特許第6035989号(P6035989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6035989
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】圧縮開放ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 13/04 20060101AFI20161121BHJP
   F02D 13/02 20060101ALI20161121BHJP
   F02D 21/08 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   F02D13/04 A
   F02D13/02 H
   F02D21/08 301H
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-178800(P2012-178800)
(22)【出願日】2012年8月10日
(65)【公開番号】特開2014-37779(P2014-37779A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2015年7月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100068685
【弁理士】
【氏名又は名称】斎下 和彦
(72)【発明者】
【氏名】保科 亮宏
(72)【発明者】
【氏名】松井 幸治
(72)【発明者】
【氏名】葛西 歩
【審査官】 藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−092790(JP,A)
【文献】 特開2011−179365(JP,A)
【文献】 特開2006−052677(JP,A)
【文献】 特開2008−274802(JP,A)
【文献】 特開2010−216304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 13/00 〜 13/04
F02D 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジンのシリンダー内を摺動するピストンと、前記シリンダーに開口する排気口を開閉する排気バルブと、前記ピストンが圧縮行程の上死点付近に達したときに前記排気バルブを開放して前記排気口から圧縮空気を吐出させ、上死点通過後の膨張行程にあるときは前記排気バルブを閉止するバルブ制御手段とを備えたディーゼルエンジンの圧縮開放ブレーキ装置において、
前記ディーゼルエンジンの排気管と吸気管とをEGRバルブを有するEGR配管により接続し、前記EGR配管における前記排気管との接続部に、前記圧縮空気が該EGR配管へ流入するのを防止する流入防止手段を設けるとともに、前記バルブ制御手段は、前記排気口から圧縮空気を吐出させ、上死点通過後の膨張行程にあるときは前記排気バルブを閉止する制御を行う際に、前記流入防止手段を作動させることを特徴とする圧縮開放ブレーキ装置。
【請求項2】
前記流入防止手段が開閉バルブであって、前記バルブ制御手段は、前記排気口から圧縮空気を吐出させ、上死点通過後の膨張行程にあるときは前記排気バルブを閉止する制御を行う際に、前記開閉バルブを閉止する制御を行う請求項1に記載の圧縮開放ブレーキ装置。
【請求項3】
前記開閉バルブと前記排気管との間にブローオフバルブを配置した請求項2に記載の圧縮開放ブレーキ装置。
【請求項4】
前記流入防止手段が前記EGRバルブであって、前記バルブ制御手段は、前記排気口から圧縮空気を吐出させ、上死点通過後の膨張行程にあるときは前記排気バルブを閉止する制御を行う際に、該EGRバルブを閉止する制御を行う請求項1に記載の圧縮開放ブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧縮開放ブレーキ装置に関し、更に詳しくは、ブレーキ作動時に発生する騒音を抑制することができる圧縮開放ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ディーゼルエンジンを搭載したトラックやバスなどの大型車両には、十分な制動力を得るために、通常の摩擦ブレーキに加えて補助ブレーキが装備されている。この補助ブレーキとしては、圧縮開放ブレーキ、排気ブレーキやリターダなどがある。
【0003】
このうち圧縮開放ブレーキは、圧縮行程中の上死点付近で排気バルブを開いてシリンダー内の圧縮空気を開放することでエネルギー損失を発生させるとともに、上死点通過後に排気バルブを閉じてシリンダー内の空気が少ない状態で膨張行程を行わせることで負の仕事を発生させて高いブレーキ力を得るものである(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
しかしながら、この圧縮開放ブレーキには、開放された圧縮空気が加振源となって周辺のエンジン部品を加振することにより、騒音が発生するという問題がある。
【0005】
この騒音を抑制することを目的として、発明者らが鋭意研究を進めたところ、ディーゼルエンジンの排気管と吸気管とを接続するEGR配管が、主要な音の放射部位であるとの知見を得て、本発明を完成するに至ったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−92790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ブレーキ作動時に発生する騒音を抑制することができる圧縮開放ブレーキ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成する本発明の圧縮開放ブレーキ装置は、ディーゼルエンジンのシリンダー内を摺動するピストンと、前記シリンダーに開口する排気口を開閉する排気バルブと、前記ピストンが圧縮行程の上死点付近に達したときに前記排気バルブを開放して前記排気口から圧縮空気を吐出させ、上死点通過後の膨張行程にあるときは前記排気バルブを閉止するバルブ制御手段とを備えたディーゼルエンジンの圧縮開放ブレーキ装置において、前記ディーゼルエンジンの排気管と吸気管とをEGRバルブを有するEGR配管により接続し、前記EGR配管における前記排気管との接続部に、前記圧縮空気が該EGR配管へ流入するのを防止する流入防止手段を設けるとともに、前記バルブ制御手段は、前記排気口から圧縮空気を吐出させ、上死点通過後の膨張行程にあるときは前記排気バルブを閉止する制御を行う際に、前記流入防止手段を作動させることを特徴とするものである。
【0009】
上記の流入防止手段として開閉バルブを用いる場合には、バルブ制御手段は、前記排気口から圧縮空気を吐出させ、上死点通過後の膨張行程にあるときは前記排気バルブを閉止する制御を行う際に、その開閉バルブを閉止する制御を行う。また、開閉バルブと排気管との間にブローオフバルブを配置することで、排気管から発生する騒音も抑制することができる。
【0010】
上記の流入防止手段としてEGRバルブを用いる場合には、バルブ制御手段は、前記排気口から圧縮空気を吐出させ、上死点通過後の膨張行程にあるときは前記排気バルブを閉止する制御を行う際に、そのEGRバルブを閉止する制御を行う。そのようにすることで、開閉バルブを用いる場合よりも、ディーゼルエンジンの改造に係る製造コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の圧縮開放ブレーキ装置によれば、気筒から吐出した圧縮空気が、音の放射部位であるEGR配管に流入しなくなるので、ブレーキ作動時に発生する騒音を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施形態からなる圧縮開放ブレーキ装置の構成図である。
図2】本発明の第2の実施形態からなる圧縮開放ブレーキ装置の構成図である。
図3図2に示すX部の拡大図であって、(a)は開閉バルブを開放した状態を、(b)は開閉バルブを閉止した状態をそれぞれ示す。
図4】本発明の第3の実施形態からなる圧縮開放ブレーキ装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の第1の実施形態からなる圧縮開放ブレーキ装置を備えたディーゼルエンジンを示す。なお、図中における一点鎖線は信号線を示している。
【0015】
このディーゼルエンジン1では、吸入口2から吸気管3内へ吸入された空気は、エアクリーナー4を通過してからターボチャージャー5のコンプレッサ5Aにより圧縮され、インタークーラー6で冷却された後に吸気スロットル7で流量を調整されてから、インテークマニホールド8へ流入する。そして、シリンダヘッド9に取り付けられた吸気バルブ10が吸気口11を開放したときに、4つの気筒12内にそれぞれに供給される。各気筒12に供給された空気は、噴射燃料と混合されて燃焼・膨張し、シリンダー13内でピストン14を往復動させてクランクシャフト15を回転駆動する。
【0016】
燃焼後の空気(燃焼ガス)は、動弁機構16により作動する排気バルブ17が排気口18を開放したときに各気筒12から排気され、エキゾーストマニホールド19を経て排気管20へ流れるが、その一部は吸気管3に接続するEGR配管21にEGRガスとなって分流する。EGR配管21には、水冷式のEGRクーラー22と、EGRガスの流量を調整するEGRバルブ23とが配置されている。EGR配管21に分流しなかった燃焼ガスは、ターボチャージャー5のタービン5Bを回転駆動させた後に、排出口24から外部へ排ガスとして放出される。
【0017】
排気バルブ17を作動する動弁機構16は、バルブ制御手段であるECU25から圧縮開放ブレーキの作動指示を受けると、ピストン14が圧縮行程の上死点付近に達したときに排気バルブ17を開放して排気口18から圧縮空気を吐出させるとともに、上死点通過後の膨張行程にあるときは排気バルブ17を閉止する。この動弁機構16としては、特開2011−157843号公報に記載されているような、圧縮開放カムローブが形成された排気バルブカムと、排気バルブとロッカアームとの間のクリアランスを調整する油圧機構とを備えるものが例示される。
【0018】
このようなディーゼルエンジン1において、EGR配管21における排気管20との接続部には、流入防止手段である開閉バルブ26が設置されている。そして、ECU25は、動弁機構16に対して圧縮開放ブレーキの作動を指示するときには、開閉バルブ26を閉止する制御を行う。
【0019】
そのようにすることで、排気口18から吐出した圧縮空気が、音の放射部位であるEGR配管21に流入しなくなるので、圧縮開放ブレーキの作動時に発生する騒音を抑制することができる。
【0020】
図2は、本発明の第2の実施形態からなる圧縮開放ブレーキ装置を示す。なお、図1と同じ部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0021】
この実施形態では、第1の実施形態における開閉バルブ26と排気管20との間にブローオフバルブ27を配置したものである。ブローオフバルブ27は、図3に示すように、EGR配管21に開口する支管28と、その支管28から分岐してエンジン外部へ連通する放出管29と、支管28内を摺動可能な弁体30と、その弁体30を支持するバネ31とから構成される。弁体30は、支管28と放出管29との接続口を閉止するようにバネ31により支持されている。図3(a)のように開閉バルブ26が閉止されているときは、排気管20からEGR配管21へ分流するガスGは、EGR配管21をそのまま流れてEGRクーラー22へ流入する。一方、図3(b)のように開閉バルブ26が開放されたときは、バネ31の弾性力に抗するガスGの圧力により弁体30が押圧されて、放出管29との接続口が開口するため、ガスGは放出管29を通じてエンジン外部へ放出される。
【0022】
このような構成において、ECU25は、動弁機構16に対して圧縮開放ブレーキの作動を指示するときには、開閉バルブ26を閉止する制御を行う。
【0023】
そのようにすることで、排気口18から吐出した圧縮空気が、ブローオフバルブ27からエンジン外部へ放出されて、音の放射部位であるEGR配管21に流入しなくなるので、圧縮開放ブレーキの作動時に発生する騒音を抑制することができる。
【0024】
また、排気口18から吐出した圧縮空気をエンジン外部へ放出することで、第1の実施形態に比べて排気管20に加わる負荷が低減されるため、排気管20から発生する騒音も抑制することができる。
【0025】
図4は、本発明の第3の実施形態からなる圧縮開放ブレーキ装置を示す。なお、図1と同じ部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0026】
この実施形態は、EGR配管21における排気管20との接続部にEGRバルブ23を設置することで、EGRバルブ23に本来の機能であるEGRガスの流量調整に加えて、流入防止手段としての機能も持たせるようにしたものである。ECU25は、動弁機構16に対して圧縮開放ブレーキの作動を指示するときには、EGRバルブ23を閉止する制御を行う。
【0027】
そのようにすることで、排気口18から吐出した圧縮空気が、音の放射部位であるEGR配管21に流入しなくなるので、圧縮開放ブレーキの作動時に発生する騒音を抑制することができる。
【0028】
また、既存のEGRバルブ23を用いるので、上記の第1及び第2の実施形態に比べて、ディーゼルエンジン1の改造に係る製造コストを低減することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 ディーゼルエンジン
12 気筒
13 シリンダー
14 ピストン
16 動弁機構
17 排気バルブ
18 排気口
20 排気管
21 EGR配管
22 EGRクーラー
23 EGRバルブ
25 ECU
26 開閉バルブ
27 ブローオフバルブ
図1
図2
図3
図4