(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光透過性基材上に形成され、かつ表面に複数の溝が並設された光透過部の表面に、電離放射線硬化型樹脂組成物および光吸収粒子を含む光吸収部用組成物を供給するためのダイヘッドであって、
前記ダイヘッドが、前記光吸収部用組成物の注入口と、前記光吸収部用組成物の吐出口と、前記ダイヘッド内に形成され、前記注入口に連通し、かつ前記ダイヘッドの長手方向に延びたマニホールドと、前記ダイヘッド内に形成され、前記マニホールドおよび前記吐出口に連通したスリットとを備え、
前記マニホールドの端部が前記マニホールドの中央部よりも前記吐出口側に位置しており、
前記マニホールドが4mm以上7mm以下の半径を有し、断面形状が円状または円弧状であり、
前記マニホールドが、前記マニホールドの中央から前記ダイヘッドの長手方向に沿って両側に延びた第1の部分と、前記第1の部分の両端に連結し、かつ前記マニホールドの端部に向かうに連れて吐出口側に傾斜した第2の部分とを備え、
前記マニホールドの全長が800mm以上2000mm以下であり、前記第2の部分の長さが、それぞれ、200mm以上800mm以下であることを特徴とする、ダイヘッド。
光透過性基材と、前記光透過性基材上に形成され、かつ表面に並列して設けられた複数の溝を有する光透過部と、前記溝内に形成され、かつ電子放射線硬化型樹脂組成物および光吸収粒子を含む光吸収部用組成物の硬化物から構成された光吸収部とを備える光学シートの製造装置であって、
請求項1に記載のダイヘッドと、前記ダイヘッドに前記光吸収部用組成物を供給する供給系とを有する、前記光吸収部用組成物を前記光透過部の表面に供給するための供給装置を備えることを特徴とする、光学シートの製造装置。
光透過性基材と、前記光透過性基材上に形成され、かつ表面に並列して設けられた複数の溝を有する光透過部と、前記溝内に形成され、かつ電離放射線硬化型樹脂組成物および光吸収粒子を含む光吸収部用組成物の硬化物から構成された光吸収部とを備える光学シートの製造方法であって、
ダイヘッドの長手方向が、光透過性基材上に形成され、かつ表面に複数の溝が並設された光透過部の幅方向となるように前記ダイヘッドを前記光透過部上に配置した状態において、前記光透過部の表面に、前記ダイヘッドから電離放射線硬化型樹脂組成物と光吸収粒子とを含む光吸収部用組成物を供給する工程と、
前記光透過部の表面上の前記光吸収部用組成物を掻き取る工程とを備え、
前記ダイヘッドが、前記光吸収部用組成物の注入口と、前記光吸収部用組成物の吐出口と、前記ダイヘッド内に形成され、前記注入口に連通し、かつ前記ダイヘッドの長手方向に延びたマニホールドと、前記ダイヘッド内に形成され、前記マニホールドおよび前記吐出口に連通したスリットとを備え、
前記マニホールドの端部が前記マニホールドの中央部よりも前記吐出口側に位置しており、
前記マニホールドが4mm以上7mm以下の半径を有し、断面形状が円状または円弧状であり、
前記マニホールドが、前記マニホールドの中央から前記ダイヘッドの長手方向に沿って両側に延びた第1の部分と、前記第1の部分の両端に連結し、かつ前記マニホールドの端部に向かうに連れて吐出口側に傾斜した第2の部分とを備え、
前記マニホールドの全長が800mm以上2000mm以下であり、前記第2の部分の長さが、それぞれ、200mm以上800mm以下であることを特徴とする、光学シートの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<光学シートの製造方法、ダイヘッドおよび光学シートの製造装置>
実施形態における光学シートの製造方法、ダイヘッドおよび光学シートの製造装置について、図面を参照しながら説明する。
図1は本実施形態に係る光学シートの製造工程を模式的に示した図であり、
図2は本実施形態に係る光透過部の形成工程を模式的に示した図であり、
図3は本実施形態に係る粘着層および剥離層を有する基材を示した図であり、
図4は本実施形態に係る光吸収部用組成物の供給工程を模式的に示した図であり、
図5は
図4に示すダイヘッドをA−A線で切断したときの断面図であり、
図6は
図4に示すダイヘッドをB−B線で切断したときの断面図であり、
図7は本実施形態に係る光吸収部用組成物の掻取工程を模式的に示した図である。
【0016】
まず、光透過性基材1上に、層厚方向断面において複数の溝2aが並設された光透過部2を形成する(
図1(a))。光透過部2は、複数の単位光透過部2bから構成されており、溝2aは、単位光透過部2b間に形成されている。
図1(a)に示される溝2aは、溝2aの開口面の幅がより広くなるように光透過性基材1の法線方向Nに対する溝2aの側面の上部における傾斜角度が溝2aの側面の下部における傾斜角度より大きくなっている。溝2aは、
図1(a)に示される形状に限られず、例えば、光透過性基材1側に向けて先細る略台形状、略V字状または略矩形状に形成されていてもよい。溝2aは光透過性基材1の長手方向に沿って延在している。光透過部2の幅は、500〜1500mmとすることが可能である。
【0017】
光透過性基材1は、光透過部2や後述する光吸収部4を形成するためのベースとなる層である。光透過性基材1としては、透明樹脂フィルム、透明樹脂板、透明樹脂シートや透明ガラスを用いることができる。透明樹脂フィルムとしては、トリアセテートセルロース(TAC)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系フィルム、ジアセチルセルロースフィルム、アセテートブチレートセルロースフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリアクリル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリルロニトリルフィルム等を好適に使用できるが、これらの中でも、ポリエステル系フィルムが好ましく用いられる。ポリエステル系フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートの他、ポリブチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0018】
光透過部2の形成は、使用する樹脂の種類によって異なる。例えば、光透過部2を透明な熱可塑性樹脂を用いて形成する場合には、加熱した金型を熱可塑性樹脂に押圧する熱プレス法や射出成型法、金型内に熱可塑性樹脂モノマーを注入して重合・固化させるキャスティング法等によって、光透過部2を形成することができる。また、電離放射線硬化型樹脂、特に紫外線硬化型樹脂を用いる場合には、当該樹脂を成形型内に注入して紫外線を照射して硬化させる、いわゆるUV法によって、光透過部2を形成することができる。これらの方法の中でも、本発明においては、量産性に優れるUV法が好適に使用できる。UV法によれば、金型ロールを用いて、光透過部2を連続的に製造することができる。
【0019】
具体的には、例えば、
図2に示されるように、所定ピッチで光透過部2の形に対応した形の溝を有する金型ロール10と、ニップロール11との間に光透過性基材1を送り込む。
図2中の矢印は、光透過性基材1を送り込む方向を表したものである。光透過性基材1の送り込みに合わせて、金型ロール10と光透過性基材1との間に供給部12から例えば紫外線硬化型樹脂等を含む光透過部用組成物13の液滴を供給し続ける。供給部12から光透過性基材1上に光透過部用組成物13を供給するとき、金型ロール10と光透過性基材1との間に、光透過部用組成物13が溜まった組成物溜まり14が形成されるようにする。この組成物溜まり14を形成することによって、光透過部用組成物13が基材1の幅方向に広がる。
【0020】
上記のようにして金型ロール10と光透過性基材1との間に供給された光透過部用組成物13は、金型ロール10とニップロール11との間の押圧力により、光透過性基材1と金型ロール10との間に充填される。その後、電離放射線照射装置15によって光透過部用組成物13に紫外線を照射し、光透過部用組成物13を硬化させて、光透過部2を形成する。光透過部2を形成した後、剥離ロール16を介して、金型ロール10から光透過部2を引き剥がす。
【0021】
金型ロール10に送り込まれる光透過性基材1は、
図3に示されるように粘着層6および剥離層7を備えていてもよい。粘着層6は、光学シートを表示装置の表示部に接着させるためのものである。粘着層6に用いられる粘着剤は光を透過するとともに、適切に光学シートを他に接着させることができれば、その材料は特に限定されるものではない。粘着剤としては、例えばアクリル系の共重合体を挙げることができる。
【0022】
剥離層7は、取扱時に粘着層6が他に接触しないようにするためのものであり、粘着層6上に形成されている。剥離層7としては、特に限定されるものではないが、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等が挙げられる。
【0023】
なお、次の光吸収部用組成物の充填工程の前に、光透過部2の溝2aの表面に親水化処理を施しておくことが好ましい。溝2aの表面に親水化処理を施すことにより、溝2aへ光吸収部用組成物をより充填し易くなり、光吸収部用組成物の充填率が向上する。親水化処理は、従来公知の方法を用いて行うことができる。例えば、低圧プラズマ処理、大気圧プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、エキシマランプ処理等のドライプロセスや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、エタノールアミン等によるアルカリ処理等のウエットプロセスが挙げられる。これらの中でも、大気圧プラズマ処理が、製造効率の観点から好ましい。
【0024】
光透過性基材1上に光透過部2を形成した後、溝2a内に電離放射線硬化型樹脂組成物および光吸収粒子を含む光吸収部用組成物3を充填する(
図1(b))。
【0025】
溝2a内への光吸収部用組成物3の充填は、
図4に示される光学シートの製造装置20を用いて行うことができる。製造装置20は、
図4に示される搬送装置30、供給装置40と、
図7に示される掻取部材60と、を備えている。
【0026】
搬送装置30は、光透過部2を光透過性基材1ごと一方方向に搬送するためのものであり、搬送ロール等から構成されている。搬送装置30のライン速度(搬送速度)は、光吸収部用組成物3の供給速度にもよるが、1〜50m/分であることが好ましい。
【0027】
供給装置40は、光吸収部用組成物3を光透過部2の表面2cに供給するためのものである。供給装置40による光吸収部用組成物3の供給速度は、0.5〜10L/分であることが好ましい。
【0028】
供給装置40は、ダイヘッド41と、ダイヘッド41に光吸収部用組成物3を供給する供給系42とを備えている。ダイヘッド41は、
図4に示されるようにダイヘッド41の長手方向Cが光透過部2の幅方向Dとなるように光透過部2上に配置されている。
【0029】
ダイヘッド41は、
図5および
図6に示されるように、光吸収部用組成物3の注入口43と、光吸収部用組成物3の吐出口44と、ダイヘッド41内に形成され、注入口43に連通し、かつダイヘッド41の長手方向Cに延びたマニホールド45と、ダイヘッド41内に形成され、マニホールド45および吐出口44に連通したスリット46とを備えている。
【0030】
このようなダイヘッド41は、例えば、互いに向かい合うように配置された一対のダイブロック47、48と、ダイブロック47、48間に介装されたシム板49とから構成することが可能である。ダイブロック47、48同士は、吐出口44側を除き、ダイブロック47、48の周縁をボルト50等で締結することにより固定されている。なお、シム板49にもボルト穴が形成されており、シム板49もダイブロック47、48とともに固定されている。
【0031】
図6に示される注入口43はマニホールド45の中央部45bに連通しており、また注入口43には供給系42が接続されている。
図5および
図6に示される吐出口44はダイヘッド41の下面に形成されている。
【0032】
スリット46は、マニホールド45から押し出された光吸収部用組成物3を吐出口44まで導くものである。スリット46は、ダイブロック47、48のスリット形成面47a、48aによって挟まれる空間となっている。スリット46の間隔は、シム板49の厚みによって調整することができる。
【0033】
マニホールド45は、光吸収部用組成物3をダイヘッド41の長手方向C(光透過部2の幅方向D)に広げるためのものである。
図5に示されるマニホールド45は、ダイブロック47にのみ形成されているが、マニホールド45はダイブロック47、48の少なくとも一方に形成されていればよい。
【0034】
図6に示されるように、マニホールド45は、マニホールド45の端部45aがマニホールド45の中央部45bよりも吐出口44側(光透過部2側)に位置するような形状を有している。ダイヘッド41は、吐出口44がダイヘッド44の下面に形成し、マニホールド45の端部45aはマニホールド45の中央部45bよりも下方に位置している。
【0035】
マニホールド45の端部45aは、
図1(b)および
図4に示される光透過部2の端部2dに対応する位置にあり、マニホールド45の中央部45bは、
図1(b)および
図4に示される光透過部2の中央部2eに対応する位置にある。
図4に示されるダイヘッド41は、光透過部2上に配置されているので、マニホールド45の端部45aは、光透過部2の端部2d上に位置し、マニホールド45の中央部45bは光透過部2の中央部2e上に位置している。
【0036】
図6に示されるように、マニホールド45は、マニホールド45の中央からダイヘッド41の長手方向Cに沿って両側に延びた第1の部分45cと、第1の部分45cの両端に連結し、かつマニホールド45の端部45aに向かうに連れて吐出口44側(光透過部側)に傾斜した第2の部分45dとを備えている。
【0037】
例えば、マニホールド45の全長を800mm以上2000mm以下としたとき、第2の部分45dの長さ(片側)は200mm以上800mm以下であることが好ましく、320mm以上500mm以下であることがより好ましい。第2の部分45dの長さをこの範囲内にすることにより、中央部45bから端部45aにかけてより均一に光吸収部用組成物3を吐出することができる。
【0038】
なお、
図6に示されるマニホールド45は、上記説明したように第1の部分45cと、第2の部分45dから構成されているが、マニホールド45は、マニホールド45の端部45aがマニホールド45の中央部45bよりも吐出口44側に位置するような形状であれば、特に限定されない。例えば、マニホールドは、中央部よりも端部が吐出口側に位置するように中央部から端部に掛けて湾曲した形状を有していてもよい。
【0039】
図5に示されるマニホールド45の断面形状は、中央部45bから端部45aにかけてほぼ一定となっている。マニホールド45の断面形状は、円形状または円弧状であることが好ましい。マニホールド45をこのような形状にすることにより、マニホールド45の内部圧力を均一に分散させることができるので、この結果、端部45a側に光吸収部用組成物をより広げることができる。
【0040】
マニホールド45の断面形状が円形状または円弧状の場合、マニホールド45の断面における半径は3mm以上10mm以下であることが好ましく、4mm以上7mm以下であることがより好ましい。マニホールド45の半径をこの範囲内にすることにより、マニホールド45内の圧力をより高めることができるので、マニホールド45から光吸収部用組成物をより押し出すことができる。なお、この光学シートの製造に用いられている一般的にダイヘッドのマニホールドは、断面が30mm×19mmの矩形状のものであるので、この一般的に用いられているマニホールドに比べて、マニホールドの断面積は小さいと言える。
【0041】
図7に示される掻取部材60は、供給装置40による光吸収部用組成物3の供給位置よりも下流側に配置されている。掻取部材60は、光透過部2の表面2c上に供給された光吸収部用組成物3を掻き取る掻取ブレード61、掻取ブレード61を保持するホルダ62等を備えている。
【0042】
掻取ブレード61は、溝2aの延在方向と直交するように配置されている。掻取ブレード61は、2枚の掻取ブレードから構成されていてもよい。
【0043】
掻取ブレード61は薄板状のものであり、掻取ブレード61の厚さは約200μm程度とすることができる。掻取ブレード61としては例えばドクターブレード等を用いることができる。光透過部2の表面2cに対する掻取ブレード61の先端部の角度は、40°〜70°であることが好ましく、50°〜65°であることがより好ましい。この角度範囲が好ましいとしたのは、この角度の範囲内であれば、光吸収部用組成物3の掻き取りがより良好となり、また光吸収部用組成物3に接触する掻取ブレード61の面積が極度に小さくならず、黒スジ等の掻取不良が発生しにくい。
【0044】
次に、光吸収部用組成物3について説明する。光吸収部用組成物3は、透明な電離放射線樹脂組成物と光吸収粒子とを含むものである。光吸収部用組成物3の粘度は、500mPa・s以上5000mPa・s以下であることが好ましい。光吸収部用組成物3の粘度がこの範囲であれば、溝の底まで光吸収部用組成物を充填することができるとともに、光吸収部用組成物の掻き取り性が良好となる。なお、光吸収部用組成物の粘度は、B型粘度計を用いて25℃の環境下にて測定した値である。
【0045】
電離放射線硬化型樹脂組成物としては、従来公知の電離放射線硬化型樹脂組成物を用いることができる。例えば、アクリレート系の官能基を有するものを好適に使用することができ、具体的には、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジェン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アルリレート等のオリゴマー又はプレポリマーを挙げることができる。なお、光透過部を構成する材料にもよるが、これらの樹脂のなかなら光透過部を構成する材料よりも屈折率の小さい樹脂を選択すればよい。
【0046】
上記樹脂組成物中には、反応性希釈剤を添加してもよく、このような反応性希釈剤としては、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー並びに多官能モノマーを使用してもよく、具体的は、リメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0047】
電離放射線硬化型樹脂組成物を紫外線硬化型樹脂組成物とするには、組成物中に光重合開始剤としてアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチュウラムモノサルファイド、チオキサントン類や、光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ−n−ブチルホソフィン等を混合して用いることができる。特に本発明では、オリゴマーとしてウレタンアクリレート、モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を混合するのが好ましい。
【0048】
光吸収粒子は、1μm以上10μm以下の平均粒径を有するものが好ましい。光吸収粒子の平均粒径がこの範囲内であれば、光透過部の溝に対する光吸収部用組成物の充填性をより高めることができる。なお、光吸収粒子の平均粒径は、光吸収粒子を電子顕微鏡で観察して求めた算術平均径を意味する。
【0049】
光吸収粒子としては、樹脂ビーズやガラスビーズに、映像光の特性に合わせて特定の波長を選択的に吸収できる光吸収粒子を使用してもよく、カーボンブラック、グラファイト、繊維状炭素、黒色酸化鉄等の金属塩、染料、顔料等の着色剤を練り込んだものを使用することができる。着色剤の練り込み易さの観点からは、樹脂ビーズを用いることが好ましい。樹脂ビーズとしては、メラミンビーズ、アクリルビーズ、アクリル−スチレンビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ、ポリスチレンビーズ、塩ビビーズ等を好適に使用することができる。また、ウレタン架橋微粒子やシリコン系ビーズも好適に使用できる。これらの樹脂ビーズは、上記した電離放射線硬化型樹脂組成物の屈折率差が0.1程度のものを用いることが好ましい。また、着色剤を練り込む前の樹脂としては、透明な樹脂でも使用できるが、顔料または染料等で着色された樹脂を用いることが好ましいく、映像光の特性に合わせて特定の波長を選択的に吸収するものであってよいが、好ましくは黒色に着色された樹脂ビーズが用いられる。
【0050】
着色剤としては、上記したもののなかでもカーボンブラックが好適に使用できる。樹脂ビーズへのカーボンブラックの練り込み量は、樹脂ビーズ1質量部に対してカーボンブラックを0.1〜0.7質量部程度であり、好ましくは0.15〜0.5質量部、より好ましくは0.2〜0.35質量部である。カーボンブラックの練り込み量が0.7質量部よりも多いと樹脂ビーズが割れやすくなる場合があり、一方、0.1質量部よりも少ないと、所望の黒色性を有する光吸収粒子を得られない場合がある。また、カーボンブラックは、平均粒子径が10〜500nmのものを好適に使用することができ、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー等が使用できる。また、市販のものを使用することもでき、例えば、HCFシリーズ、MCFシリーズ、RCFシリーズ、LFFシリーズ(いずれも三菱化学株式会社製)、バルカンシリーズ(キャボット社製)、ケッチェンシリーズ(ライオン株式会社製)を好適に使用することができる。なお、ここでの平均粒子径とは、カーボンブラック粒子を電子顕微鏡で観察して求めた算術平均径を意味する。
【0051】
電離放射線硬化型樹脂組成物への光吸収粒子の分散性を向上させるために、光吸収粒子を表面処理しておくこともできる。表面処理としては、従来公知のシリカコーティングによる親水処理や、プラズマ等による表面改質が挙げられる。
【0052】
上記した各成分を含む光吸収部用組成物3は、電離放射線硬化型樹脂組成物に、所定量の光吸収粒子を混合し、所望により重合開始剤等を添加することにより調製される。光吸収粒子の添加量は、光吸収部用組成物の全質量に対して15〜35%の範囲とすることが好ましく、この範囲とすることにより、よりコントラストに優れる光学シートを実現することができる。光吸収粒子の含有量が少なすぎると、光吸収部の光遮光性が不十分となる場合があり、光吸収粒子の含有量が多すぎると、樹脂ビーズどうしが接触し割れや欠けの問題が発生し易くなる。
【0053】
このような
図4に示される製造装置20および光吸収部用組成物3を使用して、光透過部2の溝2aに光吸収部用組成物3を充填する。
【0054】
具体的には、まず、
図4に示されるように、供給装置40に対して、搬送装置30によりシート状の光透過部2を光透過性基材1ごと移動させながら、光透過部2の表面2cにダイヘッド41から光吸収部用組成物3を連続的に供給する。そして、供給装置40の下流に位置する
図7に示される掻取部材60により光透過部2の表面2c上の光吸収部用組成物3を掻き取る。これにより、溝2aに光吸収部用組成物3が充填されるとともに、光透過部2の表面2cに存在する余剰の光吸収部用組成物3が掻き取られる。
【0055】
溝2aに光吸収部用組成物3を充填した後、電離放射線を放射して、溝2a内の光吸収部用組成物3を硬化させて、略台形の断面形状を有する複数の光吸収部4を形成する(
図1(c))。これにより、光学シート5が作製される。光吸収部用組成物3の硬化方法としては、通常の硬化方法、即ち、電子線又は紫外線の照射によって硬化することができる。例えば、電子線硬化の場合には、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速機から放出される50〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーを有する電子線等が使用され、紫外線硬化の場合には超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線等が利用できる。
【0056】
本実施形態によれば、マニホールド45の端部45aがマニホールド45の中央部45bよりも吐出口44側に位置しているので、マニホールド45の端部45aから吐出口44までの距離がマニホールド45の中央部45bから吐出口までの距離よりも短くなる。これにより、マニホールド45の端部45aが中央部45bと同じ高さにある場合よりも、光吸収部用組成物3がマニホールド45に供給されてから端部45bを経由して吐出口44に到達するまでの距離を短くすることができるので、端部45bを経由する光吸収部用組成物3の圧力損失を小さくすることができ、吐出口44の端部からの吐出量を増大させることができる。それ故、ダイヘッド41の長手方向Cにおいて均一に光吸収部用組成物3を吐出することができるので、光吸収部用組成物3が光吸収粒子を含む場合において、光透過部2の中央部2eと光透過部2の端部2dとの間における光吸収部用組成物3の充填ムラを改善でき、良好な外観を有し、かつコントラストが向上した光学シート5を製造できる。
【0057】
<光学シート>
上記のようにして得られた光学シート5は、光透過性基材1と、光透過性基材1上に形成され、かつ並列して設けられた複数の単位光透過部2bと、単位光透過部2b間に形成された複数の単位光透過部4aとを備えている。
【0058】
このような光学シート5においては、光透過部2に入射した光源からの映像光を光吸収部4と単位光透過部2bとの境界面で適切に反射させて、観測者に映像光を出射させるとともに、観測者側からの外光の一部を吸収できるため、コントラストを向上させることができる。
【0059】
光学シート5は、例えば、表示装置の表示部上に配置することができる。具体的には、光学シートは、例えば、表示装置用光学フィルタとして使用することができる。表示装置の表示部としては、例えばプラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電界放出ディスプレイ(FED)、表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(SED)、プロジェクションテレビ等が挙げられる。
【0060】
<表示装置>
以下、本発明による光学シートを表示装置の表示部に取り付けた例について説明する。
図8は本実施形態に係る光学シートを備えた表示装置の断面図である。
図8に示される表示装置70は、上記した製造方法により製造された光学シート5を備えている。光学シート5は、光透過性基材1が観察者側となるように表示装置70の表示部71に接着層72を介して貼り付けられている。光学シート5の観察者側には、帯電防止性、反射防止性、防眩性等の機能を有する機能素73が配置されている。機能層73は複数層から構成されていてもよい。
【実施例】
【0061】
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明する。
【0062】
まず、以下の組成の光透過部用組成物、光吸収部用組成物を用意した。
【0063】
(光透過部用組成物)
ビスフェノールA―エチレンオキシド2モル付加物41質量部、イソホロンジイソシアネート14.0質量部を、およびウレタン化触媒としてビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)(2−エチルヘキサン酸50%溶液))0.02質量部を加え、80℃で5時間反応させ、その後、2−ヒドロキシエチルアクリレート5質量部を加え、80℃で5時間反応させて得られたウレタンアクリレート系オリゴマーを、光硬化型プレポリマーとして用いた。このウレタンアクリレート系オリゴマー32、0質量部と、光硬化性モノマーとして、フェノキシエチルアクリレート(分子量192)10.0質量部、およびビスフェノールAのEO4モル付加物のジアクリレート(分子量512)30.0質量と、金型離型剤として、テトラデカノール−エチレンオキシド10モル付加物のリン酸エステル(モノエステル/ジエステル=モル比1/1)0.03質量部と、テアリルアミンエチレンオキシド15モル付加物0.02質量部、光重合開始剤として、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア184、BASFジャパン株式会社製)3質量部と、を混合し、均一化して光透過部用組成物を得た。
【0064】
(光吸収部用組成物)
光硬化型プレポリマーとして、エチレンオキシド、2,2´−[(1−メチルエチリデン)ビス(4,1−フェニレンオキシメチレン)]ビス−、ホモポリマー、ジ−2−プロペノアート20.0質量部と、反応性希釈モノマーとして、2−フェノキシエチル=アクリラート20.0質量部、α−アクリロイル−ω−フェノキシポリ(オキシエチレン)20.0質量部、および2−{2−[2−(アクリロイルオキシ)(メチル)エトキシ](メチル)エトキシ}(メチル)エチル=アクリラート13.0質量部と、光吸収粒子として、平均粒径4.0μmのカーボンブラックを25%含有したアクリル架橋微粒子(ガンツ化成株式会社製)20.0質量部と、光重合開始剤として、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア184、チバ・スペシャリティケミカルズ株式会社製)7.0質量部と、を混合し、均一化して光吸収部用組成物を得た。
【0065】
<実施例1>
上記組成の光透過部用組成物をポリエチレンテレフタレート基材(東洋紡績株式会社、A4300、厚さ100μm、幅1400mm)上に供給し、光透過部用組成物を硬化させて、表面に複数の溝が並設された、幅が1400mmの光透過部を形成した。溝の開口幅は10μmであり、溝の底面の幅は4μmであった。また、光透過部を構成する単位光透過部の表面における幅は35μmであり、単位光透過部における高さは94μmであった。
【0066】
次いで、実施形態で説明した製造装置を用いて、光透過部の溝に上記組成の光吸収部用組成物を充填した。具体的には、10m/分のライン速度で、光透過部をポリエチレンテレフタレート基材ごと移動させながら、供給装置のダイヘッドから、5L/分の供給速度で、光透過部の表面に連続的に供給し、その後、掻取ブレードとしての金属製のドクターブレードを用いて、光透過部の表面の光吸収部用組成物を掻き取った。
【0067】
ここで、実施例で使用したダイヘッドは、光吸収部用組成物の注入口と、光吸収部用組成物の吐出口と、ダイヘッド内に形成され、注入口に連通し、かつダイヘッドの長手方向に延びたマニホールドと、ダイヘッド内に形成され、マニホールドおよび吐出口に連通したスリットとを備えていた。具体的には、マニホールド等は、一対のダイブロックと、ダイブロック間に介装されたシム板とを組み合わせることにより形成されていた。マニホールドは、全長が1440mmであり、かつ半径が6mmの断面形状が円形状のものであった。また、マニホールドは、マニホールドの端部がマニホールドの中央部よりも吐出口側に位置しているものであった。具体的には、マニホールドは、マニホールドの中央からダイヘッドの長手方向の両側に延びた第1の部分と、第1の部分の両端に連結し、かつ端部に向かうに連れてダイヘッドの吐出口側(光透過部側)に傾斜した第2の部分とを備えるものであった。第1の部分の長さは800mmであり、第2の部分の長さ(片側)は320mmであった。スリットは、スリット幅が1440mm、スリット間隔が0.2mmとなっていた。
【0068】
光透過部の溝に光吸収部用組成物を充填した後、光吸収部用組成物に紫外線を照射して、光吸収部用組成物を硬化させることにより、光吸収部を形成し、実施例の光学シートを作製した。
【0069】
<比較例>
比較例においては、マニホールドの形状が実施例と異なるダイヘッドを用いた以外、実施例と同様の材料および同様の手法により、光学シートを作製した。
【0070】
比較例で使用したダイヘッドは、光吸収部用組成物の注入口と、光吸収部用組成物の吐出口と、ダイヘッド内に形成され、注入口に連通し、かつダイヘッドの長手方向に延びたマニホールドと、ダイヘッド内に形成され、マニホールドおよび吐出口に連通したスリットとを備えるものであったが、マニホールドの形状は、全長が1440mmであり、かつ縦30mm、横19mmの断面形状が矩形状のものであり、マニホールドの一方の端から他方の端に向けて直線状に延びたものであった。
【0071】
(吐出量測定)
実施例および比較例に係る光学シートを作製する際、予めダイヘッドから吐出される光吸収部用組成物の吐出量を、吐出口におけるダイヘッドの長手方向の各位置において測定した。なお、マニホールドの中央部の直下には吐出口の中央部が位置し、マニホールドの端部の直下には、吐出口の端部が位置していた。
【0072】
図9は実施例および比較例に係る光学シートを製造する際に用いたダイヘッドの吐出位置における吐出量比を表したグラフである。ここで、グラフ横軸の「吐出位置」とは、0mmが吐出口の一方の端であり、1440mmが吐出口の他方の端とした。また、グラフ縦軸の「吐出量比」とは、開口部面積あたりの平均の吐出量(全吐出量(g/分)÷開口面積(mm
2))を100%としたものであった。
【0073】
図9のグラフに示されるように、比較例に係る光学シートの製造で用いたダイヘッドにおいては、吐出口の中央部から吐出された光吸収部用組成物の吐出量は極めて多く、吐出口の端部から吐出された光吸収部用組成物の吐出量は極めて少なかった。これに対し、実施例に係る光学シートの製造で用いたダイヘッドにおいては、吐出口から吐出された光吸収部用組成物の吐出量は吐出口の中央部から端部にかけてほぼ均一となっていた。
【0074】
この結果から、マニホールドの端部がマニホールドの中央部よりも吐出口側に位置したマニホールドを有するダイヘッドを用いた場合には、吐出口の中央部から端部にかけて光吸収部用組成物の吐出量を均一化できることが確認された。
【0075】
(外観観察)
実施例および比較例の光学シートの外観を観察して、充填ムラの発生を確認した。なお、この評価の基準は以下の通りとした。
【0076】
○:充填ムラが確認されなかった。
×:充填ムラが確認された。
【0077】
以下、結果について述べる。
【表1】
表1に示されるように比較例に係る光学シートは充填ムラが観察された。これに対し、実施例に係る光学シートには、充填ムラが観察されず、良好な状態であった。
【0078】
(視野角特性評価)
実施例に係る光学シートを用いて視野角特性評価を行った。視野角特性評価は、各視野角を変えながら相対輝度をプラズマディスプレイの画面中央部および画面端部においてそれぞれ測定し、測定結果から1/2視野角および1/3視野角となる角度を求めることにより行った。「視野角」とは、画面中央部においては画面中央部の中心からの法線に対する上下方向への傾き角を意味し、画面端部においては画面端部の中心からの法線に対する上下方向への傾き角を意味する。「相対輝度」とは、プラズマディスプレイの画面に光学シートを配置していない状態の輝度に対する光学シートを配置したときの輝度の割合(%)を意味する。なお、相対輝度は、プラズマディスプレイの画面に光学シートを配置していない状態において最も高い輝度を100%としている。「1/2視野角」とは、正面の相対輝度の1/2となる相対輝度が得られる視野角を意味し、「1/3視野角」とは、正面の相対輝度の1/3となる相対輝度が得られる視野角を意味する。輝度の測定は、自動変角光度計(村上色彩研究所製、GP−500)により各角度について行った。
【0079】
(コントラスト評価)
実施例に係る光学シートを用いてコントラスト評価を行った。コントラスト評価は、プラズマディスプレイの画面中央部および画面端部においてそれぞれ行った。具体的には、まず、プラズマディスプレイの画面に光学シートを配置していない状態で、画面中央部に向けて45度の角度で、照度150lxとなるように外光を照射し、画面中央部の正面において、画面を白く表示させた場合の輝度(白輝度)と、黒く表示させた場合の輝度(黒輝度)を測定した。そして、白輝度を黒輝度で割った値を画面中央部におけるコントラストとした。次に、プラズマディスプレイの画面に光学シートを配置した状態で、画面中央部に向けて45度の角度で、照度150lxとなるように外光を照射し、画面中央部の正面において、画面を白く表示させた場合の輝度(白輝度)と、黒く表示させた場合の輝度(黒輝度)を測定した。そして、白輝度を黒輝度で割り、プラズマディスプレイの画面に光学シートを配置した状態におけるコントラストを求めた。そして、画面中央部の正面における、プラズマディスプレイの画面に光学シートを配置していない状態のコントラストに対する光学シートを配置した状態のコントラストの割合(%)を求めた。なお、コントラストは、プラズマディスプレイの画面に光学シートを配置していない状態のコントラストを100%としている。同様の手法により、プラズマディスプレイの画面端部において、プラズマディスプレイの画面に光学シートを配置していない状態のコントラストに対する光学シートを配置した状態のコントラストの割合(%)を求めた。
【0080】
以下、結果について述べる。
図10は実施例に係る光学シートの中央部と端部の視野角に対する相対輝度を表したグラフである。
【表2】
表2および
図10に示されるように相対輝度(正面の相対輝度を含む)は、プラズマディスプレイの画面中央部と画面端部においてほぼ同等であった。また、表2に示されるように、1/2視野角および1/3視野角も、プラズマディスプレイの画面中央部と画面端部において、ほぼ同等であった。さらに、コントラストも、画面中央部と画面端部において、ほぼ同等であった。この結果から、実施例に係る光学シートの製造方法によれば、光学シートの中央部および端部における視野角特性やコントラストがほぼ同等の光学シートを製造できることが確認された。