特許第6035853号(P6035853)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6035853
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】サンシェード装置
(51)【国際特許分類】
   B60J 7/00 20060101AFI20161121BHJP
【FI】
   B60J7/00 E
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-107855(P2012-107855)
(22)【出願日】2012年5月9日
(65)【公開番号】特開2013-233876(P2013-233876A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2015年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】平松 新一
【審査官】 菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2006/0027347(US,A1)
【文献】 米国特許第04649981(US,A)
【文献】 特開2009−012584(JP,A)
【文献】 米国特許第03797553(US,A)
【文献】 米国特許第04220189(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に形成された開口部における光を遮蔽及び開放する遮光シートと、該遮光シートの幅方向の両縁部を摺動可能に支持する一対のガイドレールとを備え、該ガイドレールに沿って前記遮光シートが一方向に移動しつつ巻き取られることで光を開放するとともに逆方向に移動しつつ巻き出されることで光を遮蔽するサンシェード装置において、
前記遮光シートは、その巻き出しに伴い光を遮蔽するように広がるシート表皮、及び該シート表皮の幅方向の両縁部にそれぞれ結合される一対の案内帯を備え、
前記両ガイドレールには、それらの延設方向に沿って延在するとともに、前記遮光シートの幅方向の縁部が摺動可能な内部に進入するように曲成され、前記シート表皮及び前記案内帯の間に挟み込ませて該案内帯を摺動案内する、前記ガイドレールよりも剛性の小さい一対のガイド部が配設され
前記遮光シートの巻き出し時の先頭側となる端部に結合され、両端部が前記両ガイドレールにそれぞれ摺動可能に支持されるフレームを備え、
前記フレームは、当該フレームの端部に立設された縦壁部を有し、
前記案内帯は、前記縦壁部に結合された結合部を有し、
前記結合部は、前記遮光シートの巻き出しに伴い、前記遮光シートの巻き取り方向における前記ガイド部の先端から前記フレームの前記縦壁部が前記ガイドレールを移動することにより、前記案内帯を、前記シート表皮との間に前記ガイド部を挟み込むように案内することを特徴とするサンシェード装置。
【請求項2】
請求項に記載のサンシェード装置において、
前記シート表皮及び前記案内帯の少なくとも一方の幅方向の縁部は、前記ガイドレールの摺動時に前記遮光シートの移動方向に対して起立する起曲部を形成することを特徴とするサンシェード装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のサンシェード装置において、
前記ガイド部は、前記シート表皮に重ねられることなく前記案内帯に重ねられて該案内帯を摺動案内することを特徴とするサンシェード装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に形成された開口部における光を遮光シートで遮蔽及び開放するサンシェード装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のサンシェード装置としては、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。図9に示すように、このサンシェード装置は、遮光シート91と、該遮光シート91を巻き取り及び巻き出すための巻取管92とを備える。そして、遮光シート91は、その略全体に亘って広がるシート表皮93と、該シート表皮93の幅方向両縁部にそれぞれ略全長に亘って連結された可撓性を有する偏平な一対の案内帯94とを備える。遮光シート91は、両案内帯94において一対のガイドレール95に摺動可能に装着されている。
【0003】
このような構成において、遮光シート91は、シート表皮93の幅方向両縁部と共に両案内帯94を両ガイドレール95に摺動させつつ、巻取管92から巻き出されることで開口部における光を遮蔽し、反対に巻取管92に巻き取られることで開口部における光を開放する。各案内帯94は、特に遮光シート91が開口部における光を開放する巻き出し状態において、シート表皮93の幅方向両縁部が捲れることを防止するためのものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008−520859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、案内帯94には、図10に示すように、シート表皮93の幅方向の縁部と共にガイドレール95からの抜け外れを防止し得る十分な板厚が確保されている。すなわち、ガイドレール95の内部にシート表皮93が進入する側である開口端側の開口幅をA90で表し、案内帯94の板厚をT90で表すと、開口幅A90よりも案内帯94の板厚T90の方が大きく(T90>A90)設定されている。このため、仮に遮光シート91を弛みなく巻き取れたとしても、幅方向の縁部(案内帯94)において巻き取り状態での外径が大きくなる。
【0006】
特に、案内帯94には、ガイドレール95からの抜け外れを防止し得る十分な剛性が必要となる。このため、遮光シート91(案内帯94)の巻き取り時の弾性変形が困難になる分、遮光シート91を弛みなく巻き取ることが困難になる。そして、図11に誇張して示すように、巻き取り状態での遮光シート91の外径D91は、2点鎖線にて併せて描画したように仮に遮光シート91を弛みなく巻き取った状態での外径D92よりも大きくなる。従って、遮光シート91の収納スペースには、これら外径D91,D92の差分に応じた無駄を生じる。
【0007】
また、案内帯94の剛性が大きい分、遮光シート91の巻き取り時の負荷が増加してしまう。あるいは、案内帯94の剛性が大きいため、案内帯94に対し、シート表皮93の幅方向の縁部と共にガイドレール95からの抜け外れ方向の負荷が掛かった場合、該ガイドレール95との接触が点接触又は線接触となる可能性が高くなる。この場合、摺動時の摩擦力が一部に集中してしまい、遮光シート91が作動不良を生じる可能性が高くなる。
【0008】
本発明の目的は、遮光シートの作動性能を損ねることなく、該遮光シートの巻き取り状態での収納スペースを削減することができるサンシェード装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両に形成された開口部における光を遮蔽及び開放する遮光シートと、該遮光シートの幅方向の両縁部を摺動可能に支持する一対のガイドレールとを備え、該ガイドレールに沿って前記遮光シートが一方向に移動しつつ巻き取られることで光を開放するとともに逆方向に移動しつつ巻き出されることで光を遮蔽するサンシェード装置において、前記遮光シートは、その巻き出しに伴い光を遮蔽するように広がるシート表皮、及び該シート表皮の幅方向の両縁部にそれぞれ結合される一対の案内帯を備え、前記両ガイドレールには、それらの延設方向に沿って延在するとともに、前記遮光シートの幅方向の縁部が摺動可能な内部に進入するように曲成され、前記シート表皮及び前記案内帯の間に挟み込ませて該案内帯を摺動案内する、前記ガイドレールよりも剛性の小さい一対のガイド部が配設され、前記遮光シートの巻き出し時の先頭側となる端部に結合され、両端部が前記両ガイドレールにそれぞれ摺動可能に支持されるフレームを備え、前記フレームは、当該フレームの端部に立設された縦壁部を有し、前記案内帯は、前記縦壁部に結合された結合部を有し、前記結合部は、前記遮光シートの巻き出しに伴い、前記遮光シートの巻き取り方向における前記ガイド部の先端から前記フレームの前記縦壁部が前記ガイドレールを移動することにより、前記案内帯を、前記シート表皮との間に前記ガイド部を挟み込むように案内することを要旨とする。
【0010】
同構成によれば、前記遮光シートの幅方向の縁部は、前記ガイドレールの内部で前記シート表皮及び前記案内帯の間に前記ガイド部を挟み込んだ状態で、前記案内帯おいて前記ガイド部により摺動案内される。そして、例えば前記遮光シートに対し前記ガイドレールからの抜け外れ方向の負荷が掛かった場合、低剛性の前記ガイド部及び前記案内帯を共に弾性変形させつつ当該負荷を緩衝することで、前記ガイドレールからの抜け外れを抑制することができる。従って、前記案内帯に要する剛性を低減することができ、例えば前記遮光シート(案内帯)の巻き取り時の弾性変形をより容易にすることができる。そして、前記遮光シート(案内帯)の巻き取り時の弾性変形が容易になる分、巻き取り時の負荷が軽減されて該遮光シートの弛みを抑制することができ、ひいては巻き取り状態での前記遮光シートの外径を低減することができる。このため、前記遮光シートの収納スペースに生じる無駄を低減することができる。加えて、前記遮光シートの幅方向の縁部(案内帯)は、前記ガイドレールからの抜け外れ防止を目的にそれ自体の板厚を確保する必要もないことから、巻き取り状態での前記遮光シートの外径をいっそう低減することができる。さらに、前記遮光シートの作動時(巻き取り又は巻き出し時)、該遮光シートに対し前記ガイドレールからの抜け外れ方向の負荷が掛かったとしても、低剛性の前記ガイド部及び前記案内帯を共に弾性変形させることで、これらガイド部及び案内帯の接触を面接触に維持することができ、摺動時の摩擦力が一部に集中して前記遮光シートが作動不良を生じる可能性を低減することができる。ここで、「遮光シート」(「シート表皮」)とは、光を10
0%遮るものだけではなく、光の透過率を変化させるものも含むものとする。
【0012】
同構成によれば、前記案内帯は、前記遮光シートの巻き出しに伴い前記フレームの端部と共に前記結合部が前記ガイド部の前記先端から前記ガイドレールを移動することで、前記シート表皮との間で前記ガイド部を挟み込むように案内される。従って、仮に前記ガイドレールからの抜け外れ方向の負荷によって該ガイドレールから前記遮光シートの幅方向の縁部(案内帯)が抜け外れたとしても、前記フレームの端部等が前記ガイド部の前記先端を抜けるまで前記遮光シートを巻き取り、前記フレームの端部等が再び前記ガイド部の前記先端に達するまで前記遮光シートを巻き出せば、前記シート表皮及び前記案内帯の間に前記ガイド部を挟み込む当初の状態に復帰できる。
【0013】
請求項に記載の発明は、請求項に記載のサンシェード装置において、前記シート表皮及び前記案内帯の少なくとも一方の幅方向の縁部は、前記ガイドレールの摺動時に前記遮光シートの移動方向に対して起立する起曲部を形成することを要旨とする。
【0014】
同構成によれば、前記シート表皮及び前記案内帯の少なくとも一方の幅方向の縁部は、前記ガイドレールの摺動時に前記遮光シートの移動方向に対して前記起曲部が起立することで、前記遮光シートの幅方向の縁部の前記移動方向における曲げ剛性を増加することができる。これにより、例えば前記遮光シートの巻き取り時にその操作入力を前記遮光シート全体に円滑に伝達することができる。そして、前記遮光シートの一部に巻き取り遅れが生じることを抑制でき、作動初期に生じる皺を抑制して見栄えを向上させることができる。
【0015】
請求項に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のサンシェード装置において、前記ガイド部は、前記シート表皮に重ねられることなく前記案内帯に重ねられて該案内帯を摺動案内することを要旨とする。
【0016】
同構成によれば、前記遮光シートの幅方向の縁部を摺動可能に前記ガイドレールに組み付ける際、前記案内帯のみを前記ガイド部に重ねればよいため、組付性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、遮光シートの作動性能を損ねることなく、該遮光シートの巻き取り状態での収納スペースを削減することができるサンシェード装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】車両のルーフを示す斜視図。
図2】遮蔽時のサンシェード装置を示す斜視図。
図3図2のA−A断面図。
図4】開放時のサンシェード装置を示す斜視図。
図5図2のB−B断面図。
図6】(a)〜(c)は、動作を示す説明図。
図7】変形形態を示す斜視図。
図8】(a)〜(c)は、シート表皮及び案内帯の結合態様を示す説明図。
図9】従来形態を示す斜視図。
図10】従来形態を示す斜視図。
図11】従来形態の課題を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1図6を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1に示すように、車両のルーフ1には、略四角形のルーフ開口部2が形成されている。ルーフ開口部2には、日光等を透過するルーフパネル3が設置されている。ルーフパネル3よりも車室内側となるルーフ開口部2に対応する部分には、図2及び図3に示すサンシェード装置10が設けられている。このサンシェード装置10は、ルーフパネル3から透過する日光等の光を遮蔽及び開放するためのものである。なお、ルーフパネル3が可動パネルに相当する。
【0020】
詳述すると、サンシェード装置10には、ルーフ開口部2の車両幅方向の両側縁部において、車両前後方向に延出する一対のガイドレール11が設けられるとともに、両ガイドレール11に沿って車両の前後方向に移動可能な遮光シート13が設けられている。サンシェード装置10は、ルーフ開口部2の車両後方端部において車両幅方向に延びる軸線O1周りに遮光シート13を巻き取りつつ両ガイドレール11に沿って遮光シート13を車両後方に移動させることで、ルーフパネル3から透過する光を開放する。あるいは、サンシェード装置10は、軸線O1周りに遮光シート13を巻き出しつつ両ガイドレール11に沿って遮光シート13を車両前方に移動させることで、ルーフパネル3から透過する光を遮蔽する。
【0021】
遮光シート13の車両前方端部(巻き出し時の先頭側となる端部)には、両ガイドレール11の間に懸架される略直方体状のフレーム14が設けられている。このフレーム14の車両幅方向における両端部は、遮光シート13の移動時にガイドレール11に形成された横断面が略コ字状の誘導部15に誘導される。
【0022】
なお、ルーフ1には、ルーフパネル3を車両前後方向へ移動させることで、ルーフ開口部2を開閉するルーフ装置20が設けられている。ルーフ装置20は、サンシェード装置10のガイドレール11の上部にルーフパネル3を車両前後方向へ駆動する駆動部21が設置されている。ルーフ装置20の駆動部21の詳細は割愛する。なお、ルーフ装置20が駆動装置に相当する。
【0023】
サンシェード装置10には、ガイドレール11の内部及びルーフ装置20の駆動部21を遮蔽する装飾部材30が設けられている。ガイドレール11(誘導部15)の上部の車両幅方向内側には、横断面が略コ字状の取付凹部18が形成されている。装飾部材30には、取付凹部18に嵌着されるとともに、車両幅方向に突出する取付部33が形成されている。取付部33の上面には、取付凹部18からの脱落を防止する2列の抜止凸部33a,33bが形成されている。抜止凸部33a,33bは、取付部33が取付凹部18に嵌着されると、取付凹部18の内壁上面に当接して車両幅方向内側へ傾倒して、装飾部材30が取付凹部18から引き抜く方向に引かれると、取付凹部18の内壁上面に当接して抜け止めとして機能する。
【0024】
装飾部材30の取付部33の上部には、ガイドレール11に沿って延出するとともに、ルーフパネル3の直前まで突出して、ルーフ装置20の駆動部21を遮蔽する装飾部31が一体に形成されている。装飾部材30の装飾部31は、ガイドレール11の上部に位置する機構を車室内から遮蔽している。
【0025】
また、装飾部材30の取付部33の下部には、ガイドレール11に沿って延出するとともに、ガイドレール11の内部まで突出するガイド部32が一体に形成されている。装飾部材30のガイド部32は、装飾部31と反対側の下方へ延出して形成されるが、ガイドレール11の内部に進入するように横断面が略弓形に曲成されている。なお、ガイド部32の剛性は、ガイドレール11の剛性よりも小さく設定されている。
【0026】
ガイドレール11の誘導部15には、遮光シート13の幅方向の縁部13aが摺動可能に支持されている。すなわち、遮光シート13は、その巻き出しに伴いルーフパネル3から透過する光を遮蔽するように広がる略四角形の布材からなるシート表皮41と、該シート表皮41の幅方向の各縁部41aに略全長に亘って結合される略帯状の布材からなる案内帯42とを備える。
【0027】
シート表皮41は、その幅方向の縁部41aにおいて誘導部15の底壁上面に支持されている。案内帯42は、車両幅方向外側の縁部42aにおいてシート表皮41の上面に重ね合わされこれに結合されており、自由状態となる車両幅方向内側の部位は摺動部42bを形成する。遮光シート13の幅方向の縁部13aは、誘導部15(ガイドレール11)の内部でシート表皮41及び案内帯42の間にガイド部32を挟み込んだ状態で、シート表皮41の幅方向の縁部41aを誘導部15の底壁上に摺動させつつ、案内帯42(摺動部42b)おいてガイド部32により摺動案内される。なお、ガイド部32は、その下端がシート表皮41の上面に非接触の状態で案内帯42を摺動案内している。
【0028】
図4に示すように、遮光シート13の巻き取り状態では、案内帯42は、摺動部42bを含む全体がシート表皮41の上面に重ね合わされて、該シート表皮41と一体で巻き取られている。つまり、遮光シート13の縁部13aは、シート表皮41及び案内帯42を合わせた板厚で巻き取られている。
【0029】
一方、前記フレーム14は、その下面が略全長に亘ってシート表皮41の車両前方端部(巻き出し時の先頭側となる端部)に接合されるととともに、幅方向の端部に立設された上向きの縦壁部14aの車両幅方向外側面が案内帯42の摺動部42bに接合されている。図5に併せ示すように、フレーム14の縦壁部14aは、誘導部15(ガイドレール11)の内部でガイド部32よりも車両幅方向外側寄りに配置されており、従って摺動部42bも、少なくとも縦壁部14aとの結合部としての接合部42cにおいて、誘導部15(ガイドレール11)の内部でガイド部32よりも車両幅方向外側寄りに配置されている。つまり、ガイド部32の下端は、縦壁部14aよりも車両幅方向内側でこれに当接又は近接している。
【0030】
これにより、案内帯42(摺動部42b)は、遮光シート13の巻き出しに伴い、フレーム14の端部(縦壁部14a)がガイドレール11を車両前方に移動する際、先行する接合部42cに誘導されることで、ガイド部32よりも車両幅方向外側寄りに配置され、シート表皮41との間でガイド部32を挟み込むようにこれに摺接する。特に、案内帯42(摺動部42b)は、図4に示すように、ガイド部32の後端(遮光シート13の巻き取り方向における先端)からフレーム14の端部(縦壁部14a)がガイドレール11を車両前方に移動する際、接合部42cの後方でシート表皮41に重ね合わされていた状態から徐々に立ち上がるように変形する。そして、案内帯42(摺動部42b)は、ガイド部32よりも車両幅方向外側寄りに配置される。換言すれば、案内帯42(摺動部42b)は、ガイド部32における姿勢に関わらず、該ガイド部32を抜けることで全体がシート表皮41の上面に重ね合わさることが可能である。
【0031】
次に、本実施形態の動作について説明する。
遮光シート13の作動・非作動に関わらず、車両振動や人による入力などで該遮光シート13に対してガイドレール11からの抜け外れ方向の負荷が掛かったとする。この場合、図6(a)(b)に示すように、ガイド部32に代えてガイドレール11から高剛性の略フランジ状のガイド部Gが突設されている場合には、基本的に案内帯42(摺動部42b)のみが弾性変形するようになる。このため、案内帯42が縁部42a及び摺動部42bの境界部を中心に折り重なるように弾性変形し誘導部15(ガイドレール11)から容易に抜け外れてしまう。従って、このような抜け外れを抑制するためには、案内帯42の剛性を増加する必要があり、遮光シート13(案内帯42)の巻き取り時の弾性変形が困難になってしまう。
【0032】
一方、図6(c)に示すように、低剛性のガイド部32の場合には、該ガイド部32及び案内帯42が共に弾性変形しつつ当該負荷を緩衝することで、誘導部15(ガイドレール11)からの抜け外れが抑制される。従って、案内帯42に要する剛性を低減することができ、遮光シート13(案内帯42)の巻き取り時の弾性変形をより容易にすることができる。特に、このときのガイド部32の変形方向は、その下端が下向きに移動する方向、即ち遮光シート13の抜け代が減少する方向に一致するため、誘導部15(ガイドレール11)からの抜け外れがいっそう抑制される。
【0033】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、案内帯42に要する剛性を低減することができ、例えば遮光シート13(案内帯42)の巻き取り時の弾性変形をより容易にすることができる。そして、遮光シート13(案内帯42)の巻き取り時の弾性変形が容易になる分、巻き取り時の負荷が軽減されて該遮光シート13の弛みを抑制することができ、ひいては巻き取り状態での遮光シート13の外径を低減することができる。このため、遮光シート13の収納スペースに生じる無駄を低減することができる。
【0034】
加えて、遮光シート13の幅方向の縁部13a(案内帯42)は、ガイドレール11からの抜け外れ防止を目的にそれ自体の板厚を確保する必要もないことから、巻き取り状態での遮光シート13の外径をいっそう低減することができる。
【0035】
以上により、サンシェード装置10に要する車室内スペースを最小限に抑えることができる。
さらに、遮光シート13の作動時(巻き取り又は巻き出し時)、該遮光シート13に対しガイドレール11からの抜け外れ方向の負荷が掛かったとしても、低剛性のガイド部32及び案内帯42を共に弾性変形させることで、これらガイド部32及び案内帯42の接触を面接触に維持することができる。このため、案内帯42の摺動時の摩擦力が一部に集中して遮光シート13が作動不良を生じる可能性を低減することができる。
【0036】
(2)本実施形態では、案内帯42は、遮光シート13の巻き出しに伴いフレーム14の端部(縦壁部14a)と共に接合部42cがガイド部32の後端からガイドレール11を移動することで、シート表皮41との間でガイド部32を挟み込むように案内される。従って、仮にガイドレール11からの抜け外れ方向の負荷によって該ガイドレール11から遮光シート13の幅方向の縁部13a(案内帯42)が抜け外れたとする。この場合、フレーム14の端部等がガイド部32の後端を抜けるまで遮光シート13を巻き取り、フレーム14の端部等が再びガイド部32の後端に達するまで遮光シート13を巻き出せば、シート表皮41及び案内帯42の間にガイド部32を挟み込む当初の状態(正常な保持状態)に復帰できる。
【0037】
特に、ルーフパネル3から透過する光が全開となる遮光シート13を巻き取り状態で、フレーム14の端部等がガイド部32の後端を必ず抜ける設定にしておけば、ガイド部32を意識しなくとも、遮光シート13を一旦巻き取った後に巻き出すことで、正常な保持状態に復帰できる。
【0038】
このように、正常な保持状態への復帰に際し、ガイドレール11やシート表皮41、案内帯42に無理な力が加わることを回避できる。
(3)本実施形態では、ガイド部32は、シート表皮41に重ねられることなく案内帯42に重ねられて該案内帯42を摺動案内する。従って、遮光シート13の幅方向の縁部13aを摺動可能にガイドレール11に組み付ける際、案内帯42のみをガイド部32に重ねればよいため、組付性を向上させることができる。
【0039】
(4)本実施形態では、シート表皮41及び案内帯42は、共に布材からなることで、これらシート表皮41及び案内帯42の熱膨張・収縮の性質が互いに略同等になり、環境条件(例えば熱、湿度等)などの影響でシート表皮41に皺が生じることを抑制できる。
【0040】
また、布材の案内帯42は、シート表皮41と張力が近似しているため縫製又は接着などによる接合が容易で生産性がよい。
(5)本実施形態では、装飾部材30のガイド部32がガイドレール11に沿って延出してガイドレール11(誘導部15)の内部を車室内から遮蔽する。このため、遮光シート13が巻き取られてガイドレール11に遮光シート13が略存在しない状態となっても、ガイドレール11の内部が見えず、車室内側からの見栄えを良くすることが可能となる。
【0041】
(6)本実施形態では、装飾部材30の装飾部31がルーフパネル3を駆動するルーフ装置20の駆動部21を遮蔽する。このため、ルーフパネル3が開放されてルーフ装置20の駆動部21にルーフパネル3が存在しない状態となっても、ルーフ装置20の駆動部21等が見えず、車室内側からの見栄えを良くすることができる。
【0042】
(7)本実施形態では、遮光シート13(案内帯42)の巻き取り時の弾性変形が容易であるため、遮光シート50に生じる皺を抑制して見栄えを向上させることができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
【0043】
図7に示すように、ガイドレール11(誘導部15)の摺動時に幅方向の縁部に起曲部50aを形成する遮光シート50であってもよい。すなわち、起曲部50aは、遮光シート50を構成する布材からなるシート表皮51及び案内帯52が接合されるそれらの幅方向の縁部51a,52aの協働で形成されており、シート表皮51の広がる面(遮光シート50の移動方向)に対して起立している。そして、シート表皮51は、縁部51aの車両の幅方向内側に隣接する内側縁部51bにおいて誘導部15の底壁上面に支持されている。また、案内帯52は、自由状態となる車両幅方向内側の部位で摺動部52bを形成する。
【0044】
この場合、案内帯52の摺動部52bを摺動案内するガイド部56は、起曲部50aと略平行に下向きに延びる第1延出部56aと、該第1延出部56aの下端に連続して起曲部50aに向かって車両の幅方向外側に延びる第2延出部56bとを一体的に有する。ガイド部56の剛性が、ガイドレール11の剛性よりも小さく設定されていることはいうまでもない。そして、遮光シート50の幅方向の縁部は、誘導部15(ガイドレール11)の内部でシート表皮51の内側縁部51b及び案内帯42の摺動部42bの間にガイド部56の第2延出部56bを挟み込んだ状態となる。そして、遮光シート50の幅方向の縁部は、この状態で、シート表皮51の縁部51a及び内側縁部51bを誘導部15に摺動させつつ、案内帯42(摺動部42b)おいてガイド部32により摺動案内される。なお、ガイド部56(第2延出部56b)は、その下面がシート表皮51(内側縁部51b)の上面に非接触の状態で案内帯52を摺動案内している。ただし、ガイド部56(第2延出部56b)の下面は、シート表皮51(内側縁部51b)の上面に接触していてもよい。
【0045】
このように、遮光シート50がガイドレール11(誘導部15)を摺動する際に幅方向の縁部に起曲部50aを形成することで、前記実施形態の(1)(3)〜(7)と同様の効果に加えて、遮光シート50の移動方向におけるその幅方向の縁部の曲げ剛性を増加することができる。これにより、例えば遮光シート50の巻き取り時にその操作入力を遮光シート50全体に円滑に伝達することができる。そして、遮光シート50の一部に巻き取り遅れが生じることを抑制でき、作動初期に生じる皺を抑制して見栄えを向上させることができる。
【0046】
また、遮光シート50の作動・非作動に関わらず、車両振動や人による入力などで該遮光シート50に対してガイドレール11からの抜け外れ方向の負荷が掛かったとする。この場合、ガイド部56及び案内帯52が共に弾性変形しつつ当該負荷を緩衝する際に、ガイド部56がシート表皮51(内側縁部51b)の上面に近付いていくことで、誘導部15(ガイドレール11)からの抜け外れをいっそう抑制することができる。
【0047】
なお、遮光シート50の巻き取り状態では、起曲部50a(縁部51a,52a)が倒れた状態で、摺動部52bを含む案内帯52全体がシート表皮51の上面に重ね合わされて、該シート表皮51と一体で巻き取られる。つまり、この場合であっても、遮光シート50の縁部は、シート表皮51及び案内帯52を合わせた板厚で巻き取られる。
【0048】
遮光シート50の起曲部50aは、シート表皮51及び案内帯52のいずれか一方のみで形成するようにしてもよい。
・シート表皮41,51及び案内帯42,52の結合においては、図8(a)に示すように、糸61による一本線での縫合を採用してもよい。あるいは、図8(b)に示すように、糸61によるクロスでの縫合(いわゆる十字縫い)を採用してもよい。この場合、クロスの形態等を調整することで、特に遮光シート13,50の長手方向(遮光シート50の移動方向)における剛性を調整することができる。
【0049】
あるいは、図8(c)に示すように、接着剤62による接合を採用してもよい。この場合、仮にシート表皮41,51が表裏生地の積層構造を有するのであれば、当該表裏生地の積層加工時に同時に案内帯42,52を接合することができる。
【0050】
・前記実施形態において、ガイド部32の後端からガイドレール11を移動することでシート表皮41との間でガイド部32を挟み込むように案内帯42を案内するフレーム14の端部(縦壁部14a)との接合部42cはなくてもよい。この場合、遮光シート13は、シート表皮41のみでフレーム14に結合されていてもよい。
【0051】
・前記実施形態において、ガイド部32の下端は、シート表皮41の上面に接触していてもよい。例えばガイド部32は、シート表皮41の上面に重なっていてもよい。同様に、ガイド部56(第2延出部56b)の下面は、シート表皮51(内側縁部51b)の上面に接触して、該シート表皮41の上面に重なっていてもよい。
【0052】
・前記実施形態において、シート表皮41,51及び案内帯42,52の材質は、互いに異なっていてもよい。例えば案内帯42,52は、金属製の薄板であってもよい。この場合、ガイドレールは、摺動異音を避けるため樹脂製であることがより好ましい。また、案内帯42,52は、樹脂製の薄板であってもよい。
【0053】
・前記実施形態においては、ガイドレール11と別設のガイド部32(装飾部材30)をガイドレール11(取付凹部18)に固定するようにした。これに対して、例えばアウトサート成形などでガイドレール11にガイド部を一体形成してもよい。あるいは、樹脂製のガイドレールを採用した場合には、2色成形などでガイドレールにガイド部を一体形成してもよい。また、ガイドレール及びガイド部を同一材料で成形する場合には、該ガイド部の板厚調整などでその剛性がガイドレールの剛性よりも小さくなるようにすればよい。これらの場合、ガイドレール11の取付凹部18及びその周辺構造(取付部33等)を割愛することができる。
【0054】
・前記実施形態において、ガイド部32,56は、低剛性であれば、摺動抵抗の低い材料で成形されていてもよい。また、ガイド部32,56は、案内帯42,52に摺接する表面のみが摺動抵抗の低い材料で成形(即ち2色成形)されていてもよい。
【0055】
・前記実施形態では、装飾部材30にルーフ装置20の駆動部21を遮蔽する装飾部31を設けたが、該装飾部31を省略した構成を採用してもよい。特に、固定式のルーフパネル3であれば、駆動部21が存在しないことから装飾部31を設けなくても見栄えが悪化することはない。
【0056】
・前記実施形態において、フレーム14は、両ガイドレール11間に橋渡しされるように車両の幅方向に延在するフレーム本体と、該フレーム本体の端部に連結されてガイドレール11を摺動する一対の摺動部材で構成されていてもよい。この場合、案内帯42の接合部42cは、フレーム本体及び摺動部材のいずれに接合されていてもよい。
【0057】
・前記実施形態において、フレーム14の形状を略直方体状以外の形状としてもよい。例えば遮光シート13,50を手動操作する際の操作部(ハンドル等)を設けてもよい。
・前記実施形態において、遮光シート13の作動は、適宜のアクチュエータにより電動で行ってもよい。
【0058】
・前記実施形態では、サンシェード装置10は、ルーフ開口部2に対応する部分を遮光するものとして適用したが、ルーフ開口部2に対応する部分以外の部分(例えば、窓ガラス)を遮光するものとして適用してもよい。
【0059】
・前記実施形態において、「遮光シート」(「シート表皮」)とは、光を10
0%遮るものだけではなく、光の透過率を変化させるものも含むものとする。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
【0060】
(イ)前記サンシェード装置において、前記シート表皮及び前記案内帯は、共に布材からなることを特徴とするサンシェード装置。同構成によれば、前記シート表皮及び前記案内帯は、共に布材からなることで、これらシート表皮及び案内帯の熱膨張・収縮の性質が互いに略同等になり、環境条件などの影響で前記シート表皮に皺が生じることを抑制できる。
【符号の説明】
【0061】
1…ルーフ、2…ルーフ開口部(開口部)、3…ルーフパネル、10…サンシェード装置、11…ガイドレール、13,50…遮光シート、13a…縁部、14…フレーム、15…誘導部、32,56…ガイド部、41,51…シート表皮、41a,51a…縁部、42,52…案内帯、42a,52a…縁部、42b,52b…摺動部、42c…接合部、50a…起曲部。
図1
図2
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