(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車両用ホーンは、車両法規により、所定のホーン音圧を確保する必要ある。そのため、要求されるホーン音圧が大きい場合、車両用ホーンは大きな振動を発生することになる。このため、特許文献1に記載のボディパネルおよび取付板だけでは、車両用ホーンの発生する大きな振動に耐えることが困難となり、車両用ホーンの取付部分が変形する可能性がある。
【0007】
この場合には、リインフォースやブラケットなどの補強部品をボディパネルに取付けて、車両用ホーンの取付部分の強度を確保することが考えられる。しかし、補強部品を追加すると、製造コストや重量が増加してしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、追加の補強部品を用いず、車両用ホーンの取付強度を確保できる車体前部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車体前部構造の代表的な構成は、車両用ホーンを備えた車体前部構造において、車体前部の下部に配置された車幅方向に延びる下部横部材と、車体前部の上部に配置された水平方向に差し渡された上部部材と、下部横部材の端部に接続され端部から上方へ延びる第1縦部材であって車内側に張り出した第1フランジを有する第1縦部材と、上部部材の端部に接続され端部から下方へ延び第1縦部材の上端に下端が重なるように接続される第2縦部材であって車内側に張り出し第1フランジと少なくとも一部が重なり合っている第2フランジを有する第2縦部材とをさらに備え、車両用ホーンは、第1フランジと第2フランジとが重なり合っている取付領域に取付けられていることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、車両用ホーンが取付けられる取付領域は、2つの縦部材のそれぞれのフランジが重なり合う部分であるから、十分な剛性を有する。したがって、本発明にかかる車体前部構造によれば、大きな振動を発生する車両用ホーンを取付領域に取付けた場合であっても、十分な取付強度を確保でき、車両用ホーンを保持するための追加の補強部品が不要となる。
【0011】
上記の車両用ホーンは、取付領域の車内側に位置し、車両用ホーンから取付領域の内部まで延びて車両用ホーンを取付領域に取付ける板状の取付板を有し、取付領域は、取付板の上縁に沿って形成された第1ビード部と、取付板の下縁に沿って形成された第2ビード部とを有するとよい。
【0012】
上記の構成によれば、取付領域にビード部が形成されることから、取付領域の剛性が向上する。また、第1ビード部および第2ビード部が、取付板の上縁および下縁に沿ってそれぞれ形成されているので、取付板を取付領域に取付ける際の位置決めに利用できる。また、車両用ホーンが例えば自重により下方に位置ずれ(あるいは回転)しようとしても、取付板の縁とビード部とが接触するので、車両用ホーンの位置ずれを防止できる。
【0013】
上記の取付領域は、第1フランジと第2フランジとを所定の第1溶接点および第2溶接点にて溶接して形成され、第1溶接点は、上縁よりも上方に位置し、第2溶接点は、下縁よりも下方に位置するとよい。これにより、第1フランジと第2フランジとは、取付板の縁の上方および下方で溶接される。このため、取付領域での剛性が向上し、取付板および車両用ホーンを確実に保持できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、追加の補強部品を用いず、車両用ホーンの取付強度を確保できる車体前部構造を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0017】
図1は、本実施形態における車体前部構造の概略構成を示す図である。
図1(a)は、車両用ホーンを取付ける前の状態を示す分解斜視図である。
図1(b)は、車両用ホーンを取付けた状態の車体前部を示す図である。
【0018】
車体前部構造100は、
図1(a)に示すように、前方に向けて警笛音を発生させる車両用ホーン102が取付けられる取付構造104を備える。取付構造104は、車体前部の骨組みとなるフロントロアクロスメンバガゼット(第1縦部材106)およびランプサポートブレース(第2縦部材108)を利用して形成されている。なお、車両用ホーン102は、板状の取付板110を介してボルト112などにより、取付構造104に固定される。
【0019】
第1縦部材106は、例えばフロントロアクロスメンバ114の右側端部に接続されていて、縦方向に配置された部材である。第1縦部材106は、車内側に張り出した第1フランジ116を有する。フロントロアクロスメンバ114は、車体前部の下部に配置された車幅方向に延びる下部横部材である。
【0020】
第2縦部材108は、例えばランプサポートメンバ118に接続されていて、縦方向に配置された部材である。第2縦部材108は、車内側に張り出した第2フランジ120を有する。詳細は後述するが、第1縦部材106と第2縦部材108とは、第1フランジ116と第2フランジ120とを用いて互いに接合されている。ランプサポートメンバ118は、不図示のヘッドランプを支持する部材であり、フードロックメンバ122の右側端部に接続されている。なお、フードロックメンバ122の左側端部には、ランプサポートメンバ124が接続されている。
【0021】
フードロックメンバ122は、例えば、不図示のエンジンフードの前端付近の下方を支持するために車幅方向に延びる部材である。フードロックメンバ122およびランプサポートメンバ118はともに、フロントロアクロスメンバ114および第1縦部材106の上端よりも上方に位置する上部部材である。ここで、第2縦部材108は、上部部材であるランプサポートメンバ118に接続されているとしたが、これに限らず、他の上部部材であるフードロックメンバ122に接続されていてもよい。
【0022】
本実施形態においては、下部横部材としてフロントロアクロスメンバ114を例示し、上部部材としてフードロックメンバ122およびランプサポートメンバ118を例示したが、これに限らず、他の部材を下部横部材および上部部材としてもよい。なお、上部部材は、車体前部の上部に配置されていて水平方向に差し渡された部材に相当する。
【0023】
また、フードロックメンバ122の中央部とフロントロアクロスメンバ114の中央部との間には、縦方向に延びるフードロックブレース126が設けられている。フードロックブレース126は、フードロックメンバ122とフロントロアクロスメンバ114とを接合している。さらに、フロントロアクロスメンバ114の左側端部とランプサポートメンバ124とは、縦方向に延びる他のランプサポートブレース128により接続されている。
【0024】
車体前部構造100では、車両用ホーン102を上記取付構造104に取付けた上で、
図1(b)に示すように前方からフロントバンパ130が組付けられる。なお、車両用ホーン102は、車両法規により、所定のホーン音圧を確保する必要ある。そのため、車両用ホーン102は、前方を閉塞しないようにフロントバンパ130の開口と重なる位置に配置してよい。
【0025】
図2は、
図1の取付構造104を拡大して車両前方から見た図である。
図3は、
図2の取付構造104を他の方向から見た図である。
図3(a)は、
図2の取付構造104を車両後方から見た図である。
図3(b)は、
図2の取付構造104を車両右側の斜め後方から見た図である。なお、図中の矢印Sは車内側を示し、矢印Tは車両後側を示している。
【0026】
取付構造104には、
図2に示すように、車両用ホーン102が取付けられる取付領域132が形成されている。取付領域132は、第1縦部材106の第1フランジ116と第2縦部材108の第2フランジ120とが重なり合うことで形成される。ここでは、第1フランジ116は、第2フランジ120よりも車両前側(紙面手前側)に配置されていて、さらに、上端116aが第2フランジ120の下端120aよりも上方に位置している。
【0027】
つまり、取付領域132とは、例えば、第1フランジ116の上端116aと第2フランジ120の下端120aとの間に位置する、第1フランジ116と第2フランジ120とが重なり合った剛性の高い領域である。さらに、第1フランジ116と第2フランジ120とが重なり合った状態で、溶接点134a、134b、134cにて溶接されることで、取付領域132が形成される。
【0028】
また、取付領域132には、ボルト孔136とビード部138a、138bとが形成されている。ボルト孔136は、車両用ホーン102を固定する上記ボルト112を挿通するための挿通孔であり、重ねられた第1フランジ116および第2フランジ120を貫通するように形成されている。ビード部138a、138bは、例えば、第1フランジ116に形成された車両前側に凸の細帯状の補強部であり、ボルト孔136からそれぞれ上下に離間した位置に形成されている。
【0029】
なお、第2縦部材108は、
図3(a)および
図3(b)に示すように、第1縦部材106よりも車両後側(
図3(a)では紙面手前側)に配置されている。第2フランジ120は、第2縦部材108の車両前側に形成されていて、
図3(a)に示すように、ビード部138a、138bが形成された第1縦部材106の第1フランジ116と重なっている。そして、
図2に示すように、第1フランジ116と第2フランジ120とが溶接されることで、上記取付領域132が形成される。取付領域132は、ビード部138a、138bを有するので、剛性が向上する。
【0030】
つぎに、
図4および
図5を参照して、車両用ホーン102が取付板110を介して取付構造104に取付けられた状態について説明する。
図4は、
図2の取付構造104に車両用ホーン102を取付けた状態を示す図である。
図5は、
図4の取付構造104のA−A断面図である。ただし、
図5では、取付板110に挿通される
図4に示すボルト112を省略して示している。
【0031】
取付板110は、車両用ホーン102を取付領域132に取付ける板状の部材である。取付板110は、
図5に示すように車両用ホーン102から取付領域132の内部まで延びていて、車内側の一端部140が車両用ホーン102に取付けられ、車外側の他端部142が取付領域132に取付けられている。取付板110は、第1フランジ116および第2フランジ120が重ねられた取付領域132のボルト孔136にボルト112を挿通し、第2フランジ120の車両後側に配置されたナット144にボルト112を螺合させることで、取付領域132に取付けられる。
【0032】
また、取付板110は、上縁となる第1側部146aと、下縁となる第2側部146bとを含む。第1側部146aと第2側部146bとは、取付板110の長手方向すなわちA−A線に沿った方向に延びていて対向している。取付板110が取付領域132に取付けられた状態で、第1側部146aは、第2側部146bよりも上方に位置している。
【0033】
ビード部138aは、第1側部146aの上側にて第1側部146aに沿って形成されている。ビード部138bは、第2側部146bの下側にて第2側部146bに沿って形成されている。このため、ビード部138a、138bは、取付板110を取付領域132に取付ける際の位置決めに利用できる。
【0034】
さらに、ビード部138a、138bは、取付領域132に取付けられた取付板110の位置規制にも利用できる。一例として、取付板110の一端部140に取付けられた車両用ホーン102が例えば自重により下方に位置ずれ(あるいは回転)しようとした場合、取付板110の第1側部146aがビード部138aに接触し、また、第2側部146bがビード部138bに接触する。このため、取付板110は、ビード部138a、138bによって位置が規制され、車両用ホーン102の位置ずれを防止できる。
【0035】
また、溶接点134aは、第1側部146aよりも上方に位置している。溶接点134bは、第2側部146bよりも下方に位置している。このように、取付板110が取付領域132に取付けられた状態で、取付領域132は、取付板110の上下で溶接点134a、134bにて溶接されている。なお、溶接点134cは、溶接点134bよりもさらに下方に位置している。このため、取付領域132の剛性が向上し、取付板110および車両用ホーン102を確実に保持できる。
【0036】
図6は、比較例の車体前部構造100Aの概略構成を示す図である。
図6(a)は、車体前部構造100Aの正面図である。
図6(b)は、
図6(a)に示す矢印Bから車体前部構造100Aを見た状態を示す図である。
図7は、
図6の車体前部構造100AのC−C断面図である。なお、図中では、上記車体前部構造100と同一部材には同一符号を付し、説明を適宜省略する。
【0037】
比較例の車体前部構造100Aでは、フードロックメンバ122Aに車両用ホーン102を取付けている点で、上記の車体前部構造100と異なる。ここで、フードロックメンバ122Aの中央部は、フードロックブレース126を介してフロントロアクロスメンバ114と接合している。また、フードロックメンバ122Aの両端部には、ランプサポートメンバ118、124が接続されている。さらに、ランプサポートメンバ118、124は、ランプサポートブレース128a、128bを介して、フロントロアクロスメンバ114の右側端部、左側端部にそれぞれ接続されている。
【0038】
フードロックメンバ122Aは、
図6(a)に示すように下方に延びるフランジ200を有する。フランジ200には、ボルト112Aにより固定された取付板110Aを介して、車両用ホーン102が取付けられている。
【0039】
また、フランジ200は、
図6(b)に示すように、取付板110Aの両側に沿って形成された前方に凸の追加形状202a、202bを有する。フランジ200の追加形状202a、202bは、取付板110Aの位置規制に利用されていて、取付板110Aをフランジ200に組付ける際に取付板110Aが回転するなどして車両用ホーン102の位置がずれることを防止している。
【0040】
しかし、車体前部構造100Aでは、フランジ200の追加形状202a、202bを形成するためにトリムラインを部分的に変更しなければならず、歩留まりが悪化するという問題があった。なお、トリムラインとは、ある部材から特定の形状を切り出す際の切り出し線などをいう。
【0041】
また、車体前部構造100Aでは、
図7に示すように、フードロックメンバ122Aおよびフランジ200の車両後側にリインフォースやブラケットなどの追加の補強部品204を溶接している。そして、取付板110Aは、フランジ200および補強部品204が重ねられた状態でボルト112Aが挿入され、補強部品204の車両後側に配置されたナット144Aにボルト112Aが螺合することで、フードロックメンバ122Aに固定されている。
【0042】
車体前部構造100Aでは、車両用ホーン102に大きいホーン音圧が要求され、大きな振動が発生する場合であっても、補強部品204を追加することで、フードロックメンバ122Aのフランジ200などの車両用ホーン102の取付部分に亀裂などが生じる問題を防止している。
【0043】
しかし、車体前部構造100Aでは、追加の補強部品204が必要であり、さらに補強部品204を溶接する必要もあるので、製造コストや重量が増加するという問題があった。
【0044】
これに対して、本実施形態では、車両用ホーン102が取付けられる取付領域132は、第1縦部材106の第1フランジ116と第2縦部材108の第2フランジ120とが重なり合う部分であるから、十分な剛性を有する。したがって、車体前部構造100では、大きな振動が発生する車両用ホーン102を取付領域132に取付けた場合であっても、十分な取付強度を確保できる。よって、車両用ホーン102を保持するための追加の補強部品が不要となり、製造コストや重量が増加することもない。
【0045】
また、車体前部構造100では、ビード部138a、138bを取付領域132に形成することで、取付領域132の剛性を高めることができる。なお、ビード部138a、138bは、トリムラインを変更せずに形成できるので、歩留まりが悪化することもない。さらに、車体前部構造100では、ビード部138a、138bによって、取付板110を取付領域132に取付ける際の位置決め、あるいは、取付領域132に取付けられた取付板110の位置規制を行うことができる。
【0046】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。