特許第6036064号(P6036064)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6036064
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】有機半導体トランジスタ
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20161121BHJP
   H01L 51/05 20060101ALI20161121BHJP
   H01L 51/30 20060101ALI20161121BHJP
   H01L 51/40 20060101ALI20161121BHJP
   C07D 487/22 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   H01L29/78 618B
   H01L29/28 100A
   H01L29/28 250H
   H01L29/28 310J
   C07D487/22
【請求項の数】4
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2012-202086(P2012-202086)
(22)【出願日】2012年9月13日
(65)【公開番号】特開2014-57009(P2014-57009A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2015年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 英一
(72)【発明者】
【氏名】阿形 岳
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 克洋
【審査官】 小堺 行彦
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−513788(JP,A)
【文献】 特開2006−182710(JP,A)
【文献】 特開2004−023071(JP,A)
【文献】 特開平06−136278(JP,A)
【文献】 特開2007−335829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/786
C07D 487/22
H01L 51/05
H01L 51/30
H01L 51/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極と、
下記一般式(I)で示されるポルフィリン化合物を少なくとも1種含有する有機半導体層と、
を備える有機半導体トランジスタ。
【化1】

〔一般式(I)中、R11、R12、R21及びR22は、それぞれ独立して、炭素数2以上10以下のアルキル基を表す。〕
【請求項2】
前記複数の電極が、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極であり、
更に絶縁層を備え、
前記ゲート電極は、前記ソース電極及びドレイン電極の双方から離間して設けられ、
前記有機半導体層は、前記ソース電極及びドレイン電極の双方に接して設けられ、
前記絶縁層は、前記有機半導体層と前記ゲート電極とに挟まれて設けられ、
かつ電界効果型である、請求項1に記載の有機半導体トランジスタ。
【請求項3】
前記複数の電極が、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極であり、
前記ソース電極及びドレイン電極は、対向して設けられ、
前記ゲート電極は、前記ソース電極及びドレイン電極の双方から離間して設けられ、
前記有機半導体層は、前記ソース電極及びドレイン電極の双方に接して設けられ、
かつ静電誘導型である、請求項1に記載の有機半導体トランジスタ。
【請求項4】
前記一般式(I)中、前記R11及びR12が同じアルキル基であり、前記R21及びR22が同じアルキル基であり、且つ前記R11及びR12が前記R21及びR22とは異なるアルキル基である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の有機半導体トランジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体トランジスタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
薄膜トランジスタは、液晶表示素子等の表示用スイッチング素子として幅広く用いられている。従来、薄膜トランジスタは、アモルファスや多結晶のシリコンを用いて作製されている。
【0003】
一方、近年有機EL(Electro−Luminescence)素子等に代表される有機半導体の研究が盛んに行なわれている。それとともに有機物をシリコン材料に代えて軽量、柔軟性の特徴を生かして回路に組み込もうとする研究が報告されるようになってきた。
【0004】
このような薄膜トランジスタに用いる有機物としては、低分子化合物又は高分子化合物が用いられる。低分子化合物としては、ペンタセン、テトラセン等のポリアセン化合物(例えば、特許文献1〜3参照。)、銅フタロシアニン等のフタロシアニン化合物(例えば、特許文献4、5参照。)が提案されている。
【0005】
また、高分子化合物としては、セクシチオフェン等の芳香族オリゴマー(例えば、特許文献6参照)、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリ(p−フェニレンビニレン)等の高分子化合物(例えば、特許文献7〜10及び非特許文献1参照。)が提案されている。
【0006】
また、ポルフィリン化合物としては、チオフェンを含んだ化合物(例えば、非特許文献2、3参照。)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−55568号公報
【特許文献2】特開平10−270712号公報
【特許文献3】特開2001−94107号公報
【特許文献4】特開平5−190877号公報
【特許文献5】特開2000−174277号公報
【特許文献6】特開平8−264805号公報
【特許文献7】特開平8−228034号公報
【特許文献8】特開平8−228035号公報
【特許文献9】特開平10−125924号公報
【特許文献10】特開平10−190001号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Appl.Phys.Lett.,73,108(1998)
【非特許文献2】Phys.Chem.Chem,Phys.,8、2462(2006)
【非特許文献3】J.Org.Chem.,61,3623(1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、電荷移動度が高く、且つ、経時での電荷移動度の低下が抑制された有機半導体トランジスタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、
複数の電極と、下記一般式(I)で示されるポルフィリン化合物を少なくとも1種含有する有機半導体層と、を備える有機半導体トランジスタである。
【0011】
【化1】
【0012】
一般式(I)中、R11、R12、R21及びR22は、それぞれ独立して、炭素数2以上10以下のアルキル基を表す。
【0013】
請求項2に係る発明は、
前記複数の電極が、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極であり、更に絶縁層を備え、前記ゲート電極は、前記ソース電極及びドレイン電極の双方から離間して設けられ、前記有機半導体層は、前記ソース電極及びドレイン電極の双方に接して設けられ、前記絶縁層は、前記有機半導体層と前記ゲート電極とに挟まれて設けられ、かつ電界効果型である、請求項1に記載の有機半導体トランジスタである。
【0014】
請求項3に係る発明は、
前記複数の電極が、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極であり、前記ソース電極及びドレイン電極は、対向して設けられ、前記ゲート電極は、前記ソース電極及びドレイン電極の双方から離間して設けられ、前記有機半導体層は、前記ソース電極及びドレイン電極の双方に接して設けられ、かつ静電誘導型である、請求項1に記載の有機半導体トランジスタ。
請求項4に係る発明は、
前記一般式(I)中、前記R11及びR12が同じアルキル基であり、前記R21及びR22が同じアルキル基であり、且つ前記R11及びR12が前記R21及びR22とは異なるアルキル基である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の有機半導体トランジスタ。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、構造式(XII)で示された化合物を用いた有機半導体層を備える有機半導体トランジスタに比べ、電荷移動度が高く、且つ、電荷移動度が高い状態で維持された有機半導体トランジスタが提供される。
請求項2に係る発明によれば、構造式(XII)で示された化合物を用いた有機半導体層を備える有機半導体トランジスタに比べ、電荷移動度が高く、且つ、経時での電荷移動度の低下が抑制された有機半導体トランジスタが提供される。
請求項3に係る発明によれば、構造式(XII)で示された化合物を用いた有機半導体層を備える有機半導体トランジスタに比べ、電荷移動度が高く、且つ、経時での電荷移動度の低下が抑制された有機半導体トランジスタが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態の有機半導体トランジスタの層構成の一例を示した概略構成図である。
図2】他の実施形態の有機半導体トランジスタの層構成の一例を示した概略構成図である。
図3】他の実施形態の有機半導体トランジスタの層構成の一例を示した概略構成図である。
図4】他の実施形態の有機半導体トランジスタの層構成の一例を示した概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書で推測する作用や機能によって本実施形態に係る発明が制限されることはない。
【0018】
本実施形態の有機半導体トランジスタは、複数の電極と、下記一般式(I)で示されるポルフィリン化合物を少なくとも1種含有する有機半導体層と、を備える。
【0019】
一般式(I)で示されるポルフィリン化合物を用いた有機半導体層を備えた有機半導体トランジスタは、構造式(XII)で示された化合物を用いた有機半導体層を備える有機半導体トランジスタに比べ、電荷移動度が高く、且つ、経時での電荷移動度の低下が抑制された有機半導体トランジスタが提供される。
この理由としては、以下のことが考えられる。
【0020】
一般式(I)で示されるポルフィリン化合物は、R11、R12、R21及びR22で表されるアルキル基が、ポルフィリン骨格に対して直接に結合しているチオフェン環に付与されている化合物である。
そして、このような構造を持つ一般式(I)で示されるポルフィリン化合物は、高い電荷移動度でありながら、電子デバイスの作製で一般に用いられる有機溶媒に対する優れた溶解性を有すると考えられる。
そのため、一般式(I)で示されるポルフィリン化合物は、有機半導体トランジスタの有機半導体層に用いた場合に優れた成膜性を示すこととなり、成膜性に優れている結果、有機半導体トランジスタは経時での電荷移動度の低下が抑制されたものとなる。
【0021】
以上から、本実施形態における有機半導体トランジスタは、電荷移動度が高く、且つ、経時での電荷移動度の低下が抑制されたものとなる。
【0022】
なお、本願明細書において、「チオフェン環」とは、チオフェン環基又は複数のチオフェン環がつながっているものを意味する。
【0023】
以下、下記一般式(I)で示されるポルフィリン化合物について詳細に説明し、次いで、本実施形態の有機半導体トランジスタについて説明する。
【0024】
<一般式(I)で示されるポルフィリン化合物>
本実施形態に係る有機半導体トランジスタは、複数の電極と、下記一般式(I)で示されるポルフィリン化合物を少なくとも1種含有する有機半導体層と、を備える有機半導体トランジスタである。
【0025】
【化2】
【0026】
一般式(I)中、R11、R12、R21及びR22は、それぞれ独立して、炭素数2以上10以下のアルキル基を表す。
【0027】
11、R12、R21及びR22で表されるアルキル基は、(1)全て同じアルキル基である場合、(2)R11及びR12が同じアルキル基であり、R21及びR22が同じアルキル基であってR11及びR12とは異なるアルキル基である場合、(3)R21が他の3つの基とは異なるアルキル基であって、他の3つの基は同じアルキル基である場合、(4)R11及びR12が同じアルキル基で、且つ、R21及びR22が異なるアルキル基であって、R21及びR22のいずれもR11及びR12と異なるアルキル基である場合、が挙げられる。
一般式(I)中、R11、R12、R21及びR22で表されるアルキル基は、一般式(I)で示されるポルフィリン化合物の優れた溶解性と高い電荷移動度とを両立する観点から、炭素数2以上10以下のアルキル基を表すことが望ましく、炭素数3以上8以下が望ましい。
【0028】
(1)、(2)の場合、R11、R12、R21及びR22で表されるアルキル基は炭素数2以上8以下のアルキル基を表すことが望ましく、炭素数3以上6以下がより望ましい。
(3)、(4)の場合、R11、R12、R21及びR22で表されるアルキル基は炭素数2以上10以下のアルキル基を表すことが望ましく、炭素数3以上8以下がより望ましい。
なお、(3)、(4)の場合、一般式(I)で示されるポルフィリン化合物の構造が、非対称であるため、(1)、(2)の場合に比べ、R11、R12、R21及びR22で表されるアルキル基の炭素数が多い場合であっても有機溶媒に対する優れた溶解性を示すと考えられる。
【0029】
ここで、これらのアルキル基として具体的には、例えば、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基が挙げられる。
11、R12、R21及びR22が表すアルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。
【0030】
以下、一般式(I)で示されるポルフィリン化合物の具体例につき、例示するが、これらに限定されるものではない。なお、「例示化合物」の数字は、具体例である例示化合物の番号を示す。
【0031】
【化3】
以下、一般式(I)で示されるポルフィリン化合物は、例えば、下記合成スキームに従って合成されるが、これに限定するものではない。
なお、下記合成スキームで合成されるポルフィリン化合物は、一般式(I)における、R11及びR12がRを示し、R21及びR22がRを示す化合物である。
ここで、R及びRが等しい化合物は、(1)全て同じアルキル基である化合物を示し、R及びRが異なる化合物が、(2)R11及びR12が同じアルキル基であり、R21及びR22が同じアルキル基であってR11及びR12とは異なるアルキル基である化合物を示す。
【0032】
【化4】
【0033】
【化5】
【0034】
【化6】
【0035】
また、合成されるポルフィリン化合物が、(3)R21が他の3つの基とは異なるアルキル基であって、他の3つの基は同じアルキル基の化合物である場合、一般式(VII)に示す化合物として、Rが異なる2種の化合物を混合して添加する方法が挙げられる。
この2つの一般式(VII)に示す化合物として、具体的には、例えば、一方の化合物が、RがRと同じアルキル基を示す化合物で、他方の化合物が、RがRと異なるアルキル基を示す化合物が挙げられる。
さらに、合成されるポルフィリン化合物が、(4)R11及びR12が同じアルキル基で、且つ、R21及びR22が異なるアルキル基であって、R21及びR22のいずれもR11及びR12と異なるアルキル基の化合物である場合、一般式(VII)に示す化合物として、Rが異なる2種の化合物を混合して添加する方法が挙げられる。
この2つの一般式(VII)に示す化合物として、具体的には、例えば、双方の化合物のRが、異なるアルキル基の化合物であることに加えて、双方の化合物のRが、Rと異なるアルキル基を示す化合物が挙げられる。
ここで、一般式(VI)及び(VII)中、X及びGは、それぞれ独立にハロゲン原子、B(OH)、下記構造式(X−1)で示される置換基、下記構造式(X−2)で示される置換基、又は下記構造式(X−3)で示される置換基を表す。また、一般式(IV)、(V)、(VI)、(VII)及び(VIII)中、Rは、一般式(I)中のR11及びR12と同義であり、Rは、一般式(I)中のR21及びR22と同義である。
【0036】
【化7】
【0037】
上記合成反応の際に用いてもよい金属、金属触媒、塩基、及び溶媒としては、以下のものが挙げられる。
上記金属としては、例えば、Pd、Cu、Ti、Sn、Ni、Pt等が用いられる。
上記金属錯体としては、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh))、酢酸パラジウム(II)(Pd(OCOCH)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd2(dba))、ジ(トリフェニルホスフィン)ジクロロパラジウム(Pd(PPh3)2Cl2)、1,1′−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン−パラジウム(II)ジクロリド−ジクロロメタン錯体(Pd(dppf)Cl2)、Pd/C、又は、ニッケル(II)アセチルアセトナート(Ni(acac)2)等が用いられる。
上記塩基としては、例えば、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸カリウム(KCO3)、炭酸セシウム(CsCO)、又は水酸化バリウム(Ba(OH))などの無機塩基や、トリエチルアミン(NEt)、ジイソプロピルアミン(NH(i−Pr))、ジエチルアミン(NHEt)、ジメチルアミン(NHMe2)、トリメチルアミン(NMe)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、N,N−ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)、ピリジンなどの有機塩基が用いられる。
上記溶媒は、反応を著しく阻害しない溶媒であればよく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素溶媒、ジエチルエ−テル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエ−テル溶媒、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール又は水等が用いられる。
また、上記反応際に、必要に応じて、例えば、トリフェニルホスフィン(PPh3)、トリ−o−トリルホスフィン(P(o−Tol)、トリブチルホスフィン(P(t−Bu))、トリエチルホスフィン(PEt)等が用いられる。
ただし、上記Meは「CH」、Etは「C」、Phは「C」、i−Prは「(CHCH2」、o−Tolは「o−CH」、t−Buは「(CHC」を表す。
【0038】
上記合成反応は、例えば、常圧(1気圧)下、不活性ガス(例えば窒素、又はアルゴン等)雰囲気下に実施されるが、加圧条件下で実施してもよい。また、上記合成反応の反応温度20℃以上300℃以下の範囲であるが、より望ましくは50℃以上180℃以下の範囲である。また、上記合成反応の反応時間は、反応条件により異なるが、数分以上20時間以下の範囲から選択すればよい。
【0039】
上記反応において、金属や金属錯体触媒の使用量は、特に限定されるものではないが、一般式(I)に対して0.001モル%以上10モル%以下であり、より望ましくは、0.01モル%以上5.0モル%以下である。
【0040】
また。塩基の使用量は、一般式(I)で示される化合物に対してモル比で0.5以上4.0以下の範囲であり、より望ましくは1.0以上2.5以下の範囲である。
【0041】
そして、上記反応後、反応溶液を水中に投入して、よく攪拌し、反応生成物が固形物(結晶物)の場合は吸引濾過で濾取することにより粗生成物が得られる。一方、反応生成物が油状物の場合には、酢酸エチル、トルエン等の適当な溶剤で抽出して粗生成物が得られる。その後、得られた粗成生物をカラム精製(シリカゲル、アルミナ、活性白土、活性炭等を用いたカラム精製)するか、又は溶液中にこれらの吸着剤を添加し、不要分を吸着させる等の処理を行い精製する。また、反応生成物が結晶の場合には、さらに適当な溶剤(例えばヘキサン、メタノール、アセトン、エタノール、酢酸エチル、トルエン等)から、再結晶させて精製する。このようにして、目的とするポルフィリン化合物が得られる。
【0042】
<有機半導体トランジスタ>
本実施形態の有機半導体トランジスタは、複数の電極と、上記一般式(I)で示されるポルフィリン化合物を少なくとも1種含有する有機半導体層と、を備える。この構成に該当するものであれば、その他の構成は特に限定されない。
以下、図を参照しつつ、より詳細に説明するが、これに限定されない。
【0043】
図1図2図3及び図4は、本実施形態の有機半導体トランジスタの一例の構成を説明する断面図である。ここで、図1図2及び図3は、電界効果型(Field Effect Transistor)の有機半導体トランジスタについて示したものである。また、図4は、静電誘導型(Static Induction Transistor)の有機半導体トランジスタについて示したものである。
【0044】
図1図2及び図3に示す電界効果型の有機半導体トランジスタは、離間して設けられたソース電極2及びドレイン電極3と、ソース電極2及びドレイン電極3の双方に接する有機半導体層4と、ソース電極2及びドレイン電極3の双方から離間したゲート電極5と、有機半導体層4とゲート電極5とに挟まれて設けた絶縁層6と、を備える。
電界効果型の有機半導体トランジスタは、現在広く用いられているトランジスタの一形態であり、高速なスイッチング動作、製造方法の簡易性、高集積化への適性、が利点として挙げられる。
【0045】
図1図2及び図3に示す電界効果型の有機半導体トランジスタは、ゲート電極5に印加される電圧によってソース電極2からドレイン電極3に流れる電流を制御する。
【0046】
図1に示す有機半導体トランジスタは、基板1上にゲート電極5を備え、ゲート電極5の上に更に絶縁層6を備える。絶縁層6上には、離間して形成したソース電極2とドレイン電極3とを備える。ソース電極2及びドレイン電極3から露出する絶縁層6は、有機半導体層4で覆われる。
【0047】
図2に示す有機半導体トランジスタは、絶縁層6上にソース電極2又はドレイン電極3のどちらか一方が形成され、絶縁層6上に形成されたソース電極2又はドレイン電極3及び絶縁層6を覆うように有機半導体層4が形成され、有機半導体層4を挟むようにして、形成されていないソース電極2又はドレイン電極3のいずれか一方が有機半導体層4上に形成される。
【0048】
図3に示す有機半導体トランジスタは、絶縁層6の上に有機半導体層4が形成され、有機半導体層上にソース電極2及びドレイン電極3が離間して形成される。
【0049】
図4に示す静電誘導型のトランジスタ(Static Induction Transistor)は、対向して設けられたソース電極2及びドレイン電極3と、ソース電極2及びドレイン電極3の双方に接する有機半導体層4と、ソース電極2及びドレイン電極3の双方から離間したゲート電極5と、を有している。すなわち、基板1上にソース電極2と有機半導体層4及びドレイン電極3をこの順に有し、有機半導体層4内に複数のゲート電極5を有している。ゲート電極5は、紙面の手前から奥への方向に、ソース電極2及びドレイン電極3の双方と平行になるように配置され、各々のゲート電極5同士も相互に平行となるように設けられている。
【0050】
図1図2図3及び図4に示す有機半導体トランジスタ素子においては、ゲート電極5に印加される電圧によってソース電極2からドレイン電極3に流れる電流が制御される。
【0051】
各電極に用いられる材料としては、効率よく電荷注入するための材料であり、金属、金属酸化物、導電性高分子、炭素及びグラファイト等が使用される。
【0052】
電極に用いる金属としてはマグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、白金、クロム、タンタル、インジウム、パラジウム、リチウム、カルシウム及びこれらの合金が挙げられる。金属酸化物としては、酸化リチウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化スズインジウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化インジウム亜鉛酸化スズインジウム(ITO)、酸化スズ(NESA)、酸化亜鉛、酸化インジウム亜鉛等の金属酸化膜があげられる。
【0053】
電極に用いる導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリチオフェン誘導体、ポリピロール、ポリピリジン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体等があげられる。
【0054】
なお、本実施の形態において、導電性とは、体積抵抗率で10Ωcm以下の範囲を意味する。一方、絶縁性とは、体積抵抗率で1014Ωcm以上の範囲を意味する。
【0055】
また、体積抵抗率の測定は、JIS−K−6911(1995)に準じて、円形電極(三菱油化(株)製ハイレスターIPのURプローブ:円柱状電極の外径Φ16mm、リング状電極部の内径Φ30mm、外径Φ40mm)を用い、22℃/55%RH環境下、電圧100V印加し、印加後5sec後の電流値をアドバンテスト製、微小電流計R8340Aを用いることにより測定し、その電流値により、体積抵抗から、体積抵抗率を求める。
【0056】
ドレイン電極3及びソース電極2に用いる材料のイオン化ポテンシャルと、有機半導体層4に用いる一般式(I)で示されるポルフィリン化合物のイオン化ポテンシャルの差は、電荷注入特性の観点から、1.0eV以内であることが望ましく、特に0.5ev以内であることがさらに望ましい。
これら電極と一般式(I)で示されるポルフィリン化合物のイオン化ポテンシャルの差を考慮すると、電極材料としては、Auを用いることが望ましい。
【0057】
なお、導電性を有する基板を用いた場合、例えば、高濃度にドープされたシリコン基板は、その基板をゲート電極として兼ねる場合がある。
【0058】
電極の形成方法としては、上記原料を蒸着法やスパッタ等の方法によって薄膜を形成し、この薄膜を公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法によって成形する方法、アルミニウムなどを熱転写する方法、インクジェット等によりレジスト層を形成し、このレジスト層をエッチングする方法がある。また導電性高分子を溶媒に溶解し、この溶液をインクジェット等によりパターニングしてもよい。
【0059】
ソース電極2及びドレイン電極3の膜厚としては、特に限定するものではないが、一般に数nm以上数百μm以下の範囲であることが望ましく、より好適には1nm以上100μm以下であり、さらに好適には10nm以上10μm以下である。
【0060】
ソース電極2からドレイン電極3までの距離(チャンネル長)は、一般には数百nm以上数mm以下の範囲が望ましく、さらに好適には1μm以上1mm以下である。
【0061】
絶縁層6としては、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム等の無機物、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリススチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレンブタジエン共重合体、塩化ビニルデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコン樹脂等の有機絶縁高分子等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0062】
無機物の絶縁層の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、低エネルギービーム法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、大気圧プラズマ法などのドライプロセス、さらには、スプレー塗布法、スピン塗布法、ブレード塗布法、浸漬塗布法、キャスト法、ロール塗布法、バー塗布法、ダイ塗布法、エアーナイフ法、インクジェット法などの塗布方法のウェットプロセスが挙げられ、使用する材料及び素子の特性に応じて選択して採用される。
有機絶縁高分子を用いた絶縁層の形成方法は、上記ウェットプロセスを用いることが望ましい。
【0063】
絶縁層6の膜厚としては、特に限定するものではないが、一般に数nm以上数百μm以下の範囲であることが望ましく、より好適には、1nm以上100μm以下であり、さらに好適には10nm以上10μm以下である。
【0064】
また、絶縁層6の有機半導体層4と接する界面は、例えば、ヘキサメチルジシラザン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリクロロシラン、オクチルトリクロロシラン等のシラン化合物で処理されてもよく、有機絶縁層の場合は、ラビング処理されていてもよい。
【0065】
基板1としては、リン等を高濃度にドープしたシリコン単結晶やガラス、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリススチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレンブタジエン共重合体、塩化ビニルデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコン樹脂等の樹脂基板等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0066】
特に、電子ペーパー又はデジタルペーパーや携帯電子機器に用いられる電子回路に本実施形態の有機半導体トランジスタを用いる場合、基板1としては、可撓性がある基板を用いることが望ましい。特に曲げ弾性率が1000MPa以上である基板を用いることにより可撓性がある表示素子の駆動回路や電子回路が作製される。
【0067】
有機半導体層4を形成する方法としては、スピン塗布法、キャステング法、浸漬塗布法、ダイ塗布法、ロール塗布法、バー塗布法、インクジェット法など、ウェットプロセスによる各画像形成方法が用いられる。
【0068】
上述の通り、一般式(I)で示されるポルフィリン化合物は、有機溶媒に対して優れた溶解性を示すため、これらを溶解した溶液を用いて有機半導体層を形成するウェットプロセスは、一般式(I)で示される化合物を含有する有機半導体の形成方法として好適である。
【0069】
塗布液の溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサンノンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、ヘキサン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、工面などの炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシアセトニトリル、グルタロジニトリル、ベンソニトリルなどのニトリル系溶媒、ジメチルスルフォキサイド、スルフォラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどの非プロトン性極性溶媒などが挙げられるが、これに限定するものではない。また、これら溶媒を単独でも複数種併用してもよい。
【0070】
有機半導体層4の膜厚としては、特に限定するものではないが、一般に数nm以上数百μm以下の範囲が望ましく、より好適には1nm以上100μm以下であり、さらに好適には5nm以上10μm以下である。
【0071】
また、有機半導体層4はドーピング処理されてもよい。なお、ドーパトントとしてドナー性ドーパント、アクセプター性ドーパントのいずれも使用され得る。
【0072】
ドナー性ドーパントとしては、有機半導体層4の有機化合物に電子を供与する機能を有する化合物であれば望ましく用いられる。ドナー性ドーパントとしては、例えば、Li、Na、K、Rb、Cs等のアルカリ金属、Ca、Sr、Baなどのアルカリ土類金属、Y、La、Ce、Pr,Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Ybなどの希土類金属、アンモニウムイオンなどが挙げられる。
【0073】
アクセプター性ドーパントとしては、有機半導体層4の有機化合物に電子を取り去る機能を有する化合物であれば望ましく用いられる。アクセプター性ドーパントとしては、例えば、Cl、Br、I、ICl、ICl、IBrなどのハロゲン化合物、PF、AsF、SbF、BF、BF、SOなどのルイス酸、HF、HCl、HNO、HSOなどのプロトン三、酢酸、ギ酸、アミノ酸などの有機酸、FeCl、TiCl、HfClなどの遷移金属化合物、Cl、Br、I、ClO、スルホン酸アニオンなどの電解質アニオン、テトラシアノエチレン、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、11,11,12,12−テトラシアノナフト−2,6−キノジメタン、2,5−ジフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、テトラフルオロテトラシアノキノジメタンなども有機化合物などが挙げられる。
【0074】
さらに水分や酸素による有機半導体トランジスタの劣化を防ぐために保護層を設けてもよい。具体的な保護層の材料としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al等の金属、MgO、SiO、TiO等の金属酸化物、ポリエチレン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂が挙げられる、保護層の形成には、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマ重合法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、塗布法が適用される。
【0075】
なお、本実施形態の有機半導体トランジスタを用いた電子デバイスを作製する場合には、基板上に、1個以上の本実施形態の有機半導体トランジスタを搭載した構成(半導体装置)として利用することができ、この半導体装置に、さらに他の素子や回路等を組み合わせることにより所望の電子デバイスが作製される。
【実施例】
【0076】
以下、実施例によって本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0077】
[合成例1]
−例示化合物17の合成−
下記スキームに従い、窒素雰囲気下において、ピロール(25.0g)、ホルムアルデヒド(100ml)、トリフルオロ酢酸(100ml)の混合液を、10時間還流した。反応後、トルエンで抽出し、有機層を純水で洗浄した。次いで、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶剤を減圧下留去し、シリカゲルカラムクロマト(トルエン)で分離し、中間体1(38.1g)を得た。
【0078】
【化8】
【0079】
次に中間体1(30.0g)をクロロホルム(100ml)、トリフルオロ酢酸(100ml)に溶解させ、中間体2(44.3g)を加え、18時間攪拌した。反応後、クロラニルを加え4時間攪拌した。トルエンで抽出し、有機層を純水で洗浄した。次いで、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶剤を減圧下留去し、中間体3(21.8g)を得た。
【0080】
【化9】
【0081】
次に、中間体3(20.0g)をジクロロメタン(100ml)に溶解させ、N−ブロモこはく酸イミド(18g)加え、18時間攪拌した。反応後、トルエンで抽出し、有機層を純水で洗浄した。次いで、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶剤を減圧下留去し、中間体4(24.3g)を得た。
【0082】
【化10】
【0083】
次いで、中間体4(10.0g)、中間体5(15.4g)及びテトラヒドロフラン(100ml)の混合液に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(8g)、2N炭酸ナトリウム水溶液を加え、10時間還流した。反応後、トルエンで抽出し、有機層を純水で洗浄した。次いで、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶剤を減圧下留去し、シリカゲルカラムクロマト(トルエン)で分離し、[例示化合物17]5.2gを得た。
【0084】
【化11】
【0085】
得られた例示化合物は、H−NMRスペクトル(H−NMR、溶媒:CDCl、VARIAN株式会社製、UNITY-300、300MHz)と、IR測定(KBr法にてフーリェ変換赤外分光光度計(株式会社堀場製作所、FT−730、分解能4cm−1)にて同定した。
【0086】
[合成例2]
−例示化合物9の合成−
実施例1と同様に、中間体4(10.0g)を獲得し、次いで、中間体4(10.0g)と中間体6(15.2g)、テトラヒドロフラン(100ml)の混合液に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(8g)、2N炭酸ナトリウム水溶液を加え、20時間還流した。反応後、トルエンで抽出し、有機層を純水で洗浄した。次いで、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶剤を減圧下留去し、シリカゲルカラムクロマト(トルエン)で分離し、[例示化合物9]4.5gを得た。
【0087】
【化12】
【0088】
また、得られた例示化合物は、H−NMRスペクトルと、IR測定にて同定した。
【0089】
[合成例3]
−例示化合物6の合成−
次に、中間体1(30.0g)をクロロホルム(100ml)、トリフルオロ酢酸(100ml)に溶解させ、中間体7(17.5g)加え、18時間攪拌した。反応後、クロラニルを加え4時間攪拌した。トルエンで抽出し、有機層を純水で洗浄した。次いで、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶剤を減圧下留去し、中間体8(23.5g)を得た。
【0090】
【化13】
【0091】
次に、中間体8(20.0g)をジクロロメタン(100ml)に溶解させ、N−ブロモこはく酸イミド(17.5g)加え、18時間攪拌した。反応後、トルエンで抽出し、有機層を純水で洗浄した。次いで、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶剤を減圧下留去し、中間体9(22.3g)を得た。
【0092】
【化14】
【0093】
次いで、中間体9(10.0g)と中間体10(14.8g)、テトラヒドロフラン(100ml)の混合液に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(7.8g)、2N炭酸ナトリウム水溶液を加え、10時間還流した。反応後、トルエンで抽出し、有機層を純水で洗浄した。次いで、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶剤を減圧下留去し、シリカゲルカラムクロマト(トルエン)で分離し、[例示化合物6]4.8gを得た。
【0094】
【化15】
【0095】
また、得られた例示化合物は、H−NMRスペクトルと、IR測定にて同定した。
【0096】
[合成例4]
−例示化合物11の合成−
実施例1と同様に、中間体9(10.0g)を獲得し、次いで、中間体9(10.0g)と中間体11(14.3g)、テトラヒドロフラン(100ml)の混合液に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(8.0g)、2N炭酸ナトリウム水溶液を加え、20時間還流した。反応後、トルエンで抽出し、有機層を純水で洗浄した。次いで、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶剤を減圧下留去し、シリカゲルカラムクロマト(トルエン)で分離し、[例示化合物11]4.5gを得た。
【0097】
【化16】
【0098】
また、得られた例示化合物は、H−NMRスペクトルと、IR測定にて同定した。
【0099】
[合成例5]
−例示化合物4の合成−
実施例1と同様に、中間体4(10.0g)を獲得し、次いで、中間体4(10.0g)と中間体12(13.8g)、テトラヒドロフラン(100ml)の混合液に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(8.0g)、2N炭酸ナトリウム水溶液を加え、25時間還流した。反応後、トルエンで抽出し、有機層を純水で洗浄した。次いで、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶剤を減圧下留去し、シリカゲルカラムクロマト(トルエン)で分離し、[例示化合物4]4.0gを得た。
【0100】
【化17】
【0101】
また、得られた例示化合物は、H−NMRスペクトルと、IR測定にて同定した。
【0102】
[合成例6]
−例示化合物20の合成−
実施例1と同様に、中間体9(10.0g)を獲得し、次いで、中間体9(10.0g)と中間体13(15.8g)、テトラヒドロフラン(100ml)の混合液に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(8.0g)、2N炭酸ナトリウム水溶液を加え、22時間還流した。反応後、トルエンで抽出し、有機層を純水で洗浄した。次いで、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶剤を減圧下留去し、シリカゲルカラムクロマト(トルエン)で分離し、[例示化合物20]4.1gを得た。
【0103】
【化18】
【0104】
また、得られた例示化合物は、H−NMRスペクトルと、IR測定にて同定した。
【0105】
[実施例1]
電気抵抗率7×10−3Ω・cmのシリコン基板をゲート電極として兼ね、その上に、厚さ200nmの熱SiO膜を形成し絶縁膜とした。次に、絶縁膜を形成したシリコン基板に対して、電子工業用アセトン中で5分間超音波洗浄、電子工業用2−プロパノール中で5分間超音波洗浄し、乾燥窒素で乾燥させた後、UV−オゾン照射を15分間行い、絶縁膜の表面を洗浄した。その後、絶縁膜を形成したシリコン基板を、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルシジラザン(Aldrich社製)の蒸気にさらした後、乾燥窒素で乾燥させた。
次に、電子工業用トルエンに、例示化合物17を0.4質量%で溶解させ、この溶液を上記洗浄したシリコン基板(絶縁膜)上にスピンコート法(2000rpmで20秒)で塗布し、自然乾燥した後、窒素雰囲気下、100℃で1分間加熱し有機半導体層を形成した。得られた有機半導体層の厚さは、85nmであった。
次に、有機半導体層上に、メタルマスクを用い、真空蒸着(真空度2×10−4Pa)にて、金(Au)を60nmの厚さで蒸着して、ソース電極及びドレイン電極を形成し、有機半導体トランジスタを作製した。なお、ソース電極からドレイン電極までのチャンネル長は1.5mm、チャンネル幅は50μmとした。
以上のように作製した有機半導体トランジスタは、p型トランジスタとして特性を示した。
【0106】
<評価>
(溶解性・成膜性の評価)
例示化合物17をトルエンに溶解させた溶液で形成した上記有機半導体層の表面について、ひび割れや亀裂や欠けなどの欠陥の発生を1mm×1mmの範囲で光学顕微鏡によって観察し、溶解性及び成膜性を評価した。結果を表1に示す。評価基準は以下の通りである。また、溶媒をトルエンからテトラヒドロフラン、キシレン、ジクロロエタン、クロロホルムに代えたときの成膜性についても評価した。
−溶解性・成膜性の評価基準−
拡大鏡を用いて判断し、以下の評価基準に基づいて評価した。
○:全面的に膜で覆われており、良好
△:部分的に膜で覆われていない部分あり
×:膜で覆われていない部分が多数有り
【0107】
(電荷移動度の評価)
作製直後のトランジスタにつき、電流−電圧特性の飽和領域から電荷移動度を求めた。更に、トランジスタを25℃で保存し、1ヶ月経過後に再度、トランジスタ特性を評価し電荷移動度を測定した。結果を表1に示す。
【0108】
[実施例2〜6]
実施例1において、有機半導体層の形成する際、例示化合物17の変わりに、例示化合物9、例示化合物6、例示化合物11、例示化合物4、例示化合物20を使用した以外は実施例1と同様に有機半導体トランジスタを作製し、実施例1と同様にトランジスタの特性を評価した。さらに、25度で保存し、1ヶ月経過後に再度、特性評価を行い、電荷移動度を評価した。結果を表1に示す。
【0109】
[比較例1]
実施例1において、例示化合物20の代わりに、13,6−N−サルフィニルアセトアミドペンタセン(Aldrich社製)を比較化合物1として用い、加熱温度を160℃とした以外は実施例1と同様に操作して有機半導体トランジスタを作製し、比較例1とした。
【0110】
[比較例2]
比較例1において用いた13,6−N−サルフィニルアセトアミドペンタセンの代わりにポリ(3−ヘキシルチオフェン)(Aldrich社製)を比較化合物2として用い、溶媒をクロロホルムに代えた以外は、実施例1と同様に操作して有機半導体トランジスタを作製し、比較例2とした。
【0111】
[比較例3]
比較例1において用いた13,6−N−サルフィニルアセトアミドペンタセンの代わりに下記構造式(XI)を比較化合物3として用いた以外は、実施例1と同様に操作して有機半導体トランジスタを作製し、比較例3とした。
【化19】
【0112】
[比較例4]
比較例1において用いた13,6−N−サルフィニルアセトアミドペンタセンの代わりに下記構造式(XII)を比較化合物4として用いた以外は、実施例1と同様に操作して有機半導体トランジスタを作製し、比較例4とした。
【化20】
【0113】
比較例1〜4の有機半導体トランジスタは、実施例1と同様の方法で評価を行なった。結果を表1に示す。
【0114】
【表1】
【0115】
上記表1から、実施例の有機半導体層は、比較例の有機半導体層に比べて電荷移動度が高く、作製1ヵ月後であっても電荷移動度が高い状態で維持されていることが明らかである。また、実施例で用いた例示化合物は、比較例で用いた比較化合物に比べて、溶解性及び成膜性が高いことが明らかである。
【符号の説明】
【0116】
1 基板
2 ソース電極
3 ドレイン電極
4 有機半導体層
5 ゲート電極
6 絶縁層
図1
図2
図3
図4