特許第6035813号(P6035813)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士通株式会社の特許一覧

特許6035813生体モニタリング装置、装置の制御方法、及び装置の制御プログラム
<>
  • 特許6035813-生体モニタリング装置、装置の制御方法、及び装置の制御プログラム 図000002
  • 特許6035813-生体モニタリング装置、装置の制御方法、及び装置の制御プログラム 図000003
  • 特許6035813-生体モニタリング装置、装置の制御方法、及び装置の制御プログラム 図000004
  • 特許6035813-生体モニタリング装置、装置の制御方法、及び装置の制御プログラム 図000005
  • 特許6035813-生体モニタリング装置、装置の制御方法、及び装置の制御プログラム 図000006
  • 特許6035813-生体モニタリング装置、装置の制御方法、及び装置の制御プログラム 図000007
  • 特許6035813-生体モニタリング装置、装置の制御方法、及び装置の制御プログラム 図000008
  • 特許6035813-生体モニタリング装置、装置の制御方法、及び装置の制御プログラム 図000009
  • 特許6035813-生体モニタリング装置、装置の制御方法、及び装置の制御プログラム 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6035813
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】生体モニタリング装置、装置の制御方法、及び装置の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/08 20060101AFI20161121BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20161121BHJP
   G01N 22/00 20060101ALN20161121BHJP
【FI】
   A61B5/08
   A61B5/10 310A
   A61B5/08ZDM
   !G01N22/00 S
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-74944(P2012-74944)
(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公開番号】特開2013-202216(P2013-202216A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年1月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100146776
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 昭則
(72)【発明者】
【氏名】山地 隆行
(72)【発明者】
【氏名】江頭 伸二
【審査官】 湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−301047(JP,A)
【文献】 特開2008−099849(JP,A)
【文献】 特開2011−015887(JP,A)
【文献】 特開2010−178933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/08
A61B 5/11
G01N 22/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体をモニタリングする装置であって、
受信信号を得るために、生体から反射した電磁波を受信する受信部と、
所定のパターン認識規則に従って、前記受信信号の波形の複数の特徴を抽出する特徴抽出部と、
前記複数の特徴の時間軸上での位置に基づいて、生体の呼気時間(Tb)及び吸気時間(Ts)を推定する呼気・吸気時間推定部と、
推定された前記呼気時間、及び前記吸気時間を出力する出力部と、
を有し、
前記特徴抽出部は、
前記受信信号に含まれる複数の周波数帯域の信号のうちの1つの周波数帯域の信号から、少なくとも呼吸周期(T)を含む信号周期を推定する、信号周期推定部、
を含み、
推定された前記呼吸周期(T)は、
T>Tb+Tc
となるように、前記複数の特徴を認識するために利用される、
装置。
【請求項2】
前記特徴抽出部は、
前記受信信号にN次微分(Nは整数)を適用して整形波形を取得する波形整形部と、
前記所定のパターン認識規則を、前記整形波形に適用して前記複数の特徴を認識する特徴認識部と、
を含む、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記信号周期推定部は、
前記受信信号をパワースペクトルに変換するパワースペクトル変換部と、
前記パワースペクトルから少なくとも1つのピーク周波数を特定するピーク周波数特定部と、
呼吸周期を推定する呼吸周期推定部と、
を含み、
前記呼吸周期推定部は、前記ピーク周波数に基づいて、前記呼吸周期を推定する、
請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記信号周期推定部は、
特定された前記ピーク周波数に従って、前記受信信号から所定の周波数帯域のフィルタリング信号を取り出すフィルタ部、を含み、
前記呼吸周期推定部は、前記フィルタリング信号に基づいて、前記呼吸周期を推定する、
請求項記載の装置。
【請求項5】
前記信号周期推定部は、心拍数を含む生体の心拍に関する情報を推定する心拍情報推定部、
を更に含み、
前記心拍情報推定部は、前記心拍に関する情報を前記出力部に与える、請求項ないしのうちいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
生体をモニタリングする装置の制御方法であって、
受信信号を得るために、生体から反射した電磁波を受信し、
所定のパターン認識規則に従って、前記受信信号の波形の複数の特徴を抽出し、
前記複数の特徴の時間軸上での位置に基づいて、生体の呼気時間(Tb)及び吸気時間(Ts)を推定し、
推定された前記呼気時間、及び前記吸気時間を出力する、
処理を有し、
前記特徴を抽出する処理は、
前記受信信号に含まれる複数の周波数帯域の信号のうちの1つの周波数帯域の信号から、少なくとも呼吸周期(T)を含む信号周期を推定する、信号周期を推定する処理、
を含み、
推定された前記呼吸周期(T)は、
T>Tb+Tc
となるように、前記複数の特徴を認識するために利用される、
制御方法。
【請求項7】
生体から反射された電磁波を受信した受信信号を処理することにより、生体をモニタリングする装置を制御するためのプログラムであって、
受信信号を得るために、生体から反射した電磁波を受信し、
所定のパターン認識規則に従って、前記受信信号の波形の複数の特徴を抽出し、
前記複数の特徴の時間軸上での位置に基づいて、生体の呼気時間(Tb)及び吸気時間(Ts)を推定し、
推定された前記呼気時間、及び前記吸気時間を出力する、
処理をコンピュータに実行させるプログラムであって
前記特徴を抽出する処理は、
前記受信信号に含まれる複数の周波数帯域の信号のうちの1つの周波数帯域の信号から、少なくとも呼吸周期(T)を含む信号周期を推定する、信号周期を推定する処理、
を含み、
推定された前記呼吸周期(T)は、
T>Tb+Tc
となるように、前記複数の特徴を認識するために利用される、
プログラム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体をモニタリングする装置、装置の制御方法、及び装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、被験者の健康状態を知る一つの指標として、呼吸の状態を把握することが注目されている。呼吸は、細胞レベルの呼吸と、肺呼吸に大別される。本明細書で用いる「呼吸」は、肺呼吸を意味する。肺呼吸は、外界から酸素を取り入れ、二酸化炭素を放出する生理的現象である。そして、呼吸は、自律神経活動にも密接に関連している。呼吸は、心の状態とも関連している。心身が緊張状態にあるときには、呼吸は浅くなり、呼吸の時間も短くなる傾向がある。逆に、リラックスした状態においては、呼吸は深くなり、1回の呼吸の時間も長くなる。
【0003】
呼吸には、吸気時間と呼気時間とが含まれている。吸気時間と呼気時間との比は、E比と呼ばれる。E比は、通常では1対2が望ましいとの研究報告がある。また、E比は、気道内圧とも関連する。気道内圧を上昇させるには、E比を1対2から1対3にコントロールすることで可能となる。
【0004】
また、自立神経、特に副交感神経を正常な状態にコントロールするために、適切な呼吸を行うことが有効であるとも報告されている。また、心臓の虚血性心疾患患者などの運動指導にもE比を適正に保つことが有効であるとの報告がなされている。
【0005】
また、睡眠時における呼吸の詳細な状態を把握することも重要視されてきている。
【0006】
呼気及び吸気の計測を行う装置としては、被験者にセンサを取り付ける接触型がある。接触型の装置としては、サーミスタ型(温度変化検出)や、フォロー型などがあり、専用のセンサが用いられている場合が多い。
【0007】
従来、マイクロ波に対する身体からの散乱特性の変化を取得し、この変化についてのパワースペクトラムを解析し、身体の呼吸速度等を検出する技術が知られている(特許文献1参照)。
【0008】
また、運転者の胸部に照射したマイクロ波の反射波の波形信号に対して、ゼロクロスカウンタを用いることにより、運転者の呼吸周期を検出する技術が存在する(特許文献2参照)。
【0009】
また、サーミスタ式鼻気流センサを用いて、吸気時間と呼気時間とを測定する技術が存在する(特許文献3参照)。
【0010】
また、インピーダンスモニタで取得した複数の呼吸波形を時間的に整列させ、呼吸波形の変曲点に基づいて呼気期間の開始と終了を特定する技術が存在する(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表2006−525831号公報
【特許文献2】特公平6−69444号公報
【特許文献3】特開2008−68018号公報
【特許文献4】特表2009−530047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
一側面によれば、本発明は、生体モニタリング装置、装置の制御方法、及び装置の制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一つの側面によれば、生体をモニタリングする装置であって、受信信号を得るために、生体から反射した電磁波を受信する受信部と、所定のパターン認識規則に従って、前記受信信号の波形の複数の特徴を抽出する特徴抽出部と、前記複数の特徴の時間軸上での位置に基づいて、生体の呼気時間及び吸気時間を推定する呼気・吸気時間推定部と、 推定された前記呼気時間、及び前記吸気時間を出力する出力部と、を有する装置が提供される。
【発明の効果】
【0014】
実施態様によれば、非接触で簡便に生体の情報のモニタリングができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に従った装置のブロック図である。
図2】一実施形態の信号周期推定部の別の例を示す図である。
図3】一実施形態の方法のフローチャートを示す図である。
図4】一実施形態の別の方法のフローチャートを示す図である。
図5】一実施形態の信号周期推定処理のフローチャートを示す図である。
図6図1における各信号と、吸気時間及び呼気時間の関係を示す図である。
図7】吸気・呼気の位置を認識するためのパターン認識規則を示す図である。
図8】一実施形態を示す図である。
図9】一実施形態のハードウエア構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を用いて本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、発明を理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するためのものではない点に留意すべきである。また、以下の複数の実施形態は、相互に排他的なものではない。したがって、矛盾が生じない限り、実施形態の各要素を組み合わせることも意図されていることに留意すべきである。また、請求項に記載された方法やプログラムに係る発明は、矛盾のない限り処理の順番を入れ替えてもよく、あるいは、複数の処理を同時に実施してもよい。また、単純に分岐しているフローチャートにおいて、並列に置かれたステップは、どちらを先に処理してもよい。そして、これらの実施形態も、請求項に記載された発明の技術的範囲に包含されることは言うまでもない。なお、同じ構成要素については、複数の図において同じ参照符号が付されている点に留意すべきである。
【0017】
また、以下に説明する本発明の種々の実施形態では、電磁波としてマイクロ波を用いることを例にして説明するが、本発明は、マイクロ波の利用に限定されるものではない。また、本発明で用いる、「非接触」とは、本発明をインプリメントした機器が、被験者の身体から容易に分離できることを意味する。例えば、胸ポケットに機器を入れた場合や、身体に機器を直接接触させてもよい。あるいは、本実施形態をインプリメントした機器の一部または全部を身体の一部に接触させたまま利用したり、体内に設置して利用したりしてもよい。
【実施例】
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に従った装置のブロック図を示している。本装置は、マイクロ波送信部110、送信アンテナ112、受信部120、受信アンテナ122、特徴抽出部130、呼気・吸気時間推定部150、出力部160を含む。
【0019】
ここで実施形態の動作概要について説明する。なお、各構成要素の詳細は後述する。
【0020】
まず、マイクロ波送信部110からマイクロ波が生成され、マイクロ波が送信アンテナ112から放射される。放射されたマイクロ波113は、モニタリングをする対象である被験者100(生体)の各組織に到達し、反射する。反射されたマイクロ波の一部は、受信アンテナ122に到達し、電気信号として受信部120に送られる。受信部は、受信されたマイクロ波を受信信号S1に変換する。受信信号S1は、特徴抽出部130に送られる。特徴抽出部130は、受信信号S1における複数の特徴を認識し、少なくとも呼気の開始と終了の時刻、吸気の開始と終了の時刻を含む情報を呼気・吸気時間推定部150に送る。呼気・吸気時間推定部150は、呼気の時間、吸気の時間に関するデータの記録を行うと共に、例えばこれらのデータの平均値を計算して、出力部160に出力する。また、特徴抽出部は、被験者100の心拍数を含む心拍の情報を出力部160に送ってもよい。
【0021】
被験者に微弱なマイクロ波を当てると、その反射波に呼吸、心拍、体動などの情報が含まれている。例えば、成人の場合、1回の呼吸で500ml程度の空気を吸い込む。このため、被験者の胸の表面が、1〜2cm程度移動する。また、呼吸によって、体内の骨や横隔膜等の移動が生じる。マイクロ波は、体内の臓器からも反射される。体表面や、臓器が動くことにより、マイクロ波の反射波の出力に変化が生じる。このため、反射されたマイクロ波は、体表面及び体内臓器の動きの情報を含んでいる。また、反射されたマイクロ波には、心臓の動きに関する情報や、体動の情報も含まれる。
【0022】
図1において、特徴抽出部130は、信号周期推定部140(1)、波形整形部132,特徴認識部134を有する。波形整形部132は、受信信号S1に対して、例えば1次微分を適用して整形波形S2を出力する。整形波形S2は、特徴認識部134に入力され、所定のパターン認識規則に基づいて、整形波形S2の複数の特徴位置を時間軸上で特定する。なお、特徴認識部134は、信号周期推定部140(1)からの呼吸周期情報を利用してもよい。呼吸は、同様のパターンが呼吸周期で繰り返されるため、特徴認識部134で呼吸周期情報を用いることにより、呼吸に関する特徴認識の精度を向上させることができる。なお、特徴認識部134における、パターン認識規則の詳細については、図7を用いて後述する。
【0023】
図1において、信号周期推定部140(1)について以下に説明する。信号周期推定部140(1)は、パワースペクトル変換部142、ピーク周波数特定部144、フィルタ部146、心拍情報推定部148、呼吸周期推定部149を含む。パワースペクトル変換部142は、受信信号S1に対して、例えば、高速フーリエ変換(FFT)を適用し、受信信号S1をパワースペクトルS4に変換する。パワースペクトルへS4の変換は、MEM(最大エントロピー法)などを用いてもよい。得られたパワースペクトルS4は、ピーク周波数特定部144で、パワースペクトルS4の複数のピークのうちから、例えば呼吸に関連する周波数のピークを探索する。この探索によって、呼吸周波数が推定できる。推定された呼吸周波数は、フィルタ部146に送られる。或いは、後述するように、推定された呼吸周波数は、バイパス路147を介して呼吸周期推定部149に送られてもよい。フィルタ部146は、例えば、呼吸周波数を中心周波数とするバンドパスフィルタ(BPF)で実現されてもよい。あるいは、呼吸周波数がカットオフ周波数であるローパスフィルタで実現されてもよい。このフィルタ部146には、受信信号S1が入力される。従って、フィルタ部146を通過した周波数帯域の信号(S3)は、呼吸周波数の成分を非常に多く含む信号となる。この呼吸成分信号S3は、呼吸周期推定部149に伝達される。呼吸周期推定部149は、呼吸成分信号S3から、例えば直流成分を除去して、信号のゼロクロス位置を特定することにより、呼吸周期の推定値を取得することができる。この呼吸周期の推定値の情報は端子Cへの信号として特徴認識部134に伝達される。また、上述のように、ピーク周波数特定部144からバイパス路147を介して呼吸周期推定部149に、推定された呼吸周波数が入力される場合には、呼吸周期推定部149は、推定された呼吸周波数から、呼吸周期の推定値を求めてもよい。また、心拍情報推定部148は、ピーク周波数特定部144から、心拍周波数領域のパワースペクトルのピーク周波数の情報を受け取る。心拍情報推定部148は、受け取った心拍周波数領域のパワースペクトルのピーク周波数から、例えば、1分当たりの心拍数を求め、出力部160に伝送してもよい。
【0024】
図2に信号周期推定部140(2)は、図1における信号周期推定部140(1)の変形例を示している。図2におけるA、B,及びCは、図1におけるA、B、及びCに対応している点に留意すべきである。信号周期推定部140(2)は、フェーズロックループ(PLL)の機能を含むPLL1(202)、呼吸周期情報処理部204、pっl2(206)、及び心拍情報処理部208を含む。入力端Aから受取られた受信信号S1は、PLL1(202)に入力される。PLL1(202)は、呼吸の周波数の帯域(通常、中心周波数0.2Hz)においてロックするPLLである。PLL1(202)によって、呼吸の周波数にロックした信号が得られ、その信号は呼吸周期情報処理部204に送られる。呼吸周期情報処理部204は、受け取った信号に基づいて、呼吸周期の推定値の情報を端子Cへの信号として特徴認識部134に送る。また、PLL2(206)は、鼓動の周波数(通常0.7Hzないし2Hz)にロックするPLLである。PLL2(206)によって、鼓動の周波数にロックした信号が得られ、その信号は心拍情報処理部208に送られる。心拍情報処理部208は、受け取った信号に基づいて、例えば1分当たりの心拍数を端子Bへの信号として出力部160に送ってもよい。
【0025】
その他、図2に示される信号周期推定部の変形例以外にも、当業者であれば、種々の変形例を作ることができるであろう。
【0026】
図3は、本発明の一実施形態の装置の制御方法のフローチャートを示している。
【0027】
ステップ310では、受信器で受信したマイクロ波から、受信信号S1を取得する。
【0028】
ステップ320では、受信した受信信号S1の特徴が抽出される。特徴としては、呼気の開始及び終了時刻、吸気の開始及び終了時刻が含まれる。ステップ320は、さらにステップ322とステップ324を含む。
【0029】
ステップ322では、受信信号S1に対して1次微分が適用される。なお、この実施形態では、1次微分を用いたが、一般的なN次微分(Nは整数)を適用してもよい。微分する次数によって、特徴抽出の手法は異なってもよい。
【0030】
ステップ324において、所定のパターン認識規則によって、特徴が抽出される。特徴には、呼気の開始及び終了時刻、吸気の開始及び終了時刻が含まれる。
【0031】
ステップ330では、抽出された特徴から、呼気の時間、吸気の時間を含む呼吸の情報が推定される。呼気の開始及び終了時刻から呼気の時間を求めることができる。吸気の時間についても同様の手法で求めることができる。
【0032】
図4は、実施形態の別の方法のフローチャートを示す。図3において既に説明したステップについては、同じ参照符号が付されている点に留意すべきである。
【0033】
ステップ400において、受信信号S1の信号周期が推定される。ここでは、特に呼吸周期が推定される。推定された呼吸周期は、ステップ324のパターン認識規則による特徴認識において利用される。受信信号S1及びその微分された信号は、呼吸の周期によって、近似したパターンが繰り返されることがほとんどである。したがって、ステップ400において、呼吸周期を取得することによって、ステップ324の特徴認識がより容易に行われ得る。
【0034】
図4におけるその他のステップについては、図3における各ステップと同様である。
【0035】
図5は、一実施形態の信号周期推定処理(ステップ400)に関するより具体的な処理方法のフローチャートを示す。図5におけるD及びEは、図4におけるD及びEに対応している点に留意すべきである。
【0036】
ステップ510では、受信信号S1のパワースペクトルが取得される。上述のようにパワースペクトルの算出には、FFTやMEMなどが用いられてもよい。
【0037】
ステップ520では、パワースペクトルの複数のピーク周波数を取り出す。
【0038】
ステップ530では、取り出されたピーク周波数のうちで、呼吸周波数に該当するものを取り出す。通常、呼吸の中心周波数は、0.2Hz前後である。したがって、この中心周波数の近傍においてパワースペクトルのピークを有する周波数を呼吸周波数として採用すればよい。
【0039】
ステップ540では、取得された呼吸周波数を中心周波数とするバンドパスフィルタ(又はカットオフ周波数とするローパスフィルタ)を用いて受信信号S1をフィルタリングし、フィルタリング信号を取り出す。
【0040】
ステップ550では、取り出されたフィルタリング信号から呼吸周期を取得する。そして、Eを経由して、図4のステップ322に続く。
【0041】
なお、ステップ350では、経路532を介して、呼吸周波数をステップ550で直接処理するようにしてもよい。この経路532は、図1におけるバイパス路147に相当するしょりの流れを示している。
【0042】
また、ステップ580では、取り出されたピーク周波数のうちで、心拍周波数に該当するものを取り出す。通常、心拍周波数は、0.7Hzないし2Hzであるから、この範囲又は、この範囲の近傍に位置するパワースペクトルのピークを有する周波数を心拍周波数として採用すればよい。この心拍周波数は、例えば1分当たりの心拍数に変換されて、出力されてもよい。
【0043】
図6は、図1における各信号(S1、S2、S3、及びS4)の信号波形の例と、呼気時間、及び吸気時間との関係を示している。
【0044】
図6において、(S1)は、受信信号S1の波形の例を示している。この波形は、例えば受信したマイクロ波の振幅変調信号であってもよい。また、必要に応じてノイズ等の除去のためにフィルタリング処理(例えばハイカットフィルタ処理)を施してもよい。
【0045】
信号(S2)は、図1における波形整形部132の整形波形S2の例を示している。この例では、受信信号S1に1次微分を施した波形が示されている。この波形において、信号の各部分に示されたポイント(a1ないしe3)の詳細については、図7を用いて後述する。ここで、Ts1、Ts2、及びTs3は、それぞれ推定された吸気の時間を示している。そして、Tb1、Tb2、及びTb3は、それぞれ推定された呼気の時間を示している。
【0046】
信号(S3)は、図1におけるフィルタ部146の呼吸成分信号S3の例を示している。この例では、呼吸成分信号S3がマイナスからプラス方向へゼロクロスする点が、それぞれW1、W2、及びW3として示されている。そして、W1からW2までの期間T12、W2からW3までの期間T23は、それぞれ、1回の呼吸の時間に相当する。なお、呼吸成分信号S3は、バンドパスフィルタを通過しているため、受信信号S1及び整形波形S2とは、位相のズレが生じていることに留意すべきである。整形波形S2と呼吸成分信号S3を比較すると分かるように、例えば、呼吸期間T12には、1つの呼気の時間Tb1と1つの吸気の時間Ts2が含まれ、呼吸期間T23には、1つの呼気の時間Tb2と1つの吸気の時間Ts3が含まれていることが分かる。
【0047】
グラフ(S4)は、図1におけるパワースペクトル変換部142において得られたパワースペクトルのグラフの例を示している。グラフを見ると分かるように、パワースペクトルに複数のピークが含まれている。周波数0から数えて、最初に現れるピークは、呼吸に関連するスペクトルに相当する。その周波数f1は、約0.25Hzである。三番目に現れるピークは、心臓の鼓動に関連するスペクトルに相当する。その周波数f2は、約0.8Hzである。この情報から、呼吸周期は約4秒、脈拍数は、毎分約48であることが分かる。
【0048】
図7は、吸気・呼気の時間軸上での位置を認識するためのパターン認識の規則の例を示す。図7には、受信信号S1の1次微分を適用した整形波形S2が示されており、その波形に符号a、b、c、d、e、及びhが示されている。
【0049】
まず、吸気の特徴は、a+c>|b|となる信号パターンを探索することにより発見できる。そして、a、b、及びcは、高いピーク(負のピークを含む)が連続して現れるという特徴を持っている。この特徴を探す際には、呼吸周期を有効に活用してもよい。すなわち、1つの呼吸周期の間隔に、a、b、及びcのパターンは、1回だけ現れることになる。1つの呼吸周期の開始または終了の部分にa、b、及びcのパターンが重なって、認識できない場合も考慮し、1つの呼吸周期の開始または終了の位置をずらして、a、b、及びcのパターンが見つかるかを確認してもよい。このようにしてa、b、及びcのパターンを複数見つけることができる。
【0050】
次に、呼気のパターンを見つけるパターン認識規則を説明する。呼気は、二つの隣り合う吸気の間に存在する。したがって、二つの吸気の間において、プラス側における高いピークeを探索する。eの時間的に手前に、hのマイナスの谷が存在する。そして更にhの時間的手前のゼロクロスの位置dを探索する。
【0051】
さらに、呼気の特徴は、d>h、d+e+|h|<a+c+|b|である。
【0052】
以上のようにして、整形波形S2のa、b、c、d、e、及びhの位置が特定される。そして、吸気の時間Ts、及び呼気の時間Tbは以下の式から算出できる。
【0053】
吸気の時間Ts=cの時刻−aの時刻
呼気の時間Tb=eの時刻−dの時刻
以上のようにして、吸気の時間Ts、及び呼気の時間Tbが求まる。以上のパターン認識アルゴリズムは、例えば整形波形S2をサンプリングし、コンピュータプログラムを実行することによって実現することができる。
【0054】
図6に戻る。この図に示された整形波形S2のa1ないしe3は、図7に示したアルゴリズムに対応した波形の位置を示している。
【0055】
図8は、一実施形態を示している。本発明の一実施形態の装置800が、被験者100の傍らに置かれている。装置800からは、マイクロ波が送信され、被験者100から反射したマイクロ波を装置800が受信する。装置800は、必ずしも胸の前に置く必要はなく、被験者の近傍に置くことで、被験者の呼気の時間及び吸気の時間等を計測することが可能である。また、装置800を被験者100の胸ポケット等に入れ、被験者100に接触させても(図示せず)、同様に装置800は機能する。
【0056】
図9は、一実施形態のハードウエア構成を例示している。
【0057】
本発明の各実施形態の複数の構成要素それぞれは、ハードウエア、ソフトウエア、または、ハードウエアとソフトウエアの組合せにより実現され得る。本発明がインプリメントされ得るハードウエアとしては、携帯型端末、タブレット端末、ラップトップコンピュータ、テレビなどのリモコン等の可搬型装置が挙げられる。本発明がインプリメントされ得るその他の形態としては、本実施形態をもっぱら実施する専用機器に組み込まれてもよい。また、これらの機器は、壁などの特定箇所に設置されてもよく、可搬型でもよい。また、壁掛け用の時計、目覚まし時計、卓上時計、腕時計、壁掛け用温度計などに、本実施形態がインプリメントされてもよい。また、本発明の実施形態は、テレビやコンピュータなどによるオーディオビジュアル配信、インターラクティブコンテンツ・プログラムなどにおいて利用されてもよい。また、本発明の実施形態の対象は、被験者に限定されるものではなく、呼吸活動を行う動物等の生物であってもよいことは言うまでもない。
【0058】
本発明の一実施形態の装置は、CPU902、ROM904、RAM906、記録担体インタフェース910、表示制御部920、入出力制御部930、通信インタフェース940、バス950を含んでもよい。各コンポーネントは、バス950で相互に接続されてもよい。また、他の構成要素が含まれてもよい。
【0059】
記録担体インタフェース910は、プログラム等が格納されたメモリカード912を読み書きすることが可能である。なお、記録媒体は、メモリカードに限定されるものではない。メモリカード912には、プログラム及びデータが含まれる。メモリカード912記憶されたプログラムは、CPUが実行することができる。
【0060】
CPUは、ROM904、RAM906、メモリカード912に格納されたプログラムとデータを利用してプログラムを実行することができる。
【0061】
なお、本実施形態のプログラムは、メモリカード912などの記録担体に格納することができる。メモリカード912を含む記憶媒体とは、構造(structure)を有する1つ以上の非一時的(non−transitory)な、有形(tangible)な、記憶媒体を言う。例示として、可搬記録媒体としては、磁気記録媒体、光ディスク、光磁気記録媒体、不揮発性メモリなどがある。メモリカード912としては、USBメモリ、SDメモリカード等の各種のメモリカードが含まれる。磁気記録媒体には、HDD、フレキシブルディスク(FD)、磁気テープ(MT)などがある。光ディスクには、DVD(Digital Versatile Disc)、DVD−RAM、CD−ROM(Compact Disc−Read Only Memory)、CD−R(Recordable)/RW(ReWritable)などがある。また、光磁気記録媒体には、MO(Magneto−Optical disk)などがある。
【0062】
入出力制御部930は、例えば、USBインタフェース932、タッチデバイス904、キーボード936、オーディオ入出力938等と、データの交換を行う。
【0063】
通信インタフェース940は、例えば、WI−FI用送受信器942、携帯電話用送受信器844、Bluetooth(登録商標)945、マイクロ波送信器946、マイクロ波受信器948とのインタフェース機能を持ってもよい。本発明の各種実施形態では、マイクロ波の送信及び受信を行う機能が含まれている。マイクロ波送信器946及びマイクロ波受信器948は、通信インタフェース940とは別個の専用インタフェースを用いてもよい。また、マイクロ波の送受信は、Bluetooth(登録商標)945等の、既存の無線インタフェースが用いられてもよい。また、本発明の各種実施形態は、マイクロ波の利用に限定されるものではなく、ミリ波などの他の帯域の電磁波が用いられてもよい。使用される電磁波の周波数に応じた送受信器を用意すればよい。
【0064】
以上の実施形態に関して、以下の付記を開示する。
(付記1)
生体をモニタリングする装置であって、
受信信号を得るために、生体から反射した電磁波を受信する受信部と、
所定のパターン認識規則に従って、前記受信信号の波形の複数の特徴を抽出する特徴抽出部と、
前記複数の特徴の時間軸上での位置に基づいて、生体の呼気時間及び吸気時間を推定する呼気・吸気時間推定部と、
推定された前記呼気時間、及び前記吸気時間を出力する出力部と、
を有する装置。
(付記2)
前記特徴抽出部は、
前記受信信号にN次微分(Nは整数)を適用して整形波形を取得する波形整形部と、
前記所定のパターン認識規則を、前記整形波形に適用して前記複数の特徴を認識する特徴認識部と、
を含む、付記1記載の装置。
(付記3)
前記特徴抽出部は、
前記受信信号に含まれる複数の周波数帯域の信号うちの1つの周波数帯域の信号から、少なくとも呼吸周期を含む信号周期を推定する、信号周期推定部と、
を含み、
推定された前記呼吸周期は、前記複数の特徴を認識するために利用される、
付記1又は2記載の装置。
(付記4)
前記信号周期推定部は、
前記受信信号をパワースペクトルに変換するパワースペクトル変換部と、
前記パワースペクトルから少なくとも1つのピーク周波数を特定するピーク周波数特定部と、
呼吸周期を推定する呼吸周期推定部と、
を含み、
前記呼吸周期推定部は、前記ピーク周波数に基づいて、前記呼吸周期を推定する、
付記3記載の装置。
(付記5)
前記信号周期推定部は、
特定された前記ピーク周波数に従って、前記受信信号から所定の周波数帯域のフィルタリング信号を取り出すフィルタ部、を含み、
前記呼吸周期推定部は、前記フィルタリング信号に基づいて、前記呼吸周期を推定する、
付記4記載の装置。
(付記6)
前記信号周期推定部は、心拍数を含む生体の心拍に関する情報を推定する心拍情報推定部、
を更に含み、
前記心拍情報推定部は、前記心拍に関する情報を前記出力部に与える、付記3ないし5のうちいずれか1項記載の装置。
(付記7)
生体をモニタリングする装置の制御方法であって、
受信信号を得るために、生体から反射した電磁波を受信し、
所定のパターン認識規則に従って、前記受信信号の波形の複数の特徴を抽出し、
前記複数の特徴の時間軸上での位置に基づいて、生体の呼気時間及び吸気時間を推定し、
推定された前記呼気時間、及び前記吸気時間を出力する、
処理を有する制御方法。
(付記8)
前記特徴を抽出する処理は、
前記受信信号にN次微分(Nは整数)を適用して整形波形を取得し、
前記所定のパターン認識規則を、前記整形波形に適用して前記複数の特徴を認識する、
処理を含む、付記7記載の制御方法。
(付記9)
前記特徴を抽出する処理は、
前記受信信号に含まれる複数の周波数帯域の信号うちの1つの周波数帯域の信号から、少なくとも呼吸周期を含む信号周期を推定する、
処理を含み
推定された前記呼吸周期は、前記複数の特徴を認識するために利用される、
付記7又は8記載の制御方法。
(付記10)
前記信号周期を推定する処理は、
前記受信信号をパワースペクトルに変換し、
前記パワースペクトルから少なくとも1つのピーク周波数を特定し、
呼吸周期を推定する、
処理を含み、
前記呼吸周期を推定する処理は、前記ピーク周波数に基づいて、前記呼吸周期を推定する、
付記9記載の制御方法。
(付記11)
前記信号周期を推定する処理は、
特定された前記ピーク周波数に従って、前記受信信号から所定の周波数帯域のフィルタリング信号を取り出す処理、を含み、
前記呼吸周期を推定する処理は、前記フィルタリング信号に基づいて、前記呼吸周期を推定する、
付記10記載の制御方法。
(付記12)
前記信号周期を推定する処理は、心拍数を含む生体の心拍に関する情報を推定する処理、
を更に含み、
前記心拍に関する情報を推定する処理は、前記心拍に関する情報を前記出力する処理に与える、付記9ないし11のうちいずれか1項記載の制御方法。
(付記13)
生体から反射された電磁波を受信した受信信号を処理することにより、生体をモニタリングする装置を制御するためのプログラムであって、
受信信号を得るために、生体から反射した電磁波を受信し、
所定のパターン認識規則に従って、前記受信信号の波形の複数の特徴を抽出し、
前記複数の特徴の時間軸上での位置に基づいて、生体の呼気時間及び吸気時間を推定し、
推定された前記呼気時間、及び前記吸気時間を出力する、
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
(付記14)
前記特徴を抽出する処理は、
前記受信信号にN次微分(Nは整数)を適用して整形波形を取得し、
前記所定のパターン認識規則を、前記整形波形に適用して前記複数の特徴を認識する、
処理を含む、付記13記載のプログラム。
(付記15)
前記特徴を抽出する処理は、
前記受信信号に含まれる複数の周波数帯域の信号うちの1つの周波数帯域の信号から、少なくとも呼吸周期を含む信号周期を推定する、
処理を含み
推定された前記呼吸周期は、前記複数の特徴を認識するために利用される、
付記13又は14記載のプログラム。
(付記16)
前記信号周期を推定する処理は、
前記受信信号をパワースペクトルに変換し、
前記パワースペクトルから少なくとも1つのピーク周波数を特定し、
呼吸周期を推定する、
処理を含み、
前記呼吸周期を推定する処理は、前記ピーク周波数に基づいて、前記呼吸周期を推定する、
付記15記載のプログラム。
(付記17)
前記信号周期を推定する処理は、
特定された前記ピーク周波数に従って、前記受信信号から所定の周波数帯域のフィルタリング信号を取り出す処理、を含み、
前記呼吸周期を推定する処理は、前記フィルタリング信号に基づいて、前記呼吸周期を推定する、
付記16記載のプログラム。
(付記18)
前記信号周期を推定する処理は、心拍数を含む生体の心拍に関する情報を推定する処理、
を更に含み、
前記心拍に関する情報を推定する処理は、前記心拍に関する情報を前記出力する処理に与える、付記15ないし17のうちいずれか1項記載のプログラム。
【符号の説明】
【0065】
110 マイクロ波送信部
112 送信アンテナ
113 マイクロ波
120 受信部
122 受信アンテナ
130 特徴抽出部
132 波形整形部
134 特徴認識部
140 信号周期推定部
142 パワースペクトル変換部
144 ピーク周波数特定部
146 フィルタ部
148 心拍情報推定部
149 呼吸周期推定部
150 呼気・吸気時間推定部
160 出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9