(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
脆性材料からなる基板の表面に亀裂線を形成した後に、基板の被折割部に曲げモーメントと引張力を付与することにより、基板の亀裂線を基板の厚み方向に進展させて、基板の被折割部を折割する基板折割装置であって、
基板の被折割部が側方へはみ出した状態で基板を水平に支持するテーブルと、
前記テーブルの側方に配設され、昇降アクチュエータの駆動により昇降可能でかつ水平移動アクチュエータの駆動により前記テーブルに接近離反する水平方向へ移動可能な折割ヘッドと、
前記折割ヘッドに設けられ、基板の被折割部を押圧するブレークバーと、を具備し、
前記テーブルは、
テーブルベースと、
前記テーブルベースに配設され、内部が浮上ガスを供給する浮上ガス供給源に接続され、上面に浮上ガスを噴出するノズルが形成され、浮上ガスの圧力を利用して基板を浮上させる複数の浮上ユニットと、を備え、
前記折割ヘッドは、
前記ブレークバーが基板の被折割部に接触する直前又は瞬間に、前記昇降アクチュエータ及び前記水平移動アクチュエータの駆動により鉛直下方向から前記テーブルに離反する斜め下方向に移動方向を変更するように構成されている、基板折割装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、先行技術に係る基板折割方法にあっては、クランプ機構を水平な回転軸周りに回転させて、基板の被折割部に曲げモーメントと引張力を付与しているため、基板の被折割部に付与する曲げモーメントの大きさによって、基板の被折割部に付与する引張力の大きさが一意に決定されてしまう。換言すれば、基板の被折割部に付与する曲げモーメント及び引張応力の大きさを個別に調節することができない。そのため、折割対象である基板の材質、厚み等の特性が変更する場合には、基板の特性に応じた最適な曲げモーメント及び引張応力を基板の被折割部に付与することが難しく、基板の割断面(切断面)にカレット(小破片)又はクラック等が生じて、基板の割断面の品質の低下を招くという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、前述の問題を解決することができる、新規な構成の基板折割装置及び基板折割方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、脆性材料からなる基板の表面に亀裂線(スクライブ線)を形成した後に、基板の被折割部(亀裂線から折り側の端部にかけての部位)に曲げモーメントと引張力(引き裂き力)を付与することにより、基板の亀裂線を基板の厚み方向に進展させて、基板の被折割部を折割する基板折割装置であって、
基板の被折割部が側方へはみ出した状態で基板を水平に支持するテーブルと、
前記テーブルの側方に配設され、昇降アクチュエータの駆動により昇降可能(鉛直方向へ移動可能)でかつ水平移動アクチュエータの駆動により前記テーブルに接近離反する水平方向へ移動可能な折割ヘッド(折割スライダ)と、前記折割ヘッドに設けられ、基板の被折割部を押圧するブレークバーと、を具備し、
前記テーブルは、テーブルベースと、前記テーブルベースに配設され、内部が浮上ガスを供給する浮上ガス供給源に接続され、上面に浮上ガスを噴出するノズルが形成され、浮上ガスの圧力を利用して基板を浮上させる複数の浮上ユニットと、を備え、前記折割ヘッドは、前記ブレークバーが基板の被折割部に接触する直前又は瞬間に、前記昇降アクチュエータ及び前記水平移動アクチュエータの駆動により鉛直下方向から前記テーブルに離反する斜め下方向に移動方向を変更するように構成されていることである。
【0008】
なお、本願の明細書及び特許請求の範囲において、「配設され」とは、直接的に配設されたことの他に、別部材を介して間接的に配設されたことを含む意であって、「設けられ」とは、直接的に設けられたことの他に、別部材を介して間接的に設けられたことを含む意である。
【0009】
第1の
態様によると、基板の被折割部が前記テーブルの側方へはみ出した状態で、基板を前記テーブルに水平に支持させる。次に、前記昇降アクチュエータの駆動により前記折割ヘッドを下降(鉛直下方向へ移動)させることにより、前記ブレークバーを前記折割ヘッドと一体的に下降させて、基板の被折割部に接近させる。そして、前記ブレークバーが基板の被折割部に接触する直前又は瞬間に、前記昇降アクチュエータ及び前記水平移動アクチュエータの駆動により前記折割ヘッドの移動方向を鉛直下方向から前記斜め下方向に変更して、前記折割ヘッドを前記斜め下方向に移動させることにより、前記ブレークバーを前記折割ヘッドと一体的に前記斜め下方へ移動させながら、前記ブレークバーによって基板の被折割部を前記斜め下方向へ押圧して、基板の被折割部に曲げモーメントと引張力を付与する。これにより、基板の亀裂線を基板の前記厚み方向に進展させて、基板の被折割部を折割することができる。
【0010】
ここで、前記ブレークバーが基板の被折割部に接触する直前又は瞬間に、前記折割ヘッドの移動方向を鉛直下方向から前記斜め下方向に変更して、前記昇降アクチュエータ及び前記水平移動アクチュエータの駆動により前記折割ヘッドを前記斜め下方向に移動させて、基板の被折割部に曲げモーメントと引張力を付与しているため、基板の被折割部に付与する曲げモーメントの大きさは、基板の亀裂線から前記ブレークバーと基板の接触位置まで
の水平方向の長さの他に、前記昇降アクチュエータの出力(駆動力)によって決定されることになる。また、同じ理由により、基板の被折割部に付与する引張力の大きさは、前記水平移動アクチュエータの出力によって決定されることになる。つまり、基板の被折割部に付与する曲げモーメント及び引張応力の大きさを個別に調節することができる。
【0011】
本発明の第2の
態様は、脆性材料からなる基板の表面に亀裂線を形成した後に、基板の被折割部に曲げモーメントと引張力を付与することにより、基板の亀裂線を基板の厚み方向に進展させて、基板の被折割部を折割するための基板折割方法
であって、基板の被折割部がテーブルの側方へはみ出した状態で、基板を前記テーブルに水平に支持させる基板支持工程と、基板支持工程の終了後に、前記テーブルの側方に配設されかつ昇降アクチュエータの駆動により昇降可能でかつ水平移動アクチュエータの駆動により前記テーブルに接近離反す
る水平方向へ移動可能な折割ヘッド、及び前記折割ヘッドに設けられ
たブレークバーを用い、前記昇降アクチュエータの駆動により前記折割ヘッドを下降(鉛直下方向へ移動)させることにより、前記ブレークバーを前記折割ヘッドと一体的に下降させて、基板の被折割部に接近させるブレークバー接近工程と、前記ブレークバー接近工程の終了後であって、前記ブレークバーが基板の被折割部に接触する直前又は瞬間に、前記昇降アクチュエータ及び前記水平移動アクチュエータの駆動により前記折割ヘッドの移動方向を鉛直下方向から前記テーブルに離反する斜め下方向に変更して、前記折割ヘッドを前記斜め下方向に移動させることにより、前記ブレークバーを前記折割ヘッドと一体的に前記斜め下方へ移動させながら、前記ブレークバーによって基板の被折割部を前記斜め下方向へ押圧して、基板の被折割部に曲げモーメントと引張力を付与する基板押圧工程と、を具備したこと
である。
【0012】
第2の
態様によると、前記ブレークバーが基板の被折割部に接触する直前又は瞬間に、前記折割ヘッドの移動方向を鉛直下方向から前記斜め下方向に変更して、前記昇降アクチュエータ及び前記水平移動アクチュエータの駆動により前記折割ヘッドを前記斜め下方向に移動させて、基板の被折割部に曲げモーメントと引張力を付与しているため、基板の被折割部に付与する曲げモーメントの大きさは、基板の亀裂線から前記ブレークバーと基板の接触位置まで
の水平方向の長さの他に、前記昇降アクチュエータの出力(駆動力)によって決定されることになる。また、同じ理由により、基板の被折割部に付与する引張力の大きさは、前記水平移動アクチュエータの出力によって決定されることになる。つまり、基板の被折割部に付与する曲げモーメント及び引張応力の大きさを個別に調節することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基板の被折割部に付与する曲げモーメント及び引張応力の大きさを個別に調節できるため、折割対象である基板の材質、厚み等の特性が変更する場合において、基板の特性に応じた最適な大きさの曲げモーメント及び引張応力を基板の被折割部に付与することができ、基板の割断面(切断面)にカレット又はクラック等が発生することを十分に抑えて、基板の割断面の品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、
図3におけるI-I線に沿った図であって、主に本発明の実施形態に係る基板折割装置の折割部の左側面を示している。
【
図2】
図2は、
図1における矢視部IIを示す図であって、主に本発明の実施形態に係る基板折割装置の折割部の背面(後面)を示している。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る基板折割装置の平面図であって、本発明の実施形態に係る基板折割装置の折割部については概略的に示してある。
【
図5】
図5(a)は、本発明の実施形態に係る基板折割方法における基板支持工程を説明する図、
図5(b)は、本発明の実施形態に係る基板折割方法における基板クランプ工程を説明する図である。
【
図6】
図6(a)は、本発明の実施形態に係る基板折割方法における基板クランプ工程を説明する図、
図6(b)は、本発明の実施形態に係る基板折割方法におけるブレークバー接近工程を説明する図である。
【
図7】
図7(a)(b)は、本発明の実施形態に係る基板折割方法における基板押圧工程を説明する図である。
【
図8】
図8は、基板の被折割部の折割後における本発明の実施形態に係る基板折割装置の折割部の復帰動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1実施形態について
図1から
図8を参照して説明する。なお、図面中、「FF」は、前方向、「FR」は、後方向、「L」は、左方向、「R」は、右方向をそれぞれ指してある。
【0016】
図1及び
図3に示すように、本発明の実施形態に係る基板折割装置1は、ガラス、セラミック、又はシリコン等の脆性材料からなる基板Wの表面に亀裂線(スクライブ線)CLを形成した後に、基板Wの被折割部(亀裂線CLから折り側の端部にかけての部位)Waに曲げモーメントと引張力(引き裂き力)を付与することにより、基板Wの亀裂線CLを基板Wの厚み方向に進展させて、基板Wの被折割部Waを折割するものである。
【0017】
図3及び
図4に示すように、基板折割装置1は、左右方向へ延びたテーブル3を具備しており、このテーブル3は、基板Wの被折割部Waが後方(側方の1つ)へはみ出した状態で基板Wを水平に非接触で支持するものである。そして、テーブル3の具体的な構成は、次のようになる。
【0018】
テーブル3は、左右方向(テーブル3の長手方向)へ延びたテーブルベース(テーブル本体)5を備えており、このテーブルベース5は、左右方向へ延びた支持台7、及びこの支持台7の下側に設けられた複数の支脚9を備えている。また、支持台7には、浮上ガスとしてのエアを収容する複数のチャンバー11が前後方向(テーブル3の長手方向に直交する方向)及び左右方向に沿って設けられている。また、各チャンバー11の下面には、各チャンバー11内にエアを供給するエア供給源としての複数の供給ファン(本発明の実施形態にあっては、ファンフィルタユニット)13が設けられている。
【0019】
各チャンバー11の上面には、エアの圧力を利用して基板Wを浮上させる中空状の浮上ユニット15が設けられており、換言すれば、テーブルベース5には、複数の浮上ユニット15が複数のチャンバー11等を介して前後方向及び左右方向に沿って設けられており、複数の浮上ユニット15の配設状態は、前後方向に複数列(本発明の実施形態にあっては、4列)になっている。また、各浮上ユニット15の側面視形状は、T字形状を呈してあって、各浮上ユニット15の内部は、チャンバー11を介して供給ファン13に接続されている。そして、各浮上ユニット15の上面には、エアを噴出する矩形枠状のノズル(噴出孔)17が各浮上ユニット15の外縁(平面視形状)に沿って形成されてあって、各浮上ユニット15は、基板Wとの間に浮上ガス溜まり層としてのエア溜まり層(圧力溜まり層)Sを生成可能である。ここで、各浮上ユニット15のノズル17は、特開2006−182563号公報に示すように、鉛直方向(浮上ユニット15の上面に垂直な方向)に対して浮上ユニット15の中心側へ傾斜するように構成されている。なお、各浮上ユニット15の上面に矩形枠状のノズル17が各浮上ユニット15の外縁に沿って設けられるの代わりに、スリット状又は小孔状の複数のノズル(図示省略)が各浮上ユニット15の外縁に沿って形成されるようにしても構わない。
【0020】
支持台7には、基板Wを左右方向(右方向又は左方向)へ搬送する複数の搬送ローラユニット19が左右方向に沿って設けられており、複数の搬送ローラユニット19の配設状態は、前後方向に2列になっている。そして、各搬送ローラユニット19の具体的な構成は、次のようになる。
【0021】
即ち、支持台7には、ローラユニットケース21がチャンバー11を介して設けられており、このローラユニットケース21内には、基板Wの裏面を支持する搬送ローラ23が前後方向に平行な軸心周りに回転可能に設けられており、この搬送ローラ23は、ローラユニットケース21から上方向へ突出してある。また、搬送ローラユニット19内には、搬送ローラ23を回転させる回転モータ25が設けられており、この回転モータ25の出力軸(図示省略)は、タイミングベルト等を連結機構(図示省略)を介して搬送ローラ23に連動連結されている。なお、ローラユニットケース21の下面に搬送ローラ23周辺に負圧を発生させる負圧発生器としての吸引ファン(図示省略)が設けられるようにしても構わない。
【0022】
テーブル3の後方には、基板Wの被折割部Waに曲げモーメントと引張力を付与する折割部27が設けられている。そして、折割部27の具体的な構成は、次のようになる。
【0023】
テーブル3の後方には、支持フレーム29が配設されており、この支持フレーム29は、ベッド31と、このベッド31に左右方向に離隔して立設された一対の支柱33と、一対の支柱33の間に連結するように設けられかつ左右方向へ延びた連結ビーム35とを備えている。また、ベッド31における支柱33の前側には、取付台37が配設されている。
【0024】
連結ビーム35には、左右方向へ延びた昇降体(昇降フレーム)39が一対のLMガイド41を介して昇降可能(鉛直方向へ移動可能)に設けられている。また、連結ビーム35の中央部には、昇降体39を昇降させる昇降アクチュエータとしての昇降電動サーボシリンダ43がブラケット45を介して設けられており、この昇降電動サーボシリンダ43は、昇降体39に連結しかつ鉛直方向へ移動可能な作動ロッド47を備えている。
【0025】
昇降体39の下側には、折割ヘッド(折割スライダ)49が一対のLMガイド51を介して前後方向(テーブル3に接近離反する第1水平方向)へ移動可能に設けられている。また、折割ヘッド49の後側中央部には、折割ヘッド49を前後方向へ移動させる水平移動アクチュエータとしての水平移動電動サーボシリンダ53がブラケット55を介して設けられており、この水平移動電動サーボシリンダ53は、昇降体39の下側中央部に連結しかつ前後方向へ移動可能な作動ロッド57を備えている。ここで、折割ヘッド49は、前述のように水平移動電動サーボシリンダ53の駆動により前後方向へ移動可能であって、昇降電動サーボシリンダ43の駆動により昇降体39と一体的に昇降可能になっている。
【0026】
折割ヘッド49の前側(テーブル3側)には、基板Wの被折割部Waを押圧するブレークバー59が着脱可能に設けられており、このブレークバー59は、左右方向(第1水平方向に対して直交する第2水平方向)へ延びている。また、ブレークバー59は、先端側(下端側)に、ゴム等の弾性体からなりかつ基板Wの被折割部Waに接触可能な接触子61を有している(
図5(a)参照)。なお、ブレークバー59の先端は水平方向(第2水平方向)に対して平行になっているが、水平方向に対して傾斜するようになっていても構わない。
【0027】
そして、本発明の実施形態にあっては、折割ヘッド49は、ブレークバー59が基板Wの被折割部Waに接触する直前又は瞬間に、昇降電動サーボシリンダ43及び水平移動電動サーボシリンダ53の駆動により鉛直下方向からテーブル3に離反する斜め下方向に移動方向を変更するように構成されている。具体的には、折割ヘッド49は、昇降電動サーボシリンダ43の駆動を開始してから所定時間経過した開始タイミング(所定の開始タイミング)で水平移動電動サーボシリンダ53の駆動を開始することによって、ブレークバー59が基板Wの被折割部Waに接触する直前又は瞬間に、鉛直下方向から斜め下方向に移動方向を変更するようになっている。なお、所定の開始タイミングで水平移動電動サーボシリンダ53の駆動を開始する代わりに、ブレークバー59が基板Wの被折割部Waに接触する直前の位置に位置したことを適宜のセンサ(図示省略)によって検出し、そのセンサから検出信号の入力に基づいて水平移動電動サーボシリンダ53の駆動を開始するようにしても構わない。
【0028】
折割部27は、基板Wの被折割部Waの周辺(手前側)を上下方向(鉛直方向)からクランプするクランプ機構63を備えており、このクランプ機構63の具体的な内容は、次のようになる。
【0029】
連結ビーム35の前側(テーブル3側)には、左右方向へ延びた上部昇降プレート65が一対(1つのみ図示)のLMガイド67を介して昇降可能に設けられている。また、連結ビーム35の中央部には、上部クランプアクチュエータとしての上部クランプエアシリンダ69が前述のブラケット45を介して設けられており、この上部クランプエアシリンダ69は、上部昇降プレート65に連結しかつ鉛直方向へ移動可能な作動ロッド71を備えている。そして、上部昇降プレート65の先端(下端)には、左右方向へ延びた上部クランプバー73が着脱可能に設けられている。更に、上部クランプバー73は、先端側に、ゴム等の弾性体からなりかつ基板Wの被折割部Waの周辺に接触可能な接触子75を有している(
図5(a)参照)。
【0030】
取付台37の前側(テーブル3側)には、下部昇降プレート77が一対(1つのみ図示)のLMガイド79を介して昇降可能に設けられている。また、ベッド31の中央部には、下部クランプアクチュエータとしての下部クランプエアシリンダ81が設けられており、この下部クランプエアシリンダ81は、下部昇降プレート77に連結しかつ鉛直方向へ移動可能な作動ロッド83を備えている。そして、下部昇降プレート77の先端(上端)には、左右方向へ延びかつ上部クランプバー73に上下に対向した下部クランプバー85が着脱可能に設けられている。更に、下部クランプバー85は、先端側に、ゴム等の弾性体からなりかつ基板Wの被折割部Waの周辺に接触可能な接触子87を有している(
図5(a)参照)。
【0031】
取付台37の上面には、左右方向へ延びた回収ボックス89が設けられており、この回収ボックス89は、基板Wから分離された折割片(折割後の被折割部)Wa’を回収するものである。
【0032】
続いて、本発明の実施形態に係る基板折割方法について説明する。
【0033】
本発明の実施形態に係る基板折割方法は、基板Wの表面に亀裂線CLを形成した後に、基板Wの被折割部Waに曲げモーメントと引張力を付与することにより、基板Wの亀裂線CLを基板Wの厚み方向に進展させて、基板Wの被折割部Waを折割するための方法でって、基板支持工程、基板クランプ工程、ブレークバー接近工程、及び基板押圧工程を具備している。そして、本発明の実施形態に係る基板折割方法における各工程の具体的な内容は、次のようになる。
【0034】
(i)基板支持工程
各供給ファン13の駆動によって各チャンバー11の内部(換言すれば、各浮上ユニット15の内部)へエアを供給して、各浮上ユニット15のノズル17からエアを噴出させる。続いて、
図5(a)に示すように、基板Wの被折割部Waがテーブル3の後方へはみ出した状態で、基板Wをテーブル3に非接触で水平に支持させる。そして、各回転モータ25の駆動により各搬送ローラ23をその軸心周りに回転させて、基板Wを右方向へ搬送することにより、基板Wの被折割部Waがブレークバー59の鉛直下方(真下)に位置するように基板Wをテーブル3に対して位置決めする。
【0035】
(ii)基板クランプ工程
基板支持工程の終了後に、上部クランプエアシリンダ69の駆動により上部昇降プレート65を下降させることにより、
図5(b)に示すように、上部クランプバー73を上部クランプバー用待機位置(
図5(b)において2点鎖線で示す位置)から上部昇降プレート65と一体的に下降させて、上部クランプバー73の接触子75を基板Wの被折割部Waの付近に接触させる。続いて、下部クランプエアシリンダ81の駆動により下部昇降プレート77を上昇させることにより、
図6(a)に示すように、下部クランプバー85を下部クランプバー用待機位置(
図6(a)において2点鎖線で示す位置)から下部昇降プレート77と一体的に下降させて、上部クランプバー73の接触子75と下部クランプバー85の接触子87との協働により基板Wの被折割部Waの周辺(手前側)を上下方向からクランプする。これにより、基板W(基板Wの被折割部Waの周辺)をテーブル3に対して固定することができる。
【0036】
(iii)ブレークバー接近工程
基板クランプ工程の終了後に、昇降電動サーボシリンダ43の駆動により折割ヘッド49を昇降体39と一体的に下降(鉛直下方向へ移動)させることにより、
図6(b)に示すように、ブレークバー用待機位置(
図6(b)において2点鎖線で示す位置)からブレークバー59を折割ヘッド49と一体的に下降させて、基板Wの被折割部Waに接近させる。
【0037】
(iv)基板押圧工程
ブレークバー接近工程の終了後であって、ブレークバー59の接触子61が基板Wの被折割部Waに接触する直前又は瞬間に、昇降電動サーボシリンダ43及び水平移動電動サーボシリンダ53の駆動により折割ヘッド49の移動方向を鉛直下方向からテーブル3に離反する斜め下方向に変更して、折割ヘッド49を前記斜め下方向に移動させる。これにより、
図7(a)(b)に示すように、ブレークバー59を折割ヘッド49と一体的に斜め下方へ移動させながら、ブレークバー59によって基板Wの被折割部Waを斜め下方向へ押圧して、基板Wの被折割部Waに曲げモーメントと引張力を付与することができる。よって、基板Wの亀裂線CLを基板Wの厚み方向に進展させて、基板Wの被折割部Waを折割することができる。なお、基板Wから分離された折割片Wa’は、回収ボックス89に回収される。
【0038】
基板Wの被折割部Waの折割後に、
図8に示すように、昇降電動サーボシリンダ43の駆動によりブレークバー59を昇降体39及び折割ヘッド49と一体的に上昇させて、水平移動電動サーボシリンダ53の駆動によりブレークバー59を折割ヘッド49と一体的に前方向へ移動させることにより、ブレークバー59を元のブレークバー用待機位置に復帰させる。また、上部クランプエアシリンダ69の駆動により上部クランプバー73を上部昇降プレート65と一体的に下降させて、上部クランプバー用待機位置に復帰させると共に、下部クランプエアシリンダ81の駆動により下部クランプバー85を下部昇降プレート77と一体的に上昇させて、下部クランプバー用待機位置に復帰させる。
【0039】
続いて、本発明の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0040】
ブレークバー59が基板Wの被折割部Waに接触する直前又は瞬間に、折割ヘッド49の移動方向を鉛直下方向から斜め下方向に変更して、昇降電動サーボシリンダ43及び水平移動電動サーボシリンダ53の駆動により折割ヘッド49を斜め下方向に移動させて、基板Wの被折割部Waに曲げモーメントと引張力を付与しているため、基板Wの被折割部Waに付与する曲げモーメントの大きさは、ブレークバー59と基板Wの被折割部Waとの前後方向の接触位置の他に、昇降電動サーボシリンダ43の出力(駆動力)によって決定されることになる。また、同じ理由により、基板Wの被折割部Waに付与する引張力の大きさは、水平移動電動サーボシリンダ53の出力によって決定されることになる。つまり、基板Wの被折割部Waに付与する曲げモーメント及び引張応力の大きさを個別に調節することができる。
【0041】
ブレークバー59は先端側に弾性体からなる接触子61を有しているため、ブレークバー59によって基板Wの被折割部Waを斜め下方向へ押圧する際に、ブレークバー59と基板Wの被折割部Waとの間に十分な摩擦力を発揮させることができる。
【0042】
従って、本発明の実施形態によれば、基板Wの被折割部Waに付与する曲げモーメント及び引張応力の大きさを個別に調節できるため、折割対象である基板Wの材質、厚み等の特性が変更する場合において、基板Wの特性に応じた最適な大きさの曲げモーメント及び引張応力を基板Wの被折割部Waに付与することができ、基板Wの割断面(切断面)にカレット又はクラック等が発生することを十分に抑えて、基板Wの割断面の品質(基板Wの折割品質)を向上させることができる。
【0043】
また、ブレークバー59によって基板Wの被折割部Waを斜め下方向へ押圧する際に、ブレークバー59と基板Wの被折割部Waとの間に十分な摩擦力を発揮させることができるため、基板Wの被折割部Waに曲げモーメントと引張力を安定的に付与することができ、折割対象である基板Wの枚数が増えても、基板Wの割断面の品質を維持することができる。
【0044】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限られるものではなく、例えば、次のように種々の態様で実施可能である。即ち、基板Wを非接触で支持するテーブル3の代わりに、循環走行可能なベルト(図示省略)等を備えかつ基板Wを支持する別のテーブル(図示省略)に用いても構わない。また、支持台7の前側(下部クランプバー85側)に、基板Wの被折割部Waの付近を左右方向へ移動可能に支持する複数の補助ローラ(図示省略)が左右方向に間隔を置いて設けられるようにしても構わない。そして、本発明に包含される権利範囲は、これらの実施形態に限定されないものである。