(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記船外機の推進方向を切り換えるためのリモートコントロールレバーのシフト位置と、前記推進方向検出手段により検出された推進方向とが一致するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によりシフト位置と推進方向とが一致しないと判定された場合に、前記船外機のエンジンの駆動の伝達を遮断する遮断手段と、を有することを特徴とする請求項1または2に記載の船外機のシフト制御装置。
前記船外機の推進方向を切り換えるためのリモートコントロールレバーのシフト位置と、前記推進方向検出手段により検出された推進方向とが一致するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によりシフト位置と推進方向とが一致しないと判定された場合に、前記船外機のエンジン回転数を所定のエンジン回転数以上にならないように制御するエンジン回転数制御手段と、を有することを特徴とする請求項1または2に記載の船外機のシフト制御装置。
前記ローテーション切換手段は、入力装置または選択装置を介して操船者により入力される、前記船外機をレギュラローテーション用またはカウンタローテーション用として駆動させるかを示すローテーション情報に基づいてローテーションを電気的に切り換えることを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載の船外機のシフト制御装置。
前記船外機の推進方向を切り換えるためのリモートコントロールレバーのシフト位置と、前記推進方向検出手段により検出された推進方向とが一致するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によりシフト位置と推進方向とが一致しないと判定された場合に、シフト位置と推進方向とが異なることを報知する報知手段と、を有することを特徴とする請求項1または2に記載の船外機のシフト制御装置。
前記船外機の推進方向を切り換えるためのリモートコントロールレバーのシフト位置と、前記推進方向検出手段により検出された推進方向とが一致するか否かを判定する判定手段を有し、
前記ローテーション切換手段は、前記判定手段によりシフト位置と推進方向とが一致しないと判定された場合に、前記船外機をレギュラローテーション用と駆動させるかカウンタローテーション用として駆動させるかを電気的に切り換えることを特徴とする請求項1または2に記載の船外機のシフト制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
図1は、船舶を斜め後方から見た斜視図である。
図1に示すように、船舶1の船体2後部に位置するトランサム2aには、船外機10としてレギュラローテーション用の船外機10aとカウンタローテーション用の船外機10bがそれぞれブラケット装置3により取り付けられる。ここでは、2つの船外機10a、10bを用いているが、3つ以上の船外機を用いてもよい。
船体2の前側には操舵室4が形成されている。操舵室4には、前方にステアリングハンドル5が配置され、例えば側方にはリモートコントロールレバー6を備えたリモートコントロールボックス7が配置される。リモートコントロールレバー6は、スロットルレバーとシフトレバーとを兼ねたレバーである。
【0012】
本実施形態のレギュラローテーション用の船外機10aとカウンタローテーション用の船外機10bとは、プロペラ以外の構成が同一である。したがって、船外機10a、10bの後述する推進ユニットがそれぞれ同一であるため、1種類のみの推進ユニットを製造および在庫すればよく部品管理が容易である。なお、レギュラローテーション用の船外機10aにはレギュラローテーション用のプロペラ19aが取り付けられ、カウンタローテーション用の船外機10bにはカウンタローテーション用のプロペラ19bが取り付けられる。ここでは、レギュラローテーション用のプロペラ19aが右回転することで船外機10aが前進し、カウンタローテーション用のプロペラ19bが左回転することで船外機10bが前進する場合について説明する。
【0013】
図2は、船体2に取り付けられる船外機10の左側面図である。ここでは、レギュラローテーション用の船外機10aとカウンタローテーション用の船外機10bとのうち、代表してレギュラローテーション用の船外機10aを取り上げて主に説明する。なお、以下の各図では必要に応じて前進方向をFr、後進方向をRrで示している。
図2に示すように、船外機10aはエンジンホルダ11を備え、エンジンホルダ11の上方にエンジン(船外機用の内燃機関)12が設置される。エンジン12は、例えば水冷4サイクル四気筒エンジンであり、クランクシャフト13を略垂直に配置したバーティカル(縦)型のエンジンである。エンジンホルダ11の下方にはオイルパン14が配置される。船外機10のエンジン12、エンジンホルダ11及びオイルパン14の周囲はエンジンカバー15によって覆われる。
【0014】
オイルパン14の下部にはドライブシャフトハウジング16が設置される。エンジンホルダ11、オイルパン14及びドライブシャフトハウジング16内にはドライブシャフト17が略垂直に配置される。ドライブシャフト17は、上端部がクランクシャフト13の下端部に連結され、下端部がドライブシャフトハウジング16の下部に設けられた推進ユニット18(ギアケース)内まで延出している。推進ユニット18の後部にはプロペラ19aが配置される。オイルパン14及びドライブシャフトハウジング16の前方にはシフトロッド20が略垂直に配置される。シフトロッド20は、上端部がエンジン12に隣接して配置された電動シフト装置21に連結され、下端部が推進ユニット18内まで延出している。
【0015】
図3は、推進ユニット18の断面図である。
推進ユニット18内には、プロペラシャフト22が前後方向に沿って回転可能に支持される。ドライブシャフト17の下側には、前後一対の前側ギア23及び後側ギア24が、プロペラシャフト22と同心かつ遊嵌状態でそれぞれ回転可能に支持される。前側ギア23及び後側ギア24は、ドライブシャフト17の下端に固定されたベベルギア25と常時噛合する。前側ギア23と後側ギア24との間にはドッグクラッチ26が配置される。
【0016】
ドッグクラッチ26は概略中空円筒状を呈し、プロペラシャフト22と常に一体で回転する。ドッグクラッチ26は、プロペラシャフト22に対してその軸方向に沿って所定ストロークスライド可能である。また、ドッグクラッチ26は、
図3に示すニュートラル状態位置から前側にスライドすることで前側ギア23に係合し前側ギア23と一体で回転し、後側にスライドすることで後側ギア24に係合し後側ギア24と一体で回転する。
【0017】
また、シフトロッド20の下端部には、カムとしての図示しないシフトヨークが一体的に突設されている。シフトロッド20は、シフトヨークを介してプロペラシャフト22と同軸方向に配置されたシフトスライダ27に係合している。シフトロッド20が軸回りに左右に回転することで、シフトヨークがシフトスライダ27を押圧し、シフトスライダ27は前後にスライドする。ここでは、シフトロッド20は、ニュートラル状態位置から軸回りに左回転することでシフトスライダ27が前側にスライドし、右回転することでシフトスライダ27が後側にスライドする。シフトスライダ27は、プロペラシャフト22内を軸方向に貫通して配置されたコネクタロッド28を介して、ドッグクラッチ26に連結されている。したがって、ドッグクラッチ26はシフトスライダ27の前後のスライドに連動して前後にスライドする。
【0018】
このような推進ユニット18の構成において、電動シフト装置21が船外機10aのシフトを切り換える動作について説明する。
電動シフト装置21がシフトロッド20をニュートラル状態位置から左回転させて、シフトスライダ27およびコネクタロッド28を前側へスライドさせることにより、ドッグクラッチ26が前側ギア23に係合する。この場合、ドライブシャフト17の回転は、ベベルギア25、前側ギア23およびドッグクラッチ26を介してプロペラシャフト22へ伝達されることで、プロペラシャフト22に軸着されたプロペラ19aが右回転し、船外機10aは前進する。
逆に、電動シフト装置21がシフトロッド20をニュートラル状態位置から右回転させて、シフトスライダ27およびコネクタロッド28を後側へスライドさせることにより、ドッグクラッチ26が後側ギア24に係合する。この場合、ドライブシャフト17の回転は、ベベルギア25、後側ギア24およびドッグクラッチ26を介してプロペラシャフト22へ伝達されることで、プロペラシャフト22に軸着されたプロペラ19aが左回転し、船外機10aは後進する。
【0019】
なお、カウンタローテーション用の船外機10bの場合、上述したようにカウンタローテーション用の船外機10bは左回転することで船外機10bが前進するカウンタローテーション用のプロペラ19bが取り付けられている。
したがって、カウンタローテーション用の船外機10bの場合、電動シフト装置21がシフトロッド20をニュートラル状態位置から右回転させて、シフトスライダ27およびコネクタロッド28を後側へスライドさせることにより、ドッグクラッチ26が後側ギア24に係合する。この場合、ドライブシャフト17の回転は、ベベルギア25、後側ギア24およびドッグクラッチ26を介してプロペラシャフト22へ伝達されることで、プロペラシャフト22に軸着されたプロペラ19bが左回転し、船外機10bは前進する。
逆に、電動シフト装置21がシフトロッド20をニュートラル状態位置から左回転させて、シフトスライダ27およびコネクタロッド28を前側へスライドさせることにより、ドッグクラッチ26が前側ギア23に係合する。この場合、ドライブシャフト17の回転は、ベベルギア25、前側ギア23およびドッグクラッチ26を介してプロペラシャフト22へ伝達されることで、プロペラシャフト22に軸着されたプロペラ19bが右回転し、船外機10bは後進する。
【0020】
図2に戻り、更に船外機10aの構成について説明する。ブラケット装置3は、エンジンホルダ11、エンジン12、オイルパン14、ドライブシャフトハウジング16および推進ユニット18、プロペラ19aなどを含む船外機本体を船体2に装着させる。ブラケット装置3は、左右一対のクランプブラケット29とスイベルブラケット30とを有している。クランプブラケット29はトランサム2aに固定される。スイベルブラケット30は左右一対のクランプブラケット29間に架設されたチルト軸31を介して上下方向に回転可能に軸支される。スイベルブラケット30内にはパイロットシャフト32が左右に回動可能に軸支される。パイロットシャフト32の上下端にはそれぞれアッパマウントブラケット33及びロアーマウントブラケット34が設けられる。アッパマウントブラケット33にはステアリングブラケット35が設けられ、例えば図示しないケーブル等によってステアリングハンドル5に連結される。
したがって、船外機本体は、クランプブラケット29に対してパイロットシャフト32を中心に左右に操舵可能になると共に、チルト軸31を中心に上下方向にチルト及びトリムが可能になる。
【0021】
エンジンホルダ11内には防振装置としてのアッパマウントユニット(マウントユニット)36が設けられ、エンジンホルダ11内の後側から前側に向かって突出するアッパマウントボルト(マウントボルト)37によってアッパマウントブラケット(マウントブラケット)33に連結される。
また、ドライブシャフトハウジング16の左右両側には一対のロアマウントユニット(マウントユニット)38が設けられ、図示しないロアマウントボルト(マウントボルト)によってロアーマウントブラケット(マウントブラケット)34に連結される。
【0022】
図4は
図2に示すアッパマウントユニット36をI−I線で切断した断面図である。ロアマウントユニット38もアッパマウントユニット36と略同様に構成されている。
図4(a)はプロペラ19aが回転する前の状態を示し、
図4(b)はプロペラ19aが回転し船外機本体が変位した状態を示す。
図4(a)に示すように、アッパマウントユニット36は、一対のアッパマウントボルト37と、各アッパマウントボルト37の周囲に配置された直管状のインナチューブ40と、各インナチューブ40の周囲に巻装されるゴム等の弾性体からなる第一アッパマウント(第一マウント)41と、一対のアッパマウントボルト37の後部間に架設された剛性部材である棒状部材42と、棒状部材42の周囲を被覆するゴム等の弾性体からなる第二アッパマウント(第二マウント)43とを有している。第二アッパマウント43とエンジンホルダ11の内壁との間には若干の隙間が形成されている。
【0023】
第一アッパマウント41は、非常に低いバネ定数に設定され、エンジン12が低回転時に発生する振動をエンジンホルダ11からアッパマウントブラケット33に伝達するのを防止する。
第二アッパマウント43は、プロペラ19aの前進方向または後進方向の推進力によりエンジンホルダ11が後側または前側に変位したときにエンジンホルダ11の内壁と当接することでエンジンホルダ11を規制する。第二アッパマウント43は、一定レベルの振動伝達を防止でき、かつプロペラ19aの推進力によるエンジンホルダ11の内壁との当接を規制できる程度、すなわち第一アッパマウント41のバネ定数よりも大きく設定されている。このように、船外機本体はアッパマウントユニット36およびロアマウントユニット38により浮動支持されている。
【0024】
図2に戻り、例えば船外機10aが前進する場合を想定する。この場合、プロペラ19aによる前進方向(矢印A方向)の推進力が発生するために、船外機10aの下側では船体2に対して前側に移動する力が作用し、船外機10aの上側では船体2に対して後側に移動する力が作用する。そのため、船外機本体は、
図2の矢印B方向に示すように傾動する。すなわち、船外機10aが前進する場合には、アッパマウントユニット36ではエンジンホルダ11が後側に変位し、ロアマウントユニット38ではドライブシャフトハウジング16が前側に変位する。
【0025】
ここで、
図4に戻り、船外機10aが前進した場合のアッパマウントユニット36の動作について説明する。船外機10aが前進し、
図4(b)に示すようにエンジンホルダ11が後側に変位すると、第一アッパマウント41が最初に変形し、次に第二アッパマウント43の表面がエンジンホルダ11の内壁に当接することでエンジンホルダ11の移動を規制する。
【0026】
また、
図4(a)、
図4(b)に示すように、本実施形態の船外機10aには推進方向検出手段としての変位検出器44がエンジンホルダ11に取り付けられている。変位検出器44は、プロペラ19aの前進方向または後進方向の推進力によって生じる船外機10aの推進方向、具体的には船外機本体とブラケット装置3との間の相対的な変位方向(および変位量)を検出するものである。変位検出器44は例えば水平方向に揺動可能な検出レバー45を備えた回転角センサーを用いることができる。ここでは、検出レバー45をアッパマウントブラケット33とインナチューブ40との間に形成された突起に係合させることで、エンジンホルダ11が前側または後側に変位したときに検出レバー45が変位量に応じた角度だけ回転する。
図4(b)では、エンジンホルダ11が後側に変位量Cだけ変位したときに、検出レバー45が角度Dだけ回転している。変位検出器44は、変位方向と変位量とを電圧値として出力することができる。なお、推進方向検出手段はプロペラ19aの前進方向または後進方向の推進力によって生じる船外機10aの推進方向を検出できるものであればよく、上述した変位検出器44に限られない。
【0027】
図5は、エンジン回転数の変化および変位検出器44による出力変化を示す図である。ここでは、エンジン回転数が上昇し、プロペラ19aが回転することで、船外機10aが前進したときの変位検出器44の出力(電圧値)を示している。
図5に示す変位検出器aの特性線は、
図4(a)、
図4(b)に示すように変位検出器44をアッパマウントユニット36に配置したときの出力変化を示している。また、
図5に示す変位検出器bの特性線は、変位検出器44をロアマウントユニット38に配置したときの出力変化を示している。
【0028】
船外機10aが前進した場合には、アッパマウントユニット36ではエンジンホルダ11が後側に変位し、ロアマウントユニット38ではドライブシャフトハウジング16が前側に変位することから、エンジン回転数の上昇に伴って変位検出器aの特性線は徐々に上昇し逆に変位検出器bの特性線は徐々に下降する。なお、船外機10aが後進した場合には、
図5とは反対に、エンジン回転数の上昇に伴って変位検出器aの特性線は徐々に下降し逆に変位検出器bの特性線は徐々に上昇する。
このように、変位検出器44を用いることで船外機10aの推進方向を検出することができる。変位検出器44は、アッパマウントユニット36およびロアマウントユニット38の少なくとも何れか一方に配置することができる。ただし、船外機10aのコストおよび浸水防止の観点からアッパマウントユニット36のみに配置することが好ましい。
【0029】
次に、船外機10aの主要な内部構成について
図6に示すブロック図を参照して説明する。船外機10a全体は、シフト制御装置としての制御装置50によって制御されている。制御装置50は、CPU51、ROM52、RAM53、EEPROM54、入力回路55、出力回路56、点火装置57及び電源回路58を含んで構成されている。
【0030】
CPU51は、いわゆるコンピュータであって、ROM52に格納されたプログラムを実行して、各種検出器等から出力される信号に基づいて、インジェクタ80を介して燃料の噴射量、噴射タイミングを制御したり、電動シフト装置21を介してシフト制御したりする。ここで、シフト制御とは、シフトロッド20を左右に回転させることで、船外機10の推進方向を前進、ニュートラル、後進に切り換える制御をいうものとする。ROM52は、不揮発性メモリであって、CPU51が実行するプログラムやCPU51が各機器を制御するときの初期値等を格納している。RAM53は、揮発性メモリであって、CPU51が各機器を制御するときに算出した情報等を一時的に記憶する。EEPROM54は、書き換え可能な記憶部としての不揮発性メモリであって、CPU51が各機器を制御する場合の情報等を記憶する。
【0031】
入力回路55は、
図6に示すように船外機10a内外の各種検出器等から信号が入力される。具体的には、カム軸信号検出器60は、エンジン12の図示しないカム軸の信号(カム角信号)を出力する。クランク角信号検出器(回転数検出器)61は、エンジン12の回転数信号を出力する。
スロットル開度検出器62は、図示しないスロットバルブのスロットル開度に応じた信号を出力する。
【0032】
吸気圧力検出器63は、吸気管に配置され、吸気管内における吸気圧の信号を出力する。大気圧力検出器64は大気圧の信号を出力する。また、吸気温度検出器65、エンジン温度検出器66(冷却水温度検出器)及び排気通路温度検出器67は、それぞれ吸気の温度、エンジン12の温度(冷却水温度)及び排気通路の温度の信号を出力する。
イグニッションスイッチ68は、操船者によりオンとオフとが選択できるように構成され、オンされることにより各機器に電力が供給され、オフされることにより各機器への電力が遮断される。
【0033】
変位検出器44は、上述したようにプロペラ19aの前進方向または後進方向の推進力によって生じる船外機10aの推進方向を検出する。
入力装置69は、船外機10aをレギュラローテーション用として駆動させるかカウンタローテーション用として駆動させるかを操船者が入力するための装置である。入力されたローテーションの情報は、ローテーション情報として入力装置69やEEPROM54に記憶される。入力装置69には、船外機10aに設置されたタッチパネルや操舵室4に設置されたタッチパネルなどを用いることができる。
推進ユニット選択装置(選択装置)70は、船外機10aをレギュラローテーション用として駆動させるかカウンタローテーション用として駆動させるかを操船者が選択するための装置である。なお、第1の実施形態では、入力装置69および推進ユニット選択装置70のうち少なくとも何れか一方を有していればよい。
【0034】
レバーポジション検出器71は、例えばリモートコントロールボックス7内に配置されリモートコントロールレバー6の位置の信号を出力する。
図6に示すように、リモートコントロールレバー6は、ニュートラル位置から左側の所定の角度領域α1が前進方向のシフト位置であり、所定の角度領域α2が前進方向のスロットル域である。また、ニュートラル位置から右側の所定の角度領域β1が後進方向のシフト位置であり、所定の角度領域β2が後進方向のスロットル域である。レバーポジション検出器71からのリモートコントロールレバー6のシフト位置の信号はBCM(船体制御モジュール)72が受信し、BCM72が制御装置50に出力する。BCM72は、船外機10bの制御装置50にも同様にリモートコントロールレバー6のシフト位置の信号を出力する。なお、制御装置50は、リモートコントロールレバー6のシフト位置の信号を直接受信してもよい。
【0035】
出力回路56は、インジェクタ80、スロットルバルブアクチュエータ81、報知手段としての報知装置82、電動シフト装置21及びイグニッションコイル83を制御するための信号を送信する。
制御装置50に入力された各機器からの信号はCPU51で適宜演算処理され、その演算結果が出力回路56を介して船外機10a内外の各機器に出力される。具体的には、CPU51は、エンジン12の運転状態に応じて最適な燃料の噴射タイミングおよび噴射量になるようにインジェクタ80を制御したり、点火装置57を介してイグニッションコイル83の点火時期を制御したりする。
【0036】
CPU51は、入力装置69から入力されたローテーション情報に基づいて船外機10aをレギュラローテーション用として駆動させるかカウンタローテーション用として駆動させるかを電気的に切り換える。この処理は、ローテーション切換手段による処理の一例に対応する。すなわち、CPU51は、船外機10aをローテーション情報と、リモートコントロールレバー6のシフト位置の信号とに基づいて、電動シフト装置21を制御する。具体的には、例えば、
図7に示すようにローテーション情報およびシフト位置の信号に、電動シフト装置21によるシフトロッド20の回転方向が関連付けられたテーブルがEEPROM54などに記憶されている。CPU51は、
図7に示すテーブルを参照して、電動シフト装置21を制御することができる。
【0037】
ここで、ローテーション情報がレギュラローテーションであるとすると、CPU51は前進方向のシフト位置の信号を受信した場合、船外機10aが前進方向になるように、電動シフト装置21を制御する。すなわち、上述した船外機10aの構成では、CPU51は、電動シフト装置21を介してシフトロッド20をニュートラル状態位置から左回転させドッグクラッチ26を前側ギア23に係合させることで、プロペラ19aは右回転し船外機10aは前進する。
また、CPU51は、後進方向のシフト位置の信号を受信した場合、船外機10aが後進方向になるように、電動シフト装置21を制御する。すなわち、上述した船外機10aの構成では、CPU51は、電動シフト装置21を介してシフトロッド20をニュートラル状態位置から右回転させドッグクラッチ26を後側ギア24に係合させることで、プロペラ19aは左回転し船外機10aは後進する。
【0038】
また、例えば、ローテーション情報がカウンタローテーションであるとすると、CPU51は、前進方向のシフト位置の信号を受信した場合、船外機10bが前進方向になるように、電動シフト装置21を制御する。すなわち、CPU51は、電動シフト装置21を介してシフトロッド20をニュートラル状態位置から右回転させドッグクラッチ26を後側ギア24に係合させることで、プロペラ19bは左回転し船外機10aは前進する。
また、CPU51は、後進方向のシフト位置の信号を受信したとき、船外機10bが後進方向になるように、電動シフト装置21を制御する。すなわち、CPU51は、電動シフト装置21を介してシフトロッド20をニュートラル状態位置から左回転させドッグクラッチ26を前側ギア23に係合させることで、プロペラ19bは右回転し船外機10aは後進する。
【0039】
このようにCPU51は、操船者により入力されたレギュラローテーション用またはカウンタローテーション用として駆動させるかを示すローテーション情報とシフト位置の信号とに基づいてシフト制御を行う。
したがって、レギュラローテーション用およびカウンタローテーション用の推進ユニットを共通にした場合でも、操船者が船外機10aをレギュラローテーション用として駆動させるかカウンタローテーション用として駆動させるかを入力するだけで、船外機10aを入力に応じたローテーションで駆動させることができる。また、操船者はリモートコントロールレバー6のシフト位置の信号を船外機10a、10bのそれぞれ制御装置50に出力させる構成にすればよいので、船外機10a、10bの構成を簡略化させることができる。したがって、操船者は1つのリモートコントロールレバー6で複数の船外機10a、10bのシフトの操作を行うことができるので、船外機10a、10bの操縦が煩雑になることがない。
【0040】
さて、上述したように構成される船外機10aでは、レギュラローテーション用およびカウンタローテーション用の推進ユニットを共通にできるものの、レギュラローテーション用として駆動させる船外機10aにカウンタローテーション用のプロペラ19bが装着されたり、カウンタローテーション用として駆動させる船外機10bにレギュラローテーション用のプロペラ19aが装着されたりすることが考えられる。このような場合、船外機10a、10bは操船者によるリモートコントロールレバー6を介したシフト操作とは異なる方向に駆動しようとするために、船外機10a、10bの所期の機能を発揮することができない。
【0041】
そこで、本実施形態では、制御装置50が船外機10a、10bのローテーションを判別し、船外機10a、10bが所期の機能を発揮することができない場合は操船者に報知する制御を行う。
図8は、本実施形態に係る制御装置50の処理を示すフローチャートである。
図8に示すフローチャートは、CPU51がROM52に格納されたプログラムをRAM53に展開して実行することで実現される。ここでは、船外機10aの制御装置50を代表して説明するが、船外機10bについても同様である。
ステップS10では、CPU51は操船者によりイグニッションスイッチ68をオンにする操作に応じて各機器に電力を供給すると共にエンジン12を駆動することで、船外機10の運転が開始される。
【0042】
ステップS11では、CPU51は入力装置69を介して入力されたレギュラローテーション用であるか、カウンタローテーション用であるかを示すローテーション情報を読み出す。ここでは、ローテーション情報がレギュラローテーションであるものとする。
ステップS12では、CPU51はレバーポジション検出器71によるリモートコントロールレバー6のシフト位置(前進方向または後進方向)の信号を受信したか否かを判定する。受信した場合にはステップS13に進み、受信しない場合には受信を待機する。
【0043】
ステップS13では、CPU51はローテーション情報と、受信したシフト位置の信号とに基づいて、
図7に示すテーブルを参照して電動シフト装置21を介してシフト制御を行う。このとき、プロペラ19aの回転による前進方向または後進方向の推進力に応じて、船外機本体が傾動する。
ステップS14では、CPU51は、変位検出器44が出力する、船外機本体の傾動により発生する船外機本体の変位方向の信号を受信する。CPU51は、受信した変位方向の信号に応じて船外機10aが実際に前進したか後進したか、すなわち船外機10aの推進方向を判定する。
【0044】
ステップS15では、CPU51は船外機10aの推進方向とステップS12において受信したシフト位置とが一致しているか否かを判定する。この処理は、判定手段による処理の一例に対応する。通常は、実際の推進方向とリモートコントロールレバー6のシフト位置とは一致する。しかしながら、レギュラローテーション用として駆動させる船外機10aにカウンタローテーション用のプロペラ19bを装着したり、カウンタローテーション用として駆動させる船外機10bにレギュラローテーション用のプロペラ19aを装着したりする場合には、実際の推進方向とシフト位置とは一致しない。このような場合には、船外機10a、10bに所期の性能を発揮させることができない。推進方向とシフト位置とが一致している場合にはステップS16に進み、一致しない場合にはステップS17に進む。
例えばローテーション情報がレギュラローテーションのとき、シフト位置が前進方向であって推進方向が前進方向である場合にはCPU51はレギュラローテーション用のプロペラ19aが装着されレギュラローテーション用として駆動させる船外機であると判別できる。一方、シフト位置が前進方向であって推進方向が後進方向である場合にはカウンタローテーション用のプロペラ19bが装着され本来カウンタローテーション用として駆動させる船外機であると判別できる。この処理は、ローテーション判別手段による処理の一例に対応する。
【0045】
ステップS16では、実際の推進方向とシフト位置とが一致しているので、CPU51は継続してリモートコントロールレバー6のシフト位置とローテーション情報とに基づいて電動シフト装置21を介してシフト制御を行う。
一方、ステップS17では、実際の推進方向とシフト位置とが一致していないので、まずCPU51はシフトをニュートラル状態に移行する。具体的には、CPU51は電動シフト装置21を介してシフトロッド20をニュートラル位置に回転させて、ドライブシャフト17の回転がプロペラシャフト22に伝達されないようにする。この処理は、遮断手段による処理の一例に対応する。したがって、プロペラ19aによる必要以上の推進力を遮断することができる。なお、CPU51はシフトをニュートラル状態に移行する場合に限られず、エンジン回転数を所定のエンジン回転数以上に大きくならないように制御してもよい。この処理は、エンジン回転数制御手段による処理の一例に対応する。また、CPU51は、エンジン12を停止する処理をしてもよい。
【0046】
ステップS18では、CPU51は船外機10aが所期の性能を発揮できないこと、すなわちシフト位置と推進方向とが一致していない旨を操船者に報知する。具体的には、CPU51は報知装置82としてのモニターに異なるプロペラが装着されていることなどのメッセージを表示したり、報知装置82としてのブザーを介して警告音(または警告音声)を発生させたりする。したがって、操船者は例えば誤ったプロペラが装着されていることに気付き、所期の性能を発揮するプロペラに交換することができる。
ステップS19では、CPU51は操船者によりイグニッションスイッチ68がオフにされることで、各機器への電力の供給を停止する。
【0047】
このように本実施形態によれば、レギュラローテーション用の船外機とカウンタローテーション用の船外機とで所期の性能を得ることができない場合には操船者に報知されることから、操船者は例えば誤ったプロペラを所期の性能を発揮するプロペラに交換することができる。
【0048】
また、操船者は、船外機10をレギュラローテーション用またはカウンタローテーション用として駆動させるかを入力装置69を介して容易に切り換えることができる。なお、本実施形態では、入力装置69を介してローテーション情報を入力する場合について説明したが、この場合に限られず、例えば
図6に示す推進ユニット選択装置70を用いて、ローテーションを選択(入力)してもよい。
例えば、推進ユニット選択装置70には、レギュラローテーション用またはカウンタローテーション用として駆動させるかを選択できる、いわゆるトグルスイッチなどを用いることができる。この場合、CPU51は、トグルスイッチの位置に基づいてローテーション情報を取得することができる。
また、例えば、推進ユニット選択装置70の入力部に挿入される抵抗素子に応じて変化する電圧レベル(ハイ/ロー)をローテーション情報とすることができる。具体的には、入力部が開放された場合には、船外機を所定のローテーション用として駆動させ、抵抗素子が接続されていた場合には、異なるローテーション用として駆動させることができる。
【0049】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第1の実施形態では、操船者が予め船外機をレギュラローテーション用またはカウンタローテーション用として駆動させるかを入力装置69を介して入力する場合について説明した。本実施形態では、推進方向とシフト位置とが一致しない場合には、CPU51はシフト位置に合わせて、自動でローテーションを切り換える制御を行う場合について説明する。したがって、本実施形態では、
図6に示す入力装置69や推進ユニット選択装置70を備えていなくてもよい。
図9は、本実施形態に係る制御装置50の処理を示すフローチャートである。
図9に示すフローチャートは、CPU51がROM52に格納されたプログラムをRAM53に展開して実行することで実現される。ここでは、船外機10aの制御装置50を代表して説明するが、船外機10bについても同様である。
【0050】
ステップS30では、CPU51は操船者によりイグニッションスイッチ68をオンにする操作に応じて各機器に電力を供給すると共にエンジン12を駆動することで、船外機10の運転が開始される。本実施形態では、操船者がレギュラローテーション用かカウンタローテーション用かを入力する必要はなく、船外機10a、10bを区別することなく予めローテーション情報として例えばレギュラローテーションがEEPROM54に初期値として記憶されている。
【0051】
ステップS31では、CPU51はレバーポジション検出器71によるリモートコントロールレバー6のシフト位置(前進方向または後進方向)の信号を受信したか否かを判定する。受信した場合にはステップS32に進み、受信しない場合には受信を待機する。
【0052】
ステップS32では、CPU51はローテーション情報と、受信したシフト位置の信号とに基づいて、
図7に示すテーブルを参照して電動シフト装置21を介してシフト制御を行う。このとき、プロペラ19aの回転による前進方向または後進方向の推進力に応じて、船外機本体が傾動する。
ステップS33では、CPU51は、変位検出器44が出力する、船外機本体の傾動により発生する船外機本体の変位方向の信号を受信する。CPU51は、受信した変位方向の信号に応じて船外機10aが実際に前進したか後進したか、すなわち船外機10aの推進方向を判定する。
【0053】
ステップS34では、CPU51は船外機10aの推進方向とステップS31において受信したシフト位置とが一致しているか否かを判定する。この処理は、判定手段による処理の一例に対応する。推進方向とシフト位置とが一致している場合にはステップS37に進み、一致していない場合にはステップS35に進む。
CPU51は、例えばシフト位置が前進方向であって推進方向が前進方向である場合(一致)にはレギュラローテーション用として駆動させる船外機であると判別できる。また、シフト位置が前進方向であって推進方向が後進方向である場合(不一致)には本来カウンタテーション用として駆動させる船外機であると判別できる。この処理は、ローテーション判別手段による処理の一例に対応する。
ステップS35では、実際の推進方向とシフト位置とが一致していないので、CPU51はシフトをニュートラル状態に移行する。具体的には、CPU51は電動シフト装置21を介してシフトロッド20をニュートラル位置に回転させて、ドライブシャフト17の回転がプロペラシャフト22に伝達されないようにする。この処理は、遮断手段による処理の一例に対応する。したがって、プロペラ19aによる必要以上の推進力を遮断することができる。
【0054】
ステップS36では、CPU51はローテーションを切り換える。CPU51はステップS32で回転させた方向とは反対方向にシフトロッド20を回転させる。したがって、船外機10aの実際の推進方向とステップS31において受信したシフト位置とを一致させることができる。更に、CPU51は初期値として記憶されたローテーション情報を異なるローテーションに切り換えて更新する。この処理は、ローテーション切換手段による処理の一例に対応する。具体的には、ここでは、CPU51はローテーション情報をレギュラローテーションからカウンタローテーションに切り換えてEEPROM54に記憶する。この処理は、記憶手段による処理の一例に対応する。したがって、船外機10aをカウンタローテーション用として駆動させることを電気的に切り換えることができる。
【0055】
ステップS37では、CPU51は以降、リモートコントロールレバー6のシフト位置とローテーション情報とに基づいて電動シフト装置21を介してシフト制御を行う。具体的には、CPU51は、例えば
図7に示すテーブルを参照して電動シフト装置21を介してシフト制御を行う。
ステップS38では、CPU51は操船者によりイグニッションスイッチ68がオフにされることで、各機器への電力の供給を停止する。
【0056】
このように本実施形態によれば、操船者は入力装置69などを介して船外機10a、10bをレギュラローテーション用またはカウンタローテーション用として駆動させることを入力する必要がない。すなわち、操船者がリモートコントロールレバー6を操作することで、CPU51が各船外機10a、10bのローテーションを判別し、異なる場合にはローテーションを自動で切り換える。したがって、操船者は、レギュラローテーション用のプロペラ19aとカウンタローテーション用のプロペラ19bを区別することなく各船外機10a、10bに装着するだけで、リモートコントロールレバー6のシフト位置に応じた推進方向に船外機10a、10bを駆動させることができる。
【0057】
また、CPU51は、ローテーション情報をEEPROM54などの書き換え可能な不揮発性メモリに記憶することで、次回の運転では前回切り換えられたローテーション情報に基づいて船外機10a、10bを駆動させることができる。したがって、次回の運転では、
図9に示すステップS34からステップ35に進むことがなく、早期に船外機10a、10bの運転を開始することができる。なお、その後、推進ユニット18を交換したとき、レギュラローテーション用のプロペラ19aとカウンタローテーション用のプロペラ19bとを逆に装着した場合であっても、
図9に示すステップS34からステップ35に進むことから、再びローテーションが切り換えられる。
【0058】
以上、本発明を上述した実施形態により説明したが、本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、第1および第2の実施形態を適宜組み合わせたり、本発明の範囲内で変更したりすることが可能である。
例えば、上述した実施形態では、電動シフト装置21がシフトロッド20を右回転させることでプロペラ19aが右回転する構成について説明したが、シフトロッド20を左回転させることでプロペラ19aが右回転する構成であってもよい。
【0059】
上述した第1および第2の実施形態において、船外機本体の変位方向を検出する場合、CPU51はスロットルバルブアクチュエータ81(または図示しない空気量調整アクチュエータ(ISC))を介した空気の供給量、イグニッションコイル83を介した点火時期などにより、船外機本体の変位方向を検出しやすいエンジン回転数に制御してもよい。