特許第6035922号(P6035922)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6035922
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/18 20060101AFI20161121BHJP
   H01M 2/16 20060101ALI20161121BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20161121BHJP
   H01G 11/52 20130101ALI20161121BHJP
【FI】
   H01M2/18 Z
   H01M2/16 M
   H01M2/16 P
   H01M2/16 L
   H01M10/04 Z
   H01G11/52
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-154786(P2012-154786)
(22)【出願日】2012年7月10日
(65)【公開番号】特開2014-17159(P2014-17159A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2014年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】南形 厚志
(72)【発明者】
【氏名】奥田 元章
【審査官】 赤樫 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−210500(JP,A)
【文献】 特開2012−104291(JP,A)
【文献】 特開2007−273606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/14− 2/18
H01M 10/04−10/0587
H01M 4/00− 4/62
H01G 11/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の面に活物質層が形成された第1電極、
前記第1電極を挟む第1セパレータと第2セパレータ、
及び前記第1電極とは異なる極性の第2電極が積層されてなる電極組立体を備えた蓄電装置において、
記第1セパレータは、前記第1電極の前記活物質層が形成された面を覆うとともに前記第1電極より大きく、かつ一部が前記第1電極の一部からはみ出すように外側に延出した第1延出部を有し、
前記第2セパレータは、前記第1電極の他方の面を覆うとともに前記第1電極より大きく、かつ一部が前記第1延出部と同じ方向に延出した第2延出部を有し、
前記第1延出部及び前記第2延出部のいずれか一方が、他方側に折り返されることで前記第1延出部と前記第2延出部が積層されて形成された折り返し部を有し、該折り返し部の少なくとも一部に前記電極組立体の積層方向に溶着された溶着部を有し、
前記折り返し部は、前記第1延出部及び前記第2延出部が延出している領域に形成されていることを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
前記第1延出部及び前記第2延出部は、樹脂層と、該樹脂層の一方の面にセラミックスがコートされたセラミックス層を有し、前記折り返し部において積層方向の最外層に位置し、かつ前記第1電極に向けて折り返した延出部の内面に前記樹脂層が露出している請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記第1セパレータ及び前記第2セパレータは、一枚のセパレータから折り曲げ形成されている請求項1又は請求項2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記第1延出部及び前記第2延出部のうちいずれか一方は他方より長く形成され、前記折り返し部は一方の延出部を折り返して形成される請求項3に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記折り返し部は前記第1延出部及び前記第2延出部の両方を折り返して形成される請求項3に記載の蓄電装置。
【請求項6】
前記第1電極は第1端部の一部から突設されたタブを有し、前記セパレータは前記折り曲げられた位置に折り曲げ部が形成され、該折り曲げ部に前記タブが挿入された切り込みを有するとともに、前記折り曲げ部と反対側の延出部によって前記折り返し部が形成されるとともに、前記溶着部が形成されている請求項3〜請求項5のうちいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項7】
前記第1電極は正極であり、第2電極は負極である請求項1〜請求項のうちいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項8】
前記蓄電装置は二次電池である請求項1〜請求項のうちいずれか一項に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一方の面に活物質層が形成された第1電極、第1電極を挟む第1セパレータと第2セパレータ、及び第1電極とは異なる極性の第2電極が積層されてなる電極組立体を備えた蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
EV(Electric Vehicle)やPHV(Plug in Hybrid Vehicle)などの車両には、走行用モータへの供給電力を蓄える蓄電装置としての二次電池が搭載されている。二次電池は、例えば両面に活物質層が形成された正極シート及び負極シートを有し、正極シートと負極シートとの間にはセパレータが介在している(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図9(a)に示すように、特許文献1において、極板90を収容する袋状セパレータ80は、一枚のセパレータ材料を折り曲げ部87から半分に折り曲げて二つのセパレータ部材83,84を形成し、さらに、折り曲げ部87の両側でセパレータ部材83,84の側縁同士を接合して接合部85を形成することで袋状に形成されている。図9(b)に示すように、二つのセパレータ部材83,84の一対の側縁には、セパレータ部材83,84の周面に対して直交する方向に折り曲げて形成された起立部83a,84aが形成されている。そして、接合部85は、一方のセパレータ部材84の一対の起立部84aの内側に、他方のセパレータ部材83の一対の起立部83aを位置させ、対応する二つの起立部83a,84a同士を接合して形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−326608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、正極と負極の極板90同士が直接対向することを防止するためには、一対のセパレータ部材83,84同士が剥がれないようにすることが重要である。
本発明は、第1セパレータと第2セパレータとが剥がれることを防止できる蓄電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、少なくとも一方の面に活物質層が形成された第1電極、前記第1電極を挟む第1セパレータと第2セパレータ、及び前記第1電極とは異なる極性の第2電極が積層されてなる電極組立体を備えた蓄電装置において、前記第1セパレータは、前記第1電極の前記活物質層が形成された面を覆うとともに前記第1電極より大きく、かつ一部が前記第1電極の一部からはみ出すように外側に延出した第1延出部を有し、前記第2セパレータは、前記第1電極の他方の面を覆うとともに前記第1電極より大きく、かつ一部が前記第1延出部と同じ方向に延出した第2延出部を有し、前記第1延出部及び前記第2延出部のいずれか一方が、他方側に折り返されることで前記第1延出部と前記第2延出部が積層されて形成された折り返し部を有し、該折り返し部の少なくとも一部に前記電極組立体の積層方向に溶着された溶着部を有し、前記折り返し部は、前記第1延出部及び前記第2延出部が延出している領域に形成されていることを要旨とする。
【0007】
これによれば、折り返し部には、折り返さなくても向い合っている第1延出部と第2延出部の間に溶着部が形成され、さらに、いずれか一方の延出部を他方側に折り返すことで向い合った第1延出部と第2延出部の間にも溶着部が形成される。このため、背景技術のように向かい合う起立部同士を接合した場合と比べると、接合部(溶着部)が形成される箇所が増え、結果として、第1延出部と第2延出部の溶着面積を増やすことができ、第1セパレータと第2セパレータが剥がれることを防止することができる。しかも、延出部を折り返して溶着面積を増やしているため、折り返し部としては、第1電極からの延出方向へ大型化することもない。
しかも、折り返し部は第1電極の面上に配置されないため、折り返し部を形成しても、第1電極を第1セパレータと第2セパレータで挟んだ状態における積層方向の厚さが厚くなることを防止できる。
【0008】
また、前記第1延出部及び前記第2延出部は、樹脂層と、該樹脂層の一方の面にセラミックスがコートされたセラミックス層を有し、前記折り返し部において積層方向の最外層に位置し、かつ前記第1電極に向けて折り返した延出部の内面に前記樹脂層が露出していてもよい。
【0009】
これによれば、第1延出部と第2延出部が向い合う位置、すなわち、溶着部となる位置には必ず樹脂層が露出するため、延出部同士の溶着をより確実に行うことができる。
また、前記第1セパレータ及び前記第2セパレータは、一枚のセパレータから折り曲げ形成されていてもよい。
【0010】
これによれば、第1セパレータ及び第2セパレータを簡単に製造することができる。
また、前記第1延出部及び前記第2延出部のうちいずれか一方は他方より長く形成され、前記折り返し部は一方の延出部を折り返して形成されてもよい。
【0011】
これによれば、一枚の延出部のみを折り返すため、延出部を簡単に折り返すことができる。また、折り返した一枚の延出部は、折り返す前の形状に復帰する力が弱いため延出部同士が接合された状態を維持して、折り返し部が各延出部に分離することを防止することができる。
【0012】
また、前記折り返し部は前記第1延出部及び前記第2延出部の両方を折り返して形成されてもよい。これによれば、折り返し部の積層方向には3箇所に溶着部が形成され、さらに、溶着面積を増やすことができる。
【0013】
また、前記第1電極は第1端部の一部から突設されたタブを有し、前記セパレータは前記折り曲げられた位置に折り曲げ部が形成され、該折り曲げ部に前記タブが挿入された切り込みを有するとともに、前記折り曲げ部と反対側の前記延出部によって前記折り返し部が形成されるとともに、前記溶着部が形成されていてもよい。
【0014】
これによれば、折り曲げ部と反対側から第1セパレータと第2セパレータの間に第1電極が挿入され、セパレータの切り込みに第1電極のタブが挿入された後、折り曲げ部と反対側に折り返し部が形成される。よって、タブが切り込みに挿入された形態とされていても、第1電極の面方向において折り曲げ部と折り返し部との間に第1電極が挟まれている。よって、第1電極が、折り曲げ部又は折り返し部に向けて面方向に移動しようとしても、第1電極は折り曲げ部又は折り返し部と当接し、その移動を規制することができる。そして、第1電極の移動を規制する構成として、折り曲げ部と反対側だけに折り返し部を形成すればよいため、例えば、折り曲げ部以外の残りの側辺部全てに折り返し部を形成する場合と比べると、第1電極の移動を規制する構成を簡単に作ることができる。
【0016】
また、前記第1電極は正極であり、第2電極は負極であってもよい。
これによれば、第1セパレータと第2セパレータが剥がれることを防止できるため、セパレータによって、第1電極が第2電極に対向することを防止できる。
【0017】
また、前記蓄電装置は二次電池であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、第1セパレータと第2セパレータとが剥がれることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態の二次電池を示す斜視図。
図2】電極組立体を示す分解斜視図。
図3】セパレータ、及び正極シートの配置態様を示す正面図。
図4】シート集合体を示す断面図。
図5】折り返し部の別例を示す断面図。
図6】折り返し部の別例を示す断面図。
図7】折り返し部の別例を示す断面図。
図8】折り返し部の別例を示す断面図。
図9】(a)及び(b)は背景技術を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を車両(例えば産業車両や乗用車両)に搭載される二次電池に具体化した一実施形態を図1図4にしたがって説明する。なお、二次電池は、走行モータを駆動するために用いられる。
【0021】
図1に示すように、蓄電装置としての二次電池10は、その外郭を構成する金属製のケース11を備えている。ケース11は、四角箱状の容器12と、容器12の開口部分を塞ぐ矩形平板状の蓋13とからなる。このため、二次電池10は、その外郭が角型をなしている。また、二次電池10はリチウムイオン二次電池である。
【0022】
ケース11には、電極組立体14及び電解質としての電解液(図示略)が収容されている。図2に示すように、電極組立体14は、複数の第1電極としての正極シート21と複数の第2電極としての負極シート22とが、電気伝導に係るイオン(リチウムイオン)が通過可能な多孔質膜で形成されたセパレータ23を介して交互に積層されて構成されている。詳細には、電極組立体14は、正極シート21及びセパレータ23からなる複数のシート集合体20と、複数の負極シート22とが交互に積層されて構成されている。
【0023】
正極シート21は、矩形状に形成された正極金属箔(例えばアルミニウム箔)21aと、この正極金属箔21aの両面に正極活物質が塗布されることによって形成された正極活物質層21bとから構成されている。負極シート22は、矩形状に形成された負極金属箔(例えば銅箔)22aと、この負極金属箔22aの両面に負極活物質が塗布されることによって形成された負極活物質層22bとから構成されている。
【0024】
正極シート21には、正極シート21の第1端部21c(一辺方向(長辺方向))に沿って、正極活物質が塗布されていない正極側未塗工部21dが形成されている。正極側未塗工部21dは、正極シート21の他辺方向(短辺方向)に幅を有して形成されている。そして、正極シート21の第1端部21cの一部には、正極金属箔21aを延出させて突出するように形成された(突設された)タブとしての正極集電タブ31が設けられている。
【0025】
また、負極シート22には、正極シート21と同様に、負極シート22の一端部22c(一辺方向(長辺方向))に沿って、負極活物質が塗布されていない負極側未塗工部22dが形成されている。負極側未塗工部22dは、負極シート22の他辺方向(短辺方向)に幅を有して形成されている。そして、負極シート22の一端部22cの一部には、負極金属箔22aを延出させて形成された負極集電タブ32が設けられている。
【0026】
なお、以降の説明において、正極シート21には、正極側未塗工部21dが含まれ且つ正極集電タブ31が除外されるものとする。負極シート22についても同様である。
正極シート21及び負極シート22は、正極集電タブ31が積層方向に沿って列状に配置され、且つ正極集電タブ31と重ならない位置にて負極集電タブ32が積層方向に沿って列状に配置されるように積層される。そして、図1に示すように、各正極集電タブ31は、電極組立体14における積層方向の一端から他端までの範囲内で集められた(束ねられた)状態で折り曲げられている。詳細には、各正極集電タブ31は、電極組立体14の積層方向の一端側に寄せて集められており、その集められた状態で、上記一端側とは反対側である積層方向の他端側に向けて折り返されている。そして、その各正極集電タブ31が重なっている箇所を溶接することによって各正極集電タブ31が電気的に接続されている。各負極集電タブ32についても同様である。
【0027】
二次電池10は、電極組立体14から電力を取り出すための正極端子41及び負極端子42を備えている。各端子41,42は、ケース11の蓋13に形成された貫通孔を介してケース11を貫通した状態で取り付けられており、その一部がケース11外に露出している。正極端子41は、正極集電タブ31と溶接されることで電気的に接続されており、負極端子42は、各負極集電タブ32と溶接されることで電気的に接続されている。これにより、電極組立体14の電力をケース11外に取り出すことができるとともに、電極組立体14に対して電力を供給することにより、電極組立体14を充電することが可能となっている。
【0028】
次に、シート集合体20の詳細な構成等について、正極シート21、負極シート22及びセパレータ23の詳細な説明とともに、以下に説明する。
図2に示すように、正極シート21(正極集電タブ31を除いた矩形状の部分)と負極シート22(負極集電タブ32を除いた矩形状の部分)とは、相似形状をなしている。詳細には、正極シート21は負極シート22よりも一回り小さく形成されている。正極シート21(正極金属箔21a)の一辺方向(長辺方向)及び他辺方向(短辺方向)の長さはそれぞれ、負極シート22(負極金属箔22a)の各方向の長さよりも短く設定されている。
【0029】
ここで、正極活物質層21bは、正極シート21において正極側未塗工部21d以外の領域全体に形成されている。そして、負極活物質層22bは、負極シート22において負極側未塗工部22d以外の領域全体に形成されている。このため、正極シート21が負極シート22よりも一回り小さく形成されている関係上、正極活物質層21bは負極活物質層22bよりも一回り小さく形成されている。なお、正極シート21においては、正極活物質層21bが形成された面のうちセパレータ23と対向する面に連続し、かつ直交する面によって正極シート21の側面21eが形成されている。
【0030】
図2図4に示すように、セパレータ23は、全体として帯状をなす一枚のセパレータ形成材料をその一辺方向(長辺方向)中央の折り曲げ線Lから折り曲げ、二つ折り状態で折り曲げ線Lと平行に延びる二つの短辺(自由端)側を接合(溶着)して形成されている。なお、図4に示すように、セパレータ23は、シート状の樹脂層23aと、この樹脂層23aの一方の面にセラミックスをコーティングして形成されたセラミックス層23bとを有する。
【0031】
図3に示すように、セパレータ23において、折り曲げ部27での折り曲げ線Lから該折り曲げ線Lに対し平行に延びる一方の長辺23d(側辺)までの矩形状の領域全体によって第1セパレータ24が形成されている。また、セパレータ23において、折り曲げ線Lから該折り曲げ線Lに対し平行に延びる他方の長辺23f(側辺)までの矩形状の領域全体によって第2セパレータ25が形成されている。図4に示すように、セパレータ23は、樹脂層23aが第1セパレータ24と第2セパレータ25の内面側で向い合う状態に折り曲げられている。
【0032】
図3に示すように、第1セパレータ24と第2セパレータ25とでは、第1セパレータ24の方が大きく形成されている。具体的には、折り曲げ線Lから一方の長辺23dまでの長さの方が、折り曲げ線Lから他方の長辺23fまでの長さより長く設定されている。また、第1セパレータ24及び第2セパレータ25は、正極シート21を覆い、かつ面積が正極シート21よりも大きくなっている。
【0033】
セパレータ23の折り曲げ部27には、細長孔状の切り込み27aが折り曲げ線Lに沿って直線状に延びるように形成されている。切り込み27aは、折り曲げ線Lに沿ってセパレータ23の側辺から折り曲げ部27の中央寄りに離間した位置に形成されている。このため、切り込み27aは、独立した孔状に形成されている。すなわち、切り込み27aは、セパレータ23の両側辺に対して非連続となっており、切り込み27aは折り曲げ部27上で閉じられた形状となっている。
【0034】
図2及び図4に示すように、セパレータ23において、第1セパレータ24と第2セパレータ25との間には正極シート21が配置されるとともに、この正極シート21の正極集電タブ31は切り込み27aに挿入されている。また、正極シート21は第1及び第2セパレータ24,25によって挟まれ、正極シート21(正極活物質層21b)は、その全体が第1及び第2セパレータ24,25によって覆われている。
【0035】
ここで、既に説明したとおり、正極シート21は第1及び第2セパレータ24,25よりも一回り小さく形成されている。このため、図2に示すように、シート集合体20を構成している態様において、第1及び第2セパレータ24,25の一部が正極シート21の側面21eから外側(側面21eと直交する方向)にはみ出している。換言すれば、第1及び第2セパレータ24,25は、正極シート21を間に挟んだ状態でユニット化された場合に、正極シート21を覆うとともにその一部が正極シート21の側面21eからはみ出すように、正極シート21よりも大きく形成されていると言える。
【0036】
図2に示すように、シート集合体20を構成している態様において正極シート21の側面21eから延出した第1セパレータ24の一部を第1延出部51とし、側面21eから延出した第2セパレータ25の一部を第2延出部52とする。各延出部51,52は、正極シート21を囲むように第1及び第2セパレータ24,25の全周に亘っている。また、図4に示すように、各延出部51,52は正極シート21の厚さ方向に対向している。そして、各延出部51,52のうち、セパレータ23の両長辺23d,23f側に位置する延出部51,52であり、折り曲げ部27と反対側に位置する各延出部51,52(自由端部)は、互いに接合(溶着)されている。その結果、セパレータ23に正極シート21が一体化されてシート集合体20が形成されている。
【0037】
次に、第1セパレータ24と第2セパレータ25の接合態様について説明する。なお、以下の説明において、第1延出部51は、第1セパレータ24における一方の長辺23d側の第1延出部51を示し、第2延出部52は、第2セパレータ25における他方の長辺23f側の第2延出部52のことを示す。
【0038】
図3に示すように、第1延出部51の方が第2延出部52より長くなっている。そして、図4に示すように、第1延出部51は、第2延出部52の先端を越えた位置から起立状態に折り曲げられる。さらに、第1延出部51は、その先端が正極シート21を向くように第2延出部52の先端を支点にして折り曲げられる。すなわち、一方の延出部である第1延出部51は、他方の延出部である第2延出部52側に折り返され、第1延出部51が第2延出部52に覆い被せられるように正極シート21に向けて折り曲げられる。すると、折り返された第1延出部51の内面には、第2延出部52に向けて樹脂層23aが露出している。そして、第1延出部51は、第2延出部52に向けて折り曲げられ、第1延出部51の樹脂層23aと第2延出部52のセラミックス層23bが向い合った状態で第1延出部51と第2延出部52が3層に積層されて折り返し部26が形成されている。折り返し部26は、第1延出部51と、第2延出部52が延出している領域(正極シート21の側面21eよりも外側)に形成されている。つまり、折り返し部26は、正極シート21の面上にない。
【0039】
図4の2点鎖線に示すように、折り返し部26は、積層方向の両端側から加熱器33で加熱することで、折り返し部26の積層方向に溶着され、折り返し部26には第1溶着部P1と第2溶着部P2が形成されている。第1溶着部P1は、折り返さなくても向い合っている両延出部51,52同士の間に形成され、この第1溶着部P1では樹脂層23a同士が溶着している。第2溶着部P2は、第1延出部51を折り返すことで向い合った両延出部51,52同士の間に形成され、この第2溶着部P2では、第1延出部51の樹脂層23aと第2延出部52のセラミックス層23bとが溶着している。また、第1及び第2溶着部P1,P2は、それぞれセパレータ23の長辺23d,23fに沿った方向全体に亘って形成されている。
【0040】
そして、折り返し部26に第1及び第2溶着部P1,P2が形成されることで、折り返し部26で第1セパレータ24と第2セパレータ25が接合されている。また、折り返し部26は第1及び第2セパレータ24,25を挟んで切り込み27aと反対側に形成されている。そして、正極シート21は、折り曲げ部27と折り返し部26の間に挟まれている。
【0041】
図1及び図2に示すように、電極組立体14は、シート集合体20と負極シート22とが、各隣り合う2辺部が重なり合う状態で積層されて構成されている。これにより、正極活物質層21bと負極活物質層22bとは第1セパレータ24及び第2セパレータ25を間に挟んだ状態で対向している。詳細には、負極活物質層22bは、正極活物質層21bの全体をオーバラップした状態で対向している。この正極活物質層21bと負極活物質層22bが対向している領域が充放電に寄与する領域である。
【0042】
本実施形態の二次電池10の作用について以下に説明する。
シート集合体20において、折り返し部26には、折り返さなくても向い合っている第1及び第2延出部51,52同士の間に第1溶着部P1が形成され、さらに、第1延出部51を折り返すことで向い合った第1及び第2延出部51,52同士の間に第2溶着部P2が形成されている。このため、折り返し部26には、積層方向の厚み内に溶着部が2箇所形成されている。よって、第1セパレータ24と第2セパレータ25とを溶着部1箇所だけで溶着する場合と比べて、第1延出部51を折り返して第2溶着部P2を形成した分だけ折り返し部26での溶着面積を増やすことができ、第1セパレータ24と第2セパレータ25の接合強度を高めることができる。
【0043】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)セパレータ23において、第1セパレータ24の第1延出部51を折り返して折り返し部26を形成し、その折り返し部26を積層方向に加熱して第1及び第2溶着部P1,P2を形成した。したがって、折り返し部26には溶着部が2箇所形成される。このため、背景技術のように向かい合う起立部同士を接合した場合と比べると、接合部(溶着部)が形成される箇所が増え、結果として、第1及び第2延出部51,52同士の溶着面積を増やすことができ、第1セパレータ24と第2セパレータ25が剥がれることを防止することができる。しかも、第1延出部51を折り返して溶着面積を増やしているため、折り返し部26としては、溶着面積を増やしても正極シート21からの延出方向へ大型化することもない。
【0044】
(2)セパレータ23において、第1セパレータ24と第2セパレータ25とは互いに樹脂層23aが向き合っている。このため、第1延出部51を折り返して折り返し部26を形成すると、第1溶着部P1では第1及び第2延出部51,52の樹脂層23a同士が溶着され、第2溶着部P2では第1延出部51の樹脂層23aが第2延出部52のセラミックス層23bに溶着される。したがって、必ず樹脂層23aを溶着代として使用することができ、第1延出部51と第2延出部52とを確実に溶着することができる。
【0045】
(3)セパレータ23には折り曲げ部27から折り曲げて第1セパレータ24と第2セパレータ25が形成されている。このため、第1セパレータ24及び第2セパレータ25を有するセパレータ23を簡単に製造することができる。そして、折り返し部26に第1及び第2溶着部P1,P2を設けることで、折り曲げ部27と折り返し部26(溶着部)との間に正極シート21が挟まれている。よって、正極シート21が、折り返し部26又は折り曲げ部27に向けて面方向に移動しようとしても、正極シート21は折り曲げ部27又は折り返し部26と当接し、その移動を規制することができる。
【0046】
(4)折り返し部26は第1延出部51のみを折り返して形成されているため、例えば、第1延出部51と第2延出部52の両方を折り返して折り返し部26を形成する場合と比較すると、その折り返しが行いやすく、折り返し部26が作りやすい。また、第1延出部51と第2延出部52の両方を折り返して折り返し部26を形成する場合と比べると、折り返した部位が折り返す前の形状に復帰しようとする力が弱くなる。このため、第2溶着部P2が剥がれにくく、折り返し部26の形状を維持することができる。
【0047】
(5)折り返し部26は、正極シート21の側面21eからはみ出した領域である第1延出部51と、第2延出部52を用いて形成されており、正極シート21の面上にない。このため、折り返し部26によって、正極シート21を第1セパレータ24及び第2セパレータ25で挟んだ状態における積層方向の厚さが厚くなることを防止できる。
【0048】
(6)セパレータ23の折り曲げ部27には切り込み27aが形成され、この切り込み27aに正極シート21の正極集電タブ31が挿入されている。さらに、第1及び第2セパレータ24,25において、折り曲げ部27と反対側に折り返し部26が形成されている。このため、セパレータ23の切り込み27aに正極集電タブ31が挿入されていても、折り曲げ部27と折り返し部26によって正極シート21の移動を規制することができる。そして、折り返し部26は、折り曲げ部27と反対側だけに形成されている。よって、例えば、折り曲げ部27以外の残り全ての側辺部に折り返し部26を形成する場合と比べると、セパレータ23に対し正極シート21の移動を規制する構成を簡単に作ることができる。
【0049】
(7)第1セパレータ24と第2セパレータ25で正極シート21を挟み込み、第1セパレータ24と第2セパレータ25の自由端側に折り返し部26を形成し、第1セパレータ24と第2セパレータ25が剥がれないようにした。その結果、セパレータ23によって正極シート21が負極シート22に直接向い合うことを防止できる。
【0050】
(8)セパレータ23の第1セパレータ24と第2セパレータ25で正極シート21を挟み込む構成とした。第1セパレータ24及び第2セパレータ25は、正極シート21を覆うとともにその一部に正極シート21の側面21eから延出する第1及び第2延出部51,52を備えている。そして、第1及び第2延出部51,52の一部を利用して折り返し部26を形成した。このため、第1及び第2延出部51,52といった第1及び第2セパレータ24,25のデッドスペースを有効利用して、溶着面積を増やし第1セパレータ24と第2セパレータ25が剥がれることを防止できる。
【0051】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態では、第1延出部51及び第2延出部52のうち第1延出部51のみを折り返して折り返し部26を形成したが、これに限らない。図5に示すように、第1延出部51と第2延出部52の正極シート21からの延出長さを同じにし、第1延出部51と第2延出部52の両方を折り返して折り返し部34を形成してもよい。この場合、一方の第1延出部51を他方の第2延出部52側に折り返している。なお、この場合、セパレータ23は樹脂層23aのみで形成されている。このように構成すると、折り返し部34の積層方向には3箇所に溶着部が形成される。すなわち、折り返していない第1延出部51と第2延出部52の間、折り返していない第2延出部52と折り返した第2延出部52との間、及び折り返した第1延出部51と第2延出部52との間に溶着部が形成される。この場合、正極シート21に向けて折り返した第1及び第2延出部51,52のうち、最外層に位置する第1延出部51の内面には樹脂層23aが露出している。なお、セパレータ23としては、樹脂層23aにセラミックス層23bを設けたものを用いてもよい。
【0052】
○ 実施形態では、セパレータ23を、樹脂層23aが第1セパレータ24と第2セパレータ25の内面側で向い合う状態に折り曲げたが、その逆でもよく、図6に示すように、セラミックス層23bが第1セパレータ24と第2セパレータ25の内面側で向い合っていてもよく、正極シート21に対し、セラミックス層23bが対向していてもよい。
【0053】
○ 実施形態において、セパレータ23に、第1セパレータ24と第2セパレータ25を折り曲げ形成したが、これに限らない。図7に示すように、第1セパレータ24と第2セパレータ25を別体とし、第1及び第2セパレータ24,25の四側辺部のうちの少なくとも対向する2箇所で折り返し部26を形成してもよい。この場合、図7に示すように、第1延出部51及び第2延出部52のいずれか一方(図7では第1延出部51)を他方(図7では第2延出部52)より長くして、その延出長さの長い一方の延出部のみを折り返して折り返し部26を形成してもよい。
【0054】
図8に示すように、第1セパレータ24と第2セパレータ25を別体とし、第1及び第2セパレータ24,25の四側辺部のうちの少なくとも対向する2箇所で折り返し部26を形成してもよい。この場合、第1延出部51と第2延出部52の延出長さを同じにし、第1延出部51と第2延出部52の両方を折り返して折り返し部26を形成してもよい。
【0055】
○ 実施形態では、第1電極を正極シート21とし、第2電極を負極シート22としたが、逆でも良く、第1電極を負極シート22とし、第2電極を正極シート21としてもよい。
【0056】
○ 実施形態では、折り曲げ部27と反対側のみに折り返し部26を形成したが、それに加え、折り曲げ部27と折り返し部26で挟まれる一対の側辺部の少なくとも一方に折り返し部26を形成してもよい。また、折り曲げ部27と反対側に折り返し部26は形成せず、折り曲げ部27の両側の側辺部の少なくとも一方に折り返し部26を形成してもよい。
【0057】
○ 実施形態では、セパレータ23は、樹脂層23aの一方の面のみにセラミックス層23bを設けたものを使用したが、樹脂層23aの両方の面にセラミックス層23bが形成されたものを使用してもよい。
【0058】
○ 実施形態では、折り返し部26の全体に亘って第1及び第2溶着部P1,P2を形成したが、第1及び第2溶着部P1,P2は折り返し部26の一部だけに形成されていてもよく、間隔を空けて複数箇所に形成されていてもよい。
【0059】
○ 実施形態では、正極シート21は両面に正極活物質層21bを有するとしたが、正極シート21の片面のみに正極活物質層21bを有していてもよい。
○ 実施形態では、負極シート22は両面に負極活物質層22bを有するとしたが、負極シート22の片面のみに負極活物質層22bを有していてもよい。
【0060】
○ 実施形態では、正極集電タブ31及び負極集電タブ32は、電極組立体14における積層方向の一端から他端までの範囲内で集められた(束ねられた)状態で折り曲げられた構成としたが、正極集電タブ31及び負極集電タブ32は集めた状態としなくてもよい。
【0061】
○ 電極組立体14を構成する正極シート21、及び負極シート22の枚数は適宜変更してもよい。
○ ケース11の形状は、円柱状や、左右方向に扁平な楕円柱状に形成してもよい。
【0062】
○ 本発明は、蓄電装置としてのニッケル水素二次電池や、電気二重層キャパシタとして具体化してもよい。
【符号の説明】
【0063】
P1…第1溶着部、P2…第2溶着部、10…蓄電装置としての二次電池、14…電極組立体、21…第1電極としての正極シート、21b…活物質層としての正極活物質層、21c…第1端部、21e…側面、22…第2電極としての負極シート、23…セパレータ、23a…樹脂層、23b…セラミックス層、24…第1セパレータ、25…第2セパレータ、26,34…折り返し部、27…折り曲げ部、27a…切り込み、31…タブとしての正極集電タブ、51…第1延出部、52…第2延出部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9