(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記当接圧力を変更しない場合の回転開始タイミングよりも前記所定時間だけ早い回転開始タイミングで前記第1の搬送ベルトと前記第2の搬送ベルトとの回転を開始させることで前記所定時間を確保することを特徴とする請求項1又は2に記載された用紙冷却装置。
前記制御部は、用紙の搬送開始タイミングを前記当接圧力を変更しない場合よりも遅延させることで、又は、前記用紙冷却装置よりも上流側で用紙を待機させることで前記所定時間を確保することを特徴とする請求項4に記載された画像形成装置。
【背景技術】
【0002】
従来より、プリンタ、複写機などとして電子写真方式の画像形成装置が知られている。この画像形成装置は、用紙に画像を形成する場合、用紙に画像(一般にトナー画像)を転写し、その後、定着装置により用紙に画像を定着するというプロセスを実行する。用紙に形成される画像の最終的な仕上がりは、画像品質として評価されることとなる。
【0003】
熱定着、すなわち、熱の作用を通じた定着処理では用紙に熱が加えられるため、定着処理直後の用紙及び画像も熱を帯びたままの状態となっている。熱を帯びた状態では、トナーに含有されるワックス等が十分に固化しておらず、当該ワックスが用紙の搬送部材等に付着することで、機内を汚染したり、後続の用紙を汚したりする。このような観点に加え、光沢度合い等といった画像品質の観点からも、定着処理後の用紙は所望の目標温度まで冷却させることが望まれる。
【0004】
そこで、近年では、自然放熱による冷却に換えて、用紙を積極的に冷却する用紙冷却装置を搭載した画像形成装置が知られている。用紙冷却装置は、例えば、用紙の搬送経路を間に挟んで互いに対向する一対の搬送部材により構成されており、一対の搬送部材が用紙を両側から挟持するとともに、それらの回転動作を通じて用紙を搬送する。搬送部材には冷却手段が取り付けられており、用紙が搬送されることによりその熱が冷却されるようになっている。用紙冷却装置は、用紙を均一に冷却することができるので、冷却ムラが生じ難いというメリットを有している。
【0005】
例えば特許文献1には、用紙冷却装置を備えた画像形成装置が開示されている。具体的には、定着装置の用紙搬送方向下流に配置された搬送ローラー対から離間した位置に放熱部材巻回ローラーを配置し、この放熱部材巻回ローラーと搬送ローラー対の一方の搬送ローラーとの間に無端状のベルト状放熱部材が巻回される。このベルト状放熱部材の内周面側には、当該ベルト状放熱部材を冷却する冷却手段が設けられ、このベルト状放熱部材はこれが巻回される搬送ローラーの熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する材料で構成されている。
【0006】
また、例えば特許文献2には、トナーからなる画像の光沢を所望の状態に調整することができる定着装置が開示されている。具体的には、この定着装置は、用紙の未定着トナー像に少なくとも熱を与え、その未定着トナー像のトナーを軟化又は溶融させて外力により変形し得る状態にさせる加熱仮定着手段を含んでいる。また、定着装置は、画像光沢調整手段をさらに備えている。この画像光沢調整手段は、一対のローラーに張架されて周回する無端状の光沢調整用ベルトと、この光沢調整用ベルトのローラーからローラーに移動する平面状態にある内周面部分に接触するように設置される冷却装置と、一対のローラーの間に張架されて周回する無端状の搬送支持ベルトとで構成されている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本実施形態にかかる画像形成システムの構成を模式的に示す説明図である。画像形成装置1は、例えば複写機といった電子写真方式の画像形成装置であり、複数の感光体を一本の中間転写ベルトに対面させて縦方向に配列することによりフルカラーの画像を形成する、いわゆる、タンデム型のカラー画像形成装置である。画像形成装置1は、図示しない原稿読取装置、画像形成部20と、定着装置30と、用紙冷却装置50とを主体に構成されており、これらの要素が一つの筐体内に収められている。
【0017】
原稿読取装置は、原稿の画像を読み取り、画像信号を得る。具体的には、原稿読取装置は、原稿の画像をランプにて照射し、その反射光を撮像素子の受光面に結像させる。撮像素子は入射した光を光電変換して所定の画像信号を画像読取制御部(図示せず)に出力する。画像読取制御部は、この画像信号に対して、A/D変換、シェーディング補正、圧縮等の処理を施し、画像形成装置1の制御部10に画像データとして出力する。なお、制御部10に入力される画像データとしては、原稿読取装置で読み取ったものに限らず、例えば、画像形成装置に接続されたパーソナルコンピュータや他の画像形成装置から受信したものであってもよい。
【0018】
画像形成部20は、4つの色に対応した帯電・現像ユニット20Y,20M,20C,20Kと、各帯電・現像ユニット20Y〜20Kに対応して設けられた露光部25Y,25M,25C,25Kとで構成されている。
【0019】
帯電・現像ユニット20Yは、感光体ドラム21Yと、その周辺に配置されている帯電・現像部22Yを主体に構成されており、イエロー(Y)に対応する画像を感光体ドラム21Y上に形成する。また、残余の帯電・現像ユニット20M,20C,20Kも、帯電・現像ユニット20Yと同様な構成であり、感光体ドラム21M,21C,21Kの周辺に、帯電・現像部22M,22C,22Kがそれぞれ配置されており、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)に対応する画像を感光体ドラム21M,21C,21K上にそれぞれ形成する。
【0020】
感光体ドラム21Y〜21Kは、帯電・現像部22Y〜22Kによりその表面が一様に帯電させられており、露光部25Y〜25Kによる走査露光により、個々の感光体ドラム21Y〜21Kには潜像が形成される。さらに、帯電・現像部22Y〜22Kは、トナーで現像することによって感光体ドラム21Y〜21K上の潜像を顕像化する。これにより、各感光体ドラム21Y〜21K上には画像(トナー画像)が形成される。
【0021】
個々の露光部25Y〜25Kは、レーザ光源、ポリゴンミラー、複数のレンズ等から構成される。各露光部25Y〜25Kは、画像データをもとに制御部10から出力される出力情報に対応して、感光体ドラム21Y〜21Kの表面をレーザビームにより走査露光する。
【0022】
各感光体ドラム21Y〜21K上に形成された画像は、中間転写ベルト23上の所定位置に逐次転写される。中間転写ベルト23上に転写された各カラーの画像は、用紙Pが所定のタイミングで搬送されることにより、転写ローラー24により用紙Pに転写される。
【0023】
給紙部40は、一つ以上の給紙トレイ41と、複数の搬送ローラー等で構成されている。個々の給紙トレイ41は、種々の種類の用紙Pを収容している。給紙部40は、ユーザーによって選択された給紙トレイ41から用紙Pを一枚ずつ給紙することができる。
【0024】
給紙トレイ41から給紙された用紙Pは、搬送経路に配置された複数の搬送ローラーにより搬送される。用紙は、搬送ローラーによる搬送を通じて、中間転写ベルト23と転写ローラー24とが圧接された転写ニップに供給される。そして、所定のタイミングで用紙Pが転写ニップを通過することにより、用紙Pの所定面(例えば上面)に画像が転写され、当該用紙は定着装置30へと搬送される。
【0025】
定着装置30は、転写後の未定着な状態の画像を担持した用紙Pに定着処理を施す装置である。定着装置30は、互いに圧接されて定着ニップを形成する一対の定着部材で構成されており、用紙Pを定着ニップに通過させることにより、用紙Pに画像を定着する。
【0026】
一方の定着部材は、用紙Pの定着対象面(未定着な画像が転写されている面)と対向して配置されており、加圧ローラー31、定着上ローラー32及び無端状の定着ベルト33で構成されている。加圧ローラー31及び定着上ローラー32は、所定の距離を離間して配置されており、これらのローラー31,32の間には、定着ベルト33が掛け渡されている。定着上ローラー32の内部には、当該定着上ローラー32を加熱するためのヒーターが内蔵されている。このヒーターからの輻射熱を通して定着上ローラー32が加熱され、これにより、定着上ローラー32に掛け渡された定着ベルト33が加熱される。
【0027】
他方の定着部材は、用紙Pの定着対象面の裏面と対向して配置されており、定着下ローラー34で構成されている。定着下ローラー34は、定着ベルト33を間に挟んで状態で、加圧ローラー31に向けて所定の力で付勢されている。定着下ローラー34と加圧ローラー31とが定着ベルト33を介して圧接することにより、定着下ローラー34と定着ベルト33との間に定着ニップが形成されることとなる。
【0028】
この定着装置30は、用紙Pの搬送過程において用紙Pを定着ニップに通過させることにより、加圧及び熱の作用を通じて、転写された画像を用紙Pに定着させる(定着部)。定着装置30により定着処理が施された用紙Pは、用紙冷却装置50に搬送される。
【0029】
用紙冷却装置50は、ベルト搬送部と、冷却部51とを主体に構成されている。
【0030】
ベルト搬送部は、用紙Pの搬送経路を間に挟んで互いに対向する第1の搬送ベルト52と第2の搬送ベルト54とを備えており、第1の搬送ベルト52が用紙Pの搬送経路の上面側に、第2の搬送ベルト54が用紙Pの搬送経路の下面側に配置されている。第1の搬送ベルト52は、無端状のベルト部材であり、所定の距離を隔てて配置された駆動ローラー53aと従動ローラー53bとの間に掛け渡されており、駆動ローラー53aの回転駆動に応じて回転動作する。第2の搬送ベルト54は、第1の搬送ベルト52と同様に、無端状のベルト部材であり、所定の距離を隔てて配置された駆動ローラー55aと従動ローラー55bとの間に掛け渡されており、駆動ローラー55aの回転駆動に応じて回転動作する。
【0031】
ベルト搬送部において、第1の搬送ベルト52と第2の搬送ベルト54とは面接触し、それぞれ回転することにより用紙Pを搬送する。具体的には、第1の搬送ベルト52は駆動ローラー53aと従動ローラー53bとの間に平面領域を備え、第2の搬送ベルト54は駆動ローラー55aと従動ローラー55bとの間に平面領域を備えており、第1の搬送ベルト52の下面側の平面領域と第2の搬送ベルト55の上面側の平面領域とが当接されている。
【0032】
冷却部51は、第1の搬送ベルト52に設けられており、第2の搬送ベルト54と向き合う側、すなわち、下面側の平面領域に内接されている。この冷却部51は、用紙Pとの間で熱交換を行うことにより用紙Pを冷却する機能を担っている。例えば、冷却部51は、
図3に示すように、板状部材51a(例えば、熱伝導率の高いアルミ製の板状部材)と、その内部に張り巡らされて冷却水が流れる流路51bとで構成されており、搬送される用紙Pと、冷却水との間で熱交換を行う。冷却部51は、用
紙Pの搬送方向FDと直交する用紙幅方向CDにかけて、用紙Pの寸法よりも大きめな寸法を備えており、搬送される用紙Pの全域を対象として冷却を行うことができるようになっている。
【0033】
また、冷却部51には、電動モーター56を主体とする駆動機構が連結されており、この冷却部51は、電動モーター56が駆動することにより、上下方向、すなわち、搬送される用紙面に対する垂直方向における位置を調整することができる。冷却部51の上下方向における位置調整により、第1の搬送ベルト52と第2の搬送ベルト54との当接により生じるベルト間の圧力(以下「当接圧力」という)の調整を行うことができる。例えば、冷却部51が下方へ、すなわち、第2の搬送ベルト54側へと移動することで、当接圧力を増加させることができ、逆に、冷却部51が上方へと移動することで、当接圧力を減少させることができるといった如くである。当接圧力の増減は、「0」に相当する下限圧力、すなわち、単に用紙Pに接触して用紙Pを搬送し得る圧力から、機械的な制約から定まる上限圧力までの範囲で任意に行うことができる。
【0034】
第2の搬送ベルト54には、第1の搬送ベルト52と向き合う側、すなわち、上面側の平面領域に当接するように、バネなどの付勢手段を介してガイドプレート57が支持されており、このガイドプレート47により、当接圧力を保持するような工夫が施されている。
【0035】
なお、本実施形態では、第1の搬送ベルト52に冷却部51を設けているが、第1の搬送ベルト52に設けずに、第2の搬送ベルト54に設けてもよい。この場合、冷却部51は、第2の搬送ベルト54の上面側の平面領域に内接されることなり、第1の搬送ベルト52の下面側の平面領域にガイドプレート57が配置される。また、当接圧力を調整するために、冷却部51の上下方向の位置を調整することとしているが、ガイドプレート57の上下方向の位置を調整してこれを達成してもよいし、双方の上下方向の位置を調整することによって達成してもよい。さらに、第2の搬送ベルト54には、ガイドプレート57に換えて冷却部51を設けてもよく、第1の搬送ベルト52のみならず、第1の搬送ベルト52及び第2の搬送ベルト54の双方に冷却部51を設けることもできる。
【0036】
再び
図1を参照するに、用紙冷却装置50から送り出された用紙Pは、排紙ローラー42により、筐体の外部側面に取り付けられた排紙トレイ(図示せず)に排出される。
【0037】
また、用紙Pの裏面にも画像形成を行う場合、用紙表面に対する画像形成を終えた用紙Pは、図示しない切換ゲートにより、下方にある反転ローラー43へと搬送される。反転ローラー43は、搬送された用紙Pの後端を挟持した後、逆送することによって用紙Pを反転させて、再給紙搬送経路44に送り出す。この再給紙搬送経路44へと送り出された用紙Pは、複数の搬送手段によって搬送され、転写ニップへと用紙Pを回帰させる。
【0038】
制御部10は、画像形成装置1を統合的に制御する機能を担っている。制御部10としては、例えばCPU、ROM、RAM、I/Oインターフェースを主体に構成されたマイクロコンピュータを用いることができる。この制御部10は、ROMに格納された制御プログラムに従い、各種の演算を行い、この演算結果に基づいて画像形成装置1の動作状態を制御する。また、
【0039】
この制御部10には、ユーザーによって操作される操作部60が接続されている。操作部60は、画像形成装置1の上部に配置されており、ユーザーによって設定される種々の情報を制御部10に出力する。操作部60としては、例えば、ディスプレイ上に表示される情報に従い、入力操作を行うことが可能なタッチパネルを用いることができる。この操作部60を通じて、ユーザーは、ジョブに関する条件、画像条件(倍率、白黒やカラーの選択等)、用紙Pの情報(例えば、上質紙や普通紙といた分類、坪量、サイズ)、印刷部数などを設定することができる。また、制御部10は、操作部60を制御することにより、当該操作部60を介してユーザーに種々のメッセージを表示することができる。
【0040】
本実施形態との関係において、制御部10は、用紙冷却装置50のベルト搬送部に搬送される用紙Pの種類に基づいて、当接圧力を可変的に制御する。用紙Pの種類は、制御部10が用紙Pの熱特性(熱容量)を判別するために参照する情報であり、本実施形態では、用紙Pの坪量がこれに該当する。もっとも、用紙Pの種類は、用紙Pの坪量に限らず、薄紙、普通紙、再生紙、色紙、上質紙といった違いや、製造会社の違いといった種々の用紙態様を、単独で或いはこれらの組み合わせたものを利用することができる。
【0041】
また、制御部10は、当接圧力を変更した際に、用紙Pの搬送を伴わない空回し状態において所定時間(以下、「安定化時間」という。)にわたり第1の搬送ベルト52と第2の搬送ベルト54とを回転させる動作(以下、「ベルト安定化動作」という。)を行う。制御部10は、当接圧力の増減方向及び変更量に基づいて、安定化時間を設定する。なお、安定化時間の設定方法の詳細については後述する。
【0042】
図4は、本実施形態に係る画像形成装置1の用紙冷却装置50における動作の流れを示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、ジョブの入力をトリガーとして呼び出され、制御部10によって実行される。
【0043】
まず、ステップ10(S10)において、制御部10は、操作部60等から得られる情報に基づいて、紙種情報、すなわち、用紙冷却装置50に導入される用紙Pの種類を読み込む。本実施形態では、用紙Pの種類として、用紙Pの坪量が読み込まれる。
【0044】
ステップ11(S11)において、制御部10は、読み込まれた用紙Pの坪量に基づいて、第1の搬送ベルト52と第2の搬送ベルト54との当接により生じるベルト間の圧力である当接圧力を決定する。かかる処理により決定される当接圧力は、当接圧力の目標値として機能するものである。
【0045】
当接圧力は、用紙Pの坪量が大きい程、当接圧力が大きくなるように設定される。この場合、当接圧力は、用紙Pの坪量に応じて値が線形的に決定されてもよいし、用紙Pの坪量に応じてステップ的に値が決定されてもよい。例えば、用紙Pの坪量に応じて、すなわち、100(g/m
2)以下の「小」なるグループ、100(g/m
2)から200(g/m
2)以下の「中」なるグループ、200(g/m
2)よりも大きい「大」なるグループから構成される3つのグループが設定されている。また、「小」のグループには当接圧力P1が、「中」のグループには当接圧力P2が、「大」のグループには当接圧力P3が関連付けられており、これらの当接圧力P1〜P3は、P1、P2、P3の順番で値が大きくなるような関係に設定されている。このような前提のもと、制御部10は、読み込まれた用紙Pの坪量から、該当するグループを検索し、当該グループに関連付けられている値から当接圧力を決定するといった如くである。
【0046】
ステップ12(S12)において、制御部10は、当接圧力の状態を確認することにより、当該当接圧力の現在値を特定する。当接圧力の現在値は、冷却部51の上下方向における現在の位置を通じて特定することができる。
【0047】
ステップ13(S13)において、制御部10は、当接圧力の変更が必要か否かを判断する。具体的には、制御部10は、当接圧力の現在値と、その目標値とを比較して、両者が一致していないか否かを判断する。当接圧力の現在値とその目標値とが一致していない場合には、当接圧力の変更が必要となるため、本ステップにおいて肯定判定され、ステップ14(S14)に進む。一方、当接圧力の現在値とその目標値とが一致している場合には、当接圧力の変更は必要ないため、本ステップにおいて否定判定され、後述するステップ17(S17)に進む。
【0048】
ステップ14において、制御部10は、目標値となるように、当接圧力を変更する。具体的には、制御部10は、所望の当接圧力と、冷却部51の上下方向における位置との対応関係を保持しており、当該電動モーター56を制御することにより、当接圧力の目標値に基づいて冷却部51の上下方向における位置を移動させる。
【0049】
ステップ15(S15)において、制御部10は、安定化時間を設定する。当接圧力を変更することで、個々の搬送ベルト52,54に付与される張力や両者のパワーバランスが変動するため、搬送ベルト52,54に波打ちといったような変動状態が生じ得る。このような変動状態で用紙Pが搬送されると、用紙Pにしわが形成さ
れる等のヤレが発生する。そこで、当接圧力を変更した際に、ベルト安定化動作、具体的には、用紙Pの搬送を伴わない空回し状態において安定化時間にわたり第1の搬送ベルト52と第2の搬送ベルト54とを回転させる動作を行うこととしている。
【0050】
制御部10は、以下の表に示すように、当接圧力の増減方向及び変更量に基づいて、安定化時間を設定する。
【表1】
【0051】
当接圧力の変更量が大きい程、ベルトの変動状態が大きく生じ易く、安定化時間は長く設定されることが好ましい。また、同一の変更量であっても、当接圧力を増加方向へと変更させる方がそれを減少方向へと変更させる場合と比べてベルトの変動状態が小さい傾向にある。このような知得を前提に、ベルトの変動状態に則した安定化時間が確保されるように、実験やシミュレーションを通じて、当接圧力の増減方向及び変更量と安定化時間との関係が適切に設定されている。
【0052】
ステップ16(S16)において、制御部10は、ステップ14において当接圧力を変更してからの経過時間を参照して、安定化時間が経過したか否かを判断する。このステップ16において肯定判定された場合、すなわち、安定化時間が経過した場合には、ステップ17(S17)に進む。一方、ステップ16において否定判定された場合、すなわち、安定化時間が経過していない場合には、ステップ16の処理を再度行う。
【0053】
なお、ステップ15において設定される安定化時間を確保する方法としては、以下の手法が考えられる。例えば、制御部10が、用紙Pの通過期間に合わせて、第1の搬送ベルト52及び第2の搬送ベルト54の回転を開始・停止させているような制御形態では、通常の回転開始タイミングよりも安定化時間だけ先行して、第1の搬送ベルト52及び第2の搬送ベルト54の回転を開始させればよい。また、安定化時間が確保されるように、用紙Pの搬送開始タイミングを遅延させたり、用紙冷却装置50よりも上流側で用紙Pを待機させたりしてもよい。
【0054】
ステップ17において、制御部10は、用紙冷却装置50へと用紙Pを導入させ、第1の搬送ベルト52及び第2の搬送ベルト54で用紙Pを搬送する。第1の搬送ベルト52及び第2の搬送ベルト54による用紙Pの搬送を通じて用紙Pの冷却が行われる。
【0055】
ステップ18(S18)において、制御部10は、用紙Pがジョブにおける最終紙か否かを判断する。このステップ18において肯定判定された場合、すなわち、現在の用紙Pが最終紙である場合には、本ルーチンを終了する。一方、ステップ18において否定判定された場合、すなわち、現在の用紙Pが最終紙ではなく、後続の用紙Pが存在する場合には、ステップ10の処理に戻る。
【0056】
このように本実施形態において、画像形成装置1は、熱定着により用紙Pに画像を定着させる定着処理後の用紙Pに対して冷却を行う用紙冷却装置50を備えている。この用紙冷却装置50は、第1の搬送ベルト52と第2の搬送ベルト54とが面接触し、それぞれ回転することにより用紙Pを搬送するベルト搬送部と、第1の搬送ベルト52に内接されて用紙Pとの間で熱交換を行うことにより用紙Pを冷却する冷却部51と、ベルト搬送部に搬送される用紙Pの種類に基づいて、第1の搬送ベルト52と第2の搬送ベルト54との当接圧力を可変的に制御する制御部10と、を有している。
【0057】
一般に、当接圧力を高く設定すれば、当接圧力がそれよりも低く設定されている場合と比較して用紙Pから冷却部51への熱伝導率が高くなるので、用紙Pに対する冷却性能をアップさせることができる。このように、当接圧力と、用紙Pに対する冷却性能との間には因果関係が存在する。そこで、全ての種類の用紙Pに対して必要な冷却がなされるように、坪量が大きい用紙Pに対応する当接圧力を固定的に設定した場合には、坪量の小さい用紙Pにとっては過剰な当接圧力となり、用紙Pにしわが形成される等のヤレが発生する。一方、ヤレの発生を抑制する観点から、坪量が小さい用紙Pに対応する当接圧力を固定的に設定した場合には、坪量の大きい用紙Pに必要な冷却がなされる程度に当接圧力が確保されないといった事態が生じ得る。
【0058】
この点本実施形態によれば、用紙Pの種類に基づいて当接圧力を可変的に制御することで、その種類に適した冷却性能を確保することができる。また、ヤレが発生しやすい坪量の小さい用紙Pは、低い冷却性能でも足り、冷却度合いが高い用紙Pは、ヤレが発生し難いといった傾向にある。そのため、搬送に起因する用紙品質及び用紙Pに要求される冷却性能の双方を具備する当接圧力の制御の方向性は互いに対応しているので、用紙Pに要求される冷却性能に応じて、搬送に起因する用紙品質が低下するといった事態を抑制することができる。これにより、搬送に起因する用紙品質を確保しつつ、用紙Pの種類に応じた適切な冷却性能を実現することができる。
【0059】
また、本実施形態において、制御部10は、当接圧力を変更した際に、用紙Pの搬送を伴わない空回し状態において所定の安定化時間にわたり第1の搬送ベルト52と第2の搬送ベルト54とを回転させるベルト安定化動作を行うこととしている。
【0060】
かかる構成によれば、波打ちが発生するようなシーンであっても、ベルト安定化動作によりこれを吸収することができるので、用紙Pは波打ちが収束してから第1の搬送ベルト52及び第2の搬送ベルト54に搬送されることとなる。これにより、用紙Pにしわが形成さ
れる等のヤレの発生を抑制することができる。
【0061】
また、本実施形態において、制御部10は、当接圧力の増減方向及び変更量に基づいて、安定化時間を設定することとしている。
【0062】
かかる構成によれば、波打ちの程度に合わせて安定化時間を設定することができるので、当該安定化時間の最適化を達成することできる。これにより、生産性の低下や冗長な制御といった事態を抑制することができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態にかかる画像形成装置について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その発明の範囲内において種々の変形が可能であることはいうまでもない。また、用紙冷却装置は、画像形成装置の一部をなしているが、単独の装置として構成してもよく、これ自体が本発明の一部として機能する。さらに、用紙冷却装置の制御を画像形成装置の制御により実現しているが、用紙冷却装置が単独の制御部を備え、独立した制御構成を実現することも可能である。