(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、エンジン(内燃機関)から排出される排ガス中のNOxを浄化するために、LNT触媒(lean−NOx−trap触媒;NOx吸蔵還元触媒など)や、尿素SCR触媒(尿素選択的触媒還元触媒)などのdeNOx触媒が利用されている。
【0003】
このdeNOx触媒は、触媒が活性化する温度(以下、活性温度という)よりも低い温度では、触媒反応が低下してNOxの還元効率が低下する。特に、エンジンの始動時などの低負荷時のNOxの浄化率は低い。
【0004】
例えば、NOxを吸蔵して還元するLNT触媒は、比較的低温でも、理論空燃比よりも燃料の割合が薄い状態のリーン状態であれば、NOxを吸蔵することはできる。しかし、理論空燃比よりも燃料の割合が濃い状態のリッチ状態でNOxを放出し、還元する(以下、リッチ還元という)ためには、LNT触媒を高温にする必要があるため、低負荷時の浄化率は低下する。一方、尿素SCR触媒は、NH
3(アンモニア)の還元効率が低温で低下するため、低負荷時の浄化率も低下する。
【0005】
排ガス評価モード外の渋滞路や、低負荷で且つコールド状態から開始するNEDC(新欧州ドライビングサイクル)モードなどの排ガス評価モードでは、上記の理由により、deNOx触媒が十分に機能せずにNOxを浄化することができなかった。
【0006】
そこで、その問題に対して、NOx吸蔵還元触媒からNOxを放出すべきときの酸化触媒の触媒温度が予め定められた温度より低いとき、ポスト噴射を行う機関サイクルを開始し、前記ポスト噴射を行う機関サイクルの開始時期を排気系噴射の開始時期よりも予め定められた先行時間だけ早く設定し、該先行時間は酸化触媒の温度が低いほど長く設定する装置(例えば、特許文献1参照)がある。
【0007】
また、触媒の温度を検出する触媒温度検出手段と、触媒温度検出手段の検出値に基づいて触媒が活性化しているか否かを判定する活性化判定手段とを有し、活性化判定手段の判定結果に基づいて、機関の運転モードとして排気温度を上昇させることを優先する排気昇温モードまたは排気成分を低減させることを優先する排気成分低減モードのいずれかを選択して実行する制御手段と、を備える装置(例えば、特許文献2参照)もある。
【0008】
それらの装置は、deNOx触媒を昇温するために、多段噴射を用いて排気温度を上昇させているが、この昇温のための多段噴射は、燃費の悪化を伴うため、常時実施することができない。その燃費が悪化するという問題を解決するために、特許文献1には、NOx吸蔵還元触媒からNOxを放出すべきときに多段噴射を行うことが開示されている。また、特許文献2には、触媒温度検出手段の検出値に基づいて触媒が活性化しているか否かを判定し、その判定結果に基づいて多段噴射を行うことが開示されている。
【0009】
しかしながら、それらの装置は触媒の温度を多段噴射の判断基準としており、常時多段噴射を実施するものに比べて燃費の悪化を抑制することはできるが、燃費の悪化を最小に抑えることはできない。また、deNOx触媒が活性化した後の還元を促進するタイミン
グにも適切なタイミングがあり、そのタイミングで還元を促進することで、より燃費の悪化を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施の形態の内燃機関と、その制御方法について、図面を参照しながら説明する。以下の実施の形態では、直列四気筒のディーゼルエンジンを例に説明するが、本発明はディーゼルエンジンに限定せずに、ガソリンエンジンにも適用することができ、その気筒数や、気筒の配列は限定しない。なお、図面に関しては、構成が分かり易いように寸法を変化させており、各部材、各部品の板厚や幅や長さなどの比率も必ずしも実際に製造するものの比率とは一致させていない。
【0024】
まず、本発明に係る第1の実施の形態の内燃機関について、
図1及び
図2を参照しながら説明する。このエンジン1は、
図1に示すように、エンジン本体2、エキゾーストマニホールド3、インレットマニホールド4、EGR(排気再循環)システム5、ターボチャージャー6、エアクリーナー7、インタークーラー8、吸気スロットル9、及び、排ガスの後処理装置10を備え、各装置を、排気配管、又は吸気配管とよばれる配管によって接続し、排気通路Exと吸気通路Inを形成する。
【0025】
また、エンジン本体2には、燃料噴射システム11として、燃料タンク12、燃料ポンプ13、コモンレール14、及び多段噴射可能なインジェクタ15を備え、後処理装置10には、deNOx触媒(NOx浄化触媒)としてLNT触媒(Lean−NOx−trap触媒;NOx吸蔵還元触媒)16と、DPF(ディーゼル微粒子捕集フィルタ)17を備える。
【0026】
加えて、LNT触媒16の前後に配置した第1温度センサS1と第2温度センサS2、LNT触媒16の前後に配置した第1NOx濃度センサS3と第2NOx濃度センサS4、及び、排ガス流量センサS5などの各センサと接続され、各装置を制御するECU(制御装置)18を備える。
【0027】
インジェクタ15は、周知の技術の多段噴射可能な燃料噴射弁である。なお、ここでいう多段噴射とは、通常の燃焼(予混合燃焼と拡散燃焼)に対して、主噴射時期を上死点より遅らせ、且つアフター噴射、又はポスト噴射を拡散燃焼機関に継続して行い、燃焼温度を高く保った状態で排気ポートを開く噴射のことをいう。
【0028】
また、LNT触媒16は、周知の技術のNOxを吸蔵し、還元するLNT触媒である。このLNT触媒16は、排ガスがリーン状態(希薄燃焼)の高酸素濃度雰囲気下では、排ガス中のNOが触媒金属の触媒作用により酸化されてNO
2となり、NO
3−の形で触媒内に拡散し、NOx吸蔵材に選択的にNO
2を吸蔵する。
【0029】
そして、排ガスがリッチ状態になり酸素濃度が低下するとNO
3−がNO
2の形でNOx吸蔵材から放出される。この放出されたNO
2は、排気ガス中に含まれている未燃HC(燃料など)やCOやH
2等の還元剤により触媒金属の触媒作用を受けて、N
2に還元される。この還元作用により、大気中にNOxが放出されるのを阻止することができる。このリッチ状態での還元作用を、以下リッチ還元という。
【0030】
本発明のエンジン1は、低負荷時に、燃費が悪化しない効果的な昇温タイミングと還元タイミングを算出して、NOxの浄化を行う。そのため、
図2に示すように、ECU18に、触媒温度検出手段C1、NOx濃度検出手段C2、排ガス流量検出手段C3、昇温タイミング推定手段C4、触媒昇温手段C5、還元タイミング推定手段C6、還元促進手段C7、及び還元終了タイミング算出手段C8を備えることを特徴とする。
【0031】
触媒温度検出手段C1は、温度パラメータとして、LNT触媒16の前温度Ta([℃])及び後温度Tb([℃])を第1温度センサS1及び第2温度センサS2が検出する手段であり、この実施の形態では、第1温度センサS1で検出した前温度Taを触媒温度T
LNT([℃])として用いる。
【0032】
NOx濃度検出手段C2は、NOx濃度パラメータとして、LNT触媒16の前NOx濃度Ca([ppm])及び後NOx濃度Cb([ppm])を第1NOx濃度センサS3及び第2NOx濃度センサS4で検出する手段であり、排ガス流量検出手段C3は、排ガス流量パラメータとして、排気通路Exを流れる排ガス流量Qg([Kg/s])を排ガス流量センサS5で検知する手段である。
【0033】
この実施の形態では、各センサS1〜S5を用いて、上記の温度パラメータ、NOx濃度パラメータ、及び排ガス流量パラメータを含むタイミング推定パラメータを検出したが、本発明はこの構成に限定せず、例えば、各センサS1〜S5で検知した情報ではなく、エンジン1の運転状態(エンジン1の車速や回転数)などの情報を取得し、その情報からタイミング推定パラメータを推定してもよい。
【0034】
昇温タイミング推定手段C4は、上記のタイミング推定パラメータを用いて算出した第1条件、第2条件、及び第3条件が全て満たされたときを、LNT触媒16を昇温するタイミングとする手段である。
【0035】
その第1条件は、触媒温度T
LNTが予め定めた活性温度Tx([℃])よりも低くなることである。この活性温度Txは、任意の温度に設定することができ、LNT触媒16が活性化し、リッチ還元が促進される温度が好ましく、例えば、200℃〜300℃に設定される。
【0036】
また、第2条件は、LNT触媒16のNOx吸蔵量V
NOx([g])が予め定めた判定吸蔵量Vx([g])以上、又は、LNT触媒16のNOx浄化率R
NOx([%])が予め定めた判定浄化率Rx([%])以下になることである。このNOx吸蔵量V
NOxは、前NOx濃度Ca及び後NOx濃度Cbと、排ガス流量Qgから算出される値であり、例えば、以下の数式(1)より算出される。ここで、NOx濃度差をΔC(Ca−Cb)、NOxの分子重量をm([g])、気体の標準状態の1molの体積を22.4([L])とする。
【数1】
【0037】
NOx浄化率R
NOxは、前NOx濃度Ca及び後NOx濃度Cbから算出される値であり、例えば、以下の数式(2)より算出される。
【数2】
【0038】
上記の判定吸蔵量Vxと判定浄化率Rxは、それぞれ任意の値に設定することができ、LNT触媒16がリーン状態のときに吸蔵したNOxを放出する必要がある状態を示すこ
とができる値が好ましい。
【0039】
さらに、第3条件は、推定燃費悪化率R
FUEL([%])が、予め定めた判定燃費悪化率Ry([%])以下で安定することである。その推定燃費悪化率R
FUELは、触媒温度T
LNTを活性温度Txに昇温するために必要な燃料の噴射量L1([L])から推定される値であり、その昇温するために必要な燃量の噴射量L1は、LNT触媒16でリッチ還元が機能する温度である活性温度Txと、LNT触媒16の後温度Tbと、排ガス流量Qgから、推定温度計算を行って算出される。
【0040】
この推定燃費悪化率R
FUELは、例えば、以下の数式(3)〜(5)より算出される。ここで触媒発熱量をJ([J/s])、排ガス比熱をP([J/Kg・K])、燃料の定位発熱量を38.2([MJ/L])、昇温するために必要な燃料の噴射量以外の燃料の噴射量をL2([L])とする。
【数3】
【数4】
【数5】
【0041】
ここでいう推定燃費悪化率R
FUELが判定燃費悪化率Ry以下で安定するとは、推定燃費悪化率R
FUELが判定燃費悪化率Ry(例えば5%など)以下のできるだけ近い値で略一定の状態になることをいう。また、判定燃費悪化率Ryは任意の値に設定することはできるが、できるだけ小さな値に設定することが好ましい。
【0042】
例えば、LNT触媒16を100℃から200℃以上に昇温する場合と、150℃から200℃以上に昇温する場合では、後者の方が燃費悪化率は少なくて済む。よって、燃費を悪化させずにLNT触媒16を昇温するためには、後者の条件を推定することが必要となる。そこで、推定燃費悪化率R
FUELが判定燃費悪化率Ry以下の値で安定することを判断することで、燃費の悪化を抑制することができる。
【0043】
この昇温タイミング推定手段C4によれば、第1条件と第2条件からLNT触媒16の状態を判断し、その後、第3条件として、推定燃費悪化率R
FUELを用いて判断することで、燃費の悪化を最小とする昇温タイミングを算出することができる。
【0044】
触媒昇温手段C5は、昇温タイミング推定手段C4で算出されたタイミングで、インジェクタ15を多段噴射制御する手段であり、これにより、排ガス温度が上昇し、LNT触媒16を昇温することができる。また、この触媒昇温手段C5で燃料を多段噴射することにより、排ガスの昇温を行い、還元効率を上げてNOxの還元を行うことができる。
【0045】
加えて、この触媒昇温手段C5に、燃料を多段噴射することとは別に、排気通路Exに直接燃料を噴射する排気噴射手段を設けると、例えば、多段噴射で200℃までエキゾーストマニホールド3の出口付近の排ガス温度を昇温し、さらに排気噴射を追加することで300℃まで昇温することもできる。
【0046】
還元タイミング推定手段C6は、触媒昇温手段C5の後に再度、各センサS1〜S5に検知されたタイミング推定パラメータを用いて算出した第4条件と第5条件の両方が満たされたときを、LNT触媒16でのNOxの還元を促進するタイミングとする手段である。
【0047】
その第4条件は、触媒温度T
LNTが予め定めた活性温度Txに達することである。また、第5条件は、再検知したタイミング推定パラメータを用いて推定した推定還元量V
RE([ppm])が、予め定めた判定還元量Vy([ppm])以上になることである。この推定還元量V
REは、LNT触媒16の後温度Tbと排ガス流量Qgから算出される、所定のリッチ(λ深さと時間)当りのNOxの還元量である。
【0048】
この推定還元量V
REは、例えば、試験的に求めたマップ(触媒温度T
LNTと排ガス流量Qgに基づいた推定還元量V
REを記憶したマップ)を用いて、実走行時には時々刻々の触媒温度T
LNTと排ガス流量Qgとから求められる。
【0049】
また、判定還元量Vyは、任意の値に設定することができるが、NOxの浄化に効果的なタイミングとなるように、リッチ当りのNOxの還元量が多くなる値が好ましく、試験的に求めた値を用いる。
【0050】
この還元タイミング推定手段C6によれば、第4条件と第5条件の両方からLNT触媒16の状態を推定することで、NOxの浄化に効果的な還元タイミングを算出することができる。
【0051】
還元促進手段C7は、空燃比をリッチに維持して、LNT触媒16でリッチ還元を行うリッチ還元手段C9と、そのリッチ還元手段C9が行われた時間を計測するリッチタイマC10を備える。なお、このリッチ還元手段C9のリッチとは、必ずしもシリンダボア内でリッチ燃焼するのみの状態ではなく、LNT触媒16に流入する排ガス中に供給した空気量と燃料量(シリンダボア内で燃焼した分も含めて)との比が理論空燃比に近いか理論空燃比より燃料量が多いリッチの状態であることをいう。
【0052】
還元終了タイミング算出手段C8は、還元促進手段C7がリッチ還元を行った後に、再々度、各センサS1〜S5に検知されたタイミング推定パラメータを用いて算出したNOx吸蔵量V
NOxが予め定めた判定吸蔵量Vx以下になったときを、還元終了タイミングとする手段である。これによれば、還元終了タイミングを算出し、還元促進手段C7を終了することで、余分な燃料の噴射を防止することができるので、燃費の悪化を抑制することができる。
【0053】
この実施の形態のエンジン1は、インジェクタ15が多段噴射可能であり、且つdeNOx触媒として、LNT触媒16を備えていればよく、周知の技術のエンジンの構成を用いることができる。
【0054】
例えば、この実施の形態では、EGRシステム5のEGRクーラー5aとEGRバルブ5bをターボチャージャー6の上流側に配置する、所謂高圧EGRシステムを備えるが、EGRクーラー5aとEGRバルブ5bをターボチャージャー6の下流側に配置する、所謂低圧EGRシステムに替えることもできる。また、後処理装置10のDPF17の上流
側にDOC(ディーゼル用酸化触媒)を配置してもよい。
【0055】
次に、上記のエンジン1の動作について、
図3及び
図4のフローチャートを参照しながら説明する。まず、エンジン1が始動すると、各センサS1〜S5が、タイミング推定パラメータを検知するステップS10を行う。このタイミング推定パラメータとは、LNT触媒16の前温度Ta及び後温度Tbと、LNT触媒16の前NOx濃度Ca及び後NOx濃度Cbと、排ガス流量Qgを含むパラメータである。
【0056】
次に、タイミング推定パラメータを用いてLNT触媒16を昇温するタイミングを算出する昇温タイミング推定手段C4が昇温タイミングの推定を開始する。まず、第1条件として、触媒温度T
LNTが予め定めた活性温度Tx以下か否かを判断するステップS20を行う。
【0057】
次に、第2条件として、算出したNOx吸蔵量V
NOxが予め定めた判定吸蔵量Vx以上か否かを判断するステップS30を行う。この実施の形態では、ステップS30としてNOx吸蔵量V
NOxが判定吸蔵量Vx以上か否かを判断したが、代わりに、タイミング推定パラメータから算出したNOx浄化率R
NOxが判定浄化率Rx以下か否かを判断するステップを行ってもよい。
【0058】
次に、第3条件として、推定した推定燃費悪化率R
FUELが予め定めた判定燃費悪化率Ry以下で安定するか否かを判断するステップS40を行う。なお、実際の走行時には排気温度も走行条件により変動するため、安定してある程度の排ガス温度に到達したことを判定してから、次のステップへと進むとよい。また、昇温による推定燃費悪化率R
FUELには排気温度だけではなく、排ガス流量Qgも寄与するので、この二つから昇温による推定燃費悪化率R
FUELを推定して、安定度を判断するとよい。
【0059】
昇温タイミング推定手段C4は、上記の第1条件のステップS20、第2条件のステップS30、及び第3条件のステップS40を満たしたときを昇温タイミングとする。第1条件、第2条件、及び第3条件のいずれかの条件が満たされない場合は、再度ステップS10に戻り、昇温タイミングを推定する。
【0060】
次に、触媒昇温手段C5が、昇温タイミングで、インジェクタ15を多段噴射制御して、LNT触媒16を昇温させるステップS50(触媒昇温工程)を行う。このときEGRシステム5は継続してインレットマニホールド4にEGRガスを供給するように制御される。また、より高い還元効率とするために、LNT触媒16の昇温の為のポスト噴射や排気噴射を行うよう構成してもよく、さらに、多段噴射のアフター噴射や噴射時期のフィードバック制御で早期昇温を図ってもよい。
【0061】
次に、再度、各センサS1〜S5が、タイミング推定パラメータを検知するステップS60を行う。次に、タイミング推定パラメータを用いてLNT触媒16での還元を促進するタイミングを算出する還元タイミング推定手段C6が還元タイミングの推定を開始する。まず、第4条件として、触媒温度T
LNTが活性温度Txに到達したか否かを判断するステップS70を行う。次に、第5条件として、算出した推定還元量V
REが予め定めた判定還元量Vy以上か否かを判断するステップS80を行う。
【0062】
還元タイミング推定手段C6は、上記の第4条件のステップS70と、第5条件のステップS80の両方を満たしたときを還元タイミングとする。第4条件と第5条件のいずれかの条件が満たされない場合は、再度ステップS50に戻り、LNT触媒16を昇温してから、再度推定する。
【0063】
ステップS70とステップS80で、LNT触媒16の触媒温度T
LNTが活性温度Txに到達し、且つ推定還元量V
REが判定還元量Vy以上となったら、次に、還元促進手段C7が、LNT触媒16でリッチ還元を行うステップS90(還元促進工程)を行う。
【0064】
このステップS90の還元促進工程は、
図4に示すように、まず、最大経過時間t_max([s])を算出するステップS91を行う。この最大経過時間t_maxは、無駄なリッチ状態の維持を抑制するように算出された時間であり、例えば、NOx吸蔵量V
NOxと、推定還元量V
REに基づいて算出してもよい。
【0065】
次に、リッチタイマC10を起動するステップS92を行う。また、リッチタイマC10の起動と同時にリッチ還元手段C9を開始するステップS93を行う。
【0066】
次に、時間が経過するとリッチタイマC10の経過時間t_rich([s])が刻々と増えていく。次に、リッチタイマC10の経過時間t_richが予め定めた最大経過時間t_maxよりも長いか否かを判断するステップS94を行う。この最大経過時間t_maxは任意の時間に設定することができるが、比較的短く設定すると、リッチ状態を維持する制御が長い時間行われることで発生するリッチ還元に使用される燃料や還元剤の無駄な放出を抑制することができる。
【0067】
ステップS94で、リッチタイマC10の経過時間t_richが最大経過時間t_maxよりも長い場合は、ステップS96へ進み、リッチタイマC10を終了するステップS96を行う。また、リッチタイマC10の終了と同時にリッチ還元手段C9を終了するステップS97を行う。
【0068】
ステップS94で、リッチタイマC10の経過時間t_richが最大経過時間t_max以下の場合は、リッチタイマC10の経過時間t_richがゼロになるステップS95を経てから、ステップS96及びステップS97へと進む。
【0069】
上記のステップS90が完了すると、
図3に示すように、次に、再々度、タイミング推定パラメータを検知するステップS100を行う。次に、還元終了タイミング算出手段C8が、そのタイミング推定パラメータを用いて算出したNOx吸蔵量V
NOxが判定吸蔵量Vx以下になるか否かを判断するステップS110を行う。このステップS110で、NOx吸蔵量V
NOxが判定吸蔵量Vx以下になるまで、ステップS90のリッチ還元手段C9を行って、この制御方法は終了する。
【0070】
この制御方法によれば、タイミング推定パラメータを用いて算出した昇温タイミングでLNT触媒16を昇温し、その後、再検出したタイミング推定パラメータを用いて算出した還元タイミングでLNT触媒16でのNOxの還元を促進することができる。そのため、低負荷条件でも、燃費の悪化を最小に抑えつつ、NOxを浄化することができる。
【0071】
また、常時、タイミング推定パラメータを検知し、そのタイミング推定パラメータから算出した昇温タイミングと還元タイミングを算出することができる。さらに、エンジン1の構成は、従来の構成を用いることができるので、別途追加はなく、追加コストを発生させずに、その効果を得ることできる。
【0072】
なお、NOx吸蔵量V
NOx、NOx浄化率R
NOx、推定燃費悪化率R
FUEL、及び推定還元量V
REの算出方法は、タイミング推定パラメータを用いて算出することができればよく、上記の記載の方法に限定しない。
【0073】
次に、本発明に係る第2の実施の形態の内燃機関について、
図5及び
図6を参照しなが
ら説明する。このエンジン20は、第1の実施の形態のエンジン1の後処理装置10に代えて、
図5に示すように、後処理装置21を備え、その後処理装置21に、DOC(ディーゼル用酸化触媒)22、DPF23、尿素SCR触媒24、及び尿素水噴射バルブ25を備える。また、各センサS1〜S5と接続され、各装置を制御するECU(制御装置)26を備える。
【0074】
このECU26は、
図6に示すように、還元促進手段C20として、尿素水噴射量算出手段C21と、尿素水噴射手段C22と、を備えると共に、第1の実施の形態の条件とは異なる条件の還元終了タイミング算出手段C23を備える。
【0075】
また、第1の実施の形態では、LNT触媒16の前後に配置した第1温度センサS1と第2温度センサS2を、この実施の形態では、尿素SCR触媒24の前後に配置し、LNT触媒16の前後に配置した第1NOx濃度センサS3と第2NOx濃度センサS4も、尿素SCR触媒24の前後に配置する。各センサS1〜S4の検知する値は第1の実施の形態と同様とする。
【0076】
尿素水噴射量算出手段C21は、尿素水噴射バルブ25から噴射される尿素水の噴射量Q
NH3([mm
3])を算出する手段であり、尿素水の噴射量Q
NH3は、吸蔵したNH
3(アンモニア)の放出量とNH
3転換量とから求まる噴射量、すなわち目標とするNOx浄化率である判定浄化率Rxを得られる噴射量に、新たに尿素SCR触媒24に吸蔵されるNH
3により不足する補充量を加算して算出される。
【0077】
この尿素水噴射量算出手段C21で用いられる吸蔵したNH
3の放出量、NH
3転換量、及び補充量は、試験結果より求めたマップ値であり、タイミング推定パラメータ(例えば、触媒温度T
LNT)により変化する値である。また、これらの値を尿素水の噴射量Q
NH3を算出するための尿素水噴射量算出パラメータとする。
【0078】
尿素水噴射手段C22は、尿素SCR触媒24に尿素水噴射バルブ25から、尿素水噴射量算出手段C21で算出された噴射量Q
NH3で、尿素水を噴射する手段である。
【0079】
還元終了タイミング算出手段C23は、還元促進手段C20が尿素水を噴射した後に、再々度、各センサS1〜S5に検知されたタイミング推定パラメータを用いて算出したNOx浄化率R
NOxが予め定めた判定浄化率Rxになったときの、尿素水の噴射量Q
NH3を継続する手段である。これによれば、還元終了タイミングを算出し、最適な尿素水の噴射量Q
NH3を設定することで、余分な尿素水の噴射を抑制することができる。
【0080】
次に、本発明に係る第2の実施の形態のエンジン20の制御方法について、
図7に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、
図3に示すフローチャートと同様の工程については同じ符号を使用して、その説明を省略する。
【0081】
この実施の形態の制御方法は、
図7に示すように、ステップS10〜ステップS80までは、昇温タイミング推定手段C4の第2条件として、算出したNOx浄化率R
NOxが判定浄化率Rx以下か否かを判断するステップS200を行う以外は、
図3に示す第1の実施の形態のフローチャートと略同様である。
【0082】
そして、還元タイミング推定手段C6がステップS70とステップS80で還元タイミングを推定すると、次に、
図7に示すように、尿素水噴射量算出パラメータを検知するステップS210を行う。
【0083】
次に、尿素水噴射量算出手段C21が、尿素水噴射量算出パラメータに基づいて、尿素
水の噴射量Q
NH3を算出するステップS220を行う。次に、尿素水噴射手段C22が、ステップS220で算出された噴射量Q
NH3の尿素水を、尿素SCR触媒24に噴射するステップS230(尿素水噴射工程)を行う。
【0084】
次に、再々度、タイミング推定パラメータを検知するステップS100を行う。次に、還元終了タイミング算出手段C23が、算出したNOx浄化率R
NOxが判定浄化率Rxになったか否かを判断するステップS240を行う。このステップS240でNOx浄化率R
NOxが判定浄化率Rxにならない場合は、再度ステップS210に戻り、NOx浄化率R
NOxが判定浄化率Rxになった場合は、そのときの状態を継続して、この制御方法は完了する。
【0085】
この制御方法によれば、deNOx触媒として尿素SCR触媒24を用いたシステムにおいて、低負荷条件でも、燃費の悪化を最小に抑えると共に、NOxを効果的に低減することができる。また、尿素水噴射量算出パラメータ(NH
3の吸蔵量、放出量、NH
3転換量など)やNOx浄化率、推定還元量を常時計算して、効果的な還元タイミングや還元量を算出することができる。加えて、ハードウェア構成は従来のもので追加は無く、追加コストは発生しない。
【0086】
なお、尿素水の噴射量Q
NH3の算出方法は、尿素水噴射量算出パラメータから算出することができればよく、上記の算出方法に限定しない。また、この実施の形態では、尿素水噴射量算出パラメータを試験結果より求めたマップ値としたが、各々の値を検知するセンサを別途設けてもよい。さらに、尿素水噴射量算出パラメータを、例えば、NH
3の吸蔵量を、NH
3転換量から、NH
3のスリップ量と吸蔵したNH
3の放出量とNOx還元量とを引いた値で表せることを利用して算出してもよい。