(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記各熱電変換要素に設けた熱電変換材料部材が、p型熱電変換材料部材とn型熱電変換材料部材からなり、前記p型熱電変換材料部材と前記n型熱電変換材料部材が交互に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱電変換デバイス。
前記各熱電変換要素に設けた熱電変換材料部材が、p型熱電変換材料部材のみまたはn型熱電変換材料部材のみのいずれかであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱電変換デバイス。
【背景技術】
【0002】
温度差があればそこから電気を直接発電することができるデバイスとして、熱電変換素子が知られている。これは、2枚のセラミック板に高い熱電変換特性を示すBiTeなどの複数のp型及びn型半導体が挟まれていて、おのおの金属材料を用いて電気的に直列接続されているものである。
【0003】
図17は、従来の熱電変換モジュールの一例の説明図であり、
図17(a)は発電ユニットの斜視図であり、
図17(b)は熱電変換モジュールの透視斜視図である。
図17(a)に示すように、熱電変換ユニットは、角柱状のBi
2Te
3からなるp型熱電変換材料部材41と角柱状のBi
0.3Sb
1.7Te
3からなるn型熱電変換材料部材42をCuからなる電極43で接続して形成する。
【0004】
図17(b)に示すように、このような熱電変換ユニットをp型熱電変換材料部材41とn型熱電変換材料部材42が交互に隣接するように配置して電極43により直列接続させ、その上下にセラミック保護板44
1,44
2を設ける。また、出力部となる最終端部の電極43に引出電極45
1,45
2を接続する。
【0005】
この場合の熱電変換モジュールの一般的なサイズは、数mm角〜数cm角で厚さ数mm程度の固い平板状となっている。BiTeなどの熱電変換材料では、材料中に温度差があるとそれに比例した電圧を発生するゼーベック効果が発現する。しかしながら、この電圧はせいぜい温度差1℃当たり数10μV〜数100μVオーダーの微小なものである。そのため数10個〜数百個、もしくは数千個に及ぶような多数の半導体を金属電極や金属配線を用いて直列に接続することによって、外部の回路を動作できるような出力電圧になるようにしている。
【0006】
しかしながら、このような多数の熱電変換材料部材を、金属材料を用いて直列に接続する製造方法では、接続に対する製造の手間が大変大きいという問題があり、また、より大きな電力を発電するためには大きな温度差を熱電変換材料部材に加える必要がある。そのため、熱電変換材料部材や、熱電変換材料部材の端部の電極で接続されている金属配線には各種周辺材料の熱膨張係数の違いによる大きな熱歪みが加わる。
【0007】
また、常に一定の温度差がかかる環境ではなく、温度差が大きくなったり小さくなったりするような環境においては熱歪みの変化が繰返し発生することになり、異なる材料同士の界面において疲労現象も発生しやすくなる。実際に、従来の熱電変換デバイスでは、熱電変換材料部材の端部と金属配線をつなぐ電極部分での故障が多く、しかも、一箇所でも導通しなくなると直列接続が断線するために熱電変換デバイスとしての機能を果たさなくなる。
【0008】
そのため、熱電変換デバイスとしての高信頼性を実現するには、多数の配線と熱電変換素子の接続をいかに簡便に、しかも故障しないように形成するかが重要なポイントの一つである。
【0009】
このような問題点を解決する方法として、可撓性のある基材を活用して作製する熱電変換デバイスが提案されている(例えば、特許文献1或いは特許文献2参照)。
図18は、従来の可撓性のある基材を用いた熱電変換デバイスの概略的斜視図であり、細長いフレキシブルな基材81上にp型熱電変換材料部材82とn型熱電変換材料部材83とを、基材81の伸びる方向で交互に電気的に直列になると共に、幅方向には熱的に並列となるように配置する。この基材81を図に示すように折り曲げまたは円柱状に巻くことによって熱電変換デバイスとしている。なお、巻回したのち、上部及び下部に伝熱板84
1,84
2を設ける。
【0010】
図19は、従来の可撓性のある基材を用いた他の熱電変換デバイスの概略的斜視図であり、フレキシブルな基材91上に熱電変換材料を成膜し、この基材91を断熱性板92の間に挟みながら折り曲げることで熱電変換デバイスを形成している。また、基材91の両端部に引出電極93
1,93
2を設けている。
【0011】
どちらの場合でも、可撓性のある基材上に多数の熱電変換材料が直列に接続された構造を成膜して作製している。そのため、多数の熱電変換材料をつなぐ多数の接続部分を作製する手間は先に述べたこれまでの方法と比べてはるかに容易である。また、基材がフレキシブルである点を活かして、熱電変換材料や配線成膜後であっても基材そのものを変形することにより、比較的自由度の高いデバイス形状にすることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
ここで、
図1を参照して、本発明の実施の形態の熱電変換デバイスを説明する。
図1は、本発明の実施の形態の熱電変換デバイスの説明図であり、
図1(a)は折り畳み前の平面図であり、
図1(b)は折り畳み後の斜視図である。
【0024】
まず、
図1(a)に示すように、可撓性のある絶縁性基材11上に、熱電変換材料部材12を間隙を介して帯状に成膜する。次いで、帯状に成膜した熱電変換材料部材12に切れ目14を入れた時に分割された熱電変換材料部材12同士を上端と下端において交互に接続するパターンの配線13を成膜する。
【0025】
次いで、切れ目14を入れて、配線13乃至絶縁性基材11を複数の熱電変換要素15に分割する。その時、複数の熱電変換要素15のうちの隣接する2個の熱電変換要素15が一端において一端側接続基材16
1によって接続される。一方、複数の熱電変換要素15のうちの一端側接続基材16
1に接続する組み合わせと1個分ずれた組み合わせで隣接する2個の熱電変換要素15が他端において他端側接続基材16
2によって接続される。切れ目14により部分的に分割された絶縁性基材11が絶縁性基材要素11
1となる。また、一端側接続基材16
1及び他端側接続基材16
2の上には、それぞれ接続配線13
1,13
2が形成されている。
【0026】
次いで、
図1(b)に示すように、各熱電変換要素15を同じ方向に回転させて、熱電変換材料部材12と隣接する絶縁性基材要素11
1とが対向するように重ね合わせる。この時、一端側接続基材16
1を方向が揃うように撓ませるとともに、他端側接続基材16
2を方向が揃うように撓ませる。なお、一端が解放された接続基材(16
1,16
2)が引出電極17
1,17
2となる。
【0027】
可撓性を有する絶縁性基材11としては、ポリイミドが典型的なものであるが、ポリイミドと同様に柔軟性を有する樹脂フィルムであれば良い。例えば、カプトン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルエチルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイト(PPS)等が挙げられる。なお、これらの基材の選択方法としては、熱電材料の成膜条件(温度、脱ガス)に合致するかどうか、熱電変換デバイスの使用条件(温度や雰囲気ガス)に合致するかどうか、また所望とするコスト条件に合うかどうか、などを吟味して選択する。
【0028】
また、熱電変換材料部材12に用いる熱電材料としては、p型熱電材料としてはNiとCrを主成分とするクロメルが、また、n型熱電材料としてはCuとNiを主成分とするコンスタンタンが典型的なものである。
【0029】
その他の熱電材料として、例えば、以下の材料が検討されている。括弧内が材料組成である。BiTe系(BiTe、SbTe、BiSe及びこれらの化合物)、PbTe系(PbTe、SnTe、AgSbTe、GeTe及びこれらの化合物)、Si−Ge系(Si、Ge、SiGe)、シリサイド系(FeSi、MnSi、CrSi)、スクッテルダイト系(MX
3、若しくはRM
4X
12と記載される化合物、ここでM=Co、Rh、Irを表し、X=As、P、Sbを表し、R=La、Yb、Ceを表す)、遷移金属酸化物系(NaCoO、CaCoO、ZnInO、SrTiO、BiSrCoO、PbSrCoO、CaBiCoO、BaBiCoO)、亜鉛アンチモン系(ZnSb)、ホウ素化合物(CeB、BaB、SrB、CaB、MgB、VB、NiB、CuB、LiB)、クラスター固体(Bクラスター、Siクラスター、Cクラスター、AlRe、AlReSi)、酸化亜鉛系(ZnO)、カーボンナノチューブなどが挙げられる。また、成膜法は任意であり、スパッタリング法、蒸着法、CVD法、メッキ法或いはエアロゾルデポジッション法等の成膜方法を用いることができる。
【0030】
また、熱電変換材料部材12は、p型熱電変換材料部材12
1のみで形成しても良いし、n型熱電変換材料部材12
2のみで形成しても良いし、或いは、p型熱電変換材料部材12
1とn型熱電変換材料部材12
2を交互に配置しても良い。熱電材料として一方の導電型の熱電材料を用いる場合には、一個の熱電変換材料12が熱電変換ユニットとなり、p型とn型を交互に設ける場合には、一個のp型熱電変換材料部材12
1とn型熱電変換材料部材12
2との接続体が熱電変換ユニットになる。
【0031】
また、配線13としては、Cuが典型的なものであるが、Cuに限られるものではなく各種の導電材料を用いることができる。例えば、AgやAlを用いても良いし、これらとCuとの合金を用いても良い。なお、AgはCuよりも抵抗が低く、酸化しないというメリットがあるが、材料が高価である。一方、Alは安価であり、表面にのみ安定した酸化膜ができるというメリットがあるが、Cuより高抵抗である。
【0032】
切れ目14を入れる手段としては、切れ目14に対応する打ち抜き部を形成した打ち抜き型を用いたパンチングや、カッターやハサミ等の機械的手段を用いた機械的加工方法でも良い。或いは、CO
2レーザ等のレーザを用いたレーザ加工法や超音波加工法を用いて微細な切れ目14を形成しても良い。
【0033】
また、重ね合わせた熱電変換要素15同士の間には、補強のために低粘度の第1の樹脂を注入して固化することが望ましい。一方、撓ませた一端側接続基材16
1と他端側接続基材16
2には第1の樹脂より粘度の高い第2の樹脂を注入して固化することが望ましく、それによって、一端側接続基材16
1同士或いは他端側接続基材16
2同士の電気的な短絡を防止することができる。
【0034】
また、重ね合わせた状態の熱電変換デバイスの上面と下面とに、従来の熱電変換モジュールと同様に、絶縁性の保護部材を設けても良い。この保護部材としては、セラミック板等の絶縁性板でも良いし、湾曲した形状の熱源に固定する場合には、PET等の可撓性を有する絶縁性シートを用いても良い。
【0035】
また、熱電変換デバイスを、熱源に固定するために、一方の保護部材の裏面に接着層を設けても良く、市販の状態では、接着層を覆うように剥離シートを設ければ良い。
【0036】
また、
図1においては、全ての熱電変換ユニットを直列接続しているが、電圧だけではなく電流容量を確保するために、直列接続された熱電変換ブロックに分割して、各熱電変換ブロックを電気的に並列接続しても良い。この場合には、重ね合わせた状態で一方の端部の基材接続部を切断してブロックにしても良いし、或いは、切れ目を入れる段階でブロック単位に分割しても良い。或いは、別途製造した複数の熱電変換デバイスをさらに重ね合わせて樹脂で接着させるようにしても良い。
【0037】
このように、本発明の実施の形態の熱電変換デバイスにおいては、可撓性のある絶縁性基材11を用いることにより、熱電変換ユニット数が多くなっても、特別な接続配線なしに通常の成膜工程で形成することができる。また、熱電変換要素15同士は重ね合わせた状態で、絶縁性基材11と熱電変換材料部材12が1:1で重なるので、高密度化と製造コストの低下を両立することができる。
【0038】
さらに、本発明では、各行に多くの熱電変換ユニットを入れるだけでなく、奥行き方向にも多数の行、即ち、熱電変換要素を持たせて重ね合わせるようになっているので、従来例のような細長い基材ではなく、長方形の基材を用いることができる。
【0039】
例えば、熱電材料をターゲットが円形の通常のスパッタ装置で成膜する場合、細長い基材を用いると、同時にしかも均一に成膜することは工夫が必要である。しかし、本発明のようにほぼ長方形の基材を用いて多数の素子からなる熱電デバイスを製造できることは製造上もたいへん都合が良いことは明らかである。
【0040】
以上を纏めると、本発明の実施の形態の熱電変換デバイスには、以下のメリットがある。
(a)熱電変換ユニットの数が多くなっても、特別な接続配線なしに長方形の基材を用いることができる。そのため、成膜できる手段の範囲が拡がるので、製造コストの低下に寄与する。
(b)端部の接続部には余裕をもったたるみを持たせることができる。配線は熱電材料と同じ工程で、同じ基材上に成膜し、電極など特別な接点は必要ない。そのため、デバイスの信頼性向上に寄与する。
(c)熱電素子部分では基材と熱電材料が1:1で重なり合っていて、高密度を実現できている。一方、配線は熱電素子の外側に位置しており、接続部分も重なり合っているが、同じ基材上に形成し、しかも配線との接続部分が1枚おきであるため、配線の重なりが緩やかである。これらはデバイスの信頼性向上や集積化の容易性に寄与する。
【実施例1】
【0041】
次に、
図2及び
図9を参照して、本発明の実施例1の熱電変換デバイスを説明する。まず、
図2に示すように、幅20mm×長さ18mmで厚さが25μmのポリイミドシート21上に、メタルマスク22を用いたスパッタリング法により幅2mmの帯状のn型熱電材料膜23を5μmの厚さに成膜する。ここでは、n型熱電変換材料としてCuとNiを主とする合金であるコンスタンタンを用いる。
【0042】
また、メタルマスク22に設けたスリット22
1は幅が2mmであり、スリット22
1間の幅、即ち、遮蔽部22
2の幅は3mmであり、n型熱電材料膜23の間の間隙も3mmとなる。なお、
図2(a)は平面図であり、
図2(b)は
図2(a)におけるA-A′を結ぶ一点鎖線に沿った断面図である。
【0043】
次いで、
図3に示すように、同じメタルマスク22を3mm移動させた状態で、スパッタリング法によりp型熱電材料膜24を5μmの厚さに成膜する。ここでは、p型熱電材料としてNiとCrを主成分とするクロメルを用いる。なお、n型熱電材料膜23とp型熱電材料膜24の間隙は1mmになる。なお、
図3(a)は平面図であり、
図3(b)は
図3(a)におけるA-A′を結ぶ一点鎖線に沿った断面図である。
【0044】
次いで、
図4に示すように、メタルマスク25を用いてスパッタリング法により厚さが0.3μmのCu膜を成膜して配線26を形成する。ここでは、切れ目を入れた場合に、n型熱電材料膜要素23
1とp型熱電材料膜要素24
1が交互に接続されて電気的に直列接続されるように、各行毎に隣接するn型熱電材料膜23とp型熱電材料膜24を互い違いに交互に接続するとともに、列方向の端部で一体となるパターンとする。なお、
図4(a)は平面図であり、
図4(b)は
図4(a)におけるA-A′を結ぶ一点鎖線に沿った断面図である。
【0045】
次いで、
図5に示すように、パンチングによりポリイミドシート21を貫通する切れ目27
1,27
2を入れる。切れ目は行方向においては、配線パターンを形成した個所に連続した切れ目27
1を入れて帯状の熱電変換要素とする。また、各行の一端においては隣接する行を二行毎接続するとともに、他端においては一端側と一行ずれた組み合わせで隣接する行を二行毎に接続するように列方向の切れ目27
2を入れて接続部28とし、各熱電変換要素は接続部28において接続された状態となる。なお、各行の高さは3mmとする。配線26で接続された隣接する1個のn型熱電材料膜要素23
1と1個のp型熱電材料膜要素24
1が熱電変換ユニットとなる。
【0046】
次いで、
図6に示すように、切れ目27
1の部分で分割された熱電変換要素を同じ方向に回転させて、各熱電変換要素の熱電材料部分をポリイミドシート21の裏面と向き合うように重ね合わせる。なお、
図6(a)は平面図であり、
図6(b)は折り曲げの様子を示す模式的側面図であり、
図6(c)は重ね合わせの様子を示す模式的側面図である。
【0047】
図7は、重ね合わせた状態の熱電変換デバイスの斜視図であり、右端と左端にある接続部28は、各熱電変換要素の高さの約2倍の長さを持っているため、同じ形状でたるみをもたせて端部で纏めることができる。ここではポリイミドシート21に配線26が成膜されているため、接続部28が重なっていても特に膜厚が厚くなることはない。なお、左端の一端が解放された接続部が引出電極28
1,28
2となる。
【0048】
次いで、図示は省略するが、中央の熱電素子部分には浸透性のある低粘度の第1の接着剤を注入して全体を固化する。一方、接続部28の密度は緩いので、弛みをもたせたまま第1の接着剤より高粘度の第2の接着剤によって固化する。
【0049】
次いで、
図8に示すように、重ね合わせた熱電変換要素の上部と下部に絶縁性保護シート29
1,29
2を貼り付けることによって、本発明の実施例1の熱電変換デバイスの基本構造が完成する。
【0050】
図9は、実施例1の熱電変換デバイスの使用状態の説明図であり、熱電変換デバイスを熱源に固定して発電を行う。熱源に接する側が高温側になり、環境雰囲気が低温側となる。例えば、万歩計(登録商標)を例に取ると、熱源は人体となる。
【0051】
このように、本発明の実施例1においては、フレキシブルな基材を用いるとともに、端部において接続した状態で基材を帯状に分割して熱電変換要素を形成しているので、折り畳むだけで集積度の高い熱電変換デバイスを実現することができる。
【実施例2】
【0052】
次に、
図10乃至
図15を参照して、本発明の実施例2の熱電変換デバイスを説明するが、熱電変換材料としてn型熱電材料のみを用いただけで、基本的な構造を上記の実施例1と同様である。まず、
図10に示すように、幅22mm×長さ18mmで厚さが25μmのポリイミドシート31上に、メタルマスク32を用いたスパッタリング法により幅2mmの帯状のn型熱電材料膜33を5μmの厚さに成膜する。ここでは、n型熱電変換材料としてCuとNiを主とする合金であるコンスタンタンを用いる。
【0053】
なお、メタルマスク32に設けたスリット32
1は幅が2mmであり、スリット32
1間の幅、即ち、遮蔽部32
2の幅は1mmであり、n型熱電材料膜33の間の間隙も1mmとなる。なお、
図10(a)は平面図であり、
図10(b)は
図10(a)におけるA-A′を結ぶ一点鎖線に沿った断面図である。
【0054】
次いで、
図11に示すように、メタルマスク34を用いてスパッタリング法により厚さが0.3μmのCu膜を成膜して配線35を形成する。ここでは、切れ目を入れた場合に、n型熱電材料膜要素33
1が上端と下端とが交互に接続されて電気的に直列接続されるように、各列毎に行配線要素35
1が右側と左側に隣接する列配線要素35
2に対して一行おきに反対側の列配線要素35
2に接続する配線パターンとする。なお、
図11(a)は平面図であり、
図11(b)は
図11(a)におけるA-A′を結ぶ一点鎖線に沿った断面図である。
【0055】
次いで、
図12に示すように、パンチングによりポリイミドシート31を貫通する切れ目36
1,36
2を入れる。切れ目は、行方向においては、行配線要素35
1を形成した個所に連続した切れ目36
1を設けて帯状の熱電変換要素とする。また、各行の一端においては隣接する行を二行毎接続するとともに、他端においては一端側と一行ずれた組み合わせで隣接する行を二行毎に接続するように列方向の切れ目36
2を入れて接続部37とし、各熱電変換要素は接続部37において接続された状態となる。なお、各行の高さは3mmとする。
【0056】
次いで、
図13に示すように、切れ目36
1の部分で分割された各熱電変換要素を同じ方向に回転させて、各熱電変換要素の熱電材料部分をポリイミドシート31の裏面と向き合うように重ね合わせる。なお、
図13(a)は平面図であり、
図13(b)は折り曲げの様子を示す模式的側面図であり、
図13(c)は重ね合わせの様子を示す模式的側面図である。
【0057】
図14は、重ね合わせた状態の熱電変換デバイスの斜視図であり、右端と左端にある接続部37は、各熱電変換要素の高さの約2倍の長さを持っているため、同じ形状で弛みをもたせて端部で纏めることができる。ここではポリイミドシート31に配線35が成膜されているため、接続部37が重なっていても特に膜厚が厚くなることはない。なお、左端の一端が解放された接続部が引出電極37
1,37
2となる。
【0058】
次いで、図示は省略するが、中央の熱電素子部分には浸透性のある低粘度の第1の接着剤を注入して全体を固化する。一方、接続部37の密度は緩いので、たるみをもたせたまま第1の接着剤より高粘度の第2の接着剤によって固化する。
【0059】
次いで、
図15に示すように、重ね合わせた熱電変換要素の上部と下部に絶縁性保護シート38
1,38
2を貼り付けることによって、本発明の実施例2の熱電変換デバイスの基本構造が完成する。
【0060】
この本発明の実施例2においては、熱電材料をn型熱電材料としているので、プロセスが1工程分少なくなるというメリットがある。また、特定の動作温度で特性の良いn型熱電材料とp型熱電材料の両方が必ずしも揃わない場合も多いが、n型熱電材料のみを用いているので、不揃いの問題は生じない。
【実施例3】
【0061】
次に、
図16を参照して、本発明の実施例3の熱電変換デバイスを説明するが、実施例2におけるn型熱電材料膜をp型熱電材料膜に置き換えただけで、他の構造及び製造工程は全く同様であるので、最終的なデバイス構造のみを示す。
【0062】
図16は、本発明の実施例3の熱電変換デバイスの斜視図であり、この熱電変換デバイスにおいては、熱電材料膜要素がp型熱電材料膜要素39
1により形成される。なお、p型熱電材料としては、NiとCrを主成分とするクロメルを用いる。
【0063】
この実施例3の場合も、実施例2と全く同様な作用効果が得られ、使用温度範囲において特性の高い適当なn型熱電材料がない場合に好適となる。なお、温度差に対する熱電効果がn型熱電材料を用いた場合と逆になるため、発生する電圧がプラスマイナス逆になる。
【0064】
ここで、実施例1乃至実施例3を含む本発明の実施の形態に関して、以下の付記を付す。
(付記1) 帯状の可撓性のある絶縁性基材要素と、前記絶縁性基材要素上に間隙を介して成膜された熱電変換材料部材と、互いに隣接する前記熱電変換材料部材同士を上端部と下端部において交互に接続する配線とを備えた複数の熱電変換要素を有し、前記各熱電変換要素を、熱電変換材料部材と隣接する絶縁性基材要素とが
所定の間隙で対向するように重ね合わせ、前記各熱電変換要素の一方の端部において隣接する2個の熱電変換要素を互いに接続する一端側接続基材を有するとともに、前記各熱電変換要素の他方の端部において前記一端側接続基材に接続する組み合わせと1個分ずれた組み合わせで隣接する2個の熱電変換要素を互いに接続する他端側接続基材を有し、前記各絶縁性基材要素、前記一端側接続基材及び前記他端側接続基材が同一の絶縁性基材により一体になり、前記一端側接続基材と前記他端側接続基材が撓んでいる
とともに、前記所定の間隙が、前記一端側接続基材と前記他端側接続基材の撓み幅以下の間隙であることを特徴とする熱電変換デバイス。
(付記2) 前記一端側接続基材の表面に前記隣接する2個の熱電変換要素に設けた配線を接続する接続配線を有し、前記他端側接続基材の表面に前記一端側接続基材に接続する組み合わせと1個分ずれた組み合わせで隣接する2個の熱電変換要素に設けた配線を接続する接続配線を有することを特徴とする付記1に記載の熱電変換デバイス。
(付記3) 前記各熱電変換要素に設けた熱電変換材料部材が、p型熱電変換材料部材とn型熱電変換材料部材からなり、前記p型熱電変換材料部材と前記n型熱電変換材料部材が交互に配置されていることを特徴とする付記1または付記2に記載の熱電変換デバイス。
(付記4) 前記各熱電変換要素に設けた熱電変換材料部材が、p型熱電変換材料部材のみまたはn型熱電変換材料部材のみのいずれかであることを特徴とする付記1または付記2に記載の熱電変換デバイス。
(付記5) 前記複数の熱電変換要素が全て電気的に直列に接続されていることを特徴とする付記1乃至付記4のいずれか1に記載の熱電変換デバイス。
(付記6) 前記複数の熱電変換要素が電気的に直列接続された複数の熱電変換ブロックに区分され、前記複数の熱電変換ブロック同士が電気的に並列接続されていることを特徴とする付記1乃至付記4のいずれか1に記載の熱電変換デバイス。
(付記7) 隣接する前記熱電変換要素の間に第1の絶縁性樹脂が設けられ、隣接する前記一端側接続基材の間及び隣接する前記他端側接続基材の間に、前記第1の絶縁樹脂より硬化状態において固い第2の絶縁性樹脂が設けられていることを特徴とする付記1乃至付記6のいずれか1に記載の熱電変換デバイス。
(付記8) 前記重ね合わせた複数の熱電変換要素の上端部及び下端部に絶縁性保護板を設けたことを特徴とする付記1乃至付記3のいずれか1に記載の熱電変換デバイス。
(付記9) 可撓性のある絶縁性基材上に、熱電変換材料部材を間隙を介して帯状に成膜する工程と、前記帯状に成膜した熱電変換材料部材に切れ目を開けた時に分割された前記熱電変換材料部材同士を上端と下端において交互に接続するパターンの配線を成膜する工程と、前記配線乃至絶縁性基材を複数の熱電変換要素に分割するとともに、前記複数の熱電変換要素のうちの隣接する2個の熱電変換要素同士が一端において一端側接続基材によって接続され、且つ、前記複数の熱電変換要素のうちの前記一端側接続基材に接続する組み合わせと1個分ずれた組み合わせで隣接する2個の熱電変換要素同士が他端において他端側接続基材によって接続される
とともに、前記一端側接続基材及び他端側接続基材を前記熱電変換部材から分離するように前記配線乃至前記絶縁性基材を貫通するように前記切れ目を入れる工程と、前記各熱電変換要素を、熱電変換材料部材と隣接する絶縁性基材要素とが対向するように重ね合わせる工程と、前記一端側接続基材を方向が揃うように撓ませるとともに、前記他端側接続基材を方向が揃うように撓ませる工程とを有することを特徴とする熱電変換デバイスの製造方法。
(付記10) 隣接する前記熱電変換要素の間に第1の絶縁性樹脂を充填する工程と、隣接する前記一端側接続基材の間及び隣接する前記他端側接続基材の間に、前記第1の絶縁樹脂より硬化状態において固い第2の絶縁性樹脂を充填する工程とをさらに有することを特徴とする付記9に記載の熱電変換デバイスの製造方法。