特許第6035900号(P6035900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6035900
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】全固体リチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0562 20100101AFI20161121BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20161121BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20161121BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   H01M10/0562
   H01M10/052
   H01M10/0585
   H01M4/66 A
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-145252(P2012-145252)
(22)【出願日】2012年6月28日
(65)【公開番号】特開2014-10948(P2014-10948A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年5月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(72)【発明者】
【氏名】清水 千映子
(72)【発明者】
【氏名】田辺 順志
(72)【発明者】
【氏名】繁田 徳彦
【審査官】 小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−147534(JP,A)
【文献】 特開平02−155174(JP,A)
【文献】 特開2007−026734(JP,A)
【文献】 特開平10−106581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05−10/0587
H01M 2/16
H01M 4/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質と、前記固体電解質とを介して対向するように設けられた正極、負極、ならびに、前記正極及び前記負極のそれぞれ前記固体電解質と接する面とは反対側の面に配置された集電体とを有する一対の電極と、からなる積層体を有し、前記集電体の少なくとも一つが磁石であって、前記磁石の磁極の向きが前記積層体を加圧する方向に働くように配置されていることを特徴とする全固体リチウムイオン二次電池。
【請求項2】
前記磁石は、金、銀、銅、ニッケル、すずのうちいずれか一つまたは複数の組み合わせからなる変形層を表面に有することを特徴とする請求項1に記載の全固体リチウムイオン二次電池。
【請求項3】
前記磁石は、前記正極または前記負極と接する面において、前記正極および前記負極よりも大きな面積を有することを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載の全固体リチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全固体リチウムイオン二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータ,携帯電話等のポータブル機器の開発に伴い、その電源として電池の需要は非常に大きなものとなっている。特に、リチウムイオン二次電池は、リチウムが小さな原子量を持ち、かつイオン化エネルギーが小さな物質であることから、高エネルギー密度を得ることができる電池として各方面で盛んに研究が行われている。
【0003】
一方、これらの用途の電池は、電解質に液体を使用しているため、電解質の漏液等の問題を皆無とすることができない。こうした問題を解決し信頼性を高めるため、また素子を小型化・薄型化するために、液体電解質を固体電解質に代えて全固体化する試みがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−247516号公報
【特許文献2】特開2008−310987号公報
【特許文献3】特開2009−193728号公報
【特許文献4】特開2011−113719号公報
【特許文献5】特開2011−129393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、全固体リチウムイオン二次電池を構成する正極および負極は、充放電の過程で膨張と収縮とに起因する変形を繰返す。その変形により、正極および負極と固体電解質との接触状態を維持することは難しい。その結果、全固体リチウムイオン二次電池の内部抵抗が増大し、充放電が困難となる。
【0006】
また、外部からの機械的な加圧によって初めに接触を保ち、充放電が可能であった場合でも、充放電サイクルの進行に伴って、電極活物質の膨脹,収縮が繰り返されることにより、初めの接触が維持されず、固体電解質と電極活物質界面に空隙が生じて界面抵抗が増加し、充放電のサイクル後の初めの特性が維持されず劣化するサイクル特性の問題がある。
【0007】
従って、この全固体リチウムイオン二次電池においては、充放電時における内部抵抗の低減およびサイクル特性の向上が要求されている。
【0008】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、充放電時における初期の電池の内部抵抗の増加を低減するとともに、充放電のサイクル後にもその特性を維持することができる優れたサイクル特性を有する全固体リチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に従った全固体リチウムイオン二次電池は、固体電解質と、前記固体電解質を介して対向するように設けられた一対の電極と、前記固体電解質および前記一対の電極からなる積層体を介して磁極の向きが前記積層体を加圧する方向に働くよう配置された少なくとも一つの磁石とを有することを特徴とする。
【0010】
このように構成された全固体リチウムイオン二次電池では、前記固体電解質および前記電極からなる積層体を介して磁極の向きが前記積層体を加圧する方向に働くよう配置し、積層体が半永久的に加圧された状態となる。このため、放電時における初期の電池の内部抵抗の増加を低減するとともに、充放電のサイクル後にもその特性を維持することができる優れたサイクル特性を有することができる。
【0011】
さらに、本発明に従った磁石は、金、銀、銅、ニッケル、すず、白金、クロム、亜鉛、カーボン、高分子のうちのいずれか一つまたは複数の組み合わせからなる変形層を有することが好ましい。
【0012】
このように構成された磁石では、変形層の高い電気伝導性によって集電効率を高めることができるため、サイクル特性をより向上させることができる。さらに、これら金属またはカーボン、高分子のもつ展延性あるいは形状変形性によって、磁石と電極との界面状態は、良好な接触状態となる傾向がある。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、充放電時における初期の電池の内部抵抗の増加を低減するとともに、充放電のサイクル後にもその特性を維持することができる優れたサイクル特性を有する全固体リチウムイオン二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の一実施形態にかかる全固体リチウムイオン二次電池の一部を示す断面図である。
図2図2は、本発明の別の一実施形態にかかる全固体リチウムイオン二次電池の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
これ以降で実施形態について詳細に説明するが、本発明の形態は下記実施形態に限定されるものではない。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態にかかる全固体リチウムイオン二次電池の一部を示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態にかかる全固体リチウムイオン二次電池の電池要素9は、正極合材層7と、固体電解質層4aと、負極3と、磁石1との積層構造体を有する。正極合材層7は、正極活物質5、導電助剤6および固体電解質4の合材からなる。本実施形態では2つの磁石1が用いられ、これらは正極合材層7と固体電解質層4aと負極3とを加圧する極性に配置される。また、磁石1の表面には、導電性の変形層2が設けられている。これら電池要素9は、金属缶等の筐体(図示せず)に収められ、全固体リチウムイオン二次電池を構成する。なお、磁石1の極性は、S極とN極の関係が図1と逆の配置であってもよい。
【0017】
図2は、本発明の別の一実施形態にかかる全固体リチウムイオン二次電池の一部を示す断面図である。
図2に示すように、本実施形態にかかる全固体リチウムイオン二次電池の電池要素9は、正極合材層7と、固体電解質層4aと、負極3と、磁石1と、金属板8との積層構造体を有する。正極合材層7は、正極活物質5、導電助剤6および固体電解質4の合材からなる。本実施形態では磁石1と金属板8が一つずつ用いられ、正極合材層7と固体電解質層4aと負極3とを加圧するように配置される。また、磁石1の表面には、導電性の変形層2が設けられている。これら電池要素9は、金属缶等の筐体(図示せず)に収められ、全固体リチウムイオン二次電池を構成する。なお、磁石1の極性は、金属板8に磁石1が吸引され、加圧するように配置されればよく特に限定しない。
【0018】
本実施形態では、正極/固体電解質層4a/負極3からなる積層体の両端に、磁極の向きが前記積層体の加圧方向となるよう、磁石1を設置する。あるいは、前記積層体の両端に、磁石1と金属板8を設置する。これらの構造では、磁石1同士の吸引力あるいは、磁石1と金属板8との吸引力によって、積層体は半永久的に加圧された状態となる。したがって、このように構成された電池では、固体電解質4と電極活物質界面の十分な接触状態が維持されるため、充放電時における内部抵抗の増加を抑え、サイクル特性を長期にわたり維持することが可能となる。
【0019】
本実施形態に従った固体電解質4は、硫化物系固体電解質あるいは酸化物系固体電解質からなることが好ましい。具体的には、LiS−SiS、LiS−P、LiS−Bなどからなるリチウムイオン導電性硫化物系固体電解質である。
【0020】
本実施形態に従った正極活物質5は、TiS、LiCoO、LiNiO、LiNiCoO、LiNiCoMnO、LiNiMnO、Li1.2Cr0.4Mn0.4、LiMnO、LiMn、LiCoMnO、LiNi0.5Mn1.5、LiFePOなどが挙げられる。
【0021】
本実施形態に従った導電助剤6は、アセチレンブラック、カーボンブラック、人造黒鉛などが挙げられる。
【0022】
本実施形態に従った負極3は、リチウム、インジウム、Al−Li合金、Sn−Li合金、Si−Li合金、Sb−Li合金などが挙げられる。
【0023】
本実施形態に従った磁石1は、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石、フェライト磁石、アルミニッケルコバルト磁石などの永久磁石が挙げられ、これらのうちのいずれか一つまたは複数の組み合わせで構成される。
【0024】
本実施形態に従った磁石1は、正極合材または負極3と接する面において、これら電極よりも大きな面積を有することが好ましい。すなわち、磁石1の外周は、電極の外周を上回る大きさとなる。ここで、電極の面積に制限はないが、磁石1の外周が電極の外周を下回る大きさとなると、磁石1端部で(正極)活物質粒子に不均一な力がかかってしまい、短絡または絶縁が生じてしまい、サイクル特性が劣化する場合がある。
【0025】
本実施形態に従った電池は、コインセルなどの外装体に封入することができる。
【0026】
本実施形態に従った固体電解質4、正極合材、負極3および磁石1からなる積層体は、コインセルなどの外装体に封入可能であれば、その表面積に特に制限はない。
【0027】
本実施形態に従った電池の構造は特に制限はなく、コイン型セル以外にも、円筒型電池、角型電池、金属ラミネートフィルムによる封止体、前記積層体を単一セルとした積層セルなどが挙げられる。
【0028】
例えば、本実施形態に従った電池が円筒型電池あるいは角型電池である場合、正極集電体(外装缶)と中央部の集電体の両方に、表面を変形層2でコーティングした磁石1を用いることができる。このような構造の電池では、磁石同士の吸引力によって、積層体の加圧状態を維持することができる。
【0029】
本実施形態に従った電池において、設置する磁石1は、積層体を加圧するよう配置することができればその個数、形状に制限はない。
【0030】
例えば、本実施形態に従った電池が円筒型または、角型の電池とする場合、中央部の集電体として、表面を前記変形層2でコーティングした前記磁石1を用い、正極集電体(外装缶)として、鉄またはニッケルなどの磁石1に吸引する特性をもつ金属板8を使用する。このような構造の電池では、磁石1が中央部の集電体としての役割も果たし、磁石1と正極集電体との吸引力によって、積層体の加圧状態を維持することができる。また、正極集電体(外装缶)として、表面を前記変形層2でコーティングした前記磁石1を用い、中央部の集電体として、鉄またはニッケルなどの磁石1に吸引する特性をもつ金属板8を使用した場合も同様の効果が得られる。
【0031】
あるいは、本実施形態に従った電池がコイン電池である場合、負極集電体(上蓋)として、表面を変形層2でコーティングした磁石1を用い、正極集電体は、鉄またはニッケルなどの磁石1に吸引する特性をもつ金属板8を使用する。このような構造の電池では、磁石1が負極集電体(上蓋)としての役割も果たし、磁石1と金属板8との吸引力によって、積層体の加圧状態を維持することができる。また、正極集電体として、表面を前記変形層2でコーティングした磁石1を用い、負極集電体(上蓋)として鉄またはニッケルなどの磁石1に吸引する金属板8を使用した場合も同様の効果が得られる。
【0032】
本実施形態に従った変形層2は、金、銀、銅、ニッケル、錫、白金、クロム、亜鉛、カーボン、高分子などのうち、いずれか一つまたは複数の組み合わせからなる層であり、なかでも高い電気伝導性をもつ金、銀、銅、ニッケル、錫がより好ましい。これら変形層2は、磁石1の表面一体を均一にコーティングできることが好ましい。また、変形層2のコーティング厚みは薄いほうがより好ましい。さらに、変形層2は磁石1の防錆効果をもつことがより好ましい。
【0033】
本実施形態に従った電池は、変形層2と、正極あるいは負極集電体とを接合する端子電極を備えた構造としても良い。端子電極としては、銅の下地・ニッケルめっき・スズめっきの3層構造などが好ましい。これにより、集電体の集電性を高めることができるため、サイクル特性をより向上させることができる。
【0034】
本実施形態に従った固体電解質4は、硫化物系固体電解質あるいは酸化物系固体電解質が好ましいが、これらに限られるものではなく、通常の電池に用いられる固体電解質であればよい。
【実施例】
【0035】
次に、本発明の具体的実施例について比較例と比較しながら説明する。
なお、実施例1〜4の電池は、図1で示した電池要素と同様のコインセルに収めた全固体リチウム二次電池である。実施例5〜8の電池は、図2で示した電池要素と同様のコインセルに収めた全固体リチウム二次電池である。
【0036】
【表1】
(実施例1)
【0037】
まず、固体電解質であるLiS−Pと、正極活物質である二硫化チタンとをそれぞれ粉砕し粉末を得た。得られた固体電解質粉末を加圧成形し、厚さ0.7mm、直径23mmの固体電解質層とした。
【0038】
次に、正極活物質である二硫化チタン粉末と固体電解質粉末と導電助剤であるアセチレンブラックとを37.7:56.6:5.7(質量%)で混合し、正極粉末を得た。この正極粉末を固体電解質層上に堆積したのち積層方向に予備加圧した。これにより固体電解質層上に正極合剤層を形成した。
【0039】
次に、固体電解質層上の正極合剤層を有する面とは異なる面に、インジウム負極を積層して正極合剤層/固体電解質層/負極層からなる積層体を構成し、これを積層方向に加圧して全固体リチウムイオン二次電池ペレットを得た。
【0040】
得られた全固体リチウムイオン二次電池ペレットを、直径23.5mm、厚み1mmのネオジム磁石によって積層方向に挟んだ。このとき、前記積層体の加圧状態が維持されるよう、前記磁石をS極とN極が向き合うよう設置した。
【0041】
前記積層体を、直径24mm、厚さ5mmのコイン型外装缶に封入し、かしめて、コイン型全固体リチウムイオン二次電池を得た。
【0042】
実施例1のコイン型全固体リチウムイオン二次電池は、初充電後の内部抵抗が759Ωであった。また、このコイン型全固体リチウムイオン二次電池を500μAで充放電した際の、充電時インピーダンスのサイクル変化は、100サイクル経過した時点で21.3%上昇し、921Ωであり、初期充電後および充放電100サイクル経過後のインピーダンスは後に記載の比較例と比べ大きかった。
(実施例2)
【0043】
実施例2では、ニッケルめっきからなる変形層を表面に有するネオジム磁石を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、コイン型全固体リチウムイオン二次電池を得た。
【0044】
実施例2のコイン型全固体リチウムイオン二次電池は、初充電後の内部抵抗が472Ωであった。また、このコイン型全固体リチウムイオン二次電池を500μAで充放電した際の、充電時インピーダンスのサイクル変化は100サイクル経過した時点で11.0%上昇し、524Ωであり、ニッケルめっきからなる変形層の高い電気伝導性によって集電効率が高まり、実施例1よりサイクル特性が改善した。
(実施例3)
【0045】
実施例3では、銅めっきからなる変形層を表面に有するネオジム磁石を用いたこと以外は、実施例2と同様の方法で、コイン型全固体リチウムイオン二次電池を得た。
【0046】
実施例3のコイン型全固体リチウムイオン二次電池は、初充電後の内部抵抗が402Ωであった。また、このコイン型全固体リチウムイオン二次電池を500μAで充放電した際の、充電時インピーダンスのサイクル変化は100サイクル経過した時点で7.2%上昇し、431Ωであり、ニッケルめっきより電気伝導性の優れた銅めっきによって集電効率が高まり、実施例2よりサイクル特性が改善した。
(実施例4)
【0047】
実施例4では、銀めっきからなる変形層を表面に有するネオジム磁石を用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で、コイン型全固体リチウムイオン二次電池を得た。
【0048】
実施例4のコイン型全固体リチウムイオン二次電池は、初充電後の内部抵抗が235Ωであった。また、このコイン型全固体リチウムイオン二次電池を500μAで充放電した際の、充電時インピーダンスのサイクル変化は100サイクル経過した時点で2.6%上昇し、241Ωであり、銅めっきより電気伝導性の優れた銀めっきによって集電効率が高まり、実施例3よりサイクル特性が改善した。
(実施例5)
【0049】
実施例1と同様に、全固体リチウムイオン二次電池ペレットを作製した。
【0050】
次いで、前記全固体リチウムイオン二次電池ペレットを、直径23.5mm、厚み1mmのネオジム磁石と金属板によって積層方向に挟んだ。
【0051】
前記積層体を、直径24mm、厚さ5mmのコイン型セルに封入し、かしめて、実施例5のコイン型全固体リチウムイオン二次電池を得た。
【0052】
実施例5のコイン型全固体リチウムイオン二次電池は、初充電後の内部抵抗が752Ωであった。また、このコイン型全固体リチウムイオン二次電池を500μAで充放電した際の、充電時インピーダンスのサイクル変化は100サイクル経過した時点で22.1%上昇し、インピーダンスは918Ωであった。
(実施例6)
【0053】
実施例6では、ニッケルめっきからなる変形層を表面に有するネオジム磁石を用いたこと以外は、実施例5と同様のコイン型全固体リチウムイオン二次電池を作製した。
【0054】
実施例6のコイン型全固体リチウムイオン二次電池は、初充電後の内部抵抗が478Ωであった。また、このコイン型全固体リチウムイオン二次電池を500μAで充放電した際の、充電時インピーダンスのサイクル変化は100サイクル経過した時点で10.7%上昇し、529Ωであり、ニッケルめっきからなる変形層の高い電気伝導性によって集電効率が高まり、実施例5よりサイクル特性が改善した。
(実施例7)
【0055】
実施例7では、銅めっきからなる変形層を表面に有するネオジム磁石を用いたこと以外は、実施例6と同様の電池を作製した。
【0056】
実施例7のコイン型全固体リチウムイオン二次電池の初充電後の内部抵抗は406Ωであった。また、このコイン型全固体リチウムイオン二次電池を500μAで充放電した際の、充電時のインピーダンスのサイクル変化は100サイクル経過した時点で7.1%上昇し、435Ωであり、銅めっきからなる変形層の高い電気伝導性によって集電効率が高まり、実施例6よりサイクル特性が改善した。
(実施例8)
【0057】
実施例8では、銀めっきからなる変形層を表面に有するネオジム磁石を用いたこと以外は、実施例7と同様の電池を作製した。
【0058】
実施例8のコイン型全固体リチウムイオン二次電池の初充電後の内部抵抗は239Ωであった。また、このコイン型全固体リチウムイオン二次電池を500μAで充放電した際の、充電時のインピーダンスのサイクル変化は100サイクル経過した時点で2.5%上昇し、245Ωであり、銀めっきからなる変形層の高い電気伝導性によって集電効率が高まり、実施例7よりサイクル特性が改善した。
【0059】
なお、本実施例においては、固体電解質をLiS−Pとしたが、LiS−SiS、LiI−LiS−P等の他の硫化物系固体電解質やLiO−B−SiO、LiSO−LiO−B等の酸化物系固体電解質を用いた場合でも本発明の同様の効果が得られる。
【0060】
また、本実施例においては、正極を二硫化チタンとしたが、コバルト酸リチウム(LiCoO)、二硫化モリブデンやセレン化ニオブ等の他の遷移金属カルコゲナイドや、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、マンガン酸リチウム(LiMnO、LiMn)等の遷移金属酸化物を用いた場合でも同様の効果が得られる。
【0061】
さらに、本実施例において、インジウムを負極材料として説明したが、負極材料としてアルミニウムや金属リチウムといったリチウムが固相内拡散する金属もしくはこれらの合金を用いた場合でも本発明の同様の効果が得られる。
【0062】
さらに、本実施例において、磁石をネオジム磁石としたが、サマリウムコバルト磁石、フェライト磁石、アルミニッケルコバルト磁石等の他の永久磁石を用いた場合でも本発明の同様の効果が得られる。
(比較例1)
【0063】
実施例1と同様にして全固体リチウム二次電池ペレットを作製し、磁石ではなくクリップによって積層方向に挟んだ。クリップで挟んだ正極合剤層/固体電解質層/負極層からなる積層体を直径24mm,厚さ5mmのコイン型外装缶に封入し、かしめて、コイン型全固体リチウムイオン二次電池を得た。
【0064】
比較例1のコイン型全固体リチウムイオン二次電池の初充電後の内部抵抗は1050Ωであった。また、このコイン型全固体リチウムイオン二次電池を500μAで充放電した際の、充電時のインピーダンスのサイクル変化は100サイクル経過した時点で60.3%上昇し、1683Ωであった。初期充電後および充放電100サイクル経過後のインピーダンスは極めて大きかった。
【0065】
比較例1は、初充電後の内部抵抗および100サイクル経過後のインピーダンスは極めて大きく、いずれの実施例も上回る値となった。これに対して、実施例1および5では、比較例1に比べて高いサイクル特性が得られた。これは、ネオジム磁石の磁力によって固体電解質と電極活物質界面の界面状態が維持されたためと思われる。また、実施例2および6では、ニッケルめっきからなる変形層の高い電気伝導性によって集電効率が高まり、サイクル特性はより良好となった。さらに、変形層を電気伝導性の優れた銅めっきあるいは銀めっきとすることによって、サイクル特性はさらに良好となった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上のように、本発明に係る全固体リチウムイオン二次電池は、サイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池として産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0067】
1 磁石
2 変形層
3 負極
4 固体電解質
5 正極活物質
6 導電助剤
7 正極合材層
8 金属板
9 電池要素
図1
図2