(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のいくつかの実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
《第1実施形態》
まず、
図1を用いて、第1実施形態に係る送信ユニット10の概要(構成及び使用形態)を説明する。
【0015】
図1に示してあるように、本実施形態に係る送信ユニット10は、通信ケーブル30により受信ユニット20と接続される装置である。また、送信ユニット10は、通信ケーブ
ル30とは異なるケーブル(例えば、LAN(Local Area Network)ケーブル)によりPC(Personal Computer)50及び受信ユニット20と接続される装置となっている。
【0016】
通信ケーブル30は、送信ユニット10から受信ユニット20へのデータ転送に使用されるケーブル(例えば、Serial Attached SCSI(Small Computer System Interface)ケー
ブル)である。この通信ケーブル30の各ケーブルパッド31には、通信ケーブル30の仕様情報等を保持したEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)32が設けられている。
【0017】
受信ユニット20は、通信ケーブル30を介して受信したデータに基づく処理(例えば、受信したデータを、配下のハードディスクドライブに記憶する処理)を行うユニットである。
【0018】
図1に示してあるように、受信ユニット20は、受信チップ22及びCPU24を備える。尚、図示は省略してあるが、受信ユニット20は、RAM(Randum Accsess Memory
)、受信側診断プログラム(詳細は後述)を記憶した不揮発性記憶装置(フラッシュROM(Read Only Memory)等)、EEPROM32用のIF(インターフェース)回路も備
える。さらに、受信ユニット20は、送信ユニット10内のCPU14との間で通信を行うためのIF回路(例えば、LAN−IF回路)も備える。
【0019】
受信チップ22は、通信ケーブル30により伝送されてきた信号をデータ(ビット情報)に変換するレシーバ22a等を備えたICチップ(Integrated Circuit)である。この受信チップ22は、診断用データを受信した場合、そのビット誤り率(bit error rate:以下、BERと表記する)を計測して、CPU24に通知する機能を有している。尚、診断用データとは、送信ユニット10が通信ケーブル30の状態を診断するために送信するデータのことである。
【0020】
CPU24は、各種プログラム(上記した受信側診断プログラム等)に従って各種処理を行うプロセッサである。
【0021】
図1に示してあるように、送信ユニット10は、送信チップ12及びCPU14を備える。図示は省略してあるが、送信ユニット10は、RAM、送信側診断プログラム(詳細は後述)を記憶した不揮発性記憶装置、EEPROM32用のIF回路、PC50及び受信ユニット20内のCPU24との間で通信を行うためのIF回路も備える。
【0022】
送信チップ12は、データ(ビット情報)を信号(電圧波形)に変換して通信ケーブル30上に送信するドライバ12a等を備えたICチップである。この送信チップ12は、データの信号化条件を規定するパラメータとして、電圧振幅Amp、エンファシスEmp等を設定できるチップとなっている。ここで、エンファシスEmpとは、
図2に示したように、周波数が低い(“1”が連続する)場合の振幅の変化量を規定するパラメータのことである。より具体的には、高速伝送路では、ビットパターン(周波数)により信号の減衰量が異なる(シンボル間干渉が起こる)ため、ビットパターンから減衰量を予め予測して振幅を変化させている。エンファシスEmpとは、その際の変化量を規定するパラメータのことである。
【0023】
以下、送信ユニット10及び受信ユニット20の動作(送信側及び受信側診断プログラムの用途及び内容)を、説明する。
【0024】
送信ユニット10内の送信側診断プログラム、受信ユニット20内の受信側診断プログラムは、量産試験時に実行されるプログラムである。
【0025】
ここで、量産試験とは、製造した送信ユニット10及び受信ユニット20が正常に機能するものとなっているか否かを、同じ通信ケーブル30を用いて(試験が完了した2ユニットから次に試験を行う2ユニットに通信ケーブル30を付け替える形で)、検査する試験のことである。
【0026】
本実施形態に係る送信ユニット10及び受信ユニット20の量産試験時には、予め、量産試験に用いる通信ケーブル30のEEPROM32(送信ユニット10側のもの)にBER(bit error rate;ビット誤り率)プロファイルを書き込む作業が行われる。ここで、BERプロファイルとは、
図3に模式的に示したように、複数の信号化条件(Emp値とAmp値との組み合わせ)のそれぞれについて、その信号化条件で信号化して送信した診断用データのBERがシステム要求値以下である(“○”)か否か(“×”)を示す情報のことである。
【0027】
上記作業(以下、BERプロファイル書込作業と表記する)は、通常、正常に機能することが確認できている送信ユニット10と受信ユニット20とを利用して行われる。具体的には、BERプロファイル書込作業時には、まず、BERプロファイルの書込対象通信ケーブル30により、正常に機能することが確認できている送信ユニット10と受信ユニット20とが接続される。
【0028】
次いで、CPU14に、BERプロファイル作成プログラムを実行させる。ここで、BERプロファイル作成プログラムとは、CPU14が、以下のように動作することになるプログラムのことである。
【0029】
BERプロファイル作成プログラムの実行を開始したCPU14は、まず、複数の信号化条件のそれぞれについて、その信号化条件で診断用データを送信チップ12に信号化・送信させてから、当該診断用データに対する判定結果情報をCPU24から受信してRAM上に記憶する処理(以下、BERテストとも表記する)を行う。尚、判定結果情報とは、受信側診断プログラムを実行しているCPU24が、受信チップ22から診断用データのBERが通知される毎に、CPU14に対して送信する、当該BERがシステム要求値以下であるか否かを示す情報のことである。
【0030】
CPU14は、全信号化条件(
図3参照)についてのBERテストが完了したときに、BERテストにより収集した判定結果情報に応じた内容のBERプロファイルをEEPROM32に書き込んで、BERプロファイル作成プログラムに従った動作を終了する。
【0031】
送信ユニット10と受信ユニット20の或るペアについての量産試験時には、それらのユニット間が、通信ケーブル30(BERプロファイル書込作業がなされているもの)により接続される。そして、PC50に対して、送信ユニット10内のCPU14に送信側診断プログラムを実行させ、受信ユニット20内のCPU24に受信側診断プログラムを実行させるための操作がなされる。
【0032】
受信側診断プログラムを実行すると、CPU24は、受信チップ22から診断用データのBERが通知される度に、そのBERが受信側診断プログラム中に設定されているシステム要求値以下であるか否かを判定し、判定結果を示す判定結果情報をCPU14に通知する状態となる。
【0033】
一方、送信側診断プログラムを実行したCPU14は、
図4に示した手順の診断処理を行う。
【0034】
すなわち、この診断処理を開始したCPU14は、まず、通信ケーブル30のEEPROM32からBERプロファイル(
図3)を読み出す(ステップS101)。
【0035】
次いで、CPU14は、読み出したBERプロファイルに基づき、伝送用信号化条件及び複数の診断用信号化条件を特定する処理(ステップS102)を行う。
【0036】
具体的には、このステップS102の処理時、CPU14は、まず、BERプロファイルに基づき、マージンが最も大きい信号化条件(
図3において、“○”が示されている信号化条件群のほぼ中央に位置する信号化条件)を特定する。そして、CPU14は、特定した信号化条件が、伝送用信号化条件であることをRAM上に記憶する。さらに、CPU14は、各信号化条件を、
図3に示してあるように並べたときに(つまり、Amp値及びEmp値の順でマトリックス状に並べたときに)、伝送用信号化条件と隣接する各信号化条件が診断用信号化条件であることをRAM上に記憶する。
【0037】
ステップS102の処理を終えたCPU14は、特定した各信号化条件(RAM上に伝送用/診断用信号化条件であることが記憶されている各信号化条件)でのBERテストを行う(ステップS103)。すなわち、CPU14は、
図5に●と示してある伝送用信号化条件でのBERテストと、
図5に網掛けを付した形で示してある各診断用信号化条件でのBERテストとを行う。尚、既に説明しように、BERテストとは、或る信号化条件で診断用データを送信チップ12に信号化・送信させてから、送信した診断用データに対する判定結果情報を受信してRAM上に記憶する処理のことである。
【0038】
全信号化条件(伝送用信号化条件と8つの診断用信号化条件)に関するBERテストが完了した場合、CPU14は、伝送用信号化条件でのBERテスト結果がOKであるかNGであるかを判断する(
図4、ステップS104)。より具体的には、CPU14は、伝送用信号化条件でのBERテスト時に受信ユニット20から受信した判定結果情報が、BERがシステム要求値以下であることを示す情報であるか、BERがシステム要求値を超えていることを示す情報であるかを判断する。
【0039】
伝送用信号化条件でのBERテスト結果がOKであった場合(ステップS104;OK)、CPU14は、診断用信号化条件でのBERテスト結果がすべてOKであるか否かを判断する(ステップS105)。
【0040】
そして、CPU14は、診断用信号化条件でのBERテスト結果が全てOKであった場合(ステップS105;全てOK)、特に処理を行うことなく、この診断処理(
図4の処理)を終了する。
【0041】
一方、1つ以上の診断用信号化条件でのBERテスト結果がNGであった場合(ステップS105;NGあり)、CPU14は、ケーブルアラームをPC50のディスプレイ上に表示する(ステップS106)。ここで、ケーブルアラームとは、通信ケーブル30が、使用し続けることが好ましくない状態となった旨(次ペアの検査は、新たな通信ケーブル30を用いて行うことが望ましい旨)のメッセージのことである。
【0042】
そして、ステップS106の処理を終えたCPU14は、この診断処理を終了する。
【0043】
また、伝送用信号化条件でのBERテスト結果がNGであった場合(ステップS104;NG)、CPU14は、送信ユニット10及び/又は受信ユニット20に問題があることを示すユニットアラームをPC50のディスプレイ上に表示する(ステップS107)。そして、ステップS107の処理を終えたCPU14は、この診断処理を終了する。
【0044】
要するに、通信ケーブル30の送信/受信ユニット10、20への挿抜を繰り返していると、通信ケーブル30のケーブルパッド31(の電極部分)が劣化していく。ただし、ケーブルパッド31の劣化による通信ケーブル30の伝送特性の劣化は、通常、
図5に示したものであったBERプロファイルが、
図6に示したBERプロファイルに変化し、さらに、
図7に示したBERプロファイルに変化するといった形で進行する。
【0045】
より具体的には、BERを10
-Xと表記した場合におけるX値は、
図8に示したようなものとなる。すなわち、X値は、或る信号化条件(上記した伝送用信号条件)で最も大きくなり、当該信号化条件との違いが大きくなるにつれ、X値は小さくなる。そして、通信ケーブル30のケーブルパッド31が劣化すると各信号化条件に関するX値が全体的に減少していくので、上記したようにBERプロファイルが変化することになるのである。
【0046】
送信ユニット10が実行する診断処理(特にステップS103及びS105の処理)は、通信ケーブル30のBERプロファイルが
図7に示したようなものとなったか否かを判断する処理となっている。そして、通信ケーブル30が、伝送用信号化条件でのデータ伝送が良好に行えない状態となるのは、BERプロファイルが
図7に示したようなものとなった後である。
【0047】
従って、ケーブルアラームが出力される毎に(又は、ケーブルアラームが連続してm回出力されたときに)、量産試験に使用する通信ケーブル30を交換するようにしておけば、伝送用信号化条件でのデータ伝送が良好に行えなかった場合(ステップS104;NG)に、エラー箇所の切り分け作業を行うことなく、送信ユニット10及び/又は受信ユニット20に問題がある(ステップS107)と判断できることになる。
【0048】
尚、上記した診断処理の内容から明らかなように、送信ユニット10は、実際の運用時には、伝送用信号化条件で信号化したデータを受信ユニット20に送信するユニットとして構成されるものである。送信ユニット10のCPU14に伝送用信号化条件を把握させる手法としては様々なものを採用することが出来る。例えば、実際の運用時に使用する通信ケーブル30のEEPROM32にBERプロファイルを記憶しておき、送信ユニット10の起動時に、CPU14に、BERプロファイルに基づき、マージンが最も大きい信号化条件を伝送用信号化条件として把握させることが出来る。また、実際の運用時に使用する通信ケーブル30のEEPROM32に伝送用信号化条件を記憶しておき、送信ユニット10の起動時に、CPU14に、EEPROM32に伝送用信号化条件を読み出させることも出来る。さらに、同型式の複数の通信ケーブル30の伝送用信号化条件が、通信ケーブル30によって異なることは殆どない。そのため、プログラム中の情報や、プログラムによって読み出される不揮発性記憶装置上の情報として、伝送用信号化条件が送信ユニット10内に設定されているようにしておくことも出来る。
【0049】
《第2実施形態》
以下、第1実施形態の説明時に用いたものと同じ符号を用いて、第2実施形態に係る送信ユニット10の動作等を、第1実施形態の送信ユニット10と異なる部分を中心に説明する。
【0050】
第2実施形態に係る送信ユニット10(以下、第2送信ユニット10とも表記する)は、上記した受信ユニット20と同構成・同機能の受信ユニット20に接続されるユニットである。
【0051】
ただし、第2送信ユニット10は、不揮発性記憶装置内に上記した送信側診断プログラムとは内容が異なる第2送信側診断プログラムを記憶したユニットとなっている。また、第2送信ユニット10は、上記したBERプロファイルに加えて、挿抜回数“1”がEE
PROM32に書き込まれている通信ケーブル30を用いて量産試験が行われるユニットともなっている。
【0052】
第2送信側診断プログラムは、CPU14に、
図9に示した手順の第2診断処理を行わせるプログラムである。
【0053】
すなわち、この第2診断処理を開始したCPU14は、まず、通信ケーブル30のEEPROM32からBERプロファイル及び挿抜回数を読み出す(ステップS201)。
【0054】
次いで、CPU14は、読み出したBERプロファイル及び挿抜回数に基づき、伝送用信号化条件、及び、今回の診断用データ送信に使用する診断用信号化条件を特定する(ステップS202)。
【0055】
このステップS202の処理時、CPU14は、まず、EEPROM32から読み出したBERプロファイルに基づき、マージンが最も大きい信号化条件(
図3において、“○”が示されている信号化条件群のほぼ中央に位置する信号化条件)を特定する。そして、CPU14は、特定した信号化条件が、伝送用信号化条件であることをRAM上に記憶する。
【0056】
次いで、CPU14は、各信号化条件を、
図3に示してあるように並べたときに(つまり、Amp値及びEmp値の順でマトリックス状に並べたときに)、伝送用信号化条件と隣接する各信号化条件を診断用信号化条件として特定する。そして、CPU14は、特定した8個の診断用信号化条件の中から、今回の診断用データ送信に使用する診断用信号化条件として、前回の診断用データ送信に使用した診断用信号化条件とは異なる診断用信号化条件を選択する。
【0057】
CPU14は、この選択時に、EEPROM32から読み出した挿抜回数を利用する。具体的には、CPU14は、『n=(挿抜回数 mod 9)+1』という式によりn値を算
出する。そして、CPU14は、算出したn値に基づき、
図10において、[n]という符号が示してある診断用信号化条件を、今回の診断用データ送信に使用する診断用信号化条件として特定(選択)する。
【0058】
ステップS202の処理を終えたCPU14は、特定した2つの信号化条件でのBERテストを行う(ステップS203)。
【0059】
2つの信号化条件に関するBERテストが完了した場合、CPU14は、伝送用信号化条件でのBERテスト結果がOKであるかNGであるかを判断する(ステップS204)。伝送用信号化条件でのBERテスト結果がOKであった場合(ステップS204;OK)、CPU14は、さらに、診断用信号化条件でのBERテスト結果がOKであるか否かを判断する(ステップS205)。
【0060】
そして、CPU14は、診断用信号化条件でのBERテスト結果がOKであった場合(ステップS205;OK)、通信ケーブル30のEEPROM32上の挿抜回数に“1”を加算(ステップS208)してから、この第2診断処理(
図9の処理)を終了する。
【0061】
一方、診断用信号化条件でのBERテスト結果がNGであった場合(ステップS205;NG)、CPU14は、ケーブルアラームをPC50のディスプレイ上に表示する(ステップS206)。そして、ステップS206の処理を終えたCPU14は、通信ケーブル30のEEPROM32上の挿抜回数に“1”を加算(ステップS208)してから、この第2診断処理を終了する。
【0062】
また、伝送用信号化条件でのBERテスト結果がNGであった場合(ステップS204;NG)、CPU14は、送信ユニット10及び/又は受信ユニット20に問題があることを示すユニットアラームをPC50のディスプレイ上に表示する(ステップS207)。そして、ステップS207の処理を終えたCPU14は、ステップS208の処理を行ってから、この第2診断処理を終了する。
【0063】
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る送信ユニット10は、診断処理(第2診断処理)時に、診断用信号化条件でのBERテストを1回しか行わないように、第1実施形態に係る送信ユニット10を変形したものとなっている。そして、BERテストには結構時間がかかるし、BERプロファイルが
図7に示したようなものとなった後、即座に伝送用信号化条件でのデータ伝送が良好に行えなくなる訳ではない。従って、この送信ユニット10は、伝送用信号化条件でのデータ伝送が良好に行えかった場合にエラー箇所の切り分け作業を行うことない装置であると共に、第1実施形態に係る送信ユニット10よりも量産試験が短時間で完了する装置となっていると言うことが出来る。
【0064】
《第3実施形態》
以下、第1、第2実施形態の説明時に用いたものと同じ符号を用いて、第3実施形態に係る送信ユニット10の動作等を、上記した各実施形態の送信ユニット10と異なる部分を中心に説明する。
【0065】
第3実施形態に係る送信ユニット10(以下、第3送信ユニット10とも表記する)は、第1、第2実施形態に係る送信ユニット10と同じハードウェア構成を有する装置である。第3送信ユニット10と接続される受信ユニット20(以下、第3受信ユニット20とも表記する)も、第1、第2実施形態に係る受信ユニット20と同じハードウェア構成を有する装置である。そして、第3送信ユニット10は、第1実施形態に係る送信ユニット10と同様に、挿抜回数がEEPROM32に記憶されていない通信ケーブル30にて第3受信ユニット20と接続される装置となっている。
【0066】
ただし、第3受信ユニット20は、その運用中に、CPU24が、『受信チップ22から診断用データのBERが通知される毎に、そのBERがシステム要求値以下であるか否かを判定して判定結果情報をCPU14に通知する処理』を行うユニットとなっている。また、第3送信ユニット10の不揮発性記憶装置内には、運用中の第3送信ユニット10内のCPU14に、
図11に示した手順の第3診断処理を定期的に行わせる第3送信側診断プログラムが記憶されている。
【0067】
すなわち、第3送信ユニット10内のCPU14は、受信ユニット20に処理させるデータを送信チップ12を利用して受信ユニット20に送信する処理を実行しながら、この第3診断処理を定期的に実行する。
【0068】
そして、第3診断処理の実行時、CPU14は、まず、通信ケーブル30のEEPROM32からBERプロファイルを読み出す(ステップS301)。
【0069】
次いで、CPU14は、読み出したBERプロファイルと、RAM上の試験回数に基づき、伝送用信号化条件、及び、今回の診断用データ送信に使用する診断用信号化条件を特定する(ステップS302)。尚、RAM上の試験回数とは、第3送信ユニット10の起動時にCPU14がRAM上に初期値(例えば、“0”)を設定し、後述するステップS308の処理時にCPU14が“1”を加算する値のことである。
【0070】
ステップS302の処理時、CPU14は、BERプロファイルに基づき、マージンが
最も大きい信号化条件を特定する。そして、CPU14は、特定した信号化条件が、伝送用信号化条件であることをRAM上に記憶する。
【0071】
次いで、CPU14は、各信号化条件を、
図3に示してあるように並べたときに、伝送用信号化条件と隣接する各信号化条件を診断用信号化条件として特定する。そして、CPU14は、特定した8個の診断用信号化条件の中から、今回の診断用データ送信に使用する診断用信号化条件として、前回の診断用データ送信に使用した診断用信号化条件とは異なる診断用信号化条件を選択する。
【0072】
CPU14は、この選択時に、RAM上の試験回数を利用する。具体的には、CPU14は、『n=(試験回数 mod 9)+1』という式によりn値を算出する。そして、算出
したn値に基づき、
図10において、[n]という符号が示してある診断用信号化条件を、今回の診断用データ送信に使用する診断用信号化条件として特定(選択)する。
【0073】
ステップS302の処理を終えたCPU14は、特定した2つの信号化条件でのBERテストを行う(ステップS303)。
【0074】
2つの信号化条件に関するBERテストが完了した場合、CPU14は、伝送用信号化条件でのBERテスト結果がOKであるかNGであるかを判断する(ステップS304)。
【0075】
伝送用信号化条件でのBERテスト結果がOKであった場合(ステップS304;OK)、CPU14は、診断用信号化条件でのBERテスト結果がOKであるか否かを判断する(ステップS305)。
【0076】
そして、CPU14は、診断用信号化条件でのBERテスト結果がOKであった場合(ステップS305;OK)には、RAM上の試験回数に“1”を加算(ステップS308)してから、この第3診断処理(
図11の処理)を終了する。
【0077】
一方、診断用信号化条件でのBERテスト結果がNGであった場合(ステップS305;NG)、CPU14は、通信ケーブル30が、使用し続けることが好ましくない状態となった旨(通信ケーブル30の交換が望ましい旨)を示すケーブルアラームをPC50のディスプレイ上に表示する(ステップS306)。
【0078】
そして、ステップS306の処理を終えたCPU14は、RAM上の試験回数に“1”を加算(ステップS308)してから、この第3診断処理を終了する。
【0079】
また、伝送用信号化条件でのBERテスト結果がNGであった場合(ステップS304;NG)、CPU14は、送信ユニット10及び/又は受信ユニット20に問題があることを示すユニットアラームをPC50のディスプレイ上に表示する(ステップS307)。そして、ステップS307の処理を終えたCPU14は、ステップS308の処理を行ってから、この第2診断処理を終了する。
【0080】
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る送信ユニット10は、第2診断処理と同様の処理が、運用中に定期的に行われるように、第2実施形態に係る送信ユニット10を変形した装置となっている。
【0081】
従って、この送信ユニット10は、伝送用信号化条件でのデータ伝送が良好に行えかった場合にエラー箇所の切り分け作業を行うことない装置であると共に、通信ケーブル30の劣化に起因する伝送エラーが発生しない形で運用できる装置となっていることになる。
【0082】
《変形形態》
上記した各実施形態の技術は、各種の変形を行えるものである。例えば、第2実施形態に係る送信ユニット10を、ステップS202(
図9)にて、『n=(挿抜回数 mod 4
)+1』という式により算出したn値に基づき、
図12又は
図13において、[n]という符号が示してある診断用信号化条件を、今回の処理で使用する診断用信号化条件として特定するユニットに変形することが出来る。また、第3実施形態に係る送信ユニット10を、ステップS302(
図11)にて、『n=(試験回数 mod 4)+1』という式によ
り算出したn値に基づき、
図12又は
図13において、[n]という符号が示してある診断用信号化条件を、今回の処理で使用する診断用信号化条件として特定するユニットに変形することも出来る。
【0083】
第1実施形態に係る送信ユニット10を、ステップS102(
図4)にて、
図12又は
図13において[1]〜[4]という符号が示してある4診断用信号化条件を特定するユニットに変形することも出来る。また、いずれのアラームを出力するかが受信ユニット20側で判断されるようにしておくことも出来る。
【0084】
以上、開示した技術に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0085】
(付記1)
通信ケーブルにより受信ユニットと接続される送信ユニットであって、
前記受信ユニットに対してデータを伝送する際のデータの信号化条件である伝送用信号化条件とは少なくとも1つのパラメータの値が異なる診断用信号化条件で信号化した診断用データを前記通信ケーブルを通じて前記受信ユニットに送信する診断用データ送信機能と、
前記診断用データを受信した前記受信ユニットにより計測された前記診断用データの誤り率に基づき、前記通信ケーブルの状態を診断する診断機能と、
を有することを特徴とする送信ユニット。
【0086】
(付記2)
前記診断機能は、
前記診断用データの誤り率が既定値を超えていた場合に、前記通信ケーブルが、使用し続けることが好ましくない状態となったと診断し、その旨を示す情報を出力する
ことを特徴とする付記1に記載の送信ユニット。
【0087】
(付記3)
前記診断機能は、
前記受信ユニットから、受信した前記診断用データの誤り率が既定値を超えているか否かを示す誤り率情報を受信し、受信した誤り率情報が前記診断用データの誤り率が既定値を超えていることを示すものであった場合に、前記通信ケーブルが、使用し続けることが好ましくない状態となったと診断し、その旨を示す情報を出力する
ことを特徴とする付記1に記載の送信ユニット。
【0088】
(付記4)
前記診断用データ送信機能は、
前記伝送用信号化条件とは少なくとも1つのパラメータの値が異なる複数の診断用信号化条件のそれぞれについて、その診断用信号化条件で信号化した診断用データを前記通信ケーブルを通じて前記受信ユニットに送信し、
前記診断機能は、
前記受信ユニットから、送信した前記診断用データ毎にその誤り率が既定値を超えてい
るか否かを示す誤り率情報を受信し、受信したいずれかの誤り率情報が前記診断用データの誤り率が既定値を超えていることを示すものであった場合に、前記通信ケーブルが、使用し続けることが好ましくない状態となったと診断し、その旨を示す情報を出力する
ことを特徴とする付記1に記載の送信ユニット。
【0089】
(付記5)
前記診断用データ送信機能は、
前記診断用信号化条件を前記診断用データの送信毎に変更する
ことを特徴とする付記1に記載の送信ユニット。
【0090】
(付記6)
前記通信ケーブルは、複数の信号化条件のそれぞれについて、その信号化条件で前記診断用データを送信した場合の誤り率を示す情報を含むプロファイル情報を記憶した不揮発性メモリを備え、
前記診断用データ送信機能は、
前記通信ケーブルの前記不揮発性メモリに記憶されたプロファイル情報に基づき、前記伝送用信号化条件及び前記診断用信号化条件を決定する
ことを特徴とする付記1に記載の送信ユニット。
【0091】
(付記7)
前記伝送用信号化条件を既定するパラメータに第1パラメータ及び第2パラメータが含まれ、
前記複数の診断用信号化条件が、第1パラメータの値が、前記伝送用信号化条件の第1パラメータの値より大きい第1値、前記伝送用信号化条件の第1パラメータの値と同じ第2値、前記伝送用信号化条件の第1パラメータの値より小さな第3値のいずれかであり、第2パラメータの値が、前記伝送用信号化条件の第2パラメータの値より大きい第4値、前記伝送用信号化条件の第2パラメータの値と同じ第5値、前記伝送用信号化条件の第2パラメータの値より小さい第6値のいずれかである前記伝送用信号化条件とは異なる8つの信号化条件の中から選択された条件である
ことを特徴とする付記3に記載の送信ユニット。
【0092】
(付記8)
送信ユニットと受信ユニットとの間を接続する通信ケーブルの状態を診断する診断方法であって、
前記通信ケーブルを通じて、前記送信ユニットから前記受信ユニットへ、前記送信ユニットへデータを伝送する際のデータの信号化条件とは少なくとも1つのパラメータの値が異なる診断用信号化条件で信号化した診断用データを送信し、
前記診断用データを受信した前記受信ユニットにより計測された前記診断用データの誤り率に基づき、前記通信ケーブルの状態を診断する
ことを特徴とする診断方法。
【0093】
(付記9)
前記診断用データの誤り率が既定値を超えていた場合に、前記通信ケーブルが、使用し続けることが好ましくない状態となったと診断し、その旨を示す情報を出力する
ことを特徴とする付記8に記載の診断方法。
【0094】
(付記10)
ビット情報を信号化して通信ケーブルを介して受信ユニットに送信するための通信部と、プロセッサとを含む送信ユニット用の診断プログラムであって、
前記プロセッサに、
前記受信ユニットに対してデータを伝送する際のデータの信号化条件である伝送用信号化条件とは少なくとも1つのパラメータの値が異なる診断用信号化条件で信号化した診断用データを前記通信部に送信させる診断用データ送信処理と、
前記診断用データを受信した前記受信ユニットにより計測された前記診断用データの誤り率に基づき、前記通信ケーブルの状態を診断する診断処理と、
を行わせる
ことを特徴とする診断プログラム。
【0095】
(付記11)
通信ケーブルにより接続された送信ユニットと受信ユニットとを含み、
前記送信ユニットは、
前記受信ユニットに対してデータを伝送する際のデータの信号化条件である伝送用信号化条件とは少なくとも1つのパラメータの値が異なる診断用信号化条件で信号化した診断用データを前記通信ケーブルを通じて前記受信ユニットに送信する診断用データ送信機能と、
前記診断用データを受信した前記受信ユニットにより計測された前記診断用データの誤り率に基づき、前記通信ケーブルの状態を診断する診断機能と、
を有する
ことを特徴とする情報処理装置。
【0096】
(付記12)
前記受信ユニットは、
前記診断用データを受信した場合に、受信した前記診断用データの誤り率が既定値を超えているか否かを示す誤り率情報を前記送信ユニットに送信する機能を有する
ことを特徴とする付記11に記載の情報処理装置。