特許第6035950号(P6035950)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6035950
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】絵柄形成物の製造方法、絵柄形成物
(51)【国際特許分類】
   B41M 1/24 20060101AFI20161121BHJP
   B41M 3/14 20060101ALI20161121BHJP
   B41M 3/06 20060101ALI20161121BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   B41M1/24
   B41M3/14
   B41M3/06 C
   G02B5/18
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-166630(P2012-166630)
(22)【出願日】2012年7月27日
(65)【公開番号】特開2014-24255(P2014-24255A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】小川 代剛
【審査官】 外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−239967(JP,A)
【文献】 特開2001−001690(JP,A)
【文献】 特開2008−162165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 1/24
B41M 3/06
B41M 3/14
G02B 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に形成された印刷絵柄の上に設けられた絵柄形成層に溝を形成することで、前記溝による異方性反射特性によって絵柄を可視化した絵柄形成物を製造する絵柄形成物の製造方法であって、
前記溝を形成する際、
インクを用いた印刷により前記溝に対応する凸部が形成された型を、前記絵柄形成層側から押し当てて、加熱および加圧を行うことにより、前記絵柄形成層に前記溝を形成し、
前記絵柄形成層に前記溝を形成する前に、前記絵柄形成層の上に剥離層を形成し、
前記剥離層の下面が前記溝の形状に対応した絵柄形成物を製造することを特徴とする絵柄形成物の製造方法。
【請求項2】
前記溝を形成する際、
前記絵柄形成層から離して配置された前記型を、前記凸部を前記絵柄形成層側に向けて前記絵柄形成層側から押し当てて、加熱および加圧を行うことを特徴とする請求項1記載の絵柄形成物の製造方法。
【請求項3】
記絵柄形成層および前記剥離層には可視光を透過する材料が用いられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の絵柄形成物の製造方法。
【請求項4】
前記インクとして、前記加熱により軟化しない材料を用いることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の絵柄形成物の製造方法。
【請求項5】
前記型は、シート上に印刷を行って、複数の前記絵柄形成物の形成部分のそれぞれに、前記凸部を形成したものであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の絵柄形成物の製造方法。
【請求項6】
基材の表面に形成された印刷絵柄の上に、溝を有する絵柄形成層が設けられ、
前記絵柄形成層の剥離層が、前記剥離層の下面が前記溝の形状に対応するように形成され、
前記溝による異方性反射特性によって絵柄が可視化されたことを特徴とする絵柄形成物。
【請求項7】
記絵柄形成層および前記剥離層には可視光を透過する材料が用いられたことを特徴とする請求項6記載の絵柄形成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絵柄形成物の製造方法、および絵柄形成物に関する。
【背景技術】
【0002】
クレジットカード、会員証カード、社員証カード、プリペイドカード等のカード類は、意匠性、装飾性、偽造防止性が高いことが好ましい。そこで、これらの特性を向上させるため、カードの表面に微細な溝を複数形成し、これにより立体感を有する絵柄を可視化することが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1は、複数の平行な直線状の溝からなる一群を、溝の方向、幅、間隔、長さ等を変化させつつ複数形成し、これにより生じる光の異方性反射特性を用いて立体形状の反射特性を表現するものである。このようにして、立体感を有する絵柄が可視化できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−12411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1においてカードを製造するには、上記の微細な溝に対応する凸加工を施したステンレス板等の金型をカードに押し当てて加圧と加熱を行い、表面に溝を形成する。しかしながら、微細な凸加工をステンレス板等に行うことは難しく、金型の製造コストが高くなり、量産性が低いという問題があった。
【0006】
本発明は、前述の問題点に鑑みてなされたもので、意匠性、装飾性、偽造防止性が高いカード等の絵柄形成物を、より簡易に製造可能な絵柄形成物の製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達するための第1の発明は、基材の表面に形成された印刷絵柄の上に設けられた絵柄形成層に溝を形成することで、前記溝による異方性反射特性によって絵柄を可視化した絵柄形成物を製造する絵柄形成物の製造方法であって、前記溝を形成する際、インクを用いた印刷により前記溝に対応する凸部が形成された型を、前記絵柄形成層側から押し当てて、加熱および加圧を行うことにより、前記絵柄形成層に前記溝を形成し、前記絵柄形成層に前記溝を形成する前に、前記絵柄形成層の上に剥離層を形成し、前記剥離層の下面が前記溝の形状に対応した絵柄形成物を製造することを特徴とする絵柄形成物の製造方法である。
【0008】
第1の発明により、溝による異方性反射特性によって絵柄を可視化した絵柄形成層を印刷絵柄とともに有する、意匠性、装飾性、偽造防止性が高い絵柄形成物を製造することが可能である。そして、溝に対応する凸部をインクを用いて印刷することにより型を作成するので、前述したようにステンレス板等の微細な加工を行うなどの必要が無く、低コストで簡易に絵柄形成物を製造でき、量産性も高まる。また前記絵柄形成層に前記溝を形成する前に、前記絵柄形成層の上に剥離層を形成することで、型の取り外しが容易になる。
【0009】
前記溝を形成する際、前記絵柄形成層から離して配置された前記型を、前記凸部を前記絵柄形成層側に向けて前記絵柄形成層側から押し当てて、加熱および加圧を行うことが望ましい。
【0010】
記絵柄形成層および前記剥離層には可視光を透過する材料が用いられることが望ましい。
これにより、印刷による絵柄と、溝の異方性反射特性による絵柄の双方が可視化された意匠性、装飾性等の高い絵柄形成物が製造できる。
【0011】
前記インクとしては、前記加熱により軟化しない材料が用いられる。
これにより、型を用いて絵柄形成層を加圧、加熱し、溝が好適に形成できる。
【0012】
前記型は、シート上に印刷を行って、複数の前記絵柄形成物の形成部分のそれぞれに、前記凸部を形成したものであることが望ましい。
このように、複数の絵柄形成物に対応する凸部を形成して多面付けしたものを型として用いることで、絵柄形成物が複数同時に製造でき、量産性が向上する。
【0013】
第2の発明は、基材の表面に形成された印刷絵柄の上に、溝を有する絵柄形成層が設けられ、前記絵柄形成層の剥離層が、前記剥離層の下面が前記溝の形状に対応するように形成され、前記溝による異方性反射特性によって絵柄が可視化されたことを特徴とする絵柄形成物である。
また、記絵柄形成層および前記剥離層には可視光を透過する材料が用いられることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、意匠性、装飾性、偽造防止性が高い絵柄形成物を、より簡易に製造可能な絵柄形成物の製造方法等を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】カード1の表面を示す図
図2】カード1について示す図
図3】シート10を示す図
図4】カード1の製造方法を示す図
図5】型24を説明する図
図6】カード形成部分1aを多面付けした原反を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
(カード1の構成)
図1は、本実施形態の絵柄形成物であるカード1の表面について示す図である。図に示すように、カード1は、印刷絵柄3(図では「家」と「煙」の図形)、および、印刷絵柄3上のレリーフ絵柄5(図では“DREAM!”“Life is beautiful!”の文字)が可視化されたものである。なお、本実施形態のカード1は、図1とは逆の面(不図示)にも印刷絵柄3を有している。
【0018】
図2(a)は、レリーフ絵柄5に対応する位置における、カード1の断面構成を示した図である。図に示すように、カード1では、コア基材11の上面に印刷絵柄層13aが形成され、その上にオーバーフィルム層15a(絵柄形成層)が設けられる。また、オーバーフィルム層15aの表面には剥離層19が形成される。一方、コア基材11の下面には印刷絵柄層13bと、オーバーフィルム層15bが順に設けられる。
【0019】
コア基材11は、例えばPET−G(Polyethylene Terephtalate Glycol-modified)や塩化ビニル樹脂などのプラスチック素材に、基材の色に応じて白色顔料等の顔料を加えたものである。
【0020】
印刷絵柄層13a、13bは、コア基材11の両面で、オフセット印刷やスクリーン印刷等により、インクを用いた印刷がなされた層である。印刷絵柄層13a、13bにおいて印刷により形成された絵柄が、前記の印刷絵柄3である。
【0021】
オーバーフィルム層15a、15bには、PET−G、塩化ビニル樹脂等による、可視光を透過し熱可塑性を有する透明のフィルムが用いられる。
【0022】
オーバーフィルム層15aの表面の一部の、レリーフ絵柄5に対応する位置には、複数の溝17が形成される。この溝17の配置の一例を示すものが図2(b)である。
【0023】
本実施形態では、特許文献1等に示されるように、複数の平行な直線状の溝17からなる群17aを、溝17の方向、幅、間隔、長さ等を変化させつつ複数形成し、これにより生じる光の異方性反射特性を用いて立体形状の反射特性を表現する。このようにして、溝17により立体感を有する絵柄が可視化される。この絵柄が、前記のレリーフ絵柄5である。ただし、光の異方性反射特性により絵柄を可視化するための溝17の配置等はこれに限らない。例えばヘアライン状の溝17や同心円状の溝17を配置するケースなどもある。
【0024】
剥離層19は、例えば有機シリコンを主成分とする剥離剤を塗布して形成される層である。剥離層19には可視光を透過する材料が用いられる。剥離層19は、後述する工程において、溝17の形成時に用いた型を取り外し易くするために設けられるもので、この限りにおいて、剥離層19は上記の剥離剤に限られることはない。
【0025】
本実施形態では、以上の構成により、カード1が、印刷絵柄3上に立体感を有するレリーフ絵柄5が重なって見える意匠性、装飾性の高いものになる。また、レリーフ絵柄5は同一のものを形成することが難しいので、偽造防止性も高い。なお、レリーフ絵柄5は、図1に示したような文字に限ることはない。例えば、各種の図形などであってもよい。
【0026】
(カード1の製造方法)
次に、このカード1の製造方法について説明する。
【0027】
本実施形態では、カード1を製造する際に、図3に示すコア基材11のシート10を用いる。シート10では、複数のカード形成部分1aが多面付けされている。本実施形態では、コア基材11のシート10の両面に、各カード形成部分1aに対応する印刷絵柄3を印刷した印刷絵柄層13a、13bが形成される。この時のカード形成部分1aの断面構成を示す図が、図4(a)である。
【0028】
次に、図4(b)に示すように、印刷絵柄層13a、13bにオーバーフィルム層15a、15bをそれぞれ重ねる。この際、各オーバーフィルム層15a、15bの仮接着を行ってもよい。なお、オーバーフィルム層15a、15bの平面サイズはシート10と同程度である。
【0029】
そして、図4(c)に示すように、オーバーフィルム層15aの表面に剥離層19を形成する。
【0030】
次に、型24を用いて、オーバーフィルム層15aに前記の溝17(図2(a)参照)を形成する。図5は型24の例を説明する図である。図5(a)は型24の、凸部23が形成された面を示す図であり、図5(b)は、凸部23を拡大して示す図である。
【0031】
図に示すように、本実施形態では、型24として、シート21上の各カード形成部分1aで凸部23を形成したものを用いる。凸部23は、各カード形成部分1aのレリーフ絵柄5を表現するための溝17に対応した形状を有する。凸部23は、溝17(凸部23)の形状を示す版下データを用いてシート21上にインキによる印刷を行うことで形成される。凸部23の厚みは、溝17の深さに合わせて定められる。例えばオフセット印刷では1回あたり1μm程度の厚みの層が形成できるので、同様のオフセット印刷を複数回繰り返すことにより凸部23を形成できる。
【0032】
また、凸部23を形成するためのインキ、およびシート21には、後述する加熱プレス工程での加熱時に軟化しない材料を用いる。例えばインキには、UVオフセットインキや2液硬化型スクリーンインキ等、熱可塑性でない透明または単色のインキを用いることができる。シート21としては、柔軟温度が加熱時の加熱温度より高い二軸延伸PETシート等のプラスチック素材のシートを用いることができる。
【0033】
溝17を形成するには、上記の型24をオーバーフィルム層15a側から押し当てて加熱プレスを行う。すなわち、図4(d)に示すように、凸部23が形成された面をオーバーフィルム層15a側に向けて型24を配置し、平滑なステンレス板25a、25bで上下から挟んで、加熱および加圧を行う。この加熱プレス工程において、加圧する圧力は、例えば25kg/cm程度とする。また、加熱温度は、オーバーフィルム層15a、15bの柔軟温度である60〜80℃以上とし、例えば120℃とする。なお、上記した通り、加熱時に凸部23のインキやシート21が軟化することはない。
【0034】
上記のようにして加熱プレスを行うと、図4(e)に示すように、オーバーフィルム層15aが型24の凸部23の形状にあわせて窪んで溝17が形成されるとともに、オーバーフィルム層15a、15bのラミネートが行われる。
【0035】
その後、図4(f)に示すように型24を取り外す。剥離層19があることにより、型24の取り外しは容易である。
【0036】
以上により、図6に示すように、各カード形成部分1aが多面付けされた原反が製造される。この後、各カード形成部分1aを原反から打ち抜くことにより、個々のカード1が完成する。本実施形態では、6つのカード形成部分1aを原反に多面付けし1度に6枚のカード1を製造するようにしているが、その数は適宜定めることができる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態によれば、溝17による異方性反射特性によってレリーフ絵柄5を可視化した、意匠性、装飾性、偽造防止性が高いカード1を製造することが可能である。そして、この際、インクを用いてシート21上に凸部23を印刷することで、型24が形成できるので、従来のようにステンレス板等の精細な加工を行うなどの必要が無く、低コストで簡易にカード1を製造でき、量産性も高い。さらに、オーバーフィルム層15aの表面には剥離層19を形成するので、型24の取り外しも容易である。
【0038】
また、インクやシート21に、加熱プレス工程での加熱時に軟化しない材料を用いるので、型24を用いてオーバーフィルム層15aを加圧、加熱し、溝17が好適に形成できる。
さらに、型24は、シート21上に各カード形成部分1aに対応する凸部23を形成して多面付けしたものであるので、カード1を複数同時に製造でき、量産性が向上する。
【0039】
さらに、コア基材11の表面に印刷絵柄3が形成され、オーバーフィルム層15aおよび剥離層19に可視光を透過する材料を用いるので、印刷絵柄3と、レリーフ絵柄5の双方が可視化された意匠性、装飾性等の高いカード1が製造できる。
【0040】
ただし、本発明はこれに限ることはない。例えば、本実施形態の変形例として、カード1に印刷絵柄層13aのみ形成することも可能である。あるいは、コア基材11に印刷を行わず、印刷絵柄層13a、13bの両方を省略することも可能である。この場合では、オーバーフィルム層15a、15b、剥離層19として透明でないものを用いることも可能である。さらに、本実施形態では、カード1の片面のみにレリーフ絵柄5を形成したが、両面にレリーフ絵柄5を形成することも可能である。
【0041】
また、本実施形態では、レリーフ絵柄5等をカード1に形成する例を示したが、本発明の絵柄形成物はこれに限ることはない。例えばチケット等の各種の券類や封筒などの各種の包装材を基材として、同様の手法でその上にレリーフ絵柄5等を形成し可視化することも可能である。
【0042】
以上、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0043】
1:カード
3:印刷絵柄
5:レリーフ絵柄
10、21:シート
11:コア基材
13a、13b:印刷絵柄層
15a、15b:オーバーフィルム層
17:溝
19:剥離層
23:凸部
24:型
図1
図2
図3
図4
図5
図6