特許第6035865号(P6035865)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6035865
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】鞍乗型車両のフレーム構造
(51)【国際特許分類】
   B62K 19/20 20060101AFI20161121BHJP
   B62K 11/04 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   B62K19/20
   B62K11/04 E
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-116516(P2012-116516)
(22)【出願日】2012年5月22日
(65)【公開番号】特開2013-241133(P2013-241133A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2014年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100137903
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100158528
【弁理士】
【氏名又は名称】守屋 芳隆
(72)【発明者】
【氏名】八木 敏昭
(72)【発明者】
【氏名】吉田 武司
(72)【発明者】
【氏名】江口 哲平
【審査官】 常盤 務
(56)【参考文献】
【文献】 実開平03−038296(JP,U)
【文献】 特開2010−264832(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0074796(US,A1)
【文献】 実開平01−063591(JP,U)
【文献】 実開昭63−098888(JP,U)
【文献】 特開2000−006869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 19/20
B62K 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のフレーム部材と第2のフレーム部材とを備え、前記第1及び第2のフレーム部材の端部同士を溶接接合して形成される鞍乗型車両のフレーム構造とし、
前記第1のフレーム部材の端部には、上面視にて、当該第1のフレーム部材の長手方向に延在する第1の端面と、当該第1の端面に連続して設けられ、前記第1の端面の延在方向と交差する方向に延在する第2の端面とを含む接合部が設けられ、前記第2のフレーム部材の端部には、前記接合部に対応する形状を有する被接合部が設けられ、
前記第1のフレーム部材の上端部には湾曲面が設けられ、当該湾曲面に前記第1の端面と前記第2の端面の一部が配置される鞍乗型車両のフレーム構造において、
前記第1のフレーム部材と前記第2のフレーム部材との接合部の上面視における前記第1の端面と前記第2の端面とで構成される曲線の最小曲率が前記湾曲面の最小曲率よりも大きいことを特徴とする鞍乗型車両のフレーム構造。
【請求項2】
前記第1のフレーム部材の延在方向に沿った前記湾曲面の中心線と略平行に前記第1の端面を延在させたことを特徴とする請求項1記載の鞍乗型車両のフレーム構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両のフレーム構造に関し、例えば、自動二輪車の車体フレームに適用されるフレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動二輪車等の鞍乗型車両のフレーム構造において、溶接等により接合した複数のフレーム部材から構成されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の鞍乗型車両のフレーム構造においては、肉厚又は材質が異なり、且つ、外形形状が同一の複数のフレーム部材の端面同士を突き合わせた状態で溶接接合することで、車両用のフレーム構造体として必要な強度や剛性を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−6869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような従来の鞍乗型車両のフレームにおいては、複数のフレーム部材が、フレーム部材の長手方向と交差する方向に直線状に溶接されることから、溶接部の長さを十分に確保するためには、フレーム幅を拡げなければならない。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、フレーム幅を抑えつつ溶接部における溶接強度を確保することができる鞍乗型車両のフレーム構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の鞍乗型車両のフレーム構造は、第1のフレーム部材と第2のフレーム部材とを備え、前記第1及び第2のフレーム部材の端部同士を溶接接合して形成される鞍乗型車両のフレーム構造とし、前記第1のフレーム部材の端部には、上面視にて、当該第1のフレーム部材の長手方向に延在する第1の端面と、当該第1の端面に連続して設けられ、前記第1の端面の延在方向と交差する方向に延在する第2の端面とを含む接合部が設けられ、前記第2のフレーム部材の端部には、前記接合部に対応する形状を有する被接合部が設けられ、前記第1のフレーム部材の上端部には湾曲面が設けられ、当該湾曲面に前記第1の端面と前記第2の端面の一部が配置される鞍乗型車両のフレーム構造において、前記第1のフレーム部材と前記第2のフレーム部材との接合部の上面視における前記第1の端面と前記第2の端面とで構成される曲線の最小曲率が前記湾曲面の最小曲率よりも大きいことを特徴とする。
【0007】
上記鞍乗型車両のフレーム構造によれば、第1フレーム部材の長手方向に延在する端面を含む接合部で第1のフレーム部材と第2のフレーム部材とが溶接接合されることから、フレーム部材の長手方向に交差する方向に直線状にのみ溶接される場合と比べて溶接部の溶接長を長くできるので、フレーム幅を抑えつつ溶接部における溶接強度を確保することが可能となる。また、溶接部に第1フレーム部材の長手方向に沿って形成される部分が含まれるので、当該第1フレーム部材の長手方向に作用する荷重に対する溶接強度を確保することが可能となる。
【0008】
また、前記第1のフレーム部材は、前記第2のフレーム部材との接合部分における断面の一部に湾曲面を有し、当該湾曲面に前記第1の端面と当該第1の端面に連続する第2の端面の一部が配置される。一般に、溶接により複数の部材を接合する場合、溶接部の始点及び終点においては、溶接母材の溶け込みを安定させることが難しく、応力集中を緩和することが困難である。このため、溶接部における溶接強度を向上するためには、溶接部を連続的に溶接することが望ましい。しかしながら、表面が湾曲面で構成されるフレーム部材においては、フレーム部材の長手方向と交差する方向に直線状に溶接される場合、溶接部に対して適切な角度で溶接トーチが対向するように移動することができず、湾曲面を連続的に溶接することができない。この結果、溶接部の始点及び終点が複数存在することとなり、溶接部における溶接強度が得難くなる。これに対し、上記鞍乗型車両のフレーム構造によれば、第1のフレーム部材と第2のフレーム部材との接合部分における断面の一部に形成される湾曲面に第1の端面とこれに連続する第2の端面の一部が配置されることから、第1の端面を溶接する際に溶接部に対する溶接トーチの角度を適切に調整できるので、溶接部を連続的に溶接でき、その溶接強度を向上することが可能となる。
【0009】
さらに、上記鞍乗型車両のフレーム構造においては、前記第1のフレーム部材と前記第2のフレーム部材との接合部の上面視における前記第1の端面と前記第2の端面とで構成される曲線の最小曲率が前記湾曲面の最小曲率よりも大きい。湾曲面を連続的に溶接する場合において、溶接トーチの本体部と先端部との内外移動距離差が大きくなると、溶接部に対する溶接トーチの角度を調整できなくなる事態が発生し得る。このような溶接トーチの角度調整を実現するために溶接トーチの先端部の移動速度を低下させることが考えられる。しかしながら、この場合には、局所的に溶接トーチによる溶接時間が長くなり、溶接ビードの盛り過ぎ等の溶接品質が劣化する事態の要因となり得る。これに対し、上記鞍乗型車両のフレーム構造によれば、第1のフレーム部材と前記第2のフレーム部材との接合部の上面視にて、第1の端面と第2の端面とで構成される曲線の最小曲率が湾曲面の最小曲率よりも大きく設定されることから、溶接トーチの先端部の移動速度を低下させることなく湾曲面を連続的に溶接できるので、溶接品質を向上することが可能となる。
【0010】
また、上記鞍乗型車両のフレーム構造においては、前記第1のフレーム部材の延在方向に沿った前記湾曲面の中心線と略平行に前記第1の端面を延在させることが好ましい。この場合には、接合部を構成する第1の端面が湾曲面の中心線と略平行に延在することから、溶接部に対する溶接トーチの角度を調整する領域を直線状に構成できるので、スムーズに溶接部に対する溶接トーチの角度を調整することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、溶接部における溶接強度を確保することができる鞍乗型車両のフレーム構造を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施の形態に係る鞍乗型車両のフレーム構造が適用される自動二輪車の左側面図である。
図2】本実施の形態に係る車体フレームの側面図である。
図3】本実施の形態に係る車体フレームの上面図である。
図4】本実施の形態に係るタンクレールの側面図である。
図5】本実施の形態に係るピボットプレートの被接合部近傍の拡大図である。
図6図4及び図5に示すタンクレールとピボットプレートとの接合部分を拡大した上面図である。
図7図6の矢印A−Aに示す断面図である。
図8】参照例に係る車体フレームの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、本発明の鞍乗型車両のフレーム構造をスポーツタイプの自動二輪車に適用した例について説明する。しかしながら、本発明の適用対象となる鞍乗型車両については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、他のタイプの自動二輪車や、バギータイプの自動三輪車又は自動四輪車にも適用可能である。
【0015】
以下、図1を参照して、本実施の形態に係る鞍乗型車両のフレーム構造が適用される自動二輪車全体の概略構成について説明する。図1は、本実施の形態に係る鞍乗型車両のフレーム構造が適用される自動二輪車の左側面図である。なお、以下に示す図においては、適宜、車体前方を矢印FR、車体後方を矢印REでそれぞれ示す。
【0016】
図1に示すように、自動二輪車1は、パワーユニット、電装系等の各部を搭載するアルミ合金製又は鋼製の車体フレーム2を備えている。車体フレーム2を構成するタンクレール22は、前端に位置するヘッドパイプ21(図2及び図3参照)の分岐部分に連結され、後方に向けて延在する。左右一対のタンクレール22の下方には、エンジン3が懸架されている。タンクレール22の後部には、車体フレーム2を構成するピボットプレート23が接合されている。
【0017】
タンクレール22の上部には、燃料タンク4が配置される。燃料タンク4の周辺には、車体フレーム2の前端部側を覆うように車体カバー41が設けられている。この車体カバー41により、車体フレーム2のヘッドパイプ21やタンクレール22の一部が覆われている。なお、車体カバー41には、車体前方に配置されるヘッドライト42が一体化されている。
【0018】
燃料タンク4の後方には、ライダーシート51a及びピリオンシート51bが連設される。ライダーシート51a及びピリオンシート51bは、車体フレーム2の略後半部に配置されるシートレール(不図示)に支持されている。ライダーシート51a及びピリオンシート51bの下方には、それぞれに対応してフットレスト52、53が設けられている。車体左側の運転者用のフットレスト52の前方には、変速用のチェンジペダル54が設けられ、車体右側の運転者用のフットレスト52の前方には、後輪6用のブレーキペダル(不図示)が設けられている。
【0019】
車体フレーム2のヘッドパイプ21には、フロントフォーク71が回動可能に連結されている。フロントフォーク71には、前輪8操舵用のハンドルバー72が設けられている。ハンドルバー72の両端部には、グリップ73が装着されている。ハンドルバー72の左前方にはクラッチレバー(不図示)が配置されており、ハンドルバー72の右前方には前輪8用のブレーキレバー(不図示)が配置されている。フロントフォーク71の下部には、前輪8が回転可能に支持されている。前輪8には、ブレーキディスク81が設けられている。
【0020】
ピボットプレート23には、リヤスイングアーム61が上下方向に揺動可能に連結されている。車体フレーム2とリヤスイングアーム61との間にはサスペンション(不図示)が取り付けられている。リヤスイングアーム61の後部には、後輪6が回転可能に支持されている。後輪6の左側には、ドリブンスプロケット62が設けられており、ドライブチェーン63によってエンジン3の動力が後輪6に伝達されるように構成されている。後輪6の右側には、後輪6用のブレーキディスク(不図示)が設けられている。
【0021】
車体フレーム2に懸架されるエンジン3は、例えば、並列4気筒エンジンと変速機とを含んで構成される。エンジン3には、インテークダクト(不図示)を介して空気が取り込まれ、燃料噴射装置(不図示)にて空気と燃料とが混合されて燃焼室に供給される。燃焼室内での燃焼後の排気ガスは、エンジン3から下方に延出されたエキゾーストパイプ31を経てマフラー32から排気される。
【0022】
以下、本実施の形態に係る自動二輪車1が有する車体フレーム2の構成について説明する。図2及び図3は、それぞれ本実施の形態に係る自動二輪車1が有する車体フレーム2の側面図及び上面図である。図2及び図3に示すように、車体フレーム2は、本発明に係るフレーム構造が適用されるものであり、ヘッドパイプ21、タンクレール22及びピボットプレート23を含んで構成される。なお、タンクレール22は、第1のフレーム部材を構成し、ピボットプレート23は、第2のフレーム部材を構成する。
【0023】
図2及び図3に示すように、車体フレーム2は、ハンドルバー72に連結されるステアリングシャフト(不図示)を回動可能に支持するヘッドパイプ21を有している。ヘッドパイプ21は、その後方側部分で車体左右に分岐して延在する一対の連結部211を備えている。これらの連結部211の後端部にレーザ溶接等により左右一対のタンクレール22が接合される。
【0024】
各タンクレール22は、車体の前後方向に延在する長尺形状を有し、連結部211から後方側であって僅かに下方側に延在する。タンクレール22の下面には、エンジン3の前方部分を懸架する第1懸架部24aと、エンジン3の後方部分を懸架する第2懸架部24bとが設けられている。また、各タンクレール22の端部(後端部)には、ピボットプレート23と接合される接合部221が設けられている。なお、この接合部221の構成については後述する。
【0025】
ピボットプレート23は、左右一対のプレート本体部231と、このプレート本体部231の端部(前端部)に設けられた被接合部232とを有する。各プレート本体部231は、上下方向に延在する。被接合部232は、プレート本体部231の上端部近傍から前方側に延出して設けられており、タンクレール22の接合部221が接合される。なお、この被接合部232の構成については後述する。
【0026】
また、ピボットプレート23は、左右のプレート本体部231を連結するアッパーブリッジ部233及びロアブリッジ部234を有する。アッパーブリッジ部233は、プレート本体部231の上端部同士を車体の左右方向に連結する。一方、ロアブリッジ部234は、プレート本体部231の下端部同士を車体の左右方向に連結する。上述したリヤスイングアーム61は、ロアブリッジ部234の中央近傍に設けられた一対の連結片234aにより揺動可能に連結される(図3参照)。
【0027】
ここで、タンクレール22が有する接合部221及びピボットプレート23が有する被接合部232の構成について図4及び図5を参照しながら説明する。図4は、本実施の形態に係るタンクレール22の側面図である。図5は、本実施の形態に係るピボットプレート23の被接合部232近傍の拡大図である。なお、図4においては、車体の左方側に配置されるタンクレール22の側面を示している。また、図5A及び図5Bにおいては、それぞれ車体の左方側に配置されるピボットプレート23の左側面及び右側面を示している。
【0028】
タンクレール22の端部(後端部)には、図4に示すように、接合部221が設けられている。接合部221は、タンクレール22の長手方向(車体の前後方向)に延在する第1の端面221aと、この第1の端面221aの延在方向と交差する方向に延在する第2の端面221bとを有している(図6参照)。特に、本実施の形態においては、第2の端面221bが第1の端面221aと直交する方向(車体の左右方向)に延在する場合について示している。
【0029】
第1の端面221aは、タンクレール22の上端部及び下端部に設けられている。第1の端面221aは、車体の外側に端面を向けた状態で延在している。特に、第1の端面221aは、タンクレール22の長手方向に直線状に延在している。一方、第2の端面221bは、第1の端面221aの前端部及び後端部に連続して設けられている。第2の端面221bは、車体の後方側に端面を向けた状態で延在している。特に、第2の端面221bは、第1の端面221aの延在方向と直交する方向に直線状に延在している。
【0030】
一方、ピボットプレート23の端部(前端部)には、図5に示すように、接合部221が接合される被接合部232が設けられている。被接合部232は、接合部221に対応する形状を有する。具体的には、接合部221の第1の端面221aに対向配置される第1の端面232aと、接合部221の第2の端面221bに対向配置される第2の端面232bとを有している。
【0031】
接合部221の第1の端面221a、第2の端面221bと同様に、被接合部232の第1の端面232aは、タンクレール22の長手方向(車体の前後方向)に延在して設けられ、第2の端面232bは、第1の端面232aと直交する方向(車体の左右方向)に延在して設けられている(図6参照)。第1の端面232aは、ピボットプレート23の上端部及び下端部に設けられている。第1の端面232aは、車体の内側に端面を向けた状態で延在している。特に、第1の端面232aは、タンクレール22の長手方向に直線状に延在している。一方、第2の端面232bは、第1の端面232aの前端部及び後端部に連続して設けられている。第2の端面232bは、車体の前方側に端面を向けた状態で延在している。特に、第2の端面232bは、第1の端面232aの延在方向と直交する方向に直線状に延在している。
【0032】
なお、被接合部232の内側部分及び先端部分には、係合部235が設けられている。この係合部235は、タンクレール22がピボットプレート23に接合される際にタンクレール22の接合部221の内側に入り込んで係合可能に構成されている。このように係合部235を接合部221の内側に入り込ませることにより、ピボットプレート23に対してタンクレール22を適切に位置決め可能となっている。
【0033】
次に、これらの接合部221及び被接合部232によりタンクレール22とピボットプレート23とが接合された状態について図6及び図7を参照しながら説明する。図6は、図4及び図5に示すタンクレール22とピボットプレート23との接合部分を拡大した上面図である。図7は、図6の矢印A−Aに示す断面図である。なお、図7においては、接合部221の第1の端面221a及び被接合部232の第1の端面232aの略中央における断面を示している。
【0034】
タンクレール22とピボットプレート23とを接合する場合には、図6に示すように、接合部221と被接合部232とを突き合わせた状態でレーザ溶接等により接合される。具体的には、接合部221の第1の端面221aと被接合部232の第1の端面232aとを突き合わせると共に、接合部221の第2の端面221bと被接合部232の第2の端面232bとを突き合わせた状態で、これらの接触面(密着面)に沿わせて溶接トーチを移動させて溶接することによりタンクレール22とピボットプレート23とが溶接接合される。
【0035】
このように本実施の形態に係る車体フレーム2においては、タンクレール22の長手方向に延在する第1の端面221aを含む接合部221でタンクレール22とピボットプレート23とが溶接接合されることから、車体フレーム2の長手方向に交差する方向に直線状にのみ溶接される場合と比べて溶接部の溶接長を長くできるので、溶接部における溶接強度を確保することが可能となる。また、溶接部に車体の前後方向(タンクレール22の延在方向)に沿って形成される部分が含まれるので、車体の前後方向に作用する荷重に対する溶接強度を確保することが可能となる。
【0036】
なお、タンクレール22とピボットプレート23との接合部分における断面の一部(上端部)には、図6及び図7に示すように、湾曲面25が設けられている。本実施の形態において、湾曲面25は、略U字形状を有している。接合部221を構成する第1の端面221a及び第2の端面221bの一部(被接合部232の第1の端面232a及び第2の端面232bの一部)は、図6に示すように、湾曲面25上に配置されている。
【0037】
一般に、溶接により複数の部材を接合する場合、溶接部の始点及び終点においては、溶接母材の溶け込みを安定させることが難しく、応力集中を緩和することが困難である。このため、溶接部における溶接強度を向上するためには、溶接部を連続的に溶接することが望ましい。しかしながら、本実施の形態の車体フレーム2のように溶接部の一部に湾曲面25が含まれる場合においては、車体フレーム2の長手方向と交差する方向に直線状に溶接が行われる場合、溶接部に対して適切な角度で溶接トーチが対向するように移動することができず、湾曲面25を連続的に溶接することができない。以下、参照例を用いて説明する。
【0038】
図8は、参照例に係る車体フレーム20の断面図である。図8に示すように、車体フレーム20の断面形状の外形は、本実施の形態に係る車体フレーム2と共通であるものとする。すなわち、車体フレーム20の上端部には、湾曲面250が設けられている。このような車体フレーム20の長手方向と交差する方向に直線状に溶接を行う場合、溶接トーチの本体部(以下、「トーチ本体部」という)TAの移動速度と、溶接トーチの先端部(以下、「トーチ先端部」という)TBの移動速度とは、以下の条件を満たす必要がある。
V2max > V1(L2/L1)
ここで、V2maxは、トーチ本体部TAの最大移動速度を示し、V1は、トーチ先端部TBの移動速度を示す。また、L1は、トーチ先端部TBの移動距離を示し、L2は、トーチ本体部TAの移動距離を示す。
【0039】
このような条件を満たすことは、湾曲面250の最小曲率が極めて小さく設定される、自動二輪車等の車体フレーム20においては極めて厳しい。したがって、このような車体フレーム20においては、湾曲面250を連続的に溶接することができず、断続的に溶接が行われることが一般的である。このように断続的に溶接を行う場合には、溶接部の始点及び終点が複数存在することとなり、溶接部における溶接強度が得難くなる。
【0040】
このような事態を考慮し、本実施の形態に係る車体フレーム2においては、接合部221を構成する第1の端面221a及び第2の端面221bの一部を湾曲面25上に配置している。これにより、湾曲面25を溶接する場合であっても、第1の端面221aの溶接を行う際に溶接部に対する溶接トーチの角度を適切に調整できるので、溶接部を連続的に溶接でき、その溶接強度を向上することが可能となる。また、湾曲面25を含む車体フレーム2であっても連続的に溶接できるので、車体フレーム2の全周を連続的に溶接することもでき、車体フレーム2の製造効率を改善することが可能となる。
【0041】
特に、接合部221の第1の端面221a(被接合部232の第1の端面232a)は、図6に一点鎖線で示す湾曲面25の中心線(タンクレール22の延在方向に沿った湾曲面25の中心線)Lと略平行に延在して設けられている。このように接合部221の第1の端面221aを配置していることから、溶接部に対する溶接トーチの角度を調整する領域を直線状に構成できるので、スムーズに溶接部に対する溶接トーチの角度を調整することが可能となる。
【0042】
なお、本実施の形態のように、湾曲面25を連続的に溶接する場合において、トーチ本体部TAとトーチ先端部TBとの内外移動距離差が大きくなると、溶接部に対する溶接トーチの角度を調整できなくなる事態が発生し得る。このような溶接トーチの角度調整を実現するためにトーチ先端部TBの移動速度を低下させることが考えられる。しかしながら、この場合には、局所的に溶接トーチによる溶接時間が長くなり、溶接ビードの盛り過ぎ等の溶接品質が劣化する事態の要因となり得る。
【0043】
このような事態を考慮し、本実施の形態に係る車体フレーム2においては、タンクレール22の上面視にて、第1の端面221a第2の端面221bとで構成される曲線における最小曲率を、湾曲面25の最小曲率よりも大きくなるように設定している。これにより、トーチ先端部TBの移動速度を低下させることなく湾曲面25を連続的に溶接できるので、溶接品を向上することが可能となる。
【0044】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0046】
また、上記実施の形態においては、略U字形状を有する湾曲面25が設けられた車体フレーム2を備える場合について説明している。しかしながら、本発明に係る鞍乗型車両のフレーム構造が適用される車体フレーム2の構成については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、略円形状を有する湾曲面25が設けられた車体フレーム2にも適用することができる。
【0047】
さらに、上記実施の形態においては、湾曲面25が車体フレーム2(より具体的には、タンクレール22及びピボットプレート23)の上端部のみに設けられる場合について説明している。しかしながら、車体フレーム2の構成については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、車体フレーム2の下端部のみに湾曲面25を設けるようにしてもよく、上端部及び下端部の双方に湾曲面25を設けるようにしても良い。
【0048】
さらに、上記実施の形態においては、タンクレール22とピボットプレート23とを溶接接合する場合について説明している。しかしながら、本発明に係る鞍乗型車両のフレーム構造が適用される対象については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。すなわち、タンクレール22とピボットプレート23とを溶接接合する場合に限られず、任意のフレーム部材同士を溶接接合する場合に適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 自動二輪車
2 車体フレーム
21 ヘッドパイプ
211 連結部
22 タンクレール
221 接合部
221a 第1の端面
221b 第2の端面
23 ピボットプレート
231 プレート本体部
232 被接合部
232a 第1の端面
232b 第2の端面
235 係合部
25 湾曲面
3 エンジン
4 燃料タンク
6 後輪
8 前輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8