(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて、下記の順序に従って説明する。
A.第1実施例:
A1.印刷システムの構成:
A2.ヘッドの構成:
A3.比較例の印刷方法:
A4.実施例の印刷方法:
A5.コンピューターによる印刷処理:
A6.作用、効果:
B.第2実施例:
C.変形例:
【0016】
A.第1実施例:
A1.印刷システムの構成:
以下、インクジェットプリンターを例に挙げ、プリンターとコンピューターが接続された印刷システムについて説明する。
【0017】
図1は第1実施例のプリンター1の構成をコンピューター60とともに示す説明図であり、
図2はプリンター1の一部の斜視図である。外部装置であるコンピューター60から印刷データを受信したプリンター1は、コントローラー10により、各ユニット(搬送ユニット20、キャリッジユニット30、ヘッドユニット40)を制御し、用紙S(印刷媒体)に画像を形成する。また、プリンター1内の状況を検出器群50が監視し、その検出結果に基づいて、コントローラー10は各ユニットを制御する。
【0018】
コントローラー10は、プリンター1の制御を行うための制御ユニットである。インターフェース部11は、コンピューター60とプリンター1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU12は、プリンター1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー13は、CPU12のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。CPU12は、ユニット制御回路14により各ユニットを制御する。
【0019】
搬送ユニット20は、用紙Sを印刷可能な位置に送り込み、印刷時に搬送方向に所定の搬送量で用紙Sを搬送させるためのものである。用紙Sとしては、ここでは、単票紙が用意される。なお、単票紙に限る必要はなく、連続用紙に換えることもできる。キャリッジユニット30は、ヘッドユニット40を前記搬送方向と交差する方向(以下、移動方向という)に移動させるためのものである。ヘッドユニット40は、用紙Sにインクを吐出するためのものであり、複数のヘッドを有する。各ヘッドの下面にはインク吐出部であるノズルが複数設けられている。また、各ノズルに対応付けられたピエゾ素子を駆動することによって、ノズルからインクが吐出される。
【0020】
A2.ヘッドの構成:
図3は、本実施例におけるヘッド構成等を示す説明図である。
図3(a)には、ヘッド上面から透過的にノズル列を視認したときの様子が示されている。
図3(a)に示すように、ヘッドユニット40は、搬送方向下流側に位置する第1ヘッド41と、搬送方向上流側に位置する第2ヘッド42を有する。ここで、搬送方向とは用紙の搬送方向である。各ヘッド41のノズル面には、イエローインクを吐出するイエローノズル列Yと、マゼンタインクを吐出するマゼンタノズル列Mと、シアンインクを吐出するシアンノズル列Cと、ブラックインクを吐出するブラックノズル列Kが形成されている。
【0021】
各ノズル列はノズルを32個ずつ備え、32個のノズルは搬送方向に一定の間隔(ノズルピッチ:k・D)でそれぞれ整列している。ここで、Dは、搬送方向における最小のドットピッチ(つまり、用紙に形成されるドットの最高解像度での間隔)であり、また、kは2以上の整数である。例えば、ノズルピッチが180dpi(1/180インチ)であって、搬送方向の最小ドットピッチが360dpi(1/360インチ)である場合、kは2である。また、図示においては、搬送方向の下流側のノズルから順に小さい番号(ノズル番号:正の整数の番号)を付した(#1〜#32)。第1ヘッド41と第2ヘッド42とは、搬送方向において近接しており、第1ヘッド41の最も上流側のノズル#32と第2ヘッド42の最も下流側のノズル#1との間の搬送方向の間隔は、上記ノズルピッチと一致する。上記ノズルの数や、ノズルピッチの数はあくまでも一例であり、これに限る必要はなく他の数とすることができる。例えば、ノズルの数を180や360としてもよいし、ノズルピッチを360dpiや720dpiとしてもよい。
【0022】
このような構成のプリンター1では、ヘッドユニット40を移動方向(主走査方向)に移動しながらヘッド41、42のノズルからインクを吐出させて画像を形成する画像形成動作と、ヘッドユニット40に対して用紙Sを搬送方向(副走査方向)下流側に搬送させる搬送動作とを交互に繰り返し、用紙S上に画像を印刷する。以下では、1回の画像形成動作を「パス」と呼ぶ。
【0023】
図3(b)には、1回のパスにおけるヘッド41、42毎のノズルの位置関係が示されている。ここでは、各ヘッド41、42から一色のノズル列のみを抜き出して示している。図中では、ノズルピッチを「2D」として示した。図中の1〜32の数字はノズル番号を示す。前述したように、第1ヘッド41の最も上流側のノズル#32と第2ヘッド42の最も下流側のノズル#1との間は上記ノズルピッチと一致することから、
図3(b)に示すように、第1ヘッド41のノズル#1〜#32と第2ヘッド42のノズル#1〜#32とを組み合わせて、1つの大きな「仮想ヘッド」と見立てることができる。この結果、ノズル数が64ある仮想ヘッドを得ることができる。なお、仮想ヘッドに含まれる各ノズルにもノズル番号を付した。この仮想ヘッドのノズル番号は##1〜##64にて示される。この##1〜##64が適用例1に記載した「ノズル列」に相当する。
【0024】
A3.比較例の印刷方法:
本実施例の印刷方法を説明するにあたり、第1比較列および第2比較例をまず説明する。
【0025】
図4は、第1比較例の印刷方法を示す説明図である。
図4(a)には、各パスの搬送量を示した。
図4(b)には、各パスの仮想ヘッド(
図3(b)参照)の位置関係を示した。
図4(c)には、搬送方向に並ぶ各ラスターライン(移動方向に沿うドット列)におけるヘッド使用比率を示した。なお、
図4(a)においては、搬送量は、最小のドットピッチDを単位として示されている。すなわち、搬送量が「1」とあるのは「1D」を示し、「31」とあるのは「31D」を示す。
図4(b)においては、実際はヘッド41に対して用紙Sが搬送方向の下流側に搬送されるが、図中では仮想ヘッドが搬送方向の上流側にずれたものと示している。
図4(a)における各パスの値は、
図4(b)における仮想ノズル列の各パスと上下方向において対応づけられている。
【0026】
図4においては、ノズルピッチを「2D」(
図3(b)参照)とし、ラスターラインの間隔(以下「ノズル間ピッチ」と呼ぶ、搬送方向の印刷解像度に相当)を「1D」とする。また、ノズルピッチに相当する長さに位置するラスターライン数を「ノズル間ピッチ数(=ノズルピッチ/ノズル間ピッチ)」と呼び、ノズル間ピッチ数が2(=2D/1D)となる。なお、図中の1〜32の数字はノズル番号を示す。ノズルのうち、黒丸「×」で示されるノズルが印刷に使用されない「不使用ノズル」である。
【0027】
第1比較例の印刷方法では、印刷開始時に「上端処理」を実施し、その後「通常処理」を実施し、印刷終了時に「下端処理」を実施する。上端処理は、用紙Sの搬送方向下流側の端部である上端部(先端部)を印刷する処理である。通常処理は、前記上端部と後述する下端部を除く用紙Sの搬送方向における中央部を印刷処理である。通常処理の搬送量(図中では仮想ヘッドの移動量)は「31D」である。これは、ノズル列のノズル数が32であることから、32から1を引いた数に対応した搬送量となっている。上端処理の搬送量は通常処理の搬送量よりも短くする。ここでは、上端処理は4パスにて行われており、パス2〜パス4における各搬送量は「1D」となっている。そうすることで、印刷開始時において、媒体に対するヘッドユニット40の飛び出し量を小さくすることができる。すなわち、上端飛び出し量は、図示のように「2D」となる。なお、この上端処理を実施する各ノズルは「不使用ノズル」となる。下端処理は、用紙Sの搬送方向上流側の端部である下端部(後端部)を印刷する処理であり、ここでは上端処理と同様の処理を行うが、図示は省略してある。
【0028】
用紙S上においてラスターラインが形成される搬送方向の位置を、以下「ラスター位置」と呼ぶ。画像を構成するラスターラインに対して、搬送方向下流側のラスター位置から順に小さい番号を付ける。第1比較例の印刷方法では、0番目のラスター位置(L0)が印刷開始位置に相当する。そして、例えば、22番目のラスター位置(L22)には、パス1における第1ヘッド41のノズル#13とパス3における第1ヘッド41のノズル#12が対応づけられる。また、例えば、23番目のラスター位置(L23)には、パス2における第1ヘッド41のノズル#13とパス4における第1ヘッド41のノズル#12が対応づけられる。32番目のラスター位置(L32)には、パス1における第1ヘッド41のノズル#18とパス3における第1ヘッド41のノズル#17が対応づけられ、パス5における第1ヘッド41のノズル#1は不使用ノズルとなっている。
【0029】
さらに、例えば、62番目のラスター位置(L62)には、パス3における第1ヘッド41のノズル#32とパス5における第1ヘッド41のノズル#16が対応づけられ、パス1における第1ヘッド41のノズル#1は不使用ノズルとなっている。63番目のラスター位置(L63)には、パス2における第2ヘッド42のノズル#1とパス4における第1ヘッド41のノズル#32が対応づけられ、パス6における第1ヘッド41のノズル#1は不使用ノズルとなっている。64番目のラスター位置(L64)には、パス3における第2ヘッド42のノズル#1とパス5における第1ヘッド41のノズル#17が対応づけられ、パス1における第2ヘッド42のノズル#2は不使用ノズルとなっている。
【0030】
このように、第1比較例の印刷方法では、1つのラスターラインが2つのノズルによって形成される、すなわち2回のパスによって形成される印刷方法である。なお、
図4(b)における各ラスター位置は、
図4(c)におけるヘッド使用比率の各行と紙面の左右方向において対応づけられている。
図4(c)に示すように、62番目のラスター位置(L62)までは、第1ヘッド41の使用比率は100%であり、第2ヘッド42の使用比率は0%であるのに対して、63番目のラスター位置(L63)以降は、第1ヘッド41の使用比率は50%であり、第2ヘッド42の使用比率は50%である。
【0031】
図5は、第2比較例の印刷方法を示す説明図である。
図4と同様に、
図5(a)には各パスの搬送量を示し、
図5(b)には各パスの仮想ヘッドの位置関係を示し、
図4(c)にはヘッド使用比率を示した。この第2比較例の印刷方法においては、第1比較例と同様に、ノズルピッチを「2D」とし、ノズル間ピッチを「1D」とする。
【0032】
第2比較例の印刷方法では、「上端処理」を実施することなく、直ちに「通常処理」を実施する。印刷終了時においても「下端処理」を実施しない。通常処理の搬送量(図中では仮想ヘッドの移動量)は「31D」である。すなわち、パス2における搬送量は「31D」であり、パス3における搬送量は「31D」であり、パス4おける搬送量は「31D」であり、このようにパス毎に「31D」だけ順次搬送される。第2比較例の印刷方法では、0番目のラスター位置(L0)が印刷開始位置に相当する。このため、印刷開始時において、媒体に対するヘッドユニット40の飛び出し量は大きい。すなわち、上端飛び出し量は「93D」となる。
図5(c)に示すように、印刷開始位置(L0)以降のヘッド使用比率は、第1ヘッド41、第2ヘッド42共に50%となる。
【0033】
前述した第1比較例の印刷方法では、0番目のラスター位置(L0)から62番目のラスター位置(L62)までといった広い区間、ヘッド使用比率が第1ヘッド41に偏っている。第1ヘッド41と第2ヘッド42との間に、製造上のバラツキに起因してインク吐出量等の性能バラツキが発生する虞があり、こうした場合に一方のヘッド41(42)に使用比率が偏ると、通常処理部の63番目のラスター位置(L63)以降における使用比率が同一である場合に比べて、画質(濃度、色差)上の異同が発生した。したがって、第1比較例の印刷方法では、印刷開始位置以降の印刷可能領域において、第1ヘッド41と第2ヘッド42との間の使用比率を同一にするという課題があった。
【0034】
一方、前述した第2比較例の印刷方法では、上端飛び出し量が「93D」と大きいことから、次のような不具合が発生した。
【0035】
図6は、第2比較例において第1および第2ヘッド41、42に対して用紙Sが搬送される様子を示す説明図である。この
図6は搬送ユニット20等の断面を表している。搬送ユニット20は、ヘッドユニット40よりも搬送方向上流側に位置する搬送ローラー21と、図示しない他のローラーとを有する。第2比較例の印刷方法では、図示するように、用紙Sの搬送方向下流側の上端S1よりも大きく飛び出している。この上端飛び出し量は、前述したように「93D」となる。上端飛び出し量が大きいほど、用紙Sの上端S1側の姿勢によって、第1および第2ヘッド41、42に上端S1が当たりヘッドこすれが生じ、画質劣化を引き起こす虞がある。したがって、第2比較例の印刷方法では、上端飛び出し量を抑制するという課題があった。
【0036】
第1比較例における第1ヘッド41と第2ヘッド42との間の使用比率を同一にするという課題と、第2比較例における上端飛び出し量を抑制するという課題との双方を解決するのが本実施例の印刷方法である。以下、本実施例の印刷方法について説明する。
【0037】
A4.実施例の印刷方法:
図7および
図8は、本実施例の印刷方法を示す説明図である。
図4と同様に、
図7(a)には各パスの搬送量を示し、
図7(b)には各パスの仮想ヘッドの位置関係を示し、
図7(c)にはヘッド使用比率を示した。
図8(b)は
図7(b)の続きであり、
図8(c)は
図7(c)の続きである。本実施例の印刷方法においては、第1比較例と同様に、ノズルピッチを「2D」とし、ノズル間ピッチを「1D」とする。また、第1比較例と同様に、印刷開始時に「上端処理」を実施し、その後「通常処理」を実施し、印刷終了時に「下端処理」を実施する。下端処理については、第1比較例と同様に詳しく説明しない。そして、通常処理のヘッドユニット40の搬送量を第1比較例と同様に「31D」とし、上端処理のヘッドユニット40の搬送量を第1比較例と相違するものとした。
【0038】
第1比較例では、
図4に示すように、上端処理のヘッドユニット40の搬送量を、各パスともに通常処理時よりも短い「1D」とした。すなわち、パス2〜パス4における各搬送量は「1D」となっている。これに対して、本実施例の印刷方法では、上端処理のヘッドユニット40の搬送量を、パス2では通常処理時の搬送量よりも小さい「1D」とし、パス3では通常処理時の搬送量の2倍よりも大きい「63D」とし、パス4では通常処理時の搬送量よりも小さい「1D」とした。すなわち、大移動量は、通常処理時の搬送量の2倍に1Dを加えた大きさとした。なお、パス2における搬送量が適用例1に記載された「小移動量」に相当し、パス3における搬送量が適用例1に記載された「大移動量」に相当する。
【0039】
本実施例の印刷方法では、0番目のラスター位置(L0)が印刷開始位置に相当する。そして、例えば、22番目のラスター位置(L22)には、パス1における第2ヘッド42のノズル#12とパス3における第1ヘッド41のノズル#12が対応づけられる。また、例えば、23番目のラスター位置(L23)には、パス2における第2ヘッド42のノズル#12とパス4における第1ヘッド41のノズル#12が対応づけられる。
【0040】
さらに、32番目のラスター位置(L32)には、パス1における第2ヘッド42のノズル#17とパス3における第1ヘッド41のノズル#17が対応づけられ、パス6における第1ヘッド41のノズル#1は不使用ノズルとなっている。パス6における第1ヘッド41のノズル#1を不使用ノズルとして選択したのは、通常処理における使用ノズルが規制されているためである。
【0041】
通常処理では、各パスは同一の印刷方式で印刷される。ここで、印刷方式とは、各パスにおける搬送動作の際の搬送量や、使用ノズルで定まる印刷の方式である。本実施例の印刷方法では、前述したように搬送量は「31D」であり、各パス一定である。使用ノズルは、第1ヘッド41においては#2〜#32とし、第2ヘッド42においては#1〜#31と定められている。換言すれば、第1ヘッド41においてはノズル#1が不使用ノズルであり、第2ヘッド42においてはノズル#32が不使用ノズルである。このため、L32では、パス6の最初のラスター位置が吐出されない。
【0042】
33番目のラスター位置(L33)には、パス2における第2ヘッド42のノズル#17とパス4における第1ヘッド41のノズル#17が対応づけられる。34番目のラスター位置(L34)には、パス3における第1ヘッド41のノズル#18とパス6における第1ヘッド41のノズル#2が対応づけられ、パス1における第2ヘッド42のノズル#18は不使用ノズルとなっている。35番目のラスター位置(L35)には、パス2における第2ヘッド42のノズル#18とパス4における第1ヘッド41のノズル#18が対応づけられる。36番目のラスター位置(L36)には、パス3における第1ヘッド41のノズル#19とパス6における第1ヘッド41のノズル#3が対応づけられ、パス1における第2ヘッド42のノズル#19は不使用ノズルとなっている。L34において、パス1における第2ヘッド42のノズル#18は不使用ノズルとなり、L36において、パス1における第2ヘッド42のノズル#19は不使用ノズルとなっているのは、パス5以降の通常処理部の使用ノズル数を一定にするため、パス1〜パス4までの上端処理部によって使用ノズルの調整を行っているためである。
【0043】
図7(c)に示すように、印刷開始位置(L0)以降のヘッド使用比率は、ほとんどのラスター位置で第1ヘッド41、第2ヘッド42共に50%となる。但し、一部のラスター位置(例えばL34、L36)で、第1ヘッド41の使用比率が100%、第2ヘッド42の使用比率が0%というように、ヘッド使用比率が第1ヘッド41に偏っている。このヘッド使用比率が偏っているラスター位置については、
図7(c)、
図8(c)中、黒ベタで囲われた白抜き文字で示した。
【0044】
A5.コンピューターによる印刷処理:
コンピューター60には、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換し、印刷データをプリンター1に出力するためのプログラム(プリンタードライバー)がインストールされている。プリンタードライバーは、CD−ROMなどの記録媒体(コンピューターが読み取り可能な記録媒体)に記録されていたり、インターネットを介してコンピューターにダウンロード可能であったりする。コンピューター60は、メモリーに記憶されたプリンタードライバーに従って、コンピューター60のハードウェア資源を利用しつつ、以下の印刷処理を実行する。
【0045】
図9は、プリンタードライバーに従う印刷処理を示すフローチャートである。印刷処理は、操作者がキーボード等を用いて、所定の画像の印刷指示操作を行うことで、開始される。コンピューター60は、まず、解像度変換処理を実行する(ステップS110)。解像度変換処理は、アプリケーションプログラムから出力された画像データを、用紙Sに印刷する際の解像度に変換する処理である。なお、解像度変換処理後の画像データは、RGB色空間により表される多階調(例えば256階調)のRGBデータである。画像データは、印刷画像を構成する画素に関する画素データから構成される。
【0046】
次に、コンピューター60は、色変換処理を実行する(ステップS120)。色変換処理は、プリンター1にて印刷可能なように、プリンター1が有するインクの色に応じて、RGBデータをCMYK色空間により表されるCMYKデータに変換する処理である。その後、コンピューター60は、ハーフトーン処理を実行する(ステップS130)。ハーフトーン処理は、高階調数のデータを、プリンター1が形成可能な階調数のデータに変換する処理である。例えば、ハーフトーン処理により、256階調を示すデータが、4階調を示す2ビットデータに変換される。ハーフトーン処理後の画素データは、画素領域に形成するドットに関するデータである。例えば、4階調の画素データであれば、「大ドット形成」「中ドット形成」「小ドット形成」「ドット無し」の何れかが示される。
【0047】
最後に、コンピューター60は、ノズル割り付け処理を実行する(ステップS140)。ノズル割り付け処理は、マトリクス状に配置された画素データから構成される画像データを、プリンター1に送信すべきデータ順に並び替える処理である。即ち、ノズル割り付け処理では、パスごとに、各ノズルに割り付ける画素データが決定される(詳細は後述)。そして、プリンタードライバーは、これらの処理を経て作成された印刷データをプリンター1に送信する(ステップS150)。プリンター1は受信した印刷データに基づき、印刷を実行する。
【0048】
図10は、ステップS140で実行されるノズル割り付け処理を示すフローチャートである。図示するように、処理が開始されると、コンピューター60は、上端処理の仮想ヘッド情報テーブルを取得する処理を行う(ステップS141)。仮想ヘッド情報テーブルは、印刷に関するパラメーターが記憶されたテーブルであり、プリンタードライバーのインストールの際にコンピューター60のハードディスクに記憶されている。ステップS141では、上端処理についてのパラメーターが記憶された仮想ヘッド情報テーブルをハードディスクから読み出してメモリーに格納する。
【0049】
図11は、仮想ヘッド情報テーブルの一例を示す説明図である。
図11(a)には上端処理の仮想ヘッド情報テーブルTBL1を示し、
図11(b)には通常処理の仮想ヘッド情報テーブルTBL2を示した。各テーブルTBL1、TBL2には、搬送量と、開始ノズルおよび終了ノズルと、開始ラスター位置および終了ラスター位置とが記憶されている。「搬送量」はパス2以降の用紙搬送量をパス毎に順に示す。「開始ノズル」及び「終了ノズル」は、印刷に使用可能なノズルの範囲を示し、「開始ラスター位置」は、各処理(例えば上端処理など)の開始パスにおいて仮想ヘッドのノズル##1に対応付けられるラスター位置であり、「終了ラスター位置」は、各処理の終了パスにおいてノズル##1に対応付けられるラスター位置である。これらの値は、印刷モードや用紙サイズによって変動する。
図10のステップS141では、設定された印刷モードや用紙サイズに適した上端処理の仮想ヘッド情報テーブルTBL1をプリンタードライバーから読み出す。
【0050】
図11(a)に例示した上端処理の仮想ヘッド情報テーブルTBL1および
図11(b)に例示した通常処理の仮想ヘッド情報テーブルTBL2は、
図7に示した本実施例の印刷方法を規定したものである。
【0051】
図10に戻って、ステップS141の処理に続いて、コンピューター60は、上端処理に該当するパスごとに印刷に使用する画素データを画像データの中から抽出し、各ノズルに割り付ける順番に画素データを並べ替える処理を行う(ステップS142)。詳しくは、コンピューター60は、上端処理に該当するパスごとに、仮想ヘッドの各ノズル##1〜##64が印刷に使用するノズルであるか否かを決定し、さらに、印刷に使用するノズルに、そのノズルがドットを形成すべきラスター位置を対応付ける処理を行う。このラスター位置の対応づけは、ステップS141で取得した上端処理の仮想ヘッド情報テーブルTBL1を用いて行う。この結果、
図7に示した本実施例の印刷方法における上端処理を実現可能なように印刷データの画素データの並べ替えが行われる。
【0052】
続いて、コンピューター60は、通常処理の仮想ヘッド情報テーブルを取得する処理を行う(ステップS143)。詳しくは、通常処理についてのパラメーターが記憶された仮想ヘッド情報テーブルをハードディスクから読み出してメモリーに格納する。通常処理の仮想ヘッド情報テーブルTBL2は、具体的には
図11(b)に示すものである。
【0053】
続いて、通常処理に該当するパスごとに印刷に使用する画素データを画像データの中から抽出し、各ノズルに割り付ける順番に画素データを並べ替える処理を行う(ステップS144)。詳しくは、コンピューター60は、通常処理に該当するパスごとに、仮想ヘッドの各ノズル##1〜##64が印刷に使用するノズルであるか否かを決定し、さらに、印刷に使用するノズルに、そのノズルがドットを形成すべきラスター位置を対応付ける処理を行う。このラスター位置の対応づけは、ステップS143で取得した通常処理の仮想ヘッド情報テーブルTBL2を用いて行う。この結果、
図7に示した本実施例の印刷方法における通常処理を実現可能なように印刷データの画素データの並べ替えが行われる。
【0054】
ステップS144に続いて、コンピューター60は、下端処理の仮想ヘッド情報テーブルを取得する処理を行い(ステップS145)、下端処理についての抽出・並べ替え処理を行う(ステップS146)。ステップS145およびステップS146の処理は、ステップS141およびS142の上端処理についての処理を下端処理に適用したもので、詳しい説明は省略する。ステップS146の実行後、コンピューター60は、処理を「リターン」に進めて、このノズル割り付け処理のルーチンを一旦終了する。
【0055】
なお、本実施例では、ノズル割り付け処理をステップS130によるハーフトーン処理後に実行する構成としたが、これに換えて、ハーフトーン処理の最中に併せて実行する構成としてもよい。
【0056】
A6.作用、効果:
以上詳述してきたように、本実施例のプリンター1では、印刷可能領域において、一部のラスター位置(
図7:L33、L35)を除く大部分のラスター位置で、第1ヘッド41と第2ヘッド42の使用比率を50:50にすることができる。その上、用紙Sの上端S1からのノズル列の飛び出し量を仮想ノズル列の長さ分(=64D)に抑えることができる。使用ノズルが一方のヘッドに片寄ることを抑制することで、常に同一の画質での印刷が可能となり画質の向上を図ることができ、飛び出し量を抑えることで、ヘッド41、42が用紙Sの上端S1で損傷することを防止することができる。
【0057】
B.第2実施例:
次に、第2実施例について説明する。第2実施例おけるプリンターは、第1実施例におけるプリンター1と同一のハードウェア構成を備え、プリンタードライバーに従って実行される印刷処理によって実現される印刷方法が第1実施例と相違する。なお、第1実施例と同一の構成要素については、本実施例でも同一の符合を付して、以下の説明を行う。
【0058】
図12および
図13は、第2実施例の印刷方法を示す説明図である。
図7と同様に、
図12(a)には各パスの搬送量を示し、
図12(b)には各パスの仮想ヘッドの位置関係を示し、
図12(c)にはヘッド使用比率を示した。
図13(b)は
図12(b)の続きであり、
図13(c)は
図12(c)の続きである。本実施例の印刷方法においては、第1実施例と同様に、ノズルピッチを「2D」とし、ノズル間ピッチを「1D」とする。本実施例の印刷方法では、印刷開始時に「上端処理」を実施し、上端処理の後に「移行処理」を実施し、移行処理の後に「通常処理」を実施し、通常処理の後に「移行処理」を実施し、印刷終了時に「下端処理」を実施する。すなわち、本実施例の印刷方法は、第1実施例と比べると、第1実施例では上端処理(パス1〜パス4)に続いて通常処理(パス5〜)が実施される(
図7)のに対して、本実施例では上端処理(パス1〜パス4)と通常処理(パス6〜)の間に移行処理(パス5)が設けられている点で相違する。また、通常処理と下端処理との間に移行処理が設けられている点で相違する。
【0059】
本実施例における上端処理は、第1実施例における上端処理と同一である。すなわち、ヘッドユニット40の搬送量をパス2では「1D」とし、パス3では「63D」とし、パス4では「1D」とした。
【0060】
通常処理では、前述したように各パスは同一の印刷方式で印刷される。本実施例の印刷方法では、第1実施例と同様に、ヘッドユニット40の搬送量を「31D」とし、使用ノズルを、第1ヘッド41においては#2〜#32に第2ヘッド42においては#1〜#31に定めている。
【0061】
移行処理は、上端処理と通常処理の間のパス5で実施される。移行処理では、ヘッドユニット40の搬送量を「31D」とし、使用ノズルの範囲を通常処理時の使用ノズルの範囲と相違するものとした。すなわち、移行処理では、使用ノズルを、第1ヘッド41においては#17〜#32に、第2ヘッド42においては#1〜#31に定めている。
【0062】
上端処理と通常処理の間に移行処理を設けた結果、例えば、34番目のラスター位置(L34)には、パス1における第2ヘッド42のノズル#18とパス3における第1ヘッド41のノズル#18とが対応づけられ、パス6における第1ヘッド41のノズル#2は不使用ノズルとなる。36番目のラスター位置(L36)には、パス1における第2ヘッド42のノズル#19とパス3における第1ヘッド41のノズル#19とが対応づけられ、パス6における第1ヘッド41のノズル#3は不使用ノズルとなる。第1実施例とは異なり、パス1における第2ヘッド42のノズル#18以降の不使用ノズルが、使用ノズルと変わっているのは、移行処理部を5パス目に設けることで、上端処理部の使用ノズルを調整できたためである。
【0063】
第1実施例では、一部のラスター位置(例えば前述したL33、L35)で、第1ヘッド41の使用比率が100%、第2ヘッド42の使用比率が0%というように、ヘッド使用比率が第1ヘッド41に偏っている。これに対して、
図12(c)に示すように、L33、L35を含む全てのラスター位置で第1ヘッド41、第2ヘッド42共に50%となる。これは、上端処理と通常処理の間に移行処理を設け、移行処理における使用ノズル範囲を通常処理と変更することで、第1ヘッド41と第2ヘッド42との使用比率の調整が図られたためである。なお、通常処理と下端処理の間にも移行処理が設けられており、この調整が図られている。
【0064】
本実施例では、
図12および
図13に示した印刷方法を実現すべく、コンピューター60によってプリンタードライバーに従う印刷処理を実行する。本実施例における印刷処理は、第1実施例の印刷処理(
図9)と比べて、
図9のステップS140で実行されるノズル割り付け処理の構成が相違し、その他のステップは同一である。
【0065】
図14は、第2実施例におけるノズル割り付け処理を示すフローチャートである。第2実施例におけるノズル割り付け処理は、第1実施例におけるノズル割り付け処理(
図10)と比べて、上端処理についてのステップS141、S142の処理と、通常処理についてのステップS143、S144の処理と、下端処理についてのステップS145、S146の処理とを備える点で一致する。そして、本実施例のノズル割り付け処理は、ステップS142とステップS143の間に、移行処理についてのステップS201、S202を備える点で、第1実施例と相違する。
【0066】
ステップS201では、コンピューター60は、通常処理の仮想ヘッド情報テーブルを取得する処理を行い、続くステップS202では、コンピューター60は、通常処理に該当するパスごとに印刷に使用する画素データを画像データの中から抽出し、各ノズルに割り付ける順番に画素データを並べ替える処理を行う。
【0067】
図15は、第2実施例における仮想ヘッド情報テーブルの一例を示す説明図である。
図15(a)に示す上端処理の仮想ヘッド情報テーブルTBL11の内容は、第1実施例における上端処理の仮想ヘッド情報テーブルTBL1(
図11(a))と同一である。
図15(c)に示す通常処理の仮想ヘッド情報テーブルTBL13は、第1実施例における通常処理の仮想ヘッド情報テーブルTBL1(
図11(c))と比べて、開始ラスター位置および終了ラスター位置が相違する。
【0068】
図15(b)に示す移行処理の仮想ヘッド情報テーブルTBL12は、第2実施例に特有のもので、移行処理の際の搬送量、開始ノズル、終了ノズル、開始ラスター位置、および終了ラスター位置を示す。この移行処理の仮想ヘッド情報テーブルTBL12は、
図14のステップS201による処理によって取得される。コンピューター60は、
図15の各仮想ヘッド情報テーブルTBL11〜TBL13を取得しながら、
図14のノズル割り付け処理を実行することによって、
図12および
図13に示した印刷方法を実現する。
【0069】
以上詳述してきたように、第2実施例のプリンターでは、印刷可能領域における全てのラスター位置で、第1ヘッド41と第2ヘッド42の使用比率を50:50にすることができる。その上、第1実施例と同様に、用紙Sの上端S1からのノズル列の飛び出し量を仮想ノズル列の長さ分(=64D)に抑えることができる。したがって、第2実施例のプリンターは、第1実施例と同様に、画質の向上と、ヘッドの損傷の防止とを図ることができる。
【0070】
C.変形例:
この発明は前記第1、第2実施例やその変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0071】
・変形例1:
前記第1および第2実施例では、プリンタードライバーをコンピューター60側に設けて、プリンター1の制御装置として本発明を実現し、あるいはコンピュータープログラムとして本発明を実現していたが、これに換えて、プリンタードライバーをプリンター1側に設けるようにして、プリンターである印刷装置として本発明を構成することもできる。また、プリンタードライバーとして行っていた機能の一部または全部を、コンピューター60にインストールしたソフトウェアとしてのRIP(Raster image processor)が行う構成とすることもできる。また、コンピューター60とプリンター1の間に接続したハードウェアとしてのRIPが行う構成としてもよい。
【0072】
・変形例2:
前記第1および第2実施例では、上端処理において大移動量を63Dとしたが、これに換えて、64D(=仮想ノズル列の長さ)としてもよい。さらには、大移動量を64を上回る大きさとしてもよい。すなわち、大移動量は、通常処理における搬送量(=31D)の2倍より大きければ、いずれの大きさとすることもできる。また、通常処理における搬送量は「31D」に限る必要もなく、ノズルピッチやノズル間ピッチ等に応じて変わる各種の大きさとすることもできる。
【0073】
・変形例3:
前記第1および第2実施例では、上端処理における搬送量を、パス2が「1D」、パス3が「63D」、パス4が「1D」とすることで、小移動量、大移動量、小移動量と変化する構成としたが、本発明はこれに限られない。小移動量と大移動量が混在する構成であればいずれの順とすることもできる。さらに、本発明は、上端処理における搬送量に特徴を持つ構成としたが、これに替えて、本発明の上端処理を下端処理にそのまま適用した構成とすることができる。すなわち、下端処理における移動動作を、通常処理における一回当たりのノズル列の相対移動量よりも小さい小移動量と前記相対移動量の2倍よりも大きい大移動量とが混在する移動量により行うものとしてもよい。
【0074】
・変形例4:
前記第1および第2実施例では、2つのヘッドの各ノズル列を組み合わせることによって得られた仮想的なノズル列を本発明における「ノズル列」としたが、これに換えて、1つの実ノズル列を本発明における「ノズル列」とすることもできる。また、仮想ノズル列は、2つのヘッドの各ノズル列が搬送方向において重複しない構成としたが、これに換えて、一部分で重なる構成としてもよい。さらには、2つのヘッドの各ノズル列が搬送方向においてノズルピッチを上回る距離だけ離れた構成としてもよい。さらに、仮想ノズル列は、3つ以上の数のヘッドの各ノズル列の組合せとすることもできる。
【0075】
・変形例5:
前記第1および第2実施例では、プリンターが有する印刷ヘッドのノズルからインクを吐出させるためのインクの吐出方式としては、ピエゾ素子の駆動によるものとしたが、本発明はこれに限らない。例えば、発熱素子を用いてノズル内に気泡を発生させ該気泡によりインクを吐出させるサーマル方式等、種々の方式とすることができる。
【0076】
・変形例6:
前記実施例および各変形例において、ソフトウェアによって実現した機能は、ハードウェア、例えばディスクリートな電子回路によって実現するものとしてもよい。
【0077】
なお、前述した各実施例および各変形例における構成要素の中の、独立請求項で記載された要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。さらに、独立請求項で記載された各形態の有する複数の構成要素はすべてが必須のものではなく、適宜、前記複数の構成要素の一部の構成要素について、その変更、削除、新たな他の構成要素との差し替え、限定内容の一部削除を行うことも可能である。