(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の発電装置を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明の発電装置の第1実施形態について説明する。
【0030】
図1は、本発明の発電装置の第1実施形態を示す斜視図、
図2は、
図1に示す発電装置の断面斜視図、
図3は、
図2に示す発電装置の分解斜視図である。
【0031】
なお、以下の説明では、
図1〜
図3中の上側を「上」または「上方」と言い、下側を「下」または「下方」と言う。
【0032】
図1〜
図3に示すように、発電装置100は、筐体20と、筐体20内に、
図2の上下方向に振動可能に保持された発電部10とを備えている。発電部10は、一対の対向する上側板バネ60Uおよび下側板バネ60Lと、これらの間に固定された、永久磁石31を有する磁石組立体30、永久磁石31の外周側を囲むように設けられたコイル40およびコイル40を保持するコイル保持部50とを有している。なお、本実施形態では、上側板バネ60Uおよび下側板バネ60Lとして、同じ構造を有するものを用いた場合について説明する。
【0033】
以下、各部の構成について説明する。
<<筐体20>>
筐体20は、
図3に示すように、カバー21と、ベース23と、カバー21とベース23との間に位置する筒状部22とを備えている。
【0034】
カバー21は、円盤状をなし、その外周縁部に沿って、円環状(リング状)のリブ211が下方に向かって突出形成されている。このリブ211に対応する部分に沿って、略等間隔に配置された4つの貫通孔212が形成されている。また、カバー21のリブ211より内側の部分には、上方に向かって凹没形成された凹部(逃げ部)214が形成されている。発電部10は、振動した際に、この凹部214内に位置(退避)し、カバー21と接触するのが防止されている。
【0035】
筒状部22は、円筒状をなし、その平面視での大きさがカバー21のリブ211の平面視での大きさと略等しくなっている。発電部10と筐体20とを組み立てた状態(以下、この状態を「組立状態」と言う。)で、筒状部22の内側に発電部10の発電に寄与する主要部が位置する。
【0036】
また、筒状部22の上端部には、カバー21の貫通孔212に対応する位置に4つのネジ穴221が形成されている。さらに、後述する上側板バネ60Uの外周部(第1の環状部61)には、上述した4つの貫通孔212およびネジ穴221と対応する位置に貫通孔66が形成されている。上側板バネ60Uの外周部をカバー21と筒状部22との間に位置させた状態で、ネジ213を、カバー21の貫通孔212および上側板バネ60Uの貫通孔66に挿通し、筒状部22のネジ穴221に螺合させる。これにより、上側板バネ60Uの外周部、すなわち、発電部10が、カバー21と筒状部22とに固定される。
【0037】
ベース23は、矩形平板状をなし、その中央部には、円環状のリブ231が上方に向かって突出形成されている。換言すれば、このリブ231の内側に、凹部(逃げ部)234が形成されている。発電部10は、振動した際に、この凹部234内に位置(退避)し、ベース23と接触するのが防止されている。
【0038】
このベース23には、リブ231に対応する部分に沿って、略等間隔に配置された4つの貫通孔232が形成されている。また、筒状部22の下端部にも、ベース23の貫通孔232と対応する位置に4つのネジ穴221が形成されている。下側板バネ60Lの外周部(第1の環状部61)をベース23と筒状部22との間に位置させた状態で、ネジ233を、ベース23の貫通孔232および下側板バネ60Lの貫通孔66に挿通し、筒状部22のネジ穴221に螺合させる。これにより、下側板バネ60Lの外周部、すなわち、発電部10が、ベース23と筒状部22とに固定される。
【0039】
また、ベース23の4隅には、それぞれ、貫通孔235が形成されている。図示しないネジをベース23の貫通孔232に貫通させ、振動体に設けられたネジ穴と螺合させる。これにより、ベース23と振動体とが固定されて、発電装置100が振動体に取り付けられる(固定される)。さらに、ベース23の凹部234内には、組立状態で、後述するワッシャー80の貫通孔81に挿通されるネジ82の頭部に対応する位置に貫通孔が形成されている。
【0040】
ここで、振動体としては、例えば、空調ダクト、輸送機(貨物列車や自動車、トラックの荷台)、線路を構成する枕木、高速道路やトンネル、架橋、ポンプやタービンなどの機器、油圧及び空気圧を伝達するためのパイプ類などが挙げられる。
【0041】
筐体20(カバー21、筒状部22およびベース23)を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、金属材料、セラミックス材料、樹脂材料等が挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
筐体20の寸法は、特に限定されないが、発電装置100を小型化(低背化)する観点からは、筐体20(ベース23)の平均幅は、60〜120mm程度であるのが好ましい。また、筐体20の平均高さは、20〜50mm程度であるのが好ましく、30〜40mm程度であるのがより好ましい。
この筐体20内には、発電部10が振動可能に保持されている。
【0043】
以下、発電部10を構成する各部材について詳細に説明する。
<<上側板バネ60U、下側板バネ60L>>
上側板バネ60Uは、カバー21と筒状部22との間に設けられており、また、下側板バネ60Lは、ベース23と筒状部22との間に設けられている。
【0044】
図4は、
図1に示す発電装置100が備える板バネ(上側板バネ60U、下側板バネ60L)の平面図であり、以下、
図4を参照して各板バネの構造を説明する。
【0045】
各板バネは、それぞれ、金属製の薄板材で形成された円環状の部材である。各板バネは、それぞれ、外周側から、第1の環状部61、第1の環状部61の内径よりも小さい外径を有する第2の環状部62、および第2の環状部62の内径よりも小さい外径を有する第3の環状部63を有している。これらの第1の環状部61、第2の環状部62および第3の環状部63は、それぞれ、各板バネに同心的に設けられている。また、第1の環状部61と第2の環状部62とは、複数(本実施形態では、4つ)の第1のバネ部64によって連結されており、第2の環状部62と第3の環状部63とは、複数(本実施形態では、2つ)の第2のバネ部65によって連結されている。
【0046】
各板バネの第1の環状部61には、4つの貫通孔66が形成されている。これらの貫通孔66は、第1の環状部61の外周方向に沿って略等間隔(およそ90°間隔)に形成されている。そして、上側板バネ60Uの第1の環状部61は、各貫通孔66およびカバー21の貫通孔212を貫通して筒状部22の上端側のネジ穴221に螺合されるネジ213によって、カバー21と筒状部22とに固定(ネジ止め)される。また、下側板バネ60Lの第1の環状部61は、各貫通孔66およびベース23の貫通孔232を貫通して筒状部22の下端側のネジ穴221に螺合されるネジ233によって、ベース23と筒状部22とに固定(ネジ止め)される。
【0047】
また、各板バネの第2の環状部62にも、4つの貫通孔67が形成されている。これらの貫通孔67は、第2の環状部62の外周方向に沿って略等間隔(およそ90°間隔)に形成されている。また、後述するコイル保持部50の外周部(筒状部51)の上端部および下端部には、それぞれ4つのネジ穴511が形成されており、これらのネジ穴511は、各板バネの第2の環状部62に形成された貫通孔67に対応する位置に形成されている。さらに、上側板バネ60Uの上側および下側板バネ60Lの下側には、各板バネの第2の環状部62に形成された貫通孔67およびコイル保持部50のネジ穴511と対応する位置に4つの貫通孔81が形成された円環状のワッシャー80が配置される。
【0048】
上側板バネ60Uが、上側板バネ60Uの上側に設けられたワッシャー80とコイル保持部50との間に位置させた状態で、ネジ82を、ワッシャー80の貫通孔81および上側板バネ60Uの第2の環状部62の貫通孔67に挿通し、コイル保持部50の上側のネジ穴511に螺合させる。これにより、上側板バネ60Uの第2の環状部62が、コイル保持部50の外周部(筒状部51)の上端部に固定される。また、下側板バネ60Lが、下側板バネ60Lの下側に設けられたワッシャー80とコイル保持部50との間に位置させた状態で、ネジ82を、ワッシャー80の貫通孔81および下側板バネ60Lの第2の環状部62の貫通孔67に挿通し、コイル保持部50の下側のネジ穴511に螺合させる。これにより、下側板バネ60Lの第2の環状部62が、コイル保持部50の外周部(筒状部51)の下端部に固定される。なお、ワッシャー80は、その平面視での大きさが板バネの第2の環状部62の平面視での大きさと略等しくなっている。
【0049】
また、上側板バネ60Uの第3の環状部63は、後述する磁石組立体30上に配置されるスペーサ70の上部と固定されており、下側板バネ60Lの第3の環状部63は、磁石組立体30の底部と固定される。これらの部材間は、例えば、接着剤等を用いて固定することができる。
【0050】
4つの第1のバネ部64は、それぞれ、円弧状の部分を有する形状(略S字状)をなしており、第1の環状部61と第2の環状部62との間に形成された円環状の間隙内に配置される。これら4つの第1のバネ部64は、コイル保持部50を介して、互いに対向するように2対設けられている。また、各第1のバネ部64は、一端が、第1の環状部61の貫通孔66近傍で第1の環状部61と連結し、円弧状の部分が第1の環状部61の内周縁および第2の環状部62の外周縁に沿うように右回り(時計回り)に延在して、他端が、第2の環状部62の貫通孔67近傍で第2の環状部62と連結している。
【0051】
各板バネの4つの第1のバネ部64は、第2の環状部62を第1の環状部61に対して
図2の上下方向に振動可能に支持(連結)している。なお、上述したように、第1の環状部61は筐体20(カバー21、筒状部22およびベース23)に固定され、第2の環状部62は、コイル保持部50に固定されている。そのため、振動体による振動が筐体20に伝達されると、コイル保持部50が、第1のバネ部64を介して筐体20に対して振動する。
【0052】
2つの第2のバネ部65は、それぞれ、円弧状の部分を有する形状(略S字状)をなしており、第2の環状部62と第3の環状部63との間に形成された円環状の間隙内に配置される。これら2つの第2のバネ部65は、磁石組立体30を介して、互いに対向するように1対設けられている。また、各第2のバネ部65は、一端が、第2の環状部62に形成された磁石組立体30を介して対向する2つの貫通孔67近傍で第2の環状部62と連結し、円弧状の部分が第2の環状部62の内周縁および第3の環状部63の外周縁に沿うように右回り(時計回り)に延在して、他端が、第3の環状部63と連結している。
【0053】
各板バネの2つの第2のバネ部65は、第3の環状部63を第2の環状部62に対して
図2の上下方向に振動可能に支持(連結)している。なお、上述したように、第2の環状部62は、コイル保持部50に固定され、第3の環状部63は、上側板バネ60Uではスペーサ70を介して、また下側板バネ60Lでは直接的に、磁石組立体30に固定されている。そのため、磁石組立体30が、第2のバネ部65を介してコイル保持部50に対して振動する。
【0054】
以上の説明したような各板バネは、
図4に示すように、その中心軸(第3の環状部63の中心軸)を中心とした回転対称の形状をなしている。これにより、各板バネの周方向における第1のバネ部64および第2のバネ部65のバネ定数にバラつきが生じることを防止することができる。そのため、各板バネの全体としての横剛性を向上させることができる。また、発電装置100を組み立てる際には、その作業をより簡便に行うことができるようになる。
【0055】
かかる構成の発電装置100では、筐体20に対して、各板バネ60U、60Lの第1のバネ部64を介してコイル保持部50が振動する第1の振動系と、コイル保持部50に対して、各板バネ60U、60Lの第2のバネ部65を介して磁石組立体30が振動する第2の振動系とが形成されている。換言すれば、発電装置100では、発電部10が、第1の振動系および第2の振動系を有する2自由度振動系を構成する。
【0056】
ここで、かかる構成の2自由度振動系について添付図面を参照して説明する。
図5は、発電部10が有する2自由度振動系(第1の振動系および第2の振動系)の構成を説明するためのモデル図である。また、
図6は、
図5に示す2自由度振動系における発電量の周波数特性を説明するためのグラフである。
【0057】
このような2自由度振動系の発電部10では、第1の振動系が、コイル保持部50(コイル40およびコイル保持部50)の質量:m
1と、コイル保持部50と磁石組立体30との質量比:μと、第1のバネ部64のバネ定数:k
1とで決定される第1の固有振動数:ω
1を有し、第2の振動系が、磁石組立体30の質量:m
2と、コイル保持部50と磁石組立体30との質量比:μと、第2のバネ部65のバネ定数:k
2とで決定される第2の固有振動数:ω
2を有する。
【0058】
より具体的には、
図5に示す発電部10の2自由度振動系のモデル図を用いて、各固有振動数ω
1、ω
2は、下記式(1)の運動方程式で表すことができる。
【0060】
すなわち、2自由度振動系の各固有振動数ω
1、ω
2は、上記μ、Ω
1、Ω
2の3つのパラメータで決定される。
【0061】
上記式(1)で表される2自由度振動系の発電量(発電能力)は、発電による減衰を伴い、
図6に示すように、各固有振動数ω
1、ω
2にそれぞれ起因する2つの共振周波数f
1、f
2において最大値をとる。そして、発電装置100では、この2つの共振周波数(f
1、f
2)間の周波数帯域にわたって発電部10が筐体20に対して効率良く振動する。なお、減衰が無い場合において、各固有振動数ω
1、ω
2は各共振周波数f
1、f
2に一致する。
【0062】
したがって、各振動系の質量(m
1、m
2)およびバネ定数(k
1、k
2)を調整して、第1の振動系の共振周波数f
1と第2の振動系の共振周波数f
2とを異なる値に設定する(2重化する)ことにより、その設定された周波数帯域の外部振動(筐体20に付与される振動)に対して、発電部10を効率良く振動させることができる。
【0063】
なお、例えば、振動体の振動周波数が、20〜40Hzの周波数帯域である場合には、上記各振動系の質量(m
1、m
2)およびバネ定数(k
1、k
2)を下記式(1)〜(3)の条件を満足するように調整することにより、この振動体に対する発電装置100の発電効率を特に優れたものとすることができる。
【0064】
m
1[kg]:m
2[kg]=1.5:1 (1)
m
1[kg]:k
1[N/m]=1:60000 (2)
m
2[kg]:k
2[N/m]=1:22000 (3)
【0065】
なお、各板バネの平均厚さは、各バネ部(第1のバネ部64、第2のバネ部65)のバネ定数(k
1、k
2)を所望の値とするために適宜調整することができるが、各板バネの平均厚さは、0.1〜0.4mm程度であるのが好ましく、0.2〜0.3mm程度であるのがより好ましい。板バネの平均厚さが上記範囲内であれば、板バネの塑性変形、破断などの発生を確実に防止することができる。これにより、発電装置100を振動体に取り付けた状態で長期間にわたって使用することができる。
【0066】
これらの上側板バネ60Uと下側板バネ60Lとの間には、永久磁石31を有する磁石組立体30が設けられている。
【0067】
<<磁石組立体30>>
磁石組立体30は、円盤状(厚さの比較的薄い円柱状)の永久磁石31と、永久磁石31がその略中央に配設される底板部321と、底板部321の外周端部から立設した筒状部322とを有する円筒状のバックヨーク32と、永久磁石31の上面に、設けられたヨーク33とを有している。磁石組立体30は、バックヨーク32の底板部321の外周部が下側板バネ60Lの第3の環状部63と固定されるとともに、ヨーク33が後述するスペーサ70を介して上側板バネ60Uの第3の環状部63と固定される。
【0068】
永久磁石31は、N極をヨーク33側に、S極をバックヨーク32の底板部321側にして、バックヨーク32とヨーク33との間に配置される。すなわち、磁石組立体30は、各板バネの第2のバネ部65を介してコイル保持部50に対して振動する際に、磁石組立体30は、永久磁石31の磁化方向に沿って変位する。
【0069】
永久磁石31には、例えば、アルニコ磁石、フェライト磁石、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石や、それらを粉砕して樹脂材料やゴム材料に混練した複合素材を成形してなる磁石(ボンド磁石)等を用いることができる。なお、永久磁石31は、例えば、接着剤等による接着により、バックヨーク32およびヨーク33に固定される。
【0070】
ヨーク33は、その平面視での大きさが永久磁石31の平面視での大きさと略等しくなっている。また、ヨーク33の中央部付近には貫通孔が形成されている。
【0071】
バックヨーク32は、筒状部322と永久磁石31(ヨーク33)との間に、後述するコイル保持部50に保持されたコイル40が筒状部322および永久磁石31と離間した状態で配置されるように構成されている。すなわち、筒状部322の内径は、コイル40の外径よりも大きく設計される。また、バックヨーク32の底板部321には、中央部付近に貫通孔が形成されている。
【0072】
これらのバックヨーク32およびヨーク33の構成材料としては、例えば、純鉄(例えば、JIS SUY)、軟鉄、炭素鋼、電磁鋼(ケイ素鋼)、高速度工具鋼、構造鋼(例えば、JIS SS400)、ステンレスマーマロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0073】
磁石組立体30と筐体20との間には、コイル保持部50が設けられている。
<<コイル保持部50>>
コイル保持部50は、円筒状の筒状部51と、筒状部51の内周面側に配設された円環状の環状部52とを有している。
【0074】
筒状部51には、上端部および下端部に、それぞれ、4つのネジ穴511が形成されている。筒状部51は、ネジ82をワッシャー80の貫通孔81および各板バネの第2の環状部62の貫通孔67に貫通させ、このネジ穴511に螺合させることにより、各板バネの第2の環状部62と固定(ネジ止め)される。すなわち、コイル保持部50が各板バネの第2の環状部62と固定される。また、筒状部51の上部には、4つの切欠き部512が形成されている。
【0075】
環状部52は、筒状部51の内径と略等しい外径を有しており、外周部から外側に突出する4つの突起521が形成されている。環状部52は、その4つの突起521が、筒状部51の切欠き部512に係止されることにより、環状部52が筒状部51に固定される。
【0076】
また、環状部52の内径は、後述するスペーサ70(スペーサ70の筒状部71)の外径よりも大きく形成されている。
このようなコイル保持部50は、環状部52の下面側でコイル40を保持する。
【0077】
<<コイル40>>
コイル40は、コイル保持部50の環状部52下面の内周部付近に固定されて、コイル保持部50に保持される。また、コイル40は、コイル保持部50に保持された状態で、磁石組立体30のバックヨーク32の筒状部322と永久磁石31との間に、筒状部322および永久磁石31と離間して配置される。このコイル40は、発電部10の振動(コイル保持部50の振動および磁石組立体30の振動)に伴って、永久磁石31に対して相対的に上下方向に変位する。このとき、コイル40を通過する永久磁石31からの磁力線の密度が変化し、コイル40に電圧が発生する。
【0078】
コイル40は、組立状態において、永久磁石31の周囲を囲むように線材を巻回することにより形成されたものである。このような線材としては、特に限定されないが、例えば、銅製の基線に絶縁被膜を被覆した線材や、銅製の基線に融着機能を付加した絶縁被膜を被覆した線材等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。線材の巻き数は、線材の横断面積等に応じて適宜設定され、特に限定されない。
【0079】
なお、線材の横断面形状は、例えば、三角形、正方形、長方形、六角形のような多角形、円形、楕円形等のいかなる形状であってもよい。
【0080】
なお、このコイル40を構成する線材の両端は、コイル保持部50の環状部52の上側に設けられた電圧取出部90に接続されており、コイル40に発生した電圧は、この電圧取出部90から取り出すように構成されている。
【0081】
また、本実施形態の発電装置100では、ヨーク33の上面に、一端が閉塞された円筒状をなす筒状部71と、筒状部71の他端の外周に沿って一体に設けられた円形のフランジ部72とを有するスペーサ70が設けられている。このスペーサ70は、筒状部71の一端側がヨーク33に固定され、フランジ部72の外周部が上側板バネ60Uの第3の環状部63に固定される。本実施形態の発電装置100では、ヨーク33と上側板バネ60Uとをスペーサ70を介して固定することにより、発電部10が振動していない状態において、上側板バネ60Uの各環状部(第1〜第3の環状部61、62、63)が平行となる。換言すれば、各バネ部(第1および第2のバネ部64、65)にテンションがかからない状態となる。
【0082】
また、スペーサ70を構成する材料としては、例えば、マグネシウム、アルミニウム、成形樹脂等を用いることができる。
【0083】
次に、このような発電装置100の作用について説明する。
図7は、
図1に示す発電装置の断面模式図、
図8は、
図1に示す発電装置において形成される磁気回路(磁界ループ)を説明するための図である。
【0084】
発電装置100では、
図7に示すように、振動体から筐体20に振動が伝達されると、発電部10が、カバー21およびベース23に形成された各凹部214、234内で振動する。より具体的には、筐体20に対して、コイル保持部50が、各板バネ60U、60Lの第1のバネ部64を介して各凹部214、234内で
図7中上下方向に振動する(すなわち、第1の振動系が振動する)。また、同様に、コイル保持部50に対して、磁石組立体30が、各板バネ60U、60Lの第2のバネ部65を介して各凹部214、234内で
図7中上下方向に振動する(すなわち、第2の振動系が振動する)。
【0085】
各板バネ60U、60Lは、その構造上、各バネ部(第1のバネ部64、第2のバネ部65)の振動方向のバネ定数よりも、振動方向に対して略直交する方向(横方向)のバネ定数の方が大きい。すなわち、各板バネ60U、60Lは、その厚さ方向の剛性よりも、横方向の剛性(横剛性)が高い。そのため、各板バネ60U、60Lは、その横方向よりも、厚さ方向(振動方向)に優先して変形する。
【0086】
また、磁石組立体30とコイル40を保持したコイル保持部50とは、それぞれ、それらの厚さ方向の両側において、一対の板バネ60U、60Lの各バネ部に連結された環状部(第2の環状部62および第3の環状部63)に固定されている。そのため、磁石組立体30とコイル40を保持したコイル保持部50とは、各板バネ60U、60Lと一体となって振動する。
【0087】
このようなことから、磁石組立体30とコイル40を保持したコイル保持部50とは、各板バネ60U、60Lの厚さ方向と略直交する方向を軸とする直動(横揺れ)、および回動(ローリング)が阻止され、それらの振動軸が一定の方向(板バネ60U、60Lの厚さ方向)に規制される。したがって、磁石組立体30とコイル40を保持したコイル保持部50とが振動する際(すなわち、発電装置の発電時)に、これらが互いに接触することが防止される。特に、磁石組立体30とコイル40を保持したコイル保持部50とは、いずれも、高い剛性を有する剛体であるため、板バネ60U、60Lの各バネ部と同様に、振動方向に直交する方向への剛性(横剛性)も高い。そのため、振動時にこれらが接触するのがより確実に防止される。
【0088】
したがって、発電装置100では、前述のように、発電時の磁石組立体30とコイル40を保持したコイル保持部50との接触が防止されるため、振動体からの振動エネルギーが第1の振動系に効率よく伝達され、この第1の振動系に伝達された振動エネルギーが、さらに第2の振動系に効率よく伝達される。すなわち、振動体からの振動エネルギーが損失なく、第1の振動系、および第1の振動系を介して第2の振動系に伝達される。したがって、かかる発電装置では、効率の高い発電が可能となる。
【0089】
また、既に説明したように、第1の振動系は、コイル保持部50(コイル40およびコイル保持部50)の質量m
1と、コイル保持部50と磁石組立体30との質量比μと、第1のバネ部64のバネ定数k
1とに起因する第1の共振周波数f
1を有し、第2の振動系は、磁石組立体30の質量m
2と、コイル保持部50と磁石組立体30との質量比μと、第2のバネ部65のバネ定数k
2とに起因する第2の共振周波数f
2を有している。そのため、発電装置100では、第1の共振周波数f
1と第2の共振周波数f
2との間の周波数帯域の外部振動に対して、効率良く発電することができる。換言すれば、各構成部材の質量および板バネの各バネ部のバネ定数を、振動体からの外部振動の周波数帯域に合わせて設計することにより、幅広い周波数帯域の外部振動を効率良く発電エネルギーに変換することができる。
【0090】
また、発電装置100では、第1の振動系および第2の振動系が、
図7中、発電装置100の横方向に並んで、その高さ方向に互いに重なった構成であるため、発電装置100の高さを低く(低背化)することができる。そのため、振動体に発電装置100を取り付ける際に、取付けスペースの制限を受けないというメリットがある。
【0091】
さらに、発電装置100では、各振動系をなす磁石組立体30およびコイル保持部50が、横剛性の高い一対の板バネ60U、60L間に連結された構成であるため、振動体に対して縦置き(筐体20が振動体の側面に取り付けられる置き方)で取り付けることができる。そのような場合でも、各板バネ60U、60Lに連結された磁石組立体30、コイル保持部50の振動特性は変化しない。すなわち、発電装置100は、振動体に対して縦置きで取り付けた場合でも、横置き(筐体20が振動体の上面または下面に取り付けられる置き方)で取り付けた時と、同様の発電効率を有するものとなる。
【0092】
また、このような発電装置100では、上述したように、磁石組立体30のヨーク33およびバックヨーク32の底板部321の中央部付近に貫通孔が形成されている。これにより、永久磁石31、ヨーク33およびバックヨーク32によって形成される磁界ループは、
図8に示すように、ヨーク33を介して、磁石組立体30の中心側から外側に向かって流れ、バックヨーク32を介して、磁石組立体30の外側から中心側に向かって流れる。かかる構成では、発電部10が振動した際に、磁石組立体30とコイル40との相対的な移動が起こる。これにより、コイル40を通過する、磁石組立体30により発生した磁束密度Bの磁場がコイル導電体内を移動する。このとき、コイル導電体内の電子が受けるローレンツ力から起電力が発生する。この起電力が直接的に発電部10の発電に寄与し、効率的な発電が可能となる。
【0093】
<第2実施形態>
次に、本発明の発電装置の第2実施形態について説明する。
【0094】
図9は、本発明の発電装置の第2実施形態が備える板バネの平面図である。
以下、第2実施形態の発電装置について、前記第1実施形態の発電装置との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0095】
第2実施形態の発電装置は、上側板バネ60Uまたは下側板バネ60Lのうち、一方の板バネの構成を変更した以外は、前記第1実施形態の発電装置100と同様である。
【0096】
第2実施形態の発電装置100では、下側板バネ60Lを、上側板バネ60Uに対して、時計回りに90°回転させた状態で、筐体20のベース23と筒状部22とに固定する。
【0097】
図9(b)に示すように、本実施形態の発電装置100では、平面視した際に、下側板バネ60Lの一対の第2のバネ部65が、上側板バネ60Uの一対の第2のバネ部65に対して、時計回りに(半時計回りに)90°ズレている。
【0098】
上側板バネ60Uは、AA方向において、第1のバネ部64および第2のバネ部65が、各環状部(第1の環状部61、第2の環状部62)との連結点から離間している。そのため、上側板バネ60Uでは、AA方向の横剛性がその他の方向に比べて低くなる。
【0099】
一方、下側板バネ60Lは、上述した上側板バネ60Uを時計回りに90°回転させたものであるから、AA方向に対して直交するBB方向の横剛性がその他の方向に比べて低くなる。
【0100】
本実施形態の発電装置100では、上側板バネ60Uの横剛性が低い方向(AA方向)と下側板バネ60Lの横剛性が低い方向(BB方向)とを直交させる。これにより、上側板バネ60Uの横剛性の低い方向と、下側板バネ60Lの横剛性の低い方向とを打ち消すことができる。その結果、振動体から筐体20に伝達される振動のうち、各バネ部の発電方向(各バネ部の鉛直方向)と垂直を成す方向(各バネ部の水平方向)への振動によって、各板バネ60U、60L(発電部10)が不要共振するのを確実に防止することができる。このような不要共振が防止されることにより、発電装置100の発電効率をより優れたものとすることができる。
【0101】
なお、上記の説明では、
図9(b)に示すように、下側板バネ60Lを、上側板バネ60Uに対して、時計回りに90°回転させた構成について説明したが、上側板バネ60Uの横剛性が低い方向と下側板バネの横剛性が低い方向とがズレていれば、各板バネ60U、60L(発電部10)の不要共振を防止する効果が得られる。
【0102】
また、本実施形態の構成と異なる不要共振を防止する方法としては、上側板バネ60Uと下側板バネ60Lとを、異なる構造の板バネとする方法がある。具体的には、かかる方法は、上側板バネ60Uまたは下側板バネ60Lのうち、一方の板バネの厚さ、構成材料、第1のバネ部64の数および第2のバネ部65の数のうち、少なくとも1つのパラメーターを変更することにより行う。
【0103】
上側板バネ60Uまたは下側板バネ60Lのうち、いずれか一方の板バネの上記パラメーターを変更することにより、上側板バネ60Uと下側板バネ60Lとで、第1のバネ部64のバネ定数および第2のバネ部65のバネ定数を異ならせることができる。
【0104】
振動方向(垂直方向)に関しては、上側板バネ60Uと下側板バネ60Lとがコイル保持部50の筒状部51とスペーサ70および磁石組立体30とにより結合されているため、発電部10全体での第1のバネ部64のバネ定数は、両板バネ60U、60Lの第1のバネ部64のバネ定数を合成した値として、また、発電部10全体での第2のバネ部65のバネ定数は、両板バネ60U、60Lの第2のバネ部65のバネ定数を合成した値として見なすことができる。そのため、上側板バネ60Uまたは下側板バネ60Lのうち、いずれか一方の板バネのパラメーターを変更しても、第1の振動系および第2の振動系への影響は特に生じない。
【0105】
一方、振動方向と垂直を成す方向(水平方向)に関しては、上側板バネ60Uの各バネ部(第1のバネ部64および第2のバネ部65)に起因する共振周波数と、下側板バネ60Lの各バネ部(第1のバネ部64および第2のバネ部65)に起因する共振周波数とが異なる値となっている。そのため、振動体から、例えば、上側板バネ60Uが有する共振周波数に一致する周波数の外部振動が筐体20に伝達された際に、上側板バネ60Uは共振するものの、下側板バネ60Lの共振周波数と一致しないため、下側板バネ60Lは共振しない。したがって、発電部10全体では、各バネ部の水平方向への振動による不要共振を減少させることができる。その結果、発電装置100の発電効率をより優れたものとすることができる。
【0106】
また、かかる第2実施形態の発電装置100によっても、前記第1実施形態の発電装置100と同様の作用・効果を生じる。
【0107】
<第3実施形態>
次に、本発明の発電装置の第3実施形態について説明する。
【0108】
図10は、本発明の発電装置の第3実施形態を示す断面模式図である。
なお、以下の説明では、
図10中の上側を「上」または「上方」と言い、下側を「下」または「下方」と言う。
【0109】
以下、第3実施形態の発電装置について、前記第1および第2実施形態の発電装置との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0110】
第3実施形態の発電装置100では、磁石組立体30およびコイル保持部50の構成が異なり、それ以外は、前記第1実施形態と同様である。
【0111】
<<磁石組立体30>>
図10に示すように、磁石組立体30は、永久磁石31から構成されており、永久磁石31の底面が下側板バネ60Lの第3の環状部63と固定されるとともに、永久磁石31の上面がスペーサ70を介して上側板バネ60Uの第3の環状部63と固定される。
【0112】
<<コイル保持部50およびコイル40>>
コイル保持部50は、円筒状の筒状部51から構成されている。また、筒状部51の内周面の上部側にコイル40が固定されて、コイル保持部50に保持される。筒状部51は、前記第1実施形態の筒状部51と同様に、上端部および下端部に、それぞれ、4つのネジ穴511が形成されており、各板バネの第2の環状部62と固定(ネジ止め)される。すなわち、コイル保持部50が各板バネの第2の環状部62と固定される。
【0113】
かかる第3実施形態の発電装置100によっても、前記第1および第2実施形態の発電装置100と同様の効果を生じる。
【0114】
図10に示すように、本実施形態の発電装置100では、磁石組立体30が永久磁石31単体で構成されており、また、コイル保持部50が、筒状部51単体で構成されている。このように、本実施形態の発電装置100は、前記第1実施形態の発電装置100と比較して、部品点数が少なく、製造コストの削減を図ることができる。
【0115】
<第4実施形態>
次に、本発明の発電装置の第4実施形態について説明する。
【0116】
図11は、本発明の発電装置の第4実施形態の第1の構成例を示す断面模式図、
図12ないし
図14は、本発明の発電装置の第4実施形態の他の構成例を示す断面模式図である。
【0117】
なお、以下の説明では、
図11および
図14中の上側を「上」または「上方」と言い、下側を「下」または「下方」と言う。
【0118】
以下、第4実施形態の発電装置について、前記第1〜第3実施形態の発電装置との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0119】
第4実施形態の発電装置100では、上側板バネ60Uと下側板バネ60Lとの離間距離が発電部10全体の一部で変化するように構成されている。それ以外は、前記第1実施形態と同様である。
【0120】
図11に示すように、第4実施形態の発電装置100(第1の構成例を有する本実施形態の発電装置)は、上側板バネ60Uの第1のバネ部64と、下側板バネ60Lの第1のバネ部64との離間距離が、筐体20の筒状部22側よりコイル保持部50側で大きくなるように構成されている。このような構成は、例えば、筒状部22の高さを低くするとともに、カバー21に設けられたリブ211およびベース23に設けられたリブ231の突出高さを高くして、自然状態では平坦な各板バネ60U、60Lを第1の環状部61と第2の環状部62との間で変形させることにより得られる。
【0121】
かかる構成の発電装置100では、発電部10が振動していない状態において、各板バネの第1のバネ部64が
図11中上側または下側に撓んでいる。そのため、コイル保持部50(発電部10)には、その上側および下側から第1のバネ部64によってプリテンション(初期荷重)が付与されている。このような構成では、発電装置100を縦置きした場合と横置きした場合の姿勢変化が抑制され、発電部10が筐体20内に保持される。したがって、このような発電装置100は、縦置きした場合であっても、横置きした場合と同様の発電効率をより確実に得ることができる。
【0122】
また、本実施形態では、
図12に示すように、上側板バネ60Uの第1のバネ部64と、下側板バネ60Lの第1のバネ部64との離間距離が、筐体20の筒状部22側よりコイル保持部50側で小さくなるように構成されていてもよい。このような構成は、例えば、筒状部22の高さを、コイル保持部50(筒状部51)の高さよりも高くすることにより得られる。かかる構成(第2の構成例)を有する本実施形態の発電装置100においても、コイル保持部50(発電部10)には、その上側および下側から第1のバネ部64によってプリテンション(初期荷重)が付与されており、上記第1の構成例の発電装置100と同様の効果が得られる。
【0123】
また、本実施形態では、
図13に示すように、上側板バネ60Uの第2のバネ部65と、下側板バネ60Lの第2のバネ部65との離間距離が、コイル保持部50側より磁石組立体30側(スペーサ70側)で大きくなるように構成されていてもよい。このような構成は、例えば、前記第1の実施形態の発電装置100において、スペーサ70の高さをより高くすることにより得られる。
【0124】
かかる構成(第3の構成例)を有する本実施形態の発電装置100では、発電部10が振動していない状態において、各板バネの第2のバネ部65が
図13中上側または下側に撓んでいる。そのため、磁石組立体30には、その上側および下側から第2のバネ部65によってプリテンション(初期荷重)が付与されている。このような構成では、発電装置100を縦置きした場合と横置きした場合の姿勢変化が抑制され、発電部10が筐体20内に保持される。したがって、このような発電装置100は、縦置きした場合であっても、横置きした場合と同様の発電効率をより確実に得ることができる。
【0125】
また、本実施形態では、
図14に示すように、上側板バネ60Uの第2のバネ部65と下側板バネ60Lの第2のバネ部65との離間距離が、コイル保持部50側より磁石組立体30側(スペーサ70側)で小さくなるように構成されていてもよい。このような構成は、例えば、例えば、前記第1実施形態の発電装置100において、スペーサ70の高さを低くすることにより得られる。かかる構成(第4の構成例)を有する本実施形態の発電装置100においても、磁石組立体30には、その上側および下側から第2のバネ部65によってプリテンション(初期荷重)が付与されており、上記第3の構成例の発電装置100と同様の効果が得られる。
【0126】
以上、本発明の発電装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することができる。
例えば、前記第1〜第4実施形態の任意の構成を組み合わせることもできる。