(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6035854
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】生分解性樹脂複合材組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/16 20060101AFI20161121BHJP
C08L 97/00 20060101ALI20161121BHJP
C08K 5/057 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
C08L101/16ZBP
C08L97/00
C08K5/057
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-107985(P2012-107985)
(22)【出願日】2012年4月19日
(65)【公開番号】特開2013-224394(P2013-224394A)
(43)【公開日】2013年10月31日
【審査請求日】2014年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】512120281
【氏名又は名称】日本ペパロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113402
【弁理士】
【氏名又は名称】前 直美
(74)【代理人】
【識別番号】100135873
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 圭子
(72)【発明者】
【氏名】押田 豊
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕之
【審査官】
内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−045866(JP,A)
【文献】
特開昭58−091744(JP,A)
【文献】
特開平05−117447(JP,A)
【文献】
特開昭55−050079(JP,A)
【文献】
特開平11−322394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 101/16
C08L 97/00 −97/02
C08K 5/057
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性樹脂に古紙が配合された樹脂複合材において
、粒径が3〜
0.5mm
の古紙が30〜60重量%と
一般式
(ここで、Rは炭素数12〜22のアルキル基またはアルケニル基、mは0または1〜10の整数を示す。)
で表される
有機チタネートが0.1〜5重量%配合され
ており、無機充填剤を含有しないことを特徴とする、生分解性樹脂複合材組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性樹脂に古紙を配合した複合材組成物に関し、特に大量の古紙が配合された生分解性樹脂複合材の加工性、古紙の分散性が著しく改良された組成物を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
近年環境保全の観点から生分解性樹脂の開発が積極的に行なわれているが、生分解性樹脂は一般にそれ自体の機械的強度、耐熱性、成形加工性が悪く、物性の向上と経済性の改善は極めて重要である。
物性改良と経済性向上のために、植物繊維や、タルク、マイカ、炭酸カルシウム等の無機フィラーの充填材料を生分解性樹脂に配合した生分解性樹脂複合材組成物の開発が鋭意行なわれて来ている。
【0003】
生分解性樹脂に、古紙等のセルロース繊維を配合して、生分解性樹脂の耐衝撃性、剛性等の機械強度や耐熱性、寸法安定性等の物理特性を補強し、併せて生分解性の向上と経済性効果を向上させる複合材の検討も行なわれている。
しかし、生分解性樹脂にリグニンやデンプンを含有しない古紙を配合材として添加すると、複合材組成物の流動性が低下し、成形加工性を著しく低下させるとともに、複合材組成物を脆くし、表面外観の均一性、平滑性を損なう問題が生じている。
【0004】
特に大量の古紙が配合された場合、古紙表面の特性の影響が大きく、極性の大きい古紙表面をマトリックスとなる生分解性樹脂に如何に親和性を保たせるかが重要であり、複合材組成物の機械強度にはマトリックスと古紙表面の接着力の寄与が大きく、古紙表面とマトリックスを接合する様なカップリング剤の使用が好ましい場合もある。
更に、多量に古紙を配合した成形品は脆くなる傾向が有る。また、ともすれば成型品の外周に古紙が集中し易く、精密加工が困難になったり、成形品の表面に古紙の粒子が現れて成形品の表面状態もしくは外観を著しく損なったり、光沢が損なわれたりする。
【0005】
生分解性樹脂複合材組成物の上記問題を解決するために、架橋材や滑材等の添加剤の併用が必要とされており、従来このような目的のために、イソシアネート系樹脂や有機パーオキサイド等の架橋剤やシラン、チタネート、アルミネート等のカップリング剤の検討も試みられて来ている。
特許文献1には生分解性樹脂と植物繊維にシランカップリング剤を配合する複合剤が試みられている。特許文献2にはポリ乳酸と天然繊維にシランカップリング剤を配合する技術が、特許文献3には熱可塑性樹脂と澱粉質系材料にチタネート、シラン、アルミネート系のカップリング剤を配合する材料の開発が試みられて来ている。
しかしながらこれらの従来一般に使用されるカップリング剤は、チタン、シリコン、アルミ等の金属原子上に有機官能基とアルコキシ基のような加水分解基を有しており、有機官能基がマトリックスと相溶化し、加水分解基が加水分解して添加剤表面と化学結合して複合剤組成物をカップリングさせるものであるが、加水分解基は反応速度の関係から炭素数が1〜3のものが利用されており、反応物のアルコール等を除去するための加熱処理を要するなど、加工性に改良の余地がまだ有るのが現状である。
【特許文献1】 特開2008−208194号
【特許文献2】 特開2008−150599号
【特許文献3】 特開2004−002613号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、古紙が配合された生分解性樹脂複合材組成物、特に大量の古紙粉が配合された生分解性樹脂複合材組成物にみられる上記のような種々の欠点を解消することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、生分解性樹脂に古紙が配合された樹脂複合材において
、粒径が3〜
0.01mm
の古紙が30〜60重量%と
一般式
(ここで、Rは炭素数12〜22のアルキル基またはアルケニル基、mは0または1〜10の整数を示す。)
で表される
有機チタネートが0.1〜5重量%配合された生分解性樹脂複合材組成物が、上記の欠点を解消することが可能であることを発見し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち本発明は、生分解性樹脂
に粒径が3〜
0.01mm
の古紙を30〜60重量%、更
に特殊な有機チタネート
を0.1〜5重量%配合したことを特徴とする生分解性樹脂複合剤組成物に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐衝撃性、剛性等の機械強度や耐熱性、寸法安定性等の物理特性を補強し、強靭で成形加工性に富み、表面性状の良い品質の優れた生分解性樹脂複合剤組成物を提供出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明でいう生分解性樹脂とは、特に制限は無く、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリブチレンサクシネート、ポリビニルアルコール等が適用される。特にポリ乳酸が好適に適用できる。
【0011】
本発明において、生分解性樹脂へ古紙が配合される。本発明の古紙は製紙原料として回収された紙及び紙製品を粗粉砕し、必要に応じて乾燥し、及び/又は金属等の夾雑物を選別し、粒径が3〜
0.01mmに精密粉砕した紙粉が30〜60重量%配合される。
粒径が3mmを超える紙粉では成形品の表面平滑性や外観に不良を生じ易く、
0.01mmより微細化すると凝集して分散性が悪くなる傾向がある。
古紙の配合量が60重量%を超えると成形性が悪くなり、カップリング剤の配合量を増す必要が生じ、機械的強度が低下する傾向がある。30重量%より低い配合量では生分解性や経済性の向上効果が阻害され
るため好ましくない。
【0012】
本発明の組成物において、流動性を改良し、成形加工性、作業性を向上させ、更に古紙の分散性を向上させる効果のある前記一般式で示された有機チタネートとは、
Rの炭素数が12〜22のアルキル基またはアルケニル基であり、例えばテトララウリルチタネート、テトラミリスチルチタネート、テトラセチルチタネート、テトラステアリルチタネート、テトラベヘニルチタネート、テトラオレイルチタネート、テトラリノレルチタネート等が挙げられるが、テトラステアリルチタネートが好適に用いられる。
一般式のmが1〜10の縮合物であってもさしつかえない。
これらの前記一般式で表される有機チタネートの配合量としては、0.1〜10重量%の範囲で適宜用いられるが、特に1〜5重量%が好ましい。
0.1重量%より少ない場合は、配合した所期の目的が達成されず、一方10重量%を超えて配合しても特別な効果も発揮されず、経済的な制約から自ずと決められる。
【0013】
本発明の組成物を製造するには、上記の古紙と有機チタネートを生分解性樹脂に配合するに当り、古紙と有機チタネートとを混合した後、生分解性樹脂に配合するのが好ましいが、それ以外に古紙と有機チタネートと生分解性樹脂の3種を同時に混合してもさしつかえない。
混合は従来の混合方式が適用され、ドライブレンドした後、一軸又は二軸の押出機で混練成形(ペレット化)して所望の押出成形機または射出成形機に供するか、または直接押出成形、または射出成形機で混練成形することができる。
【0014】
本発明の複合材組成物を使用して射出成形や押出成形し、各種の成形製品を製造するにあたって、成形性を向上させるために一般に使用されるイソシアネート系樹脂や有機パーオキサイド等の架橋剤や、脂肪酸、脂肪酸アマイド、脂肪酸金属塩、高級アルコール等の滑剤を本発明の複合材組成物に添加することができる。
【0015】
次に実施例によって更に詳細に説明する。尚、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0016】
実施例1
新
聞古紙を
(株)御池鐵工所製のロータリーカッターMRC−3050で5〜10mmに粗粉砕し、ターボミルMTM−600で平均粒径1mm±0.5mmに微粉砕した古紙粉の100部に対して、三菱ガス化学(株)製テトラステアリルチタネート5部をヘンシェルミキサー(日本コークス工業製FM−150)で混合した配合物55重量%と、ポリ乳酸(ユニチカ製「テラマックPL−01」)ペレットをターボミルで平均粒径1mm±0.5mmに微粉砕して得たポリ乳酸粉45重量%とをヘンシェルミキサーで混合した。ミキサーからの混合物を(株)モリヤマ製二軸押出成形機2TR−50で押出成形し、直径2mm、長さ3mmのペレットを得た。
このペレットを用い、日精樹脂工業製射出成形機PS40で、シリンダー温度200℃で射出し、強度および流動性の測定を行った。80mm*10mm*4mmの試験片を製作し、この試験片を用い、島津製作所製オートグラフAG−10TDにより引張強さ、曲げ強さ、曲げ弾性率を測定した。東洋精機製アイゾット衝撃試験機を用い、アイゾット衝撃値を測定した。更に流動性を測定するためスパイラルフロー金型を用い、射出圧100MPaで巾10mm*厚み2mmの流動長(cm)を測定した。
各物性値の測定結果を第1表に記載した。
【0017】
実施例2
テトラステアリルチタネートの混合量を10部とした以外は実施例1と同様にして製作したポリ乳酸と古紙から成る配合物のペレットを用い、実施例1と同様の方法で流動性および強度の物性値を測定した。
その結果を第1表に記載した。
【0018】
比較例1
実施例1と同様に粉砕した古紙粉の55重量%と、実施例1のポリ乳酸45重量%とを混合し、実施例1と同様の方法でペレットと試験片を作成し、物性値を測定した。
その結果を第1表に記載した。
【0019】
第1表
【0020】
実施例3
実施例1と同様の装置を用いて、古紙を5〜10mmに粗粉砕し、微粉砕機で平均粒径1mm±0.5mmに粉砕し、更に平均粒径0.5mm±0.05mmに微粉砕した古紙粉の100部に対して、テトラステアリルチタネート5部を混合した配合物55重量%と、ポリブチレンサクシネート(三菱化学製「GSPla」)を45重量%とを混合し、実施例1と同様に二軸押出成形機で押出成形し、直径2mm、長さ3mmのペレットを得た。このペレットを用い、実施例1と同様の方法で試験片を製作し、物性値を測定した。結果を第2表に記載した。
【0021】
比較例2
実施例2と同様の粉砕した古紙粉の55重量%と、ポリブチレンサクシネート45重量%とを用いて混合し、実施例2と同様の方法で製作したペレットと試験片を作成し、物性値を測定した。その結果を第2表に記載した。
【0022】
第2表