(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御手段は、前記ブレーキ操作部に対する操作の踏力もしくはストロークの大きさに応じた前記車両の前記ブレーキ鳴き領域のマップを有し、前記マップに基づいて前記スキップ領域を設定する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の制動装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1の実施形態に係る制動装置を、
図1〜5を用いて説明する。
図1は、本実施形態の制動装置20を備える自動車10を示す概略図である。自動車10は、本発明出言う車両の一例である。
図1に示すように、自動車10は、一対の前輪11と、一対の後輪12とを備えており、これら前輪11、後輪12は、制動装置20によって制動される。
【0014】
制動装置20は、前輪11と後輪12との各々に設けられるディスクロータ21と、各ディスクロータ21に対して1つ設けられるキャリパ23と、ブレーキペダル24と、運転者によるブレーキペダル24の踏力を検出する踏力検出センサ25と、制御部26とを備えている。
【0015】
ディスクロータ21は、当該ディスクロータ21が設けられる車輪、つまり、前輪11または後輪12と一体に回転する。キャリパ23は、ブレーキパッド28が先端部に設けられるピストン27を備えている。ピストン27がディスクロータ21側に進むことによって、ピストン27の先端部に設けられるブレーキパッド28がディスクロータ21に押し付けられる。ブレーキパッド28とディスクロータ21との間に摩擦が生じることによって、前輪11、後輪12の回転が減速し、停止する。
【0016】
踏力検出センサ25は、ブレーキペダル24が操作されたことを検出すると、運転者によるブレーキペダル24の踏力を検出し、検出結果を制御部26に出力する。制御部26は、踏力検出センサ25の検出結果に基づいて、ピストン27の移動を制御するべく、ピストン駆動部29を制御する。ピストン駆動部29は、一例として電動式であり、制御部26の制御にしたがい、ピストン27を進退する。
【0017】
制御部26について、具体的に説明する。制御部26は、運転者によるブレーキペダル24の踏力に応じて、各前輪11のディスクロータ21に対するブレーキパッド28の押付力を制御するとともに、各後輪12のディスクロータ21に対するブレーキパッド28の押付力を制御する。
【0018】
各前輪11に対する踏力とパッド押し荷重の関係と、各後輪12に対する踏力とパッド押し荷重の関係とについて、説明する。本実施形態では、2つの前輪11を第1のグループとし、2つの後輪12を第2のグループとしている。ブレーキペダル24に対する踏力に応じて自動車10を減速するべく、踏力に応じた、全てのブレーキパッド28のディスクロータ21に対する押付力の合計値が予め求められている。
【0019】
この合計値は、予め決定されている分担率にしたがって、第1のグループG1と第2のグループG2とに分担される。そして、各グループにおいては、分担された押付力が、当該グループを構成する車輪に対して、予め決定されている分担率にしたがって、分担される。
【0020】
本実施形態では、上記合計値を第1,2のグループG1,G2に分担する際の分担率は、一例として、第1のグループに対して50パーセントであり、第2のグループに対して50パーセントである。そして、第1のグループG1においては、分担された押付力を、各前輪11に対してさらに50パーセントの分担率で分担している。第2のグループG2においては、分担された押付力を、各後輪12に対してさらに50パーセントの分担率で分担している。
【0021】
このため、本実施形態では、ブレーキペダル24に対する踏力に応じて自動車10を減速するべく、全てのブレーキパッド28に要求される押付力の合計値に対して、各前輪11と、各後輪12とには、各々、上記合計値の25パーセントの押付力が発生するようにピストン駆動部29が制御される。
【0022】
なお、上記合計値を、第1,2のグループG1,G2に分担する分担率と、各グループにおいて分担された押付力を、さらに各グループを構成する車輪に分担する分担率とは、ブレーキペダル24に対する踏力に対して、自動車10を効率よく減速するために決定されており、予め、実験などによって求められている。
【0023】
図2は、ブレーキペダル24の踏力と前輪11のディスクロータ21に対するブレーキパッド28の理想押付力を示すグラフである。
図2では、横軸は、ブレーキペダル24のペダル踏力を示しており、矢印に沿って進むにつれて値が大きくなる。縦軸は、パッド押付力を示し、矢印に沿って進むにつれて値が大きくなる。
図2中、理想押付力は、2点鎖線で示されている。
【0024】
図3は、ブレーキペダル24の踏力と後輪12のディスクロータ21に対するブレーキパッド28の理想押付力を示すグラフである。
図2では、横軸は、ブレーキペダル24のペダル踏力を示しており、矢印に沿って進むにつれて値が大きくなる。縦軸は、パッド押付力を示し、矢印に沿って進むにつれて値が大きくなる。
図2中、理想押付力は、2点鎖線で示されている。
【0025】
ここで、理想押付力について、説明する。理想押付力は、2点鎖線で示すように、自動車10を効率よく停止させるために決定される値であり、ペダル踏力の増加に比例して大きくなる。しかしながら、ブレーキパッド28がディスクロータ21に押し付けられた際に、パッド押付力によっては、ディスクロータ21とブレーキパッド28との間で、ブレーキ鳴き現象が生じることがある。
【0026】
図2に、ブレーキ鳴き領域Aを示している。
図2に示すよう、理想押付力がブレーキ鳴き領域に入ると、ディスクロータ21とブレーキパッド28との間で、ブレーキ鳴きが発生する。前輪11におけるブレーキ鳴き領域Aは、パッド押付力が、aより大きく、かつ、b未満の範囲である。
【0027】
図3に、ブレーキ鳴き領域Aを示している。
図3に示すように、理想押付力がブレーキ鳴き領域に入ると、ディスクロータ21とブレーキパッド28との間で、ブレーキ鳴きが発生する。後輪12におけるブレーキ鳴き領域Aは、パッド押付力が、aより大きく、かつ、b未満の範囲である。本実施形態では、各前輪11のブレーキ鳴き領域Aと、各後輪12のブレーキ鳴き領域Aとは、同じである。
【0028】
このため、本実施形態では、理想押付力ではなく、ブレーキ鳴き領域をスキップするように考慮して決定された個別押付力に沿って前輪11のピストン駆動部29と後輪12のピストン駆動部29とが制御される。本実施形態では、ブレーキ鳴き領域が、スキップ領域の一例となる。
【0029】
個別押付力は、いずれのブレーキパッド28によるパッド押付力もブレーキ鳴き領域に入らないように決定されている。つまり、個別押付力は、少なくとも1つのブレーキパッド28の理想押付力がブレーキ鳴き領域に入ると、ブレーキ鳴き領域に入ったブレーキパッド28の理想押付力に対してブレーキ鳴き領域をスキップする荷重を加えたものである。
【0030】
また、全てのブレーキパッド28による個別押付力の合計値が、全てのブレーキパッド28による理想押付力の合計値と同じ値になるように決定されている。このため、上記のように、いずれか1つのパッド押付力がブレーキ鳴き領域をスキップするべく理想押付力に対して荷重が付加されると、残りの車輪では、理想押付力の合計値から上記付加された荷重が減らされる。このことによって、全ての車輪における理想押付力の合計値と、全ての車輪におけるパッド押付力の合計値とは、同じとなる。このことによって、運転者によるブレーキペダル24の操作に応じた制動力が得られる。
【0031】
個別押付力について、より具体的に説明する。
図4は、各前輪11における、ペダル踏力とディスクロータ21に対するブレーキパッド28の個別押付力との関係を示すグラフである。
図4における横軸と縦軸とは、
図2と同じである。
図4に示すように、各前輪11に対して設定される個別押付力は、ブレーキ鳴き領域Aを避けるように、理想押付力に対して荷重を加えている。
【0032】
図2に示すように、理想押付力では、ペダル踏力がf1より大きく、かつ、f2未満であると、パッド押し荷重が鳴き領域Aに入る。このため、
図4に示すように、前輪11に対する個別押付力は、ペダル踏力がf1未満では、理想押付力と同じであり、ペダル踏力がf1より大きくかつf2未満の範囲では、理想押付力に、荷重(b−a)を付加した値になる。このことによって、ペダル踏力がf1になると、パッド押付力は、ブレーキ鳴き領域Aをスキップすることによって、ブレーキ鳴き領域Aに入らない。
【0033】
ペダル踏力がf1より大きく、かつ、f2未満の範囲では、個別押付力は、理想押付力と同じ増加率で、増加する。つまり、
図2に示す理想押付力のf1より大きく、かつ、f2未満の範囲と同じ増加率となる。さらに詳しく説明すると、理想押付力のグラフにおいて、ペダル踏力がf1より大きく、かつ、f2未満の範囲のグラフの傾きと、個別押付力のグラフにおいて、ペダル踏力がf1より大きく、かつ、f2未満の範囲のグラフの傾きとは、同じとなる。そして、
図4に示すように、ペダル踏力がf2になると、個別押付力は、理想押付力に戻る。
【0034】
上記のように、各前輪11では、個別押付力は、理想押付力を、ブレーキ鳴き領域Aをスキップするように、ブレーキ鳴き領域Aに対応するペダル踏力f1より大きく、かつ、f2未満の範囲の個別押付力を、理想押付力に対して(b−a)を加えている。
【0035】
つぎに、各後輪12に対する個別押付力について、説明する。
図5は、各後輪12のディスクロータ21に対するブレーキパッド28の個別押付力を示すグラフである。
図5の横軸と縦軸とは、
図3と同じである。
【0036】
各後輪12のブレーキパッド28の個別押付力は、上記したように、各ペダル踏力において、各ピストン27に対する理想押付力の合計値と、各ピストン27に対する個別押付力の合計値とを同じにするために、ペダル踏力がf1以下の範囲では、後輪12のブレーキパッド28の個別押付力は、理想押付力と同じである。
【0037】
ペダル踏力がf1より大きくかつf2未満の範囲になると、理想押付力から荷重(b−a)をひく。このことによって、個別押付力は、ブレーキ鳴き領域から外れる。そして、ペダル踏力がf2になるまで、個別押付力は、理想押付力と同じ増加率で増加する。増加率は、グラフの傾きである。つまり、
図3に示す理想押付力のf1より大きく、かつ、f2未満の範囲と同じ増加率となる。さらに詳しく説明すると、理想押付力のグラフにおいて、ペダル踏力がf1より大きく、かつ、f2未満の形状と、個別押付力のグラフにおいて、ペダル踏力がf1より大きく、かつ、f2未満の形状とは、同じとなる。そして、
図5に示すように、ペダル踏力がf2になると、個別押付力は、理想押付力に戻る。
【0038】
各前輪11に対する個別押付力と各後輪12に対する個別押付力とが、上記のように設定されることによって、ペダル踏力がいずれの値であっても、全てのブレーキパッド28に作用する個別押付力の合計値と、理想押付力の合計値とは、同じとなる。
【0039】
そして、前輪11と後輪12とに設定される個別押付力は、各々に対して設定される理想押付力に対して、ブレーキ鳴き領域のみをスキップするように、パッドの押付力を増減させており、ブレーキ鳴き領域を外れると、理想押付力に戻る。
【0040】
このため、本実施形態では、ブレーキ鳴きの発生を抑制しつつ、ブレーキペダル24に対する操作に応じた制動力が得られる。
【0041】
なお、本実施形態で言う個別押付力は、本発明で言う、第1のグループ及び第2のグループで発生する制動力を維持するように調整された後の理想押付力である。また、制御部26は、上記のように、前輪11と後輪12とにおいてスキップ領域をスキップする際、前輪11と後輪12とに作用する制動力の合計値が、一定に保たれるように、個別押付力を設定している。
【0042】
1つの車輪に対して作用する制動トルクは、(ブレーキパッドの数)×(押付荷重)×ブレーキパッドとディスクロータ間の摩擦係数であるμ)×(車輪の有効半径)とである。制動力は、(制動トルク)/(タイヤ半径)である。車輪の有効半径とは、車輪の回転中心からブレーキパッドとディスクロータとの接触範囲までの距離である。
【0043】
本実施形態では、前輪11と後輪11において、ブレーキパッドの数は、同じである。また、一例として、前輪11のブレーキパッドとディスクロータ間の摩擦係数と、後輪11のブレーキパッドとディスクロータ間の摩擦係数とは、同じである。また、一例として、前輪11の有効半径と後輪12の有効半径とは同じである。また、一例として、前輪11の半径と後輪12の半径とは同じである。
【0044】
また、前輪11の軸重反力と、後輪12の軸重反力とが、自動車10の減速によって変化しないとする。
【0045】
このため、本実施形態では、上記
図1〜8を用いて説明したように、個別押付荷重の合計値と理想押付荷重の合計値とを同じになるように制御することによって、自動車10に作用する制動力を維持することができる。
【0046】
つぎに、本発明の第2の実施形態に係る制動装置を、
図6〜9を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する構成は、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0047】
本実施形態では、自動車10の構成は第1の実施形態と同じであり、前輪11のブレーキ鳴き領域と後輪12のブレーキ鳴き領域とが、第1の実施形態とことなる。そして、ブレーキ鳴き領域が異なることにともない、前輪11に対する個別押付力と、後輪12に対する個別押付力とが、第1の実施形態と異なる。他の点は、第1の実施形態と同じである。上記異なる点を、説明する。
【0048】
なお、本実施形態では、第1の実施形態と同様に、理想押付力の合計値と個別押付力の合計値とを同じに保つことによって、制動力の合計値を保つことができる。言い換えると、前輪11に対して作用する制動力と後輪12に対して作用する制動力の合計値を、維持することができる。
【0049】
本実施形態では、第1の実施形態と同じに、第1のグループG1は、両前輪11によって構成され、第2のグループG2は、両後輪12によって構成される。また、第1,2のグループに対する、押付力の分担率は、第1の実施形態と同じであり、第1のグループに対する分担率は50パーセントであり、第2のグループに対する分担率は、50パーセントである。
【0050】
そして、第1のグループG1において、割り当てられた荷重をさらに各前輪11のブレーキパッド28に分担する分担率は、第1の実施形態と同じであり、50パーセントずつである。第2のグループにおいて、割り当てられた荷重をさらに各後輪12のブレーキパッド28に分担する分担率は、第1の実施形態と同じであり、50パーセントずつである。
【0051】
また、前輪11に対する理想押付力と、後輪12に対する理想押付力とは、第1の実施形態と同じに、互いに同じである。
【0052】
図6は、各前輪11のディスクロータ21に対するブレーキパッド28の理想押付力とブレーキ鳴き領域とを示すグラフである。
図6の横軸と縦軸とは、
図2と同じである。
図6に示すように、本実施形態では、各前輪11のブレーキ鳴き領域Bは、同じであり、理想個別荷重が、cより大きく、かつ、d未満の範囲である。ペダル踏力がf3のとき、理想個別荷重は、cとなる。ペダル踏力がf4のとき、理想個別荷重は、dとなる。そして、c<dである。
【0053】
図7は、各後輪12のディスクロータ21に対するブレーキパッド28の理想押付力とブレーキ鳴き領域とを示すグラフである。
図7の横軸と縦軸とは、
図3と同じである。
図7に示すように、本実施形態では、各後輪12のブレーキ鳴き領域Cは、同じであり、理想個別荷重がeより大きく、かつ、fより未満の範囲である。ペダル踏力がf5のとき、理想押付力は、eとなり、ペダル踏力がf6のとき、理想押付力は、fとなる。そして、e<fであり、かつ、f<cである。
【0054】
このように、前輪11のブレーキ鳴き領域Bと、後輪12のブレーキ鳴き領域Cとは、異なるとともに、互いに重ならない。
【0055】
図8は、前輪11のディスクロータ21に対するブレーキパッド28の個別押付力とブレーキ鳴き領域Bとを示すグラフである。
図8の横軸と縦軸とは、
図2と同じである。
図9は、後輪12のディスクロータ21に対するブレーキパッド28の個別押付力とブレーキ鳴き領域Cとを示すグラフである。
図9の横軸と縦軸とは、
図3と同じである。
図6〜9に示すように、後輪12に対するブレーキ鳴き領域Cが、前輪11に対するブレーキ鳴き領域Bよりも早い時期にあらわれる。
【0056】
このため、
図9に示すように、ペダル踏力がf5以下では、後輪12に対する個別押付力は理想押付力と同じであり、前輪11に対する個別押付力は理想押付力と同じである。ペダル踏力がf5より大きくかつf6未満の範囲になると、後輪12の個別押付力は、理想押付力に対して、荷重(f−e)を加えた値になる。ペダル踏力がf5より大きく、かつ、f6未満の範囲では、個別押付力の増加率は、理想押付力と同じ増加率である。つまり、グラフの傾きが同じである。さらに詳しく説明すると、個別押付力において、ペダル踏力がf5より大きく、かつ、f6未満の範囲の形状は、理想押付力において、ペダル踏力がf5より大きく、かつ、f6未満の範囲の形状と同じである。
【0057】
前輪11においては、全てのブレーキパッド28に作用する個別押付力の合計値と、全てのブレーキパッド28に対する理想押付力の合計値とを同じにするために、ペダル踏力f5より大きく、かつ、f6未満の範囲では、各前輪11の個別押付力は、後輪12のブレーキパッドに対して付加した荷重をひいた値となる。
【0058】
そして、後輪12の理想押付力がブレーキ鳴き領域Cから外れると、つまり、ペダル踏力がf6以上になると、理想押付力がブレーキ鳴き領域から外れた状態であるので、前輪11の個別押付力と後輪12の個別押付力とは、理想押付力に戻る。
【0059】
そして、ペダル踏力がf3より大きくかつf4未満の範囲になると、前輪11に理想押付力がブレーキ鳴き領域Bに入る。このため、前輪11の個別押付力は、ブレーキ鳴き領域Bをスキップするように、理想押付力に対して荷重が付加された値になる。具体的には、ペダル踏力がf3より大きくかつf4未満の範囲になると、理想押付力に荷重(d−c)を付加した値になる。
【0060】
このことによって、前輪11の個別押付力は、ブレーキ鳴き領域Bをスキップする。そして、ペダル踏力がf3より大きく、かつ、f4未満の範囲では、個別押付力の増加率は、理想押付力と同じ増加率になる。つまり、グラフの傾きが同じになる。さらに具体的に説明すると、前輪11において、ペダル踏力がf3より大きく、かつ、f4未満の範囲の個別押付力を示すグラフの形状は、ペダル踏力がf3より大きく、かつ、f4未満の範囲の理想押付力を示すグラフの形状と同じである。
【0061】
そして、ペダル踏力がf5以上となって理想押付力がブレーキ鳴き領域Bから外れると、前輪11と後輪12とは理想押付力がブレーキ鳴き領域から外れるので、前輪11に対する個別押付力は、理想押付力と同じになる。
【0062】
後輪12では、ペダル踏力がf3より大きく、かつ、f4未満の範囲では、理想押付力から前輪11に対して付加した荷重(d−c)をひく。このことによって、いずれのペダル踏力においても、全てブレーキパッド28の理想押付力の合計値と、全てのブレーキパッド28の個別押付力の合計値とは、同じとなる。
【0063】
本実施形態では、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0064】
つぎに、本発明の第3の実施形態に係る制動装置を、
図10〜13を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する構成は、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0065】
本実施形態では、前輪11のブレーキ鳴き領域と後輪12のブレーキ鳴き領域とが、第1の実施形態と異なり、それゆえ、前輪11と後輪12との個別押付力が第1の実施形態と異なる。他の構造は、第1の実施形態と同じである。上記異なる点を説明する。
【0066】
なお、本実施形態では、第1の実施形態と同様に、理想押付力の合計値と個別押付力の合計値とを同じに保つことによって、制動力の合計値を保つことができる。言い換えると、前輪11に対して作用する制動力と後輪12に対して作用する制動力の合計値を、維持することができる。
【0067】
本実施形態では、第1の実施形態と同じに、第1のグループG1は、両前輪11によって構成され、第2のグループは、両後輪12によって構成される。また、第1,2のグループに対する、押付力の分担率は、第1の実施形態と同じであり、第1のグループG1に対する分担率は50パーセントであり、第2のグループG2に対する分担率は、50パーセントである。
【0068】
そして、第1のグループG1において、割り当てられた荷重をさらに各前輪11のブレーキパッド28に分担する分担率は、第1の実施形態と同じであり、50パーセントずつである。第2のグループG2において、割り当てられた荷重をさらに各後輪12のブレーキパッド28に分担する分担率は、第1の実施形態と同じであり、50パーセントずつである。
【0069】
また、前輪11に対する理想押付力と、後輪12に対する理想押付力とは、第1の実施形態と同じに、互いに同じである。
【0070】
図10は、各前輪11のディスクロータ21に対するブレーキパッド28の理想押付力とブレーキ鳴き領域とを示すグラフである。
図10の横軸と縦軸とは、
図2にと同じである。
図11は、各後輪12のディスクロータ21に対するブレーキパッド28の理想押付力とブレーキ鳴き領域とを示すグラフである。
図11の横軸と縦軸とは、
図3と同じである。
【0071】
図10に示すように、各前輪11のブレーキ鳴き領域Dは、パッド押付力が、gより大きく、かつ、h未満の範囲である。ペダル踏力がf7のときパッド押付力がgとなり、ペダル踏力がf8のときパッド押付力がhとなる。
【0072】
図11に示すように、各後輪12のブレーキ鳴き領域Eは、パッド押付力が、iより大きく、かつ、j未満の範囲である。ペダル踏力がf9のときパッド押付力がiとなり、ペダル踏力がf10のときパッド押付力がjとなる。i<g<j<hとなり、f9<f7<f10<f11となる。このため、前輪11のブレーキ鳴き領域Dの一部と、後輪12のブレーキ鳴き領域Eの一部とは、重なる。
【0073】
図12は、各前輪11のディスクロータ21に対するブレーキパッド28の個別押付力とブレーキ鳴き領域Dとを示すグラフである。
図12の横軸と縦軸とは、
図2と同じである。
図13は、各後輪12のディスクロータ21に対するブレーキパッド28の個別押付力とブレーキ鳴き領域とを示すグラフである。
図13の横軸と縦軸とは、
図3と同じである。
【0074】
図10〜13に示すように、後輪12のブレーキ鳴き領域Eは、前輪11のブレーキ鳴き領域Dよりも早い時期に現れる。ペダル踏力がf9以下の範囲では、各前輪11と各後輪12との個別押付力は、理想押付力と同じである。
【0075】
ペダル踏力がf9より大きくなると、後輪12の理想押付力がブレーキ鳴き領域Eに入る。このため、ペダル踏力がf9より大きくかつf10未満の範囲になると、各後輪12の個別押付力は、理想押付力に荷重(j−i)を付加した値になる。ペダル踏力がf9より大きく、かつ、f10未満の範囲では、後輪12の個別押付力の増加率は、理想押付力と同じである。つまり、グラフの傾きは、同じになる。さらに詳しく説明すると、ペダル踏力がf9より大きく、かつ、f10未満の範囲では、個別押付力示すグラフの形状と、理想押付力を示すグラフの形状とは、同じである。
【0076】
各後輪12では、ペダル踏力がf9より大きく、かつ、f10未満の範囲において前輪22のブレーキパッド28に対して荷重(j−i)を付加しているので、各前輪11のブレーキパッド28の個別押付力は、ペダル踏力がf9より大きく、かつ、f10未満の範囲では、理想押付力から荷重(j−i)をひいた値となる。
【0077】
前輪11のブレーキ鳴き領域Eの開始値となるf7は、f9より大きく、かつ、f10未満の値である。本実施形態では、前輪11において、ペダル踏力がf7より大きく、かつ、f10未満の範囲では、個別押付力は、理想押付力から荷重(j−i)を引いた値であるので、ブレーキ鳴き領域Dには入らない。
【0078】
後輪12では、ペダル踏力がf10になると、理想押付力がブレーキ鳴き領域Eから外れる。しかしながら、前輪11では、ペダル踏力がf10のとき、理想押付力は、g1となる。g1は、ブレーキ鳴き領域D内に入っている。このため、前輪11と後輪12との個別押付力を、理想押付力に戻してしまうと、後輪12においては、ブレーキ鳴き領域Eを外れるが、前輪11においては、ブレーキ鳴き領域Dに入ってしまう。
【0079】
このため、前輪11において、パッド押付力がf10のとき、個別押付力は、ブレーキ鳴き領域Dをスキップするhにする。そして、後輪12では、個別押付荷重は、パッド押付力がf10になると、理想押付力から、荷重(h−g1)をひいた値とする。本実施形態では、ペダル踏力がf10のとき、理想押付力から荷重(h−g1)をひいた値は、零以上であり、かつ、iより小さい。f10より大きくなると、個別押付力は、理想押付力から(h−g1)をひいた値とする。
【0080】
そして、ペダル踏力がf11になると、後輪12では、理想押付力から荷重(h−g1)を引いた値が、iになる。このため、ペダル踏力がf11より大きくなると、後輪12では、個別押付力がブレーキ鳴き領域Eに入る。さらに、前輪11では、ペダル踏力がf11のとき理想押付力は、ブレーキ鳴き領域D内にある。
【0081】
このため、後輪12では、前輪11の理想押付力がブレーキ鳴き領域Dから外れるf8になるとき、個別押付力がブレーキ鳴き領域Eの直前の値であるiになるように、ペダル踏力がf11のときの個別押付力が決定される。
【0082】
具体的には、ペダル踏力がf11より大きいときの後輪12の個別押付力は、i1になる。i1は、iより小さい値であり、本実施形態では、零より大きい値である。そして、ペダル踏力がf8より大きく、かつ、f11未満の範囲において、i1から理想押付力と増加率と同じ増加率で増加したときに、つまり、同じ傾きで増加したときに、ペダル踏力がf11のときに、個別押付力がiになる。
【0083】
前輪11では、ペダル踏力がf11より大きくなると、理想押付力に対して、ペダル踏力がf11より大きくなったときの後輪12の理想押付力であるj1からiを引いた値である(j1−i)を付加する。
【0084】
そして、ペダル踏力がf8より大きくなると、前輪11と後輪12とにおいて、ともに、理想押付力は、ブレーキ鳴き領域から外れるので、前輪11と後輪12とのブレーキパッド28の個別押付力は、理想押付力に戻る。
【0085】
本実施形態では、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0086】
つぎに、本発明の第4の実施形態に係る制動装置を、
図14〜17を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する構成は、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0087】
本実施形態では、前輪11のブレーキ鳴き領域と後輪12のブレーキ鳴き領域とが、第1の実施形態と異なり、それゆえ、前輪11と後輪12との個別押付力が第1の実施形態と異なる。他の構造は、第1の実施形態と同じである。上記異なる点を説明する。
【0088】
なお、本実施形態では、第1の実施形態と同様に、理想押付力の合計値と個別押付力の合計値とを同じに保つことによって、制動力の合計値を保つことができる。言い換えると、前輪11に対して作用する制動力と後輪12に対して作用する制動力の合計値を、維持することができる。
【0089】
本実施形態では、第1の実施形態と同じに、第1のグループG1は、両前輪11によって構成され、第2のグループG2は、両後輪12によって構成される。また、第1,2のグループに対する、押付力の分担率は、第1の実施形態と同じであり、第1のグループに対する分担率は50パーセントであり、第2のグループに対する分担率は、50パーセントである。
【0090】
第1のグループG1において、割り当てられた荷重をさらに各前輪11のブレーキパッド28に分担する分担率は、第1の実施形態と同じであり、50パーセントずつである。第2のグループにおいて、割り当てられた荷重をさらに各後輪12のブレーキパッド28に分担する分担率は、第1の実施形態と同じであり、50パーセントずつである。
【0091】
また、前輪11のブレーキパッド28に対する理想押付力と、後輪12のブレーキパッド28に対する理想押付力とは、第1の実施形態と同じであり、互いに同じである。
【0092】
図14は、前輪11のディスクロータ21に対するブレーキパッド28の理想押付力とブレーキ鳴き領域Fとを示すグラフである。
図14の横軸と縦軸とは、
図2と同じである。
図15は、後輪12のディスクロータ21に対するブレーキパッド28の理想押付力とブレーキ鳴き領域Gとを示すグラフである。
図15の横軸と縦軸とは、
図3と同じである。
【0093】
図14に示すように、各前輪11のブレーキ鳴き領域Fは、kより大きく、かつ、l未満の範囲である。ペダル踏力がf12のとき、パッド押付力がkとなり、ペダル踏力がf13のとき、パッド押付力がlとなる。
【0094】
図15に示すように、各後輪12のブレーキ鳴き領域Gは、lより大きく、かつ、m未満の範囲である。ペダル踏力がf13のときパッド押付力がlとなり、ペダル踏力がf14のとき、パッド押付力がmとなる。k<l<mとなる。
【0095】
本実施形態では、各前輪11と各後輪12とには、スキップ領域Iが共通して用いられる。スキップ領域Hは、前輪11のブレーキ鳴き領域Fと、後輪12のブレーキ鳴き領域Gとが合わさった範囲である。このため、本実施形態で用いられるスキップ領域Hは、各前輪11のブレーキ鳴き領域と、各後輪12のブレーキ鳴き領域とを含む。このため、スキップ領域Hは、kより大きく、かつ、m未満の範囲である。
【0096】
図16は、各前輪11のディスクロータ21に対するブレーキパッド28の個別押付力と、スキップ領域Hとを示すグラフである。
図17は、各後輪12ディスクロータ21に対するブレーキパッド28の個別押付力とスキップ領域Hとを示すグラフである。
図14〜17に示すように、ペダル踏力がf12より大きくなると、各前輪11と各後輪12とにおいて、ブレーキパッド28の理想押付力が、ともに、スキップ領域Iに入る。
【0097】
このため、
図16に示すように、各前輪11では、ペダル踏力がf12より大きく、かつ、f14未満の範囲では、個別押付力は、理想押付力に荷重(m−k)を付加した値になる。このことによって、各前輪11では、個別押付力は、スキップ領域Hから外れる。
図17に示すように、各後輪12のブレーキパッド28では、ペダル踏力がf12になると、個別押付力は、理想押付力から荷重(m−k)をひいた値になる。
【0098】
なお、本実施形態では、各前輪11のブレーキパッド28の理想押付力と、各後輪12のブレーキパッド28の理想押付力とは、同じ増加率を有している。つまり、グラフの傾きが同じである。このため、各前輪11と後輪12とのブレーキパッド28の個別押付力がkになったとき、各前輪11と各後輪12の理想押付力は、スキップ領域Hを出ている。このため、ペダル踏力がf14になると、各前輪11と各後輪12とのブレーキパッド28の個別押付力は、理想押付力に戻る。
【0099】
本実施形態では、前輪11のペダル鳴き領域と、後輪12のペダル鳴き領域とが互いに異なる場合において、前輪11と後輪12とに共通して用いられるスキップ領域Hを設定している。
【0100】
このように、前輪11と後輪12とのブレーキ鳴き領域を含むスキップ領域を用いても第1の実施形態同様の効果が得られる。
【0101】
つぎに、本発明の第5の実施形態に係る制動装置を、
図18〜21に基づいて説明する。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する構成は、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0102】
なお、本実施形態では、第1の実施形態と同様に、理想押付力の合計値と個別押付力の合計値とを同じに保つことによって、制動力の合計値を保つことができる。言い換えると、前輪11に対して作用する制動力と後輪12に対して作用する制動力の合計値を、維持することができる。
【0103】
本実施形態では、各前輪11と各後輪12とに対して、各々1つずつインホイールモータ30が設けられており、各々の回転が独立して制御可能である。また、制御部26は、各ピストン駆動部29の制御に加えて、各インホイールモータ30の制御を行う。
【0104】
本実施形態では、第1の実施形態と同じに、第1のグループは、両前輪11によって構成され、第2のグループは、両後輪12によって構成される。また、第1,2のグループに対する、押付力の分担率は、第1の実施形態と同じであり、第1のグループに対する分担率は50パーセントであり、第2のグループに対する分担率は、50パーセントである。
【0105】
第1のグループにおいて、割り当てられた荷重をさらに各前輪11のブレーキパッド28に分担する分担率は、第1の実施形態と同じであり、50パーセントずつである。第2のグループにおいて、割り当てられた荷重をさらに各後輪12のブレーキパッド28に分担する分担率は、第1の実施形態と同じであり、50パーセントずつである。
【0106】
また、前輪11に対する理想押付力と、後輪12に対する理想押付力とは、第1の実施形態と同じであり、互いに同じである。
【0107】
図18は、本実施形態の自動車10を示す概略図である。
図18に示すように、また、上記したように、各前輪11と各後輪12とには、各々、インホイールモータ30が設けられている。各前輪11と各後輪12とは、各々、インホイールモータ30によって回転が制御される。
【0108】
制御部26は、各ピストン駆動部29の制御に加えて、各インホイールモータ30を制御する。一例として、アクセルルペダル31の踏み込み量を検出する踏み込みセンサ32の検出結果から各インホイールモータ30に対して要求されるトルクを検出する。そして、検出されたトルクに基づいて、各車輪に設けられるインホイールモータ30を制御する。アクセルペダル31と踏み込みセンサ32とは、運転者による自動車10に対する走行を検出する検出手段の一例である。
【0109】
図19は、各前輪11と各後輪12とのディスクロータ21に対するブレーキパッド28の理想押付力とブレーキ鳴き領域Iとを示すグラフである。
図19の横軸と縦軸とは、
図2と同じである。上記したように、各前輪11と各後輪12との理想押付力とブレーキ鳴き領域とは、同じである。このため、
図19は、各前輪11と各後輪12とに対して共通して用いる。
【0110】
図19に示すように、本実施形態では、各前輪11と各後輪12のブレーキ鳴き領域は、nより大きく、かつ、p未満の範囲である。ペダル踏力がf15のとき、nとなり、ペダル踏力がf16のとき、pとなる。
【0111】
図20は、各前輪11のディスクロータ21に対するブレーキパッド28の個別押付力とブレーキ鳴き領域Iとを示すグラフである。
図20の横軸と縦軸とは、
図2と同じである。
図21は、各後輪12のディスクロータ21に対するブレーキパッド28の個別押付力とブレーキ鳴き領域Iとを示すグラフである。
図21の横軸と縦軸とは、
図3と同じである。
【0112】
図19〜21に示すように、ペダル踏力がf15以下の範囲では、各前輪11と各後輪12とのブレーキパッド28の個別押付力は、理想押付力と同じである。
図20に示すように、各前輪11では、ペダル踏力がf15より大きく、かつ、f16未満の範囲では、個別押付力は、理想押付力に荷重(p−n)を付加した値である。
図21に示すように、各後輪12では、ペダル踏力がf15より大きく、かつ、f16未満の範囲では、個別押付力は、理想押付力から荷重(p−n)をひいた値である。
【0113】
図21に示すように、ペダル踏力が、f15より大きく、かつf17以下の範囲では、各後輪12のブレーキパッド28の個別押付力は、零未満となる。個別押付力が零未満となることは、車輪を回転することを示す。
【0114】
制御部26は、個別押付力が零未満の場合に対応する、インホイールモータ30を回転する際のトルクを予め記憶している。複数の車輪において個別押付力が零未満となったとき、この車輪のインホイールモータ30に上記記憶しているトルクを発生させることによって、一部の車輪のブレーキパッド28に対しては理想押付力よりも大きな値の個別押付力が作用するとともに、この押付荷重の過剰分を打ち消すように残りの車輪が回転しようとするので、自動車10としては、各車輪のブレーキパッド28に理想押付力が作用した状態と同じ状態になる。つまり、零未満の個別押付力に対応する回転を記憶しており、この回転を個別押付力に置き換えることによって、全ての車輪のブレーキパッド28に対する理想押付力の合計と、全ての車輪のブレーキパッド28に対する個別押付力との合計とを、一致させている。
【0115】
本実施形態では、各車輪の回転を独立して制御できるインホイールモータ30を備えることによって、いずれかの車輪のブレーキパッド28の個別押付力が零未満となる場合であっても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0116】
なお、インホイールモータ30は、各車輪の回転を独立して制御できる手段の一例である。
【0117】
つぎに、本発明の第6の実施形態に係る制動装置を、
図22〜28を用いて説明する。なお、第5の実施形態と同様の機能を有する構成は、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0118】
本実施形態では、各車輪のブレーキ鳴き領域が、互いに異なる。他の構造は、第5の実施形態と同じである。上記異なる点を説明する。
【0119】
なお、本実施形態では、第1の実施形態と同様に、理想押付力の合計値と個別押付力の合計値とを同じに保つことによって、制動力の合計値を保つことができる。言い換えると、前輪11に対して作用する制動力と後輪12に対して作用する制動力の合計値を、維持することができる。
【0120】
図22は、車体右側の前輪11のディスクロータ21に対するブレーキパッド28の理想押付力とブレーキ鳴き領域Jとを示すグラフである。
図22の横軸と縦軸とは、
図2と同じである。
図22に示すように、右側の前輪11のブレーキ鳴き領域Jは、qより大きく、かつ、r未満の範囲である。ペダル踏力がf18のとき、パッド押付力がqとなり、ペダル踏力がf19のとき、パッド押付力がrとなる。
図23は、車体左側の前輪11のディスクロータ21に対するブレーキパッド28の理想押付力とブレーキ鳴き領域Kとを示すグラフである。
図23の横軸と縦軸とは、
図2と同じである。
図23に示すように、左側の前輪11のブレーキ鳴き領域Kは、零より大きく、かつ、r未満の範囲である。
【0121】
図24は、車体右側の後輪12のディスクロータ21に対するブレーキパッド28の理想押付力とブレーキ鳴き領域Lとを示すグラフである。
図24の横軸と縦軸とは、
図3と同じである。
図24に示すように、右側の後輪12のブレーキ鳴き領域は、rより大きく、かつ、s未満の範囲である。ペダル踏力がf20のとき、パッド押付力がsになる。
【0122】
図25は、車体左側の後輪12のディスクロータ21に対するブレーキパッド28の理想押付力とブレーキ鳴き領域Mとを示すグラフである。
図25の横軸と縦軸とは、
図3と同じである。
図25に示すように、ブレーキ鳴き領域は、ペダル踏力が、tより大きく、かつ、u未満の範囲である。ペダル踏力がf21のとき、パッド押付力がtとなり、ペダル踏力がf22のとき、パッド押付力がuになる。各パッド押付力は、0<q<t<r<u<sの関係を有している。
【0123】
図22〜24に示すように、各車輪において、理想押付力は、同じである。本実施では、第1のグループの個別押付力と、第2のグループの個別押付力とは、スキップ領域Nをスキップするように設定されている。スキップ領域Nは、全ての車輪のブレーキ鳴き領域を含んでいる。具体的には、スキップ領域Jは、零より大きく、かつ、s未満の範囲である。
【0124】
図26は、第1のグループG1の個別押付力、つまり、各前輪11のディスクロータ21に対するブレーキパッド2の個別押付力を示すグラフである。
図26の横軸と縦軸とは、
図2と同じである。
図27は、第2のグループG2の個別押付力、つまり、各後輪12のディスクロータ21に対するブレーキパッド28の個別押付力を示すグラフである。
図27の横軸と縦軸とは、
図2と同じである。
【0125】
図22〜27に示すように、各前輪11の理想押付力と各後輪12の理想押付力とは、ペダル踏力がf20まで、スキップ領域Nに入っている。このため、
図27に示すように、に示すように、各前輪11の個別押付力は、スキップ領域Nをスキップするように、ペダル踏力が零より大きく、かつ、f20未満の範囲では、理想押付力に対して、荷重sを付加した値である。
図27に示すように、各後輪12の個別押付力は、スキップ領域Nをスキップするように、ペダル踏力が零より大きく、かつ、f20未満の範囲では、理想押付力から荷重sをひいた値である。
【0126】
なお、
図27に示すように、ペダル踏力が零より大きく、かつ、f20未満の範囲では、各後輪12の個別押付力は、零未満となる。このため、制御部26は、第5の実施形態と同様に、個別押付力が零未満となる場合は、インホイールモータ30に零未満の個別押付力に対応するトルクを発生させて回転させる。
【0127】
本実施形態のように、各車輪のブレーキ鳴き領域が、それぞれ異なるものであっても、各車輪のブレーキ鳴き領域を含むスキップ領域を用いることによって、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0128】
つぎに、本発明の第7の実施形態に係る制動装置を、
図28を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する構成は、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0129】
なお、本実施形態では、第1の実施形態と同様に、理想押付力の合計値と個別押付力の合計値とを同じに保つことによって、制動力の合計値を保つことができる。言い換えると、前輪11に対して作用する制動力と後輪12に対して作用する制動力の合計値を、維持することができる。
【0130】
図28は、本実施形態の自動車10を示す概略図である。第1の実施形態では、ピストン27は、ピストン駆動部29によって進退される電動式である。本実施形態では、ピストン27は、電動式ではなく、油圧式である。このため、本実施形態では、ピストン駆動部29にかえて、油圧制御ユニット40を備えている。油圧制御ユニット40と各ピストン27との間には、油圧配管41が設けられている。油圧制御ユニット40は、制御部26によって動作が制御される。制御部26は、各車輪のブレーキパッド28に個別押付力が発生するように、油圧制御ユニット40を制御する。油圧制御ユニット40は、制御部26の制御によって、油圧配管41内の圧力を高める。このことによって、各ディスクロータ21とブレーキパッド28との間に個別押付力が発生する。
【0131】
本実施形態であっても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。なお、第2〜6の実施形態においても、本実施形態同様に、ピストン27が油圧によって作動してもよい。
【0132】
なお、第1〜7の実施形態では、理想押付力に対してブレーキ鳴き領域を避けるべくスキップする領域は、ブレーキ鳴き領域に基づいて設定されている。より具体的には、第1,2の実施形態では、スキップ領域として、ブレーキ鳴き領域が用いられた。第3の実施形態では、スキップ領域として、第1のグループG1のブレーキ鳴き領域が用いられた。第4の実施形態では、第1のグループG1のブレーキ鳴き領域と第2のグループG2のブレーキ鳴き領域とを組み合わせた領域をスキップ領域とした。第5の実施形態では、スキップ領域として、ブレーキ鳴き領域を用いた。第6の実施形態では、スキップ領域として、全て車輪のブレーキパッドのブレーキ鳴き領域に共通する領域を用いた。
【0133】
これ以外にも、スキップ領域は、ブレーキ鳴き領域を含む安全領域であってもよい。ここで言う安全領域は、ブレーキ鳴き領域に入る荷重よりも小さい荷重から、ブレーキ鳴き領域から出る荷重よりも大きい荷重の範囲である。具体的には、ブレーキ鳴き領域が、パッド押し荷重x1〜y1の範囲であるとき、安全領域は、x2〜y2の範囲とし、x2<x1<y1<y2とする。このように、安全領域を用いることによって、自動車10が走行を続けることによってブレーキ鳴き領域が変化してもブレーキ鳴きの発生を抑制することができる。
【0134】
また、第1〜7の実施形態では、複数の車輪をグループ分けする例として、第1,2のグループG1,G2を用いた。そして、第1のグループG1を一対の前輪11で構成し、第2のグループG2を一対の後輪12で構成した。他の例としては、第1のグループを右側の前輪11と左側の後輪12とで構成し、第2のグループを左側の前輪11と右側の後輪12とで構成してもよい。複数の車輪を複数のグループに分ける場合、各グループを構成する車輪の組み合わせは、車両が効率よく減速できるように決定することができる。
【0135】
また、第1〜7の実施形態では、ブレーキペダル24の踏力に対応するブレーキパッド28の押付力の分担率として、一例として、25パーセントを用いている。分担率は、車両が効率よく減速できるように決定することができる。
【0136】
第1〜7の実施形態において、ブレーキパッド28は、複数の車輪の各々に対して設けられて、車輪側に押し付けられることによって車輪の回転を止める押圧部の一例である。なお、第1〜7の実施形態では、車輪と一体に回転するディスクロータ21にブレーキパッド28が押し付けられることによって車輪の回転が減速する。このようなディスク式以外であってもよく、例えば、ドラム式であってもよい。車輪側に押し付けられるとは、車輪または車輪と一体に回転するものであって押し付けることによって車輪の回転を減速できるものに押し付けられることを示す。
【0137】
第1〜6の実施形態において、ピストン駆動部29は、前記押圧部に押付力を付勢する付勢手段の一例である。第7の実施形態において、油圧制御ユニット40と油圧配管41とは、押圧部に押付力を付勢する付勢手段の一例である。
【0138】
第1〜7の実施形態において、ブレーキペダル24は、押圧部を車輪側に押し付ける際に操作されるブレーキ操作部の一例である。また、第1〜7の実施形態では、ブレーキ操作部への操作として、ペダル踏力を用いている。他の例としては、ブレーキペダルの踏み込み量を用いてもよい。
【0139】
第1〜7の実施形態において、制御部26は、ブレーキ操作部に対する操作に応じて複数の押圧部の各々に対して要求される個別押付力が各押圧部に発生するように付勢手段を制御する制御手段の一例である。
【0140】
第5,6の実施形態において、インホイールモータ30は、各車輪を独立して回転制御する回転手段の一例である。
【0141】
第1〜7の実施形態では、制動装置は、一例として自動車10に用いられている。他の例としては、電車などに用いられてもよい。
【0142】
第1〜7の実施形態では、1対の前輪11は、本発明で言う第1のグループの一例であり、1対の後輪12は、本発明で言う第2のグループの一例である。また、第1〜7の実施形態では、前輪11に対して、理想押付荷重を個別押付荷重にするべく増減した荷重は、本発明で言う第1の所定量の一であり、後輪12に対して、理想押付荷重を個別押付荷重にするべく増減した荷重は、本発明で言う第2の所定量の一例である。
【0143】
さらに、第1の実施形態で説明したように、第1〜7の実施形態では、理想押付力の合計値と個別押付力の合計値とを同じに保つことによって、制動力を維持することができる。このため、前輪11に対する増減量と、後輪12に対する増減量の合計値は、零となる。つまり、第1の所定量の絶対値と第2の所定量の絶対値とが同じとなる。
【0144】
第1〜7の実施形態では、自動車10が減速した場合であっても前輪11の軸重反力と後輪12の軸重反力とが変化しない場合を想定して、説明した。
【0145】
一方、自動車10が減速する場合、前輪11の軸重反力と後輪12の軸重反力とが、自動車10の減速の程度によって変化する場合を想定する。前輪11の軸重反力と後輪12の軸重反力とが変化することによって、自動車10の全体として制動力を維持するべく、前輪11に対する押付荷重の増減量の絶対値と、後輪12に対する押付荷重の増減量の絶対値とが同じにならない場合がある。つまり、第1の所定量の絶対値と、第2の所定量の絶対値とが異なるようになる。
【0146】
この点について、
図29を具体的に説明する。
図29は、自動車10を示す概略図である。
図29に示すように、自動車10の総重量をWとする。前輪11の軸重反力をWfとする。後輪12の軸重反力をWrとする。また、自動車10の減速度が零の場合の前輪11の軸重反力をWf0とする。自動車10の加速度が零の場合の後輪12の軸重反力をWr0とする。W=Wf0+Wr0となる。
【0147】
自動車10が載置される面Qから自動車10の重心Pまでの距離をHとする。自動車10の減速度数をGとする。なお、減速度数Gは、自動車10の減速度をαとし、重力加速度をgとすると、G=α/gとなる。
【0148】
本実施形態では、一例として、制御部26は、自動車10の踏力検出センサ25の検出結果に基づいて、自動車10の減速度を検出する。なお、自動車10の減速度を検出するために、自動車10は、前後加速度センサと、車輪速センサと、操舵角センサとを備えてもよい。車輪速センサは、車輪の回転数を検出する。操舵角センサは、ハンドルの操舵角を検出する。制御部26は、これら複数のセンサの検出結果を用いて、自動車10の減速度を検出する。このように、自動車10の減速度を検出する手段は、減速度の精度を高めるために、複数のセンサを備えて構成されてもよく、これら複数のセンサの検出結果を利用することができる。
【0149】
前輪11の車軸11aつまり回転中心から後輪12の車軸12aつまり回転中心までの車体前後方向に沿う距離をLとする。重心Pから車軸11aまでの車体前後方向に沿う長さをaとする。重心Pから車軸12aまでの車体前後方向に沿う長さをbとする。L=a+bとなる。
【0150】
前輪11に作用する制動力をFfとすると、Ff=G×(Wf0+(G×H×W/L))となる。後輪12に作用する制動力をFrとすると、Fr=G×(Wr0−(G×H×W/L))となる。
【0151】
スキップ領域を避けるとともに、自動車10に作用する制動力を維持するためには、前輪11に作用する制動力Ffに対する増加量と、後輪12の作用する制動力Frの減少量とを同じとするとともに、前輪11に作用する制動力Frfに対する減少量と、後輪12に作用する制動力Frに対する増加量とを同じにする。ここで、Ff/Fr=Xとする。
【0152】
一方、第1の実施形態で説明したように、前輪11に作用する制動力は、Ff=((ブレーキパッドの数)×(押付力)×(μ1)×(前輪11の有効半径)/(前輪11の半径)となる。μ1は、前輪11でのブレーキパッド28とディスクロータ21間の摩擦係数である。前輪11の半径は、第1の実施形態で説明した、前輪11のタイヤ半径である。
【0153】
後輪12に作用する制動力は、Fr=((ブレーキパッドの数)×(押付力)×(μ2)×(後輪12の有効半径)/(後輪12の半径)となる。μ2は、後輪12でのブレーキパッド28とディスクロータ21間の摩擦係数である。後輪12の半径は、後輪12のタイヤ半径である。
【0154】
第1の実施形態で説明したように、一例としてμ1=μ2とし、前輪11に対するブレーキパッドの数と後輪12に対するブレーキパッドの数とを同じとし、前輪11の有効半径と後輪12の有効半径とを同じとし、前輪11の半径と後輪12の半径とを同じとした。
【0155】
このため、自動車10の作用する制動力を維持するためには、(((ブレーキパッドの数)×(押付力)×(μ1)×(前輪11の有効半径)/(前輪11の半径))/(((ブレーキパッドの数)×(押付力)×(μ2)×(後輪12の有効半径)/(後輪12の半径))=Ff/Fr=Xとするために、前輪11に作用する押付荷重の増減量に対してFf/Frをかけたものを、後輪12に作用する押付荷重の増減量とする。
【0156】
つまり、自動車10に作用する制動力を維持するために、前輪11に作用する押付力に対する増減量、つまり第1の所定量と、後輪12に作用する押付力に対する増減量、つまり第2の所定量とが同じにならない。このため、第1〜7の実施形態の個別押付力は、上記のように、減速時における前輪11の軸重反力と後輪12の軸重反力とが変化することを考慮して決定される。
【0157】
なお、上記は、第1の所定量と第2の所定量とが同じにならない場合の一例を説明したが、他の条件においても、第1の所定量と第2の所定量とが同じにならない場合がある。他の条件の例としては、前輪11でのブレーキパッドとディスクロータ間の摩擦係数μ1と、後輪1でのブレーキパッドとディスクロータ間の摩擦係数μ2とが異なる場合や、前輪12の有効半径と後輪12の有効半径とが異なる場合などである。
【0158】
このように、第1,2の所定量は、スキップ領域を避ける場合に車両に作用する制動力を維持するように決定されるものであって、互いに同じ値となる場合、または、互いに異なる値となる場合がある。
【0159】
また、第1〜7の実施形態では、
図2〜28に示すように、ブレーキ操作部の一例であるブレーキペダルに作用する踏力と、パッド押付力との関係を示すマップが用いられた。踏力は、ブレーキ操作部に対する操作に起因する変数である。他の例としては、ブレーキ操作に対する踏力に代えて、ブレーキ操作部の変位であるストロークとパッド押付力との関係を示すマップが用いられてもよい。
【0160】
また、自動車10は、自動車10内の温度を検出する温度センサを備えて、
図2〜28に示すように、ブレーキ操作部に対する操作とパッド押付荷重との関係を示すマップが、温度検出センサの検出結果に応じて変更されてもよい。これは、押圧部と車輪との間の摩擦力が車内の温度によって変化するためであり、車内の温度に応じて適切に車両を停止または減速できるように設定されたマップを用いることが好ましいためである。
【0161】
この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。さらに、異なる実施形態の構成を組み合わせてもよい。
以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
車両に取り付けられた複数の車輪の各々に対して設けられて、前記車輪側に押し付けられることによって前記車輪の回転を止める押圧部と、前記押圧部に押付力を付勢する付勢手段と、前記押圧部を前記車輪側に押し付ける際に操作されるブレーキ操作部と、前記ブレーキ操作部に対する操作に応じて前記複数の押圧部の各々に対して要求される理想押付力が各押圧部に発生するように前記付勢手段を制御する制御手段とを具備し、前記複数の押圧部は、第1のグループと第2のグループとに同数ずつ区分され、前記制御手段は、前記第1のグループ及び前記第2のグループにおいて、ブレーキ鳴きを発生するブレーキ鳴き領域を含む押付力の領域であるスキップ領域をそれぞれ設定し、前記第1のグループもしくは前記第2のグループの前記理想押付力が前記スキップ領域に該当する場合は、前記第1のグループもしくは前記第2のグループのうちの一方の前記理想押付力を第1の所定量増加させるとともに、他方の前記理想押付力を第2の所定量減少させることによって、前記第1のグループ及び前記第2のグループ共に前記理想押付力が前記スキップ領域の範囲外になるようにし、前記第1のグループ及び前記第2のグループで発生する制動力を維持するように前記理想押付力を調整することを特徴とする制動装置。
前記制御手段は、前記ブレーキ操作部に対する操作の踏力もしくはストロークの大きさに応じた前記車両の前記ブレーキ鳴き領域のマップを有し、前記マップに基づいて前記スキップ領域を設定することを特徴とする請求項1に記載の制動装置。
前記車両周辺もしくは前記車両内の温度を検知する温度センサを具備し、前記マップは、前記温度センサによって検知された温度に応じて変更されることを特徴とする請求項2に記載の制動装置。
各車輪を独立して回転制御する回転手段を具備し、前記制御手段は、前記車輪に対する前記理想押付力が零未満になると、前記理想押付力が零未満となった車輪に対して当該零未満の押付力に対応する回転を発生するよう前記回転手段を制御し、前記回転を前記零未満の押付力に置き換えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の制動装置。