特許第6035890号(P6035890)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6035890
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】シール構造及び可変容量型過給機
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/24 20060101AFI20161121BHJP
   F02B 39/00 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   F02B37/24
   F02B39/00 D
   F02B39/00 C
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-135572(P2012-135572)
(22)【出願日】2012年6月15日
(65)【公開番号】特開2014-1639(P2014-1639A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2015年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】吉田 宗弘
(72)【発明者】
【氏名】森 淳
(72)【発明者】
【氏名】峰田 知己
【審査官】 津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−2140(JP,A)
【文献】 特開平11−125120(JP,A)
【文献】 特開平11−229886(JP,A)
【文献】 特開2002−349345(JP,A)
【文献】 特開2010−138885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/24
F02B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンインペラ側へ供給される排気ガスの流路面積を可変とする可変ノズルユニットを装備しかつ前記可変ノズルユニットにおけるサポートリングの外周縁部がタービンハウジングの軸方向一方側の側面とベアリングハウジングの軸方向他方側の側面とによって押圧挟持される可変容量型過給機に用いられ、液化した未燃燃料が前記タービンハウジングの軸方向一方側の側面と前記ベアリングハウジングの軸方向他方側の側面との間から漏れることを抑えるシール構造において、
前記タービンハウジングの軸方向一方側の側面及び前記ベアリングハウジングの軸方向他方側の側面のうち少なくともいずれかにおける前記サポートリングの外周縁部の径方向外側に隣接する位置に環状の取付段部が形成され、前記タービンハウジング及び前記ベアリングハウジングのうち少なくともいずれかの前記取付段部内に環状のガスケットが設けられ、前記ガスケットの断面形状は、U字形状、V字形状、又はC字形状を呈しており、前記ガスケットは、前記タービンハウジングの前記取付段部の底面と前記ベアリングハウジングの軸方向他方側の側面、前記ベアリングハウジングの前記取付段部の底面と前記タービンハウジングの軸方向一方側の側面、又は前記タービンハウジングの前記取付段部の底面と前記ベアリングハウジングの前記取付段部の底面によって押圧挟持されている、シール構造。
【請求項2】
前記ベアリングハウジングの軸方向他方側にフランジが形成され、前記タービンハウジングの軸方向一方側の側面に前記フランジと嵌合可能な嵌合凹部が形成され、
前記取付段部は、前記タービンハウジングの前記嵌合凹部の底面及び前記ベアリングハウジングの前記フランジの軸方向他方側の側面のうち少なくともいずれかにおける前記サポートリングの外周縁部の径方向外側に隣接する位置に形成され、前記ガスケットは、前記タービンハウジングの前記取付段部の底面と前記ベアリングハウジングの前記フランジの軸方向他方側の側面、前記ベアリングハウジングの前記取付段部の底面と前記タービンハウジングの前記嵌合凹部の底面、又は前記タービンハウジングの前記取付段部の底面と前記ベアリングハウジングの前記取付段部の底面によって押圧挟持されている、請求項1に記載のシール構造。
【請求項3】
前記ガスケットの外表面に二硫化モリブデンからなる被膜が焼き付けによって形成されている、請求項1又は請求項2に記載のシール構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載のシール構造を備えた、可変容量型過給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変容量型過給機におけるタービンハウジングの軸方向(可変容量型過給機のロータ軸の軸方向)一方側の側面(締結面)とベアリングハウジングの軸方向他方側の側面(締結面)との間から液化した未燃燃料が漏れることを抑えるシール構造等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、可変容量型過給機について種々の開発がなされており、本願の出願人も可変容量型過給機について出願して既に公開されている(特許文献1及び特許文献2等参照)。そして、従来の可変容量型過給機は、タービンインペラ側へ供給される排気ガスの流路面積を可変とする可変ノズルユニットを装備しており、この可変ノズルユニットにおけるサポートリングの外周部がタービンハウジングの軸方向一方側の側面(締結面)とベアリングハウジングの軸方向他方側の側面(締結面)とによって押圧挟持(挟持)されるようになっている。
【0003】
一方、可変容量型過給機のタービンインペラの出口の下流側には、通常、排気ガス中のパティキュレート(粒子状物質)を捕集するフィルタが配設されており、可変容量型過給機の運転中に、フィルタの再生動作を実行するための未燃燃料がタービンハウジング内に供給(導入)されることがある。ここで、フィルタの再生動作とは、可変容量型過給機のタービンインペラの出口とフィルタの間に配設された触媒で未燃燃料を燃焼させることにより、フィルタの温度を上昇させて、フィルタに堆積したパティキュレートを燃焼除去することをいう。
【0004】
それに対応して、従来の可変容量型過給機は、通常、運転停止後に液化した未燃燃料がタービンハウジングの軸方向一方側の側面とベアリングハウジングの軸方向他方側の側面との間から漏れることを抑えるシール構造を備えており、このシール構造の具体的な内容は、次のようになる。
【0005】
タービンハウジングの軸方向一方側の側面には、環状の取付溝(環状の取付段部の一例)が形成されており、タービンハウジングの取付溝内には、環状のガスケットが設けられている。また、ガスケットは、タービンハウジングの取付溝の底面とサポートリングの外縁部の軸方向他方側の側面によって押圧挟持(押圧した状態で挟持)されている。これにより、タービンハウジングの取付溝の底面とサポートリングの外縁部の軸方向他方側の側面がガスケットシール面(ガスケットと密着する面)になって、タービンハウジングの軸方向一方側の側面とベアリングハウジングの軸方向他方側の側面との間から液化した未燃燃料が漏れることを抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−2140号公報
【特許文献2】特開2010−242520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、通常、サポートリングはプレス加工によって成型されており、サポートリングの外縁部の軸方向他方側の側面に表面うねりが生じてあって、一方のガスケットシール面であるサポートリングの外縁部の軸方向他方側の側面は高い平面精度(面精度)で仕上げられていない。そのため、一方のガスケットシール面に対するガスケットの密着性(シール性)が低下して、タービンハウジングの軸方向一方側の側面とベアリングハウジングの軸方向他方側の側面との間から液化した未燃燃料が漏れることを高いレベルで抑えることが困難であるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、前述の問題を解決することができる、新規な構成のシール構造等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、タービンインペラ側へ供給される排気ガスの流路面積(流量)を可変とする可変ノズルユニットを装備しかつ前記可変ノズルユニットにおけるサポートリングの外周縁部がタービンハウジングの軸方向一方側の側面(締結面)とベアリングハウジングの軸方向他方側の側面(締結面)とによって挟持される可変容量型過給機に用いられ、液化した未燃燃料が前記タービンハウジングの軸方向一方側の側面と前記ベアリングハウジングの軸方向他方側の側面との間から漏れることを抑えるシール構造において、前記タービンハウジングの軸方向一方側の側面及び前記ベアリングハウジングの軸方向他方側の側面のうち少なくともいずれかにおける前記サポートリングの外周縁部の径方向外側に隣接する位置に環状の取付段部が形成され、前記タービンハウジング及び前記ベアリングハウジングのうち少なくともいずれかの前記取付段部内に環状のガスケットが設けられ、前記ガスケットの断面形状は、U字形状、V字形状、又はC字形状を呈しており、前記ガスケットは、前記タービンハウジングの前記取付段部の底面と前記ベアリングハウジングの軸方向他方側の側面、前記ベアリングハウジングの前記取付段部の底面と前記タービンハウジングの軸方向一方側の側面、又は前記タービンハウジングの前記取付段部の底面と前記ベアリングハウジングの前記取付段部の底面によって押圧挟持(押圧した状態で挟持)されていることである。
【0010】
なお、本願の明細書及び特許請求の範囲おいて、「軸方向」とは、可変容量型過給のロータ軸の軸方向、換言すれば、タービンインペラの軸方向のことをいう。また、「環状の取付段部」とは、環状の取付溝を含む意である。
【0011】
第1の態様によると、前記ガスケットが前記タービンハウジングの前記取付段部の底面と前記ベアリングハウジングの軸方向他方側の側面、前記ベアリングハウジングの前記取付段部の底面と前記タービンハウジングの軸方向一方側の側面、又は前記タービンハウジングの前記取付段部の底面と前記ベアリングハウジングの前記取付段部の底面によって押圧挟持されているため、前記タービンハウジング及び前記ベアリングハウジングにおける機械加工面がガスケットシール面(前記ガスケットと密着する面)になり、両方のガスケットシール面に対する前記ガスケットの密着性(シール性)を十分に確保することができる。
【0012】
前記タービンハウジング及び前記ベアリングハウジングのうち少なくともいずれかの前記取付段部が前記サポートリングの径方向外側に位置しているため、前記可変容量型過給機の運転停止後において、前記タービンハウジングの軸方向一方側の側面と前記サポートリングの外縁部の軸方向他方側の側面との間、及び前記ベアリングハウジングの軸方向他方側の側面と前記サポートリングの外縁部の軸方向一方側の側面との間から侵入した液化した未燃燃料を前記タービンハウジング及び前記ベアリングハウジングのうち少なくともいずれかの前記取付段部内に一時的に貯えることができる。換言すれば、前記タービンハウジング及び前記ベアリングハウジングのうち少なくともいずれかの前記取付段部を液化した未燃燃料のバッファとして機能させることができる。
【0013】
本発明の第2の態様は、エンジンからの排気ガスのエネルギーを利用して、前記エンジン側に供給される空気を過給する可変容量型過給機であって、第1の態様からなる可変ノズルユニットを具備したことである。
【0014】
第2の態様によると、第1の態様による作用と同様の作用を奏する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、両方のガスケットシール面に対する前記ガスケットの密着性を十分に確保すると共に、前記タービンハウジング及び前記ベアリングハウジングのうち少なくともいずれかの前記取付段部を液化した未燃燃料のバッファとして機能させることができるため、前記タービンハウジングの軸方向一方側の側面と前記ベアリングハウジングの軸方向他方側の側面との間から液化した未燃燃料が漏れることを高いレベルで抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施形態に係るシール構造を示す図である。
図2図2は、図3における矢視部IIの拡大図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る可変容量型過給機の正断面図である。
図4図4は、本発明の実施形態の変形例1に係るシール構造を示す図である。
図5図5は、本発明の実施形態の変形例2に係るシール構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について図1から図3を参照して説明する。なお、図面に示すとおり、「L」は、左方向、「R」は、右方向である。
【0018】
(本発明の実施形態)
図3に示すように、本発明の実施形態に係る可変容量型過給機1は、エンジンからの排気ガスのエネルギーを利用して、エンジンに供給される空気を過給(圧縮)するものである。そして、可変容量型過給機1の具体的な構成等は、以下のようになる。
【0019】
可変容量型過給機1は、ベアリングハウジング3を具備しており、このベアリングハウジング3内には、左右方向へ延びたロータ軸(タービン軸)5を回転可能に支持するラジアルベアリング7及び一対のスラストベアリング9が設けられており、換言すれば、ベアリングハウジング3内には、ロータ軸5がラジアルベアリング7及び一対のスラストベアリング9を介して回転可能に設けられている。また、ベアリングハウジング3の右側(ロータ軸5の軸方向一方側)には、ライトフランジ11が形成されており、ベアリングハウジング3の左側(ロータ軸5の軸方向他方側)には、レフトフランジ13が形成されている。
【0020】
ベアリングハウジング3のライトフランジ11には、コンプレッサハウジング15が複数(1つのみ図示)の締結ボルト17及び複数(1つのみ図示)の座金19を介して設けられており、コンプレッサハウジング15の左側には、ベアリングハウジング3のライトフランジ11が嵌合可能な嵌合凹部21が形成されている。そして、コンプレッサハウジング15内には、遠心力を利用して空気を圧縮するコンプレッサインペラ23がその軸心(換言すれば、ロータ軸5の軸心)C周りに回転可能に設けられている。また、コンプレッサインペラ23は、ロータ軸5の右端部に一体的に連結されたコンプレッサホイール25と、このコンプレッサホイール25の外周面に周方向に等間隔に設けられた複数のコンプレッサブレード27とを備えている。
【0021】
コンプレッサハウジング15におけるコンプレッサインペラ23の入口側(コンプレッサハウジング15の右側部)には、空気を導入するための空気導入口29が形成されており、この空気導入口29は、空気を浄化するエアクリーナ(図示省略)に接続可能である。また、ベアリングハウジング3とコンプレッサハウジング15との間におけるコンプレッサインペラ23の出口側には、圧縮された空気を昇圧する環状のディフューザ流路31が形成されており、このディフューザ流路31は、空気導入口29に連通してある。更に、コンプレッサハウジング15の内部には、渦巻き状のコンプレッサスクロール流路33が形成されており、このコンプレッサスクロール流路33は、ディフューザ流路31に連通してある。そして、コンプレッサハウジング15の適宜位置には、圧縮された空気を排出するための空気排出口35が形成されており、この空気排出口35は、コンプレッサスクロール流路33に連通してあって、エンジンの吸気マニホールド(図示省略)に接続可能である。
【0022】
図2及び図3に示すように、ベアリングハウジング3のレフトフランジ13には、タービンハウジング37が複数(1つのみ図示)の締結ボルト39及び複数(1つのみ図示)の座金41を介して設けられており、タービンハウジング37の右側には、ベアリングハウジング3のレフトフランジ13が嵌合可能な嵌合凹部43が形成されている。そして、タービンハウジング37内には、排気ガスの圧力エネルギーを利用して回転力(回転トルク)を発生させるタービンインペラ45が軸心(タービンインペラ45の軸心、換言すれば、ロータ軸5の軸心)C周りに回転可能に設けられている。また、タービンインペラ45は、ロータ軸5の左端部に一体的に設けられたタービンホイール47と、このタービンホイール47の外周面に周方向に等間隔に設けられた複数のタービンブレード49とを備えている。
【0023】
タービンハウジング37の適宜位置には、排気ガスを導入するためのガス導入口51が形成されており、このガス導入口51は、エンジンの排気マニホールド(図示省略)に接続可能である。また、タービンハウジング37の内部には、渦巻き状のタービンスクロール流路53が形成されており、このタービンスクロール流路53は、ガス導入口51に連通してある。そして、タービンハウジング37におけるタービンインペラ45の出口側(タービンハウジング37の左側部)には、排気ガスを排出するためのガス排出口55が形成されており、このガス排出口55は、タービンスクロール流路53に連通してある。更に、ガス排出口55は、酸化能を有する触媒57、及び排気ガス中のパティキュレート(粒子状物質)を捕集するフィルタ59に接続可能である。ここで、可変容量型過給機1の運転中に、フィルタ59に所定量のパティキュレートが堆積した時に、フィルタ59の再生動作を実行するための未燃燃料がガス導入口51からタービンハウジング37内に供給(導入)されるようになっている。
【0024】
可変容量型過給機1は、タービンインペラ45側へ供給される排気ガスの流路面積(流量)を可変とする可変ノズルユニット61を装備しており、この可変ノズルユニット61の具体的な構成は、次のようになる。
【0025】
図2に示すように、タービンハウジング37内には、サポートリング(取付リング)63がタービンインペラ45と同心状に配設されており、このサポートリング63の外周縁部は、タービンハウジング37の嵌合凹部43の底面(タービンハウジング37の右側面)とベアリングハウジング3のレフトフランジ13の左側面に押圧挟持されている。また、サポートリング63には、ノズルリング65が複数の連結ピン67を介して一体的かつタービンインペラ45と同心状に設けられており、ノズルリング65には、複数(1つのみ図示)の第1支持穴69が円周方向に等間隔に貫通形成されている。
【0026】
ノズルリング65に対して左右方向に離隔対向した位置には、シュラウドリング71が前述の複数の連結ピン67を介して一体的かつタービンインペラ45と同心状に設けられている。また、シュラウドリング71には、複数(1つのみ図示)の第2支持穴73がノズルリング65の複数の第1支持穴69に整合するように円周方向に等間隔に形成されている。更に、シュラウドリング71は、内周縁側に、複数のタービンブレード49の外縁を覆う筒状のシュラウド部75を有している。なお、複数の連結ピン67は、ノズルリング65の対向面とシュラウドリング71の対向面との間隔を設定する機能を有している。
【0027】
ノズルリング65の対向面とシュラウドリング71の対向面との間には、複数の可変ノズル77が円周方向に等間隔に配設されており、各可変ノズル77は、タービンインペラ45の軸心Cに平行な軸心周りに正逆方向(開閉方向)へ回動可能である。また、各可変ノズル77の右側面(ロータ軸5の軸方向一方側の側面)には、第1ノズル軸79が一体形成されており、各可変ノズル77の第1ノズル軸79は、ノズルリング65の対応する第1支持穴69に回動可能に支持されている。更に、各可変ノズル77の左側面(ロータ軸5の軸方向他方側の側面)には、第2ノズル軸81が第1ノズル軸79と同軸状に一体形成されており、各可変ノズル77の第2ノズル軸81は、シュラウドリング71の対応する第2支持穴73に回動可能に支持されている。
【0028】
ベアリングハウジング3とノズルリング65との間に区画(区画形成)した環状のリンク室83内には、複数の可変ノズル77を正逆方向(開閉方向)へ同期して回動させるためのリンク機構(同期機構)85が配設されている。また、リンク機構85は、特開2009−243431号公報及び特開2009−243300号公報等に示す公知の構成からなるものであって、複数の可変ノズル77を開閉方向へ回動させるモータ又はシリンダ等の回動アクチュエータ(図示省略)に動力伝達機構87を介して接続されている。
【0029】
可変容量型過給機1は、運転停止後に液化した未燃燃料(タービンインペラ45の出口の下流側に配設されるフィルタ59の再生動作を実行するための未燃燃料)がタービンハウジング37の嵌合凹部43の底面(内側面)43fとベアリングハウジング3のレフトフランジ13の左側面との間から漏れることを抑えるシール構造89を備えている。そして、シール構造89の具体的な構成は、次のようになる。
【0030】
図1に示すように、タービンハウジング37の嵌合凹部43の底面43fには、環状の取付溝(環状の取付段部の一例)91が形成されており、タービンハウジング37の取付溝91内には、環状のガスケット93が設けられている。また、ガスケット93の断面形状は、U字形状、V字形状、又はC字形状を呈してあって、ガスケット93の外表面には、二硫化モリブデンからなる被膜95が焼き付けによって形成されている。そして、ガスケット93は、タービンハウジング37の取付溝91の底面(内側面)91fとベアリングハウジング3のレフトフランジ13の左側面とによって押圧挟持(押圧した状態で挟持)されている。ここで、タービンハウジング37の取付溝91の底面及びベアリングハウジング3のレフトフランジ13の左側面は、機械加工を施した機械加工面になっている。
【0031】
なお、シール構造89は、当然の如く、可変容量型過給機1の運転中に排気ガスがタービンハウジング37の嵌合凹部43の底面43fとベアリングハウジング3のレフトフランジ13の左側面との間から漏れることを抑える機能も有している。
【0032】
続いて、本発明の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0033】
ガス導入口51から導入した排気ガスがタービンスクロール流路53を経由してタービンインペラ45の入口側から出口側へ流通することにより、排気ガスの圧力エネルギーを利用して回転力(回転トルク)を発生させて、ロータ軸5及びコンプレッサインペラ23をタービンインペラ45と一体的に回転させることができる。これにより、空気導入口29から導入した空気を圧縮して、ディフューザ流路31及びコンプレッサスクロール流路33を経由して空気排出口35から排出することができ、エンジンに供給される空気を過給(圧縮)することができる。
【0034】
可変容量型過給機1の運転中、エンジン回転数が高回転域にあって、排気ガスの流量が多い場合には、回動アクチュエータによってリンク機構85を作動させつつ、複数の可変ノズル77を正方向(開方向)へ同期して回動させることにより、タービンインペラ45側へ供給される排気ガスのガス流路面積(可変ノズル77のスロート面積)を大きくして、多くの排気ガスを供給する。一方、エンジン回転数が低回転域にあって、排気ガスの流量が少ない場合には、回動アクチュエータによってリンク機構85を作動させつつ、複数の可変ノズル77を逆方向(閉方向)へ同期して回動させることにより、タービンインペラ45側へ供給される排気ガスのガス流路面積を小さくして、排気ガスの流速を高めて、タービンインペラ45の仕事量を十分に確保する。これにより、排気ガスの流量の多少に関係なく、タービンインペラ45によって回転力を十分かつ安定的に発生させることができる。
【0035】
前述の作用の他に、ガスケット93がタービンハウジング37の取付溝91の底面91fとベアリングハウジング3のレフトフランジ13の左側面とによって押圧挟持されているため、タービンハウジング37及びベアリングハウジング3における機械加工面がガスケットシール面(ガスケット93と密着する面)になり、両方のガスケットシール面に対するガスケット93の密着性(シール性)を十分に確保することができる。特に、ガスケット93の外表面に二硫化モリブデンからなる被膜95が形成されているため、両方のガスケットシール面に対するガスケット93の密着性をより十分に確保することができる
タービンハウジング37の取付溝91がサポートリング63の径方向外側に位置しているため、可変容量型過給機1の運転停止後において、タービンハウジング37の嵌合凹部43の底面43fとサポートリング63の外縁部の左側面との間、及びベアリングハウジング3のレフトフランジ13の左側面とサポートリング63の外縁部の右側面との間から侵入した液化した未燃燃料をタービンハウジング37の取付溝91内に一時的に貯えることができる。換言すれば、タービンハウジング37の取付溝91を液化した未燃燃料のバッファとして機能させることができる。
【0036】
従って、本発明の実施形態によれば、両方のガスケットシール面に対するガスケット93の密着性をより十分に確保すると共に、タービンハウジング37の取付溝91を液化した未燃燃料のバッファとして機能させることができるため、タービンハウジング37の嵌合凹部43の底面43fとベアリングハウジング3のレフトフランジ13の左側面との間から液化した未燃燃料が漏れることを高いレベルで抑えることができる。
【0037】
本発明の実施形態の変形例1について図4を参照して説明する。なお、図面に示すとおり、「L」は、左方向、「R」は、右方向である。
【0038】
(実施形態の変形例1)
可変容量型過給機1にシール構造89(図1参照)を備える代わりに、図4に示すようなシール構造97を備えても構わない。具体的には、タービンハウジング37の嵌合凹部43の底面43fに環状の取付溝91(図1参照)が形成される代わりに、ベアリングハウジング3のレフトフランジ13の左側面には、環状の取付段部99が形成されている。また、ベアリングハウジング3の取付段部99内には、前述の環状のガスケット93が設けられており、ガスケット93は、タービンハウジング37の嵌合凹部43の底面43fとベアリングハウジング3の取付段部99の底面(内側面)99fとによって押圧挟持されている。ここで、タービンハウジング37の嵌合凹部43の底面43f及びベアリングハウジング3の取付段部99の底面99fは、機械加工を施した機械加工面になっている。
【0039】
そして、本発明の実施形態の変形例1においても、前述の本発明の実施形態の作用及び効果と同様の効果を奏する。
【0040】
本発明の実施形態の変形例2について図5を参照して説明する。なお、図面に示すとおり、「L」は、左方向、「R」は、右方向である。
【0041】
(実施形態の変形例2)
可変容量型過給機1にシール構造89,97(図1及び図4参照)を備える代わりに、図5に示すようなシール構造101を備えても構わない。具体的には、タービンハウジング37の嵌合凹部43の底面43fに環状の取付溝91が形成される他に、ベアリングハウジング3のレフトフランジ13の左側面には、環状の取付段部99がタービンハウジング37の取付溝91に整合するように形成されている。また、タービンハウジング37の取付溝91内とベアリングハウジング3の取付段部99内に亘って、前述の環状のガスケット93が設けられており、ガスケット93は、タービンハウジング37の取付溝91の底面91fとベアリングハウジング3の取付段部99の底面99fとによって押圧挟持されている。
【0042】
そして、本発明の実施形態の変形例2においても、前述の本発明の実施形態の作用及び効果と同様の効果を奏する。
【0043】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限られるものではなく、種々の態様で実施可能である。また、本発明に包含される権利範囲は、これらの実施形態に限定されないものである。
【符号の説明】
【0044】
1 可変容量型過給機
3 ベアリングハウジング
5 ロータ軸
11 ライトフランジ
13 レフトフランジ
15 コンプレッサハウジング
17 締結ボルト
19 座金
21 嵌合凹部
23 コンプレッサインペラ
37 タービンハウジング
39 締結ボルト
41 座金
43 嵌合凹部
43f 嵌合凹部の底面
45 タービンインペラ
49 タービンブレード
53 タービンスクロール流路
55 ガス排出口
57 触媒
59 フィルタ
61 可変ノズルユニット
65 ノズルリング
71 シュラウドリング
77 可変ノズル
83 リンク室
85 リンク機構
89 シール構造
91 取付溝
91f 取付溝の底面
93 ガスケット
95 被膜
97 シール構造
99 取付段部
99f 取付段部の底面
101 シール構造
図1
図2
図3
図4
図5