(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シリンダヘッドに回転自在に軸支されたカムシャフトと、該カムシャフトに回転一体且つその軸方向に移動可能としたカムと、前記カムシャフトの上方にてカムフォークを介して前記カムをその軸方向に移動させるカムフォークシャフトと、前記カムフォークの駆動源であるアクセルモータと、前記アクセルモータからの回転を往復運動に変換して前記カムフォークへと伝達する伝達部材とを備えた内燃機関の動弁装置であって、
前記カムは、前記カムシャフトの軸方向に対して一方向に傾斜するカム面を有して動弁系部品に接触し、
前記カムフォークシャフトはシリンダ軸線方向視で前記カムシャフトよりも、燃焼室中心に配置される点火プラグを嵌挿するための点火プラグボス側に近接配置され、
前記カムフォークは、前記カムのカム高さ低位側の端部に係合し、
前記カムフォーク及び前記カムフォークの基端部のうち前記カムのカム高さ低位側の端面が、前記点火プラグの中心から前記カム高さ低位側方向へオフセットした位置と、更に前記カム高さ低位側方向へ離間した前記カムシャフトの軸受位置との範囲内に位置するように設けられ、
前記伝達部材は、シリンダヘッドカバー上に取り付けられ、シリンダヘッド上面視において前記カムフォークシャフトの後方側で、更に左右方向外側端がシリンダヘッドの外側端よりも内側となるように配置され、
前記アクセルモータは、シリンダヘッドカバー上に取り付けられ、シリンダヘッド上面視において前記伝達部材の左右方向側方に並ぶように配置され、更にモータ回転軸方向視において前記伝達部材と重なるように配置されることを特徴とする内燃機関の動弁装置。
前記カムシャフトの上方であって、前記カムフォークシャフトに対して前記点火プラグとは反対側にカムフォークシャフトの駆動源であるアクセルモータが配置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関の動弁装置。
前記カムフォークの基端部と前記点火プラグボスの上方への延出部と間に所定の間隙が形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の内燃機関の動弁装置。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る自動二輪車の全体構成例を示す側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るシリンダヘッドの上面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るシリンダヘッドの側面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るボールスクリューハウジングを示す側面図、上面図及び正面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係るシリンダヘッドカバーを取り外した状態のシリンダヘッドの上面図である。
【
図9】本発明の実施形態に係るシリンダヘッドカバーを取り外した状態のシリンダヘッドの上面図である。
【
図10】本発明の実施形態に係るシリンダヘッドカバーを取り外した状態のシリンダヘッドの正面図である。
【
図11】本発明の実施形態に係るカムハウジングを示す側面図、上面図及び正面図である。
【
図12】本発明の実施形態に係るタペットの斜視図及び側面図である。
【
図13】本発明の実施形態に係るタペットの縦断面図及び横断面図である。
【
図14】本発明の実施形態に係るタペット及びタペットガイドのそれぞれ斜視図である。
【
図15】本発明の実施形態に係るカムスライド機構の主要構成を示す斜視図である。
【
図16】本発明の実施形態に係る動弁装置の上面図及び正面図である。
【
図17】
図16(a)のD‐D線に沿う断面図及びE‐E線に沿う断面図である。
【
図18】本発明の実施形態に係るタペットのカム高さ低位部に当接時の状態を示す縦断面図である。
【
図19】本発明の実施形態に係るカムが高速側スライド移動端にある状態を示す上面図である。
【
図20】本発明の実施形態に係るタペットのカム高さ高位部に当接時の状態を示す縦断面図である。
【
図21】本発明の実施形態に係るカムフォークのボス部まわりの構成例を示す斜視図である。
【
図22】本発明の実施形態に係るカム及びカムフォークの係合関係を示す要部側面図である。
【
図23】本発明の実施形態に係るカムフォークのボス部まわりの構成例を示す要部上面図である。
【
図24】本発明の実施形態に係るカムフォークと点火プラグとの配置関係等を示す図である。
【
図25】本発明の実施形態に係るカムフォークと点火プラグとの配置関係等を示すシリンダヘッドの断面図である。
【
図26】従来の動弁装置におけるタペットのカム高さ低位部に当接時の状態を示す上面図である。
【
図27】従来の動弁装置におけるタペットのカム高さ低位部に当接時の状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づき、本発明における内燃機関の動弁装置の好適な実施の形態を説明する。
先ず
図1は、本発明の適用例としての自動二輪車の側面図である。
図1を用いて、この自動二輪車100の全体構成について説明する。なお、
図1を含め、以下の説明で用いる図においては、必要に応じて車両の前方を矢印Frにより、車両の後方を矢印Rrにより示し、また、車両の側方右側を矢印Rにより、車両の側方左側を矢印Lにより示す。
図1において鋼製或いはアルミニウム合金材でなるメインフレーム101の前部には、ステアリングヘッドパイプ102によって左右に回動可能に支持された左右2本のフロントフォーク103が設けられる。フロントフォーク103の上端にはハンドルバー104が固定され、ハンドルバー104の両端にグリップ105を有する。フロントフォーク103の下部には前輪106が回転可能に支持されると共に、前輪106上部を覆うようにフロントフェンダ107が固定される。前輪106は、前輪106と一体回転するブレーキディスク108を有している。
【0018】
メインフレーム101はステアリングヘッドパイプ102の後部に接続され、更に後方に向けて左右一対が二又状に分岐し、それぞれが後下がりに傾斜して延出する。メインフレーム101の後部付近から、後上りに適度に傾斜してシートレール101Aが延出し、後述するシートを支持する。なお、メインフレーム101やシートレール101Aにより車体フレームが構成される。また、メインフレーム101の後部にはスイングアーム109が揺動可能に結合すると共に、両者間にリヤショックアブソーバ110が装架される。スイングアーム109の後端には後輪111が回転可能に支持される。後輪111は、後述するエンジンの動力を伝達するチェーン112が巻回されたドリブンスプロケット113を介して、回転駆動されるようになっている。後輪111の直近周囲にはその前上部付近を覆うインナフェンダ114が設けられると共に、そのインナフェンダ114の上方にはリヤフェンダ115が配置される。
【0019】
メインフレーム101に搭載されたエンジンユニット116(点線部)には、図示しない燃料供給装置から混合気が供給されると共に、エンジン内での燃焼後の排気ガスがエキゾーストパイプ117を通って排気される。本実施形態において、エンジンは例えば4サイクル多気筒、典型的には4気筒エンジンであってよい。それぞれの気筒のエキゾーストパイプ117はエンジンユニット116の下側にて結合し、その後排気チャンバを経て車両後端付近で排気装置118から排気される。
【0020】
また、エンジンユニット116の上方には燃料タンク119が搭載され、燃料タンク119の後方にシート120が連設される。このシート120は、ライダシート120Aとタンデムシート120Bとを含む。ライダシート120A及びタンデムシート120Bに対応して、フートレスト121及びフートレストもしくはピリオンステップ122が配置される。なお、この例では車両左側において、前後方向略中央下部に図示しないプロップスタンドを有している。
【0021】
更に
図1において、123はヘッドランプ、124はスピードメータ、タコメータ或いは各種インジケータランプ等を含むメータユニット、125はステー126を介してハンドルバー104に支持されるバックミラーである。
【0022】
車両外装において、フェアリング127及びサイドカウル128によって車両の主に前部及び側部が覆われ、車両後部にはサイドカバーあるいはシートカウル129が被着し、これらの外装部材により所謂、流線型を有する車両の外観フォルムが形成される。
【0023】
ここで、この実施形態におけるエンジンユニット116は、ピストンを往復動可能に収容するシリンダもしくはシリンダブロック116Aと、このシリンダブロック116Aの下方に配置されたクランクケース116Bとを含み、これらが一体的に結合する。また、エンジンユニット116は複数のエンジンマウントを介してメインフレーム101に懸架されることでメインフレーム101に一体的に結合支持され、それ自体でメインフレーム101の剛性部材として作用する。
【0024】
なお、
図1に示されるようにドーム状もしくは甲羅状を呈する燃料タンク119は、メインフレーム101の上側全体を上部から蓋うようにメインフレーム101上に搭載支持される。更に、シリンダブロック116Aのシリンダヘッドカバーの上側には、吸気装置に清浄空気を供給するためのエアクリーナ130が配置される。エアクリーナ130によって清浄化された空気は吸気装置によって吸気され、その後
図1のようにインテークパイプ131内にて燃料が混合され、混合気としてエンジンユニット116に供給される。
【0025】
図2〜
図6は、エンジンユニット116のシリンダブロック116A、特にシリンダヘッド10の構成例を示している。シリンダブロック116Aにおいてシリンダヘッド10はシリンダ本体11の上部に固定され、その内部に動弁装置を収容する。これらの図にも示されるように、この実施形態では並列4気筒エンジンであってよく、各気筒ごとに吸気(IN)側及び排気(EX)側にそれぞれ2つのバルブ、つまり4バルブを有している。なお、この実施形態では吸気側に3次元カムを適用した例とするが、吸気側及び排気側の双方に適用することもできる。また、シリンダ本体11内ではピストンが略上下に往復動するようになっている。
【0026】
シリンダヘッド10は、この例では♯1〜♯4気筒の配列方向に沿って延設され、上部に被着するシリンダヘッドカバー12により動弁装置の収容空間が密閉構造とされる。シリンダヘッド10の底部には各気筒に対応する燃焼室13が形成され、それぞれの燃焼室13にはインテークポート14とエキゾーストポート15が連通形成される。燃焼室13及びインテークポート14間は、互いに隣接配置された一対の吸気バルブ16によって開閉され、また、燃焼室13及びエキゾーストポート15間は互いに隣接配置された一対の排気バルブ17によって開閉される。これら吸気バルブ16及び排気バルブ17を所定のタイミングで駆動制御することで、各気筒のシリンダに対する吸気及び排気を適正に制御することができる。
【0027】
吸気バルブ16の軸方向、即ちそのバルブステム16a上方には気筒の配列方向に沿って、カムシャフト18が複数のベアリング19を介して、シリンダヘッド10に回転自在に支持される。カムシャフト18には後述するカム20がその軸方向にスライド可能に装着されるが、カム20はカムシャフト18に対して回転方向には固定される。なお、カムシャフト18は中空構造とし、その中空内部に潤滑油路を形成してカム20等に注油することができる。各気筒に対応する計4つのカム20を有し、各カム20は3次元カムとして形成される。カム20と吸気バルブ16(のバルブステム16a)の間には、タペットガイド22によりガイドされてバルブステム16aの軸方向に往復動可能なローラ式のタペット21が配置される。
【0028】
排気バルブ17の軸方向、即ちそのバルブステム17a上方には気筒の配列方向に沿って、カムシャフト23が複数のベアリング24を介して、シリンダヘッド10に回転自在に支持される。カムシャフト23にはその軸方向所定位置にカム25が装着固定される。各気筒に対応する計4つのカム25を有し、排気側については各カム25は平板状の所謂平面カムとして形成される。カム25と排気バルブ17のバルブステム17aとの間には、バルブステム17aの軸方向に往復動可能な、この例では直打式のタペット26が配置される。
【0029】
吸気側のカムシャフト18及び排気側のカムシャフト23のそれぞれ一端にはスプロケット27,28が固着している(
図6、
図8等参照)。これらのスプロケット27,28と、ここでは図示を省略するが、クランクシャフトの一端に固着するドライブスプロケットとの間にタイミングもしくはカムチェーンが巻回装架される。なお、タイミングチェーンは、付属のタイミングチェーンガイド、チェーンテンショナ及びチェーンテンショナアジャスタ等により適正走行するようになっている。これによりクランクシャフトの回転でカムシャフト18及びカムシャフト23が同期回転する。
【0030】
更に具体的に説明すると、吸気バルブ16はそのバルブステム16aがバルブガイド29によってガイドされることで、バルブステム16aの軸方向に往復動する。バルブステム16aの端部に取り付けられたスプリングリテーナ30とスプリングシート31の間にバルブスプリング32が装着され、このバルブスプリング32の弾力によりバルブステム16aは常時上方へ付勢される。また、このときバルブステム16aの上端には、後述するシムを介してタペット21が当接する。カム20がバルブスプリング32の弾力に抗してタペット21を押し下げることで、バルブステム16aが下方へ付勢され、即ち吸気バルブ16が開くようになっている。
【0031】
排気バルブ17についても吸気バルブ16と同様に、バルブステム17aの端部に取り付けられたスプリングリテーナ30とスプリングシート31の間にバルブスプリング32が装着される。この場合もカム25によりタペット21を押し下げて、排気バルブ17を作動させるが、そのリフトタイミングやバルブリフト量は吸気バルブ16とは異なる設定になっている。
【0032】
ここで、吸気側のカム20は前述のように「3次元カム」として構成され、また各気筒に1つのカム20が設けられる。カム20は、カムシャフト18の軸方向であるその長手方向に緩やかに傾斜するプロフィルを持つカムロブを有し、バルブリフト量を連続的に変化させる形状に成形されている。この場合、カム高さと同時にカム作用角及びリフトタイミングも変化し、即ちバルブリフト量が大きくなるのに従ってカム作用角も大きくなり、更にはバルブのリフトタイミングも変化させ得るように設定されている。このようなカム20をカムシャフト18に沿って移動させることにより、吸気バルブのリフト量、作用角及びリフトタイミングを無段階に可変制御することができる。なお、カム20の移動機構等については後述するものとする。
【0033】
カム20をカムシャフト18に沿って移動させるためのカムスライド機構を有し、その駆動源として
図2及び
図3等に示すようにシリンダヘッドカバー12上にアクセルモータ33が搭載支持される。アクセルモータ33は、この例ではシリンダ10の右後側の角部に配置され、そのフランジ33aを介してボールスクリューハウジング34(
図7をも参照)に結合する。このボールスクリューハウジング34内部には、後述するボールスクリュー等の部材が収容される。
【0034】
次に
図8は、シリンダヘッド10からシリンダヘッドカバー12を取り外した状態を示している。動弁装置の主要構成要素であるカム・カムシャフトユニットは、シリンダヘッド10に取付固定されたカムハウジング35内に収容されるが、この場合、排気側のカムシャフト23及びカム25は略全体がカムハウジング35内にすっぽりと収容される。一方、吸気側のカムシャフト18及びカム20は、カムハウジング35の実質的に外部に配置されるカムスライド機構と連結もしくはリンクするため、そのような連結構造を配設可能とすべく開放構造とし、即ちその一部がカムハウジング35から露呈する。ここで、
図9は、本実施形態におけるカムハウジング35を示している。カムハウジング35全体としてはカムシャフト18及びカムシャフト23の上方を覆うカバー構造となっているが、吸気側についてはカムスライド機構を搭載するために必要なフレーム部35a等を除き、開放構造となっている。
【0035】
前述したようにタペット21は、タペットガイド22によりガイドされる。タペットユニットについて更に説明すると、
図10及び
図11に示すようにその内側にベアリング37を収容する収容部を有する概略ドーナッツ状に形成されたタペットローラ36と、ベアリング37を介してタペットローラ36を支持する芯部38と、芯部38の両外側方へ延設するアーム39とを有する。タペットローラ36は、バルブスプリング32の弾力に基づきカム20のカムロブに当接する。ベアリング37はこの例では芯部38の外周に沿って配列された複数のニードルベアリングとする。アーム39はバルブステム16aの上端まで延出し、シム40を介してバルブステム16aの上端と間接的に当接する。なお、芯部38の両外側からタペットローラ36側へ延出する突片38Aが付設され、タペットローラ36組付時のベアリング37の脱落防止を図っている。
【0036】
シリンダヘッド10適所にはタペットガイド22が配置固定されており、タペット21は
図12ようにタペットガイド22内側に収容されるかたちで浮動保持される。タペット21は、そのタペットローラ36がカム20のカム面に押されることで、アーム39がバルブスプリング32の弾力に抗してバルブステム16aを押動させ、これにより吸気バルブ16を開かせるバルブリフタとして機能する。
【0037】
図13〜
図16は、動弁装置の吸気側構成例を示している。前述したようにシリンダヘッドカバー12上にアクセルモータ33が搭載され、このアクセルモータ33を駆動源としてカムスライド機構もしくはカム進退機構を作動させる。先ず、シリンダヘッドカバー12内には、カムシャフト18の上方にてその軸方向に沿って所定間隔おいて、カムフォークシャフト41が平行配置されている。このカムフォークシャフト41はカムハウジング35に設けた複数、この例では5つの軸受部35b(
図9等参照)により、その軸方向にスライド可能に支持される。ボールスクリューハウジング34内部において、カムフォークシャフト41と平行且つ略同一高さ位置にボールスクリュー42(スクリューシャフト)が配置される。このボールスクリュー42はその両軸端付近にて、シリンダヘッドカバー12及びボールスクリューハウジング34の合せ面で一対のベアリング43により回転可能に支持される。ボールスクリュー42のアクセルモータ33側の端部にはギア44が取り付けられると共に、該アクセルモータ33の出力軸にはピニオンギア45が取り付けられ、これらのギア44及びピニオンギア45が噛合し、即ちアクセルモータ33の作動によりボールスクリュー42が回転駆動される。
【0038】
ボールスクリュー42には、回転方向に固定されたスライドナット46(スクリューナット)が噛合する。このスライドナット46はナットフォーク47を介してカムフォークシャフト41と連結する。ナットフォーク47はボールスクリュー42の軸方向に配置されたベースプレート47aを有し、このベースプレート47aがカムフォークシャフト41と結合する。より具体的にはカムフォークシャフト41には各気筒に対応して4つのカムフォーク48が固定され、このうち♯2及び♯3気筒に対するカムフォーク48とベースプレート47aとが相互に結合される。各カムフォーク48は、カム20の端部に装着されたベアリング49を介して、そのカム20と回転自在に係合する。即ち、ベアリング49はカムシャフト18の径方向でカム20とカムフォーク48との間に配置されて、両者を回転自在に結合する。
【0039】
図17に示されるように、ベアリング49は転がり軸受として内輪49a、外輪49b及び転動体49c(ボール)を含み、カムフォーク48が外輪49bの少なくとも一の側面に当接してカム20をカムシャフト18の軸方向に移動可能にしている。この場合、ベアリング49は、カム20におけるカム高さ低位側の一端部に配設される。
【0040】
カムフォークシャフト41に固定されたカムフォーク48は
図15等に示すように、カムシャフト18側へ延出し、ベアリング49の略半周部位に対応するように概略三日月状に形成される。
図17に示されるようにベアリング49はカム20のベースサークル側の端部に嵌着するが、カムフォーク48の先端部がその外輪49bに係合する。この場合、ベアリング49の外輪49bの外周面とカムフォーク48の間にガイドリング50が介挿される。なお、ガイドリング50は例えばCリング51によって係止されるようになっている。カムフォーク48は二又状に分岐する先端部48a,48bを有し、一方の先端部48aが外輪49bの一側面と当接すると共に、他方の先端部48bがガイドリング50の他側面と当接する。つまりカムフォーク48の先端部48a,48bの間に、外輪49b及びガイドリング50が一体的に挟着保持されるようになっている。
【0041】
カムスライド機構において、アクセルモータ33によりボールスクリュー42が回転すると、スライドナット46及びナットフォーク47を介してカムフォークシャフト41がその軸方向にスライドする。そして、このようにカムフォークシャフト41がスライドするのに連動もしくは同期して、各カム20が同時にカムシャフト18の軸方向に沿ってスライドする。このように回転するカム20をスライド移動させるために、ベアリング49の側面部をカムフォーク48で押すことでこれを実現する。
【0042】
実車の例ではエンジン運転時、自動二輪車100のアクセルグリップを操作するとアクセルモータ33が作動し、ボールスクリュー42が回転することでスライドナット46及びナットフォーク47を介してカムフォークシャフト41がスライドする。このカムフォークシャフト41のスライドによりカムフォーク48を介して、各カム20が同時にカムシャフト18の軸方向に沿ってスライドする。
【0043】
例えば、エンジン低速時にはタペット21のタペットローラ36はカム20に対して、
図18のようにカム高さ低位部に当接している。この状態で加速、即ちアクセルを開いてくと、アクセルモータ33の作動によりカムフォークシャフト41を介して、
図18において点線により示されるようにカムフォーク48は所定の可動範囲S内でスライド可能である。即ち、
図19のようにエンジン高速時に対応するスライド端まで移動し、その間カムフォーク48の先端部48a,48bがベアリング49の外輪49bの側面を付勢することにより、カム20をスライド移動させる。このカム20のスライドに伴いタペット21のタペットローラ36は次第に、そのカム高さ高位部側へと当接していく。そして、カム20のリフト特性に従ってバルブリフト量が増大し、
図20のようにタペットローラ36がカム高さ高位部に当接することで最大バルブリフト量となる。
【0044】
前述したように各カムフォーク48は、カムフォークシャフト41に固定される。ここで、本実施形態におけるカムフォーク48まわりの特徴的構成について説明する。
図21に示されるようにカムフォーク48はその基端側にボス部52を有し、このボス部52にてカムフォークシャフト41に嵌着固定される。また、
図22(要部側面図)に示されるようにカムフォーク48は、カム20のカム高さ低位部側の端部にベアリング49を介して該カム20と係合する。この場合、ボス部52は、カム20のカム高さ低位側の端面52aとカム高さ高位側の端面52bを有する。
【0045】
図21及び
図23(要部平面図)に示されるようにボス部52におけるカム高さ低位側の端部(端面52a側)が、カム高さ高位側の端部(端面52b側)よりも径方向に外側に大きくなるように形成される。即ち、カム部52のカム高さ高位側は、
図24にも示されるようにカムフォーク48がカムフォークシャフト41に組み付けられた状態でみて、ボス部52の上部から点火プラグ側の側部にかけての部位を凹ませて凹部52cとし、この部位が薄肉化される。
【0046】
ここで、各気筒の燃焼室13(
図4をも参照)には
図25に示されるように点火プラグ53が装着され、その中心軸線Zとする。点火プラグ53とカムフォーク48、特にボス部52との配置関係等につき、
図18のようにタペットローラ36がカム20のカム高さ低位部に当接するカム20の一方のスライド端にあるとき、
図8から分かるようにボス部52の端面52aは点火プラグ53の中心軸線Zに対して、カム20の他方のスライド端(即ちタペットローラ36がカム20のカム高さ高位部に当接する
図20の状態)側へ偏倚(オフセット)している。この場合、
図8あるいは
図25に示されるように点火プラグ53に対してボス部52の凹部52cが対応配置される。
【0047】
図22等に示されるようにカム20は、カムシャフト18の軸方向に対して一方向に傾斜するカム面20aを有する。一方、タペット21のタペットローラ36はカム面20aに対向して、これに接触する外周面36aを有し、カムシャフト18の軸方向における両者の相対移動の際にはタペットローラ36がカム面20aに乗り上げ、あるいは乗り越していく。
また、
図24等に示されるようにカムフォークシャフト41はシリンダ軸線方向視で、即ちこの例では点火プラグ53の中心軸線Z方向に見ると、カムシャフト18よりも点火プラグ53側に配置される。
【0048】
更に、
図4あるいは
図5に示したようにカムフォークシャフト41の駆動源であるアクセルモータ33はカムシャフト18の上方であって、カムフォークシャフト41に対して点火プラグ53とは反対側に配置される。即ち、カムフォークシャフト41よりもシリンダ軸線から離間する側に配置される。
【0049】
上記構成において、例えば
図22に示すようにタペットローラ36がカム20のカム高さ高位部側へと当接していくようにカム20をスライドさせると(
図22、矢印F)、カムフォーク48に対してベアリング49を介してモーメントMが作用する。このモーメントMの発生によりボス部52の特にX部及びY部の応力が高くなり、即ち
図24に示されるようにボス部52の上側(UP)ではカム高さ低位側、ボス部52の下側(DN)ではカム高さ高位側に大きな応力が作用する。このためX部及びY部にはそのような応力に対する剛性が必要になる。本発明では上記のようにボス部52の特にカム高さ低位側の端部(X部まわり)を大径化することで十分な剛性を確保する。そして、カム20のスライド時の応力に適正に対応することができ、常に適正且つ円滑動作が保証される。一方、ボス部52におけるX部よりもカム高さ高位部側には凹部52cが形成されているが、この部位の応力は実質的に小さいため剛性自体もそれ程必要なく、凹部52cを設けても何ら問題ない。
【0050】
また、カム20は、
図18のようにタペットローラ36がカム20のカム高さ低位部に当接するカム20の一方のスライド端(
図8をも参照)から、
図20のようにタペットローラ36がカム20のカム高さ高位部に当接するカム20の他方のスライド端(
図19をも参照)まで可動範囲S内でスライド移動する。このカム20のスライド動作において、カム20の一方のスライド端では既にボス部52の端面52a側の大径部は点火プラグ53の中心軸線Zに対して、カム20の他方のスライド端側へオフセットしている。つまりカム20のスライド動作中、ボス部52の端面52a側は点火プラグ53の中心軸線Zにこれ以上接近することなく、即ち点火プラグ53の中心軸線Zを跨ぐかたちで移動することがない。
【0051】
この場合、ボス部52には凹部52cが形成されているため、カムフォークシャフト41をできるだけ点火プラグ53に近接配置することができる。ここで、
図25に示したようにシリンダヘッド10の一部でなる点火プラグボス54により、点火プラグ53を嵌挿するためのプラグホール55が形成される。点火プラグ53はキャップもしくはアタッチメント56を付帯して、プラグホール55に装着される。この場合、シリンダヘッドカバー12の一部により、点火プラグボス54から上方へ延出部54Aが形成される。凹部52cで点火プラグ53から逃げるようにボス部52を配置することで、実質的にボス部52と点火プラグボス54の延出部54Aとの必要な間隙Gを確保した上で、上記のようにカムフォークシャフト41を点火プラグ53に近接配置することが可能になる。
【0052】
このようにボス部52の必要な剛性を有効に確保しながら、カムフォークシャフト41と点火プラグ53を近接配置することにより、装置の軽量コンパクト化を図ることができる。これにより本発明の動弁装置を備えたエンジンの車両への搭載性が向上し、車両自体の軽量化等にも寄与する。
また、本実施形態のようにアクセルモータ33等の部品が装置外側に配置される場合、その機能を保証しながら外側への張出しを有効に抑える。この点でも装置の軽量コンパクト化を図ることができる。
【0053】
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
上記実施形態において、カム20と接触する動弁系部品としてタペットローラ36の他に、例えばロッカーアーム等に接触する場合にも同様に本発明を適用可能である。
また、エンジンユニット116は4気筒以外の多気筒エンジン、更には単気筒エンジンであっても同様に作用効果を得ることができる。