(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
白色のコアシートを中心層としてその両面にオーバーシートを積層し、1のオーバーシートの磁気テープ転写面に金属蒸着層を積層し、さらに金属蒸着層面にデザイン印刷を施した磁気カードにおいて、該金属蒸着層が海・島構造からなる絶縁性のものであり、該1のオーバーシートと接するコアシート面にはシルクスクリーンによる黒色印刷がされていることを特徴とする金属光沢層を備えた磁気隠蔽カード。
黒色のコアシートを中心層としてその両面にオーバーシートを積層し、1のオーバーシートの磁気テープ転写面に金属蒸着層を積層し、さらに金属蒸着層面にデザイン印刷を施した磁気カードにおいて、該金属蒸着層が海・島構造からなる絶縁性のものであることを特徴とする金属光沢層を備えた磁気隠蔽カード。
【背景技術】
【0002】
表面が、金属光沢を有するカードは、独特の金属色調と光輝感を有することから、高級カードとして従来から好まれている。
しかし、金属蒸着層等を使用する従来のこの種カードは、該金属層の帯電に起因する静電気障害を生じることから、カードの金属面側には、磁気記録層(磁気テープまたはストライプ)を有しない形態にするのが通常であった。そこで、磁気記録が必要な場合は、止むを得ずカードの金属光沢面とは反対側面にのみ磁気テープを設けていた。
しかし、日本市場においてはカードの最表面にJISII仕様の磁気テープを設けることが必要である。さらに意匠性の問題からこの磁気テープを印刷層で隠蔽して意匠性の優れたカードを提供する必要がある。磁気テープは、磁性粉の色から由来する黒又は茶系色を呈しており、カードデザインの自由度を制約するからである。
【0003】
金属層の帯電に起因する静電気障害としては、磁気ヘッドへの静電気放電(ESD;Electrostatic Discharge)やそれに伴う磁気データの読み書き性不安定や磁気データの損傷等の問題がある。
また、磁気テープ上に金属蒸着層や接着層、デザイン印刷を形成する都合上、磁気特性を考慮する必要もあり、使用できる接着層や印刷インキ層の膜厚等に制限が生じ、実用性のある金属的な光輝感を再現できない問題があった。
【0004】
本願に関連する先行特許文献として、特許文献1〜3等がある。
特許文献1は、表面側のオーバーシート13に磁気テープ5を有するが、磁気テープ5の上に、隠蔽銀印刷層5や白色インキ印刷層3、ラメ印刷層2を設けたもので、隠蔽銀印刷層5は、金属アルミ粉等を分散した印刷インキによるもので、金属光沢感としては蒸着による本願のものと相違している。
特許文献2は、ホログラム形成層4の下面の反射層5について静電気対策を施したものであるが、カード全体の金属光沢感を考慮したものではない。
特許文献3は、磁気カードのスパーク防止対策として、磁気記録層6に接して形成される回折効果層5を記載している。しかし、同文献のものは、回折構造形成層4、回折効果層(金属反射層でもある)5、磁気記録層6の全体を転写するもので、本願の構成とは相違している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、磁気隠蔽カードの第1実施形態の層構成を示す図である。
図1のように、磁気隠蔽カード10は、2枚のコアシート11,12を中心層として、その両側にオーバーシート13,14を積層した構成になっている。コアシートは単層でも良いが、2層にすることで表裏両面に印刷する場合には製造が容易になる場合がある。コアシート11,12は白色のものを使用するが、オーバーシート13,14には透明なものを使用する。
オーバーシート13の外面には、磁気テープ15が予め転写されている。
図1では、オーバーシート14側にも磁気テープ16が転写されているが必須のものではない。
【0013】
オーバーシート13と接するコアシート11面には黒色のベタ印刷(全面印刷)17がシルクスクリーン印刷によりされている。磁気テープ15は磁気材料特有の濃色であって、白色コアシート11面との対比ではコントラストが大きくなり過ぎるため、背景を黒色にしてコントラストを低減させ目立たなくするためである。
オーバーシート13の外面側には、接着剤層24を介して、薄膜の金属蒸着層23が転写されている。この金属蒸着層23は絶縁性になっている特徴がある。一般的な金属蒸着層は導電性であるが、金属蒸着膜が連続膜とならないように制御して、海中に点在する微小の島構造となるように形成したもので海・島構造と言われている。海・島構造の詳細については後述する。
【0014】
金属蒸着層23の外面には、剥離保護層22と接着剤層34を介してさらにデザイン印刷33が施されるのが通常である。デザイン印刷33の最外面にも剥離保護層32が形成される。
金属蒸着層23やデザイン印刷33は、後述するように転写法で形成されるのが一般的であり、剥離保護層22,32は転写材料において剥離層として使われていた材料が転写後に、被転写体(カード)の保護材料としても機能することを意味している。従って、転写前は剥離層、転写後は剥離保護層と称することができる。
【0015】
図2は、磁気隠蔽カードの第2実施形態の層構成を示す図である。
図2の場合も、磁気隠蔽カード10は、2枚のコアシート11,12を中心層として、その両側にオーバーシート13,14を積層した構成になっている。第2実施形態では、黒色または黒色に近い色のコアシートを使用する特徴がある。コアシート11,12自体を黒色として黒色印刷を省略するものである。コアシートが単層でも良いのは第1実施形態と同様である。
コアシートの外面に透明オーバーシート13,14を積層すること、オーバーシート13の外面には、磁気テープ15が予め転写されていることも第1実施形態と同様である。
金属蒸着層23の外面に剥離保護層22を介してさらにデザイン印刷33が施されること、デザイン印刷33の最外面にも剥離保護層32が形成されていることも同様であるが、コアシート自体が黒色であるから、黒色のスクリーン印刷は行なわない。
オーバーシート13の外面側には、第1実施形態と同様に、接着剤層24を介して、薄膜の金属蒸着層23が転写されている。この金属蒸着層23の構成も第1実施形態と同一である。金属蒸着層23の外面には、剥離保護層22と接着剤層34を介してさらにデザイン印刷33が施されるのが通常である。デザイン印刷33の最外面にも剥離保護層32が形成される。
【0016】
磁気隠蔽カード10の平面図は図示していないが、カードサイズは、ISO(ISO7810)またはJIS(JISX6301)で規定する53.92〜54.03mm×85.47〜85.72mm(ID−1型)のカードである。カードの長辺に平行して所定位置に磁気テープ15がストライプ状に埋め込まれている。
磁気隠蔽カード10の総厚みは、0.68〜0.84mmの範囲の一定厚みに形成されている。磁気隠蔽カードがICチップを有しICカードを兼ねるものであっても良い。
【0017】
次に、金属光沢層を備えた磁気隠蔽カードの製造方法について説明する。
図3は、磁気隠蔽カードの製造工程を示す図であって、
図3(A)は、金属蒸着層23の転写工程、
図3(B)は、デザイン印刷33の転写工程、を示す図である。
まず、
図3(A)のように、中心層となるコアシート11,12と透明オーバーシート13,14と金属蒸着層の転写材料20を一体に積層した状態でプレス機に挿入し、鏡面板に挟んで熱と圧を加えてプレスする。転写材料20は、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の平面性の優れたフィルム基材21に剥離層22を介して、金属蒸着層23を形成し、さらに接着剤層24を塗工した材料である。
基材21の金属蒸着層23側面には、ヘアライン等の浅く切削した凹凸溝模様を形成しておいても良い。その場合には、金属薄膜層の装飾性が高いものとなる。
【0018】
ヘアラインの形成は、例えば、サンドペーパーベルトを巻いたロールをフィルム基材21の流れ方向に逆らって回転させ、フィルム基材21の表面にヘアライン目を形成することによりできる。サンドペーパーベルトに代えて金属ブラシや不織布に砥粒を付着させたヘアライン用研磨剤、スチールウール等も使用できる。ヘアライン目の深さは2〜3μm程度の深さとする。
【0019】
この転写工程と、コアシート11,12およびオーバーシート13,14を一体に熱融着させる工程は一回の熱プレスの工程で行う。コアシートとオーバーシートが、塩化ビニルやPET−Gのように熱融着性材料である場合は、シート間に接着材料を使用しないで融着するが、熱融着性でないシート材料の場合は、ホットメルト性の接着剤等を併用して熱プレスする。
【0020】
転写材料20は、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」とする。)等のフィルム基材21に、剥離層22を介して、金属蒸着層23を形成したものである。オーバーシート13との接触面に薄層(厚み1〜2μm以内)の接着剤層24を有している。
プレス後、転写材料20のフィルム基材21は剥離除去される。剥離層22は金属蒸着膜側に残して保護層としても良いが、カードの最表面ではないので設けなくても良い。
第1実施形態の場合、
図3のように、コアシート11には黒色のベタ印刷17がされているが、第2実施形態では、黒色等のコアシートを使用するので、この印刷はしない。その他の製造条件は、第1実施形態と第2実施形態は同様である。
【0021】
次に、
図3(B)のように、デザイン印刷の転写材料30を積層して、金属蒸着層23の面にデザイン印刷を施す工程を行う。転写材料30は、フィルム基材31と剥離層32、デザイン印刷33、接着剤層34からなるものである。剥離層32はデザイン印刷面上に残して保護層とする。デザイン印刷33は、シルクスクリーン印刷であっても良く、オフセット印刷によるものであっても良い。転写フィルム基材31は、デザイン印刷の転写後には同様に剥離除去する。
一般的に、磁気テープ15の表面から磁気ヘッドまでの間隔が15μm以内なら、磁気読み取りに障害とならない、とされているが、各層をできる限り薄くするのが好ましい。
【0022】
次に、絶縁性金属蒸着層の構造について説明する。
図4は、絶縁性金属蒸着層の構造を説明する模式平面図、
図5は、絶縁性金属蒸着層の模式断面図、である。絶縁性金属蒸着層は、一般的には、海・島構造の金属蒸着層からなっている。この従来から知られている海・島構造は、蒸着材料や蒸着条件等の選定により形成できるもので、金属蒸着層23には微小な島3aと島と島間を画する間隔3bからなる蒸着層3mが形成されている。海・島構造からなる蒸着層は、プラスチックや紙基材に直接蒸着しても形成できるが、本願の磁気隠蔽カードでは、転写材料に蒸着してからカードに転写する方法を採用する。いずれの場合も、島サイズや形状等はある範囲のものではあるが、正しく一定のものではない。
【0023】
このような島3aのサイズ(平均差し渡し径)は、20nm〜1μm、島間の間隔(平均間隔)3bは、10nm〜500nmの範囲であることが好ましい。島サイズが20nmより小さいと金属が粗になり過ぎ十分な金属光沢が得られない。また、1μm以上では導電性になってしまい静電気障害を生じるからである。
ただし、島サイズや島間間隔といっても、正しく島と島の間に溝が形成されてはいないで、肉眼でも顕微鏡でも明瞭に識別できない場合もある。その場合には、
図5の断面図で示すように、島3a部分は金属が密な状態で厚く積層されており、島間3bにも金属が粗な構造ではあるが積層されている状態にある。島と島の間の粗な構造部分は結晶粒界(グレインバウンダリー)となる部分であり、電気的にも抵抗値が大きくなっている。
島3a自体にも粗密があり抵抗値にもばらつきがあって、導電性ではない場合もある。従って、島間の間隔が明瞭でない場合は、島間の間隔3bとは島間の粗な構造部分(結晶粒界またはグレインバウンダリー)と解するのが適当である。
【0024】
海・島構造は蒸着原子の核の生成や成長、島どうしの合体等複雑な条件が絡み合って成膜される。蒸着金属材料、蒸着速度等の蒸着条件の選定により島サイズや島間隔の設定は可能であるが、かなり複雑な制御が必要であり材料が限定される。
一般に融点の低い金属や貴金属は制御が比較的容易であり、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、の単体金属またはその群から選ばれた二種以上の金属からなる合金、または錫−アルミニウム(Sn−Al)、錫−珪素(Sn−Si)が用いられるが、中でも錫(Sn)は特に容易である。錫−アルミニウムの蒸着は、錫とアルミニウムの単体金属を別個のるつぼに入れて蒸気化し、基材上で合金として蒸着させることができる。錫−珪素も同様である。
アルミニウムは金属光沢に優れるが、アルミニウム自体の単体金属は、表面エネルギーが高く基板上でマイグレーションが生じやすく、島状蒸着になり難い金属材料になる。
【0025】
絶縁性金属蒸着層の表面抵抗率は、10
10〜10
25Ω/□の範囲であることが好ましい。10
10Ω/□よりも小さい場合は導体に近くなり帯電し易く静電気障害が生じる。10
25Ω/□より大きい場合は、金属光沢が失われ意匠性も損ねることになる。表面抵抗率の調整は蒸着速度や蒸着時間による膜厚で調整する。
【0026】
海・島構造の島サイズ(平均差し渡し径)と島間隔(平均島間隔)は、原子間力顕微鏡(以下「AFM」という。)を使用して測定できる。
測定に供するAFMは、Digital Instruments製、セイコー電子株式会社製、Topometrix製等を使用できる。例えば、DigitalInstruments製のNano ScopeIII を使用した場合は、タッピングモードで凹凸処理面を500nm×500nmの面積を測定したAFM像についてフラット処理を行った後、解析を行って島サイズ(平均差し渡し径)と島間隔(平均島間隔)を求める。測定においては、摩耗や汚れのない状態のカンチレバーを使用し、著しい凹みや突起のない均一な凹凸領域を測定個所とした。
【0027】
金属蒸着層23の厚みは、10nm〜50nm程度とする。50nm以上とする場合は導電性となることが多い。蒸着方法は、一般に採用されている真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法のような物理気相成長法(PhysicalVapor Deposition法;PVD法)のほか、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(ChemicalVapor Deposition法;CVD法)、大気圧プラズマ法、等を用いることができる。
【0028】
真空蒸着法による基材フィルムへの蒸着層の形成は、金属材料を原料として、これを真空チャンバー内で加熱蒸発させて基材フィルム上に薄膜を形成して蒸着層とすることができる。スパッタリング法による基材フィルムへの蒸着層の形成では、高周波スパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法等の従来公知のスパッタリング法等を用いることができる。
【0029】
<材質に関する実施形態>
(1)コアシート
白色または着色したプラスチックシートを幅広く各種のものを使用でき、以下に挙げる単独フィルムあるいはそれらの複合フィルムを使用できる。
ポリエチレンテレフタレート(PET)、PET−G(テレフタル酸−シクロヘキサンジメタノール−エチレングリコール共重合体)、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、ポリスチレン系、ABS、ポリアクリル酸エステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、等である。コアシートの膜厚は、カードの全体厚みを勘案して適宜に選択する。
(2)オーバーシート
通常、コアシートと同質の材料を使用するが、0.05〜0.1mm厚程度の透明材料が使用されることが多い。
【0030】
(3)金属蒸着層を有する転写用フィルム基材
プラスチックフィルムや紙基材を幅広く各種のものを使用できる。プラスチックフィルムとしては、コアシートと同様に、上記した各種の材料を使用できる。紙基材としては、以下のもの等を使用できる。
上質紙、コート紙、クラフト紙、グラシン紙、合成紙、ラテックスやメラミン含浸紙。
(4)剥離剤
剥離層用の剥離剤の材質としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ゴム系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂などのほか、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂などのコポリマーを使用できる。剥離層に硬さが必要な場合は、紫外線硬化性樹脂などの光硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などの放射線硬化樹脂なども使用できる。
【0031】
以下、磁気隠蔽カードの実施形態を実施例に基づき具体的に説明する。実施例では、金属蒸着層を有する転写材料20を各種の条件で試作し、当該転写材料を使用した磁気カードの製造とデザイン印刷の転写は同一の条件で行うものとした。
【実施例1】
【0032】
(金属蒸着層の転写材料製造1)
基材21として、厚さ40μmの2軸延伸PETフィルムを使用し、その面に酢酪酸セルロース系樹脂による剥離層22を形成した。この2軸延伸PETフィルムをPVD法真空蒸着装置の送り出しロールに装着し、次いで、これを繰り出し、その2軸延伸PETフィルムの剥離層22面上に、以下の蒸着条件により、錫(Sn)を海・島構造になるように、膜厚20nmの金属蒸着膜23mを形成した。蒸着チャンバー内の真空度を目標の真空度にするため、アルゴン(Ar)ガスを蒸着チャンバーへ導入した。
(蒸着条件)
蒸着チャンバー内の真空度:7.2×10
−4torr(9.6×10
−2Pa)
冷却ドラム温度:0°C
蒸着堆積速度:7nm/sec.
(冷却ドラムとは、コーティングドラムのことである。以下同様。)
【実施例2】
【0033】
(金属蒸着層の転写材料製造2)
基材21として、厚さ40μmの2軸延伸PETフィルムを用い、その面をサンドペーパーベルトでヘアライン目を形成して使用した。そのヘアライン面に酢酪酸セルロース系樹脂による剥離層22を形成した。この2軸延伸PETフィルムをPVD法真空蒸着装置の送り出しロールに装着し、次いで、これを繰り出し、その2軸延伸PETフィルムの剥離層22面上に、以下の蒸着条件により、錫(Sn)を海・島構造になるように、膜厚10nmの金属蒸着膜23mを形成した。蒸着チャンバー内の真空度を目標の真空度にするため、アルゴン(Ar)ガスを蒸着チャンバーに導入した。
(蒸着条件)
蒸着チャンバー内の真空度:7.4×10
−4torr(9.9×10
−2Pa)
冷却ドラム温度:0°C
蒸着堆積速度:7nm/sec.
【実施例3】
【0034】
(金属蒸着層の転写材料製造3)
基材21として、厚さ40μmの2軸延伸PETフィルムを使用し、その面に酢酪酸セルロース系樹脂による剥離層22を形成した。この2軸延伸PETフィルムをPVD法真空蒸着装置の送り出しロールに装着し、次いで、これを繰り出し、その2軸延伸PETフィルムの剥離層22面上に、以下の蒸着条件により、錫(Sn)を海・島構造になるように、膜厚10nmの金属蒸着膜23mを形成した。
(蒸着条件)
蒸着チャンバー内の真空度:2.6×10
−4torr(3.5×10
−2Pa)
冷却ドラム温度:0°C
蒸着堆積速度:1nm/sec.
【実施例4】
【0035】
(金属蒸着層の転写材料製造4)
基材21として、厚さ40μmの2軸延伸PETフィルムを使用し、その面に酢酪酸セルロース系樹脂による剥離層22を形成した。この2軸延伸PETフィルムをスパッタリング法蒸着装置に装着し、次いで、2軸延伸PETフィルムの剥離層22面上に、以下の蒸着条件により、錫(Sn)を海・島構造になるように、膜厚15nmの金属蒸着膜23mを形成した。
(蒸着条件)
蒸着チャンバー内の真空度:9.2×10
−4torr(12.0×10
−2Pa)
冷却ドラム温度:4°C
蒸着堆積速度:0.2nm/sec.
【実施例5】
【0036】
(金属蒸着層の転写材料製造5)
基材21として、厚さ40μmの2軸延伸PETフィルムを使用し、その面に酢酪酸セルロース系樹脂による剥離層22を形成した。この2軸延伸PETフィルムをPVD法真空蒸着装置の送り出しロールに装着し、次いで、これを繰り出し、その2軸延伸PETフィルムの剥離層22面上に、以下の蒸着条件により、錫(Sn)およびアルミニウム(Al)を各々の蒸着源より蒸着し、蒸着層がSn−Al合金からなる海・島構造になるように、膜厚20nmの金属蒸着膜23mを形成した。
(蒸着条件)
蒸着チャンバー内の真空度:6.7×10
−4torr(8.9×10
−2Pa)
冷却ドラム温度:0°C
蒸着堆積速度:15nm/sec.
【実施例6】
【0037】
(金属蒸着層の転写材料製造6)
基材21として、厚さ40μmの2軸延伸PETフィルムを使用し、その面に酢酪酸セルロース系樹脂による剥離層22を形成した。この2軸延伸PETフィルムをPVD法真空蒸着装置の送り出しロールに装着し、次いで、これを繰り出し、その2軸延伸PETフィルムの剥離層22面上に、以下の蒸着条件により、錫(Sn)およびアルミニウム(Al)を各々の蒸着元より蒸着し、蒸着層がSn−Al合金からなる海・島構造になるように、膜厚10nmの金属蒸着膜23mを形成した。
(蒸着条件)
蒸着チャンバー内の真空度:4.2×10
−4torr(5.6×10
−2Pa)
冷却ドラム温度:0°C
蒸着堆積速度:15nm/sec.
【実施例7】
【0038】
(金属蒸着層を有する転写材料の製造7)
基材21として、厚さ40μmの2軸延伸PETフィルムを使用し、その面に酢酪酸セルロース系樹脂による剥離層を形成した。この2軸延伸PETフィルムをPVD法真空蒸着装置の送り出しロールに装着し、次いで、これを繰り出し、その2軸延伸PETフィルムの剥離層22面上に、以下の蒸着条件により、錫(Sn)を海・島構造になるように蒸着し、膜厚10nmの金属蒸着膜23mを形成した。
(蒸着条件)
蒸着チャンバー内の真空度:7.4×10
−4torr(9.9×10
−2Pa)
冷却ドラム温度:0°C
蒸着堆積速度:7nm/sec.
【実施例8】
【0039】
(金属蒸着層の転写材料製造8)
基材21として、厚さ40μmの2軸延伸PETフィルムを使用し、その面に酢酪酸セルロース系樹脂による剥離層を形成した。この2軸延伸PETフィルムをPVD法真空蒸着装置20の送り出しロールに装着し、次いで、これを繰り出し、その剥離層22面上に、以下の蒸着条件により、錫(Sn)を、海・島構造になるように蒸着し、膜厚10nmの金属蒸着膜23mを形成した。
(蒸着条件)
蒸着チャンバー内の真空度:7.4×10
−4torr(9.9×10
−2Pa)
冷却ドラム温度:0°C
蒸着堆積速度:7nm/sec.
【0040】
(金属蒸着層を有する転写材料の製造比較例1)
基材21として、厚さ40μmの2軸延伸PETフィルムを使用し、その面に酢酪酸セルロース系樹脂による剥離層を形成した。この2軸延伸PETフィルムをPVD法真空蒸着装置の送り出しロールに装着し、次いで、これを繰り出し、その2軸延伸PETフィルムの剥離層面上に、以下の蒸着条件により、アルミニウム(Al)を膜厚40nmの通常の連続金属蒸着膜23mを形成した。
(蒸着条件)
蒸着チャンバー内の真空度:3.7×10
−4torr(4.9×10
−2Pa)
冷却ドラム温度:0°C
蒸着堆積速度:25nm/sec.
【0041】
(金属蒸着層を有する転写材料の製造比較例2)
基材21として、厚さ40μmの2軸延伸PETフィルムを使用し、その面に酢酪酸セルロース系樹脂による剥離層22を形成した。この2軸延伸PETフィルムをPVD法真空蒸着装置20の送り出しロールに装着し、次いで、これを繰り出し、その2軸延伸PETフィルムの剥離層22面上に、以下の蒸着条件により、錫(Sn)を膜厚20nmの通常の連続金属蒸着膜23mを形成した。
(蒸着条件)
蒸着チャンバー内の真空度:6.7×10
−4torr(8.9×10
−2Pa)
冷却ドラム温度:0°C
蒸着堆積速度:30nm/sec.
【0042】
上記実施例1から実施例8の転写材料の金属蒸着膜については、ほぼ海・島構造と判定できる構造層が形成されているのが確認できた。当該海・島構造の島サイズ(平均差し渡し径)と島間隔(平均島間隔)を原子間力顕微鏡(Digital Instrumennts製「Nano Scope3」)の画像から解析した結果を、表1に示す。
なお、比較例1,2では、海・島構造とはならず、連続膜になっていた。
比較例1,2を含め金属蒸着面23mの表面抵抗率(Ω/□)を抵抗率計(三菱化学株式会社製「MCP−HT260」による)で測定した結果も合わせて、表1に示す。
【0043】
非結晶性ポリエステル系樹脂(商品名「PET−G」)からなる白色コアシート(厚み360μm)11,12を中心層として、その両側に同質材料からなる透明オーバーシート(厚み50μm)13,14を積層し、さらに、上記実施例1〜8、および比較例1、2で得られた転写材料20を積層して、プレス機の鏡面板に導入し、150°C、25kg/cm
2 、15分の条件で熱圧プレスした。なお、オーバーシート13の外面には、磁気テープ15が予め転写され、コアシート11面には黒色のベタ印刷(全面印刷)17がシルクスクリーン印刷により、厚み3〜5μmに印刷されたものである。
【0044】
金属蒸着層23の転写後、転写フィルム基材21を除去し、デザイン印刷33の転写材料30を積層して再び熱圧プレスを前記と同一の条件で行った。
転写材料30は、厚み100μmの2軸延伸PETフィルムに、ポリエステル樹脂系の薄層(1〜2μm)の剥離層をグラビア印刷し、その面にシルクスクリーン印刷によるデザイン印刷33を設けたものを各実施例、比較例に共通して使用した。デザイン印刷33は接着層を兼ねるものとした。磁気テープ15の表面とカード最表面までの各層の合計厚みは、8〜10μm程度となった。
【0045】
完成した各実施例、比較例の磁気隠蔽カードについて、エンボス文字の打刻を行ったが支障なく行うことができた。その後、外観検査(隠蔽性)と磁気カードリーダライタによる読み取り試験を行った。読み取り試験は、磁気カードをリーダライタにより、2000回読み取り書き込みする試験を行い、エラーの無いものを「良好」、1回以上のエラーがあったものを「阻害」とした。以上の結果も「表1」に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
実施例4が実施例3に比較して、表面抵抗率が低下するのは、膜厚が厚いことと、堆積速度が遅く緻密な膜が形成されていることに起因すると考えられる。また、実施例5が実施例1と比較して、表面抵抗率が低下するのは、アルミニウムが入ることにより表面抵抗率が低下するためと考えられる。
なお、実施例5、実施例6においては、錫(Sn)およびアルミニウム(Al)による多源蒸着を行っているが、生成したSn−Al合金をESCA(英国、VG Scientific社製「LAB220i−XL」)で測定したところ、SnとAlの比は原子数において、いずれも100:1〜10の範囲であった。