うことで)、樹脂成形された上側フレーム23にピン抜き孔が残って当該位置で補強部材31が外部に露出することが回避される。
【0034】
なお、下側フレーム22の製造方法は、補強部材31(ピン抜き成形)を除けば上側フレーム23と同様であるため、その説明を割愛する。以上により、下側フレーム22及び上側フレーム23にメッシュ部材21の両端末部21a,21bがそれぞれ埋設されて、デフレクタ12が製造される。デフレクタ12の上側フレーム23に回転軸26等が一体形成されることは既述のとおりである。
【0035】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、メッシュ部材21の両端末部21a,21bは、上側フレーム23及び下側フレーム22にそれぞれ埋設され、補強部材31は、上側フレーム23に埋設されることで、例えば上側フレーム23及び下側フレーム22の樹脂成形に併せてそれらを一体化・固定することができる。従って、例えば上側フレーム23及び下側フレーム22とメッシュ部材21とを適宜の結合手段を介して結合する場合に比べ、製造工数を削減することができる。
【0036】
また、上側フレーム23及び下側フレーム22とメッシュ部材21とを別途、結合する場合に生じるメッシュ部材21のしわを解消できる。あるいは、メッシュ部材21を固定する上側フレーム23及び下側フレーム22間の距離は、それらを樹脂成形する設備(金型等)で決定できるため、当該距離のばらつきを抑制できる。以上により、ルーフ10の面上に突出するメッシュ部材21の外観を向上できる。
【0037】
さらに、上側フレーム23に補強部材31が埋設されていることで、その剛性を増加することができる。加えて、補強部材31には、その延在方向に連通して両端(先端33a)で上側フレーム23から開口する中空部32が形成されていることで、該中空部32内に樹脂が充填されない分、デフレクタ12全体としてより軽量化・低コスト化することができる。
【0038】
(2)本実施形態では、上側フレーム23の成形に係る金型40(キャビティC)内での補強部材31のインサート成形時、該補強部材31を保持するためのインサート保持ピン43を可動させる、いわゆるピン抜き成形を行ったことで、上側フレーム23にピン抜き孔が残って当該位置で補強部材31が外部に露出することをなくすことができる。これにより、補強部材31は、中空部32及び両端(先端33a)を除いた残り全体の部位で、上側フレーム23又はメッシュ部材21(端末部21b)に接することで、中空部32及び両端(先端33a)を除いて外部に露出することはなく、デフレクタ12全体としての外観を向上できる。
【0039】
(3)本実施形態では、補強部材31の先端33aよりも車両後方となるアーム部25の外側面25bは、メッシュ部材21の延在方向先端21cよりも車内側に配置される。従って、アーム部25の周辺構造(回転軸26、スプリング27など)に高速の風が当たることを抑制でき、風切音を低減することができる。
【0040】
(4)本実施形態では、上側フレーム23の成形に係る金型40内でのメッシュ部材21の端末部21bのインサート成形時、当該金型40内で端末部21bが非固定であることで、射出される樹脂に押されて上側フレーム23の端面23aに近付いてくることがある。しかしながら、上側フレーム23の端面23aは、シボ23bの形成されたいわゆるシボ面であることで、当該端面23aに近付くメッシュ部材21の端末部21bを目立たなくでき、外観を向上できる。
【0041】
(5)本実施形態では、補強部材31の両端(先端33a)が上側フレーム23に対して外側に非突出であることで、該上側フレーム23から露出することを抑制でき、外観を向上できる。
【0042】
(6)本実施形態では、補強部材31がアーム部25の前端部まで延在されていることで、例えば樹脂成形時や経時変化などで両アーム25部間のピッチが変化することを抑制でき、安価にできる。
【0043】
(7)本実施形態では、鉄材又はアルミニウム合金の押出材からなる補強部材31を採用したことで、安価にできる。
(8)本実施形態では、補強部材31を埋設する上側フレーム23を、例えばガラス繊維の入った樹脂材にて成形したことで、補強部材31との間の密着性を十分に確保することができる。
【0044】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記実施形態において、補強部材31の先端33aよりも車両後方となるアーム部25の外側面25bは、車両幅方向においてメッシュ部材21の延在方向先端21cと略同一の位置に配置されていてもよい。
【0045】
・前記実施形態において、下側フレーム22及び上側フレーム23は、互いに同一の樹脂材からなっていてもよいし、異なる樹脂材からなっていてもよい。
・前記実施形態において、スプリング27は、例えばねじりばねであってもよい。
【0046】
・前記実施形態においては、上側フレーム23のフレーム部24に両アーム部25を一体形成したが、例えばメッシュ部材21の端末部21b及び補強部材31を埋設できるのであれば、両アーム部を別設してもよい。
【0047】
・前記実施形態において、補強部材31は、多角筒状であってもよい。また、補強部材31は、その延在方向で断面形状が変化してもよい。
・前記実施形態において、フレーム部24内にのみ延在する補強部材であってもよい。
【0048】
・前記実施形態において、補強部材31の両端(先端33a)は、上側フレーム23(収容部28)に対して外側に突出していてもよい。
・前記実施形態において、上側フレーム23のシボ23bに代えて、若しくは加えて、下側フレーム22の車両前方の端面にシボを形成してもよい。
【0049】
・前記実施形態において、上側フレーム23の端面23aには、シボ23bが形成されていなくてもよい。
・前記実施形態において、アーム部25の車外側の外側面も、曲成部25aにならって車内側にずれていてもよい。
【0050】
・前記実施形態において、アーム部25の曲成部25aはなくてもよい。つまり、補強部材31の先端33aよりも車両後方となるアーム部25の車内側の外側面は、メッシュ部材21の延在方向先端よりも車内側に配置されていなくてもよい。
【0051】
・前記実施形態において、補強部材31は、中空部32及び両端(先端33a)以外の部位でも、上側フレーム23又はメッシュ部材21(端末部21b)に接していなくてもよい。すなわち、金型40(キャビティC)内での補強部材31のインサート成形時、ピン抜き成形を行わなくてもよい。
【0052】
・前記実施形態においては、上側フレーム23に補強部材31を埋設したが、これに代えて、若しくはこれに加えて、下側フレーム22に同様の補強部材を埋設してもよい。
・前記実施形態において、デフレクタ12の展開・格納を、可動パネル13の開閉作動に合わせて電動で行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
10…車両ルーフ(屋根部)、10a…ルーフ開口部(開口部)、12…デフレクタ、14…ガイドレール、21…メッシュ部材、21a,21b…端末部、21c…先端、22…下側フレーム、23…上側フレーム、23a…端面、23b…シボ、24…フレーム部、25…アーム部、25a…曲成部、25b…外側面、26…回転軸、27…スプリング、31…補強部材、32…中空部、33…端部、33a…先端。
図1
図2
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図8