(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ハイブリッド車または電気自動車の車体後部の床面を形成するリアフロアパネルと、該リアフロアパネルの下方に位置し車幅方向に延びるサスペンション部材と、該サスペンション部材の後方に位置するバッテリユニットとを備えた車体後部構造において、
前記リアフロアパネルの側端に沿って配置され車両前後方向に延びた一対のサイドメンバと、
前記リアフロアパネルの下方の前端寄りに配置され前記一対のサイドメンバ間に差し渡された第1クロスメンバと、
前記第1クロスメンバの後方で前記リアフロアパネルの下面に配置され前記一対のサイドメンバ間に差し渡された第2クロスメンバと、
前記バッテリユニットを囲んで該バッテリユニットを支持する枠状のフレーム部材と、
前記第1クロスメンバから前記第2クロスメンバまで車両左右方向の中央で差し渡されたブリッジ部材であってその後端に後側に張り出した後方フランジを有し該後方フランジによって前記第2クロスメンバに接続されているブリッジ部材と、
前記一対のサイドメンバの内部に配置され前記第2クロスメンバの前端部から後端部までに相当する範囲にわたって該一対のサイドメンバを補強するリインフォースメントとをさらに備え、
前記サスペンション部材は、前記第2クロスメンバの真下またはそれより前方に位置し、
前記一対のサイドメンバは、前記一対のリインフォースメントの前端部またはその付近から前記第1クロスメンバに向けて下方に傾斜していて、
当該車体後部構造は、
前記一対のサイドメンバの後端部から前記第2クロスメンバまでの後方領域と、前記第2クロスメンバが途絶えた位置から前記第1クロスメンバまでの前方領域とに区分されていて、
前記前方領域と前記後方領域との境界には、前記第2クロスメンバおよび前記一対のリインフォースメントが配置されていず、該境界は、前記前方領域および前記後方領域に比べて剛性が低いことを特徴とする車体後部構造。
前記第2クロスメンバの車両側方から見た断面は、前側に張り出した第1フランジと、後側に張り出した第2フランジと、該第1および第2フランジの間で下方に突出する凸形状とからなる逆向きのハット形状を有し、
前記第1フランジおよび第2フランジは、前記リアフロアパネルの下面にそれぞれ固定されていることを特徴とする請求項1に記載の車体後部構造。
前記一対のリインフォースメントと、前記一対のサイドメンバと、前記第2クロスメンバとは、3枚重ねで接合されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車体後部構造。
前記リアフロアパネルのうち前記一対のサイドメンバの後端部から前記第2クロスメンバまでの間に形成された開口部であって該開口部を通して前記バッテリユニットが該リアフロアパネルの上下に跨っている開口部をさらに備え、
前記フレーム部材は、前記開口部の縁に設置されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の車体後部構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ハイブリッド車や電気自動車などの車体後部構造では、リアフロアパネルに形成された開口部を通してバッテリユニットがリアフロアパネルの上下に跨って設置されているものが知られている。これに対して、特許文献1に記載の車体後部構造は、後突時でのスペアタイヤと燃料タンクとが相互に干渉することを防止するためものに過ぎない。
【0007】
すなわち、特許文献1には、上記車体後部構造において、後突時にバッテリユニットが障害物としての他の部材に接触することを回避する具体的な構成は開示されていない。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、後突時にバッテリユニットを保護できる車体後部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車体後部構造の代表的な構成は、ハイブリッド車または電気自動車の車体後部の床面を形成するリアフロアパネルと、リアフロアパネルの下方に位置し車幅方向に延びるサスペンション部材と、サスペンション部材の後方に位置するバッテリユニットとを備えた車体後部構造において、リアフロアパネルの側端に沿って配置され車両前後方向に延びた一対のサイドメンバと、リアフロアパネルの下方の前端寄りに配置され一対のサイドメンバ間に差し渡された第1クロスメンバと、第1クロスメンバの後方でリアフロアパネルの下面に配置され一対のサイドメンバ間に差し渡された第2クロスメンバと、バッテリユニットを囲んでバッテリユニットを支持する枠状のフレーム部材と、第1クロスメンバから第2クロスメンバまで車両左右方向の中央で差し渡されたブリッジ部材であってその後端に後側に張り出した後方フランジを有し後方フランジによって第2クロスメンバに接続されているブリッジ部材と、一対のサイドメンバの内部に配置され第2クロスメンバの前端部から後端部までに相当する範囲にわたって一対のサイドメンバを補強するリインフォースメントとをさらに備え、サスペンション部材は、第2クロスメンバの真下またはそれより前方に位置し、一対のサイドメンバは、一対のリインフォースメントの前端部またはその付近から第1クロスメンバに向けて下方に傾斜していることを特徴とする。
【0010】
上記構成において、後突時でのバッテリユニットの挙動について説明する。ここでは、車体後部構造を、一対のサイドメンバの後端部から第2クロスメンバまでの後方領域と、第2クロスメンバが途絶えた位置から第1クロスメンバまでの前方領域とに区分して説明する。
【0011】
後方領域では、一対のサイドメンバのうち車両側方から見て第2クロスメンバに重なる位置に一対のリインフォースメントが配置されている。さらに、バッテリユニットを囲んでバッテリユニットを支持するフレーム部材が設置されている。このため、後方領域は、リインフォースメントおよびフレーム部材によって剛性が高くなり、後突時において変形し難い。前方領域では、第1クロスメンバから第2クロスメンバまで差し渡されたブリッジ部材が、後突時に車両前後方向に突っ張るので、変形し難い。
【0012】
ところが、前方領域と後方領域との境界、すなわち第2クロスメンバが途絶える位置より前方には一対のリインフォースメントが配置されていないため、剛性が低い。また、ブリッジ部材は上述のように剛性が高いものの、第2クロスメンバに対しては、剛性の低い後方フランジによって接続されている。さらに、一対のサイドメンバは、前方領域にて下方に傾斜している。よって、後突時の衝撃により後方領域が前方に移動しようとすると、車体後部構造は、前方領域と後方領域との境界、すなわち第2クロスメンバが途絶えた位置(一対のリインフォースメントが途絶えた位置)で上方に凸に屈曲し、いわゆる山折りとなる。より詳細に述べると、この山折りは、ブリッジ部材の後方フランジのうち、第2クロスメンバに接続されていない根元の位置で生じる。
【0013】
このように山折りが第2クロスメンバより前方で生じるので、第2クロスメンバは斜め上方に移動する。それに伴って、フレーム部材に支持され後方領域に位置するバッテリユニットも、前方ではなく斜め上方に移動する。したがって、本発明による車体後部構造によれば、バッテリユニットは、第2クロスメンバの真下またはそれより前方に位置する障害物(サスペンション部材)を、後突時に避けることができる。よって、後突時にバッテリユニットを保護できる。
【0014】
上記の第2クロスメンバの車両側方から見た断面は、前側に張り出した第1フランジと、後側に張り出した第2フランジと、第1および第2フランジの間で下方に突出する凸形状とからなる逆向きのハット形状を有し、第1フランジおよび第2フランジは、リアフロアパネルの下面にそれぞれ固定されているとよい。これにより、第2クロスメンバとリアフロアパネルとで閉断面が形成される。よって、第2クロスメンバは剛性が高く、後突時に変形し難い。
【0015】
上記のブリッジ部材の後方フランジは、第2クロスメンバの第1フランジに接続されているとよい。これにより、ブリッジ部材の後方フランジのうち、第2クロスメンバの前側の第1フランジに接続されていない根元の部分で山折りが生じる。このため、ブリッジ部材と第2クロスメンバとが接続されていても、後突時において山折りが阻害されることはなく、より確実に山折りが生じる。よって、後突時に、バッテリユニットが障害物であるサスペンション部材に接触することを避けることができる。
【0016】
上記の一対のリインフォースメントと、一対のサイドメンバと、第2クロスメンバとは、3枚重ねで接合されているとよい。これにより、一対のリインフォースメントの位置では、3枚の板金が重ねられた状態で接合されていて、後突時の剛性がより堅固に担保される。よって、車体後部構造は、第2クロスメンバおよび一対のリインフォースメントが途絶えた位置にてより確実に屈曲できる。
【0017】
上記の車外側に位置しシートベルトの端部を固定するアンカー部材をさらに備え、アンカー部材は、リインフォースメントに固定されるとよい。これにより、リインフォースメントは、上記の山折りが生じる位置を設定するだけでなく、アンカー部材を固定する部材として用いることが可能となり、部品数を削減できる。
【0018】
上記のブリッジ部材と一対のサイドメンバのいずれか一方との間に搭載される燃料タンクと、他方との間に搭載される電装部品とをさらに備え、燃料タンクおよび電装部品は、第2クロスメンバには固定されず、ブリッジ部材と、一対のサイドメンバと、第1クロスメンバとに固定されているとよい。
【0019】
これにより、第2クロスメンバに固定されていない燃料タンクおよび電装部品は、第1クロスメンバと第2クロスメンバとの間で、車両前後方向に突っ張ることがない。よって、車体後部構造は、第2クロスメンバおよび一対のリインフォースメントが途絶えた位置にて後突時に確実に屈曲できる。また、燃料タンクおよび電装部品は、第2クロスメンバを除く周囲の各部材に固定されているので、後突時に変形し難く保護される。
【0020】
上記のリアフロアパネルのうち一対のサイドメンバの後端部から第2クロスメンバまでの間に形成された開口部であって開口部を通してバッテリユニットがリアフロアパネルの上下に跨っている開口部をさらに備え、フレーム部材は、開口部の縁に設置されているとよい。これにより、リアフロアパネルに開口部が形成されたことで剛性が低くなったとしても、開口部の縁に設置されるフレーム部材によって剛性を高めることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、後突時にバッテリユニットを保護できる車体後部構造を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0024】
図1は、本実施形態における車体後部構造100が適用される車両102の一部を示す図である。車両102は、例えばハイブリッド車であって、車体後部に搭載された車両駆動用のバッテリユニット104を備える。バッテリユニット104の上部は、カバー部材106によって覆われている。なお、バッテリユニット104は、内部に複数のバッテリーセルを収容している。また、バッテリユニット104の後方には、バックパネル108が配置されている。
【0025】
車体後部構造100は、車体後部の床面を構成するリアフロアパネル110を備える。リアフロアパネル110の上面には、図中二点鎖線にて示すシートクッション112およびシートバック114を含むリアシート116が設置され、さらにベルトアンカー部材118a、118bが固定されている。ベルトアンカー部材118a、118bは、車外側に位置していて、シートベルト120a、120bの端部をそれぞれ固定する。なお、図中ではシートバック114は1人掛けであり、ベルトアンカー部材118a側の2人掛けのシートバックは省略していて、このシートバックに収容されたリトラクタ122のみを図示している。
【0026】
ベルトアンカー部材118a、118bの車両中央側には、他のベルトアンカー部材124a、124b、124cと、これらのベルトアンカー部材124a、124b、124cに支持されるバックル126a、126b、126cとが配置されている。バックル126a、126bは、シートベルト120a、120bに挿通された不図示のタングと係合する。バックル126cは、上記のリトラクタ122により巻き取られる図示を省略したシートベルトに挿通されたタング(不図示)と係合する。
【0027】
ところで、車体後部にバッテリユニット104を搭載した上記車体後部構造100では、車両後方からの衝突(後突)時にバッテリユニット104が衝撃を受け易い。仮に、後突時の衝撃に起因してバッテリユニット104が車両前方に移動してしまうと、バッテリユニット104は、バッテリユニット104の前方に配置された適宜の部材に接触して、変形あるいは破損する可能性がある。なお、適宜の部材とは、サスペンション部材などであり、後突時にバッテリユニット104の障害物となり得る。
【0028】
そこで、本実施形態の車体後部構造100では、後突時にバッテリユニット104が車両前方ではなく斜め上方に移動して、障害物との接触を回避するように車体を変形させる構成を採用した。
【0029】
図2は、
図1の車体後部構造100を一部省略して示す図である。ここでは、
図1の車体後部構造100からリアフロアパネル110などを省略した状態で示している。
図3は、
図2の車体後部構造100の一部を拡大して示す図である。
図4は、
図3の車体後部構造100の一部を透視した状態で示す図である。
【0030】
車体後部構造100は、上記各部材に加えて、一対のサイドメンバ128a、128bと、バッテリユニット104の車両前方に位置するサスペンション部材130とを備える。一対のサイドメンバ128a、128bは、上記のリアフロアパネル110の側端に沿って配置され車両前後方向に延びていて、
図2に一点鎖線で示した境界線A付近から前方に向かって、下方に傾斜している。
【0031】
一対のサイドメンバ128a、128bの後端付近には、車幅方向に延びる上記バックパネル108が差し渡されている。また、一対のサイドメンバ128a、128bの前端付近には、第1クロスメンバ132が差し渡されている。第1クロスメンバ132は、車幅方向に延びていてリアフロアパネル110の下方の前端寄りに配置されている。さらに、一対のサイドメンバ128a、128b間には、第2クロスメンバ134が差し渡されている。第2クロスメンバ134は、車幅方向に延びていて、第1クロスメンバ132の後方でリアフロアパネル110の下面に配置されている。
【0032】
第2クロスメンバ134は、
図3に示すように、前側に張り出した第1フランジ134aと、後側に張り出した第2フランジ134bとを有する。また、第2クロスメンバ134は、第1フランジ134aと第2フランジ134bとの間に形成され、下方に突出した凸部134cを有する。
【0033】
このため、第2クロスメンバ134は、車両側方から見た断面が第1フランジ134a、第2フランジ134bおよび凸部134cからなる、逆向きのハット形状を有する(
図6参照)。さらに、第2クロスメンバ134は、第1フランジ134aおよび第2フランジ134bがリアフロアパネル110の下面にそれぞれ固定されることで、リアフロアパネル110とともに閉断面を形成する。よって、第2クロスメンバ134は剛性が高くなり、後突時に変形し難い。
【0034】
なお以下では、
図2に示す境界線Aよりも車両前方に位置する領域を前方領域B、また、車両後方に位置する領域を後方領域Cと称する。後方領域Cは、一対のサイドメンバ128a、128bの後端付近から第2クロスメンバ134までの領域である。前方領域Bは、第2クロスメンバ134が途絶えた位置から第1クロスメンバ132までの領域である。なお、第2クロスメンバ134が途絶えた位置とは、車両側方から見て第2クロスメンバ134が配置されていず、上記の第1フランジ134aよりも前側であり、境界線Aにて示される位置をいう。
【0035】
前方領域Bについて説明する。前方領域Bには、例えば、ブリッジ部材136、燃料タンク138、DC−DCコンバータなどの電装部品(充電器ユニット)140などが位置している。ブリッジ部材136は、第1クロスメンバ132から第2クロスメンバ134まで、車両左右方向の車体中央付近で差し渡された部材である。
【0036】
ブリッジ部材136は、
図3に示すように、その後端に後側すなわち第2クロスメンバ134に向かって張り出した後方フランジ136aを有する。後方フランジ136aは、第2クロスメンバ134の第1フランジ134aに接続されているものの、第2クロスメンバ134とリアフロアパネル110とで閉断面を形成する凸部134cまでは延びていない。
【0037】
つまり、ブリッジ部材136は、第2クロスメンバ134に対しては、剛性の低い後方フランジ136aによって接続されている。ここでブリッジ部材136そのものは、剛性の高い部材である。また、後方フランジ136aは、第2クロスメンバ134の第1フランジ134aに重ねられ、リアフロアパネル110の下面に溶接される。
【0038】
また、ブリッジ部材136は、上記後方フランジ136aに加えて、例えばほぼ全周に他のフランジが形成されている。特に前端部すなわち第1クロスメンバ132に向かって張り出したフランジ136b(
図5参照)は、第1クロスメンバ132に結合されている。
【0039】
第1クロスメンバ132は、
図2に示すように、境界線A付近から車両前方に向けて下方に傾斜した一対のサイドメンバ128a、128bの前端付近にてサイドメンバ128a、128b間に差し渡されていることから、第2クロスメンバ134よりも車両上下方向で下方に位置している。
【0040】
そして、第1クロスメンバ132は、車室内の前方に配置されるメインフロアパネルの後端に形成された段差部142とともに閉断面を形成している(
図6参照)。よって、第1クロスメンバ132は剛性が高くなり、後突時に変形し難い。また上記リアフロアパネル110は、メインフロアパネルの段差部142の後方に配置されている。なお、ブリッジ部材136のフランジ136bは、第1クロスメンバ132に限らず、車幅方向に沿って段差部142に配置される適宜の部材に結合されていてもよい。
【0041】
燃料タンク138および電装部品140は、第2クロスメンバ134よりも車両前側に搭載されていて、ブリッジ部材136を挟んで車幅方向に沿って並んで設置されている。燃料タンク138および電装部品140は、ブリッジ部材136の車両左側および車両右側にそれぞれ位置していて、第2クロスメンバ134には固定されず、第1クロスメンバ132と、ブリッジ部材136と、一対のサイドメンバ128a、128のいずれか一方とに固定されている。
【0042】
燃料タンク138および電装部品140は、第2クロスメンバ134に固定されていないことから、後突時に、第1クロスメンバ132と第2クロスメンバ134との間で、車両前後方向に突っ張ることがない。その一方で、前方領域Bに含まれる燃料タンク138および電装部品140は、第2クロスメンバ134を除く周囲の各部材に固定されているので、後突時に変形し難い。
【0043】
つまり、前方領域Bでは、一対のサイドメンバ128a、128bおよびブリッジ部材136が配置され、また、第1クロスメンバ132を含む閉断面構造が車幅方向に延びていて、さらに、ブリッジ部材136の前端部が第1クロスメンバ132に接合されていることから、剛性は高くなっている。
【0044】
つぎに、後方領域Cについて説明する。後方領域Cには、
図5に示すように、上記サスペンション部材130、バッテリユニット104を囲んでバッテリユニット104を支持する枠状のフレーム部材144などが位置している。
図5は、
図2の車体後部構造100の一部を下方から見た図である。ただし、図中では上記バックパネル108を省略している。
【0045】
サスペンション部材130は、一対のベース部材146a、146b間をつなぐ車幅方向に延びるトーションビーム148を備える。一対のベース部材146a、146bは、一対のサイドメンバ128a、128bに設けられたブラケット150a、150bに回転可能に支持されていて後方に延びる部材である。ブラケット150a、150bは、車両前後方向において第2クロスメンバ134よりも前方に位置している。
【0046】
また、ベース部材146a、146bとトーションビーム148とが結合された箇所の後方かつ車両内側には、不図示のコイルスプリングを設置するための座面152a、152bが形成されている。さらに、ベース部材146a、146bは、座面152a、152bの後方かつ車両外側に形成されたリアタイヤ取付部154a、154bと、ベース部材146a、146bの後端付近の車両内側に設けられ、不図示のショックアブソーバーを支持するピン156a、156bとを有する。
【0047】
図6は、
図5の車体後部構造100のD−D断面図である。トーションビーム148は、リアフロアパネル110の下方に位置し、バッテリユニット104の車両前方に位置している。一例として、トーションビーム148は、車両前後方向において、バッテリユニット104のフレーム部材144の前端部に、トーションビーム148の後端部がわずかに重なる位置にある。また、トーションビーム148は、車両上下方向において、バッテリユニット104の下端と若干重なる位置にある。
【0048】
さらに、トーションビーム148は、リアフロアパネル110とともに上記閉断面を形成した第2クロスメンバ134のほぼ真下に位置している。なお、トーションビーム148は、第2クロスメンバ134のほぼ真下に限らず、第2クロスメンバ134の真下よりも前方に位置してもよい。
【0049】
バッテリユニット104は、上部側バッテリーセル104aと、下部側バッテリーセル104bとを収容している。さらに、バッテリユニット104は、上部側バッテリーセル104aの下端に設けられたフランジ104cと、下部側バッテリーセル104bの上端に設けられたフランジ104dとを重ねて固定することで形成されている。
【0050】
フレーム部材144の枠体158の上面に、バッテリユニット104の重ねられたフランジ104c、104dを載置してネジなどで締結することで、バッテリユニット104とフレーム部材144とが一体化される。
【0051】
リアフロアパネル110は、リアフロアパネル110を貫通する開口部110aを有する。バッテリユニット104は、フレーム部材144に支持され一体化され、開口部110aを通って、リアフロアパネル110の上下に跨った状態で車体後部に搭載される。
【0052】
なおバッテリユニット104は、上記のカバー部材106によって車室内側から覆われている。カバー部材106には例えばフランジ106aが設けられ、リアフロアパネル110にネジなどにより締結される。さらにカバー部材106のフランジ106aとリアフロアパネル110との間にはシール部材が配置され、車室外からの水などが車室内に浸入することを防止している。
【0053】
つぎに、
図7を参照してフレーム部材144について説明する。
図7は、
図2の車体後部構造100を一部省略した状態で斜め下方から見た分解斜視図である。図中では、リアフロアパネル110の下面を示し、上記の燃料タンク138および電装部品140を省略している。
【0054】
フレーム部材144の枠部158には、図示のように、上方に立設した筒状の複数の取付部160a〜160fが形成されている。取付部160a、160bは、第2クロスメンバ134のうち車両後方に延びる延長部162a、162b(
図2および
図3参照)に形成された固定部164a、164bにそれぞれ固定されている。また、取付部160c、160dは、サイドメンバ128aに形成された固定部164c、164dに固定されている。さらに、取付部160e、160fは、サイドメンバ128bに形成された固定部164e、164fに固定されている。
【0055】
このようにして、バッテリユニット104は、フレーム部材144に全周を囲まれ一体化された状態で、車両下方からリアフロアパネル110の開口部110aを通って、
図6に示したように車体後部に搭載される。なおフレーム部材144は、構造体として構成されることで、全体としての剛性は高い。そして、バッテリユニット104は、剛性の高いフレーム部材144で全周を囲まれることで保護され、後突の影響を受け難い。
【0056】
つまり、後方領域Cは、リアフロアパネル110に開口部110aが形成されたことで剛性が低くなっているものの、開口部110aの縁などに設置されるフレーム部材144によって剛性は高くなっている。
【0057】
このように車体後部構造100では、前方領域Bに含まれる燃料タンク138および電装部品140、後方領域Cに含まれるバッテリユニット104ともに、後突時に保護されている。
【0058】
さらに、車体後部構造100では、境界線Aにて車体が変形するように、
図2に示すように、一対のサイドメンバ128a、128bの内部に一対のリインフォースメント170a、170bを配置した。一対のリインフォースメント170a、170bは、
図2に破線にて示した上記ベルトアンカー部材118a、118b(
図1参照)を固定する部材としても用いられ、部品数の削減も可能となる。
【0059】
以下、
図3および
図4を参照して、サイドメンバ128a、第2クロスメンバ134およびリインフォースメント170aについて説明する。なお、他方のサイドメンバ128bおよびリインフォースメント170bについては、上記のサイドメンバ128aおよびリインフォースメント170aと同一の構成となっており、説明を省略する。
【0060】
サイドメンバ128aは、
図3に示すように、車内側および車外側にそれぞれ形成されたフランジ172a、172bと、下方に凸形状となる凸部172cとからなり、車幅方向に沿った断面がいわゆる逆向きのハット形状を有している。また、第2クロスメンバ134の端部は、
図4に示すように、第1フランジ134aおよび第2フランジ134bともにサイドメンバ128aの下面に沿って延びていて、サイドメンバ128aに重ねられている。
【0061】
リインフォースメント170aは、
図3に示すように、第2クロスメンバ134の前端部となる第1フランジ134aから後端部となる第2フランジ134bまでに相当する範囲にわたって、車両前後方向に延びている。つまり、リインフォースメント170aの前端部174aおよび後端部174bは、車幅方向から見て、第2クロスメンバ134の前端部および後端部とほぼ同じ位置となっている。そして、リインフォースメント170aは、上記の範囲にわたって、サイドメンバ128aを補強している。
【0062】
また、リインフォースメント170aは、
図4に示すように、サイドメンバ128aの内部となる凸部172cに上方から重ねられている。このため、リインフォースメント170aと、サイドメンバ128aと、第2クロスメンバ134とは、3枚重ねで接合されている。よって、一対のリインフォースメント170a、170bの位置では、3枚の板金が重ねられた状態で接合されるので、後突時の剛性がより堅固に担保され、後突時に変形し難い。
【0063】
これに対して、一対のサイドメンバ128a、128bのうち、
図2に示した境界線A(すなわち第2クロスメンバ134が途絶える位置)より前方には、
図3に示すように、一対のリインフォースメント170a、170bが配置されていないため、剛性が低い。このように、一対のサイドメンバ128a、128bでは、境界線Aを境にして剛性に差が生じている。
【0064】
以下、
図2および
図8を参照して、後突時でのバッテリユニット104の挙動について説明する。
図8は、
図2の車体後部構造100の後突時での変形の様子を例示する図である。図中破線で囲んだ領域Eは、一対のサイドメンバ128a、128bに、第2クロスメンバ134および一対のリインフォースメント170a、170bが車両側方から見てそれぞれ重なって配置された領域を示している。このため、境界線Aは、領域Eの前方に位置している。なお、領域Eは、後方領域Cに位置している。
【0065】
まず、
図8(a)に示すように後突時にバックパネル108が矢印Fに示す衝撃を受けると、この衝撃は、
図2および
図8(b)の矢印Gに示すように一対のサイドメンバ128a、128bに伝達される。
【0066】
ここで、前方領域Bに位置する一対のサイドメンバ128a、128bには、第2クロスメンバ134および一対のリインフォースメント170a、170bが配置されていない。このため、前方領域Bに位置する一対のサイドメンバ128a、128bは、領域Eに比べて剛性が低い。また、前方領域Bに位置する一対のサイドメンバ128a、128bは、第1クロスメンバ132に向けて下方に傾斜している。さらに、ブリッジ部材136は、剛性が高いものの、第2クロスメンバ134に対しては
図3に示す剛性の低い後方フランジ136aによって接続されているに過ぎない。
【0067】
これらのことから、車体後部構造100では、矢印Gで示した衝撃に加え、
図2および
図8(b)の矢印Hに示すような衝撃を受ける。その結果、車体後部構造100は、
図8(c)に示すように、後方領域Cが前方に移動しようとすると、前方領域Bと後方領域Cとの境界線Aの位置、すなわち第2クロスメンバ134および一対のリインフォースメント170a、170bが途絶えた位置で上方に凸に屈曲し、いわゆる山折りとなる。また、この山折りは、ブリッジ部材136に関しては、後方フランジ136aのうち、第2クロスメンバ134の第1フランジ134aと重なっていない根元の位置で生じることになる。
【0068】
このように山折りが第2クロスメンバ134より前方で生じるので、第2クロスメンバ134は斜め上方に移動する。第2クロスメンバ134の移動に伴って、フレーム部材144に支持され後方領域Cに位置するバッテリユニット104も、
図8(c)に矢印Iで示すように車両前方ではなく斜め上方に移動する。
【0069】
したがって、車体後部構造100によれば、バッテリユニット104は、第2クロスメンバ134の真下またはそれより前方に位置する、サスペンション部材130のトーションビーム148などの障害物を、後突時に避けることができる。その結果、後突時にバッテリユニット104を保護できる。
【0070】
上記実施形態では、車両102をハイブリッド車としたが、これに限らず、車体後部に搭載されたバッテリユニット104を備えた電気自動車であってもよい。上記車体後部構造100を電気自動車に適用した場合であっても、後突時にバッテリユニット104を保護できる。また、上記実施形態では、リアフロアパネル110に開口部110aを形成したが、これに限らず、開口部110aを形成せずに、リアフロアパネル110の下方にバッテリユニット104を支持する車両であってもよい。
【0071】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。