【実施例】
【0029】
以下実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。尚、実施例に記載の評価方法は以下に記載する方法による。
【0030】
<熱防護性試験>
ASTM D4108−1987の試験装置に準拠して、次の方法によって測定した。下から試験供試体である外層布と内層布を順に重ねて把持具に装着して、プロパンガスバーナーの口の上50mmとなるように試料を設置する。この時、外層布がバーナー側であり、防護服を作製した場合の身体側になる内層布が上側になる。試料から離れた1cm上方に熱電対温度計を設置し、接炎前の温度(A)をする。一旦バーナーを外して、プロパンガスを送って炎を点火し、炎の長さが4cmとなるように調整する。炎が安定した後にバーナーを試料の下に素早く移動して、15秒後の熱電対温度計の表示温度(B)を計測する。本発明による熱防護性は次式による。尚、熱防護性試験は20±2℃の雰囲気で行った。
熱防護性(℃)=B(℃)−A(℃)
【0031】
<トルエン平衡吸着量>
JIS K1477(2007)に記載のトルエン吸着性能のうち平衡吸着量による。
【0032】
<厚さ>
厚さはJIS L1096(2010)に記載の8.4厚さのうちA法により、加圧する一定圧力は0.7kPaとした。
【0033】
<質量>
質量はJIS L1096(2010)に記載の8.3.2標準状態における単位面積当たりの質量のうちA法により測定した。
【0034】
<かさ高性>
かさ高性はJIS L1096(2010)に記載の8.5かさ高性により測定した。
【0035】
<絶乾質量>
絶乾質量は試料を115±5℃の恒温乾燥器中で約3時間加熱した後、密栓してデシケータ中で室温まで冷却した後の単位面積当りの質量を求めた。
【0036】
<炭化長>
炭化長はJIS L1091(1999)附属書8に記載の「垂直燃焼性試験方法−垂直バーナー法」によって測定した。
【0037】
[外層布1]
ナイロン66フィラメント糸と綿の混率を23/77とし、電気開繊方式により40番手の混紡糸を作成した。次いで常法によりエアジェット織機を用いて製織し、たて糸密度140本/2.54cm、よこ糸密度108本/2.54cmの2/1綾織物を作成した。次いで、定法により毛焼、糊抜、精練、漂白、シルケット、染色、ソーピングを行った。さらに、この染色織物をN−メチロールジメチルホスホノプロピオン酸アミドを主成分とするピロバテックスCPを40%、塩化アンモニウムを0.5%含む水溶液に浸漬し、ピックアップが65%となるように絞り、乾燥・熱処理を施して外層布1を得た。本外層布1の質量は171g/m
2であった。
【0038】
[外層布2]
ナイロン糸と綿の混率を5/95とし、精紡交撚方式により得た40番手の混紡糸を用いた以外は外層布1と同様の製織、下晒、染色、加工処理を施して外層布2を得た。本外層布2の質量は179g/m
2であった。
【0039】
[外層布3]
78dtex−30filのナイロン66糸をたて糸に用い、単糸繊度が2.2dtexのモダクリル繊維であるカネカロン(登録商標)ステープルの20番手紡績糸をよこ糸に用いた、たて糸密度116本/2.54cm、よこ糸密度50本/2.54cmの綾織物を定法により、精練、染色して外層布3を得た。本外層布3の質量は125g/m
2であった。
【0040】
[活性炭素繊維シート1]
単糸繊度2.2dtexのフェノール系繊維であるカイノール(登録商標)ステープルを用いて20番手の紡績糸を得た。この紡績糸を22ゲージの両面丸編み機により質量が225g/m
2で厚さが1.65mmのフライス編地を成編した。
この編地を焼成炉を用いて不活性ガス中で常温から400℃まで昇温させて30分間炭化し、次いで水蒸気が12wt%含有する活性ガス中で890℃の温度で90分間賦活した。得られた活性炭素繊維編物は、絶乾質量が120g/m
2、厚さが1.05mmであった。この活性炭素繊維編物のトルエン吸着量は47%であり、BET比表面積は1380m
2/gと非常に高い吸着性能を有するものであった。
【0041】
[活性炭素繊維シート2]
活性炭素繊維シート1の製造に用いたフェノール系繊維の紡績糸を用いて目付90g/m
2の平織物を作成し、同様に炭化・賦活処理を施して活性炭素繊維織物を作成した。得られた活性炭素繊維織物は絶乾質量が50g/m
2、厚さが0.35mmであった。この活性炭素繊維編物のトルエン吸着量は51%であり、BET比表面積は1400m
2/gであった。
【0042】
[保護層1]
78dtex−24filのナイロン66フィラメント糸を地糸に用い、244dtexのナイロン66モノフィラメント糸をパイル糸として、22ゲージ6枚筬ダブルラッセイル機でたて編地を編み立てた後に、定法により精練、染色した。この編物を半裁してカットパイルに下の後にパイルの先端を熱溶融して球状物を形成させた。このようにして得られた編物は質量が310g/m
2で厚さが1.88mmであった。
【0043】
[保護層2]
84dtex−24filのナイロン66フィラメント糸を地糸に用い、176dtexのナイロン66モノフィラメント糸をパイル糸として、22ゲージ6枚筬ダブルラッセイル機でたて編地を編み立てた後に、定法により精練、染色した。この編物を半裁してカットパイルに下の後にパイルの先端を熱溶融して球状物を形成させた。このようにして得られた編物は質量が147g/m
2で厚さが0.90mmであった。
【0044】
[保護層3]
28ゲージ2枚筬トリコット編機により、フロント筬にポリエステル仮撚加工糸167dtex−48filを、バック筬にポリエステル仮撚加工糸83dtex−24filを各々フルセットとして、フロント1−0/5−6、バック1−2/1−0の組織で経編地を編成させて、経方向に伸長させてループパイルを発現させてフレンチパイルとした後に、定法により精練・染色した。このようにして得られた編物は質量が230g/m
2で厚さが1.69mmであった。
【0045】
[保護層4]
83dtex−36filのポリエステルフィラメント糸をフロント糸に、22dtexのポリエステルモノフィラメント糸をバック糸に用いてトリコット編機にてたて編地を成編し、定法により精練、染色した。このようにして得られたトリコット編物の質量は60g/m
2、厚さが0.22mmであった。
【0046】
[内層貼り合せ方法1]
上糸にポリエステルフィラメント糸50番手のミシン糸を用い、下糸にポリエステルスパン糸130番手のミシン糸を用いて、保護層の間に活性炭素繊維シートを挟んで、打ち込み本数1本/2.54cm、ダイヤ柄でキルティング縫製した。
【0047】
[内層貼り合せ方法2]
保護層と活性炭素繊維シートの間に質量が15g/m
2のポリアミド系不織布状熱可塑性接着剤(呉羽テック製ダイナック(登録商標)、融点115℃)により加熱ローラによってラミネートして貼り合わせた。
【0048】
(実施例1)
保護層1/活性炭素繊維シート1/保護層4をこの順で重ねてキルティング法により貼り合わせた。そのときの質量、かさ高性および厚さを表1に示す。外層布1を保護層1側に配置して重ねて配置したときの熱防護性を同じく表1に示した。この防護服材料は優れた熱防護性を有する。
【0049】
(実施例2)
保護層2/活性炭素繊維シート1/保護層4をこの順で重ねてキルティング法により貼り合わせた。そのときの質量、かさ高性および厚さを表1に示す。外層布2を保護層2側に配置して重ねて配置したときの熱防護性を同じく表1に示した。この防護服材料は優れた熱防護性を有する。
【0050】
(実施例3)
保護層3/活性炭素繊維シート1/保護層4をこの順で重ねてラミネート法により貼り合わせた。そのときの質量、かさ高性および厚さを表1に示す。外層布2を保護層3側に配置して重ねて配置したときの熱防護性を同じく表1に示した。この防護服材料は優れた熱防護性を有する。
【0051】
(比較例1)
保護層4/活性炭素繊維シート1/保護層4をこの順で重ねてラミネート法により貼り合わせた。そのときの質量、かさ高性および厚さを表1に示す。外層布2を保護層4の片方側に配置して重ねて配置したときの熱防護性を同じく表1に示した。この防護服材料は熱防護性に劣るものである。
【0052】
(比較例2)
保護層3/活性炭素繊維シート2/保護層4をこの順で重ねてラミネート法により貼り合わせた。そのときの質量、かさ高性および厚さを表1に示す。外層布2を保護層3側に配置して重ねて配置したときの熱防護性を同じく表1に示した。この防護服材料は熱防護性に劣るものである。
【0053】
(比較例3)
保護層2/活性炭素繊維シート1/保護層4をこの順で重ねてキルティング法により貼り合わせた。そのときの質量、かさ高性および厚さを表1に示す。外層布3を保護層2側に配置して重ねて配置したときの熱防護性を同じく表1に示した。この防護服材料は熱防護性に劣るものである。
【0054】
(実施例4)
実施例2に示す防護服材料を用いて、
図1に示す防護服を作成した。防護服上着の前身ごろと後見ごろの外層布の内側に外層布生地材料で作成した腰締め紐覆い布を縫いつけ、胴締め紐をその中に入れて、前立て部で紐の端部を固定した。また、脇部にハトメを取り付けて、その穴から紐を外に出し、胴部の周囲を締め付けられるようにした。
【0055】
この防護服は胴回りの駆幹部がズボンと上着の両方の材料が重なり合って防護性が充分に確保できると共に、ズボン吊りと胴締め紐を調整することにより身体にフィットして、諸動作を行ってもずれることはなかった。
【0056】
【表1】