(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記スピーカは、上記開放空間を区画する壁面のうち、上記幅方向に対向する一対の側壁面の一方において、上記音声出力面が上記開放空間に露出されている請求項3に記載の画像記録装置。
上記スピーカは、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)によって形成された請求項1から5のいずれかに記載の画像記録装置。
上記搬送機構は、上記収容部に収容されたシートを搬送路へ給送する給送ローラと、上記記録部より上記搬送向きの上流側に配置され、上記給送ローラによって給送されたシートを上記搬送向きに搬送する搬送ローラと、を備え、
上記記憶部は、上記給送ローラの上記動作音の位相を反転させた上記相殺音を記憶し、
上記制御部は、上記スピーカに、上記給送ローラによるシートの給送が開始されたタイミングで上記相殺音の出力を開始させ、上記搬送ローラによるシートの搬送が開始されたタイミングで上記相殺音の出力を停止させる請求項7又は8に記載の画像記録装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のようにスピーカを取り付ける場合、筐体側面に設けられた小孔を通じて異物(液体、金属片など電気系統に著しい問題を引き起こすもの)、或いは静電気(回路上の素子を破壊する原因になる)の侵入による装置故障の恐れがある。また、スピーカの前方に空間が確保されていない従来の取り付け方法では、十分な音量及び音域を確保することは難しい。一方、特許文献1に開示されているように、スピーカユニットを外付けするのは、装置の小型化の観点から現実的ではない。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、装置内部への異物等の侵入を防止し、且つスピーカの音質を向上させた画像記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明に係る画像記録装置は、シートが収容される収容部と、上記収容部に収容されたシートを搬送路の搬送向きに搬送する搬送機構と、上記搬送機構によって搬送路を搬送されるシートに画像を記録する記録部と、上記収容部を保持した状態で外部に向けて開口する開放空間が内部に形成されており、且つ上記開放空間の周りに上記搬送機構及び上記記録部を収納する筐体と、上記筐体の内部に配置され、上記開放空間に向けて音声を出力するスピーカとを備える。
【0008】
上記構成によれば、スピーカから出力される音声は、開放空間を通って開口から装置外部に出力される。このように、スピーカの前方に容積の大きな空間を設けることにより、スピーカの音質が向上する。また、スピーカの音を出力するための開口(すなわち、小孔)を筐体の壁面に設ける必要がないので、装置内部への異物等の侵入を防止できる。
【0009】
(2) 一例として、上記スピーカは、上記開放空間に連通する音響空間の内部に、音声を出力する音声出力面を向けて配置されてもよい。
【0010】
上記構成のように、スピーカの音声出力面は、開放空間に露出している必要はなく、開放空間に連通する音響空間に面していればよい。これにより、画像記録装置の内部におけるスピーカの配置の自由度が高まる。
【0011】
(3) 上記開放空間は、上記筐体の前面の幅方向の中央において開口し、且つ上記筐体の内部を奥行き方向に向けて形成されていてもよい。そして、上記音響空間は、上記筐体の内部において、上記開放空間と上記幅方向に隣接する位置に形成されていてもよい。
【0012】
(4) さらに、上記記録部は、上記搬送向きと直交する走査方向に往復動するキャリッジと、上記キャリッジに搭載され、シートにインクを吐出する記録ヘッドとを備えている。上記筐体は、上記開放空間と上記幅方向に隣接し且つ上記前面に接する位置に設けられ、上記記録ヘッドに供給されるインクを貯留するインクカートリッジを収納するカートリッジ収納部と、上記カートリッジ収納部とその後方側において隣接する位置に設けられ、上記記録ヘッドから吐出された廃インクを貯留する廃インク貯留部とを更に収納している。そして、上記音響空間は、上記廃インク貯留部とその後方側において隣接する位置に形成されてもよい。
【0013】
(5) 好ましくは、上記音響空間は、上記開放空間に連通する手前で互いに合流する第1空間と第2空間とに区画されている。そして、上記スピーカは、上記音声出力面を上記第1空間に向け、且つ上記音声出力面の背面を上記第2空間に向けて配置されている。
【0014】
上記構成によれば、筐体の内部においてバスレフ型のスピーカを実現できる。その結果、特に低音域における音質が向上する。
【0015】
(6) また、上記開放空間は、上記筐体の前面の幅方向の中央において開口し、且つ上記筐体の内部を奥行き方向に向けて形成されていてもよい。そして、上記スピーカは、上記筐体の内部で上記開放空間を区画する壁面において、音声を出力する音声出力面が上記開放空間に露出されていてもよい。
【0016】
(7) 一例として、上記スピーカは、上記開放空間を区画する壁面のうち、上記幅方向に対向する一対の側壁面の一方において、上記音声出力面が上記開放空間に露出されている。
【0017】
(8) 他の例として、上記搬送機構及び上記記録部は、上記筐体の内部において、上記開放空間と奥行き方向に隣接する位置に配置されている。そして、上記スピーカは、圧電体に電圧が印加されることによって音声を出力する圧電型のスピーカであり、上記開放空間を区画する壁面のうち、上記開口に対向する奥壁面において、上記音声出力面が上記開放空間に露出されている。
【0018】
上記構成によれば、スピーカから出力された音声が開口から外部に直接放出されるので、十分な音量を確保するのが容易となる。しかしながら、開放空間の奥側には搬送機構及び記録部が設けられており、スピーカを配置する空間は極めて小さい。そこで、厚み寸法を薄くできる圧電型のスピーカを採用することにより、上述の小さな空間に配置することが可能となる。
【0019】
(9) 一例として、上記スピーカは、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)によって形成されてもよい。
【0020】
但し、本発明の画像記録装置に搭載されるスピーカはMEMSによって形成されたものに限定されず、既存のあらゆるスピーカを採用することができる。例えば、ピエゾ素子(圧電体)に電圧を印加することによって音声を出力する周知の圧電型のスピーカを採用してもよい。
【0021】
(10) 好ましくは、当該画像記録装置は、更に、上記搬送機構又は上記記録部の動作によって生じる動作音の位相を反転させた相殺音を記憶する記憶部と、上記記憶部に記憶されている上記相殺音を、上記搬送機構又は上記記録部の動作に同期させて上記スピーカに出力させる制御部とを備える。
【0022】
上記構成によれば、動作音と相殺音とが開放空間内で互いに打ち消し合ってから外部に出力されるので、静粛性に優れた画像記録装置を実現できる。なお、「搬送機構又は記録部の動作によって生じる動作音」とは、搬送機構又は記録部そのものから出力される音のみならず、例えば、搬送機構によって搬送されるシートの変形に伴う音等をも含むものとする。
【0023】
(11) 一例として、上記搬送機構は、上記収容部に収容されたシートを搬送路へ給送する給送ローラと、上記記録部より上記搬送向きの上流側に配置され、上記給送ローラによって給送されたシートを上記搬送向きに搬送する搬送ローラとを備える。上記記憶部は、上記給送ローラの上記動作音の位相を反転させた上記相殺音を記憶する。上記制御部は、上記スピーカに、上記給送ローラによるシートの給送が開始されたタイミングで上記相殺音の出力を開始させ、上記搬送ローラによるシートの搬送が開始されたタイミングで上記相殺音の出力を停止させる。
【0024】
(12) 他の例として、上記搬送ローラは、予め定められた改行幅単位でシートを間欠的に搬送する。上記記憶部は、上記搬送ローラの上記動作音の位相を反転させた上記相殺音を記憶する。上記制御部は、上記スピーカに、上記搬送ローラによる上記改行幅単位の搬送が開始されたタイミングで上記相殺音の出力を開始させ、上記搬送ローラによる上記改行幅単位の搬送が終了したタイミングで上記相殺音の出力を停止させる。
【0025】
(13) さらに他の例として、上記記録部は、上記搬送向きと直交する走査方向に往復動するキャリッジと、上記キャリッジに搭載されてシートにノズルからインクを吐出する記録ヘッドとを備え、上記記録ヘッドのノズルが形成された領域に対向するシートのノズル対向領域毎に画像記録を行うものである。上記記憶部は、上記記録部の上記動作音の位相を反転させた上記相殺音を記憶する。上記制御部は、上記スピーカに、上記記録部による上記ノズル対向領域に対する画像記録が開始されるタイミングで上記相殺音の出力を開始させ、上記記録部による上記ノズル対向領域に対する画像記録が終了するタイミングで上記相殺音の出力を停止させる。
【0026】
(14) さらに他の例として、上記搬送機構は、上記記録部より上記搬送向きの下流側に配置され、上記記憶部によって画像が記録されたシートを上記搬送向きに搬送する排出ローラを備える。上記記憶部は、上記排出ローラの上記動作音の位相を反転させた上記相殺音を記憶する。上記制御部は、上記スピーカに、上記排出ローラによるシートの搬送が開始されたタイミングで上記相殺音の出力を開始させ、シートの後端が上記排出ローラを通過したタイミングで上記相殺音の出力を停止させる。
【0027】
(15) 好ましくは、当該画像記録装置は、上記搬送機構又は上記記録部の動作によって生じる動作音を収音するマイクを更に備える。そして、上記制御部は、上記マイクで収音された上記動作音の位相を反転させた相殺音を生成し、生成した上記相殺音を上記スピーカに出力させる。
上記構成によれば、マイクによって実際に収音された動作音を打ち消すことができるので、使用環境等に依存する動作音の変化等に柔軟に対応できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、装置内部への異物等の侵入を防止し、且つスピーカの音質を向上させた画像記録装置を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、以下の説明では、複合機10が使用可能に設置された状態(
図1の状態)を基準として上下方向7が定義され、開口13が設けられている側を手前側(正面)として前後方向8が定義され、複合機10を手前側(正面)から見て左右方向9が定義される。
【0031】
[複合機10]
図1に示されるように、本発明の画像記録装置の一例である複合機10は、概ね薄型の直方体に形成されており、下部にインクジェット記録方式のプリンタ部11が設けられている。また、複合機10は、ファクシミリ機能及びプリント機能などの各種の機能を有している。
【0032】
図1に示されるように、プリンタ部11は、前面に開口13(本発明の開口の一例)が形成された筐体14(本発明の筐体の一例)を有している。給紙トレイ20(本発明の収容部の一例)は、開口13から前後方向8に挿抜可能である。給紙トレイ20には、所望のサイズの記録用紙(本発明のシートに相当)が載置される。排紙トレイ21は、給紙トレイ20の上側に配置される。なお、本発明の収容部は上述の給紙トレイ20の形態に限定されず、給紙カセット或いは給紙台等のように、複数のシートを収容可能なあらゆる形態が包含される。
【0033】
また、
図2に示されるように、プリンタ部11は、記録用紙を給送する給紙部15と、記録用紙を搬送する搬送ローラ対58及び排出ローラ対59と、記録用紙に画像を記録するインクジェット記録方式の記録部24(本発明の記録部の一例)とを主に備える。プリンタ部11は、外部機器から受信した印刷データなどに基づいて、記録用紙に画像を記録する。
【0034】
[フレーム70]
筐体14は、その内部にフレーム70(
図3及び
図4参照)を収納している。フレーム70は、鉄やステンレス等の金属で構成され、プリンタ部11を構成する各部材を保持する。
図2及び
図4に示されるように、フレーム70によって区画される筐体14の内部には、開放空間16が形成されている。
【0035】
開放空間16は、給紙トレイ20及び排紙トレイ21を収納する空間である。開放空間16は、給紙トレイ20及び排紙トレイ21を収納した状態において、開口13を通じて外部と連通している。すなわち、給紙トレイ20及び排紙トレイ21は、開口13を完全に閉鎖しない。また、開放空間16は、開口13からプリンタ部11の内部を前後方向8(本発明の奥行き方向の一例)に向かって延在する空間である。より詳細には、前後方向8において、開放空間16は、その上側の領域がプリンタ部11の前面から中央付近にまで延在し、その下側の領域がプリンタ部11の前面から最奥部付近にまで延在している。そして、この開放空間16の周りには、搬送路65及びプリンタ部11の各構成要素が配置される。
【0036】
[給紙部15]
図2に示されるように、給紙部15は、給紙トレイ20の上側、すなわち、開放空間16の上側に設けられている。給紙部15は、給紙ローラ25(本発明の給送ローラの一例)、給紙アーム26、及び複数のギヤが噛合されてなる駆動伝達機構27を備えている。給紙ローラ25は、給紙アーム26の先端部で軸支されている。給紙アーム26は、基端部に設けられた軸28を中心として、矢印29の方向に回動する。これにより、給紙ローラ25は、給紙トレイ20に載置された記録用紙に当接及び離間が可能である。給紙ローラ25は、駆動伝達機構27によって給紙用モータ102(
図6参照)の駆動力が伝達されて回転する。給紙ローラ25は、給紙トレイ20上に積載された記録用紙のうち、一番上側の記録用紙に当接された状態で、当該記録用紙を他の記録用紙から分離して後述する湾曲路66へ供給する。以下、上述の動作を「記録用紙のピックアップ」と表記する。
【0037】
[搬送路65]
図2に示されるように、プリンタ部11の内部には、給紙トレイ20の先端(後方側の端部)から記録部24を経て排紙トレイ21に至るまでの区間に、記録用紙を案内可能な搬送路65が形成されている。搬送路65は、給紙トレイ20の先端から搬送ローラ対58に至る区間に形成された湾曲路66と、搬送ローラ対58から記録部24の直下を経て排紙トレイ21に至る区間に形成された直線路67とに区分される。
【0038】
湾曲路66は、給紙トレイ20の先端付近から搬送ローラ対58に亘って延設された湾曲状の通路である。湾曲路66は、開放空間16の後方側に位置する。記録用紙は、湾曲路66を搬送方向(
図2において一点鎖線で示される方向)に沿って搬送向き(
図2において一点鎖線に付された矢印の向き)に案内される。湾曲路66は、搬送ローラ対58を挟んで直線路67と連続している。これにより、記録用紙は、湾曲路66を介して直線路67に案内される。湾曲路66は、所定間隔を隔てて互いに対向する内側ガイド部材19及び外側ガイド部材17によって区画されている。
【0039】
直線路67は、湾曲路66における搬送向きの下流端、つまり搬送ローラ対58から排紙トレイ21に亘って前後方向8に延設された直線状の通路である。直線路67は、開放空間16の上側に位置する。記録用紙は、直線路67を搬送向き(
図2において二点鎖線に付された矢印の向き)に案内される。記録用紙は、記録部24によって画像が記録された後に排紙トレイ21に排出される。直線路67は、記録部24が設けられている箇所において、所定間隔を隔てて互いに対向する記録部24及びプラテン42によって区画されており、記録部24が設けられていない箇所において、所定間隔を隔てて互いに対向する上側ガイド部材52及び下側ガイド部材53よって区画されている。
【0040】
[記録部24]
図2に示されるように、記録部24は、直線路67の上側に設けられている。すなわち、記録部24は、開放空間16の上側で且つ奥側に位置する。記録部24は、ノズルからインクを微小なインク滴として吐出する記録ヘッド38(本発明の記録ヘッドの一例)と、記録ヘッド38を搭載して主走査方向、つまり
図2の紙面に垂直な方向である左右方向9へ往復移動するキャリッジ40(本発明のキャリッジの一例)とを備えている。
【0041】
キャリッジ40に搭載された記録ヘッド38には、後述するインクカートリッジ33、34、35、36(
図3参照)からインクが供給される。記録ヘッド38の下面のノズル面39には、ノズルが形成されている。ノズルは、直線路67の下方に記録部24と所定間隔を空けて対向するプラテン42に向けて、インク滴を吐出する。搬送向きに搬送される記録用紙は、プラテン42によって支持される。
【0042】
以上より、キャリッジ40が主走査方向へ往復動されながら、ノズルからプラテン42上を搬送される記録用紙に向けてインク滴が吐出される。これにより、搬送ローラ対58によって搬送された記録用紙のうち、ノズル面39に対向するノズル対向領域(本発明のノズル対向領域に相当)に画像が記録される。なお、ノズル対向領域は、プラテン42に支持されている記録用紙のうち、キャリッジ40が主走査方向に往復動する際にノズル面39に対向し得る領域であり、ノズル面39の搬送向きの最上流及び最下流に位置するノズルの距離に相当する幅を持ち、且つ主走査方向に延びる帯状の領域である。
【0043】
図3に示されるように、キャリッジ40は、プリンタ部11の内部に設けられたフレーム70に取り付けられたガイドレール45、46によって支持されている。筐体14の後方側の領域において、ガイドレール45、46は、前後方向8に対向して配置されると共に、各々が左右方向9に延設されている。キャリッジ40は、ガイドレール45、46を跨ぐようにして左右方向9に移動可能に載置されている。
【0044】
ガイドレール45の上面には、駆動プーリ(不図示)と従動プーリ48と無端環状のベルト49とが配置されている。駆動プーリ及び従動プーリ48は、ガイドレール45の左右方向9の両端付近に設けられている。駆動プーリ及び従動プーリ48を架け渡すように、無端環状のベルト49が張架されている。駆動プーリの軸には、キャリッジ40を駆動させるためのキャリッジ駆動用モータ103の駆動軸が連結されている。キャリッジ駆動用モータ103の回転駆動力が駆動プーリに伝達されると、駆動プーリの回転によりベルト49が周運動する。キャリッジ40は、その底面側においてベルト49に連結されている。ベルト49が周運動すると、キャリッジ40は、ガイドレール45、46上を左右方向9に移動する。
【0045】
[搬送ローラ対58及び排出ローラ対59]
図2に示されるように、直線路67における記録部24より搬送向きの上流側には、直線路67の上側に配置された搬送ローラ60と、直線路67の下側に搬送ローラ60に対向して配置されたピンチローラ61とを備える搬送ローラ対58が設けられている。搬送ローラ対58は、開放空間16の上側で且つ奥側に位置する。ピンチローラ61は、バネなどの弾性部材(不図示)によって搬送ローラ60のローラ面に圧接されている。搬送ローラ対58は、記録用紙を挟持して搬送向きの下流側(つまり、プラテン42側)へ搬送する。なお、搬送ローラ対58は、予め定められた改行幅単位で記録用紙を間欠的に搬送する。以下、上述の搬送ローラ対58の動作を「所定の改行幅の搬送処理」と表記する。なお、所定の改行幅は、上述のノズル対向領域の幅よりも狭い幅である。
【0046】
直線路67における記録部24より搬送向きの下流側には、直線路67の下側に配置された排出ローラ62と、直線路67の上側に排出ローラ62に対向して配置された拍車63とを備える排出ローラ対59が設けられている。排出ローラ対59は、開放空間16の上側に位置する。拍車63は、バネなどの弾性部材(不図示)によって排出ローラ62のローラ面に圧接されている。排出ローラ対59は、記録部24を通過した記録用紙を挟持して搬送向きの下流側(つまり、排紙トレイ21側)へ搬送する。
【0047】
搬送ローラ60及び排出ローラ62は、搬送用モータ101(
図6参照)から駆動力が伝達されて回転する。搬送用モータ101が正転または逆転の一方に回転された場合、搬送ローラ60及び排出ローラ62は、搬送路65上の記録用紙を搬送向きに搬送する。なお、給紙部15、搬送ローラ対58、及び排出ローラ対59は、本発明の搬送機構の一例を構成する。
【0048】
[レジストセンサ64]
図2に示されるように、プリンタ部11は、給紙ローラ25及び搬送ローラ対58の間の湾曲路66の所定位置に、レジストセンサ64を備える。レジストセンサ64は、設置位置における記録用紙の有無を検知し、検知結果に応じた検知信号を後述する制御部130に出力する。例えば、レジストセンサ64は、記録用紙の一部がレジストセンサ64を通過しているときにHighレベル信号(つまり信号レベルが閾値以上の信号)を制御部130に出力し、記録用紙がレジストセンサ64を通過していないときにLowレベル信号(つまり信号レベルが閾値未満の信号)を制御部130に出力する。
【0049】
[カートリッジ収納部30]
図1及び
図3に示されるように、プリンタ部11の前面には、カートリッジ収納部30が設けられている。カートリッジ収納部30は、左右方向9において開放空間16に隣接し、且つプリンタ部11の前面に接する位置に設けられる。
図1に示されるように、プリンタ部11の前面右側には、プリンタ部11の前面の下端を軸として矢印32の方向に回動することによって開閉可能なカバー31が設けられている。カバー31が開かれることによって、カートリッジ収納部30が露出される。カートリッジ収納部30は、開口を有する略直方体の箱状の部材である。
【0050】
インクカートリッジ33、34、35、36は、開口を通じてカートリッジ収納部30内へ挿抜される。カートリッジ収納部30の天面と底面とには、ガイド溝(不図示)が形成されている。インクカートリッジ33、34、35、36は、ガイド溝に沿って挿抜される。本実施形態において、ガイド溝は、カートリッジ収納部30の天面と底面とに、それぞれ4つずつ形成されている。本実施形態において、カートリッジ収納部30には、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色に対応する4つのインクカートリッジ33、34、35、36が挿抜可能である。
【0051】
[インク供給管37]
各色インクを収容したインクカートリッジ33、34、35、36は、プリンタ部11のカートリッジ収納部30に装着されている。そして、
図3に示されるように、カートリッジ収納部30からキャリッジ40へは、各色インクに対応した4本のインク供給管37が引き回されている。キャリッジ40へ引き回されたインク供給管37は、キャリッジ40に搭載された記録ヘッド38へ各色インクを供給する。
【0052】
インク供給管37は、例えば、合成樹脂製であって、ストレート形状に形成されたチューブである。インク供給管37は、ストレート形状を保持する適度な腰(曲げ剛性)を有し、外力が付加されることにより撓む可撓性と、その外力が解除されたときに元の形状に復元する弾性とを有する。インク供給管37は、この可撓性及び弾性によって、キャリッジ40の往復動に追従して姿勢変化する。
【0053】
[廃インクタンク50]
図3に示されるように、カートリッジ収納部30の後方には、廃インクタンク50(本発明の廃インク貯留部の一例)が設けられている。すなわち、廃インクタンク50は、左右方向9において開放空間16に隣接し、且つカートリッジ収納部30とその後方側において隣接する位置に設けられる。廃インクタンク50には、記録ヘッド38から吐出された廃インクが貯留される。より詳細には、廃インクタンク50には、ポンプ(不図示)によってノズルからインクを吸引するパージ動作、或いはノズルにインクを空吐出させるフラッシング動作の実行によって排出された廃インクが貯留される。
【0054】
[音響室80、スピーカ90]
図3に示されるように、筐体14の内部には、音響室80が設けられている。音響室80は、左右方向9において開放空間16に隣接し、且つ廃インクタンク50とその後方側において隣接する位置に設けられる。音響室80のさらに後方には、キャリッジ駆動用モータ103が設けられている。すなわち、前後方向8において、音響室80は、廃インクタンク50とキャリッジ駆動用モータ103との間に設けられている。
【0055】
音響室80の内部には、音響空間81(
図5参照)が形成されている。
図5(B)、(C)、(D)に示されるように、音響空間81は、音響室80の上部から下部に向かって横断面積が徐々に大きくなる錘形状である。
図4に示されるように、音響室80の下面は、開放されている。音響空間81は、その下端部において、フレーム70の下面に設けられた連通溝82を通じて開放空間16に連通している。また、
図5に示されるように、音響室80の上部において、音響室80の前面側を向く壁面には、開口83が設けられている。音響室80の開口83の面積は、
図5(C)に示されるように、後述するスピーカ90の音声出力面91の面積より僅かに小さく設定されている。
【0056】
すなわち、音響室80は、音響空間81を区画する隔壁を有する。換言すれば、音響空間81は、音響室80の壁面によって区画される空間である。但し、音響空間81を区画する壁面は、上述の例に限定されず、周辺の構成要素の壁面(例えば、廃インクタンク50の後方側の壁面)を用いて、音響空間81を区画してもよい。
【0057】
音響室80の外壁面には、スピーカ90が取り付けられている。より詳細には、スピーカ90は、音響室80の上部において、音響室80の前面側を向く壁面に板バネ92によって圧接されている。スピーカ90の音声出力面91は、音響室80に設けられた開口83を通じて音響空間81に露出されている。すなわち、スピーカ90は、音声出力面91を音響空間81の内部に向けて配置されている。すなわち、スピーカ90の音声出力面91から出力される音声は、音響空間81を下向きに伝播し、連通溝82を通じて開放空間16に放出され、さらに開口13を通じて外部に放出される。
【0058】
スピーカ90は、後述する制御部130の制御に従って、音声出力面91から音声を出力する。スピーカ90から出力される音声の詳細は特に限定されないが、例えば、複合機10の異常をユーザに報知する警告音、ユーザがすべき次の動作を案内するガイダンス音声、及び複合機10の動作音を相殺する相殺音等が挙げられる。詳細は後述される。
【0059】
スピーカ90の具体的な構成は特に限定されないが、例えば、ピエゾ素子(本発明の圧電体の一例)に電圧を印加することによって音声を出力する圧電型スピーカを採用することができる。これにより、スピーカ90の厚みを薄く構成できる。また、圧電型スピーカには磁石が用いられないので、磁気センサや電気回路に悪影響を及ぼすことがなく、且つ周辺の鉄粉を吸着することによる不具合を回避できる。また、スピーカ90の形成方法は特に限定されないが、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)によって形成されたものであってもよい。
【0060】
[制御基板71、制御部130]
図3に示されるように、フレーム70の前方側の領域において、フレーム70の上面には、制御基板71がビスなどによって固定されている。制御基板71は、プリント基板(不図示)と、プリント基板上に実装されたマイクロコンピュータや種々の電子部品(制御回路)とで構成されている。制御基板71に実行されたマイクロコンピュータや電子部品等で、
図6に示される制御部130(本発明の制御部の一例)が構成される。制御基板71と記録ヘッド38とは、フレキシブルフラットケーブル72によって電気的に接続される。フレキシブルフラットケーブル72は、キャリッジ40の往復動に追従して姿勢変化する可撓性を有する。
【0061】
制御部130は、複合機10の全体動作を制御するものである。制御部130が後述するフローチャートに従った処理を実行することによって、本発明が実現される。制御部130は、
図6に示されるように、CPU131、ROM132、RAM133、EEPROM134、ASIC135、及びこれらを相互に接続する内部バス137を備える。
【0062】
ROM132には、CPU131が記録動作を含む各種動作を制御するためのプログラムなどが格納されている。RAM133は、CPU131がプログラムを実行する際に用いるデータや信号等を一時的に記録する記憶領域として使用される。EEPROM134には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。EEPROM134(本発明の記憶部の一例)には、例えば、後述する相殺音を表す情報が格納される。
【0063】
ASIC135には、搬送用モータ101、給紙用モータ102、及びキャリッジ駆動用モータ103が接続されている。ASIC135には、各モータを制御する駆動回路が組み込まれている。CPU131は、各モータを回転させるための駆動信号を駆動回路(不図示)に出力する。駆動回路は、CPU131から取得した駆動信号に応じた駆動電流を対応するモータへ出力する。これにより、対応するモータが回転する。つまり、制御部130は、各モータ101、102、103の駆動(回転)を制御する。
【0064】
より詳細には、制御部130は、例えば、給紙用モータ102を駆動させることによって、給紙ローラ25に記録用紙を給送させる。また、制御部130は、搬送用モータ101を駆動させることによって、搬送ローラ対58及び排出ローラ対59に記録用紙を搬送させる。また、制御部130は、キャリッジ駆動用モータ103を駆動させることによって、キャリッジ40を左右方向9へ往復動させる。
【0065】
なお、複合機10の各構成要素と、当該構成要素を駆動させるモータ101〜103との対応関係は
図6の例に限定されない。例えば、給紙ローラ25、搬送ローラ60、及び排出ローラ62を1つのモータに接続し、当該モータの駆動力を図示しない駆動切換機構によって各構成要素に伝達する構成であってもよい。
【0066】
また、ASIC135には、フレキシブルフラットケーブル72によって、記録ヘッド38が接続されている。制御部130は、フレキシブルフラットケーブル72を通じて記録ヘッド38に制御信号を送信することにより、ノズルから所定のタイミングでインクを吐出させる。これにより、搬送路65を搬送される記録用紙に画像が記録される。
【0067】
また、ASIC135には、スピーカ90が接続されている。制御部130は、スピーカ90に警告音、ガイダンス音声、及び相殺音等を出力させる。スピーカ90に音声を出力させる際の具体的な処理内容は、後述される。
【0068】
さらに、ASIC135には、レジストセンサ64が接続されている。制御部130は、レジストセンサ64から入力された検知信号の信号レベル(電圧値又は電流値)が所定値以上であるか否かを判断する。制御部130は、入力された検知信号の信号レベルが所定値以上である場合にHighレベル信号と判断し、所定値未満の場合にLowレベル信号と判断する。制御部130は、入力された検知信号がHighレベルの場合(つまり、レジストセンサ64がON)、記録用紙の先端がレジストセンサ64の位置を通過した後であり、且つ記録用紙の後端がレジストセンサ64の位置を通過する前であると判断する。一方、制御部130は、入力された検知信号がLowレベルの場合(つまり、レジストセンサ64がOFF)、記録用紙の先端がレジストセンサ64の位置に到達する前の状態、或いは記録用紙の後端がレジストセンサ64の位置を通過した後の状態であると判断する。
【0069】
図7〜
図12を参照して、制御部130によって実行される画像記録処理が説明される。複合機10は、画像記録処理を実行する際に、様々な動作音を発生させる。そこで、
図7に示される画像記録処理の各フェーズにおいて、動作音を発生させる各構成要素の動作に同期させて、当該動作音を相殺するための相殺音をスピーカ90に出力させる制御部130の処理が、
図8〜
図12を参照して説明される。
【0070】
動作音とは、複合機10の各構成要素が動作することによって生じる音であり、例えば、各モータ101〜103の駆動音、記録用紙が変形する際に生じる音、キャリッジ40がガイドレール45、46上を摺動する際に生じる音等が該当する。動作音と相殺音とは、概ね同振幅で且つ逆位相である。相殺音を生成する方法の詳細は省略するが、例えば、複合機10を実際に動作させることによって生じる動作音をマイクで収音し、収音した動作音に周知の適応フィルタを適用することによって、当該動作音の位相を反転させた相殺音を生成することができる。生成された相殺音は、例えばEEPROM134に予め記憶されている。
【0071】
図7に示されるように、制御部130は、複合機10に画像記録処理の開始させる指示が入力されると、給紙処理を実行する(S10)。
図8を参照して、給紙処理の詳細が説明される。
【0072】
図8に示されるように、制御部130は、給紙用モータ102を正転駆動することによって、給紙ローラ25を回転させる(S110)。また、制御部130は、搬送用モータ101を逆転駆動することによって、搬送ローラ60を逆回転(記録用紙を搬送する向きと逆向き)させる。これにより、給紙トレイ20上の一番上の記録用紙がピックアップされる。このとき、搬送用モータ101及び給紙用モータ102の駆動音、及びピックアップされる記録用紙が他の記録用紙と擦れる音等が動作音として出力される。そこで、EEPROM134には、上記動作音の位相を反転させた相殺音(以下、「ピックアップキャンセル音」と表記する)が予め記憶されている。
【0073】
制御部130は、ステップS110の処理に同期させて、EEPROM134に記憶されているピックアップキャンセル音をスピーカ90に出力させる(S120)。そして、制御部130は、レジストセンサ64からHighレベル信号が出力されるのを監視する(S130)。すなわち、制御部130は、レジストセンサ64からHighレベル信号が検知されるまで、ピックアップキャンセル音をスピーカ90に出力させ続ける。より詳細には、制御部130は、レジストセンサ64からHighレベル信号が検知された後(S130:Yes)であって、記録用紙が搬送ローラ対58に到達するまでの間、スピーカ90にピックアップキャンセル音を出力させ続ける。
【0074】
次に、搬送路65を搬送される記録用紙の先端が逆回転している搬送ローラ対58に到達すると、記録用紙の斜行が矯正される。このとき、搬送ローラ対58に当接することによって記録用紙が変形する音が動作音として出力される。そこで、EEPROM134には、上記動作音の位相を反転させた相殺音(以下、「レジストキャンセル音」と表記する)が予め記憶されている。
【0075】
制御部130は、ステップS130においてHighレベル信号が出力された後(S130:Yes)、所定の時間(レジストセンサ64から搬送ローラ対58までの距離を記録用紙が搬送される時間)が経過したタイミングで、EEPROM134に記憶されているレジストキャンセル音をスピーカ90に出力させる(S140)。このレジストキャンセル音は、搬送ローラ対58によって記録用紙の斜行が矯正される僅かな期間にのみ出力される。
【0076】
次に、制御部130は、給紙用モータ102を停止させることによって、給紙ローラ25の回転を停止させる(S150)。また、制御部130は、搬送用モータ101を停止させることによって、搬送ローラ対58を停止させる。これにより、
図7の給紙処理(S10)が終了される。すなわち、給紙処理における制御部130は、スピーカ90に、給紙ローラ25による記録用紙のピックアップが開始されたタイミングで相殺音(ピックアップキャンセル音)の出力を開始させ、記録用紙の先端が搬送ローラ対58に到達した(搬送ローラ対58による記録用紙の搬送が開始される)タイミングで相殺音(レジストキャンセル音)の出力を停止させる。
【0077】
図7に戻って、制御部130は、記録用紙に記録すべき画像が残っているか否かを判断する(S20)。そして、記録用紙に記録すべき画像が残っていれば(S20:Yes)、制御部130は、所定の改行幅の搬送処理を実行する(S30)。
図9を参照して、所定の改行幅の搬送処理の詳細が説明される。
【0078】
図9に示されるように、制御部130は、搬送用モータ101を正転駆動することによって、搬送ローラ60を回転させる(S310)。これにより、搬送路65上の記録用紙が搬送ローラ対58に挟持されて搬送向きの下流側に搬送される。このとき、搬送用モータ101の駆動音、及び搬送ローラ対58に挟持された記録用紙の変形によって生じる音等が動作音として出力される。そこで、EEPROM134には、上記動作音の位相を反転させた相殺音(以下、「搬送キャンセル音」と表記する)が予め記憶されている。
【0079】
制御部130は、ステップS310の処理に同期させて、EEPROM134に記憶されている搬送キャンセル音をスピーカ90に出力させる(S320)。そして、制御部130は、記録用紙が所定の改行幅だけ搬送されるのを監視する(S330)。すなわち、制御部130は、記録用紙が所定の改行幅だけ搬送されるまでの間、搬送キャンセル音をスピーカ90に出力させ続ける。なお、記録用紙の搬送量は、例えば、搬送用モータ101の回転量(つまり、搬送ローラ60の回転量)を検知するロータリーエンコーダ(不図示)によって取得される。
【0080】
記録用紙が所定の改行幅だけ搬送されると(S330:Yes)、制御部130は、搬送用モータ101を停止させることによって、搬送ローラ60の回転を停止させる(S340)。これにより、
図7の所定の改行幅の搬送処理(S30)が終了される。すなわち、所定の改行幅の搬送処理における制御部130は、スピーカ90に、搬送ローラ60が記録用紙を所定の改行幅だけ搬送し始めたタイミングで搬送キャンセル音の出力を開始させ、搬送ローラ60が記録用紙を所定の改行幅だけ搬送し終わったタイミングで搬送キャンセル音の出力を停止させる。
【0081】
再び
図7に戻って、制御部130は、記録用紙のノズル対向領域に対する画像記録処理を実行する(S40)。
図10を参照して、ノズル対向領域に対する画像記録処理の詳細が説明される。
【0082】
図10に示されるように、制御部130は、キャリッジ駆動用モータ103を正転駆動或いは逆転駆動することによって、キャリッジ40を主走査方向に移動させる(S410)。また、制御部130は、フレキシブルフラットケーブル72を通じて記録ヘッド38に制御信号を出力することにより、所定のタイミングでノズルからインクを吐出させる。これにより、記録用紙のノズル対向領域に画像が記録される。このとき、キャリッジ駆動用モータ103の駆動音、及びキャリッジ40とガイドレール45、46との摺動音等が動作音として出力される。そこで、EEPROM134には、上記動作音の位相を反転させた相殺音(以下、「画像記録キャンセル音」と表記する)が予め記憶されている。
【0083】
制御部130は、ステップS410の処理に同期させて、EEPROM134に記憶されている画像記録キャンセル音をスピーカ90に出力させる(S420)。そして、制御部130は、ノズル対向領域に対する画像記録が終了するのを監視する(S430)すなわち、制御部130は、記録用紙のノズル対向領域に対する画像記録が終了するまでの間、画像記録キャンセル音をスピーカ90に出力させ続ける。
【0084】
記録用紙のノズル対向領域に対する画像記録が終了すると(S430:Yes)、制御部130は、キャリッジ40を待機位置に移動させて、キャリッジ駆動用モータ103を停止させる(S440)。これにより、
図7のノズル記録領域に対する画像記録処理(S40)が終了される。すなわち、ノズル記録領域に対する画像記録処理における制御部130は、スピーカ90に、記録部24によるノズル対向領域に対する画像記録が開始されるタイミングで画像記録キャンセル音の出力を開始させ、記録部24によるノズル対向領域に対する画像記録が終了するタイミングで画像記録キャンセル音の出力を停止させる。
【0085】
再び
図7に戻って、制御部130は、当該記録用紙に記録すべき画像がなくなるまで(S20:No)、ステップS30〜S40の処理を繰り返し実行する。そして、当該記録用紙に記録すべき画像がなくなると(S20:No)、制御部130は、排紙処理を実行する(S50)。
図11を参照して、排紙処理の詳細が説明される。
【0086】
図11に示されるように、制御部130は、搬送用モータ101を正転駆動することによって、排出ローラ62を回転させる(S510)。これにより、搬送路65上の記録用紙が排出ローラ対59に挟持されて搬送向きの下流側に搬送される。このとき、搬送用モータ101の駆動音、及び排出ローラ対59に挟持された記録用紙の変形によって生じる音等が動作音として出力される。そこで、EEPROM134には、上記動作音の位相を反転させた相殺音(以下、「排出キャンセル音」と表記する)が予め記憶されている。
【0087】
制御部130は、ステップS510の処理に同期させて、EEPROM134に記憶されている排出キャンセル音をスピーカ90に出力させる(S520)。そして、制御部130は、記録用紙の後端が排出ローラ対59を通過するのを監視する(S530)。すなわち、制御部130は、記録用紙が排紙トレイ21に配置されるまでの間、排出キャンセル音をスピーカ90に出力させ続ける。
【0088】
記録用紙の後端が排出ローラ対59を通過すると(S530:Yes)、制御部130は、搬送用モータ101を停止させることによって、排出ローラ62の回転を停止させる(S540)。これにより、
図7の所定の排出処理(S50)が終了される。すなわち排出処理における制御部130は、スピーカ90に、排出ローラ62による記録用紙の搬送が開始されたタイミングで排出キャンセル音の出力を開始させ、記録用紙の後端が排出ローラ62を通過したタイミングで排出キャンセル音の出力を停止させる。
【0089】
再び
図7に戻って、制御部130は、次のページの画像データが残っているか否かを判断する(S60)。次のページの画像データが存在する場合(S60:Yes)、制御部130は、給紙トレイ20に載置されている新たな記録用紙に対して、ステップS10〜S50の処理を実行する。なお、新たな記録用紙に代えて、直前に画像記録が行われた記録用紙の裏面に画像記録を実行してもよい。その場合、ステップS10の給紙処理に代えて、当該記録用紙を反転させて搬送路65に戻す処理が実行される。一方、次のページの画像データが存在しない場合(S60:No)、制御部130は、画像記録処理を終了する。
【0090】
[本実施形態の効果]
本実施形態によれば、スピーカ90から出力される音声は、音響空間81、連通溝82、及び開放空間16を通って開口13から複合機10の外部に出力される。このように、スピーカ90の前方に容積の大きな空間を設けることにより、スピーカ90の音質が向上する。また、スピーカ90の音を出力するための小孔を筐体14の壁面に設ける必要がないので、複合機10の内部への異物等の侵入を防止できる。
【0091】
また、本実施形態において、動作音を発生させる主な構成要素は開放空間16に隣接する位置に配置されているので、当該動作音の大部分は開放空間16を通って開口13から複合機10の外部に放出される。そこで、スピーカ90に当該動作音の相殺音を出力させ、開放空間16の内で動作音と相殺音とを合成(つまり、互いに打ち消し合う)してから放出することにより、静粛性に優れた複合機10を実現できる。
【0092】
[変形例]
本実施形態では、スピーカ90を音響室80の外側に配置し、音響室80の開口83を通じて音声出力面91を音響空間81に露出させる構成を説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。例えば、
図12に示されるように、スピーカ90を音響室84の内部、すなわち、音響空間85内に配置してもよい。
【0093】
なお、
図12に示される音響空間85は、第1空間86と第2空間87とに区画されている。そして、スピーカ90は、その音声出力面91を第1空間86に向け、音声出力面91の背面を第2空間87に向けた状態で音響空間85に配置される。すなわち、
図12に示される音響空間85は、スピーカ90によって第1空間86と第2空間87とに区画されている。
【0094】
さらに、第1空間86と第2空間87とは、連通溝82に至るより手前で互いに合流している。すなわち、スピーカ90の音声出力面91から第1空間86に出力された音と、スピーカ90の音声出力面91の背面から第2空間87に出力された音とは、
図12の破線の矢印で示されるように、連通溝82に至る手前で合成され、合成された音が連通溝82を通じて開放空間16に放出される。
【0095】
上記構成によれば、内部にスピーカ90を備える音響室84がバスレフスピーカとなって、特に低音域が増強される。その結果、高音域の音が聞き取りにくい高齢者等に対して、警告音やガイダンス音声等を低音域で出力することができる。すなわち、幅広い世代のユーザに対して聞き取りやすい音声を出力可能な複合機10を実現できる。
【0096】
また、本実施形態では、音響室80の前面側を向く壁面にスピーカ90の音声出力面91が圧接されている例、換言すれば、
図2に示されるように、音声出力面91を前後方向8の後向きに向けてスピーカ90を配置した例を説明した。しかしながら、音声出力面91の向きは上述の例に限定されない。例えば、スピーカ90は、音声出力面91を上下方向7の下向きに向けて音響空間81内に配置されてもよい。
【0097】
例えば、
図1に示されるように複合機10が設置された状態において、複合機10が載置される載置面と複合機10の下面との間には、空間が形成される。すなわち、開放空間16は、
図1に示されるように、給紙トレイ20及び排紙トレイ21の上側においてのみ外部に開放されているのではなく、給紙トレイ20と載置面との間においても外部に開放されている。そこで、上述のように、音声出力面91を下に向けてスピーカ90を配置することにより、給紙トレイ20と載置面との間に形成された空間からも積極的に音声を放出することができる。
【0098】
また、本実施形態では、スピーカ90から出力された音を音響室80を経由して開放空間16に放出した例を説明したが、本発明はこれに限定されず、スピーカ90の音声出力面91を開放空間16に直接露出させてもよい。例えば、開放空間16を区画する壁面のうち、左右方向9に対向する一対の側壁面の一方にスピーカ90の音声出力面91を露出させてもよい。この場合、スピーカ90は、開放空間16と左右方向9に隣接する位置に配置される。または、開放空間16を区画する壁面のうち、開口13に対向する奥壁面にスピーカ90の音声出力面91を露出させてもよい。この場合、スピーカ90は、開放空間16と前後方向8に隣接する位置に配置される。
【0099】
上記構成によれば、スピーカ90から出力された音声が筐体14の内部の複雑な経路を通ることなく、開口13から外部に直接放出されるので、十分な音量を確保するのが容易となる。ここで、特に開放空間16の奥側には搬送ローラ対58及び記録部24等が設けられており、スピーカ90を配置する空間は極めて小さい。そこで、厚み寸法を薄くできる圧電型のスピーカ90を採用することにより、上述の小さな空間に配置することが可能となる。
【0100】
なお、上述の「開放空間16を区画する壁面」とは、開放空間の外縁(境界)を定める壁面を指す。なお、開放空間16は、専用の隔壁によって区画されている必要は必ずしもなく、周辺に配置された他の構成要素の壁面によって区画されていてもよい。例えば、
図2に示される下側ガイド部材53は、開放空間16を区画する壁面として利用され得る。
【0101】
さらに、本実施形態では、EEPROM134に予め記憶されている相殺音を、複合機10の各構成要素の動作に同期させてスピーカ90から出力する例を説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。例えば、複合機10に設けられたマイク(不図示)によって動作音を収音し、収音した動作音からリアルタイムに相殺音を生成して出力するノイズキャンセル処理を、複合機10の動作中に継続して実行してもよい。これにより、複合機10から実際に出力されている動作音を打ち消すことができるので、使用環境等に依存する動作音の変化等に柔軟に対応できる。なお、この場合の相殺音の生成方法は上述した方法と共通するので、再度の説明は省略される。
【0102】
また、マイクを配置する場所は特に限定されないが、例えば、開放空間16内にマイクを配置してもよい。この場合、マイクは、動作音と相殺音とが合成された音を収音することになる。そこで、制御部130は、マイクによって収音される音が無音(つまり、音圧が0)に近づくように、相殺音を生成する処理にフィードバック処理を適用してもよい。これにより、さらに効果的に動作音を打ち消すことができる。
【0103】
但し、上記構成によれば、警告音やガイダンス音声等の本来は打ち消されるべきでない音までもが打ち消されてしまう。そこで、警告音やガイダンス音声を出力する場合には、
図13に示されるフローチャートに従って処理が実行されるのが望ましい。
【0104】
まず、RAM133には、ノイズキャンセルフラグが保持されている。ノイズキャンセルフラグがON(例えば、”1”が設定されている)の場合、制御部130は、上述のノイズキャンセル処理を継続的に実行する。一方、ノイズキャンセルフラグがOFF(例えば、”0”が設定されている)の場合、制御部130は、上述のノイズキャンセル処理を停止する。通常状態におけるノイズキャンセルフラグは、ONとなっている。
【0105】
そして、制御部130は、警告音又はガイダンス音声を出力する前に、RAM133に保持されているノイズキャンセルフラグの値を確認する(S610)。ノイズキャンセルフラグがONであれば(S610:Yes)、制御部130は、ノイズキャンセルフラグをOFFに変更(S620)し、警告音又はガイダンス音声をスピーカ90に出力させ(S630)、再度ノイズキャンセルフラグをONに変更する(S640)。すなわち、制御部130は、警告音又はガイダンス音声を出力する間だけノイズキャンセルフラグをOFFにし、上述のノイズキャンセル処理を停止する。一方、ステップS610の段階で既にノイズキャンセルフラグがOFFであれば(S610:No)、制御部130は、警告音又はガイダンス音声をスピーカ90に出力させる(S650)。
【0106】
上記構成によれば、警告音又はガイダンス音声が出力されている間にノイズキャンセル処理が実行されないので、警告音やガイダンス音声が打ち消されることによって、聞き取りにくくなることを防止できる。
【0107】
なお、上記の実施形態及び変形例では、複合機10にスピーカ90を1つだけ設けた例を説明したが、複数のスピーカを設けてもよいことは言うまでもない。また、上記の実施形態及び変形例では、インクジェット方式の記録部24を備える複合機10を前提として説明したが、画像記録の方式はこれに限定されず、あらゆる画像記録方式の複合機10に適用できることは言うまでもない。一例として、帯電させたドラムに付着させたトナーを記録用紙に定着させる所謂レーザプリンタにも適用できる。
【0108】
上記の実施形態及び変形例は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、任意の組み合わせで組み合わせることができる。