(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6035959
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】浴槽及び入浴装置
(51)【国際特許分類】
A47K 3/02 20060101AFI20161121BHJP
A61H 23/02 20060101ALI20161121BHJP
A61H 9/00 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
A47K3/02
A61H23/02 384
A61H23/00 520
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-170040(P2012-170040)
(22)【出願日】2012年7月31日
(65)【公開番号】特開2014-28038(P2014-28038A)
(43)【公開日】2014年2月13日
【審査請求日】2015年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100107445
【弁理士】
【氏名又は名称】小根田 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100107593
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 太郎
(72)【発明者】
【氏名】野中 隆
【審査官】
七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−056621(JP,A)
【文献】
特開2008−188145(JP,A)
【文献】
特開平10−005147(JP,A)
【文献】
特開2002−095601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/02−4/00
A61H 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内壁面の上部に形成されたヘッドレスト部、及び、このヘッドレスト部から連続して前記内壁面の下部にかけて形成された背中保持部を備え、前記背中保持部が、少なくとも入浴者の脊柱幅に対応する幅で上下方向に線状に延びる逃がし凹部と、前記逃がし凹部を挟んで両側位置のそれぞれにおいて入浴者の脊柱を挟む両側部分の背中を支持するための支持面部と、各支持面部の外側位置において前記支持面部よりも急な角度で拡がる斜面部とが、前記逃がし凹部を中心にして線対称に配置され、かつ、前記逃がし凹部を挟んで前記両支持面部及び両斜面部が全体としてVの字状に開く横断面形状を有するように形成されている浴槽と、
入浴者の着座姿勢を検出するために前記浴槽の背中保持部に対し前記逃がし凹部を挟んだ両側位置にそれぞれ設置された圧力センサと、
これら圧力センサからの検出出力に基づいて入浴者に対し姿勢修正に係る情報を案内指示するための入浴姿勢指示手段と
を備えて構成されている、入浴装置。
【請求項2】
請求項1に記載の入浴装置であって、
前記両斜面部は、入浴者の上半身の両側部と接触することにより入浴者の脊柱部位を前記逃がし凹部に向かわせるように形成されている、入浴装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の入浴装置であって、
前記背中保持部の下部から底壁面にかけて入浴者の臀部を保持するための臀部保持部が形成され、前記臀部保持部は底壁面よりも下方に凹んだ凹形状を有している、入浴装置。
【請求項4】
請求項3に記載の入浴装置であって、
前記ヘッドレスト部、背中保持部及び臀部保持部は、内向きに凹となるように上下方向に連続して湾曲する凹曲面によって構成されている、入浴装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の入浴装置であって、
平面視で矩形形状に形成され、前記ヘッドレスト部及び背中保持部は短辺を構成する一側の内壁面に対し、その幅方向前面にわたり形成されている、入浴装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の入浴装置であって、
前記浴槽の背中保持部から水流を噴出させるように前記背中保持部に対し配設された噴出ノズルを備えている、入浴装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入浴者がリラックスした姿勢で入浴することができ、入浴者に対し入浴による疲労回復効果を十分に与え得る浴槽及び入浴装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入浴者が浴槽内でリラックスして過ごせるように種々提案されている。例えば、下記の特許文献1では、半身浴用の腰掛けを浴槽に一体に成形した浴槽が提案されている。このものでは、浴槽の深底部から上向きの段差を設けて深底部よりも上側位置に座面を形成する一方、側壁を背もたれ部として利用し、座面部を背もたれ部から前方に向けて徐々にせり上がるように凹湾曲面に形成している(例えば、特許文献1の
図1又は
図5参照)。
【0003】
又、特許文献2では、浴槽の一側部内面に入浴者の頭部から背中までを支持可能な曲面状の上半身支持部を形成し、底板部上面に臀部の滑りを強制する臀部ストッパを形成し、他側部内面の下側位置に足置き部を形成することが提案されている(特許文献2の
図1参照)。
【0004】
さらに、特許文献3では、クッション性ある素材で入浴者の頭部載置用の凹部を形成した振動体を浴槽の上端縁から側壁内面にかけて装着し、振動体を振動させるためにその内部空間に向けて噴出ノズルを設け、噴出ノズルから噴出される浴湯を前記凹部の内面に衝突させることにより振動が付与されるようにすることが提案されている(特許文献3の第1図及び第2図参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−258777号公報
【特許文献2】特開2006−6668号公報
【特許文献3】実開平2−130288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の浴槽ではいずれの場合も入浴者の特に背中から腰部にかけて姿勢保持のための無意識下の緊張状態を招いていると考えられ、このため、入浴者に対し入浴による十分な疲労回復効果を与えられてはいない場合が多いと考えられる。そこで、本発明者は、入浴中の入浴者の姿勢と、そのときの入浴者の筋肉の状況との関係を種々計測し、この結果、入浴者が脊柱起立筋群を緩めた状態が最もリラックスした状態であり、入浴による疲労回復効果を高めるには脊柱起立筋群を十分に緩めた状態にさせることが重要であることを突き止めた。この点に関し、従来の浴槽では、入浴者の頭部が支持されて背中を斜めにもたれかけることができたとしても、脊柱起立筋群は無意識下で緊張状態に陥ってしてまっていると考えられる。例えば
図6(a)に示すように、入浴者Yはその頭を浴槽100の上端部又はそこに形成された枕部に載せてその背中を浴槽壁に斜めに形成された背もたれ部101にもたれかけたとしても、頭は首から反り返るように浴室の斜め上方に向く一方、浴槽壁と接している部分は背中のみであり、腰部から臀部にかけての部分を支持するものが無く、本人は力を抜いている積もりでも脊柱起立筋群は無意識下で緊張せざるを得なくなる。しかも、臀部が浴槽底面に沿って前方に滑る傾向となり、滑るのを食い止めるために脊柱を現状以上に後湾しないようにしようとするあまり、脊柱起立筋群はより一層の緊張状態に陥ることになる。ここで、脊柱起立筋は脊柱を挟んでその両側位置を肩から臀部にかけて延びており、脊柱を支える役割を果たす筋肉である。
【0007】
その上に、
図6(b)に示すように背中をもたれかけた背もたれ部101の壁面の横断面が平であると、脊柱を構成する椎(頸椎、胸椎、腰椎等)のそれぞれから外側に突出する棘突起(きょくとっき)、特に腰椎の棘突起が壁面に当たることになる。そして、入浴者Yが体重を預けようと脊柱を後湾させればさせる程、棘突起が壁面に当たって痛みを引き起こすことから、入浴者Yは安心して、つまり力を抜いて安心して背中を預けることはできなくなる。これらの結果、入浴者Yは腰椎の棘突起を引っ込めるように脊柱をS字状に起こす方向となり、脊柱起立筋群を緩めた状態とは言えない状態となる。又、人間の身体は癖などにより左右対称ではなく
図6(c)に例示するように歪みが生じている場合もある。
【0008】
さらに、ジェットバス等により入浴中にマッサージ力を入浴者に付与する場合、そのジェット噴流に基づくマッサージ力による疲労回復効果を高めるのにも、筋肉を弛緩させた状態、特に脊柱起立筋群を弛緩させた状態にすることが重要であり、そのような状態にさせ得る姿勢を実現し得る浴槽の構造や入浴装置の開発が必要と本発明者は考えた。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、脊柱起立筋群を緩めた状態の姿勢を実現させるのに適した形状の浴槽
を用いて入浴者をリラックスさせて疲労回復効果を生じさせるように導くための入浴装置を提供すること
にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明で
は、入浴装置として、内壁面の上部に形成されたヘッドレスト部
、及び、このヘッドレスト部から連続して前記内壁面の下部にかけて形成された背中保持
部を備え、前記背中保持部として、少なくとも入浴者の脊柱幅に対応する幅で上下方向に線状に延びる逃がし凹部と、前記逃がし凹部を挟んで両側位置のそれぞれにおいて入浴者の脊柱を挟む両側部分の背中を支持するための支持面部と、各支持面部の外側位置において前記支持面部よりも急な角度で拡がる斜面部とを、前記逃がし凹部を中心にして線対称に配置し、かつ、前記逃がし凹部を挟んで前記両支持面部及び両斜面部が全体としてVの字状に開く横断面形状を有するように形成
した浴槽を備える構成とする。加えて、入浴者の着座姿勢を検出するために前記浴槽の背中保持部に対し前記逃がし凹部を挟んだ両側位置にそれぞれ設置した圧力センサと、これら圧力センサからの検出出力に基づいて入浴者に対し姿勢修正に係る情報を案内指示するための入浴姿勢指示手段とを備える構成とした(請求項1)。
【0011】
本発明の場合、浴槽に入浴者が入り、背中から腰部にかけて背中保持部にもたれかけさせ、その頭部をヘッドレスト部にもたれかけさせれば、入浴者の特に背中の脊柱起立筋群を十分に弛緩させた状態にすることが可能となる。すなわち、頭部から背後に突出する外後頭隆起や、脊柱から背後に突出する棘突起が逃がし凹部内に入り、壁面との干渉や接触が回避され、これにより、脊柱起立筋群に余計な緊張を与えることなく真にリラックスした状態を実現させることが可能となる。しかも、両斜面部が支持面部よりも外側位置において支持面部よりも急な角度で拡がっているので、入浴者の上半身の両側部を脊柱付近に比べて前方に押し出した状態とすることが可能になると共に、入浴者の姿勢を両側から挟み込んでその脊柱が背面からみて上下方向に正しく直線状に延びるように矯正する役割を果たさせることが可能となる。これにより、脊柱起立筋群が無意識下で緊張状態に陥ることを回避することができ、脊柱起立筋群を確実に弛緩させた姿勢状態におくことが可能となる。以
上の浴槽により、脊柱起立筋群を確実に緩めた状態の姿勢を実現させ、入浴による疲労回復効果を高めることができ
ることになる。
その上で、圧力センサからの検出情報に基づき、入浴者に対し、入浴姿勢指示手段によって姿勢修正に係る案内情報を与えることが可能となる。かかる案内情報に基づき、入浴者自身によって、入浴者の脊柱が逃がし凹部に位置するように、あるいは、自己の脊柱が正しく延びるように、自身の姿勢を修正するよう、促すことが可能となる。以上により、脊柱起立筋群を確実に弛緩させた状態にサポートし得るという、前記の浴槽に基づく作用を確実に得られることになる。
【0012】
本発明の
入浴装置におい
て、浴槽の前記両斜面部として、入浴者の上半身の両側部と接触することにより入浴者の脊柱部位を前記逃がし凹部に向かわせるように形成することができる(請求項2)。このようにすることにより、前記の両斜面部の存在に基づき、入浴者の脊柱を逃がし凹部位置に収束するように導くと共に、入浴者を両側から挟み込んでその脊柱を上下方向に直線状に延びるように矯正する、という役割をより一層確実に果たさせることが可能となる。
【0013】
本発明の
入浴装置におい
て、浴槽の背中保持部の下部から底壁面にかけて入浴者の臀部を保持するための臀部保持部を形成し、前記臀部保持部として底壁面よりも下方に凹んだ凹形状を有するようにすることができる(請求項3)。このようにすることにより、浴槽に入った入浴者がその臀部を臀部保持部に入れ込んだ状態で座ることで、臀部保持部によって入浴者の臀部が前方に滑らないように確実に保持され、入浴者が滑りを防止するために上半身を引きつけるなどして脊柱起立筋群に不用意に緊張を引き起こすような事態に陥ることなく、安心感をもってリラックスして脊柱起立筋群を弛緩させた状態にすることができるようになる。
【0014】
又、浴槽のヘッドレスト部、背中保持部及び臀部保持部を、内向きに凹となるように上下方向に連続して湾曲する凹曲面によって構成するようにすることができる(請求項4)。このようにすることにより、入浴者の頭部、背中、腰部及び臀部の全体が同じ内向きに凹に湾曲する凹曲面に沿ってほぼ連続して接地するため、入浴者を、脊柱起立筋群を確実に弛緩させた状態にサポートし得る。
【0015】
そして、平面視で矩形形状に形成された浴槽に対しては、ヘッドレスト部及び背中保持部を、短辺を構成する一側の内壁面に対し、その幅方向前面にわたり形成するようにすることができる(請求項5)。最も普及している形状の浴槽に対しこのように適用することにより、最も効果的に本発明を適用することが可能となる。
【0018】
又、
以上の入浴装置に対し、浴槽の背中保持部から水流を噴出させるように背中保持部に対し配設された噴出ノズルを備えるようにすることができる(請求項
6)。このようにすることにより、噴出ノズルから噴出される水流を入浴者の背中又は腰部に衝突させてマッサージ効果を付与することが可能となる。その上に、前記入浴姿勢指示手段によって噴出ノズルと入浴者とを確実に所定の位置関係にすることができるため、そのマッサージ効果を、入浴者に対し確実に所定位置に付与することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
以上、説明したように、本発明の
入浴装置によれば、浴槽に入浴者が入り、背中から腰部にかけて背中保持部にもたれかけさせ、その頭部をヘッドレスト部にもたれかけさせれば、入浴者の特に背中の脊柱起立筋群を十分に弛緩させた状態にすることができる。すなわち、頭部から背後に突出する外後頭隆起や、脊柱から背後に突出する棘突起を逃がし凹部内に入れて壁面との干渉や接触を回避することができ、これにより、脊柱起立筋群に余計な緊張を与えることなく真にリラックスした状態を実現させることができる。しかも、両斜面部が支持面部よりも外側位置において支持面部よりも急な角度で拡がるようにしているため、入浴者の上半身の両側部を脊柱付近に比べて前方に押し出した状態にすることができると共に、入浴者の姿勢を両側から挟み込んでその脊柱を背面からみて上下方向に正しく直線状に延びるように矯正する役割をも果たさせることができる。これにより、脊柱起立筋群が無意識下で緊張状態に陥ることを回避させることができ、脊柱起立筋群を確実に弛緩させた姿勢状態におくことができるようになる。以上
、本発明が備える浴槽により、脊柱起立筋群を確実に緩めた状態の姿勢を実現させることができ、入浴による疲労回復効果を高めることができる
ようになる。
その上で、圧力センサからの検出情報に基づき、入浴者に対し、入浴姿勢指示手段によって姿勢修正に係る案内情報を与えることができ、かかる案内情報に基づき、入浴者自身によって、入浴者の脊柱が逃がし凹部に位置するように、あるいは、自己の脊柱が正しく延びるように、自身の姿勢を修正するよう、促すことができる。以上により、脊柱起立筋群を確実に弛緩させた状態にサポートするという、前記浴槽に基づく効果を確実に得ることができるようになる。
【0020】
請求項2に係る
入浴装置によれば、両斜面部として、入浴者の上半身の両側部と接触することにより入浴者の脊柱部位を逃がし凹部に向かわせるように形成することで、前記の両斜面部の存在に基づき、入浴者の脊柱を逃がし凹部位置に収束するように導くと共に、入浴者を両側から挟み込んでその脊柱を上下方向に直線状に延びるように矯正する、という役割をより一層確実に果たさせることができるようになる。
【0021】
請求項3に係る
入浴装置によれば、背中保持部の下部から底壁面にかけて入浴者の臀部を保持するための臀部保持部を形成し、臀部保持部として底壁面よりも下方に凹んだ凹形状を有するようにすることで、浴槽に入った入浴者がその臀部を臀部保持部に入れ込んだ状態で座ると、臀部保持部によって入浴者の臀部を前方に滑らないように確実に保持することができるようになる。これにより、入浴者が滑りを防止するために上半身を引きつけるなどして脊柱起立筋群に不用意に緊張を引き起こすような事態に陥ることなく、入浴者に安心感をもってリラックスさせて、脊柱起立筋群を弛緩させた状態にすることができるようになる。
【0022】
請求項4に係る
入浴装置によれば、ヘッドレスト部、背中保持部及び臀部保持部を、内向きに凹となるように上下方向に連続して湾曲する凹曲面によって構成するようにすることで、入浴者の頭部、背中、腰部及び臀部の全体を同じ内向きに凹に湾曲する凹曲面に沿ってほぼ連続して接地させることができ、入浴者を、脊柱起立筋群を確実に弛緩させた状態にサポートすることができる。
【0023】
請求項5に係る
入浴装置によれば、平面視で矩形形状に形成された浴槽に対して、ヘッドレスト部及び背中保持部を、短辺を構成する一側の内壁面に対し、その幅方向前面にわたり形成するようにすることで、最も普及している形状の浴槽に対し、最も効果的に本発明を適用することができるようになる。
【0025】
又、請求項
6に係る入浴装置によれば、浴槽の背中保持部から水流を噴出させるように背中保持部に対し配設された噴出ノズルを備えるようにすることで、噴出ノズルから噴出される水流を入浴者の背中又は腰部に衝突させてマッサージ効果を付与することができる。その上に、前記入浴姿勢指示手段によって噴出ノズルと入浴者とを確実に所定の位置関係にすることができるため、そのマッサージ効果を、入浴者に対し確実に所定位置に付与することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1(a)は本発明の第1実施形態
で用いる浴槽の特徴的な部分横断面説明図であり、
図1(b)は
図1(a)のA−A線における部分縦断面説明図であり、
図1(c)は入浴者を背中側から見た説明図である。
【
図2】
図2(a)は第2実施形態
で用いる浴槽の
図1(a)対応図であり、
図2(b)はその浴槽の平面説明図である。
【
図4】
図4(a)はジェット噴射ノズル位置の断面説明図であり、
図4(b)は圧力センサの配置例を示す正面説明図である。
【
図5】
図5(a)は第3実施形態を示す
図1(a)対応図であり、
図5(b)は第4実施形態を示す
図1(a)対応図であり、
図5(c)は第5実施形態を示す
図1(a)対応図である。
【
図6】
図6(a)は本発明と対比するための
図1(b)対応図であり、
図6(b)は同様に本発明と対比するための
図1(a)対応図であり、
図6(c)は
図1(c)対応図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態
で用いる浴槽を示す。
図1に示す浴槽は、本発
明で用いる浴槽の特徴的な構造がよく分かる状態で示した例であり、浴槽の内周壁の一部の内壁面(例えば、平面視で矩形に構成された一般的な浴槽の場合、短辺を構成する側壁の内壁面)に対し本発
明で用いる浴槽の特徴的な形状部分を形成したものである。
【0029】
すなわち、本実施形態の浴槽1は、その内壁面(以下、浴槽の平面視で短辺を構成する内壁面11を例にする)に対し、入浴者Yの背面(頭部背面、腰部を含む上半身の背面、及び、臀部の背面)を保持するための保持形状部2を形成したものである。この保持形状部2は、
図1(b)に示すように、頭部背面を保持するためのヘッドレスト部21と、腰部保持用のランバーサポート及び上半身の背面保持用のバックレストとしての機能を兼ねる背中保持部22と、臀部背面を保持するための臀部保持部23とからなる。そして、これらヘッドレスト部21、背中保持部22及び臀部保持部23は、縦断面方向から見ると内壁面11の頂端部位から底壁面12までの上下方向に滑らかに連続する、浴槽1に対し内向きに凹(外向きに凸)となる凹曲面によって形成され、これにより、入浴者Yの頭部,背中,腰部及び臀部の全てを浮かせることなく接地した状態に維持し得るようにしたものである。
【0030】
すなわち、臀部保持部23は、しゃがんで座った状態の入浴者Yの臀部の全体を包み込むように下向きに凸となって上向きに凹となって開口する凹曲面により上面が形成されている。この臀部保持部23の最も低い部位231は浴槽1の底壁面12よりも低くなるように設定される一方、背中保持部2から遠い側の縁部と底壁面12との境界部位には段差状のストッパ部232が形成されている。このストッパ部232に対し入浴者Yの臀部近傍の大腿部が接触して臀部が前方(
図1(b)の右方)に滑らないようになっている。なお、
図1(b)中の符号13は浴槽1のフランジ部である。背中保持部22も全体として斜め下向きに緩やかに凸となって斜め上向きに緩やかに凹となる凹曲面により構成され、臀部保持部23の後側(
図1(b)の左側)から境界のない曲面により連続するように形成されている。さらに、ヘッドレスト部21は入浴者Yの頭部の頂部まで覆い得る高さまでフランジ部13よりも上方位置まで突出され、後向き(
図1(b)の左向き)に緩やかに凸となって前向き(
図1(b)の右向き)に緩やかに凹となる凹曲面により構成され、かつ、このヘッドレスト部21も背中保持部22の上側から境界のない曲面により連続するように形成されている。ここで、ヘッドレスト部21は入浴者Yの頭部を斜め上向きに反り返った状態に保持するのではなくて、ほぼ前方に顔が向くように頭部を背面から保持するように比較的急角度で上方に立ち上がるように形成されている。これは背中保持部22が全体として斜め上向きに延びているのと、ほぼ同じ配向となるようにヘッドレスト部21の向きを設定することで、入浴者Yの頭部を脊柱Sとほぼ同じ向きに保持するようにするためである。これにより、頭部の自重を保持しつつ脊柱起立筋群に頭部保持のために無用な緊張状態に陥らせることなく、横から見て脊柱を僅かに外向きに凸となる湾曲状態に保持することで、リラックスさせた状態で入浴者Yの背中から頭部を保持し得るようにしている。
【0031】
一方、保持形状部2は、特に背中保持部22における代表的な横断面形状として、
図1(a)に示すように、幅方向(
図1(a)の左右方向)中心位置に形成された逃し凹部221と、この逃し凹部221の幅方向両側位置に形成された支持面部222,222と、各支持面222の幅方向外側位置に形成された斜面部223,223とを備え、平面視では全体として大きく開いたVの字状に屈曲・湾曲した形状に構成したものである。臀部保持部23も、背中保持部22と同様の横断面形状を有するように形成されている。
【0032】
逃し凹部221は、少なくとも背中保持部22とヘッドレスト部21とに対し幅方向中心位置において上下方向に連続して溝状に形成されたものであり、入浴者Yの頭部の特に外後頭隆起や脊椎から背後に突出する棘突起を収容して、それらが浴槽壁面と接触しないように逃がす役割を果たす形状部位である。逃し凹部221は、前記の棘突起が入り込む程度の開口幅と深さを有していればよく、その横断面形状の如何は問わない。各支持面部222は入浴者Yの脊柱S(
図1(c)参照)を挟んだ両側の背中部位に接触して支持する部位であり、両斜面部223,223は中心線Xに対し平面視で漏斗状に傾いた線対称の斜面により構成され、入浴者Yをその脊柱Sが幅方向中心線X位置に収束するように導くと共に、入浴者Yの姿勢を両側から挟み込んでその脊柱Sが背面からみて上下方向に正しく直線状に延びるように矯正する役割を果たすものである。
【0033】
以上の第1実施形態の浴槽1に入浴者Yが入り、臀部を臀部保持部23に入れ込んだ状態で座り、背中から腰部にかけて背中保持部22にもたれかけさせ、その頭部をヘッドレスト部21にもたれかけさせれば、入浴者Yを十分にリラックスさせた姿勢にすることができ、特に背中の脊柱起立筋群を十分に弛緩させた状態にすることができる。この際に、頭部から背後に突出する外後頭隆起や、脊柱から背後に突出する棘突起(特に第7頸椎の棘突起)を逃がし凹部21内に入れ込ませて、壁面との干渉や接触を回避させるようにしているため、脊柱起立筋群にも余計な緊張を与えることなく真にリラックスした状態を実現させることができる。さらに、臀部保持部23及びストッパ部232によって入浴者Yの臀部を前方に滑ることを確実に阻止した状態で保持することができ、入浴者Yは滑りを防止するために上半身を引きつけるなどして脊柱起立筋群に不用意に緊張を引き起こすような事態に陥ることなく、安心感をもってリラックスして脊柱起立筋群を弛緩させた状態にすることができるようになる。これらにより、入浴による疲労回復効果を高めることができるようになる。
【0034】
<第2実施形態>
図2及び
図3は、第2実施形態
で用いる浴槽、及び、この浴槽を用いて構成された入浴装置を示すものである。この第2実施形態は、特に
図2(a)に示すように保持形状部2aを構成するものの内、特に背中保持部22aの横断面形状において第1実施形
態の浴槽とは若干異なる構成を備える点で第1実施形態と異なる他、浴槽1aがジェットバス仕様に構成されている点、入浴者Yの姿勢状況を検出して適正姿勢状況への変更を促すための入浴姿勢指示手段を備えている点において第1実施形態と異なるものである。これら以外の構成については特に詳しい説明を省略するものの、第1実施形態と同じである。
【0035】
第2実施形態の背中保持部22aは、横断面家形状として、
図2(a)に示すように、幅方向(
図2(a)の左右方向)中心位置にVの字状の凹みとして形成された逃し凹部221aと、この逃し凹部221aから幅方向両側にVの字状に拡がるように形成された支持面部222a,222aと、各支持面222aの幅方向両外側方の各位置に支持面部222aよりも強く湾曲するように形成された斜面部223a,223aとを備えて構成されたものである。平面視では、全体として、第1実施形態の背中保持部2よりもVの字状に近い湾曲形状を備えている。もちろん、臀部保持部23aも、背中保持部22aと同様の横断面形状を有するように形成されている。
【0036】
そして、背中保持部22aには、ジェットバス仕様とするための噴出ノズル3,3(
図4(a)も併せて参照)が壁面に埋め込まれており、図示省略のポンプを作動させることにより浴湯に気泡を混合して、又は気泡無しの浴湯のみを各噴出ノズル3から浴槽内に噴出させ得るようになっている。各噴出ノズル3の位置は入浴者Yの腰部に対し浴湯流が衝突し得るように設定され、腰部に対するマッサージ効果を付与し得るようになっている。又、背中保持部22aの両支持面部222a,222aにはそれぞれ圧力センサ41が設けられ、同様に、ヘッドレスト21aの幅方向(
図2の左右方向)両側位置にはそれぞれ圧力センサ42,42が設けられている。圧力センサ41は、例えば
図4(b)に拡大状態で示すように所定数のセンサ素子411を所定範囲に配設することで、その付近の平均的な圧力を検出してコントローラ5に出力するようになっている。
【0037】
コントローラ5は、MPUやRAM等を備え、予め記録されたプログラムに沿って種々の作動制御を実行するように構成されており、その内の一部に入浴姿勢指示処理部を備えている。この入浴姿勢指示処理部は、前記の幅方向で1対ずつの圧力センサ41,41、42,42からの出力を受け、幅方向1対ずつの検出圧力値の偏りに対応して入浴者Yに対し入浴姿勢の修正を案内・報知するように構成されている。例えば、圧力センサ41,41の検出圧力において幅方向の左側が高く、右側が低ければ、入浴者Yの姿勢が左側に偏っていると判定して、背中の位置を右側にずらすように案内・報知したり、例えば圧力センサ42,42の検出圧力において幅方向の右側が高く、左側が低ければ、入浴者Yの頭部の位置が右側に偏っていると判定して、頭部の位置を左側にずらすように案内・報知したり、するようになっている。各1対の圧力センサ41,41、42,42間の偏差がほぼ同等(例えば所定の閾値範囲)になれば、前記の入浴姿勢指示処理は終了する。前記の案内・報知は、例えばリモコン51や、他の手段(例えばスピーカ手段等)を用いればよい。リモコン51を用いる場合には、人工音声による案内や、表示部511への文字表示、あるいは点灯表示等により行うようにすればよい。以上のコントローラ5の入浴姿勢指示処理部、圧力センサ41,41もしくは42,42、及び、リモコン51もしくはスピーカ手段等によって、入浴姿勢指示手段が構成されている。
【0038】
図2(b)又は
図3中の符号121は浴槽1aの排水口であり、
図1(b),
図2(b)又は
図3中の符号122は底壁面12より低位にある臀部支持部23a内から浴槽湯水を排水口まで排水するための導出溝である。
【0039】
以上の第2実施形態によれば、第1実施形態で説明したものと同様の作用効果に加えて、次のような作用効果を得ることができる。すなわち、第1実施形態と比べ第2実施形態の保持形状部2a、中でも背中保持部22aは滑らかな曲面により構成されているため、入浴者Yに対しよりリラックス感を与えることができる。又、両斜面部223a,223aにより入浴者Yをその脊柱Sが幅方向中心線X位置に収束させることができるため、1対の噴出ノズル3,3からの浴湯流を入浴者Yに対し脊柱Sを挟んで左右対称位置に受けさせることができるようになる。これにより、脊柱Sを挟んで左右対称位置に均等にマッサージ力を加えることができ、脊柱起立筋群の無意識状態のコリをより緩めさせて、より高い疲労回復効果を付与することができる。さらに、入浴者Yの姿勢が偏っている場合には、その偏りを圧力センサ41,41、42,42が検知してリモコン51等から入浴姿勢の修正に関する情報を与えることができ、これにより、前記の両斜面部223a,223aによる中心線X位置への収束機能に加えて、入浴者Yに対し直接的に姿勢修正を促すことができる。
【0040】
<他の実施形態>
なお、本発明は上記第1及び第2実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。すなわち、
図5(a)に示す第3実施形態の如く、保持形状部2bの背中保持部22bとして、第1実施形態と同様の逃がし凹部221b及び斜面部223b,223bを備え、特に両支持面部222b,222bを互いに同一平面上に延びるように形成したものを備えて構成するようにしてもよい。又、
図5(b)に示す第4実施形態の如く、保持形状部2cの背中保持部22cとして、逃がし凹部221cを挟んで両側位置に、第3実施形態と同様に互いに同一平面上に延びる支持面部222c,222cを備え、この支持面部222c,222cから滑らかな凹曲面により構成された斜面部223c,223cを連続させるようにしてもよい。さらに、
図5(c)に示す第5実施形態の如く、保持形状部2dの背中保持部22dとして、第2実施形態の逃がし凹部221aに代えて背後に突出する凹溝状の逃がし凹部221dを形成するようにしてもよい。
【0041】
第2実施形態の背中保持部22aに代えて、第1実施形態の背中保持部2又は第3〜第5実施形態のいずれかの背中保持部22,22b,22c,22dを用いて、第2実施形態で説明したような入浴装置を構成してもよい。又、第2実施形態の入浴姿勢指示手段として、コントローラ5に格納された入浴姿勢指示処理部を用いるものを例示したが、これに限らず、入浴姿勢指示処理部を各種リモコン(例えばリモコン51や、給湯機器に接続されている他のリモコン等)に格納して圧力センサ41,41、42,42からの検出信号を出力させることで、コントローラ5とは切り離して、かかるリモコンを用いて入浴姿勢指示手段を構成するようにしてもよい。
【0042】
浴槽の全体形状として前記第1又は第2実施形態で示した平面視で矩形状の浴槽1,1aに限らず、平面視で円形のものや正方形のもの、あるいは、多角形の浴槽に本発明を適用するようにしてもよい。又、入浴者の足が延びる側の内壁面に対し、通常は足が届いてフットレストの役割を果たす場合が多いものの、もしも足が届かない場合には底面壁12に対しフットレスト14(
図1(b)参照)を別途形成すれば、入浴者はよりリラックスし得る。
【符号の説明】
【0043】
1,1a 浴槽
3 噴出ノズル部
5 コントローラ(入浴姿勢指示手段)
11 内壁面
12 底壁面
41,42 圧力センサ(入浴姿勢指示手段)
51 リモコン(入浴姿勢指示手段)
21,21a ヘッドレスト部
22,22a,22b,22c,22d 背中保持部
23,23a 臀部保持部
221,221a,221b,221c,221d 逃がし凹部
222,222a,222b,222c 支持面部
223,223a,223b,223c 斜面部